(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】粒子測定装置および粒子測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/14 20060101AFI20220701BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
G01N15/14 D
G01N15/14 C
G01N33/543 597
(21)【出願番号】P 2018033515
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2020-10-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(72)【発明者】
【氏名】田端 誠一郎
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-044650(JP,A)
【文献】特公平05-048413(JP,B2)
【文献】特開平09-079969(JP,A)
【文献】特開昭61-182549(JP,A)
【文献】特開2011-095181(JP,A)
【文献】特開2013-160672(JP,A)
【文献】特開平10-253624(JP,A)
【文献】特開2011-169916(JP,A)
【文献】特開2006-292769(JP,A)
【文献】特開昭61-051569(JP,A)
【文献】特表2005-536740(JP,A)
【文献】特開2014-228409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
G01N 33/543
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を含む試料を流すためのフローセルと、
前記フローセルを流れる前記試料に照射光を照射する照射部と、
前記照射光の照射により前記試料に含まれる前記粒子から生じた光を集光する集光レンズと、
複数の光ファイバーが束ねられて構成され、前記集光レンズを透過した前記光が入射する光伝送部と、
前記光伝送部により伝送された前記光を受光して検出信号を出力する光検出部と、を含み、
前記集光レンズは、前記光伝送部の入射側端面よりも小さ
く、前記光ファイバーの総数より少ない複数の前記光ファイバーのそれぞれの入射端に跨る領域に、前記粒子から生じた前記光を集光する、粒子測定装置。
【請求項2】
粒子を含む試料を流すためのフローセルと、
前記フローセルを流れる前記試料に照射光を照射する照射部と、
前記照射光の照射により前記試料に含まれる前記粒子から生じた光を集光する集光レンズと、
複数の光ファイバーが束ねられて構成された光伝送部と、
前記集光レンズにより集光された光を前記光伝送部の入射側端面に導くための導光用レンズと、
前記光伝送部により伝送された前記光を受光して検出信号を出力する光検出部と、を含み、
前記集光レンズは、前記粒子から生じた光を、前記導光用レンズの入射側端面に収束させ、
前記導光用レンズは、前記集光レンズによって収束された光を、各光ファイバーの入射端の径よりも大きく、且つ、複数の前記光ファイバーの複数の入射端に跨がる広さで前記光伝送部の入射側端面に入射させる、粒子測定装置。
【請求項3】
前記導光用レンズは、前記集光レンズにより集光された光をその径を拡大させて前記光伝送部の入射側端面に導く、請求項
2に記載の粒子測定装置。
【請求項4】
前記導光用レンズは、前記集光レンズにより集光された光を、前記光伝送部の入射側端面に平行光として入射させる、請求項
3に記載の粒子測定装置。
【請求項5】
前記粒子から生じた光が透過する対物レンズをさらに備え、
前記対物レンズの後側主平面と前記集光レンズの主平面との距離、および、前記集光レンズの主平面と前記導光用レンズの入射側端面との距離は、いずれも前記集光レンズの焦点距離に設定される、請求項
2ないし
4の何れか一項に記載の粒子測定装置。
【請求項6】
前記導光用レンズは、中心軸から離れるに従って屈折率が小さくなる屈折率分布型レンズである、請求項
2ないし
5の何れか一項に記載の粒子測定装置。
【請求項7】
前記光検出部は、
前記光伝送部により伝送された光を受光する受光素子と、
前記光伝送部と前記受光素子との間に配置され、前記光伝送部により伝送された光を前記受光素子に導く光学系と、を含む、請求項1ないし
6の何れか一項に記載の粒子測定装置。
【請求項8】
前記光学系は、前記光伝送部の前記複数の光ファイバーから出射される光を平行光に変換するコリメータレンズを含む、請求項
7に記載の粒子測定装置。
【請求項9】
前記光学系は、前記コリメータレンズと前記受光素子との間に配置された第2集光レンズを含み、
前記第2集光レンズは、前記コリメータレンズにより平行光に変換された光を集光して前記受光素子へと導く、請求項
8に記載の粒子測定装置。
【請求項10】
前記コリメータレンズは、前記光伝送部を構成する全ての前記光ファイバーから出射された光を取り込み可能に構成され、
前記第2集光レンズは、前記コリメータレンズにより取り込まれた前記光を前記受光素子へと導く、請求項
9に記載の粒子測定装置。
【請求項11】
前記照射部は、互いに波長が異なる複数の前記照射光を前記試料に照射し、
前記複数の照射光にそれぞれ対応する複数の前記光伝送部と、前記複数の光伝送部によりそれぞれ伝送された前記光を受光して検出信号を出力する複数の光検出部と、を含む、請求項1ないし
10の何れか一項に記載の粒子測定装置。
【請求項12】
前記複数の光検出部は、互いに異なる基板に設置されている、請求項
11に記載の粒子測定装置。
【請求項13】
前記照射部は、前記試料の流れ方向において互いに異なる位置に、それぞれ前記複数の照射光を照射する、請求項
11または
12に記載の粒子測定装置。
【請求項14】
前記集光レンズは、前記複数の照射光によってそれぞれ生じた前記光に対して色収差を抑制するよう構成されている、請求項
11ないし
13の何れか一項に記載の粒子測定装置。
【請求項15】
前記試料は、前記粒子として細胞を含んでおり、
前記細胞の互いに異なる複数のマーカーは、前記照射光により互いに異なる波長の蛍光を生じる複数の蛍光色素によりそれぞれ染色されている、請求項1ないし
14の何れか一項に記載の粒子測定装置。
【請求項16】
粒子を含む試料を流すためのフローセルと、
前記フローセルを流れる前記試料に照射光を照射する照射部と、
前記照射光の照射により前記試料に含まれる前記粒子から生じた光を集光する集光レンズと、
複数の光ファイバーが束ねられて構成された光伝送部と、
前記集光レンズにより集光された光を前記光伝送部の入射側端面に導くための導光用レンズと、
前記光伝送部により伝送された前記光を受光して検出信号を出力する光検出部と、を含み、
前記導光用レンズの焦点距離の条件は、以下の式で表される、粒子測定装置。
【数1】
上記式において、f2は導光用レンズの焦点距離であり、mは光伝送部の光ファイバーの本数であり、bは光伝送部内の光ファイバーの外径であり、NA1は、集光レンズの開口数である。
【請求項17】
粒子を含む試料を流すためのフローセルと、
前記フローセルを流れる前記試料に照射光を照射する照射部と、
前記照射光の照射により前記試料に含まれる前記粒子から生じた光を集光する集光レンズと、
複数の光ファイバーが束ねられて構成された光伝送部と、
前記集光レンズにより集光された光を前記光伝送部の入射側端面に導くための導光用レンズと、
前記光伝送部により伝送された前記光を受光して検出信号を出力する光検出部と、を含み、
前記導光用レンズは、複数の前記光ファイバーの入射端に接着されている、粒子測定装置。
【請求項18】
粒子を含む試料を流すためのフローセルと、
前記フローセルを流れる前記試料に照射光を照射する照射部と、
前記照射光の照射により前記試料に含まれる前記粒子から生じた光を集光する集光レンズと、
複数の光ファイバーが束ねられて構成された光伝送部と、
前記集光レンズにより集光された光を前記光伝送部の入射側端面に導くための導光用レンズと、
前記光伝送部により伝送された前記光を受光して検出信号を出力する光検出部と、を含み、
前記集光レンズは、前記導光用レンズの入射側端面よりも小さな領域に、前記粒子から生じた前記光を集光する、粒子測定装置。
【請求項19】
粒子を含む試料を流すためのフローセルと、
前記フローセルを流れる前記試料に照射光を照射する照射部と、
前記照射光の照射により前記試料に含まれる前記粒子から生じた光を集光する集光レンズと、
複数の光ファイバーが束ねられて構成され、前記集光レンズを透過した前記光が入射する光伝送部と、
前記光伝送部により伝送された前記光を受光して検出信号を出力する光検出部と、を含み、
前記光伝送部は、入射側端面における各光ファイバーの分布に対して出射側端面における前記各光ファイバーがランダムに分布しており、
前記光検出部は、
前記光伝送部により伝送された光を受光する受光素子と、
前記光伝送部と前記受光素子との間に配置され、前記光伝送部の前記複数の光ファイバーから出射された光を平行光に変換するコリメータレンズを含み、前記光伝送部により伝送された光を前記受光素子に導く光学系と、を含み、
前記コリメータレンズが、前記光伝送部の全ての光ファイバーから出射された光を取り込み可能に構成されている、粒子測定装置。
【請求項20】
粒子を含む試料をフローセルに流し、
前記フローセルを流れる前記試料に照射光を照射し、
前記照射光の照射により前記試料に含まれる前記粒子から生じた光を集光し、
集光された光を導光用レンズにより複数の光ファイバーが束ねられた光ファイバー束の入射端に導き、
前記光ファイバー束により伝送された光を受光して検出信号を出力し、
前記光ファイバー束の入射端に光を導く工程では、前記集光された光を、各光ファイバーの入射端の径よりも大きく、且つ、複数の前記光ファイバーの複数の入射端に跨がる広さで前記光ファイバー束の入射端に入射させる、粒子測定方法。
【請求項21】
前記光ファイバー束の入射端に光を導く工程では、集光された前記光をその径を拡大させて前記光ファイバー束の入射端に入射させる、請求項
20に記載の粒子測定方法。
【請求項22】
粒子を含む試料をフローセルに流し、
前記フローセルを流れる前記試料に照射光を照射し、
前記照射光の照射により前記試料に含まれる前記粒子から生じた光を集光し、
集光された光を複数の光ファイバーが束ねられた光ファイバー束の入射端に入射させ、
