(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】カードトレイ
(51)【国際特許分類】
G06K 7/00 20060101AFI20220622BHJP
H01R 12/73 20110101ALI20220622BHJP
G06K 19/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
G06K7/00 073
H01R12/73
G06K7/00 021
G06K19/00 050
(21)【出願番号】P 2018127329
(22)【出願日】2018-07-04
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】久米 健太
【審査官】小太刀 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-178887(JP,A)
【文献】特開2015-035272(JP,A)
【文献】特開2016-134359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00
H01R 12/73
G06K 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向において前方に移動することで、接点を備えた電子機器の内部に挿入され収容されるカードトレイであって、
前記カードトレイは、トレイ本体と、可動部と、排出制御機構とを備えており、
前記トレイ本体は、カードを搭載する搭載部を有しており、
前記可動部は、前記前後方向において、前記トレイ本体に対して相対的に移動可能であり、
前記排出制御機構は、端子を備えており、
前記端子は、前記カードトレイが前記電子機器に収容された収容状態において、前記接点と接触し、
前記排出制御機構は、前記可動部を一時的に初期位置に維持すると共に、前記接点及び前記端子を経由して流れる電流に応じて、前記可動部を前記初期位置から後方に移動させる
カードトレイ。
【請求項2】
請求項1記載のカードトレイであって、
前記排出制御機構は、前記トレイ本体に取り付けられている
カードトレイ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のカードトレイであって、
前記可動部は、前記前後方向において、前方限界位置と後方限界位置との間を前記トレイ本体に対して相対的に移動可能であり、
前記可動部は、前記前方限界位置を越えて前方に移動できず、且つ、前記後方限界位置を越えて後方に移動できず、
前記初期位置は、前記前後方向において、前記前方限界位置と同じ位置にあるか、又は、前記前方限界位置と前記後方限界位置との間にある
カードトレイ。
【請求項4】
請求項3記載のカードトレイであって、
前記可動部は、被受止部を有しており、
前記トレイ本体及び前記排出制御機構からなる内部構造体は、受止部を有しており、
前記可動部が前記トレイ本体に対して相対的に後方に移動する際、前記可動部が前記後方限界位置に達すると、前記被受止部が前記受止部に受け止められる
カードトレイ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のカードトレイであって、
前記排出制御機構は、形状記憶部品を備えており、
前記形状記憶部品は、前記接点及び前記端子を経由して流れる前記電流に応じて初期形状から所定形状に変形し、
前記排出制御機構は、前記形状記憶部品が前記所定形状に変形することで、前記可動部を前記初期位置から後方に移動させる
カードトレイ。
【請求項6】
請求項5記載のカードトレイであって、
前記形状記憶部品は、形状記憶合金からなり、
前記形状記憶部品は、前記接点及び前記端子を経由して前記形状記憶部品を流れる前記電流に応じて前記初期形状から前記所定形状に変形して復元し、
前記排出制御機構は、前記形状記憶部品が前記所定形状に復元することで、前記可動部を前記初期位置から後方に移動させる
カードトレイ。
【請求項7】
請求項6記載のカードトレイであって、
前記排出制御機構は、ロック部と、バネ部とを備えており、
前記ロック部及び前記バネ部の少なくとも一方は、前記形状記憶部品であり、
前記可動部は、被ロック部を有しており、
前記ロック部は、前記形状記憶部品が前記初期形状を取っているとき、前記被ロック部をロックして、前記可動部を一時的に前記初期位置に維持し、
前記バネ部は、少なくとも前記形状記憶部品が前記所定形状に復元するとき、前記可動部に対して排出力を加え、
前記被ロック部は、前記形状記憶部品が前記所定形状に復元することで、ロック解除される
カードトレイ。
【請求項8】
請求項7記載のカードトレイであって、
前記バネ部は、前記形状記憶部品であり、
前記バネ部は、前記初期形状を取っているとき、前記可動部に対して後方に向かう初期力を加え、
前記初期力は、前記排出力よりも弱く、
前記ロック部は、前記バネ部が前記初期形状を取っているとき、前記初期力に抗って前記可動部を一時的に前記初期位置に維持し、
前記被ロック部は、前記排出力によってロック解除される
カードトレイ。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載のカードトレイであって、
前記バネ部は、つるまきばねである
カードトレイ。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれかに記載のカードトレイであって、
前記電子機器の接点は、第1接点と、第2接点とを含んでおり、
前記可動部は金属製であり、
前記排出制御機構は、金属製のシェルを備えており、
前記排出制御機構の前記端子は、第1端子と、第2端子とを含んでおり、
前記収容状態において、前記第1端子及び前記第2端子は、前記第1接点及び前記第2接点と夫々接触しており、
前記バネ部は、接続端と、排出端とを有しており、
前記バネ部の前記接続端は、前記第1端子に接続されており、
