(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-24
(45)【発行日】2022-07-04
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20220627BHJP
H01L 21/208 20060101ALI20220627BHJP
H01L 21/368 20060101ALI20220627BHJP
C23C 16/448 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/208 Z
H01L21/368 Z
C23C16/448
(21)【出願番号】P 2021518819
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035222
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】平松 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】織田 容征
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181809(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/234917(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/133131(WO,A1)
【文献】特開2018-107240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/208
H01L 21/368
C23C 16/448
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する搬送処理を実行する基板搬送部と、
原料ミストが存在するミスト空間を内部に有する成膜室とを備え、
前記成膜室は、
原料溶液を収容する原料溶液用容器と、
前記原料溶液用容器の底面に設けられる少なくとも一つの超音波振動子とを含み、
前記少なくとも一つの超音波振動子による超音波振動動作によって、前記原料溶液をミスト化して前記原料ミストを生成することにより、前記ミスト空間が得られ、
前記基板搬送部による前記搬送処理は、前記ミスト空間を通過するように前記基板を移動させるミスト空間通過処理を含み、前記ミスト空間通過処理の実行時に前記基板上に薄膜が成膜され
、
前記成膜室は、
前記原料溶液用容器の上方に配置される上方容器と、
前記ミスト空間内で前記原料ミストを循環させる循環用送風動作を実行する循環用ファンとをさらに含む、
成膜装置。
【請求項2】
請求項1記載の成膜装置であって、
加熱空間にて前記基板を加熱する加熱処理を実行する加熱機構をさらに備え、
前記加熱空間と前記ミスト空間とが互いに影響を受けないように、前記加熱機構及び前記成膜室は分離して配置され、
前記基板搬送部による前記搬送処理は、前記加熱空間を通過するように前記基板を移動させる加熱空間通過処理を含み、
前記加熱空間通過処理の実行後に、前記ミスト空間通過処理が実行される、
成膜装置。
【請求項3】
請求項2記載の成膜装置であって、
前記加熱機構は、
第1の方向を照射方向とした赤外光を前記加熱空間に向けて照射して、前記基板を加熱する第1方向加熱処理を行う第1方向加熱部と、
第2の方向を照射方向とした赤外光を前記加熱空間に向けて照射して、前記基板を加熱する第2方向加熱処理を行う第2方向加熱部とを含み、
前記第2の方向は前記第1の方向の反対方向であり、
前記加熱処理は前記第1方向加熱処理と前記第2方向加熱処理とを含む、
成膜装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の成膜装置であって、
前記加熱機構は、第1~第n(n≧2)の加熱空間にて第1~第nの加熱処理を実行する第1~第nの加熱機構を含み、前記加熱空間は第1~第nの加熱空間を含み、前記加熱処理は第1~第nの加熱処理を含み、
前記成膜室は、各々が前記原料溶液用容器及び前記少なくとも一つの超音波振動子を有する第1~第nの成膜室を含み、第1~第nの成膜室内で第1~第nのミスト空間が得られ、前記ミスト空間は第1~第nのミスト空間を含み、
前記ミスト空間通過処理は、前記第1~第nのミスト空間を通過するように前記基板を移動させる第1~第nのミスト空間通過処理を含み、
前記加熱空間通過処理は、前記第1~第nの加熱空間を通過するように前記基板を移動させる第1~第nの加熱空間通過処理を含み、
前記第1~第nの加熱空間及び前記第1~第nのミスト空間が影響を受けないように、前記第1~第nの加熱機構及び前記第1~第nの成膜室はそれぞれ分離して配置され、
前記第1~第nの加熱空間通過処理と前記第1~第nのミスト空間通過処理とが第1~第nの順で交互に実行されることを特徴とする、
成膜装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち、いずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記基板搬送部は、前記基板の表面が前記原料溶液用容器の底面と平行となる平行配置関係で前記ミスト空間通過処理を実行する、
成膜装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のうち、いずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記基板搬送部は、前記基板の表面が前記原料溶液用容器の底面と垂直となる垂直配置関係で前記ミスト空間通過処理を実行する、
成膜装置。
【請求項7】
請求項
1記載の成膜装置であって、
前記基板搬送部による前記ミスト空間通過処理は、前記ミスト空間内の成膜経路を通過するように前記基板を移動させる処理であり、
前記成膜室は、
前記成膜経路に向けて前記原料ミストを吹き付けるための吹付用送風動作を実行する吹付用ファンをさらに含む、
成膜装置。
【請求項8】
請求項
7記載の成膜装置であって、
前記吹付用ファンは、
第1の吹付方向に沿って、前記原料ミストを前記成膜経路に向けて吹き付ける第1の吹付用送風動作を実行する第1方向吹付用ファンと、
第2の吹付方向に沿って、前記原料ミストを前記成膜経路に向けて吹き付ける第2の吹付用送風動作を実行する第2方向吹付用ファンとを含み、
前記第2の吹付方向は、前記第1の吹付方向と反対方向であり、
前記吹付用送風動作は、前記第1及び第2の吹付用送風動作を含む、
成膜装置。
【請求項9】
請求項2記載の成膜装置であって、
前記基板搬送部が実行する前記搬送処理において、前記基板の搬送方向に沿った移動速度が搬送用移動速度として規定され、
前記加熱空間における前記搬送方向の距離が加熱工程長として規定され、前記ミスト空間における前記搬送方向の距離が成膜工程長として規定され、
前記加熱空間通過処理は必要加熱空間通過時間の実行を必要とし、前記ミスト空間通過処理は必要ミスト空間通過時間の実行を必要とし、
前記加熱工程長及び前記搬送用移動速度は、前記必要加熱空間通過時間を満足するように設定され、前記成膜工程長及び前記搬送用移動速度は、前記必要ミスト空間通過時間を満足するように設定される、
成膜装置。
【請求項10】
請求項1記載の成膜装置であって、
加熱空間にて前記基板を加熱する加熱処理を実行する加熱機構をさらに備え、
前記加熱空間と前記ミスト空間とは互いに重複し、
前記基板搬送部による前記ミスト空間通過処理の実行時に前記基板は加熱される、
成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池などの電子デバイスの製造に用いられ、基板上に薄膜を成膜する成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に膜を成膜する方法として、化学気相成長(CVD(Chemical Vapor Deposition))法がある。しかしながら、化学気相成長法では真空下での成膜が必要な場合が多くなり、真空ポンプなどに加えて、大型の真空容器を用いる必要がある。さらに、化学気相成長法では、コスト等の観点から、成膜される基板として大面積のものを採用することが困難である、という問題があった。そこで、大気圧下における成膜処理が可能なミスト法が、注目されている。
【0003】
ミスト法を利用した成膜装置に関する従来技術として、例えば特許文献1に開示された成膜装置がある。
【0004】
図11は従来の成膜装置の概略構成を示す説明図である。
図11にXYZ直交座標系を記している。
【0005】
図11に示すように、従来の成膜装置19は、加熱室851及び852、成膜室951及び952、2つの薄膜形成ノズル101、2組の赤外光照射器2及び4の組合せ並びにコンベア53を主要構成要素として含んでいる。
【0006】
基板搬送部であるコンベア53はベルト52の上面に複数の基板10を載置しつつ、複数の基板10を搬送方向(X方向)に搬送している。コンベア53は左右両端に設けられた搬送用の一対のローラ51と、一対のローラ51に架け渡された無端状の搬送用のベルト52とを備えている。
【0007】
コンベア53は、一対のローラ51の回転駆動によって、上方側(+Z方向側)のベルト52を搬送方向(X方向)に沿って移動させることができる。
【0008】
コンベア53の一対のローラ51のうち、一方は加熱室851外の左方(-X方向)に設けられ、他方は成膜室952の右方(+X方向)に設けられる。また、ベルト52の中央部は、加熱室851、加熱室852、成膜室951及び成膜室952のうちいずれかの内部に設けられる。
【0009】
加熱室851及び852それぞれの左右(-X方向,+X方向)の側面の一部に設けられる一対の開口部188が設けられ、成膜室951及び952それぞれの左右の側面の一部に設けられる一対の開口部198が設けられる。
【0010】
加熱室851及び852と成膜室951及び952は、加熱室851、成膜室951、加熱室852及び成膜室952の順で左方から右方にかけて隣接して設けられる。また、加熱室851の右側の開口部188と成膜室951の左側の開口部198とが共用され、成膜室951の右側の開口部198と加熱室852の左側の開口部188とが共用され、加熱室852の右側の開口部188と成膜室952の開口部198とが共用される。
【0011】
したがって、ベルト52は一対のローラ51の回転駆動により、加熱室851及び852の内部、成膜室951及び952の内部並びに外部との間を移動することができる。
【0012】
コンベア53の一部は加熱室851及び852に収納される。加熱室851及び852の内部及び周辺の構成は同じであるため、以下では加熱室851を中心に説明する。
【0013】