前記光ファイバー束により伝送された光を受光して検出信号を出力し、
前記粒子から生じた光を集光する工程では、前記光ファイバー束の入射側端面よりも小さ
く、前記光ファイバーの総数より少ない複数の前記光ファイバーのそれぞれの入射端に跨る領域に、前記粒子から生じた前記光を集光する、粒子測定方法。
【請求項23】
粒子を含む試料をフローセルに流し、
前記フローセルを流れる前記試料に照射光を照射し、
前記照射光の照射により前記試料に含まれる前記粒子から生じた光を集光し、
集光された光を導光用レンズにより複数の光ファイバーが束ねられた光ファイバー束の入射端に導き、
前記光ファイバー束により伝送された光を受光して検出信号を出力し、
前記粒子から生じた光を集光する工程では、前記導光用レンズの入射側端面よりも小さな領域に、前記粒子から生じた前記光を集光する、粒子測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子を測定する粒子測定装置および粒子測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を粒子に照射し、粒子から生じた光を光ファイバーにより検出部へと導くフローサイトメータが知られている。たとえば、特許文献1には、生体試料中の複数種類のターゲット物質から得られる複数の蛍光信号を解析するマルチカラーフローサイトメトリーが記載されている。
【0003】
具体的には、特許文献1には、
図14に示すように、互いに異なる波長のレーザ光を出射するレーザ光源601、602、603、604と、レーザ光が照射されるフローセル610と、レーザ光の照射により生じた蛍光を集光する集光レンズ620と、検出部631、632、633、634と、集光レンズ620により集光された蛍光を検出部631、632、633、634へとそれぞれ導く光ファイバー641、642、643、644と、光ファイバー641、642、643、644を支持するホルダ650と、を備える光学ユニットが記載されている。また、特許文献1には、1種類のレーザ光の照射により生じた蛍光は、1本の光ファイバーによって検出部へと導かれ、蛍光が光ファイバーの入射側端面からずれた場合には、ホルダを移動させることで光ファイバーの位置合わせを行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、1本の光ファイバーの径は、一般的に9μm~60μmと小さい。このため、上記のような光学ユニットでは、光ファイバーに僅かな位置ずれが生じた場合でも、光が光ファイバーに適正に入射しなくなる。これにより、測定結果の精度が低下する。上記のようなマルチカラーフローサイトメトリーでは、多数のターゲット物質から複数の蛍光を同時に精度よく検出するために、測定の都度、光ファイバーの位置調整を行うことが必要になる。しかしながら、測定ごとに位置調整が必要になると、メンテナンスにかかるユーザの作業負担が大きくなるとともに、メンテナンスを実行するための熟練度もユーザに求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、粒子測定装置に関する。本態様に係る粒子測定装置(10)は、粒子を含む試料(11)を流すためのフローセル(20)と、フローセル(20)を流れる試料(11)に照射光を照射する照射部(30)と、照射光の照射により試料(11)に含まれる粒子から生じた光を集光する集光レンズ(42)と、複数の光ファイバー(51、211、221、231)が束ねられて構成され、集光レンズ(42)を透過した光が入射する光伝送部(50、210、220、230)と、光伝送部(50、210、220、230)により伝送された光を受光して検出信号を出力する光検出部(61、300、400、500)と、を含む。集光レンズ(42)は、光伝送部(50、210、220、230)の入射側端面よりも小さく、光ファイバー(51、211、221、231)の総数より少ない複数の光ファイバー(51、211、221、231)のそれぞれの入射端に跨る領域に、粒子から生じた光を集光する。
【0007】
本態様に係る粒子測定装置によれば、集光レンズにより集光された光が、複数の光ファイバーが束ねられて構成された光伝送部に導かれる。このとき、集光レンズは、光伝送部の入射側端面よりも小さく、光ファイバーの総数より少ない複数の光ファイバーのそれぞれの入射端に跨る領域に、粒子から生じた光を集光する。これにより、集光レンズにより集光された光が光伝送部の入射側端面に入射しやすくなるため、光ファイバーに多少の位置ずれが生じても、粒子から生じた光が光伝送部から外れることが抑制される。よって、光ファイバーの位置調整にかかるユーザの手間を省略でき、光が光ファイバーに適正に入射する状態を維持できる。
【0010】
こうすると、集光レンズにより集光された光が小さく絞られた状態で光伝送部の入射側端面に集光される場合に比べて、光伝送部内の光ファイバーに導かれる光量を一定水準に維持できる。すなわち、小さく絞られた状態の光は、光ファイバーのクラッド部分や、束ねられた複数の光ファイバーの隙間にのみ入射する場合がある。この場合、光伝送部によって後段の光検出部に導かれる光量が大きく下がってしまう。しかしながら、集光レンズにより集光された光が、複数の光ファイバーの入射端に跨がる広さで光伝送部の入射側端面に入射すると、一部の光はクラッド部分や隙間に入射するものの、その他の光は光ファイバーのコア部分に入射する。これにより、光伝送部によって後段の光検出部に導かれる光量のバラつきを抑制できる。
【0011】
本発明の第2の態様は、粒子測定装置に関する。本態様に係る粒子測定装置(10)は、粒子を含む試料(11)を流すためのフローセル(20)と、フローセル(20)を流れる試料(11)に照射光を照射する照射部(30)と、照射光の照射により試料(11)に含まれる粒子から生じた光を集光する集光レンズ(42)と、複数の光ファイバー(51、211、221、231)が束ねられて構成された光伝送部(50、210、220、230)と、集光レンズ(42)により集光された光を光伝送部(50、210、220、230)の入射側端面に導くための導光用レンズ(43、201、202、203)と、光伝送部(50、210、220、230)により伝送された光を受光して検出信号を出力する光検出部(61、300、400、500)と、を含む。集光レンズ(42)は、粒子から生じた光を、導光用レンズ(43、201、202、203)の入射側端面に収束させる。導光用レンズ(43、201、202、203)は、集光レンズ(42)によって収束された光を、各光ファイバー(51、211、221、231)の入射端の径よりも大きく、且つ、複数の光ファイバー(51、211、221、231)の複数の入射端に跨がる広さで光伝送部(50、210、220、230)の入射側端面に入射させる。
本態様に係る粒子測定装置によれば、光ファイバーに位置ずれが生じたり、集光レンズによる集光位置にバラつきが生じたりしても、集光レンズにより集光された光を光伝送部の入射側端面に導くことができる。よって、光が光ファイバーに適正に入射する状態を維持できる。
【0012】
この場合に、導光用レンズ(43、201、202、203)は、集光レンズ(42)により集光された光をその径を拡大させて光伝送部(50、210、220、230)の入射側端面(50a、210a、220a、230a)に導くよう構成され得る。こうすると、光伝送部によって後段の光検出部に導かれる光量のバラつきを抑制できる。
【0013】
本態様に係る粒子測定装置(10)において、導光用レンズ(43、201、202、203)は、集光レンズ(42)により集光された光を、光伝送部(50、210、220、230)の入射側端面(50a、210a、220a、230a)に平行光として入射させるよう構成され得る。こうすると、光伝送部の光ファイバーに入射した光が、コアとクラッドの境界で反射することなくコアから出てしまうことを抑制できる。よって、光伝送部によって導かれる光の利用効率を高めることができる。
【0014】
本態様に係る粒子測定装置(10)は、粒子から生じた光が透過する対物レンズ(41)をさらに備え、対物レンズ(41)の後側主平面と集光レンズ(42)の主平面との距離、および、集光レンズ(42)の主平面と導光用レンズ(43、201、202、203)の入射側端面(43a、201a、202a、203a)との距離は、いずれも集光レンズ(42)の焦点距離に設定され得る。こうすると、対物レンズ、集光レンズ、および導光用レンズが、テレセントリック光学系を構成し、集光レンズにより集光された光が、導光用レンズの入射側端面に垂直に入射する。これにより、導光用レンズの入射側端面に入射した光が、導光用レンズの側面から外側に漏れ出ることを抑制できる。
【0017】
【0018】
上記式において、f2は導光用レンズ(43、201、202、203)の焦点距離であり、mは光伝送部(50、210、220、230)の光ファイバー(51、211、221、231)の本数であり、bは光伝送部(50、210、220、230)内の光ファイバー(51、211、221、231)の外径であり、NA1は、集光レンズ(42)の開口数である。こうすると、導光用レンズの出射側端部における光束の径が、光伝送部の径よりも小さくなるため、導光用レンズを透過した光を確実に光伝送部に入射させることができる。
【0019】
本態様に係る粒子測定装置(10)において、導光用レンズ(43、201、202、203)は、中心軸から離れるに従って屈折率が小さくなる屈折率分布型レンズとして構成され得る。
【0021】
本態様に係る粒子測定装置(10)において、光検出部(300、400、500)は、光伝送部(210、220、230)により伝送された光を受光する受光素子(331~336、431~433、531~536)と、光伝送部(210、220、230)と受光素子(331~336、431~433、531~536)との間に配置され、光伝送部(210、220、230)により伝送された光を受光素子(331~336、431~433、531~536)に導く光学系と、を含むよう構成され得る。
【0022】
この場合に、光学系は、光伝送部(210、220、230)の複数の光ファイバー(211、221、231)から出射される光を平行光に変換するコリメータレンズ(301、401、501)を含むよう構成され得る。こうすると、コリメータレンズと受光素子との間に、光学部品を配置するためのスペースを設けやすくなる。
【0023】
