(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】少なくとも2つの光学機能を提供可能な光学デバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20220624BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20220624BHJP
G02B 3/08 20060101ALN20220624BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G02B27/02 Z
G02B3/08
(21)【出願番号】P 2020511921
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2018073156
(87)【国際公開番号】W WO2019043016
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-23
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518341334
【氏名又は名称】インターディジタル・シーイー・パテント・ホールディングス・ソシエテ・パ・アクシオンス・シンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ボリスキン,アルチョム
(72)【発明者】
【氏名】シュラムコワ,オクサナ
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0306079(US,A1)
【文献】国際公開第2016/161175(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0268371(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00
G02B 27/02
G02B 3/08
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのユニットセル(UC;UC1、UC2)を備え、入射電磁波から出射電磁波を生じさせる光学デバイスであって、
前記ユニットセルは、
少なくとも2つのサブ波長光学要素(1、2、...、N)であって、前記サブ波長光学要素の各々は、異なるサブ波長光学要素の組(MS1、MS2、...、MSn)に属し、サブ波長光学要素の組は入射電磁波に対する光応答のタイプによって特徴付けられる、少なくとも2つのサブ波長光学要素と、
前記ユニットセルに入射した電磁波(20)に応じて、所与の組に属する全てのサブ波長光学要素の選択的な励起を可能とするナノジェットマイクロレンズ(21)と
を備え、
前記サブ波長光学要素は前記ナノジェットマイクロレンズの焦平面にある、
光学デバイス。
【請求項2】
光応答のタイプが、
前記入射電磁波に加えられる位相シフトと、
前記入射電磁波のスペクトルの少なくとも一部の振幅変化と
を含む群に属する、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記サブ波長光学要素(NP)は、
金属粒子と、
誘電体粒子と、
半導体粒子と、
光共振器と、
光アンテナと
を含む群に属する、請求項1又は2に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記サブ波長光学要素は、誘電体基板(10)上又はその内部に組み付けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記ナノジェットマイクロレンズは、前記基板に組み込まれ、前記基板の屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体材料から作製されたナノジェットマイクロレンズである、請求項4に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記ナノジェットマイクロレンズは、前記サブ波長光学要素が組み付けられている前記基板の表面から下方に間隔を置いて配置されている、請求項5に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記基板は、前記基板の屈折率よりも低い屈折率を有する媒体で充填された少なくとも1つのキャビティを備え、
前記ナノジェットマイクロレンズは、前記基板と同じ材料で形成され、前記キャビティのエッジによって誘発される屈折率によるステップによって可能となる合焦機能を有する、請求項4に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記ナノジェットマイクロレンズは、前記サブ波長光学要素が組み付けられている前記基板の表面とは反対側の前記基板の表面に取り付けられ、
前記光学デバイスは、前記ナノジェットマイクロレンズを取り囲み、前記ナノジェットマイクロレンズの屈折率よりも低い屈折率を有するホスト媒体を備えている、請求項4に記載の光学デバイス。
【請求項9】
前記ナノジェットマイクロレンズが前記基板を構成し、前記基板の表面に前記サブ波長光学要素が組み付けられている、請求項4に記載の光学デバイス。
【請求項10】