加熱室851は、上部容器83、下部容器84及び一対の開口部188により構成される。Z方向である高さ方向において上部容器83と下部容器84との間に一対の開口部188が位置する。したがって、加熱室851内の開口部188,188間に設けられるコンベア53は下部容器84の主要部より高く、上部容器83の主張部より低い位置に配置される。
【0014】
加熱室851の周辺において、赤外光照射器2は下部容器84外の下方(-Z方向)側のコンベア53から離れた位置に、図示しない固定手段より固定される。
【0015】
加熱室851の周辺において、赤外光照射器4は上部容器83外の上方(+Z方向)側のコンベア53から離れた位置に、図示しない固定手段より固定される。赤外光照射器2及び赤外光照射器4により加熱機構が構成される。
【0016】
赤外光照射器2は、+Z方向(第1の方向)に向けて赤外光を照射して基板10を加熱する第1方向加熱処理を行っている。
【0017】
赤外光照射器4は、+Z方向と反対方向となる-Z方向(第2の方向)に向けて赤外光を照射して基板10を加熱する第2方向加熱処理を行っている。
【0018】
また、加熱室851は、赤外光照射器2及び4の加熱処理(第1方向加熱処理及び第2方向加熱処理)の実行時に、基板10を内部に収容している。
【0019】
加熱室851は、加熱処理を行う際、エアカーテン7により上部容器83,下部容器84間の開口部188を塞ぐことにより、ベルト52上に載置された複数の基板10を外部から遮断することができる。
【0020】
加熱室852も加熱室851と同様な構成であり、かつ、加熱室851と同様に加熱室852外に赤外光照射器2及び4が設けられる。
【0021】
このように、従来の成膜装置19は、第1の加熱機構として加熱室851の外部周辺に設けられた赤外光照射器2及び4を有し、第2の加熱機構として加熱室852の外部周辺に設けられた赤外光照射器2及び4を有している。
【0022】
そして、加熱室851内の複数の基板10に対し赤外光照射器2及び4により第1の加熱処理を実行し、加熱室852内の複数の基板10に対し赤外光照射器2及び4により第2の加熱処理を実行している。これら第1及び第2の加熱処理がそれぞれ上述した第1方向加熱処理及び第2方向加熱処理を含んでいる。以下、第1及び第2の加熱処理を総称する際、単に「加熱処理」と称する場合がある。
【0023】
成膜室951及び952はそれぞれ薄膜形成ノズル101及びコンベア53の一部を収納する。成膜室951及び952の内部構成は同じであるため、以下では成膜室951を中心に説明する。
【0024】
成膜室951は、上部容器91、下部容器92及び一対の開口部198により構成される。Z方向である高さ方向において上部容器91と下部容器92との間に一対の開口部198が位置する。したがって、成膜室951内の開口部198,198間に設けられるコンベア53は下部容器34の主要部より高く、上部容器83の主張部より低い位置に配置される。
【0025】
成膜室951において、薄膜形成ノズル101は上部容器91内に図示しない固定手段により固定配置される。この際、薄膜形成ノズル101は、噴射面1Sとベルト52の上面とが対向する位置関係で配置される。
【0026】
成膜室951において、薄膜形成ノズル101は、噴射面1Sに設けられた噴射口から下方(-Z方向)に原料ミストMTを噴射する第1のミスト噴射処理を実行する。
【0027】
成膜室952も成膜室951と同様な構成であり、かつ、成膜室951と同様に内部に薄膜形成ノズル101を有している。
【0028】
このように、従来の成膜装置19は、成膜室951内に設けられた薄膜形成ノズル101を有し、成膜室952内に設けられた薄膜形成ノズル101を有している。成膜室951内の薄膜形成ノズル101が第1のミスト噴射部となり、成膜室952内の薄膜形成ノズル101が第2のミスト噴射部となる。
【0029】
そして、成膜室951内に設けられた薄膜形成ノズル101により第1のミスト噴射処理を実行し、成膜室952内に設けられた薄膜形成ノズル101により第2のミスト噴射処理を実行している。以下、第1及び第2のミスト噴射処理を総称する場合、単に「ミスト噴射処理」と称する場合がある。
【0030】
成膜室951及び952はそれぞれ、第1及び第2のミスト噴射処理を行う際、エアカーテン7により上部容器91,下部容器92間の開口部198を塞ぐことにより、薄膜形成ノズル101、及びベルト52上に載置された複数の基板10を外部から遮断することができる。
【0031】
したがって、従来の成膜装置19は、エアカーテン7によって加熱室851及び852それぞれの一対の開口部188並びに成膜室951及び952それぞれの一対の開口部198を全て閉状態にし、コンベア53のベルト52を搬送方向(X方向)に沿って移動させることにより、成膜環境を設定することができる。
【0032】
従来の成膜装置19は、上記成膜環境下で、加熱室851及び852内の基板10に対して行う加熱処理と成膜室951及び952内で行うミスト噴射処理とが互いに影響を受けないように、2組の赤外光照射器2及び4の組合せと2つの薄膜形成ノズル101とをそれぞれ分離して配置している。
【0033】
そして、従来の成膜装置19は、上記成膜環境下で、加熱室851内の複数の基板10に対し赤外光照射器2及び4の赤外光照射による第1の加熱処理を実行した後、成膜室951内で薄膜形成ノズル101による第1のミスト噴射処理を実行する。
【0034】
その後、成膜装置19は、上記成膜環境下で、加熱室852内の複数の基板10に対し赤外光照射器2及び4の赤外光照射による第2の加熱処理を実行した後、成膜室952内で薄膜形成ノズル101による第2のミスト噴射処理を実行する。
【0035】
その結果、従来の成膜装置19は、最終的に成膜室952においてベルト52の上面に載置された基板10の表面上に薄膜を成膜することができる。
【0036】
このように、従来の成膜装置19は、基板10と接触関係をもたせることなく、2組の赤外光照射器2及び4の組合せによって基板10を加熱することができるため、基板10の形状に関わらず均一な加熱を、基板10を変形させることなく行うことができる。
【0037】
さらに、従来の成膜装置19は、加熱処理とミスト噴射処理とが互いに影響を受けないように2組の赤外光照射器2及び4と2つの薄膜形成ノズル101とをそれぞれ分離して配置している。このため、成膜装置19は、第1及び第2の加熱処理並びに第1及び第2のミスト噴射処理それぞれの実行時に、原料ミスト蒸発現象の発生を確実に回避することができる。
【0038】
その結果、従来の成膜装置19は、成膜品質や成膜速度を落とすことなく、基板10の表面上に薄膜を成膜することができる。
【0039】
従来の成膜装置19は、上述したように、第1及び第2の加熱処理並びに第1及び第2のミスト噴射処理間で影響を受けないように、第1及び第2の加熱機構並びに第1及び第2のミスト噴射部は、第1、第2の順で交互に配置されている。
【0040】
そして、従来の成膜装置19は、第1及び第2の加熱処理と第1及び第2のミスト噴射処理とを第1,第2の順で交互に実行することを特徴としている。
【0041】
したがって、従来の成膜装置19は、2回交互に繰り返される加熱処理及びミスト噴射処理を実行することにより、成膜される薄膜の膜厚を厚くしたり、膜質が異なる2つの膜による積層構造で薄膜を形成したりすることができる。
【0042】
図12は
図11で示した成膜室951の詳細構成を示す説明図である。
図12にXYZ直交座標系を記している。
【0043】
同図に示すように、成膜室951とは離れて配置されるミスト発生器75から、成膜室951に原料ミストMTが供給されている。具体的には、ミスト発生器75と成膜室951内の薄膜形成ノズル101とがミスト供給管105を介して接続されている。
【0044】
ミスト発生器75は、容器61、超音波振動子62及び搬送ガス供給管65を主要構成要素として含んでいる。
【0045】
容器61は原料溶液66を収容し、底面に超音波振動子62が取り付けられる。そして、超音波振動子62の超音波振動動作によって、原料溶液66をミスト化して原料ミストMTを生成することにより、容器61内に原料ミストMTが存在するミスト空間SM9を得ている。
【0046】
ミスト空間SM9内の原料ミストMTは搬送ガス供給管65から取り込まれる搬送ガスG0によって搬送され、ミスト供給管105を介して薄膜形成ノズル101に供給される。その結果、薄膜形成ノズル101から原料ミストMTを基板10に向けて噴射する第1のミスト噴射処理を実行することができる。
【0047】
なお、薄膜形成ノズル101は、成膜処理に用いられなかった原料ミストMTを、ミスト排気管103を介して外部に排気することができ、上部容器91は。成膜処理に用いられなかった原料ミストMTを、ミスト排気管93を介して外部に排気することができる。
【0048】
また、成膜室952も成膜室951と同様な構成であり、かつ、成膜室951と同様にミスト発生器75が外部に設けられ、ミスト排気管103及びミスト排気管93を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0050】
特許文献1で代表される原料ミストMTを利用した、従来の成膜装置は上記のように構成されている。
【0051】
しかし、従来の成膜装置19は、成膜室951内の成膜工程において、薄膜形成ノズル101より基板10に噴射する(吹き付ける)第1のミスト噴射処理を実行することにより、基板10の表面上に薄膜を成膜している。なお、成膜室952内の成膜工程も成膜室951内と同様に行われる。以下、成膜室951を代表して説明する。
【0052】
このため、薄膜の成膜に使用されなかった原料ミストMTは、薄膜形成ノズル101に設けられたミスト排気管103を介して外部に排気される。また、薄膜の成膜に使用されず、薄膜形成ノズル101の周辺に分散した原料ミストMTについては、成膜室951の上部容器91に設けられたミスト排気管93を介して排気される。成膜室951外に排気された原料ミストMTは、再利用されることはない。
【0053】
このように、従来の成膜装置19の成膜室951では、ミスト発生器75で生成された原料ミストMTの一部のみが、薄膜の成膜に利用されているため、原料ミストMTの原料(原料溶液66)の利用効率が低いという問題点があった。
【0054】
特に、原料ミストMTの原料にインジウムやガリウム、希土類元素(レアアース)に代表されるレアメタルや、金、銀などの貴金属が含まれる場合、原料のコストが非常に高くなるため、上述した低い原料利用効率は、ランニングコストを増大させてしまう。
【0055】
本開示では、上記のような問題点を解決し、原料ミストの原料の利用効率を高めた成膜装置の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0056】