前記バネ部の前記排出端は、前記可動部と接触しており、
前記可動部は、前記シェルと接触しており、
前記シェルは、前記第2端子と接触している
カードトレイ。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれかに記載のカードトレイであって、
前記電子機器には、前記カードトレイが挿入される開口が形成されており、
前記可動部は、蓋部を有しており、
前記収容状態において前記可動部が前記初期位置にあるとき、前記蓋部は、前記開口を塞いでいる
カードトレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器においてSIM(Subscriber Identity Module)カード等のカードを搭載するカードトレイに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなカードトレイは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
図19から
図21までを参照すると、特許文献1の電子機器90は、コネクタ主部(コネクタ)94とトレイ96とを含むコネクタ装置を備えている。コネクタ94は、電子機器90の内部に取り付けられている。トレイ96は、カードトレイであり、SIMカード等のカード(図示せず)を搭載した状態で、コネクタ94の内部に挿入可能である。コネクタ94の内部に挿入されたトレイ96は、ピン98を使用して排出できる。詳しくは、コネクタ94には、トレイ96をロックしてコネクタ94内部に留めるためのロック機構942、ロック機構942によるロックを解除するためのロック解除機構944、ロック解除されたトレイ96を排出するためのイジェクト機構946等の様々な部材が設けられている。トレイ96は、ピン挿入孔964が形成されたドア部材962を備えている。ピン挿入孔964からピン98を挿入してロック解除機構944を操作すると、トレイ96のロックが解除され、トレイ96が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、電子機器の内部に収容されたカードトレイを排出するためには、ピンのような操作ツールが必要である。従って、ピンを紛失したような場合、カードトレイの排出が困難になる。
【0006】
そこで、本発明は、電子機器の内部に収容されたカードトレイを、ピンのような操作ツールを使用することなく排出可能な機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1のカードトレイとして、
前後方向において前方に移動することで、接点を備えた電子機器の内部に挿入され収容されるカードトレイであって、
前記カードトレイは、トレイ本体と、可動部と、排出制御機構とを備えており、
前記トレイ本体は、カードを搭載する搭載部を有しており、
前記可動部は、前記前後方向において、前記トレイ本体に対して相対的に移動可能であり、
前記排出制御機構は、端子を備えており、
前記端子は、前記カードトレイが前記電子機器に収容された収容状態において、前記接点と接触し、
前記排出制御機構は、前記可動部を一時的に初期位置に維持すると共に、前記接点及び前記端子を経由して流れる電流に応じて、前記可動部を前記初期位置から後方に移動させる
カードトレイを提供する。
【0008】
また、本発明は、第2のカードトレイとして、第1のカードトレイであって、
前記排出制御機構は、前記トレイ本体に取り付けられている
カードトレイを提供する。
【0009】
また、本発明は、第3のカードトレイとして、第1又は第2のカードトレイであって、
前記可動部は、前記前後方向において、前方限界位置と後方限界位置との間を前記トレイ本体に対して相対的に移動可能であり、
前記可動部は、前記前方限界位置を越えて前方に移動できず、且つ、前記後方限界位置を越えて後方に移動できず、
前記初期位置は、前記前後方向において、前記前方限界位置と同じ位置にあるか、又は、前記前方限界位置と前記後方限界位置との間にある
カードトレイを提供する。
【0010】
また、本発明は、第4のカードトレイとして、第3のカードトレイであって、
前記可動部は、被受止部を有しており、
前記トレイ本体及び前記排出制御機構からなる内部構造体は、受止部を有しており、
前記可動部が前記トレイ本体に対して相対的に後方に移動する際、前記可動部が前記後方限界位置に達すると、前記被受止部が前記受止部に受け止められる
カードトレイを提供する。
【0011】
また、本発明は、第5のカードトレイとして、第1から第4までのいずれかのカードトレイであって、
前記排出制御機構は、形状記憶部品を備えており、
前記形状記憶部品は、前記接点及び前記端子を経由して流れる前記電流に応じて初期形状から所定形状に変形し、
前記排出制御機構は、前記形状記憶部品が前記所定形状に変形することで、前記可動部を前記初期位置から後方に移動させる
カードトレイを提供する。
【0012】
また、本発明は、第6のカードトレイとして、第5のカードトレイであって、
前記形状記憶部品は、形状記憶合金からなり、
前記形状記憶部品は、前記接点及び前記端子を経由して前記形状記憶部品を流れる前記電流に応じて前記初期形状から前記所定形状に変形して復元し、
前記排出制御機構は、前記形状記憶部品が前記所定形状に復元することで、前記可動部を前記初期位置から後方に移動させる
カードトレイを提供する。
【0013】
また、本発明は、第7のカードトレイとして、第6のカードトレイであって、
前記排出制御機構は、ロック部と、バネ部とを備えており、
前記ロック部及び前記バネ部の少なくとも一方は、前記形状記憶部品であり、
前記可動部は、被ロック部を有しており、
前記ロック部は、前記形状記憶部品が前記初期形状を取っているとき、前記被ロック部をロックして、前記可動部を一時的に前記初期位置に維持し、