1次元のユニットセルアレイ又は2次元のユニットセルアレイを備える請求項1~9のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項11】
前記ユニットセルアレイのユニットセルは、同じサブ波長光学要素の組に属するものの同一ではない複数のサブ波長光学要素を備える、請求項10に記載の光学デバイス。
【請求項12】
前記光学デバイスがアイウェア光学デバイス又はディスプレイデバイスに属する、請求項1~11のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、光学及びフォトニクスの分野に関し、より具体的には、メタ表面(メタサーフェス)デバイスとも呼ばれる、極めて薄い光学界面に基づく平面光学デバイスに関する。本開示内容は、規格に準拠したウェアラブル光学機器(すなわち、AR(拡張現実)メガネ、VR(仮想現実)メガネ)の分野、並びに、ディスプレイ及び/又は軽量の撮像システムを含む他の様々な消費者向け電子製品に用途を見出すことができる。
【背景技術】
【0002】
本節は、様々な技術態様を紹介することを目的とする。これらの技術態様は、以下で説明及び/又は特許請求される本発明の様々な態様に関係し得るものである。本節の内容は、本発明の様々な態様のより良い理解を容易にする背景となる情報を提供するために役立つものと考えられる。したがって、これらの記載は、そのような観点で読むべきものであり、従来技術を承認するものとして読むべきものでないことを理解されたい。
【0003】
ARメガネ、VRメガネは、次世代のヒューマン・マシン・インタフェースと考えられており、したがって、消費者向け電子機器及びモバイルデバイスの領域における主要な産業プレイヤの大きな関心を引き起こしている。
【0004】
ARメガネ、VRメガネ(より一般的には、アイウェア電子デバイス)の開発は、そのようなデバイスのサイズ及び重量の削減、並びに、真の没入型ユーザエクスペリエンスを可能にするほど十分にリアル感のあるべき(コントラスト、視野、色深度等に関する)画質の改善を含む多くの難題を伴っている。
【0005】
画質と光学要素の物理サイズとの間のトレードオフは、ARメガネ、VRメガネ等のより複雑な光学システムの構成単位として用いることができる超小型(好ましくは、サブ波長サイズ)の光学要素の研究の動機となっている。
【0006】
屈折マイクロレンズ及び回折マイクロレンズ並びに自由形状の光コンバイナ等の、従来の体積のある測定光学要素はかさばり、したがって、アイウェアデバイスのニーズを十分に満たすものではない。
【0007】
所望の性能をもたらすには、別の物理原理に基づく代替的な解決策が必要である。
【0008】
従来の光学要素に特有の限界を克服するために、複数のサブ波長スケールの光共振器を備える光学界面に基づく、極めて薄い光学デバイスの新たな系統が近年提案されている。この系統のデバイスは、「フラット光学」デバイス及び「メタ表面(メタサーフェス)」デバイスとも呼ばれる。
【0009】
メタ表面は、通常は金属(例えば、金)製又は高屈折率誘電体材料(例えば、シリコン)製の個々の微粒子から形成される、サブ波長間隔で配置されたサブ波長サイズの光学要素の、光学的に薄い(すなわち、入射電磁波の波長よりもはるかに薄い)アレイとして定めることができる。これらの光学要素は、共振器、光アンテナ等として機能することができる。メタ表面は、水平次元においてサブ波長スケールのパターンを用いて構造化される場合もあれば、そうではない場合もある。
【0010】
メタ表面は、その寸法及び周期が動作波長に比べて小さい散乱要素の周期的なアレイとして定めることもできる。
【0011】
動作波長と比較してメタ表面の厚さを無視できることによって、メタ表面(ユニットセル要素の準共振(near resonance))は、衝突光の振幅及び位相の双方における突然の変化をもたらす不連続な界面とみなすことができる。したがって、メタ表面の最も重要な用途の1つは、局所的な勾配位相シフトを到来波に与えることにより電磁波の波面を制御することである。メタ表面は、入射電磁波(例えば、可視光)の位相、振幅、及び/又は偏向の突然の変化を実際に提供することができる。
【0012】
その上、メタ表面デバイスの光応答は、個々の微粒子の形状及びサイズ、及び/又は、それらの微粒子間の間隔を調節することによって適合させることができる。
【0013】
このような光共振器は、誘電体プレート上又はその内部に組み付けられて、合焦、ビーム偏向、及び偏波変換等の、一般に関心が持たれている多くの光学デバイスに必要な集合的応答(collective response)を提供することができる。メタ表面デバイスの幾つかの例が、非特許文献1に見られ、
図1にも示す。
【0014】