この場合に、光学系は、コリメータレンズ(301、401、501)と受光素子(331~336、431~433、531~536)との間に配置された第2集光レンズ(321~326、421~423、521~526)を含み、第2集光レンズ(321~326、421~423、521~526)は、コリメータレンズ(301、401、501)により平行光に変換された光を集光して受光素子(331~336、431~433、531~536)へと導くよう構成され得る。こうすると、コリメータレンズと第2集光レンズとの間に光学部品を配置するためのスペースを設けやすくなるとともに、コリメータレンズにより平行光に変換された光を確実に受光素子へと導くことができる。
【0024】
本態様に係る粒子測定装置(10)において、コリメータレンズ(301、401、501)は、光伝送部(210、220、230)を構成する全ての光ファイバー(211、221、231)から出射された光を取り込み可能に構成され、第2集光レンズ(321~326、421~423、521~526)は、コリメータレンズ(301、401、501)により取り込まれた光を受光素子(331~336、431~433、531~536)へと導くよう構成され得る。こうすると、受光素子に導かれる光量を高めることができるとともに、受光素子に導かれる光量のバラつきを抑制して測定精度を高めることができる。
【0025】
本態様に係る粒子測定装置(10)において、照射部(30)は、互いに波長が異なる複数の照射光を試料(11)に照射し、本態様に係る粒子測定装置(10)は、複数の照射光にそれぞれ対応する複数の光伝送部(210、220、230)と、複数の光伝送部(210、220、230)によりそれぞれ伝送された光を受光して検出信号を出力する複数の光検出部(300、400、500)と、を含むよう構成され得る。こうすると、複数の照射光により粒子から生じた光が、それぞれ、光伝送部を介して光検出部に導かれるため、光検出部が受光する受光光量に応じて粒子を様々な観点から分析できるようになる。
【0026】
この場合に、複数の光検出部(300、400、500)は、互いに異なる基板(300a、400a、500a)に設置され得る。こうすると、全ての光検出部が1つの基板に配置される場合に比べて、各基板を自由に配置でき、装置の設置面積を縮小できる。また、光ファイバーが束ねられて構成された光伝送部により、光検出部に光が導かれるため、光伝送部を湾曲状に配置することにより、光検出部を所望の場所に配置できる。
【0027】
本態様に係る粒子測定装置(10)において、照射部(30)は、試料(11)の流れ方向において互いに異なる位置に、それぞれ複数の照射光を照射するよう構成され得る。こうすると、複数の照射光によってそれぞれ生じた光を個別に取り出すことが容易になる。
【0028】
本態様に係る粒子測定装置(10)において、集光レンズ(42)は、複数の照射光によってそれぞれ生じた光に対して色収差を抑制するよう構成され得る。こうすると、波長が異なる複数の光を色収差が抑制された状態で集光できるため、複数の光を光伝送部の後段の光検出部において精度よく受光できる。
【0029】
本態様に係る粒子測定装置(10)において、試料(11)は、粒子として細胞を含んでおり、細胞の互いに異なる複数のマーカーは、照射光により互いに異なる波長の蛍光を生じる複数の蛍光色素によりそれぞれ染色され得る。こうすると、1つの細胞から生じた複数の蛍光に基づいて、細胞を様々な観点から分析できる。
本発明の第3の態様は、粒子測定装置に関する。本態様に係る粒子測定装置(10)は、粒子を含む試料(11)を流すためのフローセル(20)と、フローセル(20)を流れる試料(11)に照射光を照射する照射部(30)と、照射光の照射により試料(11)に含まれる粒子から生じた光を集光する集光レンズ(42)と、複数の光ファイバー(51、211、221、231)が束ねられて構成された光伝送部(50、210、220、230)と、集光レンズ(42)により集光された光を光伝送部(50、210、220、230)の入射側端面に導くための導光用レンズ(43、201、202、203)と、光伝送部(50、210、220、230)により伝送された光を受光して検出信号を出力する光検出部(61、300、400、500)と、を含む。導光用レンズ(43、201、202、203)の焦点距離の条件は、以下の式で表される。
【数1】
上記式において、f2は導光用レンズの焦点距離であり、mは光伝送部の光ファイバーの本数であり、bは光伝送部内の光ファイバーの外径であり、NA1は、集光レンズの開口数である。
本発明の第4の態様は、粒子測定装置に関する。本態様に係る粒子測定装置(10)は、粒子を含む試料(11)を流すためのフローセル(20)と、フローセル(20)を流れる試料(11)に照射光を照射する照射部(30)と、照射光の照射により試料(11)に含まれる粒子から生じた光を集光する集光レンズ(42)と、複数の光ファイバー(51、211、221、231)が束ねられて構成された光伝送部(50、210、220、230)と、集光レンズ(42)により集光された光を光伝送部(50、210、220、230)の入射側端面に導くための導光用レンズ(43、201、202、203)と、光伝送部(50、210、220、230)により伝送された光を受光して検出信号を出力する光検出部(61、300、400、500)と、を含む。導光用レンズ(43、201、202、203)は、複数の光ファイバー(51、211、221、231)の入射端に接着されている。
本発明の第5の態様は、粒子測定装置に関する。本態様に係る粒子測定装置(10)は、粒子を含む試料(11)を流すためのフローセル(20)と、フローセル(20)を流れる試料(11)に照射光を照射する照射部(30)と、照射光の照射により試料(11)に含まれる粒子から生じた光を集光する集光レンズ(42)と、複数の光ファイバー(51、211、221、231)が束ねられて構成された光伝送部(50、210、220、230)と、集光レンズ(42)により集光された光を光伝送部(50、210、220、230)の入射側端面に導くための導光用レンズ(43、201、202、203)と、光伝送部(50、210、220、230)により伝送された光を受光して検出信号を出力する光検出部(61、300、400、500)と、を含む。集光レンズ(42)は、導光用レンズ(43、201、202、203)の入射側端面よりも小さな領域に、粒子から生じた光を集光する。
本発明の第6の態様は、粒子測定装置に関する。本態様に係る粒子測定装置(10)は、粒子を含む試料(11)を流すためのフローセル(20)と、フローセル(20)を流れる試料(11)に照射光を照射する照射部(30)と、照射光の照射により試料(11)に含まれる粒子から生じた光を集光する集光レンズ(42)と、複数の光ファイバー(51、211、221、231)が束ねられて構成され、集光レンズ(42)を透過した光が入射する光伝送部(50、210、220、230)と、光伝送部(50、210、220、230)により伝送された光を受光して検出信号を出力する光検出部(61、300、400、500)と、を含む。光伝送部(50、210、220、230)は、入射側端面における各光ファイバー(51、211、221、231)の分布に対して出射側端面における各光ファイバー(51、211、221、231)がランダムに分布している。光検出部(61、300、400、500)は、光伝送部(50、210、220、230)により伝送された光を受光する受光素子(331~336、431~433、531~536)と、光伝送部(50、210、220、230)と受光素子(331~336、431~433、531~536)との間に配置され、光伝送部(50、210、220、230)の複数の光ファイバー(51、211、221、231)から出射された光を平行光に変換するコリメータレンズ(301、401、501)を含み、光伝送部(50、210、220、230)により伝送された光を受光素子(331~336、431~433、531~536)に導く光学系と、を含む。コリメータレンズ(301、401、501)が、光伝送部(50、210、220、230)の全ての光ファイバー(51、211、221、231)から出射された光を取り込み可能に構成されている。
【0030】
本発明の第7の態様は、粒子測定方法に関する。本態様に係る粒子測定方法は、粒子を含む試料(11)をフローセル(20)に流し、フローセル(20)を流れる試料(11)に照射光を照射し、照射光の照射により試料(11)に含まれる粒子から生じた光を集光し、集光された光を導光用レンズ(43、201、202、203)により複数の光ファイバー(51、211、221、231)が束ねられた光ファイバー束の入射端に導き、光ファイバー束により伝送された光を受光して検出信号を出力する。光ファイバー束の入射端に光を導く工程では、集光された光を、各光ファイバー(51、211、221、231)の入射端の径よりも大きく、且つ、複数の光ファイバー(51、211、221、231)の複数の入射端に跨がる広さで光ファイバー束の入射端に入射させる。
【0031】
本態様に係る粒子測定方法によれば、第2の態様と同様の効果が奏される。
【0032】
本態様に係る粒子測定方法において、光ファイバー束の入射端に光を導く工程では、集光された光をその径を拡大させて光ファイバー束の入射端に入射させる。
本発明の第8の態様は、粒子測定方法に関する。本態様に係る粒子測定方法は、粒子を含む試料(11)をフローセル(20)に流し、フローセル(20)を流れる試料(11)に照射光を照射し、照射光の照射により試料(11)に含まれる粒子から生じた光を集光し、集光された光を複数の光ファイバー(51、211、221、231)が束ねられた光ファイバー束の入射端に入射させ、光ファイバー束により伝送された光を受光して検出信号を出力する。粒子から生じた光を集光する工程では、光ファイバー束の入射側端面よりも小さく、前記光ファイバーの総数より少ない複数の前記光ファイバーのそれぞれの入射端に跨る領域に、粒子から生じた光を集光する。