前記バネ部は、少なくとも前記形状記憶部品が前記所定形状に復元するとき、前記可動部に対して排出力を加え、
前記被ロック部は、前記形状記憶部品が前記所定形状に復元することで、ロック解除される
カードトレイを提供する。
【0014】
また、本発明は、第8のカードトレイとして、第7のカードトレイであって、
前記バネ部は、前記形状記憶部品であり、
前記バネ部は、前記初期形状を取っているとき、前記可動部に対して後方に向かう初期力を加え、
前記初期力は、前記排出力よりも弱く、
前記ロック部は、前記バネ部が前記初期形状を取っているとき、前記初期力に抗って前記可動部を一時的に前記初期位置に維持し、
前記被ロック部は、前記排出力によってロック解除される
カードトレイを提供する。
【0015】
また、本発明は、第9のカードトレイとして、第7又は第8のカードトレイであって、
前記バネ部は、つるまきばねである
カードトレイを提供する。
【0016】
また、本発明は、第10のカードトレイとして、第7から第9までのいずれかのカードトレイであって、
前記電子機器の接点は、第1接点と、第2接点とを含んでおり、
前記可動部は金属製であり、
前記排出制御機構は、金属製のシェルを備えており、
前記排出制御機構の前記端子は、第1端子と、第2端子とを含んでおり、
前記収容状態において、前記第1端子及び前記第2端子は、前記第1接点及び前記第2接点と夫々接触しており、
前記バネ部は、接続端と、排出端とを有しており、
前記バネ部の前記接続端は、前記第1端子に接続されており、
前記バネ部の前記排出端は、前記可動部と接触しており、
前記可動部は、前記シェルと接触しており、
前記シェルは、前記第2端子と接触している
カードトレイを提供する。
【0017】
また、本発明は、第11のカードトレイとして、第1から第10までのいずれかのカードトレイであって、
前記電子機器には、前記カードトレイが挿入される開口が形成されており、
前記可動部は、蓋部を有しており、
前記収容状態において前記可動部が前記初期位置にあるとき、前記蓋部は、前記開口を塞いでいる
カードトレイを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電子機器を操作する等の方法によって排出制御機構に電流を流すだけで、可動部を後方に向かって移動させることができ、これにより、可動部を電子機器から少なくとも部分的に排出できる。例えば、電子機器から排出された可動部を後方に向かって引っ張ることで、カードトレイ全体を電子機器から抜去できる。即ち、本発明によれば、コネクタに挿入したカードトレイを、ピンのような操作ツールを使用することなく排出可能な排出制御機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態による電子機器を示す斜視図である。カードトレイは電子機器の内部に収容されている。カードトレイの可動部は初期位置にある。
【
図2】
図1の電子機器のカードトレイ及びコネクタを示す斜視図である。カードトレイにはカードが搭載されている。カードトレイはコネクタに挿入されている。電子機器の所定面の一部の輪郭を破線で描画している。
【
図3】
図2のカードトレイ及びコネクタを示す斜視図である。カードトレイはコネクタから離れている。
【
図4】
図3のカードトレイを示す斜視図である。カードトレイにはカードが搭載されていない。
【
図5】
図4のカードトレイを示す分解斜視図である。
【
図6】
図4のカードトレイを示す上面図である。バネ部等の隠れた部位の輪郭及び電子機器の接点の輪郭を破線で描画している。
【
図7】
図6のカードトレイをVII-VII線に沿って示す断面図である。カードトレイの一部(破線で囲んだ部分)を拡大して描画している。
【
図8】
図6のカードトレイをVIII-VIII線に沿って示す断面図である。カードトレイの一部(破線で囲んだ部分)を拡大して描画している。
【
図9】
図6のカードトレイをIX-IX線に沿って示す断面図である。
【
図12】
図11のカードトレイをXII-XII線に沿って示す断面図である。
【
図13】
図4のカードトレイを示す斜視図である。カードトレイの可動部は後方限界位置にある。
【
図14】
図13のカードトレイを示す上面図である。バネ部等の隠れた部位の輪郭及び電子機器の接点の輪郭を破線で描画している。
【
図15】
図13のカードトレイを示す断面図である。断面は
図7の断面に対応している。カードトレイの一部(破線で囲んだ部分)を拡大して描画している。
【
図17】
図2のカードトレイ及びコネクタを示す斜視図である。カードトレイの可動部は後方限界位置にある。電子機器の所定面の一部の輪郭及び開口の輪郭を破線で描画している。
【
図18】
図1の電子機器を示す斜視図である。カードトレイの可動部は後方限界位置にある。
【
図19】特許文献1の電子機器を示す斜視図である。電子機器においてトレイはコネクタの内部に挿入されている。
【
図20】
図19の電子機器の内部を示す上面図である。トレイのピン挿入孔からピンが挿入されている。
【
図21】
図19の電子機器を示す斜視図である。トレイはコネクタから部分的に排出されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び
図2を参照すると、本発明の実施の形態による電子機器10は、カード80を収容可能である。カード80は、SIM(Subscriber Identity Module)カードであってもよいし、SIMカード以外のカードであってもよい。本実施の形態において、電子機器10の内部には、コネクタ20が取り付けられている。コネクタ20は、カード80を電子機器10の電子回路(図示せず)と電気的に接続するための装置であり、カード80を搭載したカードトレイ30と嵌合可能である。
【0021】
図2及び