光領域において動作する、これまでに報告されている全てのメタ表面デバイスは、非常に魅力的なフォームファクタ(極めて薄くフラットな形状)を有するものの、角度性能(angular performance)が不十分であることを含めて、幾つかの限界がある。同時に、到来波の種々の入射角に対してメタ表面デバイスの光応答を調節できることが、ARメガネ、VRメガネを含む多くの用途において問題となり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】P. Genevet、F. Capasso他、「Recent advances in planar optics: from plasmonic to dielectric metasurfaces」、Optica 4(1), 139-152, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、従来技術の改良をもたらす、メタ表面の使用に依拠した光学デバイスを提供することが求められている。また、少なくとも2つの異なる照射条件(特に、到来電磁波の少なくとも2つの異なる入射角)について、少なくとも2つの異なる光学機能を提供可能な、そのような光学デバイスを提供することも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本明細書において「1つの実施形態」、「一実施形態」、「一例の実施形態」等と言う場合、これは、説明される実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含むことができるが、あらゆる実施形態がその特定の特徴、構造、又は特性を必ずしも含んでいるとは限らない場合があることを示す。その上、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性が一実施形態に関して説明される場合、明示的に説明されているか否かを問わず、そのような特徴、構造、又は特性を他の実施形態に関して実施することが当業者の知識の範囲内にあることを述べておく。
【0018】
本開示の一実施形態によれば、入射電磁波から出射電磁波を形成する光学デバイスは、少なくとも1つのユニットセルを備える。このユニットセルは、
少なくとも2つのサブ波長光学要素であって、このサブ波長光学要素の各々は、異なるサブ波長光学要素の組に属し、サブ波長光学要素の組は入射電磁波に対する光応答のタイプによって特徴付けられる、少なくとも2つのサブ波長光学要素と、
上記ユニットセルに入射した電磁波に応じて、所与の組に属する全てのサブ波長光学要素の選択的励起を可能にする手段と
を備える。
【0019】
したがって、本開示は、メタ表面デバイスの使用に依拠した光学デバイスの新規かつ進歩性のある手法に依拠している。
【0020】
実際に、ほとんどの従来技術の場合、メタ表面(metasurface,MS)デバイスは、誘電体基板上又はその内部に組み付けられるサブ波長サイズのナノ粒子(nanoparticle,NP)に基づいている。これらの粒子は、入射光の波長よりも短い周期を有する規則的な1次元アレイ又は2次元アレイの形態で組み付けられる。従来技術のMSデバイスの光応答は、個々のナノ粒子のサイズ、形状及び向きを変更することによって調節される。任意の入射角について、従来技術のMSデバイスの光応答は、全てのNPの累積的な応答によって定められる。
【0021】
MSデバイスの光応答の調節において追加の自由度を提供するために、本開示は、2つ以上の異なる組に属する要素の選択的励起を可能にする手段を有する複合メタ表面(少なくとも2つのメタ表面に対応する少なくとも2つの要素の組を備え、各MSは他のMSと異なる光応答を生成する)を構築することを提案する。
【0022】
換言すれば、本開示の実施形態による光学デバイスのユニットセル(unit cell:単位セル)は、そのサイズ及び間隔が入射電磁波の波長よりも小さい(例えば、λ/2よりも小さい)、サブ波長光学要素とも呼ばれる少なくとも2つの光学要素を備える。これらのサブ波長光学要素は、異なるサブ波長光学要素の組に属する。同じ組の全てのサブ波長光学要素は、ユニットセルに対して所与の入射角を有する入射電磁波に対するデバイスの光応答に寄与する。
【0023】
さらに、かかるユニットセルは、所与の組のサブ波長光学要素を選択的に励起する手段を備える。したがって、そのような手段は、到来する光の異なる入射角について光学デバイスの少なくとも2つの異なる光応答を可能にする。例えば、到来する電磁波の第1の入射角について、励起され、したがって、光学デバイスの光応答を生成するのは第1の組のサブ波長光学要素であり、到来する電磁波の第2の入射角について、励起され、したがって、光学デバイスの異なる光応答を生成するのは第2の組のサブ波長光学要素である。例えば、1つの実施形態では、2つの異なる光応答は、入射波の2つの異なる傾き(入射波の伝播方向に対する2つの異なる偏角)を含むことができる。
【0024】
したがって、所与の組の全ての要素は、所与の入射角について照射され、同時に、所与の照射条件下でデバイスの光応答に寄与するので、入射電磁波に対する光学デバイスの光応答は、組の全てのサブ波長光学要素の部分的な寄与によって影響される。
【0025】
したがって、本開示の実施形態による光学デバイスは、少なくとも2つの異なる照射条件について少なくとも2つの異なる光学機能を提供することが可能な角度選択性メタ表面デバイスに依拠する。光は、光学デバイスを通って伝播するが、入射波の波面は、(同じ組に属する異なるサブ波長要素との相互作用によって引き起こされる入射波の振幅及び/又は位相の局所的な変化により)再形成される。その結果、出射電磁波は、入射電磁波と比較して、その伝播方向を変更することができ、及び/又は、焦点に収束することができる。
【0026】
本開示の一実施形態によれば、光応答のタイプは、
入射電磁波に加えられる位相シフトと、
入射電磁波のスペクトルの少なくとも一部の振幅変化と、
を含む群に属する。
【0027】
したがって、同じ組に属する全てのサブ波長光学要素は、光学デバイスの同じ質的な光応答に寄与する。ただし、それらの寄与は、量的には異なる場合がある。