本発明の第9の態様は、粒子測定方法に関する。本態様に係る粒子測定方法は、粒子を含む試料(11)をフローセル(20)に流し、フローセル(20)を流れる試料(11)に照射光を照射し、照射光の照射により試料(11)に含まれる粒子から生じた光を集光し、集光された光を導光用レンズ(43、201、202、203)により複数の光ファイバー(51、211、221、231)が束ねられた光ファイバー束の入射端に導き、光ファイバー束により伝送された光を受光して検出信号を出力する。粒子から生じた光を集光する工程では、導光用レンズ(43、201、202、203)の入射側端面よりも小さな領域に、粒子から生じた光を集光する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、光ファイバーの位置調整にかかる手間を省略でき、光が光ファイバーに適正に入射する状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る粒子測定装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態2に係る粒子測定装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態2に係る粒子測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る照射部の構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係るフローセルから光伝送部までの構成を示す模式図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、実施形態2に係る集光レンズによる光の収束作用を説明するための模式図である。
【
図7】
図7(a)~(c)は、実施形態2に係る光伝送部による光の伝送を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係る光伝送部の後段に配置される光検出部の構成を示す模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る光伝送部の後段に配置される光検出部の構成を示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る光伝送部の後段に配置される光検出部の構成を示す模式図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係るX-Y平面に平行な各基板がZ軸方向に並ぶ状態を示す模式図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る光伝送部の後段に配置された光検出部の設計および配置を説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る粒子測定装置による測定および分析を説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、関連技術に係る構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<実施形態1>
図1を参照して、実施形態1の粒子測定装置10の構成を説明する。
図1において、XYZ軸は互いに直交しており、X軸方向およびY軸方向は水平面に平行な方向に対応し、Z軸正方向は鉛直上方向に対応する。なお、他の図においても、XYZ軸は
図1と同様に設定されている。
【0036】
粒子測定装置10は、フローセル20と、照射部30と、対物レンズ41と、集光レンズ42と、光伝送部50と、光検出部61と、を備える。
【0037】
フローセル20は、Z軸方向に延びた流路21を備える。フローセル20の流路21には、粒子を含む試料11がZ軸正方向に流される。照射部30は、フローセル20を流れる試料11に照射光を照射する。照射光は、流路21の位置において、楕円形状のビームスポット12を形成する。ビームスポット12は、流路21の位置において照射光が照射される領域を示す。照射光が試料11に照射されると、試料11に含まれる粒子から光が生じる。なお、
図1は、便宜上、照射光の照射方向がX軸正方向となるよう図示されているが、実際には、照射光の照射方向はY軸正方向である。
【0038】
対物レンズ41は、照射光の照射により試料11に含まれる粒子から生じた光を集光する。集光レンズ42は、対物レンズ41を透過した光を集光し、集光した光を光伝送部50の入射側端面50aに導く。なお、対物レンズ41を透過した光を光伝送部50へと導くために、
図1に示すように1つの集光レンズ42だけが用いられることに限らず、複数のレンズが用いられてもよい。
【0039】
ここで、粒子から生じた光は、波長が異なる複数の光を含む場合があるため、集光レンズ42は、色収差を抑制するためのアクロマティックレンズである。これにより、波長が異なる複数の光を色収差が抑制された状態で集光できるため、波長が異なる複数の光を、光伝送部50の後段に設けられた光検出部61おいて精度よく検出できる。
【0040】
なお、波長が異なる複数の光に基づく色収差が問題とならない場合や、粒子から生じた光が単一の波長の光のみを含む場合、集光レンズ42は、アクロマティックレンズに限らず、集光作用を有する一般的なレンズにより構成されてもよい。
【0041】
光伝送部50は、複数の光ファイバー51が被覆部材52により束ねられて構成されている。すなわち、被覆部材52内には、複数の光ファイバー51が束ねられた光ファイバー束が形成されている。光伝送部50は、いわゆるファイバーバンドルである。光伝送部50の入射側端面50a、すなわち光伝送部50の光ファイバー束の入射端には、集光レンズ42により集光された光が入射する。集光レンズ42は、入射側端面50aにおける各光ファイバー51の入射端の径よりも大きく、且つ、複数の光ファイバー51の複数の入射端に跨がる広さで、光伝送部50の入射側端面50aに光を入射させる。光伝送部50に入射した光は、複数の光ファイバー51により、光伝送部50の出射側端面50bへと導かれる。光検出部61は、光伝送部50により伝送された光を受光して検出信号を出力する。
【0042】
このように、粒子測定装置10によれば、集光レンズ42により集光された光が、複数の光ファイバー51が束ねられて構成された光伝送部50に導かれる。この場合、光伝送部50の入射側端面50aの径を、集光レンズ42により集光された光束の径よりも大きく設定しやすくなる。これにより、集光レンズ42により集光された光が光伝送部50の入射側端面50aに入射しやすくなるため、光ファイバー51に多少の位置ずれが生じても、粒子から生じた光が光伝送部50から外れることが抑制される。よって、光ファイバー51の位置調整にかかるユーザの手間を省略でき、光が光ファイバー51に適正に入射する状態を維持できる。
【0043】
より詳細には、粒子から生じた光は、光伝送部50の入射側端面50a内に集光される。これにより、光ファイバー51に位置ずれが生じても、光が光ファイバー51に適正に入射する状態を維持できる。
【0044】
また、粒子から生じた光は、光伝送部50の入射側端面50aにおいて、各光ファイバー51の入射端の径よりも大きく、且つ、複数の光ファイバー51の複数の入射端に跨がる広さで集光される。これにより、粒子から生じた光が小さく絞られた状態で入射側端面50aに入射する場合に比べて、光伝送部50内の光ファイバー51に導かれる光量を一定水準に維持できる。
【0045】
すなわち、小さく絞られた状態の光は、光ファイバー51のクラッド部分や、束ねられた複数の光ファイバー51の隙間にのみ入射する場合がある。この場合、光伝送部50によって後段の光検出部61に導かれる光量が大きく下がってしまう。しかしながら、集光レンズ42により集光された光が、光ファイバー51の入射端の径よりも大きく、且つ、複数の光ファイバー51の入射端に跨がる広さで入射側端面50aに入射すると、一部の光はクラッド部分や隙間に入射するものの、その他の光は光ファイバー51のコア部分に入射する。これにより、光伝送部50によって後段の光検出部61に導かれる光量のバラつきを抑制できる。
【0046】
一般的なマルチカラーフローサイトメトリーにおいては、たとえば1つの粒子における多数のターゲット物質から生じた複数の蛍光を同時に検出する。この場合、蛍光を精度よく検出するために、測定の都度、光ファイバーの位置調整を行うことが必要になる。しかしながら、測定ごとに位置調整が必要になると、メンテナンスにかかるユーザの作業負担が大きくなるとともに、メンテナンスを実行するための熟練度もユーザに求められる。実施形態1の粒子測定装置10によれば、粒子から生じた光が光伝送部50内の光ファイバー束から外れることが抑制されるため、このようなユーザにかかる作業負担を軽減し、測定結果の精度を高く維持できる。
【0047】
<実施形態2>
図2に示すように、実施形態2の粒子測定装置10は、
図1の実施形態1の粒子測定装置10と比較して、集光レンズ42と光伝送部50との間に導光用レンズ43を備える。実施形態2のその他の構成は、実施形態1と同様である。
【0048】
導光用レンズ43は、中心軸から離れるに従って屈折率が小さくなる屈折率分布型レンズであり、たとえば、セルフォック(登録商標)レンズである。導光用レンズ43は、GRINレンズ、ロッドレンズでもよい。導光用レンズ43において、X軸方向に延びた中心軸において最も屈折率が高く、中心軸から離れるに従って屈折率が小さい。また、導光用レンズ43に入射した光束の径は、導光用レンズ43内を、ピッチ長pを進行方向における周期として変化し、長さp/2ごとに最小となる。導光用レンズ43は、X軸方向の長さがp/4となるよう構成されている。これにより、導光用レンズ43の入射側端面43aに集光された光は、導光用レンズ43の出射側端面において最も広がった状態かつ平行光となる。
【0049】
集光レンズ42は、ビームスポット12の位置から生じた光を、導光用レンズ43の入射側端面43aに収束させる。導光用レンズ43は、集光レンズ42により入射側端面43aにおいて収束させられた光を、光伝送部50の入射側端面50aに導く。これにより、光ファイバー51に位置ずれが生じたり、集光レンズ42による集光位置にバラつきが生じたりしても、実施形態1と同様、集光レンズ42により集光された光を、光伝送部50の入射側端面50aに導くことができる。よって、光が光ファイバー51に適性に入射する状態を維持できる。
【0050】
また、集光レンズ42は、集光レンズ42により集光された光を、その径を拡大させて、光伝送部50の入射側端面50aすなわち光伝送部50の光ファイバー束の入射端に導く。これにより、光伝送部50の入射側端面50aに入射する光束の位置がずれたとしても、
図1を参照して説明した場合と同様、光伝送部50によって後段の光検出部61に導かれる光量のバラつきを抑制できる。
【0051】
<実施形態2の具体的構成>
