(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】球払出装置
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
A63F7/02 324C
(21)【出願番号】P 2019044060
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】望月 賢太
(72)【発明者】
【氏名】森 俊二
【審査官】阿部 知
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-265520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球払出通路に一部が臨設され、遊技球の自重落下を許容および禁止する回転カムと、
前記回転カムに連動回転するラチェットと、
前記ラチェットのラチェット爪に係脱可能な始動爪および停止爪を有する揺動ストッパと、
前記揺動ストッパを駆動するソレノイドと、を備え、
前記揺動ストッパは、前記ソレノイドがONすると、前記始動爪が前記ラチェットから離反する一方、前記停止爪が前記ラチェットに接近し、
前記ラチェットおよび前記揺動ストッパは、前記始動爪が離反し
てラチェット爪との係合を解除した時に、接近した前記停止爪が他のラチェット爪に接触して
前記ラチェットの動き出しをアシストする回転方向の力を加えるように設けられている球払出装置。
【請求項2】
前記停止爪は、ラチェット爪に接触して
前記回転方向の力を加える形状を有する請求項1に記載の球払出装置。
【請求項3】
前記ラチェット爪は、前記停止爪に接触して
前記回転方向に押される形状を有する請求項1に記載の球払出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機において球皿へ遊技球の払い出しを行う球払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技機や台間機における遊技球の払出部には、球払出装置が配設されている。本願出願人も、先にラチェットと回転カムとを備えたソレノイド式の球払出装置を出願している(特許文献1)。この球払出装置は、球払出通路に一部が臨設された回転カムを備えており、回転カムにて遊技球の自重落下を許容および禁止するようになっている。回転カムはラチェットと連動回転し、ラチェットの回転が揺動ストッパにて規制される。揺動ストッパはラチェットのラチェット爪に係脱可能な始動爪と停止爪とを有し、ソレノイドで駆動される。
【0003】
ソレノイドがONすると、揺動ストッパの始動爪がラチェットから離反して始動爪とラチェット爪との係合が解除され、回転カムが回転可能になる。これにより、遊技球の自重落下が許容される。ソレノイドは、一定時間ONした後OFFする。ソレノイドがOFFすると、揺動ストッパの始動爪が再びラチェットに接近し、始動爪とラチェット爪とが係合する。これにより、回転カムの回転が規制され、遊技球の自重落下が禁止される。ソレノイドの駆動周期は、1回のONで遊技球が1球自重落下するように設定されている。
【0004】
揺動ストッパの停止爪は、ソレノイドがONして始動爪がラチェットから離反するとラチェットに接近し、ソレノイドがOFFして始動爪がラチェットに接近するとラチェットから離反する。ソレノイドの駆動周期は、接近した停止爪とラチェット爪とが係合する前にOFFして、停止爪を離反させるように設定されている。したがって、通常は、停止爪とラチェット爪との係合は起こず、故障等でソレノイドがONし続けるような場合に係合して回転カムの回転を規制する。
【0005】
また、球払出装置としては、上述したソレノイド式以外に、アクチュエータにモータを用いたモータ式が知られている(例えば特許文献2)。モータ式には、ソレノイド式に比べて高速の払出速度に対応できるといった利点がある。一方、ソレノイド式には、モータ式に比べて球払出装置を制御する払出制御回路を簡素にできるといった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願は、特許文献1に記載されたソレノイド式の球払出装置の改良を図るものである。特許文献1に記載された球払出装置において、上述したように、回転カムは、遊技球の自重による落下によって回転する構成となっている。そのため、回転カムの回転速度が、ラチェット、回転カム、およびこれらを連動回転させるためのギヤ等からなる機構部のメカ的な負荷による制約を受ける。また、機構部のメカ的な負荷だけでなく、遊技球から受ける荷重の大きさによる制約も受ける。通路に連続した球数が少ない場合や通路形状によって荷重が小さい場合、回転速度が遅くなる。