図3を参照すると、本実施の形態のコネクタ20は、絶縁体からなるハウジング22と、導電体からなるシールド部材24とを備えている。コネクタ20には、ハウジング22及びシールド部材24によって規定される収容部28が形成されている。収容部28は、コネクタ20と嵌合したカードトレイ30を部分的に収容可能である。カードトレイ30が収容部28に収容されると、カードトレイ30に搭載されたカード80の電極(図示せず)は、コネクタ20のコンタクト(図示せず)と接触し、これにより、カード80は、電子機器10の電子回路(図示せず)と電気的に接続される。
【0022】
本実施の形態のコネクタ20は、ハウジング22及びシールド部材24から、全体として平板形状を有するように形成されている。但し、カードトレイ30に搭載されたカード80を電子機器10の電子回路(図示せず)に電気的に接続できる限り、コネクタ20の構造は、特に限定されない。また、コネクタ20は、電子機器10から取り外し可能であってもよく、電子機器10と一体に形成されていてもよい。即ち、コネクタ20は、電子機器10と別体の装置であってもよく、電子機器10の一部であってもよい。
【0023】
以下、本実施の形態によるカードトレイ30の基本的な構造について説明する。
【0024】
図3及び
図4を参照すると、カードトレイ30は、絶縁体からなるトレイ本体40と、導電体からなる可動部50とを備えている。トレイ本体40は、前後方向(X方向)において可動部50の前方(-X側)に位置している。
【0025】
トレイ本体40は、カード80を搭載する搭載部46を有している。本実施の形態の搭載部46には、2つのカード80をX方向に並べて搭載できる。また、可動部50は、カードトレイ30全体を後方から覆う蓋部52を有している。蓋部52は、後面(露出面)522を有している。露出面522は、垂直面(YZ平面)と平行に延びる凹凸のない平面である。但し、本発明は、これに限られず、トレイ本体40及び可動部50の構造は、必要に応じて様々に変形可能である。
【0026】
図10及び
図11を参照すると、搭載部46の前端(-X側の端)は、トレイ本体40の前端40Fに位置している。トレイ本体40の前端40Fは、カードトレイ30全体の前端である。蓋部52の露出面522は、可動部50の後端50Rに位置している。可動部50の後端50Rは、カードトレイ30全体の後端(+X側の端)である。
【0027】
図1及び
図2を参照すると、電子機器10は、YZ平面と平行な所定面12を有している。所定面12には、開口18が形成されている。カードトレイ30は、X方向において前方(-X方向)に移動することで、開口18を通過してコネクタ20の収容部28(即ち、電子機器10の内部)に挿入され収容される。即ち、電子機器10には、カードトレイ30が挿入される開口18が形成されている。
【0028】
本実施の形態によれば、トレイ本体40を開口18から電子機器10の内部に挿入して、蓋部52を前方に押圧すると、可動部50を含むカードトレイ30全体が電子機器10の内部に収容され、蓋部52は、開口18を殆ど完全に塞ぐ。詳しくは、蓋部52の露出面522は、電子機器10の所定面12と面一になり、開口18を殆ど隙間なく塞ぐ。但し、本発明は、これに限られない。例えば、カードトレイ30全体が電子機器10の内部に収容された状態(
図1及び
図2に示された状態)において、開口18には多少の隙間が残っていてもよい。また、この状態において、露出面522は、所定面12よりも多少前方に位置してもよく、所定面12よりも多少後方(+X側)に位置してもよい。
【0029】
カードトレイ30は、
図1及び
図2に示された状態において、電子機器10から簡単に引っ張り出すことができない。即ち、カードトレイ30は、電子機器10から排出困難である。但し、
図1及び
図2と併せて
図3を参照すると、カードトレイ30は、後に詳しく説明するように、電子機器10から可動部50を排出するための排出制御機構60を備えている。即ち、電子機器10に収容されたカードトレイ30は、排出制御機構60によって部分的に排出できる。
【0030】
以下、本実施の形態によるカードトレイ30の詳細な構造について説明した後、カードトレイ30の様々な部材及び部位から形成される排出制御機構60について、変形例を示しつつ詳しく説明する。
【0031】
図5を参照すると、カードトレイ30は、トレイ本体40及び可動部50に加えて、導電体からなる第1端子(端子)62と、導電体からなる第2端子(端子)64と、導電体からなる2つのバネ部(形状記憶部品)68と、導電体からなるシェル70とを備えている。
【0032】
トレイ本体40は、搭載部46に加えて、取付部42を有している。取付部42は、搭載部46の後方に位置しており、水平面(XY平面)と平行な平板形状を有している。
図5及び
図9を参照すると、取付部42には、凹部422と、2つの受容部424とが形成されている。凹部422は、上下方向(Z方向)において下方(-Z方向)に凹んだ凹みである。凹部422は、後方に開口している。受容部424の夫々は、円柱形状の底のある穴である。受容部424の夫々は、取付部42の後端において開口しており、取付部42の内部をX方向に沿って延びている。凹部422は、横方向(Y方向)において、2つの受容部424の間に位置している。
【0033】
図5を参照すると、第1端子62は、曲げを有する1枚の金属板である。第1端子62は、接触部622と、連結部624と、接続部628とを有している。
図5及び
図6を参照すると、第1端子62の大部分は、インサート成型によってトレイ本体40の内部に埋め込まれている。
図4を参照すると、接触部622は、X方向に沿って延びており、搭載部46の-Y側の側面上に部分的に露出している。
図5、
図6及び
図8を参照すると、接続部628は、Y方向に沿って延びており、受容部424の内部において部分的に露出している。連結部624は、接触部622及び接続部628を互いに連結している。
【0034】
図5を参照すると、第2端子64は、曲げを有する1枚の金属板である。第2端子64は、接触部642と、接続部648とを有している。
図5及び
