(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20220622BHJP
C25C 1/00 20060101ALI20220622BHJP
C25C 1/12 20060101ALI20220622BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
B23Q11/00 R
C25C1/00 303A
C25C1/12
B23C9/00 Z
(21)【出願番号】P 2017194773
(22)【出願日】2017-10-05
【審査請求日】2020-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中森 直幸
(72)【発明者】
【氏名】戸田 宏明
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-017915(JP,U)
【文献】特表平11-504866(JP,A)
【文献】特開2002-126967(JP,A)
【文献】実開平01-110036(JP,U)
【文献】米国特許第04955770(US,A)
【文献】特開昭54-120479(JP,A)
【文献】特開昭54-156278(JP,A)
【文献】特開昭55-042789(JP,A)
【文献】実開昭56-165727(JP,U)
【文献】特開昭59-133388(JP,A)
【文献】実開昭59-191235(JP,U)
【文献】実開昭60-134510(JP,U)
【文献】特開昭61-019538(JP,A)
【文献】特開昭61-103753(JP,A)
【文献】実開昭62-007347(JP,U)
【文献】特開平10-277696(JP,A)
【文献】特開2000-061771(JP,A)
【文献】特開2001-170842(JP,A)
【文献】特開2002-192085(JP,A)
【文献】特開2002-326136(JP,A)
【文献】特開2011-162339(JP,A)
【文献】特開2014-025113(JP,A)
【文献】特開2015-005544(JP,A)
【文献】登録実用新案第3052843(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第104972401(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/00-9/00
B23Q 11/00-13/00
C25C 1/00-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードプレスの耳部を切削する切削装置であって、
該切削装置は、
アノード耳部を切削する切削部材を有する切削部と、
該切削部の切削部材を覆うカバーと、
前記切削部の切削部材の下方に設けられた、切削粉を回収する回収シュートと、
該回収シュートに振動を加える振動発生部と、
前記回収シュートを支持する支持部材と、を備えており、
前記回収シュートは、
前記切削部の下方に配置され前記切削粉を受け止めて回収する一端部と、
回収した前記切削粉を排出する他端部と、
その上面が前記一端部から前記他端部に向かって下傾している中間部と、を備えており、
前記支持部材は、
前記回収シュートを上下方向に振動可能に支持するものであり、
前記振動発生部が、前記回収シュートに取り付けられており、
前記振動発生部の取り付け位置が、
前記回収シュートの全体の長さをLとすると、該回収シュートの他端からL/3~L/5の範囲である
ことを特徴とする切削装置。
【請求項2】
前記振動発生部は、
前記回収シュートに対して加える振動の方向が鉛直方向に対して傾斜するように設置されている
ことを特徴とする請求項1記載の切削装置。
【請求項3】
前記支持部材がバネである
ことを特徴とする請求項1または2記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関する。さらに詳しくは、電解精製に使用するアノードの耳下を切削する切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銅精鉱から電気銅を製造する場合には、以下の工程で電気銅が製造される。
まず、銅精鉱を自熔炉において溶融してマットを製造し、このマットを転炉で酸化することによって粗銅を製造する。この粗銅を精製炉において精製したのち鋳造して、アノードが形成される。このアノードを電解精製することによって、電気銅が製造される。
【0003】
電解精製では、アノードとカソードが交互に並ぶように銅電解槽中の硫酸銅溶液に浸漬されるが、アノードおよびカソードは、アノードおよびカソードに電気を供給する電極(ブスバー)に懸垂された状態で保持される。
【0004】