【0008】
特に、球払出装置が遊技機の払出部に設置される場合、モータ式と同等の高速の払出速度が要求される。しかしながら、回転カムの回転速度が十分に得られない場合、高速の要求にしたがってソレノイド駆動周期を高速に設定しても、回転カムがソレノイドの動きに追従できず、払出過少となる可能性がある。
【0009】
本発明は、払出速度の高速化に対応可能なソレノイド式の球払出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用している。
【0011】
すなわち、本発明の一側面に係る球払出装置は、球払出通路に一部が臨設され、遊技球の自重落下を許容および禁止する回転カムと、前記回転カムに連動回転するラチェットと、前記ラチェットのラチェット爪に係脱可能な始動爪および停止爪を有する揺動ストッパと、前記揺動ストッパを駆動するソレノイドと、を備え、前記揺動ストッパは、前記ソレノイドがONすると、前記始動爪が前記ラチェットから離反する一方、前記停止爪が前記ラチェットに接近し、前記ラチェットおよび前記揺動ストッパは、前記始動爪が離反して前記ラチェット爪との係合を解除した時に、接近した前記停止爪が他のラチェット爪に接触して回転方向の力を加えるように設けられている。
【0012】
上記構成によれば、揺動ストッパの始動爪が離反してラチェット爪との係合を解除した時に、接近した揺動ストッパの停止爪が他のラチェット爪に接触して回転方向の力を加える。これにより、遊技球の荷重による回転に加えて回転カムの動き出しをアシストすることができ、前述した機構部のメカ的な負荷や、回転カムを自重で回転させるための遊技球の荷重による制約があったとしても回転カムの回転速度を上げることができる。よって、ソレノイド駆動周期を高速にしても、ラチェットおよび回転カムが追従して動作することが可能となり、モータ式と同等の払出速度に対応可能となる。
【0013】
上記一側面に係る球払出装置において、前記停止爪は、ラチェット爪に接触して回転方向の力を加える形状を有する構成としてもよい。このような構成とすることで、停止爪がラチェット爪に接触して回転方向の力を加える構成を容易に実現することができる。また、既存の球払出装置におけるラチェットおよび揺動ストッパの位置関係が、始動爪がラチェット爪との係合を解除した時に停止爪が他のラチェット爪と接触可能な関係を元々有している場合は、停止爪が上記形状を有する揺動ストッパに交換するだけで、払出速度を上げることができる。
【0014】
上記一側面に係る球払出装置において、前記ラチェット爪は、前記停止爪に接触して回転方向に押される形状を有する構成としてもよい。このような構成とすることで、停止爪がラチェット爪に接触して回転方向の力を加える構成を容易に実現することができる。また、既存の球払出装置におけるラチェットおよび揺動ストッパの位置関係が、始動爪がラチェット爪との係合を解除した時に停止爪が他のラチェット爪と接触可能な関係を元々有している場合は、ラチェット爪が上記形状を有するラチェットに交換するだけで、払出速度を上げることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、払出速度の高速化に対応可能なソレノイド式の球払出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る球払出装置の適用例を例示するもので、球払出装置が搭載されている遊技機の構成を示す斜視図である。
【
図2】上記遊技機の背面側を示した図であり(a)は背面図、(b)は斜視図である。
【
図3】上記球払出装置の内部構造を示す説明図であり、ソレノイドのOFF時の状態を示している。
【
図4】上記球払出装置の内部構造を示す説明図であり、ソレノイドのON時の状態を示している。
【
図5】(a)は、上記球払出装置におけるソレノイドのOFF時の要部を示す説明図であり、(b)は、ソレノイド24のON時の要部を示す説明図であり、(c)は、ソレノイドに対するデューティ比を示す説明図である。
【
図7】(a)~(c)は共に、球払出装置の球払出動作時の各部の動きを示す説明図である。
【
図8】(a)~(c)は共に、球払出装置の球払出動作時の各部の動きを示す説明図である。
【
図9】他の実施形態の球払出装置の内部構造を示す説明図であり、ソレノイドのON時の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一側面に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0018】
§1 適用例