【0028】
それらのサブ波長光学要素は、例えば、全てが、異なる規模で位相遅延を入射電磁波に適用することに寄与することができ、そのため、入射波面に沿った位相遅延変動を、入射平面波を傾斜又は合焦させるのに用いることができる。
【0029】
所与のサブ波長光学要素の組も、入射電磁波の位相遅延及び振幅の双方に作用することができる。
【0030】
本開示の一実施形態によれば、所与の組に属する全てのサブ波長光学要素の選択的励起を可能にする手段は、導光要素(LGE:light guiding element)であり、サブ波長光学要素は、この導光要素の焦平面に配置される対象とされる。
【0031】
そのような導光要素は、合焦機能を保証し、或る組のサブ波長光学要素上又は別の組のサブ波長光学要素上のいずれかに光を合焦させることができ、したがって、光学デバイスによって提供される光学機能を選択することができる。
【0032】
本開示の一実施形態によれば、導光要素はナノジェットマイクロレンズである。このレンズは、もちろん、他の任意のタイプの回折レンズ又は屈折レンズとすることもできる。しかし、ナノジェットマイクロレンズを導光要素として用いることによって、非常に小さなサイズのユニットセルを実現することが可能になる。
【0033】
そのようなナノジェット(NJ:nanojet)マイクロレンズは、国際出願PCT/EP17/057130号及び同PCT/EP17/057131号に最初に提示されているが、これらの国際出願は、本特許出願の出願時にはまだ公開されていなかった。それらのNJマイクロレンズは、近距離ゾーンにおいて集光された光ビーム(いわゆるナノジェットビーム)を生成することができる。その長さ及び電力半値ビーム幅(BWHP)は、レンズの材料、形状、及びサイズを変えることによって調節することができる。NJビーム形成を補完するものとして、NJマイクロレンズは、クワイエットゾーンも生成することができる。このクワイエットゾーンは、入射波の電界強度値をはるかに下回る非常に低い電界強度値によって特徴付けられるゾーンである。その結果、ナノジェットビームが到達したユニットセルのサブ波長光学要素は励起され、それらの光応答を提供する一方、クワイエットゾーンにあるユニットセルのサブ波長光学要素は励起されず、光学デバイスの光応答に寄与しない。
【0034】
そのようなナノジェットマイクロレンズは、種々の形状を有することができ、任意の断面を有する柱体、角柱体、錐体等を対象とすることができる。
【0035】
本開示の一実施形態によれば、サブ波長光学要素は、
金属粒子と、
誘電体粒子と、
半導体粒子と、
光共振器と、
光アンテナと
を含む群に属する。
【0036】
本開示の一実施形態によれば、サブ波長光学要素は、誘電体基板上又はその内部に組み付けられる。
【0037】
本開示の第1の特定の実施形態によれば、ナノジェットマイクロレンズは、基板に組み込まれ、基板の屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体材料から作製されたナノジェットマイクロレンズである。
【0038】
一実施形態では、ナノジェットマイクロレンズは、サブ波長光学要素が組み付けられる基板の表面の下方に、H+T=Fとなるような間隔を置いて配置される。ただし、HはNJマイクロレンズの高さであり、TはNJマイクロレンズの上部から表面までの距離であり、Fはマイクロレンズの焦点距離である。
【0039】
本開示の第2の特定の実施形態によれば、基板は、基板の屈折率よりも低い屈折率を有する媒体で充填された少なくとも1つのキャビティを備え、ナノジェットマイクロレンズは、基板と同じ材料で形成され、(複数の)キャビティのエッジによって誘発される屈折率によるステップによって可能となる合焦機能を有する。
【0040】
本開示の第3の特定の実施形態によれば、ナノジェットマイクロレンズは、サブ波長光学要素が組み付けられる基板の表面とは反対側の基板の表面に取り付けられ、光学デバイスは、ナノジェットマイクロレンズを取り囲み、ナノジェットマイクロレンズの屈折率よりも低い屈折率を有するホスト媒体を備える。
【0041】
本開示の第4の特定の実施形態によれば、ナノジェットマイクロレンズは基板を形成し、その基板の表面にサブ波長光学要素が組み付けられる。
【0042】
更なる実施形態によれば、光学デバイスは、1次元ユニットセルアレイ又は2次元ユニットセルアレイを備える。
【0043】
したがって、そのような光学デバイスは、同じ誘電体基板上又はその内側に組み付けられる少なくとも2つのサブ波長光学要素アレイを備える複合メタ表面(compound metasurface, CMS)を備える。それらのサブ波長光学要素は、アレイの平面において交互に配置される。これらのサブ波長光学要素アレイは、1次元(1D)又は2次元(2D)とすることができ、したがって、1つ又は2つの平面において周期性を有する。
【0044】
更に別の実施形態によれば、ユニットセルアレイのユニットセルは、同じサブ波長光学要素の組に属するものの、同一ではないサブ波長光学要素を備える。
【0045】
実際に、各サブ波長光学要素アレイの要素は、それらの要素が、その光応答のタイプによって特徴付けられる同じサブ波長光学要素の組に属する限り、明らかに同一でないものとすることができる。例えば、サブ波長光学要素は、異なる形状及び向きを有する金属ストリップとすることもできるし、可変のサイズ及び/又は方位を有する円形断面又は方形断面を有するサブ波長誘電柱体とすることもできる。それらの要素は、1Dアレイを形成するストリップの形態を有することもできる。