しかし、鋳造されたままのアノードには歪みや曲がりなどがあり、そのままでは電解槽に吊下げられないので、アノードプレス工程(アノード整型機)で整型される。このアノードプレス工程では、アノードの耳部の切削も行われる。具体的には、アノードの耳部の下面が平坦面となるように切削される。アノードの耳部の下面が平坦面となれば、アノードを電解槽に浸漬した際に、ブスバーにアノードを安定して懸垂させることができる。しかも、ブスバーに懸垂したときにおけるアノードの垂直性が向上するため、電解精製の効率も向上する。
【0005】
かかるアノードの耳部の切削は、通常、フライスカッターによって実施される。
アノードは、チェーンコンベア等に耳部を引っ掛けた状態でフライスカッターの位置まで搬送される。フライスカッターの位置まで搬送されたアノードは、クランプ装置によって保持されて、チェーンコンベア等などから解放される。そして、クランプ装置によって保持された状態のアノードの耳部に対して、フライスカッターが接近して、アノードの耳部の下面が切削される。アノードの耳部下面の切削が終了すると、フライスカッターは後退し、アノードの耳部は再びチェーンコンベア等に引っ掛けられる。すると、クランプ装置によるアノードのクランブが解除され、アノードはチェーンコンベア等に吊り下げられた状態で搬送される(例えば、特許文献1等)。
【0006】
ここで、フライスカッターによりアノードの耳部を切削すると、周囲に切削粉が飛散して、チェーンコンベアの関節部に詰まり故障等の問題が生じる可能性がある。このため、フライスカッターの周囲には切削粉の飛散を防止するカバーと切削粉を回収するコンベアが設けられている。つまり、フライスカッターの上部を覆うようにカバーが設置され、フライスカッターの下部にはコンベアが設置される。すると、フライスカッターがアノードの耳部を切削した際に発生した切削粉は、カバーによって周辺への飛散が防止されて、コンベア上に落下する。また、一部の切削粉はコンベア上に直接飛散する。コンベア上に落下また飛散した切削粉は、コンベアによって切削粉回収シュートまで搬送されて回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、フライスカッターによって切削された切削粉は形状が針状となっており、先端や側面が非常に鋭利になっている。このため、コンベアに切削粉が切削した際に、ベルトに突き刺さったりベルトを切ったりしやすいので、折損などによるベルトの消耗が早く、ベルトを頻繁に取り換えなければならない。しかも、ベルトは平ベルトを使用するため、搬送中に切削粉がベルトコンベアから落下しやすく、十分に切削粉を回収ができない場合もある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、アノードの耳部を切削した際に発生した切削粉を効果的に回収できる切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の切削装置は、アノードプレスの耳部を切削する切削装置であって、該切削装置は、アノード耳部を切削する切削部材を有する切削部と、該切削部の切削部材を覆うカバーと、前記切削部の切削部材の下方に設けられた、切削粉を回収する回収シュートと、該回収シュートに振動を加える振動発生部と、前記回収シュートを支持する支持部材と、を備えており、前記回収シュートは、前記切削部の下方に配置され前記切削粉を受け止めて回収する一端部と、回収した前記切削粉を排出する他端部と、その上面が前記一端部から前記他端部に向かって下傾している中間部と、を備えており、前記支持部材は、前記回収シュートを上下方向に振動可能に支持するものであり、前記振動発生部が、前記回収シュートに取り付けられており、前記振動発生部の取り付け位置が、前記回収シュートの全体の長さをLとすると、該回収シュートの他端からL/3~L/5の範囲であることを特徴とする。
第2発明の切削装置は、第1発明において、前記振動発生部は、前記回収シュートに対して加える振動の方向が鉛直方向に対して傾斜するように設置されていることを特徴とする。
第3発明の切削装置は、第1または第2発明において、前記支持部材が、バネであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、切削部の切削部材で切削された切削粉は、カバーで飛散が防止され、回収シュート上に載せられる。そして、回収シュートはその中間部の上面が一端部から他端部に向かって下傾しているので、一端部で回収した切削粉を他端部まで移動させて、回収した切削粉を他端部から外部に排出することができる。そして、回収シュートには、チェーンやベルトのように切削粉と共に移動するような可動部や関節部がないので、切削粉によって損傷せず、メンテナンス回数を低減することができる。しかも、回収シュートは支持部材によって上下方向に振動可能に支持されているので、振動発生部によって振動を加えれば、回収シュート上における切削粉を回収シュートの一端部から他端部に向かってスムースに移動させることができる。そして、回収シュートの他端側での振動を強くできるので、他端部側において切削粉を移動させやすくなる。