図6を参照すると、第2端子64の大部分は、インサート成型によってトレイ本体40の内部に埋め込まれている。
図3を参照すると、接触部642は、X方向に沿って延びており、搭載部46の+Y側の側面上に部分的に露出している。
図5及び
図9を参照すると、接続部648は、Y方向に沿って延びており、取付部42の上面(+Z側の面)上に部分的に露出している。
【0035】
図5を参照すると、2つのバネ部68は、互いに同じ形状を有している。より具体的には、バネ部68の夫々は、金属製のつるまきばねであり、接続端682と、排出端684とを有している。
図12を参照すると、2つのバネ部68は、トレイ本体40の2つの受容部424に夫々挿入され受容されている。バネ部68の夫々は、対応する受容部424の内部をX方向に沿って延びている。バネ部68の夫々の接続端682は、第1端子62の接続部628に接続されている。
【0036】
図5に示されるように、可動部50は、蓋部52に加えて、張出部54と、2つの力受部56と、突出部58とを有している。張出部54は、X方向において露出面522の反対側に位置しており、蓋部52から前方に張り出している。力受部56の夫々は、円柱形状を有しており、張出部54から前方に延びている。突出部58は、XY平面と平行な平板形状を有しており、張出部54から前方に突出している。突出部58には、突出部58をZ方向に貫通する孔部58Hが形成されている。
図5及び
図12を参照すると、2つの力受部56は、トレイ本体40の2つの受容部424と夫々対応している。突出部58は、トレイ本体40の凹部422と対応しており、Y方向において、2つの力受部56の間に位置している。
【0037】
図5を参照すると、可動部50は、被受止部582と、2つの被ロック部588とを有している。被受止部582は、突出部58の孔部58Hの前端に位置する内壁面である。被ロック部588は、突出部58のY方向における両側面に夫々形成された窪みである。被ロック部588の夫々は、Y方向内側に(即ち、孔部58Hに向かって)窪んでいる。
【0038】
図12を参照すると、可動部50は、トレイ本体40の内部に後方から部分的に挿入されている。詳しくは、可動部50の力受部56の夫々は、トレイ本体40の対応する受容部424に挿入され受容されている。加えて、可動部50の突出部58は、トレイ本体40の凹部422に挿入され受容されている。
【0039】
図5を参照すると、シェル70は、曲げを有する1枚の金属板である。詳しくは、
図5、
図10及び
図12を参照すると、シェル70は、上板72と、2つの側板74と、下板76と、2つの後板78と、受止部722と、2つのロック部728と、2つの係合片748とを有している。
図4、
図5及び
図10を参照すると、シェル70は、トレイ本体40の取付部42に取り付けられており、上板72、側板74及び下板76は、YZ平面において取付部42の大部分を覆っている。
【0040】
図5及び
図12を参照すると、シェル70の2つの係合片748は、2つの側板74に夫々対応している。係合片748の夫々は、対応する側板74の一部から形成されており、対応する側板74の前端近傍からY方向内側に傾斜しつつ後方に延びている。
図12を参照すると、係合片748の夫々は、取付部42の後端近傍の凹みに受容されており、シェル70のトレイ本体40に対する相対的な前方移動を防止している。加えて、後板78の夫々は、取付部42の後端を部分的に覆っており、シェル70のトレイ本体40に対する相対的な後方移動を防止している。即ち、シェル70は、トレイ本体40に対して相対的に移動しないように固定されている。
【0041】
図5を参照すると、シェル70の受止部722及びロック部728の夫々は、上板72の一部から形成されている。受止部722は、上板72の後端近傍から下方に傾斜しつつ前方に延びている。ロック部728の夫々は、上板72の後端近傍から下方に延びた後、Y方向内側に張り出しつつ前方に延びている。このように形成されたロック部728の夫々は、XY平面において弾性変形可能である。2つのロック部728は、可動部50の2つの被ロック部588と夫々対応している。受止部722は、可動部50の孔部58Hと対応しており、Y方向において、2つのロック部728の間に位置している。
【0042】
図7を参照すると、シェル70の受止部722の前端は、可動部50の孔部58Hに受容されている。可動部50の被受止部582は、X方向において距離をあけて、受止部722の前端と対向している。このときの可動部50のトレイ本体40に対する相対的な位置を「初期位置」という。
図1から
図4まで及び
図6から
図12までの夫々に描画された可動部50は、初期位置にある。
図1及び
図2を参照すると、カードトレイ30が電子機器10に収容された収容状態において、可動部50が初期位置にあるとき、可動部50を含むカードトレイ30全体が電子機器10の内部に収容されており、可動部50の蓋部52は、電子機器10の開口18を塞いでいる。
【0043】
図6、
図8、
図9及び
図12を参照すると、可動部50が初期位置にあるときのバネ部68の形状を「初期形状」という。
図8及び
図12を参照すると、初期形状を取っているバネ部68の夫々において、排出端684は、可動部50と接触している。詳しくは、2つのバネ部68の排出端684は、2つの力受部56の前端と夫々接触している。力受部56の夫々は、対応する初期形状のバネ部68の排出端684に対して、前方に向かう力を多少加えていてもよいし、前方に向かう力を加えることなく単に接触していてもよい。換言すれば、バネ部68の夫々が初期形状を取っているとき、排出端684は、対応する力受部56に対して、後方に向かう僅かな力(以下、「初期力」という。)を加えていてもよいし、初期力を全く加えていなくてもよい。
【0044】