本開示における成膜装置は、 基板を搬送する搬送処理を実行する基板搬送部と、原料ミストが存在するミスト空間を内部に有する成膜室とを備え、前記成膜室は、原料溶液を収容する原料溶液用容器と、前記原料溶液用容器の底面に設けられる少なくとも一つの超音波振動子とを含み、前記少なくとも一つの超音波振動子による超音波振動動作によって、前記原料溶液をミスト化して前記原料ミストを生成することにより、前記ミスト空間が得られ、前記基板搬送部による前記搬送処理は、前記ミスト空間を通過するように前記基板を移動させるミスト空間通過処理を含み、前記ミスト空間通過処理の実行時に前記基板上に薄膜が成膜され、前記成膜室は、前記原料溶液用容器の上方に配置される上方容器と、前記ミスト空間内で前記原料ミストを循環させる循環用送風動作を実行する循環用ファンとをさらに含む。
【発明の効果】
【0057】
本開示の成膜装置において、原料溶液用容器内の原料溶液を直接ミスト化して原料ミストを生成することにより、成膜室内でミスト空間を得ている。そして、基板搬送部は、上記ミスト空間を通過するように基板を移動させるミスト空間通過処理を実行することにより、基板上に薄膜が成膜される。
【0058】
したがって、本開示の成膜装置は、原料ミストの利用効率が高いミスト空間内で薄膜を成膜することができるため、原料溶液を有効に利用することができる効果を奏する。
【0059】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】実施の形態1の成膜装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】
図1で示した成膜室を異なる視点から視た概略構造を示す説明図である。
【
図3】実施の形態2の成膜装置の概略構成を示す説明図である。
【
図4】
図3で示した成膜室を異なる視点から視た概略構造を示す説明図である。
【
図5】
図3で示した加熱室を上方から視た構成を示す説明図である。
【
図6】実施の形態3の成膜装置(その1)に用いられる成膜室の構成を示す説明図である。
【
図7】実施の形態3の成膜装置(その2)に用いられる成膜室の構成を示す説明図である。
【
図8】実施の形態4の成膜装置(その1)に用いられる成膜室の構成を示す説明図である。
【
図9】実施の形態4の成膜装置(その2)に用いられる成膜室の構成を示す説明図である。
【
図10】実施の形態5の成膜装置の概略構成を示す説明図である。
【
図11】従来の成膜装置の概略構成を示す説明図である。
【
図12】
図11で示した成膜室の詳細構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
<実施の形態1>
図1は実施の形態1の成膜装置11の概略構成を示す説明図である。
図1にXYZ直交座標系を記している。
【0062】
図1に示すように、実施の形態1の成膜装置11は、加熱室801及び802、成膜室901及び902並びにコンベア53を主要構成要素として含んでいる。
【0063】
基板搬送部であるコンベア53はベルト52の上面に複数の基板10を載置しつつ、複数の基板10を搬送方向(X方向)に搬送している。コンベア53は左右両端に設けられた搬送用の一対のローラ51と、一対のローラ51に架け渡された無端状の搬送用のベルト52とを備えている。
【0064】
コンベア53は、一対のローラ51の回転駆動によって、上方側(+Z方向側)のベルト52を搬送方向(X方向)に沿って移動させる搬送処理を実行することができる。
【0065】
コンベア53の一対のローラ51のうち、一方は加熱室801外の左方(-X方向)に設けられ、他方は成膜室902の右方(+X方向)に設けられる。また、ベルト52の中央部は、加熱室801内、加熱室801,成膜室901間、成膜室901内、成膜室901,加熱室802間、加熱室802内、加熱室802,成膜室902間、及び、成膜室902内に設けられる。
【0066】
加熱室801及び802と成膜室901及び902とは、加熱室801、成膜室901、加熱室802及び成膜室902の順で左方(-X方向)から右方(+X方向)にかけて設けられる。
【0067】
加熱室801及び802それぞれの左右の側面の一部に一対の開口部88が設けられ、成膜室901及び902それぞれの左右の側面の一部に一対の開口部98が設けられる。
【0068】
したがって、ベルト52は一対のローラ51の回転駆動により、加熱室801及び802それぞれの一対の開口部88、並びに成膜室901及び902それぞれの一対の開口部98を介して、加熱室801、成膜室901、加熱室802及び成膜室902の順で移動することができる。
【0069】
コンベア53の一部は加熱室801及び802に収納される。加熱室801及び802の内部及び周辺の構成は同じであるため、以下では加熱室801を中心に説明する。
【0070】
加熱室801は、上部容器81、下部容器82、一対の開口部88並びに赤外光照射器2及び4を主要構成要素として含んでいる。方向である高さ方向において上部容器81と下部容器82との間に一対の開口部88が位置する。したがって、加熱室801内の開口部88,88間に設けられるコンベア53は下部容器82の主要部より高く、上部容器81の主要部より低い位置に配置される。
【0071】
加熱室801の内部において、下部容器82の底面上に第1方向加熱部である赤外光照射器2が設けられる。したがって、赤外光照射器2はベルト52の下方に配置される。
【0072】
加熱室801の内部において、上部容器81の上面下に第2方向加熱部であるである赤外光照射器4が設けられる。したがって、赤外光照射器4は、ベルト52の上方に配置される。
【0073】
したがって、加熱室851内において、赤外光照射器2と赤外光照射器4とに挟まれた空間が加熱空間HS1となる。
【0074】
なお、赤外光照射器2及び4は共に、加熱室801内のベルト52の上面領域(線状の一対のコンベアチェーンに挟まれる領域)と平面視して重複する位置に配置される。
【0075】
赤外光照射器2はランプ載置台21及び複数の赤外光ランプ22から構成され、ランプ載置台21の上部に複数の赤外光ランプ22が取り付けられる。したがって、赤外光照射器2は複数の赤外光ランプ22から上方に向けて赤外光を照射することができる。
【0076】
このように、第1方向加熱部である赤外光照射器2は、+Z方向(第1の方向)を照射方向とした赤外光を加熱空間HS1に向けて照射して、加熱空間HS1を加熱する第1方向加熱処理を行う。したがって、加熱空間HS1内にベルト52上に載置された基板10が存在する場合は、第1方向加熱処理によって基板10を加熱することができる。
【0077】
赤外光照射器4はランプ載置台41及び複数の赤外光ランプ42から構成され、ランプ載置台41の下部に複数の赤外光ランプ42が取り付けられる。したがって、赤外光照射器4は複数の赤外光ランプ42から下方(-Z方向)に向けて赤外光を照射することができる。
【0078】
このように、第2方向加熱部である赤外光照射器4は、-Z方向(第2の方向)を照射方向とした赤外光を加熱空間HS1に向けて照射して、加熱空間HS2内のベルト52上に載置された基板10を加熱する第2方向加熱処理を行う。したがって、加熱空間HS1内にベルト52上に載置された基板10が存在する場合は、第2方向加熱処理によって基板10を加熱することができる。なお、第2の方向である-Z方向は、第1の方向である+Z方向と反対方向となる。
【0079】
上述した加熱室801の特徴と同様な特徴を加熱室802有している。なお、加熱空間HS2は加熱空間HS1に対応する。
【0080】
このように、実施の形態1の成膜装置11は、第1の加熱機構として加熱室801の内部に設けられた赤外光照射器2及び4を有し、第2の加熱機構として加熱室802の内部に設けられた赤外光照射器2及び4を有している。
【0081】
そして、加熱室801内の複数の基板10に対し、赤外光照射器2及び4によって加熱空間HS1を加熱する第1の加熱処理を実行している。同様に、加熱室802内の複数の基板10に対し、赤外光照射器2及び4によって、加熱空間HS2を加熱する第2の加熱処理を実行している。これら第1及び第2の加熱処理がそれぞれ上述した第1方向加熱処理及び第2方向加熱処理を含んでいる。
【0082】
基板搬送部であるコンベア53は、搬送処理として、第1の加熱空間である加熱空間HS1を通過するように複数の基板10を移動させる第1の加熱空間通過処理を実行する。
【0083】
同様に、コンベア53は、搬送処理として、第2の加熱空間である加熱空間HS2を通過するように複数の基板10を移動させる第2の加熱空間通過処理を実行する。
【0084】
以下、第1及び第2の加熱空間通過処理を総称して、単に「加熱空間通過処理」と称する場合がある。
【0085】
加熱室801及び802は、第1及び第2の加熱空間通過処理が実行される際、エアカーテン7により上部容器81,下部容器82間の開口部88を塞ぐことにより、加熱空間HS及びベルト52上に載置された複数の基板10を外部から遮断することができる。なお、加熱空間HSは加熱空間HS1及びHS2の総称を意味する。
【0086】
成膜室901及び902はそれぞれ上部容器31、下部容器32、2つの超音波振動子38を主要構成要素として含んでいる。成膜室901及び902の内部構成は同じであるため、以下では成膜室901を中心に説明する。
【0087】
図2は
図1の視点P1から視た成膜室901の概略構造を示す説明図である。
図2にXYZ直交座標系を示している。以下、
図1及び
図2を参照して、成膜室901の構成を説明する。
【0088】
成膜室901は、下部容器32、2つの超音波振動子38、及び上部容器31を主要構成要素として含んでいる。なお、
図1及び
図2において、2つの超音波振動子38は模式的に図示されており、実際の配置位置を反映したものではない。
【0089】
図2に示すように、上部容器31の下方の一部を開口し、下部容器32の上方の一部を開口するにより、Z方向である高さ方向において上部容器31と下部容器32との間に一対の開口部98が設けられる。そして、成膜室901内の開口部98,98間にコンベア53が設けられる。
【0090】
原料溶液用容器である下部容器32は原料溶液36を収容している。2つの超音波振動子38(少なくとも一つの超音波振動子)は下部容器32の底面に設けられる。
【0091】
成膜室901は、2つの超音波振動子38による超音波振動動作によって、原料溶液36をミスト化して原料ミストMTを生成する。その結果、原料ミストMTが成膜室901内で滞留し、充満することによりミスト空間SM1が得られる。このように、成膜室901はミスト発生機能を有しており、内部にミスト空間SM1を得ている。
【0092】
なお、下部容器32に収容される原料溶液36の温度及び液面高さ並びに2つの超音波振動子38の出力は、所望の成膜精度が得られるように設定されている。
【0093】
上述した成膜室901の特徴と同様な特徴を成膜室902も有している。すなわち、成膜室902はミスト発生機能を有しており、内部にミスト空間SM2を得ている。
【0094】