【0046】
更なる実施形態によれば、そのような光学デバイスは、アイウェア光学デバイス又はディスプレイデバイスに属する。
【0047】
実際に、複合メタ表面は、次世代のアイウェア光学デバイスに求められる、より高性能な角度選択性の光応答を可能にすることができる。
【0048】
本開示内容は、保護範囲を限定するものではなく例として与えられる以下の説明及び図面を参照することによって、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】従来技術によるメタ表面デバイスの例を示す図である。
【
図2A】
図1に示した従来技術のメタ表面デバイスの側面図である。
【
図2B】2つのナノ粒子アレイを備える複合メタ表面を示す図である。
【
図2C】本開示の一実施形態による光学デバイスの説明図である。
【
図3】
図2Cに示した光学デバイスの最も単純な形態の説明図である。
【数1】
によって照射される柱状NJマイクロレンズの近距離ゾーンにおける電力密度を示す図である。
【
図5】同一でない複数のユニットセルから作製された、本開示による光学デバイスの代替の実施形態を示す図である。
【
図6】本開示による、光学デバイスのユニットセルの幾つかの例示的な実施形態を示す図である。
【
図7】本開示の1つの実施形態による、光学デバイスの動作を制御するために用いることができるデバイスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図における要素は、必ずしも一律の縮尺ではなく、代わりに、本発明の原理を示すことに重点がおかれている。以下の説明全体を通して、同じ符号は同じ要素を示すために用いられる。
【0051】
本開示内容の全体的な原理は、少なくとも2つの異なる照射条件について少なくとも2つの異なる光学機能を提供可能な角度選択性メタ表面デバイスに依拠する。
【0052】
本開示の実施形態の説明の前置きとして、
図1に、従来技術のメタ表面デバイスを用いて波面制御に対処するために提案されている種々の解決策の例を示す。
図1の(a)~(c)からなる上段では、ナノ構造物の光応答が、メタ表面を形成する各個々の共振器の形状を変化させることによって調整される。(d)~(g)からなる
図1の中段では、パンチャラトナム・ベリー(Pancharatnam-Berry, PB)位相に基づくメタ表面が、反射及び透過の双方において非常に高い散乱効率を示している。(h)~(k)からなる
図1の下段は、共振同調及びPB位相同調の双方を用いることによって機能するハイブリッドメタ表面を示している。
【0053】
これらの例では、サブ波長光学要素は、形状及び向きが異なる複数の金属ストリップからなるものとすることもできるし(
図1(a)、(d)及び(h))、サイズ及び/又は向きが可変の、円形断面又は方形断面を有するサブ波長の誘電柱体からなるものとすることもできるし(
図1(b)、(e)~(g))、あるいは1Dアレイを形成するストリップの形態を取ることもできる(
図1(c)、(k))。
【0054】
図2Aは、サブ波長光学要素の規則的なアレイを備えた、そのような従来技術のメタ表面デバイスの側面図であり、全ての要素が同じ組に属している。
図2Aの説明図では、全てのサブ波長光学要素が同一であることに留意しなければならない。他方、
図1の従前の例では、要素は同一ではない(入射波の位相を局所的に変化させるためにサイズ、形状、向き等が変わる)が、同じ要素の組に属する。
【0055】
メタ表面MS1は、サブ波長光学要素1の規則的なアレイから形成され、屈折率n1を有する基板10の表面に組み付けられる。サブ波長光学要素1は、屈折率n2を有するホスト媒体11内に浸漬される。
【0056】
図2A及び
図2Bのメタ表面デバイスは、伝播方向が矢印20によって示される入射EM波によって照射される。
【0057】
図2Bに、2つのサブ波長光学要素アレイMS1及びMS2を備える複合メタ表面を示す。各サブ波長光学要素アレイは、同じタイプの、すなわち同じ組に属する複数のサブ波長光学要素を備える。したがって、複合メタ表面は、2つの異なる組に属するそれぞれ符号1及び2で参照されるサブ波長光学要素を備える。所与の組(符号1又は2)の中で、サブ波長光学要素は、同一である場合もあるし、同一でない場合もある。サブ波長光学要素1、2は、屈折率n
1を有する基板10の表面に組み付けられる。それらのサブ波長光学要素は、屈折率n
2を有するホスト媒体11に浸漬される。サブ波長光学要素1及び2は、基板10の表面に交互に配置される。そのため、サブ波長光学要素のうちの第1のタイプの各サブ波長光学要素1は、サブ波長光学要素のうちの第2のタイプの2つのサブ波長光学要素2によって直接囲まれ、また、その逆も同様である。
【0058】
図2Cは、本開示の一実施形態による光学デバイスの説明図である。
【0059】
図2Cの例示的な図面には、2つのユニットセルUC1及びUC2が示されている。光学デバイスは、ユニットセルUC
iのアレイを備えることができる。このアレイは、(
図2Cの側面図に示すように)1次元とすることもできるし、XY平面上の2次元とすることもできる。各ユニットセルUC1、UC2は、種々の入射角を有する入射電磁波20を受ける導光要素21を備えている。
【0060】