図12を参照すると、可動部50が初期位置にあるとき、シェル70の2つのロック部728は、Y方向において互いに離れるようにして弾性変形しており、これにより、突出部58をY方向において挟み込んでいる。詳しくは、ロック部728の夫々は、対応する被ロック部588に対して前方及びY方向内側に向かう力(以下「維持力」という。)を加えている。可動部50は、2つのロック部728から維持力を受けており、これにより、2つのバネ部68から初期力を受けていたとしても、初期位置に維持されている。
【0045】
図7及び
図8を参照すると、初期位置にある可動部50を前方に向かって押すと、可動部50は、バネ部68を圧縮しつつ、トレイ本体40に対して相対的に前方に移動する。但し、可動部50が僅かに前方に移動すると、可動部50の一部がトレイ本体40に突き当たり、これにより可動部50は停止する。可動部50が停止するときの可動部50のトレイ本体40に対する相対的な位置を「前方限界位置」という。可動部50が前方限界位置にあるとき、可動部50の後端50Rは、X方向において、トレイ本体40の前端40Fに最も接近している。
【0046】
図7及び
図15を参照すると、初期位置にある可動部50を後方に向かって引っ張ると、可動部50は、トレイ本体40に対して相対的に後方に移動する。但し、可動部50が後方に移動すると、可動部50の被受止部582がシェル70の受止部722に突き当たり、これにより可動部50は停止する。可動部50が停止するときの可動部50のトレイ本体40に対する相対的な位置を「後方限界位置」という。
図13から
図18までの夫々に描画された可動部50は、後方限界位置にある。可動部50が後方限界位置にあるとき、可動部50の後端50Rは、X方向において、トレイ本体40の前端40Fから最も離れている。
【0047】
上述したように、可動部50は、X方向において、トレイ本体40に対して相対的に移動可能である。特に、本実施の形態の可動部50は、X方向において、前方限界位置と後方限界位置との間をトレイ本体40に対して相対的に移動可能である。可動部50は、前方限界位置を越えて前方に移動できず、且つ、後方限界位置を越えて後方に移動できない。詳しくは、可動部50がトレイ本体40に対して相対的に後方に移動する際、可動部50が後方限界位置に達すると、被受止部582が受止部722に受け止められる。また、初期位置は、X方向において、前方限界位置と後方限界位置との間にある。但し、本発明は、これに限られない。例えば、初期位置は、前方限界位置と同じ位置にあってもよい。
【0048】
図5を参照すると、カードトレイ30の上述した様々な部材や部位(以下、単に「部材」という。)は、排出制御機構60を形成している。本実施の形態の排出制御機構60は、金属製のシェル70と、第1端子62及び第2端子64を含む金属製の2つの端子62,64と、金属製の2つのロック部728と、金属製の2つのバネ部(形状記憶部品)68とを備えている。本実施の形態のバネ部68の夫々は、形状記憶合金からなる形状記憶部品であり、バネ部68の温度に応じて、初期形状から、
図14及び
図16の夫々に示される所定形状に復元し、且つ、所定形状から初期形状に戻る。
【0049】
図6を参照すると、電子機器10は、第1接点(接点)14及び第2接点(接点)16を含む2つの接点14,16を備えている。本実施の形態において、第1接点14は、電子機器10の電源(図示せず)に接続されており、第2接点16は、グランドされている。但し、第1接点14がグランドされており、第2接点16が電子機器10の電源に接続されていてもよい。
【0050】
排出制御機構60の端子62,64は、カードトレイ30の収容状態において、電子機器10の接点14,16と夫々接触する。詳しくは、収容状態において、第1端子62の接触部622及び第2端子64の接触部642は、第1接点14及び第2接点16と夫々接触している。
【0051】
図6及び
図14を参照すると、本実施の形態に
よれば、可動部50及び排出制御機構60の様々な部材は、いずれも金属性であり良好な導電体である。可動部50が初期位置及び後方限界位置のいずれにあるときにも、可動部50及び排出制御機構60の様々な部材は、互いに電気的に接続されている。詳しくは、可動部50が初期位置及び後方限界位置のいずれにあるときにも、バネ部68の夫々の接続端682は、第1端子62に接続されており、バネ部68の夫々の排出端684は、可動部50と接触している。可動部50は、被ロック部588及びロック部728を介して、シェル70と接触している。また、
図9を参照すると、シェル70の上板72は、第2端子64の接続部648に接続されている。即ち、シェル70は、第2端子64と接触している。
【0052】
図6を参照すると、上述の電気的接続により、カードトレイ30には、第1接点14と接触した第1端子62から、可動部50及びシェル70を経由して、第2接点16と接触した第2端子64に至る電気経路が形成されている。電子機器10の電源(図示せず)から第1接点14に電流を流すと、電流は電気経路を経由して第2接点16からグランドされる。本実施の形態のバネ部68の夫々は、接点14及び端子62を経由してバネ部68を流れる電流によって発熱する。バネ部68の夫々は、常温において初期形状を取る一方、例えば70℃以上の高温において、予め記憶された形状である所定形状を取る。即ち、バネ部68の夫々は、発熱すると初期形状から所定形状に復元し、常温に戻ると初期形状に戻る。
【0053】
図12を参照すると、初期形状を取っているバネ部68の夫々の長さは、長さLIである。
図16を参照すると、所定形状を取っているバネ部68の夫々の長さは、長さLPである。
図12及び
図16を参照すると、長さLPは、長さLIよりも長い。従って、バネ部68の夫々が所定形状に復元する際、排出端684は、可動部50の対応する力受部56に対して、後方に向かう排出力を加える。排出力は、初期形状のバネ部68の夫々が対応する力受部56に対して加える初期力に比べて十分に大きい。特に、排出力は、ロック部728が可動部50を初期位置に維持する維持力よりも大きい。このため、被ロック部588は、排出力によってロック解除され、可動部50は、後方に移動する。