以下、実施形態2の具体的構成を説明する。以下に示す粒子測定装置10の各部のうち、
図2に示した構成と同様の構成には、
図2に示した番号と同じ番号が付されている。同じ番号が付された構成については、便宜上、説明を省略する。
【0052】
図3に示すように、粒子測定装置10は、前処理装置62により調製された試料11を測定して分析を行う。
【0053】
前処理装置62は、被検者から採取した全血の検体13に対して遠心分離等の処理を行って、白血球、赤血球、血小板などの血球を測定対象細胞として抽出する。前処理装置62は、試薬と遠心分離等の処理が行われた検体13とを混合させるための混合容器、検体13と試薬を混合容器に分注するための分注ユニット等を含む。前処理装置62は、測定対象細胞の互いに異なる複数のマーカーを、照射光により互いに異なる波長の蛍光を生じる複数の蛍光色素によりそれぞれ染色する。このように、細胞における複数のマーカーが蛍光色素により染色されると、1つの細胞から生じた複数の蛍光に基づいて、細胞を様々な観点から分析できる。細胞の分析については、追って
図13を参照して説明する。
【0054】
なお、検体13は、全血に限らず、血漿、脳脊髄液、組織液、尿であってもよい。測定対象細胞は、血球に限らず、たとえば上皮細胞であってもよい。粒子測定装置10が測定する粒子は、細胞に限らず、細胞以外の粒子であってもよい。
【0055】
粒子測定装置10は、制御部71と、記憶部72と、表示部73と、入力部74と、測定部75と、を備える。制御部71は、CPUである。制御部71は、CPUとマイクロコンピュータにより構成されてもよい。制御部71は、記憶部72に記憶されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。制御部71は、記憶部72と、表示部73と、入力部74と、測定部75とに接続されており、各部からの信号を受信し、各部を制御する。記憶部72は、RAM、ROM、ハードディスク等である。表示部73は、たとえば、液晶ディスプレイである。入力部74は、マウスおよびキーボードである。なお、表示部73と入力部74が、タッチパネル式のディスプレイのように、一体的に構成されてもよい。
【0056】
測定部75は、試料11を測定して、試料11に含まれる細胞から生じた光を受光し、受光した光に基づく検出信号を出力する。測定部75は、
図2に示したフローセル20、照射部30、対物レンズ41、および集光レンズ42に加えて、後述する導光用レンズ201、202、203、光伝送部210、220、230、および光検出部300、400、500を含む。制御部71は、測定部75から出力された検出信号に基づいて、細胞の分析を行う。
【0057】
図4を参照して、照射部30の構成について説明する。
【0058】
照射部30は、光源101と、フィルタ102と、コリメータレンズ103と、光源111と、フィルタ112と、コリメータレンズ113と、光源121と、フィルタ122と、コリメータレンズ123と、ダイクロイックミラー131、132と、シリンドリカルレンズ133と、集光レンズ134と、を備える。
【0059】
光源101、111、121は、半導体レーザ光源である。光源101、111、121は、それぞれ、波長λ1、λ2、λ3を中心波長とする光を出射する。具体的には、波長λ1、λ2、λ3は、それぞれ、488nm、642nm、405nmである。なお、光源101、111、121は、半導体レーザ光源に限らず、たとえば、光励起半導体レーザ光源、固体に基づくレーザ光源、He-NeガスやArガスなどの気体に基づくレーザ光源、LED光源であってもよい。
【0060】
フィルタ102は、光源101から出射された光のうち、波長λ1の光を透過する。コリメータレンズ103は、フィルタ102を透過した光を平行光に変換する。フィルタ112は、光源111から出射された光のうち、波長λ2の光を透過する。コリメータレンズ113は、フィルタ112を透過した光を平行光に変換する。フィルタ122は、光源121から出射された光のうち、波長λ3の光を透過する。コリメータレンズ123は、フィルタ122を透過した光を平行光に変換する。
【0061】
ダイクロイックミラー131は、コリメータレンズ103からの波長λ1の光を透過し、コリメータレンズ113からの波長λ2の光を反射する。ダイクロイックミラー132は、ダイクロイックミラー131からの波長λ1、λ2の光を透過し、コリメータレンズ123からの波長λ3の光を反射する。また、ダイクロイックミラー131、132は、フローセル20の流路21に照射される波長λ1、λ2、λ3の光が、Z軸方向に所定の間隔を開けて並ぶように配置される。
【0062】
シリンドリカルレンズ133は、ダイクロイックミラー132からの光を、X軸方向にのみ収束させる。集光レンズ134は、シリンドリカルレンズ133からの光をZ軸方向に収束させて、フローセル20の流路21の位置に合焦させる。また、集光レンズ134は、シリンドリカルレンズ133からの光をX軸方向に収束させて、流路21のY軸負側の位置に合焦させる。これにより、集光レンズ134により集光された光は、照射光として、X軸方向に細長いビーム形状で流路21に照射される。
【0063】
フローセル20の流路21に照射光が照射されると、流路21をZ軸正方向に流れる試料11に照射光が照射される。これにより、試料11に含まれる細胞から、前方散乱光、側方散乱光、および蛍光が生じる。前方散乱光は、流路21のY軸正側に生じ、側方散乱光および蛍光は、流路21の周囲に生じる。フローセル20の後段側に配置される受光素子は、流路21のX軸正側に生じた側方散乱光および蛍光を受光する。なお、受光素子は、流路21のY軸正側に生じた前方散乱光を受光してもよい。
【0064】
図5を参照して、フローセル20から光伝送部210、220、230までの構成について説明する。
【0065】
フローセル20の流路21には、波長λ1、λ2、λ3の照射光により、3つのビームスポットが形成される。具体的には、流路21には、Z軸正方向に所定の間隔dを開けてビームスポット12a、12b、12cが形成される。ビームスポット12a、12b、12cは、それぞれ、波長λ1、λ2、λ3の照射光が照射される領域を示している。このように、試料11の流れ方向において互いに異なる位置に照射光が照射されると、波長λ1、λ2、λ3の照射光によってそれぞれ生じた光を個別に取り出すことが容易になる。
【0066】
粒子測定装置10は、Z軸負方向に並ぶ光伝送部210、220、230と、導光用レンズ201、202、203と、を備える。また、粒子測定装置10は、光伝送部210、220、230の後段に、それぞれ、後述する光検出部300、400、500を備える。光検出部300、400、500は、
図2に示した光検出部61に対応する。
【0067】
光伝送部210、220、230は、
図2に示した光伝送部50と同様に構成される。すなわち、光伝送部210は、複数の光ファイバー211が被覆部材212により束ねられて構成されている。光伝送部220は、複数の光ファイバー221が被覆部材222により束ねられて構成されている。光伝送部230は、複数の光ファイバー231が被覆部材232により束ねられて構成されている。
【0068】
導光用レンズ201、202、203は、
図2に示した導光用レンズ43と同様、中心軸から離れるに従って屈折率が小さくなる屈折率分布型レンズである。導光用レンズ201、202、203は、それぞれ、光伝送部210、220、230の入射側端面に接着剤で設置されている。すなわち、導光用レンズ201は、光伝送部210の複数の光ファイバー211の入射端に接着されている。同様に、導光用レンズ202は、光伝送部220の複数の光ファイバー221の入射端に接着されている。導光用レンズ203は、光伝送部230の複数の光ファイバー231の入射端に接着されている。
【0069】
導光用レンズ201と光伝送部210は、導光用レンズ201の中心軸と光伝送部210の中心軸とが一致するように接着される。同様に、導光用レンズ202と光伝送部220は、導光用レンズ202の中心軸と光伝送部220の中心軸とが一致するように接着される。導光用レンズ203と光伝送部230は、導光用レンズ203の中心軸と光伝送部230の中心軸とが一致するように接着される。なお、導光用レンズ201、202、203と各光伝送部との接着には、導光用レンズ201、202、203および各光伝送部と同様の屈折率を有する接着剤が用いられる。
【0070】
導光用レンズ201および光伝送部210の中心軸と、導光用レンズ202および光伝送部220の中心軸と、導光用レンズ203および光伝送部230の中心軸とは、Z軸方向に所定の間隔Dを開けて並ぶよう、導光用レンズ201、202、203および光伝送部210、220、230が配置される。導光用レンズ201、202、203の入射側端面は、X軸方向において同じ位置に位置付けられる。
【0071】
波長λ1、λ2、λ3の照射光が流路21を流れる試料11に照射されると、ビームスポット12a、12b、12cの位置にある試料11中の細胞から、X軸正方向に側方散乱光および蛍光が生じる。ビームスポット12a、12b、12cの各位置から生じた光は、対物レンズ41と集光レンズ42により集光され、それぞれ、導光用レンズ201、202、203に入射する。集光レンズ42は、上述したように色収差を抑制するレンズである。すなわち、ビームスポット12aの位置から生じた光に含まれる波長の異なる複数の光は、導光用レンズ201の入射側端面に収束し、ビームスポット12bの位置から生じた光に含まれる波長の異なる複数の光は、導光用レンズ202の入射側端面に収束し、ビームスポット12cの位置から生じた光に含まれる波長の異なる複数の光は、導光用レンズ203の入射側端面に収束する。
【0072】
このように、集光レンズ42と光伝送部210との間に導光用レンズ201が配置され、集光レンズ42と光伝送部220との間に導光用レンズ202が配置され、集光レンズ42と光伝送部230との間に導光用レンズ203が配置される。これにより、集光レンズ42により集光された光を、光伝送部210、220、230の入射側端面に円滑に入射させることができる。
【0073】
ここで、X軸方向における対物レンズ41の後側主平面と集光レンズ42の主平面との距離、および、X軸方向における集光レンズ42の主平面と導光用レンズ201、202、203の入射側端面との距離は、いずれも集光レンズ42の焦点距離f1に設定される。これにより、対物レンズ41と集光レンズ42が、テレセントリック光学系を構成するため、集光レンズ42により集光された光が、導光用レンズ201、202、203の入射側端面に垂直に入射する。導光用レンズ201、202、203の入射側端面に光が垂直に入射すると、導光用レンズ201、202、203に入射した光が、各レンズの側面から漏れ出ることを抑制できる。
