(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】妊娠糖尿病を治療又は予防するための乳酸菌の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20220621BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220621BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220621BHJP
A23C 9/123 20060101ALI20220621BHJP
A23C 9/00 20060101ALI20220621BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20220621BHJP
A23C 9/152 20060101ALI20220621BHJP
A23C 19/084 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P3/10
A23L33/135
A23C9/123
A23C9/00
A23L2/38 P
A23C9/152
A23C19/084
(21)【出願番号】P 2019534662
(86)(22)【出願日】2017-06-02
(86)【国際出願番号】 IB2017053262
(87)【国際公開番号】W WO2018115985
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-05-28
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
【微生物の受託番号】AGAL NM97/09514
(73)【特許権者】
【識別番号】500240379
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ オタゴ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン リー ウィッケンス
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-513990(JP,A)
【文献】米国特許第08658156(US,B2)
【文献】BMC Pregnancy and Childbirth,2016年06月03日,16,133,p1-14,DOI: 10.1186/s12884-016-0923-y
【文献】PLoS One,2015年,10(2),e0115526/1-e0115526/21
【文献】Cochrane Database of Systematic Reviews,2014年,Vol. 2014, No. 2,arn. CD009951,p1-26
【文献】British Journal of Nutrition,2010年,103,pp.1792-1799
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A23C 9/00
A23L 2/38
A23L 33/135
A61P 3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成人女性被験体における妊娠糖尿病(GDM)の治療又は予防における使用のための、あるいは
成人女性被験体における1種もしくはそれ以上のGDM関連リスク又は1種もしくはそれ以上のGDMの続発症の治療又は予防における使用のための、1997年8月18日付けのAGAL寄託番号NM97/09514の
ラクトバシルス・ラムノサス
(Lactobacillus rhamnosus)HN001、又はその誘導体を含む組成物であって、空腹時平均血中グルコースレベルを、該被験体において約4.35mmol/l未満に低下させる、組成物。
【請求項2】
胎児、新生児、乳児、又は小児被験体における1種もしくはそれ以上のGDM関連リスク又は1種もしくはそれ以上のGDMの続発症
の予防における使用のための、1997年8月18日付けのAGAL寄託番号NM97/09514の
ラクトバシルス・ラムノサス
(Lactobacillus rhamnosus)HN001、又はその誘導体を含む組成物であって、
該予防が該胎児、新生児、乳児、又は小児被験体の
妊娠中の母親への該組成物の投与を含み、そして空腹時平均血中グルコースレベルを、該胎児、新生児、乳児、又は小児被験体の
妊娠中の母親において約4.35mmol/l未満に低下させる、組成物。
【請求項3】
成人女性被験体における妊娠糖尿病(GDM)の治療又は予防のための、あるいは
成人女性被験体における1種もしくはそれ以上のGDM関連リスク又は1種もしくはそれ以上のGDMの続発症の治療又は予防のための組成物又は医薬品の製造における、1997年8月18日付けのAGAL寄託番号NM97/09514の
ラクトバシルス・ラムノサス
(Lactobacillus rhamnosus)HN001、又はその誘導体の使用であって、空腹時平均血中グルコースレベルを、該被験体において約4.35mmol/l未満に低下させる、使用。
【請求項4】
胎児、新生児、乳児、又は小児被験体における1種もしくはそれ以上のGDM関連リスク又は1種もしくはそれ以上のGDMの続発症
の予防のための組成物又は医薬品の製造における、1997年8月18日付けのAGAL寄託番号NM97/09514の
ラクトバシルス・ラムノサス
(Lactobacillus rhamnosus)HN001、又はその誘導体の使用であって、該組成物又は医薬品が、該胎児、新生児、乳児、又は小児被験体の
妊娠中の母親への投与のために配合され、そして空腹時平均血中グルコースレベルを、該胎児、新生児、乳児、又は小児被験体の
妊娠中の母親において約4.35mmol/l未満に低下させる、使用。
【請求項5】
前記組成物または医薬品が、生理学的に許容し得る希釈剤、補助剤、担体、又は賦形剤を含む、請求項1又は2に記載の組成物又は請求項3又は4に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物が食品であるか、又は食品を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項7】
前記食品が、培養乳、ヨーグルト、チーズ、乳飲料、及び粉ミルクから選択される、請求項6に記載の組成物又は使用。
【請求項8】
前記組成物又は医薬品が、医薬的に許容し得る希釈剤、補助剤、担体、又は賦形剤を含む医薬組成物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項9】
前記組成物又は医薬品が、
a.母体調製乳もしくは母体サプリメント、又は
b.サプリメント、調製乳、ダイエット製品もしくは食品
である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項10】
前記
ラクトバシルス・ラムノサス
(Lactobacillus rhamnosus)HN001が生殖能力のある形態である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項11】
前記
ラクトバシルス・ラムノサス
(Lactobacillus rhamnosus)HN001が、死滅、溶解、分画、又は弱毒化されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項12】
前記被験体、又は胎児、新生児、乳児、もしくは小児被験体の母親が、GDMの高いリスクを有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項13】
前記被験体、又は胎児、新生児、乳児、もしくは小児被験体の母親が、以前GDMに罹患したことがある、請求項12に記載の組成物又は使用。
【請求項14】
a.前記組成物又は医薬品が、妊娠の最初の3ヵ月の後の投与用であるか、又は妊娠の最初の3ヵ月の後の投与用に配合されるか、
b.前記組成物又は医薬品が、妊娠14~16週の間の投与用であるか、又は妊娠14~16週の間の投与用に配合されるか、
c.前記組成物又は医薬品が、妊娠14週~16週から出産までの投与用であるか、又は妊娠14週~16週から出産までの投与用に配合されるか、あるいは
d.前記組成物又は医薬品が、妊娠14~16週から分娩後6ヶ月までの投与用であるか、又は妊娠14~16週から分娩後6ヶ月までの投与用に配合される、
請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項15】
a.前記治療が、予防的治療であるか、
b.前記治療が、予想された又は確立されたGDMの高いリスクを有する
成人女性被験体の予防的治療であるか、
c.前記治療が、妊娠しようとしているかもしくは最近妊娠した
成人女性被験体の予防的治療であるか、
d.前記治療が、前記組成物又は医薬品を胎児被験体の母親に投与することによる胎児被験体の予防的治療であるか、
あるいは
e.前記治療が、前記組成物又は医薬品を新生児、乳児、又は小児被験体
の母親に投与することによる新生児、乳児、又は小児被験体の予防的治療であ
る、
請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項16】
a.前記
成人女性被験体
又は母親が、妊娠しているか、
b.前記成人女性被験体又は母親が、35才以上であるか、
c.前記
成人女性被験体
又は母親が、妊娠しており、そして35才以上であるか、
d.前記
成人女性被験体
又は母親が、妊娠しており、そしてGDMの病歴を有するか、
e.前記
成人女性被験体
又は母親が、妊娠しており、35才以上であり、そしてGDMの病歴を有するか、
f.前記被験体が、胎児被験体であり、そして前記組成物
又は医薬品が、その被験体の母親に投与されるか、あるいは
g.前記被験体が、新生児、乳児、又は小児被験体であり、そして前記組成物
又は医薬品が、その被験体の母親に投与される、
請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項17】
プレバイオティクスとの同時又は逐次的投与用であるか、又はプレバイオティクスとの同時又は逐次的投与用に配合される、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項18】
前記プレバイオティクスが、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、もしくは人乳オリゴ糖、又はこれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の組成物又は使用。
【請求項19】
前記
成人女性被験体、又は胎児、新生児、乳児、もしくは小児被験体の母親が、30kg/m2未満のBMIを有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、妊娠糖尿病(GDM)を治療又は予防するためのプロバイオティクス細菌の使用、特に乳酸菌株の使用に関する。細菌及び細菌を含む組成物を使用する方法もまた提供される。
【背景技術】
【0002】
経済発展に伴う食物消費のパターンの変化などのライフスタイル要因が、ニュージーランド(NZ)(1)及びその他の先進国(2)における妊娠糖尿病(GDM)を含む、肥満及び関連疾患の広く認識されかつ増大する問題をもたらした。
【0003】