【0054】
図12を参照すると、本実施の形態によれば、バネ部68の夫々は、初期形状を取っているとき、可動部50に対して後方に向かう初期力を加えており、これにより、確実に可動部50と接触している。初期力は、バネ部68が所定形状に復元するときの排出力よりも弱い。ロック部728は、バネ部68が初期形状を取っているとき、この弱い初期力に抗って可動部50を一時的に初期位置に維持する。バネ部68を確実に可動部50と接触させるという観点から、初期力は、比較的強い方が好ましい。一方、ロック部728によって可動部50を確実に初期位置に維持するという観点から、初期力は、比較的弱い方が好ましく、ゼロであることが更に好ましい。
【0055】
図6を参照すると、本実施の形態によれば、バネ部68の夫々は、可動部50と、シェル70のロック部728と、シェル70の上板72とを経由して、第2端子64に電気的に接続されている。但し、バネ部68の夫々は、可動部50及びシェル70に代えて、金属線等の金属部材(図示せず)のみによって第2端子64に電気的に接続されていてもよい。この場合、可動部50は、樹脂等の絶縁体から形成してもよい。また、ロック部728の夫々は、シェル70と別体の部材であってもよい。例えば、ロック部728の夫々は、樹脂等の絶縁体からなる部材であってもよい。
【0056】
本実施の形態によれば、バネ部68の夫々は、金属線をコイル状に巻回して形成されており、これにより、比較的高い電気抵抗と低い比熱とを有している。即ち、バネ部68の夫々は、電流によって高温に発熱し易い。但し、本発明は、これに限られない。例えば、バネ部68の夫々は、所定形状に復元する際に必要な排出力を生じる限り、つるまきばねではなく、板状のバネであってもよい。この場合、バネ部68の夫々は、所定形状に復元する際に、可動部50の突出部58の前端を後方に押圧してもよい。この構造によれば、受容部424及び力受部56を設けなくてもよい。また、バネ部68の数は、2に限られず、1であってもよいし、3以上であってもよい。
【0057】
上述したように、本実施の形態の形状記憶部品68(バネ部68)は、接点14及び端子62を経由して流れる電流に応じて初期形状から所定形状に変形する。特に、本実施の形態の形状記憶部品68は、形状記憶合金からなり、接点14及び端子62を経由して形状記憶部品68を流れる電流に応じて初期形状から所定形状に変形して復元する。排出制御機構60は、形状記憶部品68が所定形状に変形(復元)することで、ロック部728による可動部50のロックを解除し、可動部50を初期位置から後方に移動させる。
【0058】
特に、本実施の形態の排出制御機構60は、ロック部728の維持力によって、可動部50を一時的に初期位置に維持する一方、接点14及び端子62を経由して流れる電流に応じてバネ部68に排出力を生じさせて、可動部50を初期位置から後方に移動させる。但し、本発明は、これに限られない。排出制御機構60は、可動部50を一時的に初期位置に維持することができ、且つ、接点14及び端子62を経由して流れる電流に応じて、可動部50を初期位置から後方に移動させることができる限り、どのような構造を有していてもよい。
【0059】
図6及び
図14を参照すると、本実施の形態によれば、電子機器10を操作画面(図示せず)で操作する等の方法によって、排出制御機構60に電流を流すだけで、可動部50を後方に向かって移動させることができる。
図17及び
図18を参照すると、このように後方に移動した可動部50は、後方限界位置に位置し、電子機器10から少なくとも部分的に排出される。詳しくは、可動部50の蓋部52を、開口18から電子機器10の外部に排出できる。例えば、電子機器10から排出された可動部50の蓋部52を後方に引っ張ることで、カードトレイ30全体を電子機器10から抜去できる。即ち、本実施の形態によれば、コネクタ20に挿入したカードトレイ30を、ピンのような操作ツールを使用することなく排出可能な排出制御機構60(
図6参照)を提供できる。
【0060】
本実施の形態によれば、コネクタ20に、ロック機構、ロック解除機構、イジェクト機構のような様々な機構(
図20参照)を設けなくてもよい。但し、カードトレイ30の排出制御機構60に加えて、コネクタ20に上述の機構を設けてもよい。
【0061】
図14を参照すると、本実施の形態によれば、収容状態において、可動部50が後方限界位置にあるときにも、ロック部728の夫々は、対応する被ロック部588と接触しており、且つ、バネ部68の夫々は、第1端子62の接続部628及び可動部50と接触している。従って、可動部50が後方限界位置にあるときにも、第1接点14から第2接点16に至る電気経路が維持されている。本実施の形態によれば、排出制御機構60を流れる電流を、電子機器10の制御部(図示せず)が所定のタイミングで停止することで、バネ部68は、所定形状から初期形状に戻る。このとき、可動部50を前方に移動させると、可動部50は、初期位置に戻る。但し、本発明は、これに限られない。例えば、可動部50が後方限界位置にあるとき、ロック部728の夫々は、対応する被ロック部588から離れていてもよい。
【0062】
図6を参照すると、本実施の形態によれば、排出制御機構60は、トレイ本体40に取り付けられている。詳しくは、ロック部728を含むシェル70は、トレイ本体40に固定されており、第1端子62及び第2端子64の夫々は、トレイ本体40の内部に固定されている。また、バネ部68の夫々の接続端682は、端子62の接続部628に固定されている。この構造によれば、収容状態において、可動部50が後方限界位置にあるときにも、端子62,64は、接点14,16と夫々確実に接触して、排出制御機構60に電流を流す。但し、本発明は、これに限られず、排出制御機構60の一部又は全部が可動部50に取り付けられていてもよい。例えば、端子62,64は、可動部50に固定されていてもよい。バネ部68の夫々の排出端684は、可動部50の対応する力受部56に固定されていてもよい。また、バネ部68の夫々は、可動部50の一部であってもよい。