第2発明によれば、振動発生部を作動させれば、垂直方向だけでなく水平方向の振動も発生するので、回収シュート上の切削粉を回収シュートの一端部から他端部に移動させやすくなる。
第3発明によれば、振動発生部による振動が加わった際に、支持部材によって回収シュートの鉛直方向および水平方向の振動を増幅することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の切削装置10を単純化した概略説明図であって、(A)は平面図であり、(B)は側面図である。
【
図2】回収部20の概略説明図であって、(A)は平面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図であり、(C)は(B)のC-C線断面図であり、(D)は(B)のD-D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の切削装置は、銅電解製錬に使用するアノードの耳部を切削する装置であって、切削の際に発生する切削粉を効率よく回収できるようにしたことに特徴を有している。
【0014】
<アノードプレス工程について>
まず、本実施形態の切削装置10を説明する前に、本実施形態の切削装置10が使用されるアノードプレス工程における切削設備1の概略を説明する。
【0015】
図3において、符号cは、アノードAを搬送するチェーンコンベアを示している。このチェーンコンベアcは、一対のチェーンca,caを備えており、アノードAは、一対の耳部r,rを一対のチェーンca,caに引っ掛けた状態で搬送される。
【0016】
チェーンコンベアcの移動経路には、切削設備1が設けられている。
この切削設備1は、アノードAをクランプするクランプ装置2と、このクランプ装置2の位置と一対のチェーンca,caとの間でアノードAを移動させる昇降装置3と、クランプ装置2によって保持されているアノードAの耳部rを切削する本実施形態の切削装置10と、本実施形態の切削装置10をアノードAに対して接近離間させる移動機構5と、を備えている。
【0017】
クランプ装置2は、アノードAを前後から挟んで保持する保持部2a,2aを備えている。この保持部2a,2aをシリンダ機構などで接近離間させることによって、アノードAを保持する。
【0018】
昇降装置3は、アノードAの一対の耳部r,rをひっかけて保持する保持バー3a,3aを備えている。この保持バー3a,3aを、シリンダ機構などによって昇降させることによって、アノードAを、クランプ装置2の位置と一対のチェーンca,caとの間で移動させることができるようになっている。
【0019】
本実施形態の切削装置10は、クランプ装置2によって保持されているアノードAの耳部rの下面を切削するものである。本実施形態の切削装置10は、クランプ装置2の両側にそれぞれ設けられており、フライス12を用いてアノードAの一対の耳部r,rをそれぞれ切削するようになっている。なお、本実施形態の切削装置10の詳細は後述する。
【0020】
本実施形態の切削装置10は、一対の移動機構5,5によってアノードAに対して同時に接近離間できるようになっている。各移動機構5は、本実施形態の切削装置10が配置される移動テーブル5aを備えている。この移動テーブル5aは、レールなどに移動可能に設けられており、移動テーブル5aと設備のフレームなどとの間に設けられたシリンダ5bによって移動できるようになっている(
図1参照)。
【0021】
以上のような構成であるので、アノードAは、以下のよう作動して一対の耳部r,rの下面が切削される。
【0022】
まず、アノードAは、一定の間隔を空けた状態で、チェーンコンベアcの一対のチェーンca,caに吊り下げられており、一対のチェーンca,caを移動させることによって、切削設備1に搬送される。
【0023】
アノードAが所定の位置まで移動すると、一対のチェーンca,caは移動を停止する。すると、昇降装置3の保持バー3a,3aが上昇し、アノードAは、保持バー3a,3aに一対の耳部r,rが引っ掛けられた状態でチェーンコンベアcの上方まで持ち上げられる。
【0024】
やがて、アノードAがクランプ装置2の位置まで上昇すると、保持部2a,2aによってアノードAは前後から挟まれて保持される。アノードAがクランプ装置2の保持部2a,2aによって保持されると、昇降装置3の保持バー3a,3aは下降する。
【0025】
昇降装置3の保持バー3a,3aが下降すると、移動機構5によって本実施形態の切削装置10がアノードAに接近し、本実施形態の切削装置10によってアノードAの一対の耳部r,rの下面が切削される。