かかるLGE21は、よく知られている屈折レンズ又は回折レンズ等の任意のタイプの合焦デバイスとすることもできるし、以下でより詳細に説明する特殊な実施形態では、ナノジェットマイクロレンズとすることもできる。ナノジェットレンズを用いて最小サイズのユニットセルを得ることが実際には有利であり得る。
【0061】
かかるLGE21は、屈折率n1を有する基板10の底面の下側に配置される。基板10の上面は、符号1~Nで示されるサブ波長光学要素を保持する。
【0062】
各ユニットセルUC1、UC2は、N個のサブ波長光学要素からなるアレイを備えている。各サブ波長光学要素は、異なるサブ波長光学要素の組MSi(iは1~Nの範囲を有する)に属する。各組MSiは、入射波に対して特有の光応答によって特徴付けられる。例えば、各組MSiは、当該組のサブ波長光学要素が選択的に照射されたときに、入射EM波の伝播方向に対して定められる、光学デバイスにおける入射電磁波の異なる偏向角度を誘発することができる。
【0063】
このように、
図2Cの例では、各ユニットセルUC
iは、N個のサブ波長光学要素1~Nを備え、これらの要素は、N個の異なるサブ波長光学要素の組MS1~MSNに属する。これらの要素はLGE21の焦平面(焦点面、focal plane)に配置される。
【0064】
LGE21は、到来入射波20に応じて光ビーム22を生成する合焦要素として機能する。光ビーム22は、所与の組MSiのサブ波長光学要素を選択的に励起する。LGE21は、全てのユニットセルについて同一であるため、光学デバイスの全てのユニットセルにおいて、同じ組のサブ波長光学要素が同時に励起される。
【0065】
したがって、
図2Cの例では、このような光学デバイスは、N個の異なるサブ波長光学要素の組のN個の光応答に対応するN個の異なる光学機能を実行することができる。
【0066】
より単純な実施形態では、ユニットセルUCiにおけるサブ波長光学要素の組の数を2つ、すなわち、サブ波長光学要素1を有するMS1と、サブ波長光学要素2を有するMS2とに限定することができる。光学デバイスは、1つのユニットセルUCのみを備えることができる。これを
図3に示す。LGE21に対する電磁波20の入射角に応じて、LGE21は、メタ表面MS1に属するサブ波長光学要素1を選択的に励起する光ビーム22
1の光、又は、メタ表面MS2に属するサブ波長光学要素2を選択的に励起する光ビーム22
2の光を合焦させる。
【0067】
図5に示す別の実施形態では、光学デバイスは幾つかのユニットセルを備え、各ユニットセルは、同じサブ波長光学要素の組に属するサブ波長光学要素を備えるが、同一ではないものとすることができる。
【0068】
より正確には、各ユニットセルUC1及びUC2は、符号1及び2で示す2つのサブ波長光学要素を備え、各要素は、異なるサブ波長光学要素の組MS1及びMS2に属する。しかし、各アレイMS1及びMS2の要素は、(同じサブ波長光学要素の組に属するが)両セルを通じて同一ではないので、ユニットセルUC1及びUC2は同一ではない。
図5の単純な例では、サブ波長光学要素は、一方のユニットセルと他方のユニットセルとでサイズが異なる。すなわち、組MS1に属するナノ粒子1は、ユニットセルUC1の方がユニットセルUC2よりも大きい一方で、組MS2に属するナノ粒子2は、ユニットセルUC1の方がユニットセルUC2よりも小さい。所与の組MS1又はMS2のナノ粒子の光応答は、タイプ(例えば、位相遅延)が同じままであるが、大きさが異なる場合があり、したがって、出射波の波面の形状は異なることになる。
【0069】
好ましい実施形態では、LGEによる、サブ波長サイズのナノ粒子又はサブ波長光学要素の所望の選択的励起を可能にするために、LGE21はナノジェットマイクロレンズである。かかるナノジェットマイクロレンズは、本特許出願の出願時には公開されていなかった国際出願PCT/EP17/057130号及び同PCT/EP17/057131号に最初に提示されていることに注意されたい。
【0070】
本開示の複合メタ表面の実施にとって重要なNJマイクロレンズの重要な特徴を挙げると、以下のとおりである。
-NJマイクロレンズは、ホスト媒体の屈折率よりも高い屈折率を有する均質な誘電体から作製することができる。別の方法として、NJマイクロレンズは、国際出願PCT/EP17/057130号に記載されているような中空リング又は国際出願PCT/EP17/057131号に記載されているような一組の任意形状のキャビティの形態で作製することができる。
-NJマイクロレンズは、任意の断面を有する誘電柱体(又は錐体若しくは角柱体)の形態を有することができる。
-NJマイクロレンズの直径(すなわち、入射波伝播方向に直交する平面における断面寸法)及び高さ(すなわち、入射波伝播方向に沿った柱体のサイズ)は、約1/2波長と少数波長との間で変えることができる。
-NJマイクロレンズは、近距離ゾーンにおいて集光された光ビーム(いわゆるナノジェットビーム)を生成することができる。その長さ及び電力半値ビーム幅(half power beam width, BWHP)は、レンズの材料、形状、及びサイズを変えることによって調節することができる。より具体的には、NJビームの形状は、基部のエッジラインの形状及び曲率と、柱体(角柱体、錐体)の底角とに依存する。レンズのトポロジに応じて、NJビームの軸は、欧州特許出願第16306387.8号(本特許出願の出願時にはまだ公開されていなかった)に記載されているように、レンズ軸及び入射光の伝播方向と一致する場合もあるし、一致しない場合もある。