まず、本発明が適用される場面の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る球払出装置1の適用例を例示するもので、球払出装置1が搭載されている遊技機100の構成を示す斜視図である。遊技機100はパチンコ機である。
図1に示すように、遊技機100は、遊技領域101、ハンドル102、上球皿103、下球皿104等を備えている。遊技領域101は、ハンドル102によって打ち出された遊技球(遊技媒体)が移動する領域である。ハンドル102は、遊技球の発射操作を行うための装置であり、利用者がハンドル102を回した状態で保持すると、遊技球が連続発射されて遊技領域101に打ち出される。
【0019】
上球皿103は、遊技において獲得した遊技球、または、球貸し操作にて貸し出された遊技球が貯留され、下球皿104は、上球皿103から溢れた遊技球が貯留される。つまり、遊技領域101に設けられた入賞口(不図示)に遊技球が入賞すると、入賞口に応じて設定されている数の遊技球が、遊技機100の背面側に設置された球払出装置1(
図2参照)より上球皿103または下球皿104に払い出される。
【0020】
図2は、遊技機100の背面側を示した図であり(a)は背面図、(b)は斜視図である。
図2の(a)(b)に示すように、遊技機100の背面には、貯留タンク105、球整列通路106、縦型球通路107、球払出装置1等が設置されている。貯留タンク105は、遊技機100の背面上部に設けられており、遊技島の補給シュート(不図示)から遊技機100に供給される遊技球を一時的に貯留する収容部である。球整列通路106は、遊技球を整列させて流す通路であり、上流側が貯留タンク105に接続され、下流側が縦型球通路107に接続されている。縦型球通路107は、遊技球を上方から下方に(重力方向に向けて)落下させる通路であり、上流側が球整列通路106に接続され、下流側が球払出装置1に接続されている。これにより、遊技島の補給シュート(不図示)から遊技機100に供給された遊技球は、貯留タンク105、球整列通路106、縦型球通路107を順に経由して、球払出装置1へ供給される。
【0021】
球払出装置1は、図示しない払出制御回路から払出信号を受信すると、指示された数の遊技球を上球皿103または下球皿104へ払い出す装置である。球払出装置1は、
図3に示すように、球払出通路5に一部が臨設され、遊技球9の自重落下を許容および禁止する回転カム13と、回転カム13に連動回転するラチェット18と、ラチェット18のラチェット爪19に係脱可能な始動爪22および停止爪23を有する揺動ストッパ21と、揺動ストッパ21を駆動するソレノイド24と、を備えている。揺動ストッパ21は、ソレノイド24がONすると、始動爪22がラチェット18から離反する一方、停止爪23がラチェット18に接近する。ラチェット18および揺動ストッパ21は、始動爪22が離反してラチェット爪19との係合を解除した時に、接近した停止爪23が他のラチェット爪19に接触して回転方向の力を加えるように設けられている。
【0022】
これにより、遊技球の払出時に、遊技球9の荷重による回転に加えて、回転カム13の動き出し(初動)をアシストすることができ、機構部(ラチェット18、回転カム13、大径ギヤ15、小径ギヤ17等)のメカ的な負荷が大きかったり、遊技球9の荷重が小さかったりしても、回転カム13の回転速度を上げることができる。よって、ソレノイド24の駆動周期を高速にしてもラチェット18および回転カム13が追従して動作することが可能となり、モータ式と同等の払出速度に対応可能となる。
【0023】
§2 構成例
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面における実施形態を、
図3~
図8に基づいて例示する。
【0024】
(球払出装置1の構成)
図3、
図4は、何れも球払出装置1の内部構造を示す説明図である。
図3は後述するソレノイド24のOFF時の状態を示し、
図4はソレノイド24のON時の状態を示す。
図3、
図4に示すように、球払出装置1はハウジング10を備え、このハウジング10の一側内部に、前述の縦型球通路107と連通する球払出通路5と球抜き通路6とが並設されている。球抜き通路6は、遊技球を排出する際に使用される通路である。球抜き通路6は、通常は球抜き部材7にて閉塞されており、遊技球9は球払出通路5を流下する。
【0025】
球払出通路5には、通路壁11の一部に形成された開口11aから球払出通路5内に向けて、回転カム13の一部が臨設されている。回転カム13は外周に球切部13aを残して、円弧状の凹部13bを等間隔に形成したカムである。回転カム13はハウジング10に突設固設された軸14に対して、大径ギヤ15と共に一体回転するように取り付けられ、遊技球9の自重落下を許容および禁止する。回転カム13と同軸14に設けられた大径ギヤ15は、球払出通路5の外部に配設されている。