【0026】
アノードAの一対の耳部r,rの下面の切削が終了すると、移動機構5によって本実施形態の切削装置10はアノードAから離間する。すると、昇降装置3の保持バー3a,3aが、アノードAの一対の耳部r,rを引っ掛けることができる位置まで上昇し、クランプ装置2によるクランプが解除される。
【0027】
クランプ装置2によるクランプが解除されると、昇降装置3の保持バー3a,3aが下降し、やがてアノードAは、一対の耳部r,rがチェーンコンベアcの一対のチェーンca,caに引っ掛かった状態となる。
【0028】
昇降装置3の保持バー3a,3aがさらに下降し、アノードAがチェーンコンベアcの一対のチェーンca,caに吊り下げられた状態となると、チェーンコンベアcの一対のチェーンca,caが移動し、アノードAは切削設備1から搬出される。
【0029】
<本実施形態の切削装置10について>
本実施形態の切削装置10は、上述したような切削設備1に採用される。以下では、本実施形態の切削装置10を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の切削装置10は、切削部11と、カバー15と、回収部20と、備えている。
【0030】
<切削部11>
図1に示すように、切削部11は、切削部材である一対のフライスカッター12,12と、一対のフライスカッター12,12を駆動する駆動源13と、を有している。一対のフライスカッター12,12は、一本の回転軸12aの両端に設けられている。この回転軸12aにはプーリが設けられており、このプーリは、駆動源13のモータ13mの回転軸に設けられたプーリにベルトによって連結されている。したがって、モータ13mを駆動すれば、一対のフライスカッター12,12を回転させることができるようになっている。
【0031】
また、回転軸12aは、その軸方向がチェーンコンベアcによってアノードAを搬送する方向と平行に設けられている。しかも、一対のフライスカッター12,12間の距離L1が、チェーンコンベアcに引っ掛けられた状態における隣接するアノードA間の距離L2(
図4参照)とほぼ同じ長さになるように設けられている。
なお、チェーンコンベアcには、距離L1=距離L2となるような間隔で引っ掛けるために、爪等を設けている。
【0032】
したがって、駆動源13のモータ13mを駆動した状態で、クランプ装置2に保持されたアノードAに対して、移動機構5によって本実本実施形態の切削装置10を接近させれば、隣接する一対のアノードA,Aの耳部rの下面を、一対のフライスカッター12,12によって同時に切削することができる。
【0033】
また、アノードAは両側に耳部r,rを有するが、
図3に示すように、アノードAが搬送されるラインの両側に一対の切削装置10,10が設けられているので、アノードAに対して、その両側から同時に一対の切削装置10を接近させることができる。すると、一対の切削装置10によって、アノードAの両側から同時に耳部rの切削が行われるので、アノードAに加わる力が相殺される。すると、切削の際にアノードをクランプするクランプ装置2の負担を小さくできるので、クランプ装置2を小型化でき、設備を小型化できる可能性がある。
【0034】
また、上記のように、切削装置10のそれぞれが一対のフライスカッター12,12を備えていれば、一対のアノードA,Aの一対の耳部r,rを同時に切削することができる。つまり、4つの耳部r,rを同時に切削することができる。すると、チェーンコンベアcの停止回数を少なくすることができるので、作業効率を向上できるという利点も得られる。
【0035】
なお、上記例では、一本の回転軸12aに一対のフライスカッター12,12を設けた場合を説明したが、一本の回転軸12aに設けるフライスカッター12の数は、3つ以上でもよい。すると、一度に切削できるアノードAの耳部rが増えるので、チェーンコンベアcの停止回数をさらに少なくすることができ、作業効率をより一層向上できると可能性がある。3つ以上のフライスカッター12を設ける場合には、隣接するフライスカッター12間の距離が上述した距離L1、つまり、チェーンコンベアcに引っ掛けられた状態における隣接するアノードA間の距離L2とほぼ同じ長さとなるように設ける。
【0036】