【0063】
図3を参照すると、本実施の形態によれば、トレイ本体40に取り付けられたシェル70等の排出制御機構60は、トレイ本体40と共に内部構造体32を形成している。
図5を参照すると、本実施の形態によれば、シェル70の受止部722は、内部構造体32(
図3参照)の一部である。換言すれば、トレイ本体40及び排出制御機構60からなる内部構造体32は、受止部722を有している。
【0064】
特に、本実施の形態の受止部722は、排出制御機構60の一部である。但し、受止部722は、トレイ本体40の一部であってもよい。例えば、受止部722は、凹部422に形成された突起であってもよい。また、カードトレイ30には、被受止部582及び受止部722を設けなくてもよく、バネ部68の夫々は、可動部50に固定しなくてもよい。
図17及び
図18を参照すると、この場合、可動部50を後方に向かって引っ張ると、可動部50は、後方に移動してトレイ本体40から抜去される。可動部50を抜去した後、例えば、取付部42又はシェル70の後端に設けた突起部(図示せず)を保持して、カードトレイ30を後方に引っ張り出してもよい。
【0065】
図5を参照すると、本実施の形態の蓋部52は、可動部50の一部である。但し、蓋部52は、可動部50と別体の部材であってもよく、容易に取り外せるようにして可動部50の張出部54に取り付けられていてもよい。
図17及び
図18を参照すると、この場合、蓋部52の露出面522に設けた摘み部(図示せず)を摘んで蓋部52を取り外した後、可動部50を後方限界位置に移動させ、可動部50の一部を保持して、カードトレイ30を後方に引っ張り出してもよい。
【0066】
本実施の形態のカードトレイ30(特に、排出制御機構60)は、既に説明した変形例に加えて、以下に説明するように、更に様々に変形可能である。
【0067】
図12を参照すると、本実施の形態によれば、バネ部68は、形状記憶合金からなる形状記憶部品である一方、ロック部728は、形状記憶合金ではない一般的な金属からなるシェル70の一部である。即ち、ロック部728は、形状記憶部品ではない。但し、バネ部68に代えて、ロック部728が形状記憶合金からなる形状記憶部品であってもよい。この構造によっても、排出制御機構60は、可動部50を後方に移動させることができる。
【0068】
詳しくは、バネ部68に代えてロック部728が形状記憶部品である場合、可動部50が初期位置にあるとき、バネ部68は、前方に圧縮され、可動部50に対して排出力を加える。一方、ロック部728は、初期形状を取っているとき、排出力に抗って被ロック部588をロックして、可動部50を一時的に初期位置に維持する。ロック部728は、所定形状に復元する際、Y方向において被ロック部588から離れるように変形する。即ち、被ロック部588は、ロック部728が所定形状に復元することで、ロック解除される。
図13及び
図15を参照すると、この結果、可動部50は、排出力によって後方に移動し、後方限界位置に位置する。
【0069】
図12を参照すると、ロック部728及びバネ部68の少なくとも一方は、形状記憶部品であってもよい。例えば、ロック部728及びバネ部68の夫々が形状記憶部品であってもよい。この構造によっても、排出制御機構60は、可動部50を後方に移動させることができる。詳しくは、ロック部728は、形状記憶部品(ロック部728及びバネ部68)が初期形状を取っているとき、被ロック部588をロックして、可動部50を一時的に初期位置に維持する。バネ部68は、少なくとも形状記憶部品が所定形状に復元するとき、可動部50に対して排出力を加える。被ロック部588は、形状記憶部品が所定形状に復元するとき、排出力に加えてロック部728の所定形状への復元によってロック解除される。
【0070】
ロック部728は、絶縁体である形状記憶ポリマーからなる形状記憶部品であってもよい。この場合、第1端子62から第2端子64に至る電気経路の途中に電熱線等の発熱部材を設けてもよい。発熱部材は、ロック部728の近傍に配置してもよい。この構造によっても、排出制御機構60は、可動部50を後方に移動させることができる。
【0071】
図6を参照すると、カードトレイ30は、本実施の形態の排出制御機構60に代えて、例えばデジタル信号に応じて動作する排出制御機構を備えていてもよい。排出制御機構がデジタル信号に応じて動作する場合、第1接点14は、電子機器10の電源(図示せず)ではなく制御部(図示せず)に接続されていてもよい。また、第1接点14から第1端子62に供給される電流は、電子機器10の制御部(図示せず)が出力するデジタル信号を搬送してもよい。換言すれば、第1端子62に供給される電流は、電気信号でもよい。
【0072】
図5を参照すると、トレイ本体40の取付部42、可動部50及びシェル70の構造は、排出制御機構60の構造に応じて様々に変形可能である。特に、取付部42及びシェル70は、必要に応じて設ければよい。
【符号の説明】
【0073】
10 電子機器
12 所定面
14 第1接点(接点)
16 第2接点(接点)
18 開口
20 コネクタ
22 ハウジング
24 シールド部材
28 収容部
30 カードトレイ
32 内部構造体
40 トレイ本体
40F 前端
42 取付部
422 凹部
424 受容部
46 搭載部
50 可動部
50R 後端
52 蓋部
522 後面(露出面)
54 張出部
56 力受部
58 突出部
58H 孔部
582 被受止部
588 被ロック部
60 排出制御機構
62 第1端子(端子)
622 接触部
624 連結部
628 接続部
64 第2端子(端子)
642 接触部
648 接続部
68 バネ部(形状記憶部品)
682 接続端
684 排出端
70 シェル
72 上板
722 受止部
728 ロック部
74 側板
748 係合片
76 下板
78 後板
80 カード