妊娠前の体重過多及び肥満はGDMの46%(3)を占めることが証明されており(3)、妊娠中の過剰な体重増加、以前のGDM、糖尿病の家族歴、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、高齢、及びより高い出産歴も危険因子として特定されている(4)。GDM自体は、子癇前症、流産、早産、巨大児、分娩誘発、及び帝王切開のリスクを高める(2、3)。GDMはまた、後期の母と児の肥満、及びそれに続く2型糖尿病のリスクも増加させる(5)。
【0004】
現在、GDMの診断基準について国際的な合意はない。国際糖尿病・妊娠学会(the International Association of Diabetes and Pregnancy Study Group:IADPSG)による1つの診断基準は、経口グルコース負荷試験閾値が≧5.1mmol/L(空腹時血漿グルコース)、又は75g投与後1時間のグルコースレベルが≧10mmol/L又は2時間後に≧8.5mmol/Lである。GDMに対するニュージーランド保健省(The New Zealand Ministry of Health)ガイドラインの定義では、より高いベースラインと2時間のグルコース試験閾値(空腹時血漿グルコース≧5.5mmol/L又は75g投与後2時間のグルコースレベル≧9mmol/L)が指定されている(1)。
【0005】
GDMの現在の治療又は予防は、一般に被験体の健康的なライフスタイルの維持に基づいている。GDMの予防には、食事制限や定期的な運動を通して、妊娠中の健康な体重と血糖を維持することが含まれる。治療はまた、毎日の血中グルコース検査及びインスリン注射も含む。食事カウンセリングは、GDMを予防するために現在使用されている別の方法である。
【0006】
肥満及び関連疾患、特にGDMを治療又は予防するのに有用な方法及び組成物、特に他の乳酸菌を利用するか又はこれを含む方法及び組成物が依然として必要とされている。また、食事の変更及びカウンセリングに依存しない、GDMを治療又は予防するための方法及び組成物も必要とされている。GDM関連リスク又はGDMの続発症を予防又は改善するための方法及び組成物もまた望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、これらの必要条件のうちの1つ又はそれ以上を何らかの方法で達成すること、又は少なくとも国民に有用な選択を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において本発明は、被験体におけるGDMを治療又は予防する方法であって、必要とする被験体への、1997年8月18日付けのラクトバシルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)HN001、AGAL寄託番号NM97/09514の投与を含む方法を提供する。
【0009】
1つの実施態様において、エル・ラムノサス(L. rhamnosus)HN001は、生理学的に許容し得る希釈剤、補助剤、担体、又は賦形剤との組成物の形態で投与される。
【0010】
1つの実施態様において、HN001は、投与される唯一のプロバイオティクス細菌である。
【0011】
1つの実施態様において、HN001は、1種又はそれ以上のプレバイオティクスと共に投与される。
【0012】
1つの実施態様において、前記生理学的に許容し得る希釈剤、補助剤、担体、又は賦形剤は食品である。1つの実施態様において、前記食品は、培養乳(cultured milk)、ヨーグルト、チーズ、乳飲料、又は粉ミルクである。
【0013】
あるいは前記組成物は医薬組成物であり、前記賦形剤又は希釈剤は医薬的に許容し得る希釈剤、補助剤、担体、又は賦形剤である。
【0014】
別の態様において本発明は、被験体における1種又はそれ以上のGDM関連リスク又は1種又はそれ以上のGDMの続発症を治療又は予防する方法であって、必要とする被験体への、1997年8月18日付けのラクトバシルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)HN001、AGAL寄託番号NM97/09514の投与を含む方法を提供する。
【0015】
被験体が胎児被験体である実施態様において、1種又はそれ以上のGDM関連リスク又は1種又はそれ以上のGDMの続発症を治療又は予防する方法は、胎児被験体に、エル・ラムノサスHN001又はエル・ラムノサスHN001を含む組成物を投与することを含む。そのような実施態様において、被験体への投与は間接投与と見なすことができることは理解されるであろう。1つの実施態様において、組成物は、母体調製乳(maternal formula)又は母体サプリメントである。
【0016】
被験体が新生児、乳児、又は小児被験体である特定の実施態様において、1種又はそれ以上のGDM関連リスク又は1種又はそれ以上のGDMの続発症を治療又は予防する方法は、エル・ラムノサスHN001を含む組成物を被験体に投与することを含む。そのような実施態様において、被験体への投与は直接投与と見なすことができることは理解されるであろう。
【0017】
被験体が母乳育児中の新生児、乳児、又は小児被験体であるような他の実施態様において、1種又はそれ以上のGDM関連リスク又は1種又はそれ以上のGDMの続発症を治療又は予防する方法は、エル・ラムノサスHN001又はエル・ラムノサスHN001を含む組成物を被験体の母親に投与することを含む。そのような実施態様において、被験体への投与は直接投与と見なすことができることは理解されるであろう。
【0018】
組成物は、調製乳、例えば、そのような組成物の低アレルギー性の実施態様を含む、母体調製乳、フォローオン調製乳(follow-on formula)、成長期調製乳(growing-up formula)、又はダイエット製品であり得る。
【0019】
被験体が成人被験体である好適な実施態様において、方法はエル・ラムノサスHN001を含む組成物を被験体に投与することを含む。好ましくは、組成物はサプリメント、調製乳、ダイエット製品、又は食品である。
【0020】
特定の実施態様において、エル・ラムノサスHN001は生殖能力がある形態、好ましくは生殖能力がある形態及び量である。他の実施態様において、エル・ラムノサスHN001は、死滅、溶解、分画(fractionated)、又は弱毒化されている。
【0021】
本発明はさらに、GDMを治療又は予防するための、あるいは1種又はそれ以上のGDM関連リスク、又は1種又はそれ以上のGDMの続発症を治療又は予防するためのエル・ラムノサスHN001又はその誘導体を、及びGDMを治療又は予防するための、又は1種又はそれ以上のGDM関連リスク、又は1種又はそれ以上のGDMの続発症を治療又は予防するための組成物の製造における、エル・ラムノサスHN001又はその誘導体を提供する。組成物は、例えば食品又は医薬品を含む、下記のような組成物であり得る。
【0022】
本発明はまた、本発明の組成物、例えば被験体におけるGDMを治療又は予防するための組成物の、製造におけるエル・ラムノサスHN001の使用も企図することが理解されるであろう。
【0023】
1つの実施態様において、組成物は経口投与に適している。他の実施態様において、組成物は非経口投与に適している。胎児被験体における1種又はそれ以上のGDM関連リスク又は1種又はそれ以上のGDMの続発症を予防することに関する実施態様において、組成物は妊娠中の母親への経口投与に適している。
【0024】
様々な実施態様において、本方法は、GDMの高いリスクを有する被験体におけるGDMを治療又は予防する方法である。一例ではこの方法は、以前GDMに罹患したことのある被験体におけるGDMを治療又は予防する方法である。一例ではこの方法は、35才を超える被験体、例えば受胎時に35才を超える被験体におけるGDMを治療又は予防する方法である。別の例においてこの方法は、以前妊娠したことのある被験体におけるGDMを治療又は予防する方法である。
【0025】
様々な実施態様において、被験体は30kg/m2未満のBMIを有する。
【0026】
1つの実施態様において、この方法は、有効量のHN001又はその誘導体をそれを必要とする被験体に投与することを含む、以前GDMに罹患したことがある被験体におけるGDMの再発を予防する方法である。
【0027】
1つの実施態様において、この方法は、妊娠の最初の3カ月間の後にHN001の投与を開始することを含む。1つの実施態様において、HN001の投与は妊娠14~16週の間に始まる。
【0028】
1つの態様において、本発明は、有効量のHN001又はその誘導体をそれを必要とする被験体に投与することを含む、被験体における空腹時平均血中グルコースレベルを低下させる方法に関する。
【0029】
1つの実施態様において、空腹時平均血中グルコースレベルは約4.35mmol/L未満である。
【0030】
本発明はまた、広義には、個別に又は集合的な、本願明細書において参照されるか又は示される部分、要素、及び特徴に、ならびに任意の2つまたはそれ以上の前記部分、要素、又は特徴の任意の又はすべての組み合わせにあると言うことができ、そして、本発明が関連する技術分野において既知の等価物を有する特定の整数が本明細書に記載されている場合、そのような既知の等価物は、それらがあたかも個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれるとみなされる。
【0031】
本明細書で使用される「含む」という用語は、「少なくとも一部は~からなる」を意味する。「含む」という用語を含む本明細書中の各記載を解釈するとき、この用語が対象とする特徴以外の特徴も存在することができる。「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの関連用語も同様に解釈されるべきである。
【0032】
特許明細書、他の外部文書、又は他の情報源を参照した本明細書では、これは一般に、本発明の特徴を論じるための文脈を提供することを目的としている。特に明記しない限り、そのような外部文書への言及は、そのような文書又はそのような情報源がいかなる法域においても、そのような外部文書が、先行技術であること、又は当技術分野における一般常識の一部をなすことの承認として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、試験を通しての試験参加者の状態の図である。
【
図2】
図2は、HN001と、A)年齢35才以上対35才未満、B)BMI 30kg/m
2以上対30kg/m
2未満、C)GDMの病歴、D)登録以来の全身性抗生物質の使用、で層別されたGDMとの関連を示す。
【
図3】
図3は、サブグループ毎にGDM罹患率のプロットを示す。左のプロットは、妊娠経験のある被験体対妊娠未経験の被験体に対するHN001投与の効果(出産歴(parity)、左)を示し、そして右のプロットは、35才を超える被験体対35才未満の被験体に対するHN001投与の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、GDMの発症率及び重症度に対する乳酸菌エル・ラムノサスHN001の投与の有益な効果を初めて認識している。
【0035】
従って第1の態様において本発明は、1997年8月18日付けのAGAL寄託番号NM97/09514のラクトバシルス・ラムノサスHN001又はその誘導体の、それを必要とする被験体への投与を含む、被験体のGDMを治療又は予防する方法を提供する。
【0036】