ところで、フライスカッター12は使用に伴い徐々に磨耗し小さくなるが、切削装置10の移動量を調整することで、摩耗分を補うことができる。具体的には、フライスカッター12が耳部rに接触して抵抗を受けるまで移動機構5によって切削装置10を移動させることによって、磨耗分を補ってフライスカッター12を耳部rに接触させることができる。ただし、一本の回転軸12aに一対のフライスカッター12,12を設けた場合には、一対のフライスカッター12,12間で摩耗度に差があれば、一対のフライスカッター12,12と一対の耳部r,rとの接触状態に差が生じてしまい、一対の耳部r,rを同じように切削できない可能性がある。そこで、一対のフライスカッター12,12の摩耗度に応じて回転軸12aを傾ければ、一対のフライスカッター12,12間における耳部rとの接触状態の差を吸収することができる。具体的には、磨耗が大きい側がチェーンコンベアcに近くなるよう(つまり前進方向に位置するように)に傾ける。すると、摩耗度に差が生じても、一対のフライスカッター12,12と一対の耳部r,rの接触状態を同じ状態にすることができるので、長期間にわたり、一対の耳部r,rの切削状態を同等の状態に保つことができる。
【0037】
なお、移動機構5は切削装置10を上下方向に移動させる機構(昇降機構)を有していれば、フライスカッター12が摩耗した際に、磨耗分を補ってフライスカッター12を耳部rにより確実に接触させることができる。昇降機構はとくに限定されないが、油圧シリンダ等のシリンダ機構やネジ機構、パンダグラフ機構を有するジャッキ機構等、公知の機構を採用することができる。
【0038】
さらになお、一対のフライスカッター12,12は、それぞれ別々な回転軸12aに取り付けられていてもよい。この場合には、2本の回転軸12aを一つの駆動源13によって駆動してもよいし、各回転軸12aにそれぞれ駆動源13を設けてもよい。
【0039】
さらになお、回転軸12aは必ずしも水平に設けられていなくてもよく、回転軸12aは鉛直になっていてもよい。しかし、回転軸12aを水平に設ければ、一つの回転軸12aに複数のフライスカッター12を設けることによって、異なるアノードAの耳部rを同時に切削することができるので、好ましい。
【0040】
<回収シュート20>
図1に示すように、一対のフライスカッター12,12の下方には、一対の回収シュート20,20が設けられている。一対の回収シュート20,20は、切削粉を回収して、外部に排出するものである。
【0041】
図2に示すように、一対の回収シュート20,20は金属製のシュートであり、その一端部(
図1および
図2では左端部)が一対のフライスカッター12,12の下方に設けられている。つまり、一対の回収シュート20,20はその一端部で切削粉を回収することができるように配設されている。
【0042】
一方、一対の回収シュート20,20は、その他端部から回収した切削粉を外部に排出できるようになっている。例えば、一対の回収シュート20,20の他端が開放されていれば、その他端から切削粉を外部に排出できる。また、一対の回収シュート20,20の他端部の側面に開口を設けても、その開口から切削粉を外部に排出できる。なお、一対の回収シュート20,20は、その他端部から切削粉を外部に排出するための方法や構造はとくに限定されない。
【0043】
また、一対の回収シュート20,20は、一端部と他端部との間に位置する中間部の上面20aが、一端部から他端部(
図1および
図2では右端部)に向かって下傾するように設けられている(
図2(B))。なお、一対の回収シュート20,20は、その中間部の上面だけが一端部から他端部に向かって下傾していてもよいし、一端部の上面と他端部の上面も含めて全体が一端部から他端部に向かって下傾していてもよい(
図1(B)、
図2(B)参照)。もちろん、一対の回収シュート20,20は、一端部または他端部の上面の一方が水平面であり、他方の上面が一端部から他端部に向かって下傾していてもよい。さらに、中間部の傾きは一定でもいし途中で傾きがが変化してもよい。そして、一端部の上面および他端部の上面が傾斜している場合には、その傾斜は必ずしも中間部の傾斜と同じ傾斜でなくてもよい。
【0044】
さらに、
図2(C)、(D)に示すように、一対の回収シュート20,20の上面20aは、その幅方向の両端から中央に向かって下傾している。つまり、一対の回収シュート20,20は、その上面20aの断面が略V字状になるように形成されている。
【0045】
以上のような構成であるので、一対の回収シュート20,20の上に切削粉を載せれば、切削粉を、自重によってまたは他の切削粉の重さによって移動させることができる。具体的には、一対の回収シュート20,20の上面20aを、その幅方向から中央に移動させつつ一端部から他端部に向かって、切削粉を移動させることができる。
【0046】
<振動発生部25および支持部材26について>
一対の回収シュート20,20はその上面20aが一端部から他端部に向かって下傾するように設けられているので、上述したように、自重や他の切削粉の重さによって切削粉を一端部から他端部に向かって移動させることができる。
【0047】
とはいえ、切削粉を効率よく一対の回収シュート20,20の一端部から他端部に向かって移動させる場合には、一対の回収シュート20,20に対して振動を加えることが望ましい。
【0048】