このように、実施の形態1の成膜装置11は、第1の成膜室である成膜室901内にミスト空間SM1(第1のミスト空間)を生成し、第2の成膜室である成膜室902内にミスト空間SM2(第2のミスト空間)を生成している。
【0095】
基板搬送部であるコンベア53は、搬送処理として、第1の成膜室である成膜室901内のミスト空間SM1を通過するように複数の基板10を移動させる第1のミスト空間通過処理を実行することができる。
【0096】
同様に、コンベア53は、搬送処理として、第2の成膜室である成膜室902内のミスト空間SM2を通過するように複数の基板10を移動させる第2のミスト空間通過処理を実行することができる。
【0097】
以下、ミスト空間SM1及びSM2を総称して、単に「ミスト空間SM」と称する場合がある。また、第1及び第2のミスト空間通過処理を総称して、単に「ミスト空間通過処理」と称する場合がある。
【0098】
成膜室901(902)は、ミスト空間通過処理が実行される際、エアカーテン7により上部容器31,下部容器32間の一対の開口部98を塞ぐことにより、ミスト空間SM及びベルト52上に載置された複数の基板10を外部から遮断することができる。
【0099】
したがって、実施の形態1の成膜装置11は、エアカーテン7によって加熱室801及び802それぞれの一対の開口部88並びに成膜室901及び902それぞれの一対の開口部98を全て閉状態にし、コンベア53のベルト52を搬送方向(X方向)に沿って移動させる搬送処理を実行することにより、成膜環境を設定することができる。
【0100】
上述したように、コンベア53による搬送処理は、第1及び第2の加熱空間通過処理並びに第1及び第2のミスト空間通過処理が含まれる。
【0101】
実施の形態1の成膜装置11は、上記成膜環境下で、加熱室801及び802内の加熱空間HS1及びHS2と成膜室901及び902内のミスト空間SM1及びSM2とが互いに影響を受けないように、加熱室801及び802と成膜室901及び902とをそれぞれ分離して配置している。
【0102】
以下、同一の基板10を成膜対象として実施の形態1の成膜装置11の成膜内容を説明する。
【0103】
実施の形態1の成膜装置11は、成膜対象の基板10に対し、上記成膜環境下で、コンベア53による搬送処理として、上記第1の加熱空間通過処理を実行した後、上記第1のミスト空間通過処理を実行する。
【0104】
その後、成膜装置11は、成膜対象の基板10に対し、上記成膜環境下で、コンベア53による搬送処理として、上記第2の加熱空間通過処理を実行した後、上記第2のミスト空間通過処理を実行する。
【0105】
第1及び第2のミスト空間通過処理の実行時に、成膜対象の基板10の表面と原料ミストMTが接触し薄膜が成長する。
【0106】
その結果、実施の形態1の成膜装置11は、最終的に成膜室902においてベルト52の上面に載置された、成膜対象の基板10の表面上に薄膜を成膜することができる。
【0107】
このように、実施の形態1の成膜装置11は、基板10と接触関係をもたせることなく、2組の赤外光照射器2及び4の組合せによって基板10を加熱することができるため、基板10の形状に関わらず均一な加熱を、基板10を変形させることなく行うことができる。
【0108】
さらに、実施の形態1の成膜装置11は、加熱空間HS1及びHS2とミスト空間SM1及びSM2とが互いに影響を受けないように、加熱室801及び802と成膜室901及び902とをそれぞれ分離して配置している。
【0109】
すなわち、加熱室801及び802内に設けられる2組の赤外光照射器2及び4の組合せと、成膜室901及び902とを分離して配置している。このため、成膜装置11は、第1及び第2の加熱空間通過処理並びに第1及び第2のミスト空間通過処理それぞれの実行時に、原料ミスト蒸発現象の発生を確実に回避することができる。
【0110】
なお、「原料ミスト蒸発現象」とは、ミスト空間SM内の原料ミストMTが赤外光を吸収することにより加熱されて蒸発する現象を意味する。
【0111】
その結果、実施の形態1の成膜装置11は、成膜品質や成膜速度を落とすことなく、基板10の表面上に薄膜を成膜することができる。
【0112】
実施の形態1の成膜装置11において、原料溶液用容器である下部容器32内の原料溶液36を直接ミスト化して原料ミストMTを生成することにより、成膜室951及び952内にミスト空間SM(SM1及びSM2)を得ている。
【0113】
そして、基板搬送部であるコンベア53は、ミスト空間SMを通過するように複数の基板10を移動させるミスト空間通過処理を実行することにより、基板10の表面上に薄膜が成膜される。
【0114】
成膜室901(902)はミスト発生器としての機能を有している。したがって、成膜対象の基板10の成膜処理に利用されなかった原料ミストMTは、その後にミスト空間SMを通過する他の基板10の成膜に使用することができる。
【0115】
加えて、ミスト空間SM内の原料ミストMTが沈降して下部容器32に溜まっている原料溶液36に戻る。原料溶液36は2つの超音波振動子38の超音波振動動作によって常にミスト化されているため、沈降した原料ミストMTを原料溶液36として再利用することができる。したがって、成膜装置11は、原料溶液36の高い利用効率を図ることができる。
【0116】
このように、実施の形態1の成膜装置11は、原料ミストMTの利用効率が高いミスト空間SM(SM1及びSM2)内で薄膜を成膜することができるため、原料溶液36を有効に利用することができる効果を奏する。
【0117】
さらに、実施の形態1の成膜装置11は、第1及び第2の加熱処理それぞれとして、第1方向加熱処理と第2方向加熱処理とを併せて行うことにより、第1及び第2の加熱空間通過処理それぞれの実行時に複数の基板10を均一に加熱することができる。なお、実施の形態1において、第1の方向は+Z方向、第2の方向は-Z方向となる。
【0118】
また、成膜装置11は基板搬送部としてコンベア53を用いている。コンベア53は、複数の基板10それぞれの表面が原料溶液用容器である下部容器32の底面と平行となる平行配置関係で、第1及び第2の加熱空間通過処理並びに第1及び第2のミスト空間通過処理を実行している。
【0119】
したがって、実施の形態1の成膜装置11は、コンベア53のベルト52上に複数の基板10を安定性良く載置して、第1及び第2の加熱空間通過処理並びに第1及び第2のミスト空間通過処理を実行することできる。
【0120】
実施の形態1の成膜装置11は、上述したように、第1及び第2の加熱機構並びに第1及び第2の成膜室は、第1、第2の順で交互に配置されている。なお、第1の加熱機構は、加熱室801内の赤外光照射器2及び4の組合せであり、第2の加熱機構は、加熱室802内の赤外光照射器2及び4の組合せである。また、第1の成膜室は成膜室901である、第2の成膜室は成膜室902である。
【0121】
そして、実施の形態1の成膜装置11は、第1及び第2の加熱空間通過処理と第1及び第2のミスト空間通過処理とを第1,第2の順で交互に実行することを特徴としている。
【0122】
したがって、実施の形態1の成膜装置11は、2回交互に繰り返される加熱空間通過処理及びミスト空間通過処理を実行することにより、成膜される薄膜の膜厚を厚くしたり、膜質が異なる2つの膜による積層構造で薄膜を形成したりすることができる。
【0123】
なお、上述した成膜装置11では、2つの加熱機構と2つの成膜室による組合せを示したが、n(n≧2)個の加熱機構とn個の成膜室による組合せによる拡張変形例を実現することができる。
【0124】
上記拡張変形例は、加熱空間HS1~HSnにて第1~第nの加熱処理を実行する第1~第nの加熱機構を有し、ミスト空間SM1~SMnを生成する第1~第nの成膜室を有している。なお、加熱空間HS1~HSnは第1~第nの加熱空間に相当し、ミスト空間SM1~SMnは第1~第nのミスト空間に相当する。
【0125】
そして、基板搬送部であるコンベア53は、搬送処理として、第1~第nの成膜室内のミスト空間SM1~SMnを通過するように複数の基板10を移動させる第1~第nのミスト空間通過処理を実行することができる。
【0126】
同様に、コンベア53は、搬送処理として、加熱空間HS1~HSnを通過するように複数の基板10を移動させる第1~第nの加熱空間通過処理を実行することができる。したがって、第1~第nの加熱機構を内部に有する第1~第nの加熱室内で複数の基板10を加熱することができる。
【0127】
上記拡張変形例は、加熱空間HS1~HSn及びミスト空間SM1~SMnが互いに影響を受けないように、第1~第nの加熱機構及び第1~第nの成膜室を、第1~第nの順で交互に分離して配置している。
【0128】
そして、上記拡張変形例は、第1~第nの加熱空間通過処理と第1~第nのミスト空間通過処理とを第1,第2,…第nの順で交互に実行することを特徴としている。
【0129】
したがって、上記拡張変形例は、n(≧2)回交互に繰り返して加熱空間通過処理及びミスト空間通過処理を実行することにより、成膜される薄膜の膜厚を厚くしたり、膜質が異なるn層の膜による積層構造で薄膜を形成したりすることができる。
【0130】
<実施の形態2>
図3は実施の形態2の成膜装置12の概略構成を示す説明図である。
図4は
図3の視点P2から視た成膜室191の構成を示す説明図である。
図5は、上方(+Z方向)から視た加熱室181の構成を示す説明図である。
図3~
図5それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0131】
図3~
図5に示すように、実施の形態2の成膜装置12は、加熱室181及び182、成膜室191及び192、赤外光照射器2L及び2Rの組合せ並びに搬送チェーン25を主要構成要素として含んでいる。
【0132】
なお、
図5では、搬送チェーン25の図示を省略し、
図3では、赤外光照射器2L及び2Rの図示を省略している。
【0133】
図3及び
図4に示すように、基板搬送部である搬送チェーン25は基板吊り下げ部25pを有し、基板吊り下げ部25pを介して複数の基板10それぞれを上方から吊り下げている。この際、
図5に示すように、複数の基板10は、搬送方向(+X方向)を基準として、左側(+Y方向側)が表面、右側(-Y方向側)が裏面になるように吊り下げられる。
【0134】
搬送チェーン25は図示しない駆動手段によって搬送方向(X方向)に移動可能であり、搬送チェーン25の移動に伴って複数の基板10を搬送方向に移動させる搬送処理が行える。
【0135】
搬送チェーン25の一端は加熱室181外の左方(-X方向)に設けられ、他端は成膜室192外の右方(+X方向)に設けられる。
【0136】
また、搬送チェーン25の中央部は、加熱室181内、加熱室181,成膜室191間、成膜室191内、成膜室191,加熱室182間、加熱室182内、加熱室182,成膜室192間、及び、成膜室192内に設けられる。
【0137】