さらなる態様において本発明はまた、それを必要とする被験体へのラクトバシルス・ラムノサスHN001又はその誘導体の投与を含む、被験体におけるGDM関連リスク又はGDMの続発症を治療又は予防する方法を提供する。妊娠被験体におけるGDM関連リスクは、例えば、特に限定されるものではないが、高血圧、尿路感染症、帝王切開、及び2型糖尿病のリスク上昇である。胎児(fetal)、新生児(neonatal)、乳児(infant)、小児(child)、又は成人の被験体(特に、その母親が子宮内で期間中にGDMに罹患していた被験体)におけるGDM関連リスク又はGDMの続発症は、例えば、特に限定されるものではないが、早産、肩甲難産、巨大児、先天性欠損症、及び新生児の合併症、例えば低血糖、黄疸、及び呼吸困難、2型糖尿病、心血管疾患、肥満、及び代謝の問題である。
【0037】
様々な投与経路及び投与方法が考えられるが、経口投与に適した組成物中などのエル・ラムノサスHN001の経口投与が現在好ましい。当然のことながら、特定の状況において他の投与経路及び投与方法が利用され得るか又は好ましい場合があることが理解されるであろう。例えば、死滅した又は弱毒化されたエル・ラムノサスHN001又はその誘導体を含む組成物には、非経口経路が利用され得る。
【0038】
用語「経口投与」は、経口投与、口腔内投与、腸内投与、及び胃内投与を含む。
【0039】
用語「非経口投与」は、特に限定されるものではないが、局所投与(任意の皮膚、表皮、又は粘膜表面への投与を含む)、皮下投与、静脈内投与、腹腔内投与、及び筋肉内投与を含む。
【0040】
「被験体」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは哺乳動物の伴侶動物、又はヒトである。好ましい伴侶動物には、猫、犬、及び馬が含まれる。1つの実施態様において、ヒトは、成人、小児、乳児、新生児、又は胎児である。様々な実施態様において、ヒトの小児、乳児、又は新生児は、母乳育児の小児、乳児、又は新生児である。
【0041】
「治療する」という用語及びその派生語は、それらの可能な限り広い意味で解釈されるべきである。この用語は、被験体が完全に回復するまで治療されることを意味すると解釈されるべきではない。すなわち「治療する」は、症状の発症又は特定の状態の重症度の改善及び/又は予防を広く含む。
【0042】
治療は予防的治療を含むこと、例えば予想された又は確立されたGDMの高いリスクを有する被験体、及び/又は妊娠しようとしているかもしくは最近妊娠した被験体などの被験体の予防的治療を含み、又は本発明の組成物を胎児被験体の母親に投与することによる組成物の間接投与による、胎児被験体における1種又はそれ以上のGDM関連リスク又は1種又はそれ以上のGDMの続発症の予防的治療を含む、ことは理解されるであろう。
【0043】
別の例において、1種又はそれ以上のGDM関連リスク又は1種又はそれ以上のGDMの続発症の予防的治療は、本発明の組成物を被験体の母乳育児の母親に投与することによる、組成物の間接投与による、新生児、乳児、又は小児被験体の予防的治療である。
【0044】
治療は、例えば本発明の組成物を被験体の母親に投与することによる組成物の間接投与による、新生児、乳児、又は小児被験体の治療を含む、GDM又はGDMに関連するリスクの1種又はそれ以上のリスクの治療などの、治療的治療を含むことがさらに理解されるであろう。
【0045】
従って本発明は、妊娠被験体へのエル・ラムノサスHN001又はエル・ラムノサスHN001を含む組成物の投与を含む、妊娠被験体におけるGDMを治療又は予防する方法を提供する。
【0046】
特定の実施態様において、妊娠被験体は、高齢、例えば35才以上である。
【0047】
特定の実施態様において、妊娠被験体はGDMの病歴を有する。
【0048】
特定の実施態様において、エル・ラムノサスHN001又はエル・ラムノサスHN001を含む組成物は、妊娠14週~16週から出産まで投与される。
【0049】
特定の実施態様において、エル・ラムノサスHN001又はエル・ラムノサスHN001を含む組成物は、妊娠14~16週から分娩後6ヶ月まで投与される。
【0050】
従って本発明は、エル・ラムノサスHN001又はエル・ラムノサスHN001を含む組成物を被験体の母親に投与することを含む、胎児被験体における1種又はそれ以上のGDM関連リスク又は1種又はそれ以上のGDMの続発症を予防する方法を提供する。
【0051】
また、エル・ラムノサスHN001又はL.ラムノサスHN001を含む組成物を被験者の母親に投与することを含む、新生児、乳児、又は小児被験体における1種又はそれ以上のGDM関連リスク又は1種又はそれ以上のGDMの続発症を治療又は予防する方法も提供される。
【0052】
また、エル・ラムノサスHN001からなるか又は本質的になる組成物を投与することを含む、乳児又は小児被験体における1種又はそれ以上のGDM関連リスク又は1種又はそれ以上のGDMの続発症を治療する方法も企図される。
【0053】
特定の実施態様において、乳児又は小児は1才以上の年齢である。
【0054】
特定の実施態様において、乳児又は小児は、食物感作された乳児又は小児である。
【0055】
特定の実施態様において、乳児又は小児は、乳児又は小児の母親における以前のGDMの発症のために、1種又はそれ以上のGDM関連リスク又は1種又はそれ以上のGDMの続発症のリスクがあると見なされる。
【0056】
1 ラクトバシルス・ラムノサスHN001
出願人のPCT国際出願PCT/NZ98/00122(WO99/10476として公開され、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、ラクトバシルス・ラムノサスHN001の凍結乾燥培養物は、オーストラリア政府分析研究所(the Australian Government Analytical Laboratories:AGAL)であるニューサウスウェールズ地域研究所(The New South Wales Regional Laboratory, 1 Suakin Street, Pymble, NSW 2073)に、1997年8月18日に寄託され、寄託番号NM97/09514を付与された。このブダペスト条約で認定された寄託機関は、現在はAGALとは呼ばれず、オーストラリア国立測定研究所(the National Measurement Institute of Australia:NMIA)と呼ばれる。エル・ラムノサスHN001のゲノム配列は、受け入れ番号NZ_ABWJ00000000でジーンバンク(GeneBank)から入手可能である。
【0057】
1.1 形態学的性質
エル・ラムノサスHN001の形態学的性質を以下に記載する。
【0058】
MRSブロス中で増殖させた場合、鎖状に四角い端部を有する、通常0.7×1.1×2.0~4.0μmの短~中ロッド。
【0059】
グラム陽性、非運動性、非胞子形成性、カタラーゼ陰性通性嫌気性桿菌であり、最適生育温度は37±1℃で至適pHは6.0~6.5である。これらはヘテロ発酵性の通性嫌気性細菌であり、グルコースからガスは産生されない。
【0060】
1.2 発酵性
API 50 CH糖発酵キットを使用して、エル・ラムノサスHN001の炭水化物発酵パターンを決定し、5757177のスコアを得た(22の顕著な糖のスコアに基づく-PCT/NZ98/00122参照)。
【0061】
1.3 さらなる特性評価
エル・ラムノサスHN001株は、ヒト腸管上皮細胞に接着するその能力を含む、PCT/NZ98/00122に開示されている機能的属性により、及び食物摂取によって誘発された食細胞機能、抗体応答、ナチュラルキラー細胞活性、リンパ球増殖の改善又はインビトロモデル系によって、さらに特性評価することができる。エル・ラムノサスHN001の本体を確認するために使用することができる当業者に公知で利用可能な多種多様な方法があり、例示的な方法には、DNAフィンガープリント法、ゲノム分析、配列決定、ならびに関連するゲノム技術及びプロテオミクス技術が含まれることは、理解されるであろう。
【0062】
本明細書に記載されるように、本発明の特定の実施態様は、生きたエル・ラムノサスHN001を利用する。他の実施態様において、エル・ラムノサスHN001誘導体が利用される。
【0063】
本明細書で使用される用語「誘導体」及びその文法的等価物は、細菌(エル・ラムノサスHN001などの特定の細菌株に関する使用を含む)に関して使用される場合、細菌の又は細菌由来の変異体及びホモログ、死滅又は弱毒化された細菌、例えば、特に限定されるものではないが、加熱滅菌、溶解、分画、加圧滅菌、放射線照射、及びUV又は光処理された細菌など、及び細菌由来の材料、例えば、特に限定されるものではないが、細菌細胞壁組成物、細菌細胞溶解物、凍結乾燥細菌、細菌由来のプロバイオティクス因子などを企図し、ここで誘導体はプロバイオティクス活性を保持している。このような誘導体、例えば、特に限定されるものではないが、エル・ラムノサスHN001の1種又はそれ以上の突然変異体、又は1種又はそれ以上のプロバイオティクス因子、及び特に被験体への投与に適した誘導体(例えば組成物)を製造する方法は当該分野で公知である。
【0064】
上記のようなエル・ラムノサスHN001を同定するのに適した方法は、例えばエル・ラムノサスHN001の変異体又はホモログ、又は例えばエル・ラムノサスHN001由来のプロバイオティクス因子を含む、エル・ラムノサスHN001の誘導体を同定するのに同様に適していることが理解されるであろう。
【0065】
「プロバイオティクス因子」という用語は、プロバイオティクス活性の仲介に関与する細菌性分子を指し、特に限定されるものではないが、細菌性DNAモチーフ、表面タンパク質、低分子有機酸、多糖類、又はリポテイコ酸、及びペプチドグリカンなどの細胞壁成分、又はこれらの任意の2つ以上の混合物を含む。上記のように、これらの分子は明確には同定されておらず、そしていかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、プロバイオティクス生物が存在する場合にはこのような分子が存在するであろう。
【0066】
「プロバイオティクス活性」という用語は、特定の微生物が免疫系を刺激する能力を指す。プロバイオティクス微生物の種類及び活性レベルの測定は当業者に公知である。例えば、Mercenierら (2004)、Leyerら (2004)、またはCummingsら (2004)を参照されたい。例えば、プロバイオティクス活性は、PBMCサイトカイン分泌アッセイによって評価することができる。
【0067】
プロバイオティクス活性を保持することについての言及は、プロバイオティクス微生物の変異体もしくはホモログ、又は弱毒化もしくは死滅したプロバイオティクス微生物のようなプロバイオティクス微生物の誘導体が、なお有用なプロバイオティクス活性を有すること、又はプロバイオティクス微生物又はその誘導体を含む組成物が、有用なプロバイオティクス活性の維持を支持することができることを意味することを意図する。プロバイオティクス活性の仲介に関与する細菌性分子は明確には同定されていないが、可能性のある候補として提案されている分子には、細菌性DNAモチーフ、表面タンパク質、低分子有機酸、多糖類、及び細胞壁成分(例えばリポテイコ酸及びペプチドグリカン)が含まれる。これらは宿主免疫系の成分と相互作用して免疫調節効果をもたらすと考えられてきた。好ましくは保持された活性は、未処理の(すなわち、生きた又は非弱毒化)対照の活性の、少なくとも約35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、又は100%であり、有用な範囲は、これらの値のいずれかの間で選択することができる(例えば、約35~約100%、約50~約100%、約60~約100%、約70~約100%、約80~約100%、及び約90~約100%)。
【0068】