-NJビーム形成を補完するものとして、NJマイクロレンズは、クワイエットゾーン(quiet zone)も生成することができる。このクワイエットゾーンは、欧州特許出願第16306386.0号(本特許出願の出願時にはまだ公開されていなかった)に記載されているように、入射波の電界強度値をはるかに下回る非常に低い電界強度値によって特徴付けられるゾーンである。
-柱体のNJマイクロレンズの電力半値におけるNJビーム幅の通常の値は、入射波長の約1/2である。
-NJビームの長さは、数波長(例えば、10波長以上)にわたって変えることができる。
-到来した光に傾きが発生している(すなわち、伝播方向が柱体の光軸と一致せず、及び/又は、柱体の基面に垂直でない)場合、NJビームも、到来する光の入射角に従って傾斜させることができる。同じ動作は、クワイエットゾーンについても見られる。この動作を
図4Cに示す。
【0071】
図4に、下方から入射する単位振幅の直線偏波平面波
【数2】
によって照射される柱体NJマイクロレンズ21の近距離ゾーンにおける電力密度を実際に示す。ただし、
n
2=1は、NJマイクロレンズ21を取り囲むホスト媒体の屈折率であり、
n
3=1.5は、NJマイクロレンズ21の屈折率であり、
R=500nmは、柱状NJマイクロレンズ21の半径であり、
H=500nmは、柱状NJマイクロレンズ21の高さである。
【0072】
より正確には、
図4Aに、NJマイクロレンズ21に用いられるトポロジ及び表記を示し、
図4Bに、z=z0における焦平面内のx軸に沿った電力密度プロファイルを示し、
図4Cに、平面波の種々の入射角のxz平面における電力密度分布を示す。
【0073】
図4A~
図4Cからわかるように、柱状NJマイクロレンズ21の例示的な実施形態の場合、NJビームの形状及びそのピーク強度は、直線偏波平面波の入射角γが少なくとも30度まで異なっても良好に維持される。
図4Cの種々の図は、左から右に向かってそれぞれγ=0度、γ=10度、γ=20度及びγ=30度の直線偏波平面波の入射角に対応する。
【0074】
複合メタ表面デバイスにおける2つの近傍のサブ波長光学要素の選択的な励起を可能とするには、電界強度に関する差の少なくとも2倍(a factor of two)が、照射されるサブ波長光学要素及び照射されないサブ波長光学要素について推奨される。
図4Bにおいて確認することができるように、選択された例示のNJマイクロレンズ21について、この条件は、例えば、γ=0度及びγ=20度の場合に満たされる。また、この条件は、γ=-10度、γ=10度及びγ=30度の場合も満たされる。
【0075】
言い換えれば、このようなナノジェットマイクロレンズ21を用いると、γ=0度の入射角でNJマイクロレンズ21に到達する電磁波により第1の組MS1のサブ波長光学要素1を選択的に励起することが可能であり、γ=20度の入射角でNJマイクロレンズ21に到達する電磁波により第2の組MS2のサブ波長光学要素2を選択的に励起することが可能である。したがって、到来する光の2つの異なる入射角について2つの異なる光学機能を提供することが可能な角度選択性メタ表面デバイスを構成することが可能である。
【0076】
また、このようなナノジェットマイクロレンズ21を用いると、γ=-10度の入射角でNJマイクロレンズ21に到達する電磁波により第1の組MS1のサブ波長光学要素1を選択的に励起することが可能であり、γ=10度の入射角でNJマイクロレンズ21に到達する電磁波により第2の組MS2のサブ波長光学要素2を選択的に励起することが可能であり、γ=30度の入射角でNJマイクロレンズ21に到達する電磁波により第2の組MS3のサブ波長光学要素3を選択的に励起することが可能である。したがって、到来する光の3つの異なる入射角について3つの異なる光学機能を提供することが可能な角度選択性メタ表面デバイスを構成することが可能である。図示していないが、第4の組に属する第4のサブ波長光学要素も追加し、-30度(対称性に従う)の入射角について選択的に励起することができ、したがって、4つの異なる光学機能を提供することが可能な光学デバイスを実現することが可能になる。
【0077】
図6に、本開示による光学デバイスのユニットセルの幾つかの例示的な実施形態を示す。これらの例では、ユニットセルごとに任意の数のサブ波長光学要素が示されている(すなわち、
図6A、
図6B、
図6Cでは7つ、
図6Dでは5つ)。ただし、最も単純な場合には、ユニットセルは、2つの異なるサブ波長光学要素の組に属する2つのサブ波長光学要素のみを備えることに留意されたい。
【0078】
図6Aの実施形態におけるユニットセルUCは、屈折率n
1を有する誘電体基板10の表面に組み付けられた高屈折率(n
4)の誘電体材料から作製された一組のサブ波長光学要素NPを備える。これらのサブ波長光学要素NPは、屈折率n
2<n
4を有するホスト媒体11によって囲まれている。基板10は、この基板の屈折率n
1よりも高い屈折率n
3を有する誘電体材料から作製された柱状NJマイクロレンズの形態のLGE21を備える。LGE21は、ユニットセルUCの中央に、サブ波長光学要素NPが組み付けられた基板10の表面から下方に間隔を置いて配置されている。
【0079】
図示していないが、この場合も、当業者であれば、NJマイクロレンズ21を従来の屈折レンズ又は回折レンズと置き換えることもできる。