加熱室181及び182並びに成膜室191及び192は、加熱室181、成膜室191、加熱室182及び成膜室192の順で左方から右方にかけて設けられる。
【0138】
加熱室181及び182の内部及び周辺の構成は同じであるため、以下では加熱室181を中心に説明する。
【0139】
図3に示すように、搬送チェーン25の一部は加熱室181内に収納される。
図5に示すように、加熱室181は、右方容器85、左方容器86及び一対の開口部89により構成される。加熱室181内に複数の基板10が存在する場合、右方容器85は複数の基板10の右側(-Y方向側)に位置し、左方容器86は複数の基板10の左側(+Y方向側)に位置する。
【0140】
Y方向である幅方向において右方容器85と左方容器86との間に一対の開口部89が位置する。したがって、加熱室181内の開口部89,89間に設けられる搬送チェーン25は、搬送方向(X方向)を基準として、右方容器85の主要部より左側(+Y方向側)、かつ、左方容器86の主要部より右側(-Y方向側)に配置される。
【0141】
加熱室181は、赤外光照射器2L及び2Rから照射される赤外光を吸収することなく、透過性に優れた赤外光透過材料を構成材料としている。具体的には、加熱室181は構成材料として石英ガラスを採用している。石英ガラス以外の赤外光透過材料として、例えば、ゲルマニウム、シリコン、硫化亜鉛、セレン化亜鉛などが考えられる。
【0142】
第1方向加熱部である赤外光照射器2Rは、搬送方向(+X方向)を基準として、右方容器85外の右方(-Y方向)側に、図示しない固定手段より固定される。したがって、赤外光照射器2Rは搬送チェーン25から離れて配置される。赤外光照射器2Rは赤外光照射器2と同様、ランプ載置台21及び赤外光ランプ22を主要構成要素として含んでいる。
【0143】
第2方向加熱部であるである赤外光照射器2Lは、搬送方向を基準として、左方容器86外の左方(+Y方向)側に、図示しない固定手段より固定される。したがって、赤外光照射器2Lは搬送チェーン25から離れて配置される。赤外光照射器2R及び赤外光照射器2Lの組合せにより加熱機構が構成される。赤外光照射器2Lは、赤外光照射器2と同様、ランプ載置台21及び赤外光ランプ22を主要構成要素として含んでいる。
【0144】
なお、赤外光照射器2L及び2Rは共に加熱室181内の複数の基板10と同程度の高さで配置される。
【0145】
第1方向加熱部である赤外光照射器2Rは、+Y方向(第1の方向)に照射方向とした赤外光を加熱空間HS1に向けて照射して、加熱空間HS1を加熱する第1方向加熱処理を行っている。搬送方向を基準として左方となる+Y方向は基板10の裏面から表面に向かう方向となる。
【0146】
したがって、加熱空間HS1内に基板吊り下げ部25pにより吊り下げられた基板10が存在する場合は、第1方向加熱処理によって基板10を加熱することができる。
【0147】
第2方向加熱部である赤外光照射器2Lは、-Y方向(第2の方向)に向けて赤外光を照射して加熱空間HS1を加熱する第2方向加熱処理を行っている。搬送方向を基準として右方となる-Y方向は基板10の表面から裏面に向かう方向となる。したがって、第2の方向である-Y方向は、第1の方向である+Y方向と反対方向となる。
【0148】
したがって、加熱空間HS1内に基板吊り下げ部25pにより吊り下げられた基板10が存在する場合は、第2方向加熱処理によって基板10を加熱することができる。
【0149】
加熱室182も加熱室181と同様な構成であり、かつ、加熱室181と同様に加熱室852外に赤外光照射器2L及び2Rが設けられる。
【0150】
加熱室181用の赤外光照射器2L及び2Rの組合せが第1の加熱機構に相当し、加熱室182用の赤外光照射器2L及び2Rの組合せが第2の加熱機構に相当する。
【0151】
基板搬送部である搬送チェーン25は、搬送処理として、第1の加熱空間である加熱空間HS1を通過するように複数の基板10を移動させる第1の加熱空間通過処理を実行する。
【0152】
同様に、搬送チェーン25は、搬送処理として、第2の加熱空間である加熱空間HS2を通過するように複数の基板10を移動させる第2の加熱空間通過処理を実行する。
【0153】
加熱室181及び182はそれぞれ、第1及び第2の加熱空間通過処理が実行される際、エアカーテン7により右方容器85,左方容器86間の開口部89を塞ぐことにより、加熱空間HS1及びHS2を外部から遮断することができる。
【0154】
このように、実施の形態2の成膜装置12は、第1の加熱機構として加熱室181の外部周辺に設けられた赤外光照射器2L及び2Rを有し、第2の加熱機構として加熱室182の外部周辺に設けられた赤外光照射器2L及び2Rを有している。
【0155】
成膜室191及び192はそれぞれ上部容器33、下部容器34、2つの超音波振動子38を主要構成要素として含んでいる。成膜室191及び192の内部構成は同じであるため、以下では成膜室191を中心に説明する。成膜室191は搬送チェーン25の一部を収納する。
【0156】
図3及び
図4に示すように、Z方向である高さ方向において上部容器33と下部容器34との間に一対の開口部99が設けられる。そして、成膜室191内の開口部99,99間に搬送チェーン25が設けられる。
【0157】
具体的には、
図4に示すように、上部容器33の下方の一部を開口し、下部容器34の上方の一部を開口するにより、Z方向である高さ方向において上部容器33と下部容器34との間に一対の開口部99が設けられる。そして、成膜室191内の開口部99,99間に搬送チェーン25が設けられる。
【0158】
原料溶液用容器である下部容器34は、実施の形態1の下部容器32と同様、原料溶液36を収容している。2つの超音波振動子38(少なくとも一つの超音波振動子)は下部容器34の底面に設けられる。
【0159】
なお、
図3及び
図4において、2つの超音波振動子38は模式的に図示されており、実際の配置位置を反映したものではない。
【0160】
成膜室191は、2つの超音波振動子38による超音波振動動作によって、原料溶液36をミスト化して原料ミストMTを生成する。その結果、原料ミストMTが成膜室191内で滞留し、充満することによりミスト空間SM1が得られる。このように、成膜室191はミスト発生機能を有している。
【0161】
上述した成膜室191の特徴と同様な特徴を成膜室192も有している。すなわち、成膜室192はミスト発生機能を有しており、内部にミスト空間SM2を得ている。
【0162】
このように、実施の形態2の成膜装置12は、第1の成膜室である成膜室191内にミスト空間SM1(第1のミスト空間)を生成し、第2の成膜室である成膜室192内にミスト空間SM2(第2のミスト空間)を生成している。
【0163】
基板搬送部である搬送チェーン25は、搬送処理として、第1の成膜室である成膜室191内のミスト空間SM1を通過するように複数の基板10を移動させる第1のミスト空間通過処理を実行することができる。
【0164】
同様に、搬送チェーン25は、搬送処理として、第2の成膜室である成膜室192内のミスト空間SM2を通過するように複数の基板10を移動させる第2のミスト空間通過処理を実行することができる。
【0165】
成膜室191(192)は、ミスト空間通過処理が実行される際、エアカーテン7により上部容器33,下部容器34間の開口部99を塞ぐことにより、ミスト空間SM及び基板吊り下げ部25pで吊り下げられた複数の基板10を外部から遮断することができる。
【0166】
したがって、実施の形態2の成膜装置12は、加熱室181及び182それぞれの一対の開口部89並びに成膜室191及び192それぞれの一対の開口部99を全てエアカーテン7によって閉状態にし、搬送チェーン25を搬送方向(X方向)に沿って移動させる搬送処理を実行することにより、成膜環境を設定することができる。
【0167】
上述したように、搬送処理は、第1及び第2の加熱空間通過処理並びに第1及び第2のミスト空間通過処理が含まれる。
【0168】
実施の形態2の成膜装置12は、上記成膜環境下で、加熱室181及び182内の加熱空間HS1及びHS2と成膜室191及び192内のミスト空間SM1及びSM2とが互いに影響を受けないように、加熱室181及び182と成膜室191及び192とをそれぞれ分離して配置している。
【0169】
以下、同一の基板10を成膜対象として実施の形態2の成膜装置12の成膜内容を説明する。
【0170】
実施の形態2の成膜装置12は、成膜対象の基板10に対し、上記成膜環境下で、搬送チェーン25による搬送処理として、上記第1の加熱空間通過処理を実行した後、上記第1のミスト空間通過処理を実行する。
【0171】
その後、成膜装置12は、成膜対象の基板10に対し、上記成膜環境下で、搬送チェーン25による搬送処理として、上記第2の加熱空間通過処理を実行した後、上記第2のミスト空間通過処理を実行する。
【0172】
その結果、実施の形態2の成膜装置12は、最終的に成膜室192において基板吊り下げ部25pによって吊り下げられた、成膜対象の基板10の表面上及び裏面上それぞれに薄膜を成膜することができる。
【0173】
このように、実施の形態2の成膜装置12は、基板10と接触関係をもたせることなく、2組の赤外光照射器2L及び2Rの組合せによって基板10を加熱することができるため、基板10の形状に関わらず均一な加熱を、基板10を変形させることなく行うことができる。
【0174】
さらに、実施の形態2の成膜装置12は、加熱空間HS1及びHS2とミスト空間SM1及びSM2とが互いに影響を受けないように、加熱室181及び182と成膜室191及び192とをそれぞれ分離して配置している。
【0175】
すなわち、加熱室181及び182内の設けられる2組の赤外光照射器2L及び2Rの組合せと、成膜室191及び192とを分離して配置している。このため、成膜装置12は、第1及び第2の加熱空間通過処理並びに第1及び第2のミスト空間通過処理それぞれの実行時に、上記原料ミスト蒸発現象の発生を確実に回避することができる。
【0176】
その結果、実施の形態2の成膜装置12は、成膜品質や成膜速度を落とすことなく、基板10の表面上に薄膜を成膜することができる。
【0177】
実施の形態2の成膜装置12において、原料溶液用容器である下部容器34内の原料溶液36を直接ミスト化して原料ミストMTを生成することにより、成膜室191及び192内にミスト空間SM1及びSM2を得ている。
【0178】
そして、基板搬送部であるコンベア53は、ミスト空間SM(SM1及びSM2)を通過するように複数の基板10を移動させるミスト空間通過処理を実行することにより、基板10の表面上及び裏面上それぞれに薄膜が成膜される。
【0179】
すなわち、成膜室191及び192はそれぞれミスト発生器としての機能を有している。したがって、実施の形態2の成膜装置12は、実施の形態1の成膜装置11と同様、原料ミストMTの利用効率が高いミスト空間SM内で薄膜を成膜することができるため、原料溶液36を有効に利用することができる効果を奏する。