【0074】
上記のように導光用レンズ201、202、203が構成され、導光用レンズ201、202、203の入射側端面に光が垂直に入射すると、導光用レンズ201、202、203に入射した光は、それぞれ、導光用レンズ201、202、203により、平行光に変換され、光伝送部210、220、230へと導かれる。光伝送部210、220、230に入射する光が平行光であると、光ファイバー211、221、231に入射した光が、コアとクラッドの境界で反射することなくコアから出てしまうことを抑制できる。よって、光伝送部210、220、230から漏れる光を抑制できるため、光伝送部210、220、230によって導かれる光の利用効率を高めることができる。
【0075】
図6(a)、(b)を参照して、導光用レンズ201、202、203による光の収束作用を説明する。なお、導光用レンズ201、202、203の光の収束作用は同様であるため、ここでは、導光用レンズ201による作用についてのみ説明する。
【0076】
図6(a)は、導光用レンズ201および光伝送部210の位置が適正な状態を示している。集光レンズ42は、集光レンズ42を透過した光を、導光用レンズ201の入射側端面201aの位置で収束させ、導光用レンズ201の入射側端面201aに垂直に入射させる。導光用レンズ201の入射側端面201aに入射する光の光軸は、導光用レンズ201の中心軸に一致している。
【0077】
集光レンズ42からの光は、導光用レンズ201の屈折作用により、導光用レンズ201の出射側端面201bおよび光伝送部210の入射側端面210aにおいて、径がAの平行光となる。光束の径A、および光伝送部210の光ファイバー211の径は、光伝送部210の入射側端面210aに入射する光が、入射側端面210aにおいて複数の光ファイバー211に跨がるように設定される。すなわち、導光用レンズ201は、集光レンズ42によって収束された光を、各光ファイバー211の入射端の径よりも大きく、且つ、複数の光ファイバー211の複数の入射端に跨がる広さで、光伝送部210の入射側端面210aに入射させる。
【0078】
図6(b)は、導光用レンズ201および光伝送部210の位置が、Z軸負方向にΔDだけずれた状態を示している。この場合、導光用レンズ201の入射側端面201aに入射する光の光軸は、導光用レンズ201の中心軸からΔDだけずれている。この場合も、集光レンズ42からの光は、導光用レンズ201の屈折作用により、導光用レンズ201の出射側端面201bにおいて、径がAの平行光となる。また、この場合の出射側端面201bにおいて光束が通る領域は、
図6(a)に示した位置ずれがない場合の光束が通る領域とほぼ同じである。
【0079】
このように、導光用レンズ201および光伝送部210の位置がずれた場合でも、導光用レンズ201の出射側端面201bにおいて、光束は径がAの平行光となり、出射側端面201bにおいて光束が通る領域はほぼ変化しない。したがって、導光用レンズ201および光伝送部210に多少の位置ずれが生じても、集光レンズ42からの光は、光伝送部210から外れることなく確実に光伝送部210の入射側端面210aに導かれる。よって、光が光伝送部210に適性に入射する状態を維持できる。
【0080】
また、
図6(b)に示すように、光伝送部210の前段に導光用レンズ201が設けられると、
図1に示したように集光レンズ42からの光が直接的に光伝送部210に入射する場合と比較して、導光用レンズ201および光伝送部210の位置ずれの許容量が大きくなる。たとえば、集光レンズ42からの光が、径Aの光束となって光伝送部210に直接的に入射する場合、光伝送部210の径をMとすると、位置ずれの許容量は(M-A)/2である。一方、
図6(b)に示す構成の場合、集光レンズ42からの光は、導光用レンズ201の入射側端面201aに入射すればよいため、位置ずれの許容量はM/2となる。よって、
図6(b)に示す構成の場合、集光レンズ42からの光が直接的に光伝送部210に入射する場合に比べて、位置ずれの許容量が大きくなる。
【0081】
また、ビームスポット12aの位置がずれた場合も、
図6(b)と同様に、集光レンズ42からの光は、導光用レンズ201の入射側端面201aにおいて、導光用レンズ201および光伝送部210の中心軸からずれた位置に入射する。したがって、ビームスポット12aの位置がずれた場合も、同様に、集光レンズ42からの光は光伝送部210から外れることなく確実に光伝送部210に導かれる。
【0082】
図7(a)~(c)を参照して、光伝送部210、220、230による光の伝送を説明する。なお、光伝送部210、220、230による光の伝送は同様であるため、ここでは、光伝送部210による光の伝送についてのみ説明する。
【0083】
図7(a)に示すように、光伝送部210の入射側端面210aにおいて、複数の光ファイバー211が被覆部材212により束ねられている。光ファイバー211は、コア211aとクラッド211bを備える。コア211aは、クラッド211bにより覆われている。
【0084】
図7(a)において、導光用レンズ201から入射側端面210aに入射する光束が、点線の円で示されている。光伝送部210の入射側端面210aにおいて光束が通る光ファイバー211に対して、
図7(b)に示すように1~24の番号が付されると、1~24の番号が付された光ファイバー211は、光伝送部210の出射側端面210bにおいて、たとえば
図7(c)に示すように分布する。このように、出射側端面210bにおいて1~24の番号が付された光ファイバー211がランダムに分布する理由は、光ファイバー211がランダムに束ねられて光伝送部210が製造されるためである。このため、入射側端面210aにおいて光束が通った光ファイバー211を特定し、出射側端面210bにおいて対応する光ファイバー211を選択して、光伝送部210の後段の光検出部へ光を導くことは困難である。
【0085】
したがって、光伝送部210の後段に配置された光検出部300には、光伝送部210を構成する全ての光ファイバー211から出射された光が導かれる。同様に、光伝送部220の後段に配置された光検出部400には、光伝送部220を構成する全ての光ファイバー221から出射された光が導かれ、光伝送部230の後段に配置された光検出部500には、光伝送部230を構成する全ての光ファイバー231から出射された光が導かれる。具体的には、光伝送部の後段に配置された各コリメータレンズが、対応する光伝送部を構成する全ての光ファイバーから出射された光を取り込み可能に構成される。これにより、光検出部に配置された受光素子に導かれる光量を高めることができるとともに、受光素子に導かれる光量のバラつきを抑制して測定精度を高めることができる。
【0086】
ここで、フローセル20から光伝送部210、220、230までの光学部品の設計および配置について説明する。
【0087】
図5に示すように、対物レンズ41の開口数をNA0、対物レンズ41の焦点距離をf0、集光レンズ42の開口数をNA1、集光レンズ42の焦点距離をf1、導光用レンズ201、202、203の焦点距離をf2とする。また、上述したように、ビームスポット12a、12b、12cの間隔をd、導光用レンズ201、202、203の中心軸の間隔をDとする。
図6(a)、(b)に示すように、光伝送部210、220、230に入射する光束の径をA、光伝送部210、220、230の径をMとする。また、
図7(a)に示すように、光伝送部210、220、230内の光ファイバーの本数をm、光ファイバーの外径をbとする。
【0088】
対物レンズ41と集光レンズ42に基づく横倍率β1は、以下の式(1)により表される。
【0089】
β1=NA0/NA1=f1/f0=D/d …(1)
【0090】
間隔Dは、光伝送部210、220、230の製作上の容易さから1mmより大きいことが望ましい。また、ビームスポット12a、12b、12cの位置において生じた光が、1つの細胞から生じた光として互いに適性に関連付けられるためには、間隔dは、0.2mmより小さいことが望ましい。したがって、上記式(1)に間隔D、dの条件を加えると、β1>5であることが望ましいと言える。
【0091】
対物レンズ41の開口数NA0は、試料11に含まれる細胞から生じた光を効率よく集光するために、0.7以上であることが望ましい。また、対物レンズ41は、流路21から焦点距離f0だけ離れた位置に設置される。また、上述したように、対物レンズ41と集光レンズ42との間隔、すなわち対物レンズ41の後ろ側主平面と集光レンズ42との間隔は、集光レンズ42の焦点距離f1に設定される。集光レンズ42と導光用レンズ201、202、203との間隔は、集光レンズ42の焦点距離f1に設定される。
【0092】
光伝送部210、220、230に入射する光束の径Aは、以下の式(2)により表される。
【0093】
A=2×f2×NA1 …(2)
【0094】
光伝送部210、220、230の径Mは、以下の式(3)により表される。
【0095】
【0096】
光伝送部210、220、230に入射する光束の径Aは、光伝送部210、220、230の径Mよりも小さい必要があるので、AとMの関係は、A<Mとなる。したがって、A<Mの条件に、上記式(2)、(3)のA、Mを代入すると、導光用レンズ201、202、203の焦点距離f2の条件は、以下の式(4)により表される。
【0097】
【0098】
上記式(4)の条件が満たされることにより、導光用レンズ201、202、203を透過した光を、それぞれ、確実に光伝送部210、220、230に入射させることができる。
【0099】
また、光伝送部210、220、230に入射する光束が、それぞれ、光伝送部210、220、230内の複数の光ファイバーに跨がって入射するためには、光伝送部210、220、230内の光ファイバーの本数mは、4より大きいことが望ましい。また、集光レンズと光伝送部の接着おいて精度範囲内の誤差が生じても、集光レンズの出射側端面から出射された全ての光が光伝送部に入るよう、集光レンズの径よりも光伝送部の径Mを大きくすることが望ましい。
【0100】
また、ビームスポット12aがZ軸負方向にΔdだけずれた場合、