当技術分野で公知の従来の固体基質及び液体発酵技術を使用して、本明細書で企図されるようなエル・ラムノサスHN001を使用を可能にするのに十分な量で増殖させることができる。例えばエル・ラムノサスHN001は、例えばWO99/10476に記載されているような条件下で、栄養膜又は深部培養増殖技術を使用して、配合するためのバルクで製造することができる。簡単に述べると増殖は、生物の増殖に十分な任意の温度で好気的条件下で行われる。例えばエル・ラムノサスHN001については、30~40℃の温度範囲、好ましくは37℃が好適である。増殖培地のpHはわずかに酸性、好ましくは約6.0~6.5である。インキュベーション時間は、単離物が定常増殖期に達するのに十分である。
【0069】
エル・ラムノサスHN001細胞は、当技術分野で公知の方法、例えば、従来の濾過法又は沈降法(例えば、遠心分離法)によって回収することができるか、又はサイクロンシステムを使用して乾式で回収することができる。エル・ラムノサスHN001細胞は、直ちに使用するか、又は標準的な技術を使用して必要に応じて、-20℃~6℃、好ましくは-4℃で凍結乾燥又は冷蔵することによって保存することができる。
【0070】
2 組成物
本明細書で有用な組成物は、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、栄養補助食品、栄養製品、医療用食品、経腸又は非経口栄養製品、食事代替品、薬用化粧品、機能性食品、又は医薬品として配合することができる。適切な配合物は、本明細書の技術及び教示に関して、当業者によって調製され得る。
【0071】
1つの実施態様において、本明細書で有用な組成物は、細菌又は細菌誘導体を担持することができる任意の食用消費者製品を含む。適切な食用消費者製品の例としては、粉末、液体、菓子製品、例えば、粉末または液体の形態の、チョコレート、ゲル、アイスクリーム、再構成フルーツ製品、スナックバー、フードバー、ミューズリーバー、スプレッド、ソース、ディップ、乳製品、例えばヨーグルト及びチーズ、乳製品及び非乳製品の飲料を含む飲料(乳飲料やヨーグルト飲料など)、粉ミルク、乳製品及び非乳製品サプリメントを含むスポーツサプリメント、プロテインスプリンクルなどの食品添加物、毎日のサプリメント錠剤を含む栄養補助食品、離乳食やヨーグルト、および母体調製乳などの調製乳が挙げられ、そのような組成物の低アレルギー性例を含む。この実施態様内で、本明細書で有用な好ましい組成物は、粉末又は液体形態の母体調製乳であり得る。本明細書で有用な適切な機能性食品組成物は同様の形態で提供されてもよい。
【0072】
粉末又は液体形態の母体調製乳などの調製乳の例には、以下のものが含まれる。以下の配合物は単なる例示であり、そのような製品を配合するための既知の原理に従って変更がなされてもよいことは理解されるべきである。例えば、列記された乳製品タンパク質に非乳製品源のタンパク質を補足することができる。同様に、これらの製品の、タンパク質源が完全に又は部分的に加水分解されている低アレルギー性例が提供され得る。そのような加水分解物は当技術分野において公知である。本明細書で有用な母体調製乳の一例は、以下を含む(w/w):
30~60%の乳糖、
15~35%の植物油、
0~40%の脱脂粉乳、
0~40%の乳清タンパク質、例えばWPC又はWPI、好ましくは80%のWPC(WPC80)、
0.001~50%のエル・ラムノサスHN001。
【0073】
本明細書で有用な母体調製乳の別の例は、以下を含む(W/W):
40~60%の乳糖、
20~30%の植物油、
10~15%の脱脂粉乳、
6~8%の乳清蛋白質、好ましくはWPC80、
0.001~10%のエル・ラムノサスHN001。
【0074】
母体調製乳の別の例は、本明細書では以下を含む(W/W):
40~60%の乳糖、
20~30%の植物油、
10~15%の脱脂粉乳、
6~8%の乳清蛋白質、好ましくはWPC80、
0.001~5%のエル・ラムノサスHN001。
【0075】
本明細書で有用な母体調製乳の別の例は、以下を含む(W/W):
40~60%の乳糖、
20~30%の植物油、
10~15%の脱脂粉乳、
6~8%の乳清蛋白質、好ましくはWPC80
0.001~2%のエル・ラムノサスHN001。
【0076】
これらの調製乳のいずれも、0.1~4%w/w、好ましくは2~4%w/wの1種又はそれ以上のビタミンプレミックス、ミネラルプレミックス、レシチン、1種又はそれ以上の酸化防止剤、1種又はそれ以上の安定剤、1種又はそれ以上のヌクレオチド、又はこれらの任意の2種以上の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施態様において、これらの乳児用調製乳は、2700~3000kJ/Lを提供するように配合することができる。
【0077】
乳製品ベースの飲料(例えば乳飲料及びヨーグルト飲料)などの本発明の食用消費者製品の例は、エル・ラムノサスHN001又はその誘導体に加えて、典型的にはタンパク質源(例えば乳製品タンパク質源)、脂質源、炭水化物源を含み、及びこれらから構成されてよい。当業者によく知られているような香味剤、着色剤、及び他の添加剤、担体、又は賦形剤も含まれ得る。
【0078】
本発明での使用に適した食用消費者製品のさらなる例は、PCT国際出願PCT/AU2007/000265(WO2007/098564として公開)及びPCT国際出願PCT/AU2007/001698(WO2008/055296として公開)(これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているようなUnistraw(商標)送達システム(Unistraw International Limited, Australia)である。当業者であれば、エル・ラムノサスHN001及びその誘導体を、場合により1種またはそれ以上の追加のプロバイオティクス因子又はプロバイオティクス物質と一緒に、そのような送達システムで使用するための基材(例えば水溶性ビーズ)上にコーティングすることができることを理解するであろう。
【0079】
代替の実施態様において、本明細書で有用な組成物は、特に限定されるものではないが、経口又は非経口投与(局所、皮下、筋肉内、及び静脈内投与を含む)を含む任意の選択された経路による被験体への投与を可能にするように配合され得る。
【0080】
例えば、本発明に係る使用のための機能性食品組成物は、栄養補助食品(例えばカプセル剤、ミニバッグ、又は錠剤)又は食品(例えば、牛乳、ジュース、ソフトドリンク、ハーブティーバッグ、または菓子)でもよい。組成物はまた、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、又はアミノ酸などの他の栄養素も含み得る。組成物は、例えば錠剤、硬もしくは軟カプセル、水性もしくは油性懸濁液、又はシロップなどの経口使用に適した形態でも、又はプロピレングリコール水溶液若しくは緩衝水溶液などの非経口用途に適した形態でもよい。機能性組成物中の活性成分の量は、大部分は被験体の具体的な必要性に依存する。当業者によって認識されるように、この量は、投与経路、及び他のプロバイオティクス因子又はプロバイオティクス物質の可能性のある共使用に依存して変化する。
【0081】
ある実施態様において本発明の組成物は、所望のカロリー含有量になるように、例えば所望の量のエネルギー又は1日の推奨エネルギー摂取量の所望の割合を送達するように、配合することができることは、理解されるであろう。例えば食用消費者製品は、1食当たり約200~約2000kJ、又は1食当たり約500kJ~約2000kJ、又は1食当たり約1000~約2000kJを提供するように配合することができる。
【0082】
従って本発明に係る有用な医薬組成物は、意図する投与経路及び標準的な薬学的慣習を考慮して選択された適切な医薬的に許容し得る担体(賦形剤、希釈剤、補助剤、及びこれらの組み合わせを含む)を用いて配合し得る。例えば、本発明に係る有用な組成物は、粉末、液剤、錠剤、又はカプセル剤として経口的に、あるいは軟膏、クリーム、又はローションとして局所的に投与することができる。適切な製剤は、必要に応じて、乳化剤、抗酸化剤、香味剤、又は着色剤などの追加の薬剤を含むことができ、そして即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、パルス放出、又は制御放出に適合するように改変すれることができる。
【0083】
「医薬的に許容し得る担体」という用語は、特に限定されるものではないが、賦形剤、希釈剤、又は補助剤を含む担体を指すことを意図しており、医薬的に許容し得る担体は溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、及び等張剤及び吸収遅延剤、又はこれらの組み合わせを含み、これらは、本明細書に記載の化合物又は組成物の有効量を送達するのに十分な用量で投与した場合、組成物の活性を低下させることはなく毒性ではない本明細書に記載の組成物の成分として、被験体に投与することができる。製剤は、経口的、経鼻的、又は非経口的に(局所的、筋肉内、腹腔内、皮下、及び静脈内を含む)投与することができる。
【0084】
特定の実施態様において、本発明の組成物(例えば、本発明の機能性食品組成物又は医薬組成物など)は、カプセル剤として提供され得る。カプセル剤は、ゼラチン又はセルロースなどの任意の標準的な医薬上許容し得る材料を含み得る。錠剤は従来の手順に従って、活性成分と固体担体及び滑沢剤との混合物を圧縮することにより配合することができる。固体担体の例としては、デンプン及び糖ベントナイトが挙げられる。活性成分はまた、例えば乳糖又はマンニトールなどの結合剤、従来の充填剤、及び錠剤化剤を含有するハードシェル錠剤又はカプセル剤の形態で投与することもできる。医薬組成物はまた、非経口経路によって投与することもできる。非経口剤形の例には、活性物質の水溶液、等張食塩水、もしくは5%グルコース、または他の公知の医薬的に許容し得る賦形剤が含まれる。シクロデキストリン又は当業者に公知の他の可溶化剤を、治療物質を送達するための賦形剤として利用することができる。
【0085】
特定の実施態様において本発明の組成物は、生きているエル・ラムノサスHN001を含む。そのような組成物を製造する方法は当技術分野において公知であり、そのような方法の1つが本明細書の実施例に例示される。
【0086】
他の実施態様において本発明の組成物は、1種又はそれ以上のエル・ラムノサスHN001誘導体を含む。再度、そのような組成物を製造する方法は当技術分野において公知であり、そして標準的な微生物学的及び薬学的慣習を利用し得る。
【0087】
そのような組成物には、例えば細菌の生存能力を改善又は維持するため、又はエル・ラムノサスHN001又は1種又はそれ以上のエル・ラムノサスHN001誘導体の治療効力を高めるために、広範囲の添加剤又は担体が含まれてもよいことは理解されるであろう。例えば界面活性物質、湿潤剤、保湿剤、粘着剤、分散剤、安定剤、浸透剤などの添加剤、及び細菌細胞の活力、増殖、複製、及び生存能力を改善するための、いわゆるストレス添加剤(例えば塩化カリウム、グリセロール、塩化ナトリウム、及びグルコース)、ならびにマルトデキストリンなどの抗凍結剤が含まれてもよい。添加剤はまた、長期保存中の微生物の生存能力を維持するのを助ける組成物、例えば未精製コーン油、又は外側に油及びワックスの混合物を含み内側に水、アルギン酸ナトリウム、び細菌を含む「反転」エマルジョンを含み得る。
【0088】
特定の実施態様において、エル・ラムノサスHN001は生殖能力がある形態及び量である。
【0089】
組成物は、例えばスクロース、フルクトース、グルコース、又はデキストロースを含む二糖などの炭水化物源を含み得る。好ましくは炭水化物源は、エル・ラムノサスHN001によって好気的又は嫌気的に利用され得るものである。