【0180】
さらに、実施の形態2の成膜装置12は、第1及び第2の加熱処理それぞれとして、第1方向加熱処理と第2方向加熱処理とを併せて行うことにより、第1及び第2の加熱空間通過処理それぞれの実行時に複数の基板10を均一に加熱することができる。なお、実施の形態2において、第1の方向は+Y方向、第2の方向は-Y方向となる。
【0181】
また、成膜装置12は基板搬送部として搬送チェーン25を用いている。搬送チェーン25は、複数の基板10それぞれの表面が原料溶液用容器である下部容器34の底面と垂直となる垂直配置関係で、第1及び第2の加熱空間通過処理並びに第1及び第2のミスト空間通過処理を実行している。
【0182】
したがって、第1及び第2のミスト空間通過処理の実行時に、成膜室191及び192内において、複数の基板10の表面及び裏面それぞれの大部分(基板吊り下げ部25pの取付領域を除く領域)とミスト空間SM内の原料ミストMTとの接触を図ることができる。
【0183】
その結果、実施の形態2の成膜装置12は、複数の基板10の表面上に加え、裏面上にも薄膜を成膜することができる。
【0184】
実施の形態2の成膜装置12は、上述したように、第1及び第2の加熱機構並びに第1及び第2の成膜室は、第1、第2の順で交互に配置されている。なお、第1の加熱機構は、加熱室181用の赤外光照射器2L及び2Rの組合せであり、第2の加熱機構は、加熱室182用の赤外光照射器2L及び2Rの組合せである。また、第1の成膜室は成膜室191である、第2の成膜室は成膜室192である。
【0185】
そして、実施の形態2の成膜装置12は、第1及び第2の加熱空間通過処理と第1及び第2のミスト空間通過処理とを第1,第2の順で交互に実行することを特徴としている。
【0186】
したがって、実施の形態2の成膜装置12は、2回交互に繰り返される加熱空間通過処理及びミスト空間通過処理を実行することにより、成膜される薄膜の膜厚を厚くしたり、膜質が異なる2つの膜による積層構造で薄膜を形成したりすることができる。
【0187】
なお、実施の形態2の成膜装置12においても、実施の形態1と同様な拡張変形例を実現することができる。
【0188】
<実施の形態3>
上述した実施の形態1及び実施の形態2では、成膜室にミスト発生機能を持たせていることを特徴としている。
【0189】
上述した特徴を有する実施の形態1及び実施の形態2では、成膜室内にミスト空間SMが存在している。ミスト空間SM内の原料ミストMTは、重力の影響により鉛直方向(-Z方向)に原料ミストMTの濃度勾配ができる可能性がある。すなわち、ミスト空間SMの高所(+Z方向側)では原料ミストMTの濃度が比較的低く、低所(-Z方向側)では原料ミストMTの濃度が比較的高くなる可能性がある。
【0190】
加えて、2つの超音波振動子38からの距離によって、ミスト空間SM内におけるXY平面で規定される水平方向に原料ミストMTの濃度分布が生じる可能性もある。なぜなら、超音波振動子38に近い程、原料ミストMTの濃度が高くなり、超音波振動子38から遠い程、原料ミストMTの濃度が低くなる傾向があるからである。
【0191】
さらに、実施の形態1の成膜装置11におけるベルト52や基板10の存在、実施の形態2の成膜装置12における搬送チェーン25や基板10の存在が、ミスト空間SMにおける原料ミストMTの濃度不均一の原因となる場合も考えられる。
【0192】
ミスト空間SMに原料ミストMTの濃度勾配が存在する状態で薄膜を成膜した場合、基板10に接触する原料ミストMTの濃度が不均一となり、結果として薄膜の均一性が損なわれる懸念材料がある。
【0193】
上述したミスト空間SMの濃度勾配に関する懸念材料に改善を施したのが以下で述べる実施の形態3の成膜装置13及び実施の形態4の成膜装置14である。なお、成膜装置13は成膜装置13A及び13Bの総称であり、成膜装置14は成膜装置14A及び14Bの総称である。
【0194】
図6及び
図7は実施の形態3の成膜装置13(13A,13B)に用いられる成膜室の構成を示す説明図である。
図6及び
図7それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0195】
図6は実施の形態1の構成を基準とした成膜装置13Aの成膜室901Bを示しており、
図7は実施の形態2の構成を基準とした成膜装置13Bの成膜室191Bを示している。なお、説明の都合上、
図6では開口部98の図示を省略し、
図7では開口部99の図示を省略している。
【0196】
成膜装置13Aの全体構成は、
図1及び
図2で示した実施の形態1の成膜装置11の構成を基準として、成膜室901及び902に置き換えて、成膜室901B及び902Bを設けたことを特徴としている。なお、成膜室901B及び902B以外の加熱室801及び802、コンベア53は、実施の形態1の成膜装置11と同じであるため、説明を省略する。
【0197】
成膜室901B及び902Bの内部構成は同じであるため、以下では、
図6を参照して、成膜室901Bを中心に説明する。
【0198】
成膜室901Bでは、下部容器32の対向する一対の側面それぞれに取付部材55を介して循環用ファン45を設けている。すなわち、下部容器32内において、対向する一対の側面付近に一対の循環用ファン45を設けている。
【0199】
図6に示すように、成膜室901Bは、原料溶液用容器である下部容器32と、下部容器32の上方に配置される上部容器31と、ミスト空間SM1内で原料ミストMTを循環させる循環用送風動作を実行する一対の循環用ファン45とを含んでいる。なお、下部容器32が原料溶液36を収容すること、下部容器32の底面に2つの超音波振動子38が設けられる構成は、実施の形態1の成膜室901と同様である。
【0200】
また、一対の循環用ファン45は、下部容器32に収容された原料溶液36の上面から少し高い位置でかつ、ベルト52の下方に配置され、上方(+Z方向)に循環気流C45が生じるように循環用送風動作を実行する。したがって、一対の循環用ファン45の循環用送風動作がベルト52上に載置された基板10の移動に影響を与えることはない。
【0201】
このような構成において、成膜室901Bは、2つの超音波振動子38による超音波振動動作によって、原料溶液36をミスト化して原料ミストMTを生成している。この際、一対の循環用ファン45は循環用送風動作を行い、下方から上方に向かう方向(+Z方向)に一対の循環気流C45を発生させる。
【0202】
したがって、原料溶液36からミスト化された原料ミストMTの一部が一対の循環気流C45によって上方に強制的に移動されるため、重力の影響により鉛直方向(-Z方向)に沿った原料ミストMTの濃度勾配を緩和することができる。
【0203】
このように、一対の循環用ファン45による循環用送風動作によって、ミスト空間SM1内で原料ミストMTを循環させる循環処理が行える。
【0204】
成膜室902Bも成膜室901Bと同様な構成であり、内部に一対の循環用ファン45が設けられる。なお、ミスト空間SM2はミスト空間SM1に対応する。
【0205】
その結果、成膜装置13Aにおいて、成膜室901B及び902Bは、ミスト空間SM1及びSM2における原料ミストMTの濃度分布の均一化を図ることができる。
【0206】
次に、
図7で示した成膜装置13Bの成膜室191Bについて説明する。
【0207】
成膜装置13Bの全体構成は、
図3~
図5で示した実施の形態2の成膜装置12の構成を基準として、成膜室191及び192に置き換えて、成膜室191B及び192Bを設けたことを特徴としている。なお、成膜室191B及び192B以外の加熱室181及び182、搬送チェーン25及び基板吊り下げ部25pは、実施の形態2の成膜装置12と同じであるため、説明を省略する。
【0208】
成膜室191B及び192Bの内部構成は同じであるため、以下では、
図7を参照して、成膜室191Bを中心に説明する。
【0209】
成膜室191Bでは、下部容器34の対向する一対の側面それぞれに取付部材55を介して循環用ファン45を設けている。すなわち、下部容器34内において、対向する一対の側面付近に一対の循環用ファン45を設けている。
【0210】
図7に示すように、成膜室191Bは、原料溶液用容器である下部容器34と、下部容器34の上方に配置される上部容器33と、ミスト空間SM1内で原料ミストMTを循環させる循環用送風動作を実行する一対の循環用ファン45とを含んでいる。なお、下部容器34が原料溶液36を収容すること、下部容器34の底面に2つの超音波振動子38が設けられる構成は、実施の形態2の成膜室901と同様である。
【0211】
また、一対の循環用ファン45は、下部容器34に収容された原料溶液36の上面から少し高い位置で、かつ、基板吊り下げ部25pで吊り下げられた基板10の下端より低い位置され、上方(+Z方向)に循環気流C45が生じるように循環用送風動作を実行する。したがって、一対の循環用ファン45のファン動作が搬送チェーン25の基板吊り下げ部25pに吊り下げられた基板10の移動に影響を与えることはない。
【0212】
このような構成において、成膜装置13Bは、2つの超音波振動子38による超音波振動動作によって、原料溶液36をミスト化して原料ミストMTを生成している。この際、一対の循環用ファン45は循環用送風動作を行い、下方から上方に向かう方向(+Z方向)に一対の循環気流C45を発生させる。
【0213】
したがって、原料溶液36からミスト化された原料ミストMTの一部が一対の循環気流C45によって上方に強制的に移動されることにより、重力の影響による鉛直方向(-Z方向)に沿った原料ミストMTの濃度勾配を緩和することができる。
【0214】
このように、一対の循環用ファン45による循環用送風動作によって、ミスト空間SM1内で原料ミストMTを循環させる循環処理が行える。
【0215】
成膜室192Bも成膜室191Bと同様な構成であり、内部に一対の循環用ファン45が設けられる。なお、ミスト空間SM2はミスト空間SM1に対応する。
【0216】
その結果、成膜室191B及び192Bは、ミスト空間SM1及びSM2における原料ミストMTの濃度分布の均一化を図ることができる。
【0217】
このように、実施の形態3の成膜装置13A及び13Bは共に一対の循環用ファン45が実行する循環用送風動作によって、ミスト空間SM(SM1及びSM2)内の原料ミストMTを循環させることにより、ミスト空間SM内の原料ミストMTの濃度の均一化を図ることができる。
【0218】
その結果、実施の形態3の成膜装置13Aは、複数の基板10の表面上に精度良く薄膜を成膜することができる。同様に、成膜装置13Bは、複数の基板10の表面上及び裏面上それぞれに精度良く薄膜を成膜することができる。
【0219】
<実施の形態4>
図8及び
図9は実施の形態4の成膜装置14(14A,14B)に用いられる成膜室の構成を示す説明図である。
図8及び