例えば、以下のような構造の振動発生部25および支持部材26を設ければ、切削粉を効率よく一対の回収シュート20,20の一端部から他端部に向かって移動させることができる。
【0049】
なお、以下では、一対の回収シュート20,20のうち、
図1(A)の上方に位置する回収シュート20について説明するが、下方に位置する回収シュート20についても同様にすることができる。
【0050】
<支持部材26>
図1(B)および
図2(B)に示すように、回収シュート20は、支持部材26を介して、上述した移動機構5の移動テーブル5aに取り付けられている(
図1(B)参照)。
【0051】
支持部材26は、移動機構5の移動テーブル5aに取り付けられたベース部材26cと、ベース部材26cと回収シュート20との間に設けられた支持部材26a,26bと、を備えている。
【0052】
ベース部材26cは、例えば、板状のプレートや、回収シュート20を内部に収容できる空間を有する樋状の部材等であるが、支持部材26a,26bを介して回収シュート20を支持できるものであればよく、とくにその形状などが限定されない。
【0053】
各支持部材26a,26bは、回収シュート20をベース部材26cに対して上下方向に振動できるように支持する部材である。例えば、各支持部材26a,26bには、バネ等の弾性材料を備えたものを採用することができる。
【0054】
各支持部材26a,26bとしてコイルバネを有するものとした場合には、コイルバネの両端をそれぞれ回収シュート20の下面とベース部材26cの上面に連結する。すると、回収シュート20等に振動が加わった際に、コイルバネの伸縮によって回収シュート20をベース部材26cに対して上下方向に振動させることができる。
【0055】
また、回収シュート20の下面とベース部材26cの上面との間にゴムなどの弾性部材を配置して支持部材26a,26bとすることもできる。この場合も、弾性部材の変形によって回収シュート20をベース部材26cに対して上下方向に振動させることができる。
【0056】
つまり、回収シュート20をベース部材26cに対して上下方向に振動できるように支持できるのであれば、支持部材26a,26bの構造はとくに限定されない。
【0057】
なお、支持部材26a,26bは、回収シュート20をベース部材26cに対して上下方向だけでなく水平方向、具体的には回収シュート20の長手方向にも振動できるようになっていることが望ましい。例えば、コイルバネやゴムなどを支持部材26a,26bに使用すれば、ベース部材26cに対して上下方向だけでなく水平方向にも回収シュート20を振動させることができる。もちろん、回収シュート20をベース部材26cに対して上下方向だけでなく水平方向にも振動可能とする支持部材26a,26bは、上述したものに限定されない。
【0058】
<振動発生部25>
回収シュート20の上部には、一対の回収シュート20,20を振動させる振動発生部25が設けられている。この振動発生部25は、振動を発生させる振動発生器25aと、この振動発生器25aを回収シュート20に取り付ける取付部材25bと、を備えている。
【0059】
取付部材25bは、振動発生器25aを設置する板状の部材とこの板状の部材を回収シュート20に固定する部材等によって形成されている。そして、取付部材25bは、板状の部材における振動発生器25aを設置する取付面saが鉛直方向に対して傾斜するように設けられている。例えば、取付部材25bは、その取付面saが鉛直方向に対してなす角度α(
図1(B)参照)が30~60度、好ましくは45度となるように設けられている。
【0060】
この取付部材25bの取付面saには、振動発生器25aが取り付けられている。この振動発生器25aは、
図1(B)に示す矢印の方向に振動を加えることができるものである。つまり、取付部材25bの取付面saが鉛直方向に対して傾斜しているので、振動発生器25aを作動させると、回収シュート20に対して鉛直方向と水平方向の両方に振動を加えることができる。
【0061】
したがって、上述したように振動発生部25および支持部材26を設ければ、振動発生部25を作動させて回収シュート20に振動を加えることにより、回収シュート20上における切削粉を回収シュート20の一端から他端に向かってスムースに移動させることができる。
【0062】
<振動発生器25aの設置位置>
なお、振動発生部25を設置する位置はとくに限定されないが、回収シュート20の両端間の中間よりも他端部側に設けることが望ましい。振動発生部25の停止中は、回収シュート20の他端側では切削粉が滞留して溜まりやすい。振動発生部25を回収シュート20の他端部側に設ければ、切削粉が溜まりやすい他端部側に加える振動を強くできるので、他端側において切削粉を移動させやすくなる。例えば、回収シュート20の全体の長さをLとすると、他端側からL/3~L/5の範囲に振動発生部25を設けることが望ましい。とくに、回収シュート20の他端側の全体に振動を伝える上では、回収シュート20の他端と回収シュート20の中間の両方から等距離になる位置、つまり、回収シュート20の他端からL/4の位置に振動発生部25を設けることがより望ましい。