【0026】
ハウジング10には、前述の軸14の他、ラチェット軸16および支軸20が突設固設されている。このうち、ラチェット軸16には、小径ギヤ17とラチェット18とが一体回転するように取り付けられている。小径ギヤ17は前述の大径ギヤ15に常時噛合される。これにより、回転カム13とラチェット18とは連動回転する。ラチェット18の外周部には、円周上等間隔(
図3の例では90度の等間隔)にて複数のラチェット爪19が一体形成されている。
【0027】
一方、支軸20には、揺動ストッパ21が揺動可能に配設されている。揺動ストッパ21の下部には始動爪22が一体に形成され、上部には停止爪23が一体に形成されている。始動爪22および停止爪23は、前述のラチェット18のラチェット爪19に対して係脱可能に構成されている。
【0028】
このような揺動ストッパ21は、ソレノイド24の可動鉄片25により揺動駆動される。揺動ストッパ21の上部に形成された凹部21aに可動鉄片25の下部遊端が挿入され、この可動鉄片25の上部遊端と固定部材26との間に、引張りバネにより構成されるリターンスプリング27が張架されている。
【0029】
図3に示すように、ソレノイド24のOFF時、リターンスプリング27のバネ力により可動鉄片25を介して揺動ストッパ21は矢印aの方向へ移動する。揺動ストッパ21が矢印aの方向へ移動した状態では、下部の始動爪22がラチェット18に接近し、ラチェット爪19と係合可能となる。上部の停止爪23はラチェット18から離反する。
【0030】
一方、
図4に示すように、ソレノイド24のON時、電磁力により可動鉄片25がリターンスプリング27のバネ力に抗して吸引され、揺動ストッパ21は矢印bの方向へ移動する。揺動ストッパ21が矢印bの方向へ移動した状態では、上部の停止爪23がラチェット18に接近し、ラチェット爪19と係合可能となる。下部の始動爪22はラチェット18から離反し、ラチェット爪19と係合が解除される。始動爪22とラチェット爪19との係合が解除されることで、ラチェット18および回転カム13が回転可能となる。
【0031】
そして、詳細については後述するが、ラチェット18および揺動ストッパ21は、回転カム13の動き出しをアシストすべく、始動爪22が離反してラチェット爪19との係合を解除した時に、接近した停止爪23が他のラチェット爪19に接触して回転方向の力を加えるように設けられている。
【0032】
また、上述のハウジング10の他側内壁には、第1ストッパ部材28および第2ストッパ部材29が形成されている。第1ストッパ部材28は、ソレノイド24のOFF時に、始動爪22とラチェット爪19との所定の係合状態(
図3に示す状態)を確保するための部材である。第2ストッパ部材29は、ソレノイド24のON時に、停止爪23とラチェット18との位置関係(
図4に示す位置関係)を適正に保つための部材である。さらに、上述のソレノイド24における可動鉄片25と対向する側にはストッパ片30が設けられている。ストッパ片30は、ソレノイド24のON時における可動鉄片25の適正な姿勢を確保するための突起である。
【0033】
次に、
図5の(a)~(c)を用いて、ラチェット18と揺動ストッパ21との相対関係、および、払出制御回路によるソレノイド24へのON時間の設定について説明する。
図5の(a)は、球払出装置1におけるソレノイド24のOFF時の要部を示し、
図5の(b)は、ソレノイド24のON時の要部を示し、
図5の(c)は、ソレノイド24に対するデューティ比を示す説明図である。
【0034】
ラチェット18と揺動ストッパ21とは、
図5の(a)に示す第1開角θ1に対して、
図5の(b)に示す第2開角θ2が小さくなる(θ2<θ1)ように設定されている。第1開角θ1は、ソレノイド24のOFF時にラチェット18から離反している停止爪23とラチェット中心(ラチェット軸16の中心)とを結ぶ線と、次のラチェット爪19とラチェット中心とを結ぶ線との成す角である。一方、第2開角θ2は、ソレノイド24のON時にラチェット18から離反する始動爪22とラチェット中心とを結ぶ線と、次のラチェット爪19とラチェット中心とを結ぶ線との成す角である。
【0035】
そして、払出制御回路によるソレノイド24へのON時間は、
図5の(c)に示すように、始動爪22がラチェット爪19に対する係合を解除した時点t1から上述の停止爪23がラチェット爪19に当接する直前時点t2まで継続されるデューティ比に設定されている。
【0036】