【0090】
このような実施態様において、組成物は、好ましくは約2週間を超えて、好ましくは約1ヶ月を超える、約2ヶ月を超える、約3ヶ月を超える、約4ヶ月を超える、約5ヶ月を超える、より好ましくは約6ヶ月を超える、最も好ましくは少なくとも約2年~約3年以上の期間、エル・ラムノサスHN001の生殖能力を支持することができる。
【0091】
特定の実施態様において、GDM又はGDM関連のリスク又はGDMの続発症を治療又は予防するための組成物は、エル・ラムノサスHN001と、プレバイオティック、例えばフルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、人乳オリゴ糖、及びこれらの組み合わせとを含むプロバイオティクス物質を含む。
【0092】
別の実施態様において、被験体におけるGDM又はGDM関連のリスク又はGDMの続発症を治療及び予防する方法は、エル・ラムノサスHN001とプレバイオティック物質、例えばフルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、人乳オリゴ糖、及びこれらの組み合わせとを含む組成物の有効量を、個体に投与することを含む。特定の実施態様において経口組成物は、摂取されたときに、被験体の消化管に集団を確立するのに十分な量のエル・ラムノサスHN001の投与を可能にするように配合される。確立された集団は、一時的な又は恒久的な集団であり得る。
【0093】
理論的には、1コロニー形成単位(cfu)が、被験体におけるエル・ラムノサスHN001の集団を確立するのに十分であるはずであるが、実際の状況では、そうするために最小数の単位が必要とされる。従って、生存活性のある生きたプロバイオティクス細菌の集団に依存する治療メカニズムについては、被験体に投与される単位の数が治療効果に影響を与えるであろう。
【0094】
本明細書の実施例に示されるように、本出願人は、1日につき6×109cfuのエル・ラムノサスHN001の投与量割合が、ヒト被験体の消化管において集団を確立するのに十分であると決定した。従って一例では、投与用に配合された組成物は、1日あたり少なくとも約6x109cfuのエル・ラムノサスHN001を提供するのに十分であろう。
【0095】
被験体の消化管におけるエル・ラムノサスHN001などの腸内細菌叢の集団の存在を判定するための方法は当技術分野において公知であり、そのような方法の例は本明細書に提示されている。特定の実施態様において、エル・ラムノサスHN001の集団の存在は、例えば被験体から得られた1つ又はそれ以上の試料を分析し、前記試料中のエル・ラムノサスHN001の存在又は量を測定することによって直接決定することができる。他の実施態様において、エル・ラムノサスHN001の集団の存在は、例えば被験体から得られた試料中のGDM症状の低下、又は他の腸内細菌叢の数の減少を観察することによって、間接的に決定することができる。そのような方法の組み合わせもまた想定される。
【0096】
本発明に係る有用な組成物の有効性は、インビトロ及びインビボの両方で評価することができる。例えば、以下の例を参照のこと。簡単に説明すると組成物は、GDMを予防又は治療する能力、又は耐糖能を調節する能力について試験することができる。インビボ試験のためには、組成物を動物モデル(例えばマウス)に給餌もしくは注射するか、又はヒト被験体(妊娠女性を含む)に投与することができ、そして、次にGDM又は耐糖能及び関連症状の発症率及び重症度に対するその効果が評価される。その結果に基づいて、適切な投与量範囲及び投与経路を決定することができる。
【0097】
適切な用量を計算する方法は、組成物中の活性物質の性質に依存し得る。例えば組成物が、生きているエル・ラムノサスHN001を含む場合、用量は、存在する生きた細菌の数を参照して計算することができる。例えば、本明細書の実施例に記載されるように、1日に投与されるコロニー形成単位(cfu)の数を参照することによって、用量を設定することができる。組成物が1種又はそれ以上のエル・ラムノサスHN001誘導体を含む例では、存在するエル・ラムノサスHN001誘導体の量又は濃度を参照することによって、用量を計算することができる。例えば、エル・ラムノサスHN001細胞溶解物を含む組成物の場合、組成物中に存在するエル・ラムノサスHN001細胞溶解物の濃度を参照することによって、用量を計算することができる。
【0098】
一般的な例として、1日につき体重1kg当たり約1×106cfu~約1×1012cfuのエル・ラムノサスHN001、好ましくは約1×106cfu~約1×1011cfu/kg/日、約1×106cfu~約1×1010cfu/kg/日、約1×106cfu~約1×109cfu/kg/日、約1×106cfu~約1×108cfu/kg/日、約1×106cfu~約5×107cfu/kg/日、又は約1×106cfu~約1×107cfu/kg/日の投与が考えられる。好ましくは、1日につき体重1kg当たり約5×106cfu~約5×108cfuのエル・ラムノサスHN001、好ましくは約5×106cfu~約4×108cfu/kg/日、約5×106cfu~約3×108cfu/kg/日、約5×106cfu~約2×108cfu/kg/日、約5×106cfu~約1×108cfu/kg/日、約5×106cfu~約9×107cfu/kg/日、約5×106cfu/kg/日~約8×107cfu/kg/日、約5×106cfu/kg/日~約7×107cfu/kg/日、約5×106cfu/kg/日~約6×107cfu/kg/日、約5×106cfu/kg/日~約5×107cfu/kg/日、約5×106cfu~約4×107cfu/kg/日、約5×106cfu~約3×107cfu、約5×106cfu~約2×107cfu/kg/日、又は約5×106cfu~約1×107cfu/kg/日の投与が考えられる。
【0099】
特定の実施態様において、定期的用量は、被験体の体重又は他の特徴によって変化する必要はない。そのような例では、1日につき約1×106cfu~約1×1013cfuのエル・ラムノサスHN001、好ましくは約1×106cfu~約1×1012cfu/日、約1×106cfu~約1×1011cfu、約1×106cfu~約1×1010cfu/日、約1×106cfu~約1×109cfu/日、約1×106cfu~約1×108cfu/日、約1×106cfu~約5×107cfu/日、又は約1×106cfu~約1×107cfu/日の投与が考えられる。好ましくは、1日につき体重1kg当たり約5×107cfu~約5×1010cfuのエル・ラムノサスHN001、好ましくは約5×107cfu~約4×1010cfu/日、約5×107cfu~約3×1010cfu/日、約5×107cfu~約2×1010cfu/日、約5×107cfu~約1×1010cfu/日、約5×107cfu~約9×109cfu/日、約5×107cfu~約8×109cfu/日、約5×107cfu~約7×109cfu/日、約5×107cfu~約6×109cfu/日、約5×107cfu~約5×109cfu/日、約5×107cfu~約4×109cfu/日、約5×107cfu~約3×109cfu/日、約5×107cfu~約2×109cfu/日、又は約5×107cfu~約1×109cfu/日の投与が考えられる。
【0100】
例えば、本明細書の実施例に示されるように、凍結乾燥されたエル・ラムノサスHN001の有効用量は、1日につき6×109cfuであると決定された。
【0101】
組成物は、好ましくは有効量のエル・ラムノサスHN001又は1種又はそれ以上のその誘導体の有効な用量の投与を可能にするように配合されることは理解されるであろう。投与される組成物の用量、投与期間、及び一般的な投与計画は、被験体の症状の重篤度、治療される障害の種類、選択された投与方法、及び被験体の年齢、性別、及び/又は全身の健康状態などの変量に応じて、被験体間で異なり得る。さらに上記のように、適切な用量は、組成物中の活性物質の性質及び配合の方法に依存し得る。例えば、組成物が生きているエル・ラムノサスHN001を含む場合、用量は、存在する生きた細菌の数を参照して計算することができる。例えば、本明細書の実施例に記載されるように、用量は、1日につき投与されるコロニー形成単位(cfu)の数を参照することによって設定することができる。組成物が1種又はそれ以上のエル・ラムノサスHN001誘導体を含む例では、用量は、1日につき投与されるエル・ラムノサスHN001誘導体の量又は濃度を参照することによって計算することができる。例えば、エル・ラムノサスHN001細胞溶解物を含む組成物の場合、用量は、組成物中に存在するエル・ラムノサスHN001細胞溶解物の濃度を参照することによって計算することができる。
【0102】
好ましい組成物は、便利な形態及び量で有効量を提供するように配合されることは理解されるであろう。特に限定されるものではないが、定期的な用量が被験体の体重又は他の特徴によって変化する必要のない実施態様などの特定の実施態様において、組成物は単位投与に配合することができる。投与は、毎日1回の投与又は多数回の分割量の投与を含み得ることは理解されるであろう。例えば本明細書の実施例に示すように、有効量のエル・ラムノサスHN001を、経口投与用のカプセルに配合することができる。
【0103】
しかしながら、一般的な例として本発明者らは、1日につき本明細書で有用な組成物を体重1kg当たり約1mg~約1000mg、好ましくは約50~約500mg/kg/日、あるいは約150~約410mg/kg/日、又は約110~約310mg/kg/日の投与を企図している。1つの実施態様において本発明者らは、本明細書で有用な組成物の体重1kgあたり約0.05mg~約250mgの投与を企図している。
【0104】
乳児用調製乳、フォローオン調製乳、又は成長期調製乳の例を本明細書に提示する。これらのような組成物は、組成物中に存在するエル・ラムノサスHN001の濃度が、容易に測定可能な量の組成物を用いて有効用量を調製できるように、配合することができる。例えば組成物が乳児用調製乳である場合などの特定の実施態様において、エル・ラムノサスHN001は、例えば一般的に乳児用調製乳で提供されているように、計量スプーンなどを用いて投与用の調製乳を調製する場合、親又は世話する者によって容易に測定され得る量の調製乳中で有効量を供給するのに十分な濃度で提供される。そのような組成物に使用するためのエル・ラムノサスHN001の例示的で非限定的な濃度は、調製乳1グラム当たり約5×105cfu~調製乳1グラム当たり約109cfu、又は調製乳1グラム当たり約106cfu~調製乳1グラム当たり約108cfuを含む。
【0105】