図9それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0220】
図8は実施の形態1の構成を基準とした成膜装置14Aの成膜室901Cを示しており、
図9は実施の形態2の構成を基準とした成膜装置14Bの成膜室191Cを示している。なお、成膜装置14は成膜装置14A及び14Bの総称である。
【0221】
成膜装置14Aの全体構成は、
図1及び
図2で示した実施の形態1の成膜装置11の構成を基準として、成膜室901及び902に置き換えて、成膜室901C及び902Cを設けたことを特徴としている。なお、成膜室901C及び902C以外の加熱室801及び802、コンベア53は、実施の形態1の成膜装置11と同じであるため、説明を省略する。
【0222】
成膜室901C及び902Cの内部構成は同じであるため、以下では、
図8を参照して、成膜室901Cを中心に説明する。
【0223】
成膜室901Cは、成膜室901Bと同様、一対の循環用ファン45を有し、さらに以下の特徴を有している。
【0224】
成膜室901C内において、下部容器32の底面上に一対の取付部材56を上方(+Z方向)に立設させ、一対の取付部材56の上方先端部に吹付用ファン46を取り付けている。吹付用ファン46は平面視してベルト52の中心部と重複するように配置される。
【0225】
成膜室901C内において、上部容器31の上面下に一対の取付部材57を下方(-Z方向)に立設させ、一対の取付部材57の下方先端部に吹付用ファン47を取り付けている。吹付用ファン47は平面視してベルト52の中心部と重複し、かつ、吹付用ファン46に平面視して一致するように配置される。
【0226】
図8に示すように、成膜室901Cは、実施の形態3の成膜室901Bの構成に加え、さらに、上述した吹付用ファン46及び47を設けたことを特徴としている。
【0227】
また、第1方向吹付用ファンである吹付用ファン46は、下部容器32に収容された原料溶液36の上面及び一対の循環用ファン45よりも高い位置でかつ、ベルト52の下方に配置される。吹付用ファン46は、第1の吹付方向である上方(+Z方向)に吹付気流C46が生じるように第1の吹付用送風動作を実行する。したがって、吹付用ファン46の第1の吹付用送風動作がベルト52上に載置された基板10の移動に影響を与えることはない。
【0228】
第2方向吹付用ファンである吹付用ファン47は、ベルト52の上方に配置され、第2の吹付方向である下方(-Z方向)に吹付気流C47が生じるように第1の吹付用送風動作を実行する。したがって、吹付用ファン47の第2の吹付用送風動作がベルト52上に載置された基板10の移動に影響を与えることはない。
【0229】
すなわち、第1方向吹付用ファンである吹付用ファン46は、第1の吹付方向である+Z方向に沿って、原料ミストMTを成膜経路RF1に向けて吹き付ける第1の吹付用送風動作を実行する。同様に、第2方向吹付用ファンである吹付用ファン47は、第2の吹付方向である-Z方向に沿って、原料ミストMTを成膜経路RF1に向けて吹き付ける第2の吹付用送風動作を実行する。
【0230】
図1及び
図8に示すように、コンベア53によるミスト空間通過処理は、ミスト空間SM1の成膜経路RF1を通過するように、複数の基板10を移動させる処理である。
【0231】
このような構成において、成膜装置14Aは、実施の形態3の成膜装置13Aと同様、一対の循環用ファン45の循環用送風動作によって一対の循環気流C45を生成することにより、ミスト空間SM1における原料ミストMTの均一化を図っている。
【0232】
さらに、成膜装置14Aは、吹付用ファン46の第1の吹付用送風動作により、上方の成膜経路RF1に向けて吹付気流C46を発生させ、吹付用ファン47の第2の吹付用送風動作により、下方の成膜経路RF1に向けて吹付気流C47を発生させている。
【0233】
したがって、第1方向及び第2方向吹付用ファンである吹付用ファン46及び47が実行する第1及び第2の吹付用送風動作によって、原料ミストMTの成膜経路RF1への供給速度を高くし、成膜経路RF1における原料ミストMTの濃度を高い状態で均一にすることができる。
【0234】
成膜室902Cも成膜室901Cと同様な構成であり、内部に一対の循環用ファン45、吹付用ファン46及び47が設けられる。なお、ミスト空間SM2はミスト空間SM1に対応し、成膜経路RF2は成膜経路RF1に対応する。
【0235】
次に、
図9で示した成膜装置14Bの成膜室191Cについて説明する。
【0236】
成膜室191C及び192Cの内部構成は同じであるため、以下では、
図9を参照して、成膜室191Cを中心に説明する。
【0237】
成膜室191Cは、成膜室191Bと同様、一対の循環用ファン45を有し、さらに、以下の特徴を有している。
【0238】
成膜室191C内において、下部容器34の一方の側面(-Y側の側面)に設けられた一対の取付部材58を介して吹付用ファン48を設けている。成膜室191C内において、下部容器34の他方の側面(+Y側の側面)に設けられた取付部材59を介して吹付用ファン49を設けている。
【0239】
吹付用ファン48及び49は同じ高さで、かつ、XZ平面で平面視して基板10の通過領域と重複するように配置される。さらに、吹付用ファン48及び49は、XZ平面で平面視して互いに合致する。
【0240】
図9に示すように、成膜室191Cは、実施の形態3の成膜室191Bの構成に加え、さらに、上述した吹付用ファン48及び49を設けたことを特徴としている。
【0241】
図3及び
図9に示すように、搬送チェーン25による第1のミスト空間通過処理は、ミスト空間SM1の成膜経路RF11を通過するように、複数の基板10を移動させる処理である。
【0242】
このような構成において、成膜装置14Bは、成膜装置13Bと同様、一対の循環用ファン45の循環用送風動作によって一対の循環気流C45を生成することにより、ミスト空間SM1における原料ミストMTの均一化を図っている。
【0243】
さらに、成膜装置14Bは、吹付用ファン48の第1の吹付用送風動作により、右方(+Y方向)の成膜経路RF11に向けて吹付気流C48を発生させ、吹付用ファン49の第2の吹付用送風動作により、左方(-Y方向)の成膜経路RF11に向けて吹付気流C49を発生させている。
【0244】
すなわち、第1方向吹付用ファンである吹付用ファン48は、第1の吹付方向である+Y方向に沿って、原料ミストMTを成膜経路RF11に向けて吹き付ける第1の吹付用送風動作を実行する。同様に、第2方向吹付用ファンである吹付用ファン49は、第2の吹付方向である-Y方向に沿って、原料ミストMTを成膜経路RF11に向けて吹き付ける第2の吹付用送風動作を実行する。
【0245】
したがって、吹付用ファン48及び49が実行する第1及び第2の吹付用送風動作によって、原料ミストMTの成膜経路RF1への供給速度を高くすることにより、成膜経路RF11における原料ミストMTの濃度を高い状態で均一にすることができる。
【0246】
成膜室192Cも成膜室191Cと同様な構成であり、内部に一対の循環用ファン45、吹付用ファン48及び49が設けられる。なお、ミスト空間SM2はミスト空間SM1に対応し、成膜経路RF12は成膜経路RF11に対応する。
【0247】
このように、実施の形態4の成膜装置14Aは、吹付用ファン46及び47が実行する吹付用送風動作(第1及び第2の吹付用送風動作)によって、成膜室901C(902C)内の成膜経路RF1(RF2)における原料ミストMTの濃度を高い状態で均一にすることができる。
【0248】
同様に、実施の形態4の成膜装置14Bは、吹付用ファン48及び49が実行する吹付用送風動作によって、成膜室191C(192C)内の成膜経路RF11(RF12)における原料ミストMTの濃度が高い状態で均一にすることができる。
【0249】
その結果、実施の形態4の成膜装置14(14A及び14B)は、薄膜の成膜速度及び成膜精度を高めることができる。
【0250】
さらに、実施の形態4の成膜装置14Aは、高さ方向(Z方向)において成膜経路RF1(RF2)を挟んで対向する吹付用ファン46及び47が実行する第1及び第2の吹付用送風動作によって、成膜経路RF1における原料ミストMTの濃度をより高く、かつ、より均一にすることができる。
【0251】
同様に、実施の形態4の成膜装置14Bは、水平方向(Y方向)において成膜経路RF11(RF12)を挟んで対向する吹付用ファン48及び49が実行する第1及び第2の吹付用送風動作によって、成膜経路RF11における原料ミストMTの濃度をより高く、かつ、より均一にすることができる。
【0252】
なお、前述したように、第1方向吹付用ファンに、成膜装置14Aの吹付用ファン46及び成膜装置14Bの吹付用ファン48が相当し、第2方向吹付用ファンに、成膜装置14Aの吹付用ファン47及び成膜装置14Bの吹付用ファン49が相当する。
【0253】
<実施の形態5>
図10は実施の形態5の成膜装置15の概略構成を示す説明図である。
図10にXYZ直交座標系を記している。
【0254】
図10に示すように、実施の形態5の成膜装置15は、成膜室500、赤外光照射器4及びコンベア53を主要構成要素として含んでいる。
【0255】
基板搬送部であるコンベア53はベルト52の上面に複数の基板10を載置しつつ、複数の基板10を搬送方向(X方向)に搬送している。コンベア53は左右両端に設けられた搬送用の一対のローラ51と、一対のローラ51に架け渡された無端状の搬送用のベルト52とを備えている。
【0256】
コンベア53は、一対のローラ51の回転駆動によって、上方側(+Z方向側)のベルト52を搬送方向(X方向)に沿って移動させることができる。
【0257】
コンベア53の一対のローラ51のうち、一方は成膜室500の左方(-X方向)に設けられ、他方は成膜室500の右方(+X方向)に設けられる。また、ベルト52の中央部は、成膜室500の内部に設けられる。
【0258】
したがって、ベルト52は一対のローラ51の回転駆動により、成膜室500の左右(-X方向,+X方向)の側面の一部に設けられる一対の開口部68を介して、成膜室500の内部及び外部との間を移動することができる。
【0259】
成膜室500の周辺において、赤外光照射器4は上部容器31外の上方(+Z方向)側のコンベア53から離れた位置に、図示しない固定手段より固定される。赤外光照射器4により加熱機構が構成される。
【0260】
なお、赤外光照射器4は、成膜室500内のベルト52の上面領域と平面視して重複する位置に配置される。
【0261】
赤外光照射器4はランプ載置台41及び複数の赤外光ランプ42から構成され、ランプ載置台41の下部に複数の赤外光ランプ42が取り付けられる。したがって、赤外光照射器4は複数の赤外光ランプ42から下方(-Z方向)に向けて赤外光を照射することができる。
【0262】