図6(b)に示すように、集光レンズ42により集光された光が、導光用レンズ201の入射側端面201aにおいてZ軸正方向にΔDだけずれる。この場合のずれ量ΔDは、ΔD=β1×Δdにより表される。したがって、想定されるビームスポット12aのずれ量Δdに応じて、横倍率β1と、導光用レンズ201の入射側端面201aの径とが設定されることが望ましい。
【0101】
また、導光用レンズ201の位置ずれ、および、ビームスポット12aの位置ずれに応じて、集光レンズ42からの光の入射位置が、導光用レンズ201の入射側端面201aにおいて変化する。
図6(b)に示すように、入射側端面201aにおける位置ずれがΔDの場合、光伝送部210の入射側端面210aに入射する光の光軸はX軸方向に対して角度θ1だけ傾く。この場合の角度θ1が大きすぎると、光伝送部210の光ファイバー211に入射した光が、コア211aとクラッド211bの境界で反射することなく、コア211aから出てしまう。したがって、角度θ1は、光ファイバー211に入射した光がコア211a内を進むことが可能な程度に小さいことが望ましい。
【0102】
図8を参照して、光伝送部210の後段に配置される光検出部300の構成を説明する。
【0103】
導光用レンズ201の入射側端面201aに入射した光は、導光用レンズ201内を通り、導光用レンズ201の出射側端面201bに導かれる。光伝送部210の入射側端面210aは、導光用レンズ201の出射側端面201bに接着されている。光伝送部210の出射側端面210bは、基板300aに設置されている。基板300aには、光検出部300が設置されている。光検出部300は、コリメータレンズ301と、ダイクロイックミラー311、312、313、314、315と、第2集光レンズ321、322、323、324、325、326と、受光素子331、332、333、334、335、336と、を備える。
【0104】
コリメータレンズ301は、光伝送部210の出射側端面210bから出射された光を平行光に変換する。出射側端面210bからの光は、波長λ11、λ12、λ13、λ14、λ15を中心波長とする蛍光と、波長λ1を中心波長とする側方散乱光とを含んでいる。ダイクロイックミラー311は、波長λ11、λ12の蛍光と波長λ1の側方散乱光を反射し、波長λ13、λ14、λ15の蛍光を透過する。ダイクロイックミラー312は、波長λ12の蛍光を反射し、波長λ11の蛍光と波長λ1の側方散乱光を透過する。ダイクロイックミラー313は、波長λ11の光を反射し、波長λ1の側方散乱光を透過する。ダイクロイックミラー314は、波長λ14、λ15の蛍光を反射し、波長λ13の蛍光を透過する。ダイクロイックミラー315は、波長λ14の蛍光を反射し、波長λ15の蛍光を透過する。
【0105】
第2集光レンズ321、322、323、324、325は、それぞれ、波長λ11、λ12、λ13、λ14、λ15の蛍光を収束させる。第2集光レンズ326は、波長λ1の側方散乱光を収束させる。受光素子331~335は、それぞれ、第2集光レンズ321~325により収束された蛍光を受光し、受光した蛍光の強度に応じた検出信号を出力する。受光素子336は、第2集光レンズ326により収束された側方散乱光を受光し、受光した側方散乱光の強度に応じた検出信号を出力する。受光素子331~336は、光電子増倍管(photomultiplier tube:PMT)である。受光素子331~336を光電子増倍管により構成することで、受光感度を高めることができる。
【0106】
図9を参照して、光伝送部220の後段に配置される光検出部400の構成を説明する。
【0107】
導光用レンズ202の入射側端面202aに入射した光は、導光用レンズ202内を通り、導光用レンズ202の出射側端面202bに導かれる。光伝送部220の入射側端面220aは、導光用レンズ202の出射側端面202bに接着されている。光伝送部220の出射側端面220bは、基板400aに設置されている。基板400aには、光検出部400が設置されている。光検出部400は、コリメータレンズ401と、ダイクロイックミラー411、412と、第2集光レンズ421、422、423と、受光素子431、432、433と、を備える。
【0108】
コリメータレンズ401は、光伝送部220の出射側端面220bから出射された光を平行光に変換する。出射側端面220bからの光は、波長λ21、λ22、λ23を中心波長とする蛍光を含んでいる。ダイクロイックミラー411は、波長λ21の蛍光を反射し、波長λ22、λ23の蛍光を透過する。ダイクロイックミラー412は、波長λ22の蛍光を反射し、波長λ23の蛍光を透過する。
【0109】
第2集光レンズ421、422、423は、それぞれ、波長λ21、λ22、λ23の蛍光を収束させる。受光素子431~433は、それぞれ、第2集光レンズ421~423により収束された蛍光を受光し、受光した蛍光の強度に応じた検出信号を出力する。受光素子431~433は、光電子増倍管(photomultiplier tube:PMT)である。受光素子431~433を光電子増倍管により構成することで、受光感度を高めることができる。
【0110】
図10を参照して、光伝送部230の後段に配置される光検出部500の構成を説明する。
【0111】
導光用レンズ203の入射側端面203aに入射した光は、導光用レンズ203内を通り、導光用レンズ203の出射側端面203bに導かれる。光伝送部230の入射側端面230aは、導光用レンズ203の出射側端面203bに接着されている。光伝送部230の出射側端面230bは、基板500aに設置されている。基板500aには、光検出部500が設置されている。光検出部500は、コリメータレンズ501と、ダイクロイックミラー511、512、513、514、515と、第2集光レンズ521、522、523、524、525、526と、受光素子531、532、533、534、535、536と、を備える。
【0112】
コリメータレンズ501は、光伝送部230の出射側端面230bから出射された光を平行光に変換する。出射側端面230bからの光は、波長λ31、λ32、λ33、λ34、λ35、λ36を中心波長とする蛍光を含んでいる。ダイクロイックミラー511は、波長λ31、λ32、λ33の蛍光を反射し、波長λ34、λ35、λ36の蛍光を透過する。ダイクロイックミラー512は、波長λ33の蛍光を反射し、波長λ31、λ32の蛍光を透過する。ダイクロイックミラー513は、波長λ32の光を反射し、波長λ31の蛍光を透過する。ダイクロイックミラー514は、波長λ35、λ36の蛍光を反射し、波長λ34の蛍光を透過する。ダイクロイックミラー515は、波長λ35の蛍光を反射し、波長λ36の蛍光を透過する。
【0113】
第2集光レンズ521、522、523、524、525、526は、それぞれ、波長λ31、λ32、λ33、λ34、λ35、λ36の蛍光を収束させる。受光素子531~536は、それぞれ、第2集光レンズ521~526により収束された蛍光を受光し、受光した蛍光の強度に応じた検出信号を出力する。受光素子531~536は、光電子増倍管(photomultiplier tube:PMT)である。受光素子531~536を光電子増倍管により構成することで、受光感度を高めることができる。
【0114】
図8~10に示すように、光検出部300、400、500が、互いに異なる基板300a、400a、500aに設置されている。これにより、基板300a、400a、500aを、粒子測定装置10の設置面に対して垂直に配置したり、粒子測定装置10の設置面に対して平行に配置したりするなど、各基板の配置角度を個別かつ自由に設定しやすくなる。よって、全ての光検出部300、400、500が1つの基板に配置される場合に比べて、基板300a、400a、500aを自由に配置できるため、粒子測定装置10の設置面積を縮小できる。
【0115】
各基板を粒子測定装置10の設置面に対して平行に配置する場合、たとえば、
図11に示すように、X-Y平面に平行な基板300a、400a、500aが、Z軸方向に並ぶように配置される。この場合、光検出部300は、基板300a上の領域300bに配置され、光検出部400は、基板400a上の領域400bに配置され、光検出部500は、基板500a上の領域500bに配置される。
図11には、便宜上、各光検出部の構成のうち、コリメータレンズ301、401、501のみが示されている。各基板が
図11に示すように配置されると、粒子測定装置10の設置面積、すなわちX-Y平面に占める大きさを縮小できる。
【0116】
また、全ての光検出部300、400、500が1つの基板に配置される場合、基板のサイズが大きくなり、基板が撓みやすくなる。この場合、基板の撓みに応じて、光検出部に位置ずれが生じる。しかしながら、互いに異なる基板300a、400a、500aに、光検出部300、400、500がそれぞれ配置されると、基板300a、400a、500aのサイズを小さくできる。よって、1つの基板が用いられる場合に比べて基板の撓みが抑制されるため、光検出部に生じる位置ずれを未然に防ぐことができる。
【0117】
また、集光レンズ42からの光は、光伝送部210、220、230を介して、それぞれ光検出部300、400、500に導かれる。この場合、光伝送部210、220、230は、光ファイバーが束ねられて構成されるため、必ずしも直線状に配置される必要がない。このため、光伝送部210、220、230を湾曲状に配置することにより、光検出部300、400、500を所望の場所に配置できる。
【0118】
また、複数の波長λ1、λ2、λ3の照射光により生じた光が、それぞれ、光伝送部210、220、230により、光検出部300、400、500に導かれる。これにより、光検出部300、400、500の受光素子が受光する受光光量に応じて、細胞を様々な観点から分析できるようになる。
【0119】
なお、
図8~10において、受光素子331~336、431~433、531~536は、アバランシェフォトダイオード(APD)やフォトダイオード(PD)により構成されてもよい。ダイクロイックミラー311~315に代えて、ハーフミラーが設置されてもよい。この場合、ハーフミラーで反射および透過された光は、ハーフミラーの後段に設置されたフィルタにより、所望の波長の光のみが受光素子へと導かれる。同様に、ダイクロイックミラー411、412、511~515に代えて、ハーフミラーが設置され、ハーフミラーの後段に、所望の波長の光のみを受光素子へと導くためのフィルタが設置されてもよい。