1つの実施態様において、本明細書で有用な組成物は、少なくとも約0.1、0.2、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、99.5、99.8又は99.9重量%のエル・ラムノサスHN001又はその誘導体を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなり、有用な範囲は、これらの前述の値のいずれかの間で選択されてもよい(例えば、約0.1~約50%、約0.2~約50%、約0.5~約50%、約1~約50%、約1~約50%、約5~約50%、約10~約50%、約15~約50%、約20~約50%、約25~約50%、約30~約50%、約35~約50%、約40~約50%、約45~約50%、約0.1~約60%、約0.2~約60%、約0.5~約60%、約1~約60%、約5~約60%、約10~約60%、約15~約60%、約20~約60%、約25~約60%、約30~約60%、約35~約60%、約40~約60%、約45~約60%、約0.1~約70%、約0.2~約70%、約0.5~約70%、約1~約70%、約5~約70%、約10~約70%、約15~約70%、約20~約70%、約25~約70%、約30~約70%、約35~約70%、約40~約70%、約45~約70%、約0.1~約80%、約0.2~約80%、約0.5~約80%、約1~約80%、約5~約80%、約10~約80%、約15~約80%、約20~約80%、約25~約80%、約30~約80%、約35~約80%、約40~約80%、約45~約80%、約0.1~約90%、約0.2~約90%、約0.5~約90%、約1~約90%、約5~約90%、約10~約90%、約15~約90%、約20~約90%、約25~約90%、約30~約90%、約35~約90%、約40~約90%、約45~約90%、約0.1~約99%、約0.2~約99%、約0.5~約99%、約1~約99%、約5~約99%、約10~約99%、約15~約99%、約20~約99%、約25~約99%、約30~約99%、約35~約99%、約40~約99%、及び約45~約99%)。
【0106】
1つの実施態様において、本明細書で有用な組成物は、少なくとも約0.001、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19グラムのエル・ラムノサスHN001又はその誘導体を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなり、有用な範囲は、これらの前述の値のうちのいずれかの間で選択されてよい(例えば、約0.01~約1グラム、約0.01~約10グラム、約0.01~約19グラム、約0.1~約1グラム、約0.1~約10グラム、約0.1~約19グラム、約1~約5グラム、約1~約10グラム、約1~約19グラム、約5~約10グラム、及び約5~約19グラム)。
【0107】
1つの実施態様において、エル・ラムノサスHN001又はその誘導体を含む本明細書で有用な組成物は、さらに、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99、又は99.9重量%の新鮮な全乳又は乳誘導体を含み、有用な範囲は、これらの前述の値のいずれかの間で選択されてよい(例えば、約0.1~約50%、約0.2~約50%、約0.5~約50%、約1~約50%、約5~約50%、約10~約50%、約15~約50%、約20%~約50%、約25%~約50%、約30%~約50%、約35%~約50%、約40%~約50%、及び約45%~約50%)。好ましくは乳誘導体は、再結合、粉末化、又は新鮮な脱脂粉乳、再結合又は再構成された全乳又は脱脂粉乳、脱脂粉乳濃縮物、脱脂粉乳残留物、濃縮乳、限外ろ過乳残留物、乳タンパク質濃縮物(MPC)、乳タンパク質分離物(MPI)、カルシウム欠乏乳タンパク質濃縮物(MPC)、低脂肪乳、低脂肪乳タンパク質濃縮物(MPC)、カゼイン、カゼイン酸塩、乳脂肪、クリーム、バター、ギー、無水乳脂肪(AMF)、バターミルク、バターセーラム、ベータセーラム、硬乳脂肪画分、軟乳脂肪画分、スフィンゴ脂質画分、乳脂肪球状膜画分、乳脂肪球状膜脂質画分、リン脂質画分、複合脂質画分、初乳、初乳画分、初乳タンパク質濃縮物(CPC)、初乳乳清、初乳由来の免疫グロブリン画分、乳清(スイート乳清、乳酸乳清、鉱酸乳清、又は再構成乳清粉末を含む)、乳清タンパク質分離物(WPI)、乳清タンパク質濃縮物(WPC)、乳又は初乳処理流に由来する組成物、任意の乳又は初乳処理流の限外濾過又は精密濾過により得られる保持液又は透過液に由来する組成物、乳又は初乳処理流のクロマトグラフィー(特に限定されるものではないが、イオンクロマトグラフィー及びゲル浸透クロマトグラフィーを含む)分離により得られる破過物又は吸着画分に由来する組成物、多段階分画、分別結晶化、溶媒分別、超臨界分別、近臨界分別、蒸留、遠心分別、修飾物(例えば石鹸又は乳化剤)による分別、により調製される抽出物を含むこれらの乳誘導体のいずれかの抽出物、これらの誘導体のいずれかの加水分解物、及び加水分解物の画分、及び加水分解物の画分及び/又は非加水分解画分の組み合わせを含むこれらの誘導体の任意の2種以上の任意の組み合わせ、から選択される。これらの誘導体の供給源は、乳又は初乳又はこれらの組み合わせであり得ることを理解すべきである。
【0108】
投与用に配合された組成物中のエル・ラムノサスHN001又はその1種又はそれ以上の誘導体の濃度は、例えば流通又は貯蔵用に配合された組成物中の濃度よりも低くてもよく、そして保存及びその後の投与に適した組成物への配合のために配合された組成物は、治療的に有効な用量で投与され得るように、投与のための前記組成物を十分に濃縮させるのにも充分でなければならないことは、明らかであろう。
【0109】
本明細書で有用な組成物は、単独で又は1種又はそれ以上の他の治療物質と組み合わせて使用することができる。治療物質は、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、食品成分、飲料成分、栄養補助食品、栄養製品、医療用食品、機能性食品、薬剤、又は医薬品であり得る。治療物質は、プロバイオティクス物質又はプロバイオティクス因子であり得、そして好ましくは、GDM、又は1種又はそれ以上のGDMの症状、又は1種又はそれ以上のGDM関連リスク、又は1種又はそれ以上のGDMの続発症を治療、予防、又は軽減するのに有効である。
【0110】
別の治療物質と組み合わせて使用される場合、本明細書で有用な組成物及び他の治療物質の投与は、同時又は逐次的でもよい。同時投与は、全成分を含む単一剤形の投与又は別々の剤形の実質的に同時の投与を含む。逐次投与は、好ましくは本明細書で有用な組成物及び他の治療物質が提供される期間に重複があるように、異なるスケジュールによる投与を含む。
【0111】
本明細書で有用な組成物を別々に、同時に、又は逐次的に投与することができる適切な物質には、1種又はそれ以上のプロバイオティクス物質、1種又はそれ以上のプレバイオティック物質1種又はそれ以上のリン脂質、1種又はそれ以上のガングリオシド、当技術分野において公知の他の適切な物質、そしてこれらの組合せが含まれる。有用なプレバイオティクス物質には、ガラクトオリゴ糖(GOS)、短鎖GOS、長鎖GOS、フルクトオリゴ糖(FOS)、人乳オリゴ糖(HMO)、短鎖FOS、長鎖FOS、イヌリン、ガラクタン、フルクタン、ラクツロース、及びこれらの任意の2つまたはそれ以上の混合物が含まれる。いくつかのプレバイオティクス物質は、Boehm G and Moro G (Structural and Functional Aspects of Prebiotics Used in Infant Nutrition, J. Nutr. (2008) 138(9):1818S-1828S)(参照により本明細書に組み入れられる)による総説がある。他の有用な物質は、完全に又は部分的に不溶性又は消化しにくい食物繊維などの食物繊維を含み得る。従って、1つの実施態様において、エル・ラムノサスHN001又はその誘導体は、1種又はそれ以上のプロバイオティクス物質、1種又はそれ以上のプレバイオティクス物質、1種又はそれ以上の食物繊維源、1種又はそれ以上のガラクトオリゴ糖、1種又はそれ以上の短鎖ガラクトオリゴ糖、1種又はそれ以上の長鎖ガラクトオリゴ糖、1種又はそれ以上のフルクトオリゴ糖、1種又はそれ以上の短鎖フルクトオリゴ糖、1種又はそれ以上の長鎖フルクトオリゴ糖、1種又はそれ以上の人乳オリゴ糖、イヌリン、1種又はそれ以上のガラクタン、1種又はそれ以上のフルクタン、ラクツロース、又はこれらの任意の2つ以上の任意の混合物から選択される1種又はそれ以上の物質とともに、別々に、同時に、又は逐次的に投与され得る。
【0112】
1つの実施態様において、本明細書で有用な組成物は、乳清タンパク質、乳清タンパク質画分(酸性もしくは塩基性乳清タンパク質画分又はこれらの組み合わせを含む)、グリコマクロペプチド、ラクトフェリン、鉄-ラクトフェリン、機能性ラクトフェリン変種、機能性ラクトフェリン断片、ビタミンDもしくはカルシウム、又はこれらの組合せなどの乳成分を含むか、又はこれらと同時に又は逐次的に投与される。有用な乳成分含有組成物は、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、栄養補助食品、栄養製品、医療用食品、又は機能性食品などの組成物を含む。これらの成分が濃縮された乳画分もまた使用することができる。有用なラクトフェリン、断片、及び組成物は、国際特許出願WO03/082921及びWO2007/043900に記載されており、両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0113】
上記に列記された追加の治療物質(食品ベースの物質及び医薬物質の両方)もまた、本発明に係る方法において使用することができ、本明細書で有用な組成物と、別々に、同時に、又は逐次的に投与されることは、理解されたい。
【0114】
1つの実施態様において、本明細書で有用な組成物は医薬的に許容し得る担体をさらに含む。別の実施態様において、組成物は、食品、飲料、食品添加物、飲料添加物、栄養補助食品、栄養製品、医療用食品、経腸栄養製品、非経口栄養製品、食事代替品、薬用化粧品、機能性食品、薬剤、又は医薬品であるか、これらとして配合される。1つの実施態様において組成物は、錠剤、カプレット剤、丸剤、硬もしくは軟カプセル剤、又はトローチ剤の形態である。1つの実施態様において組成物は、カシェ剤、散剤、調合可能な散剤、顆粒剤、懸濁剤、エリキシル剤、液剤、又は食品又は飲料(例えば水、牛乳、フルーツジュースを含む)に添加することができる任意の他の形態である。1つの実施態様において、組成物は、保存中又は投与後の組成物の分解を防止又は低減する1種又はそれ以上の成分(抗酸化剤など)をさらに含む。これらの組成物は、細菌又は細菌誘導体を運ぶことができる任意の食用消費者製品を含むことができ、加熱滅菌、加圧殺菌、溶解UV又は光処理、放射線照射、分画、又は他の方法で死滅又は弱毒化させた細菌を含む。適切な食用消費者製品の例には、水性製品、焼き菓子、チョコレートを含む菓子製品、ゲル、アイスクリーム、再構成フルーツ製品、スナックバー、フードバー、ミューズリーバー、スプレッド、ソース、ディップ、乳製品(ヨーグルト及びチーズを含む)、飲料(乳製品及び非乳製品ベースの飲料を含む)、牛乳、粉ミルク、スポーツサプリメント(乳製品及び非乳製品ベースのスポーツサプリメントを含む)、フルーツジュース、タンパク質スプリンクルなどの食品添加物、毎日のサプリメントタブレットを含む栄養補助食品、離乳食及びヨーグルト、及び粉末又は液体形態の調製乳(乳児用調製乳、フォローオン調製乳、又は成長期調製乳)が挙げられる。本明細書で有用な適切な機能性食品組成物は同様の形態で提供することができる。
【0115】
特定の被験体群への投与を目的として、本発明の様々な組成物を配合することができることは理解されるであろう。例えば、(例えば、胎児被験体又は母乳育児中の新生児、乳児、もしくは小児被験体に間接投与するための)妊娠中の母親に投与するのに適した組成物の配合物は、被験体に直接投与される組成物の配合物とは異なってもよい。予防的に投与される組成物の配合物は、GDM又はGDMの1つ又はそれ以上の症状が存在する場合、投与用に配合される組成物の製剤とは異なり得ることもまた理解されるべきである。
【0116】