したがって、第2方向加熱部である赤外光照射器4は、-Z方向(第2の方向)を照射方向とした赤外光を加熱空間HS5に向けて照射して、加熱空間HS5を加熱する加熱処理を行う。したがって、加熱空間HS5内にベルト52上に載置された基板10が存在する場合は、加熱処理によって基板10を加熱することができる。
【0263】
このように、実施の形態5の成膜装置15は、加熱機構として成膜室500の外部に赤外光照射器4を有している。そして、赤外光照射器4によって、成膜室500内の加熱空間HS5を加熱する加熱処理を実行している。
【0264】
成膜室500は上部容器31、下部容器32、2つの超音波振動子38を主要構成要素として含んでいる。
【0265】
成膜室500の左右の側面の一部に一対の開口部68が設けられる。一対の開口部68は、Z方向である高さ方向において上部容器31と下部容器32との間に一対の開口部68が設けられる。そして、成膜室500内の開口部68,68間にコンベア53が設けられる。
【0266】
原料溶液用容器である下部容器32は原料溶液36を収容している。2つの超音波振動子38(少なくとも一つの超音波振動子)は下部容器32の底面に設けられる。
【0267】
成膜室500は、2つの超音波振動子38による超音波振動動作によって、原料溶液36をミスト化して原料ミストMTを生成する。その結果、原料ミストMTが成膜室500内で滞留し、充満することによりミスト空間SM5が得られる。このように、成膜室500はミスト発生機能を有している。
【0268】
また、ミスト空間SM5及び加熱空間HS5は共に成膜室500内に存在し、ミスト空間SMと加熱空間HS5とは大部分が互いに重複する関係になる。
【0269】
このように、実施の形態5の成膜装置15は、成膜室500内にミスト空間SM5を生成している。
【0270】
基板搬送部であるコンベア53は、搬送処理として、成膜室500内のミスト空間SMを通過するように複数の基板10を移動させるミスト空間通過処理を実行することができる。ミスト空間通過処理の実行時に複数の基板10は成膜経路RF5を通過する。
【0271】
加熱空間HS5とミスト空間SMとが重複しているため、ミスト空間通過処理の実行時に、同時に加熱空間HSに存在する複数の基板10を加熱することができる。
【0272】
成膜室500は、ミスト空間通過処理が実行される際、エアカーテン7により一対の開口部68を塞ぐことにより、ベルト52上に載置された複数の基板10、ミスト空間SM5及び加熱空間HS5を外部から遮断することができる。
【0273】
したがって、実施の形態5の成膜装置15は、エアカーテン7によって成膜室500の一対の開口部68を閉状態にし、コンベア53のベルト52を搬送方向(X方向)に沿って移動させる搬送処理を実行することにより、成膜環境を設定することができる。上述したように、搬送処理には、ミスト空間通過処理が含まれる。
【0274】
以下、同一の基板10を成膜対象として実施の形態5の成膜装置15の成膜内容を説明する。
【0275】
実施の形態5の成膜装置15は、上記成膜環境下で、コンベア53による搬送処理として、上記ミスト空間通過処理を実行する。このミスト空間通過処理の実行時に赤外光照射器4による加熱空間HS5を加熱する加熱処理が併せて実行される。したがって、上記ミスト空間通過処理の実行時に成膜対象の基板10は加熱される。
【0276】
その結果、実施の形態5の成膜装置15は、成膜室500内にて、ベルト52の上面に載置された基板10の表面上に薄膜を成膜することができる。
【0277】
このように、実施の形態5の成膜装置15は、基板10と接触関係をもたせることなく、赤外光照射器4によって基板10を加熱することができるため、基板10の形状に関わらず均一な加熱を、基板10を変形させることなく行うことができる。
【0278】
その結果、実施の形態5の成膜装置15は、成膜品質や成膜速度を落とすことなく、基板10の表面上に薄膜を成膜することができる。
【0279】
実施の形態5の成膜装置15は、実施の形態1の成膜装置11と同様、成膜室500がミスト発生機能を有している。このため、成膜装置15は、原料ミストMTの利用効率が高いミスト空間SM内で薄膜を成膜することができるため、原料溶液36を有効に利用することができる効果を奏する。
【0280】
さらに、実施の形態5の成膜装置15は、基板搬送部であるコンベア53によるミスト空間通過処理の実行時に成膜対象の基板10は加熱されるため、比較的短期間で複数の基板10の表面上に薄膜を成膜することができる。
【0281】
加えて、ミスト空間通過処理時に成膜対象の基板10が加熱されるため、成膜対象の基板10の温度設定を熱効率良く行える。
【0282】
<変形例>
図1及び
図2で示した実施の形態1である成膜装置11の変形例として、理想環境を実現するための構成を考察する。
【0283】
以下では、搬送処理の搬送方向(X方向)における搬送用移動速度VMが一定であることを前提として、加熱室801内で実行される第1の加熱空間通過処理と、成膜室901内で実行される第1のミスト空間通過処理について考察する。なお、搬送処理には、第1及び第2の加熱空間通過処理並びに第1及び第2のミスト空間通過処理が含まれる。
【0284】
ここで、理想環境を実現するには、加熱室801内で実行される第1の加熱空間通過処理は、必要加熱空間通過時間THを必要とし、成膜室901内で第1のミスト空間通過処理は必要ミスト空間通過時間TMの実行を必要とすると場合を考える。
【0285】
必要加熱空間通過時間THは、第1の加熱機構(赤外光照射器2及び4)の第1の加熱処理の加熱内容等を考慮して決定され、必要ミスト空間通過時間TMはミスト空間SM1内の原料ミストMTの濃度設定内容等を考慮して決定される。
【0286】
したがって、必要加熱空間通過時間THを要する第1の加熱空間通過処理が実行され、その後、必要ミスト空間通過時間TMを要する第1のミスト空間通過処理を実行することにより、成膜室901内にて目標膜厚を満足する薄膜を高品質に成膜する理想環境が実現できる。理想環境となる構成を実現したのが実施の形態1の変形例となる。
【0287】
図1に示すように、加熱空間HS1における搬送方向の距離が加熱工程長LHとして規定され、ミスト空間SM1(成膜経路RF1)における搬送方向の距離が成膜工程長LMとして規定される。そして、コンベア53の搬送処理における基板10の移動速度が搬送用移動速度VMして規定され、搬送用移動速度VMは一定である。
【0288】
実施の形態1の変形例では、加熱工程長LH及び搬送用移動速度VMは、必要加熱空間通過時間THを満足するように設定される。すなわち、式(1){LH/VM=TH…(1)}を満足するように、加熱工程長LH及び搬送用移動速度VMが設定される。
【0289】
同様にして、実施の形態1の変形例では、成膜工程長LM及び搬送用移動速度VMは、必要ミスト空間通過時間TMを満足するように設定される。すなわち、式(2){LM/VM=TM…(2)}を満足するように、成膜工程長LM及び搬送用移動速度VMが設定される。
【0290】
例えば、所定の温度に加熱された加熱空間HS1内で基板10が目標温度に到達するまでの必要加熱空間通過時間THが10秒の場合、搬送用移動速度VMが10cm/sの速度の際、加熱工程長LHを100cmに設定すれば良い。
【0291】
さらに、ミスト空間SM1内で基板10が目標膜厚に到達するまでの必要ミスト空間通過時間TMが15秒の場合、搬送用移動速度VMが10cm/sの速度の際、成膜工程長LMを150cmに設定すれば良い。
【0292】
このように、実施の形態1の変形例は、加熱工程長LH及び搬送用移動速度VMを、式(1)を満足するように設定し、成膜工程長LM及び搬送用移動速度VMを、式(2)を満足するように設定している。
【0293】
このため、実施の形態1の変形例は、加熱空間HS1の設定温度を必要以上に高めることなく、成膜対象の基板10の温度が目標温度に達成するように第1の加熱処理を実行することができる。
【0294】
さらに、実施の形態1の変形例は、ミスト空間SM1における原料ミストMTの濃度を必要以上に高めることなく、成膜対象の基板10上に精度良く目標膜厚の薄膜を成膜することができる。
【0295】
なお、加熱室802においても、加熱室801と同様に、加熱工程長LH及び搬送用移動速度VMを設定することができ、成膜室902においても成膜室901と同様に成膜工程長LM及び搬送用移動速度VMを設定することができる。
【0296】
また、実施の形態2においても、実施の形態1の変形例と同様、加熱工程長LH、成膜工程長LM及び搬送用移動速度VMが設定された変形例が実現可能である。
【0297】
<その他>
図1,
図3、
図5及び
図10~
図12では、模式的にエアカーテン7を図示している。エアカーテン7は、加熱室や成膜室の内部に設けても、加熱室や成膜室の外部に設けても良い。要は、加熱室や成膜室の内部を外部から遮断できれば良い。
【0298】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0299】
例えば、実施の形態5では、実施の形態1と同様、基板搬送部としてコンベア53を用いたが、実施の形態2のように、基板搬送部として搬送チェーン25を用いても良い。この場合、加熱機構として、赤外光照射器4に代えて赤外光照射器2L及び2Rが用いられる。
【0300】
また、実施の形態5の成膜装置15における成膜室500内に実施の形態3で示した一対の循環用ファン45を設ける構成や、実施の形態4で示した吹付用ファン46及び47を設ける構成も可能である。
【符号の説明】
【0301】
2,2R,2L,4 赤外光照射器
11~15,13A,13B,14A,14B 成膜装置
181,182,801,802 加熱室
191,191B,191C,192,192B,192C,500,901,901B,901C,902,902B,902C 成膜室
21,41 ランプ載置台
22,42 赤外光ランプ
25 搬送チェーン
31,33,81 上部容器
32,34,82 下部容器
36 原料溶液
38 超音波振動子
45 循環用ファン
46~49 吹付用ファン
51 ローラ
52 ベルト
53 コンベア
68,88,89,98,99 開口部
85 右方容器
86 左方容器
HS1,HS2,HS5 加熱空間
MT 原料ミスト
SM1,SM2,SM5 ミスト空間
【要約】
本開示は、原料ミストの原料の利用効率を高めた成膜装置の構造を提供することを目的とする。そして、本開示の成膜装置(11)において、成膜室(901)は、超音波振動動作によって、原料溶液(36)をミスト化して原料ミスト(MT)を生成するミスト発生機能を有し、成膜室(901)内にミスト空間(SM1)が得られる。成膜室(902)もミスト生成機能を有し、成膜室(902)内にミスト空間(SM2)が得られる。コンベア(53)は、ミスト空間(SM1)を通過するように複数の基板(10)を移動させる第1のミスト空間通過処理、及びミスト空間(SM2)を通過するように複数の基板(10)を移動させる第2のミスト空間通過処理を実行する。