【0063】
また、振動発生部25は、必ずしも上記のように振動を加える方向が鉛直方向に対して斜めになるように配設されていなくてもよく、回収シュート20を振動させることができるように設けられていればよい。例えば、回収シュート20の側面等に振動発生器を固定して振動発生部とすることもできる、しかし、上記のように振動発生部25を設ければ、振動発生器25aを作動させた際に、鉛直方向と水平方向の振動を回収シュート20に発生させることができる。すると、回収シュート20の一端部から他端部に移動させる力を回収シュート20上の切削粉に対して加えやすくなる。
【0064】
<振動発生器25a>
振動発生部25の振動発生器25aは、一対の回収シュート20,20に振動を加えることができるものであれば、どのようなものを使用してもよい。例えば、偏心モータ等を回転させて振動を発生する振動発生器25aを使用してもよいし、一対の回収シュート20,20に間欠的に打撃を加える振動発生器25aを使用してもよい。
【0065】
<他の切削粉移動手段について>
また、振動発生部25に代えて、切削粉を移動させる別な手段を設けてもよい。例えば、回収シュート20の上面20aに対して、空気や窒素などのガスを吹き付けるガス吹き付け手段を設けてもよい。かかるガス吹き付け手段を設ければ、ガスを吹き付ける方向に沿って切削粉を移動させることができる。特に、適切な方向からガスを吹きつけた場合は、切削粉を所望の方向に移動させやすくなる。なお、ガスを吹き付けた際に、回収シュート20に振動が発生する可能性があるが、その場合には、発生した振動も切削粉の移動に利用できる。
【0066】
例えば、回収シュート20の上面20aの幅方向の両端から中央に向かうようにガスを吹き付ければ、切削粉を幅方向の両端から中央に向かって集めることができる。また。回収シュート20の上面20aに対して一端部から他端部に向かってガスを吹き付ければ、切削粉を他端部へ押し流すことも容易となる。このようにガスを吹き付けるようにした場合には、切削粉を回収シュート20の他端部で吸引して集めれば、切削粉の飛び散りも防止できる。
【0067】
<回収シュート20について>
また、一対の回収シュート20,20の上面20aは、その幅方向の両端から中央に向かって下傾していなくてもよい。しかし、上記のような形状とすれば、一対の回収シュート20,20の上面20a上の切削粉を、その幅方向の中央部に集めることができるので、一対の回収シュート20,20の上面20aから切削粉がこぼれにくくすることができるという利点が得られる。
【0068】
なお、一対の回収シュート20,20において、上面20aのV字の角度θは、一端部よりも他端部で小さくなるように形成しておくことが好ましい(
図2(C)、(D))。かかる角度にすれば、一対の回収シュート20,20の他端部から落ちる切削粉を狭い範囲に集めることができる。すると、一対の回収シュート20,20の他端部近傍に、この他端部から排出される切削粉を受け止める容器(または樋)を設けた場合、容器の開口面積が小さくても切削粉を回収しやすくなる。
【0069】
さらに、一対の回収シュート20,20は、全体が金属製である必要はなく、切削粉が載せられる上面20aが金属製であればよい。そして、一対の回収シュート20,20の上面20aやその他の部分の素材は、必ずしも金属製である必要はない。切削粉によって損傷が生じにくく滑らかな材料であればよい。例えば、一対の回収シュート20,20やその上面20aの素材として、鉄やステンレス等のような切削粉による損傷が生じにくい素材や、切削粉とともに再利用が容易な銅、切削粉からの分離が容易な樹脂等を採用することができる。
【0070】
ここまで、一対の回収シュート20,20を例にとり説明したが、回収シュート20は1個以上設けてあれば一対設けなくてもよく、切削装置10が備えるフライスカッター12の数に応じた数の回収シュート20を設ければよい。また、2台以上のフライスカッター12を用いる場合でも、各フライスカッター12の下方全体に広がるように回収シュート20を配置することで、回収シュート20が1個でも切削粉を受け止める役目を果たすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の切削装置は、銅電解製錬に使用するアノードの耳部を切削する装置として適している。
【符号の説明】
【0072】
10 切削装置
11 切削部
15 カバー
20 回収シュート
20a 上面
25 振動発生部
25a 振動発生器
25b 取付部材
26a 支持部材
26b 支持部材
A アノード
r 耳部