1つの実施態様において、予防的使用のための組成物は、ラクトバシルス・ラムノサスGG、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(例えば、ラクトバシルス・アシドフィルス(LAVRI-A1)、ラクトバシルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(例えば、ラクトバシルス・ロイテリATCC55730)、又はビフィドバクテリア・ラクチス(Bifidobacteria lactis)(例えば、ビフィドバクテリア・ラクチスHN019株又はビフィドバクテリウム・ラクチスBb12)、又はこれらの任意の2種以上の組み合わせなどのプロバイオティクス物質をさらに含むか、又はエル・ラムノサスHN001はこれらと組合せて使用し得る。
【0117】
1つの実施態様において、予防的投与、特に予防的間接投与のための組成物は、ラクトバシルス・ラムノサスGG、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(例えば、ラクトバシルス・アシドフィルス(LAVRI-A1)、ラクトバシルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(例えば、ラクトバシルス・ロイテリATCC55730)、又はビフィドバクテリア・ラクチス(Bifidobacteria lactis)(例えば、ビフィドバクテリア・ラクチスHN019株)、又はこれらの任意の2種以上の組み合わせなどのプロバイオティクス物質をさらに含むか、又はエル・ラムノサスHN001はこれらと組合せて使用し得る。
【0118】
本明細書で使用される用語「予防的」及び文法的等価物は、GDM又はGDMの症状が明らかになる前の治療、使用、投与などを企図することは理解されるであろう。
【0119】
GDM又は1種又はそれ以上のGDMの症状を有する被験体の治療における使用のための実施態様において、組成物は、ラクトバシルス・ラムノサスGG、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(例えば、ラクトバシルス・アシドフィルス(LAVRI-A1)、ラクトバシルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(例えば、ラクトバシルス・ロイテリATCC55730)、又はビフィドバクテリア・ラクチス(Bifidobacteria lactis)(例えば、ビフィドバクテリア・ラクチスHN019株)、又はこれらの任意の2種以上の組み合わせなどのプロバイオティクス物質をさらに含むか、又はエル・ラムノサスHN001はこれらと組合せて使用し得る。
【0120】
本明細書で使用される用語「治療的」及び文法的等価物は、GDM又はGDMの症状が存在する場合の治療、使用、又は投与を企図する。
【0121】
本明細書に開示されている数字の範囲(例えば、1~10)への言及はまた、その範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、10)への言及、及びその範囲内の任意の有理数の範囲(例えば2~8、1.5~5.5、及び3.1~4.7)も取り込むことが意図されており、従って、本明細書に明示的に開示されているすべての範囲のすべての部分範囲は、本明細書に明示的に開示されている。これらは具体的に意図されていることの単なる例であり、列記された最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組み合わせは、本出願において同様に明示的に述べられているとみなされるべきである。
【0122】
3 妊娠糖尿病
肥満の世界的な傾向に伴い、妊娠糖尿病(GDM)の比率も先進国と発展途上国の両方で増加している(10)。GDMは一般に、国や民族により妊娠全体の9%~26%の間で発症する。場合によっては、GDMの罹患率は36%にもなる。IADPSG(11)の診断基準を用いると、米国の妊婦の18%が妊娠中にGDMを発症する(10)。過去20年間で罹患率が増加するという強い傾向がある。
【0123】
GDMは、女性及び乳児の両方に対する短期及び長期の有害転帰(adverse outcomes)と関連しており、これには、母親の妊娠高血圧症、羊水過多症、子癇前症、発育過剰胎児の出産、器械的又は帝王切開分娩、及び母親の死亡が含まれる(10、12)。
【0124】
乳児の有害転帰には、早産、肩甲難産、巨大児、先天性欠損症、及び新生児の合併症、例えば低血糖、黄疸、及び呼吸困難などのが含まれる(10)。さらに、長期的には、GDMの女性はメタボリックシンドローム(13)、2型糖尿病、及び心血管疾患のリスクが高くなる。GDMの女性の子孫は、乳児の体重にかかわらず、インスリン分泌の変化及び脂質プロファイルの変化の証拠を伴って、糖尿病、肥満、及び代謝の問題のリスクが高くなる(14)。
【0125】
食事、体重減少、及び運動に関するGDMを予防するためのライフスタイルへの介入は、しばしば失敗する(10、15)。そのため、GDMの一次予防は、多世代にわたる健康と経済的な利益をもたらすであろう。
【0126】
以下の実施例を参照することにより、本発明の様々な態様を非限定的に説明する。
【実施例】
【0127】
妊娠初期の妊娠中の母親によって摂取されたプロバイオティクスラクトバシルス・ラムノサスHN001(HN001)が、妊娠26~28週までのGDMの罹患率を減少させることができるかどうかを調べるために、二重盲検無作為プラセボ対照並行試験を行った。
【0128】
材料と方法
ニュージーランドのオークランド及びウェリントンの妊娠中の女性を、保健専門家及び妊娠パックに入れた試験情報を介して、試験に募集した。女性が妊娠16週未満で、英語を話し、母乳育児を予定していて、女性又は胎児の生物学的父親のいずれかが、投薬を必要とする喘息、花粉症、又は湿疹の治療歴がある場合、女性は適格と見なされた。女性が、年齢が16才未満で、試験期間中に試験センターの区域外に引っ越すことを計画しており、免疫障害又は投薬、心臓弁膜症の病歴を有し、体外受精を必要としたことがあり、重大な胎児異常の経験があり、プロバイオティクス飲料又はサプリメントを使用していたことがあり、別の無作為化比較試験(RCT)に参加していて、彼女らの臨床介護者への通知を拒否したことがあり、牛乳アレルギーについてアドレナリンを有していたことがあり、移植又はHIVの履歴があり、少なくとも3ヶ月間連続抗生物質療法を使用したことがあり、スクリーニングと登録の間に流産したか、又はその他の理由で不適切と見なされた場合、女性は試験から除外された。適格な女性は妊娠14~16週で試験に登録され、ここで妊娠は妊娠の初期3ヵ月間のスキャンに基づいており、これが利用できない場合は、最終月経日に基づいていた。
【0129】
試験計画
参加する女性は無作為に割り付けられ、登録から妊娠中を通して、母乳育児をしている場合は出産の最大6ヵ月後までの間、HN001(6×109コロニー形成単位(cfu))又はプラセボ(トウモロコシ由来マルトデキストリン、外観と臭いはプロバイオティクス物質と同一)のいずれかを含むカプセルを、毎日投与された。HN001粉末は、既に記載されているように(8)、無菌発酵、濃縮、及び凍結乾燥を使用してFonterra Co-operative Group Ltdによって製造された。プラセボ粉末であるトウモロコシ由来マルトデキストリンは、Grain Processing Corp. Oregon, USAにより製造された。女性はカプセルを冷蔵庫に保管し、熱い食べ物や飲み物を消費してから10分以内は服用しないように指示された。
【0130】
Fonterraは、内容物の経時的な生存性を確実にするために、カプセルの試料を40℃で保持し、毎月検査した。現場から戻された未使用のカプセルを選択して、内容物の生存活性を月に3回検査した。生存率の低下は0.1 log未満であり、計数法の不確実性の範囲内であった。
【0131】
カプセルの無作為化は、試験の責任医師又は参加者と接触していないFonterraの統計専門家によって行われた。無作為化は試験センターによって層別化され、コンピューターにより生成された無作為化スケジュール及び1:1の配分比に従って、20のブロックで行われた。研究スタッフは参加者を選別し登録し、適格な参加者に次に利用可能な連番のカプセル容器を提供した。すべての研究者、実験室スタッフ、及び参加者は、試験の割り当てを知らされなかった。
【0132】
収集されたベースライン情報には、年齢、民族、出産歴、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病歴、肥満度指数(BMI)(体重(kg)/身長(m)2)、腹囲、妊娠中であるが登録前の抗生物質使用、参加者又は一親等血縁者の2型糖尿病が含まれた。以前の妊娠が20週を超える女性の間で、我々はまた、以前のGDMの病歴及び以前の新生児の出生時体重も収集した。
【0133】
転帰(outcome)の測定値
GDMの転帰は、IADPSG勧告(6)に従って主にGDMの診断として先験的に定義された:空腹時血漿グルコース≧5.1mmol/L、又は75gのグルコース負荷後1時間で≧10mmol/l、又は2時間で≧8.5mmol/l。GDM(1)を定義するために、空腹時≧5.5mmol/l又は2時間後に≧9mmol/lのNZ閾値を用いて2次分析を行った。
【0134】
GDMについての評価は、妊娠24~30週に一晩の12時間の絶食の後に、地域の実験室で行われた耐糖能試験(GTT)を使用して行った。妊娠前に糖尿病を患っていない女性のみがGTT試験を開始した。GTT試験の前にGTTに基づいてGDMの診断を受けた女性は、早期の陰性試験の証拠があって、糖尿病が妊娠が原因であることを確認された場合にのみ、試験結果に含めた。妊娠後期に(臨床目的で)繰り返しGTTを実施した場合、妊娠24~30週に完了した試験でGDM試験の状態が確定した。
【0135】
GDMを有する女性は、出産後少なくとも3ヶ月目に、分娩後HbA1cを測定するように求められた。分娩後HbA1cレベル≧6.5%(48mmol/mol)又は分娩後空腹時グルコース≧7mmol/l及び/又は2時間目グルコース≧11.1mmol/lが、共存する2型糖尿病の存在を示すために使用された。女性がこれらの基準を満たした場合、彼女らはGDM分析から除外された。
【0136】
他の結果は、出産後4~7日目に収集され、母体の体重(kg)、腹囲(cm)、妊娠(週)、未熟児(<37週)が含まれた。5分での幼児アプガースコア及び出生時体重を医療記録から収集した。乳児の身長(cm)、ポンデラル指数(PI)(出生時体重(kg)/身長(m)3)、頭囲(cm)、出産タイプ(膣又は帝王切開)、及び新生児集中治療室(NICU)への入院が、生後4~7日に研究者により評価された。
【0137】
服薬コンプライアンス
3ヶ月分以上のカプセル(n=105)を各瓶に入れた。妊娠26~28週目と出産時に瓶を交換し、出生後6ヶ月までの期間をカバーするために、2本の瓶を母親に与えた。返却された瓶は、服薬コンプライアンスの尺度として、試験評価に関与していないスタッフによって数えられた。
【0138】
検出力
フィンランドの研究(8)で見出されたようなプロバイオティクス物質による63%の減少であるGDMの罹患率15%と、各群における試料サイズ195を仮定すると、この試験は5%の有意水準で87%の検出力を有するであろう。
【0139】
統計解析