このような構成では、ソレノイド24がONして係合を解除した始動爪22は、停止爪23にラチェット爪19が到達する直前にソレノイド24がOFFすることで、係合を解除したラチェット爪19の次のラチェット爪19に係合する。したがって、ラチェット18は、これらの各ラチェット爪19,19間で回転途中に何等停止されない状態下において回転し、1パルスにつき1個の遊技球9を払出すことができる。一方、停止爪23は、ソレノイド24のON毎にラチェット18に接近し、その都度、ラチェット爪19と係合する直前で離反される動作の繰り返しとなる。
【0037】
次に、
図6を用いて、
図4、
図6を用いて、回転カム13の動き出しをアシストする構成について説明する。
図6は、
図4の○印部分の拡大図である。上述したように、回転カム13の動き出しをアシストすべく、ラチェット18および揺動ストッパ21が、始動爪22が離反してラチェット爪19との係合を解除した時に、接近した停止爪23が他のラチェット爪19に接触して回転方向の力を加えるように設けられている。
【0038】
具体的には、ラチェット18および揺動ストッパ21は、始動爪22が離反してラチェット爪19との係合を解除した時に、接近した停止爪23が他のラチェット爪19と接触可能な位置関係を有している。
図4の例では、停止爪23は、始動爪22が係合を解除したラチェット爪19の次のラチェット爪19と接触可能な位置関係となっている。なお、接近した停止爪23が係合してラチェット18の回転を停止させるラチェット爪19は、その次(始動爪22が係合を解除したラチェット爪19の次の次)のものである。
【0039】
そして、本実施形態では、
図6に示すように、停止爪23が、ラチェット爪19に接触して回転方向の力を加える形状を有している。具体的には、ラチェット爪19の始動爪22または停止爪23と係合する係合面19aの回転方向後方の傾斜面19bに向かって膨らんだ厚肉形状23bを有する。なお、図中、参照符号23aにて示す面が、ラチェット爪19の係合面19aと係合する停止爪23側の係合面である。
【0040】
このような構成とすることで、始動爪22による係合が解除されと同時にラチェット18をその回転方向に押し出すことができ、ラチェット18に連動回転する回転カム13の動き出しをアシストすることができる。以下、
図7の(a)~(c)、および
図8の(a)~(c)を用いて、球払出動作時の各部の動きを説明する。
【0041】
図7の(a)~(c)、
図8の(a)~(c)は、球払出装置1の球払出動作時の各部の動きを示す説明図である。
図7の(a)は、基本ポジションにある状態で、ソレノイド24はOFF状態である。この状態では、ラチェット18に設けたラチェット爪19に揺動ストッパ21の始動爪22が係合しており、ラチェット18、小径ギヤ17、大径ギヤ15、回転カム13の回転が規制されている。そして、球払出通路5の遊技球9は、回転カム13の球切部13aに係止され、払い出し(流下)が停止(禁止)されている。
【0042】
このような状態にある球払出装置1に対し、前述した払出制御回路より遊技球9の払出しが指示されると(パルス信号の入力)、
図7の(b)に示すように、ソレノイド24がONして揺動ストッパ21が矢印bの方向に移動する。これにより、始動爪22がラチェット18から離反し、始動爪22とラチェット爪19との係合が解除され、ラチェット18、小径ギヤ17、大径ギヤ15、回転カム13が回転可能になる。停止爪23はラチェット18に接近する。
【0043】
図7の(c)は、
図7の(b)よりわずかに時間が経過した状態を示す。
図7の(c)に示すように、揺動ストッパ21の矢印bの方向への移動に伴い、ラチェット18に接近した停止爪23が、始動爪22との係合が解除されたラチェット爪19の次のラチェット爪19の傾斜面19bを押し出すように力を加えて、ラチェット18の動き出し(初動、回転開始)をアシストする。
【0044】
図7の(b)に示す状態では、ラチェット18、小径ギヤ17、大径ギヤ15、回転カム13を回転させるための力は、回転カム13の球切部13aに係止されている遊技球9の荷重のみであった。そのため、遊技球9の荷重が小さい、あるいは、ラチェット18、小径ギヤ17、大径ギヤ15、回転カム13等の機構部の負荷が大きいと、回転カム13の動き出しが遅れてしまう。しかしながら、このように、停止爪23にてラチェット18の動き出しをアシストすることで、遊技球9の荷重が小さくても、また、機構部の負荷が大きくても、ラチェット18、小径ギヤ17、大径ギヤ15、回転カム13がスムーズに回転を開始する。
【0045】
図8の(a)に示すように、ラチェット18、小径ギヤ17、大径ギヤ15、回転カム13が回転することで、球切部13aにて流下が停止されていた遊技球9は、球切部13aを抜けて球払出通路5を流下する。