【0120】
図12を参照して、光伝送部210、220、230の後段にそれぞれ配置された光検出部300、400、500の設計および配置について説明する。
図12には、便宜上、光伝送部、光検出部、コリメータレンズ、集光レンズ、および受光素子が、それぞれ代表として1つだけ示されている。
【0121】
すなわち、光伝送部210と光検出部300においては、
図12に示すコリメータレンズは、コリメータレンズ301に対応し、
図12に示す集光レンズは、第2集光レンズ321~326に対応し、
図12に示す受光素子は、受光素子331~336に対応する。光伝送部220と光検出部400においては、
図12に示すコリメータレンズは、コリメータレンズ401に対応し、
図12に示す集光レンズは、第2集光レンズ421~423に対応し、
図12に示す受光素子は、受光素子431~433に対応する。光伝送部230と光検出部500においては、
図12に示すコリメータレンズは、コリメータレンズ501に対応し、
図12に示す集光レンズは、第2集光レンズ521~526に対応し、
図12に示す受光素子は、受光素子531~536に対応する。また、光伝送部と受光素子との間に配置されたコリメータレンズ、第2集光レンズ、ダイクロイックミラーは、特許請求の範囲に記載の光学系に相当する。
【0122】
図12に示すように、光伝送部の径をMとし、コリメータレンズの焦点距離をf3とし、集光レンズの焦点距離をf4とし、受光素子の受光面の径をWとする。
【0123】
コリメータレンズは、光伝送部の出射側端面から、コリメータレンズの焦点距離f3だけ離れた位置に配置される。集光レンズは、受光素子の受光面から、集光レンズの焦点距離f4だけ離れた位置に配置される。そして、コリメータレンズと集光レンズとの間の光路長、より詳細にはコリメータレンズの中心および集光レンズの中心を通る光の光路長が、f3+f4となるよう設定される。このように、コリメータレンズと集光レンズが配置されると、コリメータレンズと集光レンズが、テレセントリック光学系を形成し、集光レンズにより集光された光が、受光素子の受光面に垂直に入射する。
【0124】
また、光伝送部の出射側端面の最も外側の位置から出射された光が、受光素子の受光面の最も外側の位置に入射する場合を考慮すると、コリメータレンズと集光レンズに基づく横倍率β2は、以下の式(5)により表される。
【0125】
β2=f4/f3=W/M …(5)
【0126】
したがって、たとえば、光伝送部の径Mと受光素子の受光面の径Wがあらかじめ決まっている場合、上記式(5)に基づいて横倍率β2が決められる。そして、焦点距離f3、f4の比率が横倍率β2となるよう、焦点距離f3、f4の値が決められる。こうして、コリメータレンズと集光レンズとの間の光路長が、f3+f4に決められる。あるいは、焦点距離f3、f4に応じて、横倍率β2が決められ、径M、Wの値が決められてもよい。
【0127】
また、光伝送部の出射端面の最も外側の位置から光が出射される場合、この光の光軸は、光伝送部の出射端面の中央から光が出射される場合の光軸に対して角度θ2だけ傾く。この場合の角度θ2が大きすぎると、コリメータレンズと集光レンズとの間に配置されたダイクロイックミラーにより適正に光を反射できなくなくなる。したがって、角度θ2は、ダイクロイックミラーにより適正に光を反射できる程度に小さいことが望ましい。
【0128】
上述したように、コリメータレンズは、光伝送部から出射された光を平行光に変換する。これにより、コリメータレンズと受光素子との間に、光学部品を配置するためのスペースを設けやすくなる。また、集光レンズは、コリメータレンズにより平行光に変換された光を集光して受光素子へと導く。これにより、コリメータレンズと集光レンズとの間に光学部品を配置するためのスペースを設けやすくなるとともに、コリメータレンズにより平行光に変換された光を確実に受光素子へと導くことができる。
【0129】
なお、集光レンズは省略されてもよい。この場合、受光素子は、コリメータレンズにより収束された光を受光する。また、コリメータレンズおよび集光レンズの両方が省略されてもよい。この場合、受光素子は、光伝送部の出射側端面から出射された光を受光する。
【0130】
次に、
図13を参照して、粒子測定装置10による測定および分析について説明する。
【0131】
前処理装置62は、細胞の互いに異なるマーカーを蛍光標識する。このとき、1つの細胞に対して蛍光標識されるマーカーの数は、実施形態2の場合、最大で14個である。
図13は、前処理装置62が、1つの細胞に対して、14個の互いに異なるマーカーP11~P15、P21~P23、P31~P36を蛍光標識する例を示している。これらのマーカーは、たとえば、細胞の表面や細胞質内に存在する抗原である。
【0132】
前処理装置62は、細胞のマーカーP11~P15、P21~P23、P31~P36を、それぞれ、蛍光標識抗体F11~F15、F21~F23、F31~F36を用いて蛍光標識する。蛍光標識抗体F11~F15、F21~F23、F31~F36は、それぞれ、マーカーP11~P15、P21~P23、P31~P36に対して抗原抗体反応により結合する抗体を含む。また、蛍光標識抗体F11~F15は、波長λ1の光が照射されることにより、それぞれ、波長λ11、λ12、λ13、λ14、λ15の蛍光を生じる蛍光色素を含む。蛍光標識抗体F21~F23は、波長λ2の光が照射されることにより、それぞれ、波長λ21、λ22、λ23の蛍光を生じる蛍光色素を含む。蛍光標識抗体F31~F36は、波長λ3の光が照射されることにより、それぞれ、波長λ31、λ32、λ33、λ34、λ35、λ36の蛍光を生じる蛍光色素を含む。
【0133】
前処理装置62により調製された試料11は、これら蛍光標識抗体により蛍光標識された細胞を含んでいる。試料11がフローセル20の流路21に流され、波長λ1、λ2、λ3の光が照射されると、ビームスポット12aの位置から、波長λ11、λ12、λ13、λ14、λ15の蛍光と波長λ1の側方散乱光が生じ、ビームスポット12bの位置から、波長λ21、λ22、λ23の蛍光が生じ、ビームスポット12cの位置から、波長λ31、λ32、λ33、λ34、λ35、λ36の蛍光が生じる。
【0134】
1つの細胞について、ビームスポット12a、12b、12cの位置から生じた光は、
図8~10を参照して説明したように、波長に応じて所定の受光素子で受光される。このとき、1つの細胞から生じた蛍光および側方散乱光に基づく検出信号は、互いに関連付けられる。そして、1つの細胞から得られた、波長λ11、λ12、λ13、λ14、λ15の蛍光に基づく検出信号、波長λ1の側方散乱光に基づく検出信号、波長λ21、λ22、λ23の蛍光に基づく検出信号、および、波長λ31、λ32、λ33、λ34、λ35、λ36の蛍光に基づく検出信号に基づいて、細胞の分析が行われる。
【0135】
なお、
図13に示す例では、1つの細胞に対して、互いに異なる14個のマーカーが蛍光標識されたが、細胞のマーカーのうち、分析項目の種類に応じて、必要なマーカーのみが蛍光標識されてもよい。
【0136】
たとえば、粒子測定装置10がHIVの検査に用いられる場合、細胞の表面のCD4抗原およびCD8抗原が、蛍光標識される。そして、粒子測定装置10の測定部75は、CD4抗原に結合した蛍光標識抗体から生じた蛍光と、CD8抗原に結合した蛍光標識抗体から生じた蛍光とを受光する。
【0137】
粒子測定装置10の制御部71は、検出信号の強度に基づいて、CD4抗原が細胞表面に発現している細胞の数を、CD4陽性T細胞の数として取得し、CD8抗原が細胞表面に発現している細胞の数を、CD8陽性T細胞の数として取得する。そして、制御部71は、CD4陽性T細胞の数をCD8陽性T細胞の数で除算した陽性率を算出する。制御部71は、算出した細胞数や陽性率に基づいて、被検者がHIVに罹患している否かを判定する。
【0138】
たとえば、粒子測定装置10が造血幹細胞の移植検査に用いられる場合、細胞の表面のCD34抗原が、蛍光標識される。そして、測定部75は、CD34抗原に結合した蛍光標識抗体から生じた蛍光を受光する。制御部71は、検出信号の強度に基づいて、CD34抗原が細胞表面に発現している細胞の数を、CD34陽性細胞の数、すなわち、造血幹細胞の数として取得する。そして、制御部71は、造血幹細胞の比率を算出する。血液幹細胞移植においては、ドナーから提供された造血幹細胞が患者に移植される。このような治療の成績は、患者に移植される造血幹細胞数に大きく依存する。したがって、医師等は、粒子測定装置10で取得された造血幹細胞の個数や比率を、ドナーの適性や治療の成否などの判断に役立てることができる。
【0139】
たとえば、粒子測定装置10が白血病およびリンパ腫の検査に用いられる場合、検査対象とする血球に応じて、種々のマーカーが蛍光標識される。T細胞系、B細胞系、および骨髄系の血球を検査対象とする場合、それぞれ、以下の表1に示すマーカーが蛍光標識される。また、その他の血球を検査対象とする場合、以下の表1に示すその他のマーカーが蛍光標識される。
【0140】
【0141】
この場合も、測定部75は、細胞表面や細胞質内に存在する抗原に結合した蛍光標識抗体から生じた蛍光を受光する。制御部71は、複数の蛍光に基づく検出信号の強度に基づいて、各系統の細胞の数、すなわちリンパ球、単球、T細胞、およびB細胞の数を取得する。また、制御部71は、各成熟段階の細胞の数、すなわち幼若な細胞および成熟した細胞の数を取得する。このように、制御部71は、1つの細胞において発現している複数の抗原の組み合わせに基づいて、各系統の細胞の数と各成熟段階の細胞の数を取得する。したがって、医師等は、粒子測定装置10で取得された細胞数を、どのような細胞が腫瘍化しているのかの判断に役立てることができる。
【符号の説明】
【0142】
10 粒子測定装置
11 試料
20 フローセル
30 照射部
41 対物レンズ
42 集光レンズ
43 導光用レンズ
43a 入射側端面
50 光伝送部
50a 入射側端面
51 光ファイバー
61 光検出部
201、202、203 導光用レンズ
201a、202a、203a 入射側端面
210、220、230 光伝送部
210a、220a、230a 入射側端面
211、221、231 光ファイバー
300、400、500 光検出部
300a、400a、500a 基板
301、401、501 コリメータレンズ
321~326、421~423、521~526 第2集光レンズ
331~336、431~433、531~536 受光素子