分析は、SAS9.3及び9.4(SAS Institute, Cary, NC)を用いて行った。すべての解析は治療企図解析であった。GDMの罹患率と二分法による出生転帰との治療群間の差は、相対発症率(RR)及び95%CIを用いて推定した。事前に特定されていないが、我々は、GDMと有意に関連した因子(母親の年齢、BMI、GDMの病歴)によって、そしてGTT前の試験中の抗生物質使用によって層別化したGDMの分析を、対数リンクと二項分布を用いる一般的線形モデルを使用して行った。連続変数の場合、治療群間の差は、t検定を使用して比較した平均の差(95%CI)、又は対数ベースライン測定値について調整した対数値の共分散分析を使用して比較した幾何平均(95%CI)の比率の差として報告する。他の差はウィルコクソンの順位和検定を用いて比較した。アプガースコアは、順序ロジスティック回帰を用いて群間で比較した。検定は両側検定であり、P<0.05を統計的に有意と見なした。
【0140】
欠けているGTT測定値は、治療、空腹時、1時間及び2時間の測定値、民族、年齢、登録時のBMI、一親等血縁者における糖尿病の家族歴、以前の多嚢胞性卵巣症候群、及び以前のGDMと以前の>20週間の妊娠数との組合せ(以前の妊娠なし、GDMを伴う1回の以前の妊娠、GDMを伴わない1回の以前の妊娠、GDMを伴う2回以上の以前の妊娠、又はGDMを伴わない2回以上の以前の妊娠)を使用する、1,000の多重補完を用いて推定した。GDMと診断され、妊娠初期からインスリンを処方されていたためにGTTのなかった1人の参加者は、全ての補完においてGDMを患っていると仮定された。
【0141】
この試験は、ヘルシンキ宣言に定められたガイドラインに従って行われ、ヒト被験体を含むすべての手順は、多地域健康と障害倫理委員会(the Multi-Region Health and Disability Ethics Committee)によって承認された。書面によるインフォームドコンセントが全被験者から得られた。この試験は、オーストラリアNZ臨床試験登録簿に登録された:ACTRN12612000196842, https://www.anzctr.org.au/Trial/Registration/TrialReview.aspx?id=362049&isReview=true。
【0142】
結果
参加者(n=423)は、2012年12月から2014年11月の間に、週平均4.2の割合で、HN001群(n=212)又はプラセボ群(n=211)に無作為化された。妊娠糖尿病の評価は2015年2月までに完了し、最終新生児は2015年5月に生まれた。追跡調査喪失率は試験群間で同様であったが、HN001群のより多くの参加者が、GTTの前に介入を中止した(
図1)。対照的に、プラセボ群ではGTTと出産来院との間にほとんどの参加者が追跡調査に喪失し、両方の試験群で少数の参加者は介入を中止した。プラセボ群では、クモ膜下出血のために1人の妊産婦死亡があった。
【0143】
無作為化された参加者のうち、24~30週のGTTの結果は、HN001群の参加者184人(87%)、そしてプラセボ群の189人(90%)で、3時点すべて(IADPSGガイドラインの定義により必要とされる空腹時、1時間値、及び2時間値)を含み、それぞれ平均27.7週(SD4.6)及び28.0週(SD=8.6)の妊娠であった。追加の10人のHN001参加者及び11人のプラセボ参加者は、空腹時及び2時間時点のみのGTT結果が利用可能であり、これは標準NZガイドラインによるGDMの診断に十分であった。HN001群の194人(92%)とプラセボ群の200人(95%)がいずれかのGTT評価に参加し、その全員が、NZガイドラインに基づく分析にデータを提供することができた。
【0144】
登録時のいかなる母親の特徴(年齢、民族、出産歴、体重、腹囲、BMI、登録前の妊娠中の抗生物質使用、糖尿病の家族歴、世帯収入)においても、及び以前に出産の経験、最大新生児の体重、及びGDMの病歴を有する母親の間においても、試験群間に実質的な差はなかった(表1)。
【表1】
【0145】
HN001群におけるGDMの罹患率(IADPSG基準を用いて定義される)は、プラセボ群におけるよりも低かったが、その差は統計的に有意ではなかった(表2)。ただし、より特異的なNZ定義を使用すると、GDMの罹患率はHN001群で有意に低かった。欠損値について補完結果を用いてこれらの分析を繰り返したが、RR推定値にはほとんど変化がなかった。IADPSGガイドラインを使用すると、補完RR=0.64(95%CI 0.36、1.12)、そしてNZガイドラインを使用すると、補完RR=0.39(95%CI 0.14、1.07)であった。
【0146】
ベースラインの、及び1時間後と2時間後の平均血中グルコースレベルは、プラセボと比較してHN001群においてわずかに低かったが、ベースライン時にのみ有意であった(表2)。
【表2】
【0147】
NZガイドライン又はIADPSGガイドラインに従ってGDMと診断された44人の参加者のうち、40人の参加者は出産後1~15ヶ月の間にHbA1cが測定され、5.0%(31mmol/mol)~6.4%(46mmol/mol)の間の値であった。1人は出産後GTTを有し、値は正常範囲内であった。3人の参加者は、1人は辞退し、1人は試験を中止し、1人は死亡したため、出産後HbA1cはなかった。
【0148】
表3は、母親の年齢、BMI、及びGDMの病歴を有することが、この試験においてGDMと有意に関連していたことを示す。次に、GDMのIADPSG定義のみを使用して、これらの要因を使用して分析を層別化した(
図2)。年齢(連続変数として)別処理の有意な相互作用(p=0.005)及び二分した年齢(35才以上対35才未満)による有意差のない相互作用(p=0.06)があった。
【0149】
高齢群では、HN001は、プラセボ群の女性の罹患率と比較して、GDMの罹患率の3倍の減少と関連していた(RR=0.31(95%CI 0.12、0.81)、p=0.009)。35才未満の女性では、各試験群の罹患率は類似していた(RR=1.04(95%CI 0.45、2.39))。BMIが30kg/m2以上(RR=0.86(95%CI 0.37~1.96))であるか又は30kg/m2未満(RR=0.51(95%CI 0.22~1.17)であるかによっても、効果に有意差はなかった。GDMはGDMの病歴のあるHN001参加者のいずれにも再発しなかったため、相互作用は試験できなかった。
【0150】
GDMの病歴を有する女性のうち、HN001はGDMの再発に対して防御し、RR=0.00(95%CI 0.00~0.66)であり、GDMの病歴のない女性については、RR=0.50、(95%CI 0.20~1.27)であった。GDMの病歴のある3人の女性(20%)は、IADSPGガイドラインに従うGTTを完了していなかった。すべての補完法で、彼女らはGDM陽性であり、補完RR=0.38((95%CI 0.05~1.00)p=0.043、バーナードの正確度検定)を与えた。GDMに対するHN001の効果は、試験登録とGTT検査の間に抗生物質を使用しなかった参加者の間では有意に防御的であったが、この期間中に抗生物質を使用した女性に対して、HN001の有意な効果はなかった。
【0151】
図3に示す罹患率プロットは、HN001投与と母体年齢についての有意な相互作用を示し(
図3、右のプロット)、ここで35才以上の女性が若い母親よりもHN001からより多くの恩恵を受け、ならびにHN001投与と以前の妊娠について相互作用も示し(
図3、出産歴、左のプロット)、ここで、女性が以前20週を超えた妊娠があったかいなかに依存して、妊娠糖尿病に対するHN001の効果は有意に異なっていた。以前妊娠した女性では、HN001の女性はプラセボの女性と比較してGDの割合が約3分の1であった。
【表3】
【0152】
同様に、抗生物質を使用していない女性のうち、空腹時平均血中グルコースレベルは、プラセボ群(4.42、95%CI 4.35~4.48)と比較して、HN001群(4.28、95%CI 4.23~4.33)において有意に(p=0.001)低かった。グルコース負荷後1時間及び2時間での平均グルコースレベルの差もまたより低かったが、有意ではなかった。1時間では、血中グルコースレベルは、HN001群で6.63(95%CI 6.37~6.89)、プラセボ群で6.88(95%CI 6.60~7.16)、p=0.20であり、2時間ではHN001群では6.56(95%CI 5.38~5.73)、プラセボ群で5.77(95%CI 5.53~6.01)、p=0.15であった。
【0153】
HN001は、(ベースライン測定値の調整後の)母親の身体測定値、又は出産児体重、妊娠、帝王切開、又はNICUへの入院、又は出産後4~7日で、乳児の身長、PI、又は頭囲と有意に関連していなかった。母親がHN001群に属していた乳児は、プラセボ群の乳児よりも5分アプガースコアが有意に高かった(表4)。
【表4】
【0154】
IADPSG勧告に従って定義された母親のGDMは、出産後のより高い母親の体重(p=0.0002)、腹囲(p<0.0001)、及びBMI(p<0.0001)と関連していたが、いかなる乳児の人体計測、妊娠、帝王切開分娩、NICU入院、又は5分アプガースコア(データは示さず)とも関連していなかった。
【0155】
考察
本出願人の知る限り、これは、GDMのリスクに基づいて選択されていない女性の間でのGDMの予防における、プロバイオティクスの役割を報告する最初の研究である。本出願人のデータは、6×109cfu/日の用量のプロバイオティクスHN001が、GDMの割合を、IADPSGガイドライン(6)を用いると13.8%から8.2%に40%の低下、又はNZのガイドラインを用いると6.5%から2.1に68%低下させ得ることを示唆する。
【0156】
この研究は、GDMを定義するために、IADPSG閾値よりもNZグルコース閾値を用いると、HN001効果がより強いことを示し、この効果がより重度のGDMを予防することにおいてより大きいことを示唆する。
【0157】
消化管微生物叢は、妊娠の3つの3ヵ月の期間中に、より多様性の低い状態に向かって大きく変化し、最も枯渇した微生物叢はGDMを有する女性において見出される(9)。肥満関連の腸内細菌叢とは対照的に、妊娠後期の腸内細菌叢は、妊娠の初期と比較して、便中へのより多量のアネルギーの喪失に関連しており、宿主の脂肪症及び宿主のグルコース代謝への妊娠中の腸内細菌叢の変化の影響が、必ずしも同じではないことを示している(9)。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本出願人らは、HN001補給が、宿主に対するインスリン感受性及び炎症の改善に有利になるように腸内細菌叢の組成及び機能を変化させ、これがGDMに対する性向を低下させたと考えている。
【0158】
出産転帰に対するいかなる有害な影響もないことは、妊娠早期(妊娠14~16週)から取るべき安全な介入としてHN001を支持し、これはまた、アプガースコアによって反映されるように、乳児にとって有益であり得る。これらの知見は、妊娠早期のプロバイオティクス介入の効果に関する利用可能なデータが少ないことを考えると、重要である。
【0159】
体重管理プログラム又は食事療法を通して妊娠中の良好な健康を促進することは、一部は介入のコンプライアンスが不十分であるために、ほとんど効果が得られていない。この研究は、エル・ラムノサスHN001が、特により高齢の母親とGDMの病歴を有する母親の、GDMの罹患率を低下させるための効果的な介入であるという証拠を提供する。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は、特にGDMの治療又は予防における、プロバイオティクス細菌、特にLactobacillus rhamnosus HN001又はその誘導体の使用に関する。前記細菌及び前記細菌を含む組成物の使用方法もまた提供される。
【0161】
参考文献
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