【0046】
図8の(b)に示すように、一定時間経過するとソレノイド24はOFFして揺動ストッパ21が矢印aの方向に移動し、始動爪22がラチェット爪19に接近し、停止爪23は離反する。ラチェット18、小径ギヤ17、大径ギヤ15、回転カム13は、次のラチェット爪19が始動爪22に当接するまで回転する。
【0047】
図8の(c)に示すように、始動爪22とラチェット爪19とが係合すると、ラチェット18、小径ギヤ17、大径ギヤ15、回転カム13の回転が規制され、
図7の(a)の基本ポジションの状態に戻る。このとき、球切部13aには、先に払い出された遊技球9の次の遊技球9が係止され、払い出し(流下)が停止(禁止)されている。
【0048】
(効果)
以上にように、上記構成では、ラチェット18および揺動ストッパ21が、始動爪22が離反してラチェット爪19との係合を解除した時に、接近した停止爪23が他のラチェット爪19に接触して回転方向の力を加えるように設けられている。
【0049】
これにより、遊技球の払出時に、遊技球9の荷重による回転に加えて、回転カム13の動き出し(初動)をアシストすることができ、機構部(ラチェット18、回転カム13、大径ギヤ15、小径ギヤ17等)のメカ的な負荷が大きかったり、遊技球9の荷重が小さかったりしても、回転カム13の回転速度を上げることができる。よって、ソレノイド24の駆動周期を高速にしてもラチェット18および回転カム13が追従して動作することが可能となり、よって、ソレノイド24の駆動周期を高速にしてもラチェット18および回転カム13が追従して動作することが可能となり、モータ式と同等の払出速度に対応可能となる。
【0050】
また、既存の球払出装置におけるラチェットおよび揺動ストッパの位置関係が、始動爪がラチェット爪との係合を解除した時に停止爪が他のラチェット爪と接触可能な関係を元々有している場合は、停止爪23を有する揺動ストッパ21に交換するだけで、払出速度を上げることができる。
【0051】
〔実施形態2〕
以下、本発明の一側面における他の実施形態を、
図9に基づいて例示する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0052】
実施形態1においては、回転カム13の動き出しをアシストする構成として、ラチェット18および揺動ストッパ21の位置関係を、始動爪22が離反してラチェット爪19との係合を解除した時に、接近した停止爪23が他のラチェット爪19と接触可能な関係にするとともに、揺動ストッパ21の停止爪23を、ラチェット爪19に接触して回転方向の力を加える形状としていた。
【0053】
これに対し、本実施形態では、
図9に示すように、ラチェット45および揺動ストッパ40の位置関係を、始動爪22が離反してラチェット爪46との係合を解除した時に、接近した停止爪41が他のラチェット爪46と接触可能な関係としている点は同じであるが、停止爪41を従来通りの形状とし、ラチェット爪46を停止爪41に接触して回転方向に押される形状としている点が異なる。
図9は、本実施形態の球払出装置の内部構造を示す説明図であり、ソレノイドのON時の状態を示している。
【0054】
つまり、本実施形態では、揺動ストッパ21に代えて揺動ストッパ40を備え、ラチェット18に代えてラチェット45を備えている。揺動ストッパ40は、厚肉形状23bが設けられていない停止爪41を有する点が揺動ストッパ21と異なる。ラチェット45は、厚肉形状46bが設けられたラチェット爪46を有する点がラチェット18と異なる。
【0055】
このような構成としても、実施形態1の構成と同様に、ソレノイド24の駆動周期を高速にしてもラチェット18および回転カム13が追従して動作することが可能となり、モータ式と同等の払出速度に対応可能となる。また、既存の球払出装置におけるラチェットおよび揺動ストッパの位置関係が、始動爪がラチェット爪との係合を解除した時に停止爪が他のラチェット爪と接触可能な関係を元々有している場合は、ラチェット爪46を有するラチェット45に交換するだけで、払出速度を上げることができる。
【0056】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 球払出装置
5 球払出通路
9 遊技球
10 ハウジング
11 通路壁
11a 開口
13 回転カム
13a 球切部
15 大径ギヤ
16 ラチェット軸
17 小径ギヤ
18、45、 ラチェット
19、46 ラチェット爪
21、40 揺動ストッパ
22 始動爪
23、41 停止爪
23b、46b 厚肉形状
24 ソレノイド
25 可動鉄片
26 固定部材
27 リターンスプリング
100 遊技機
107 縦型球通路