【0080】
図6Bの実施形態におけるユニットセルUCは、LGE21に関係した部分を除いて、
図6AのユニットセルUCと同様である。この実施形態では、LGE21は、屈折率n
3=n
1を有する基板10と同じ材料から作製され、LGE21の合焦機能は、(国際出願PCT/EP17/057130号にあるように)1つのキャビティ60又は(国際出願PCT/EP17/057131号にあるように)幾つかのキャビティ60を作製することによって有効となる。(複数の)キャビティ60は、屈折率n<n
3を有する媒体で充填される。高屈折率(n
4)の誘電体材料から作製される一組のサブ波長光学要素NPは、誘電体基板10の表面に組み付けられている。サブ波長光学要素NPは、屈折率n
2<n
4を有するホスト媒体11によって囲まれている。この場合も、NJマイクロレンズ21を、任意のタイプの屈折レンズ又は回折レンズと置き換えることができる。
【0081】
図6Cの実施形態におけるユニットセルUCは、LGE21の位置を除いて、
図6AのユニットセルUCと同様である。この実施形態では、NJマイクロレンズ21は、屈折率n
1を有する薄い基板10に取り付けられている。この基板の反対側の表面は、NPのアレイを支持している。レンズ材料の屈折率は、ホスト媒体11の屈折率n
2よりも高いものであれば、任意に選択することができる。1つの実施形態では、この屈折率は、基板と同じ値、すなわちn
1を有することができる。この場合も、NJマイクロレンズ21は、任意のタイプの屈折レンズ又は回折レンズと置き換えることができる。
【0082】
図6Dの実施形態におけるユニットセルUCは、
図6A~
図6Cと同じタイプのサブ波長光学要素NPを備えることができるが、その要素NPは、柱体の形態を有するNJレンズ21の上面に直接組み付けられている。このレンズの高さは、柱体21の上面にホットスポットが直接形成される値まで(他の実施形態と比較して)増加している。ナノジェットマイクロレンズ21は、屈折率n
1を有する基板10の上面に取り付けることができる。1つの実施形態では、ナノジェットマイクロレンズ21は、基板10と同じ材料から作製することができる。
【0083】
上述した全ての実施形態において、サブ波長光学要素NPは、そのレイアウトが照射条件及び所望の光応答に対して最適化されることになる1Dアレイ又は2Dアレイに配列することができる。
【0084】
更に別の実施形態(不図示)では、本開示による光学デバイスは、2Dのサブ波長要素及び/又は2Dのナノジェットマイクロレンズとして機能する異なる幅、高さ、形状を有するバー又は溝がその表面に形成された誘電体基板を備える複合メタ表面を備えることができる。
【0085】
複合メタ表面の特定の照射条件及び/又はレイアウトに適合したNJマイクロレンズのより複雑な形状を、例えば、欧州特許出願第16306387.8号に記載されているような、例えば、N次ギア(N-order gears)、フラワ(flowers)、又は曲線の形態で用いることもできる。
【0086】
本開示の実施形態による光学デバイスの複合メタ表面は、UV/DUV/Eビームリソグラフィ等の確立されたナノ加工法を用いて加工することができる。
【0087】
図7に、本開示の1つの実施形態による光学デバイスの動作を制御するために用いることができるデバイスの一例を示す。
【0088】
符号700で示すそのようなデバイスは、符号701で示す計算ユニット(例えば、「Central Processing Unit(中央処理装置)」を表すCPU)と、符号702で示す1つ以上のメモリユニット(例えば、コンピュータプログラムの命令の実行中に中間結果を一時的に記憶することができるRAM(「Random Access Memory(ランダムアクセスメモリ)」を表す)ブロック、又は、とりわけコンピュータプログラムが記憶されるROMブロック、若しくは、EEPROM(「Electrically-Erasable Programmable Read-Only Memory(電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ)」)ブロック若しくはフラッシュブロック)とを備える。コンピュータプログラムは、計算ユニットが実行することができる命令から構成される。そのようなデバイス700は、デバイス700が他のデバイスと通信することを可能にする入出力インタフェースを構成する、符号703で示す専用ユニットも備えることができる。特に、この専用ユニット703は、(非接触による通信を行うために)アンテナと接続することもできるし、光源/受信ユニット(例えば、フォトダイオード、光ファイバ、検出器、例えば、フォトダイオード等)と接続することもできるし、シリアルポート(「接触」通信を行う)と接続することもできる。
図7における矢印は、連結されたユニットが、例えば、バスを通じて、互いに、データを交換することができること示していることに留意されたい。
【0089】
代替の実施形態では、本開示の1つの実施形態によるデバイスの動作の制御は、プログラマブルFPGA(「Field Programmable Gate Array(フィールドプログラマブルゲートアレイ)」)要素又はASIC(「Application-Specific Integrated Circuit(特定用途向け集積回路)」)要素においてハードウェアで実施することができる。