(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】機能性分離膜、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/446 20210101AFI20220705BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20220705BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20220705BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20220705BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220705BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20220705BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20220705BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/414
H01M50/443 M
H01M50/451
H01M10/052
H01M50/434
H01M50/403 D
(21)【出願番号】P 2020567112
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 KR2020005614
(87)【国際公開番号】W WO2020226328
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0052308
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0049795
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】キヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スンボ・ヤン
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/083194(WO,A1)
【文献】WANG, G. et al.,Enhanced rate capability and cycle stability of lithium-sulfur batteries with a bifunctional MCNT@PEG-modified separator,Journal of Materials Chemistry A,2015年,Vol.3,pages 7139-7144
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05- 10/39
H01M 50/40- 50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース分離膜;及び
前記ベース分離膜の表面に位置するポリエチレンオキサイド(PEO)-伝導性炭素複合層;を含
み、
前記ポリエチレンオキサイドは改質されて末端に官能基が導入され、
前記官能基は前記伝導性炭素のヒドロキシ基またはカルボキシ基と化学結合し、
前記官能基はアミノ基またはカルボキシ基である、リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜。
【請求項2】
前記官能基はアミノ基で、前記伝導性炭素のカルボキシ基とアミド結合することを特徴とする、請求項
1に記載の
リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜。
【請求項3】
前記官能基はカルボキシ基で、前記伝導性炭素のヒドロキシ基またはカルボキシ基とエステル結合したり脱水縮合反応して無水物を形成することを特徴とする、請求項
1に記載の
リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜。
【請求項4】
前記末端にアミノ基が導入されたポリエチレンオキサイドは、ポリエチレンオキサイド-リンカー(linker)-アミノ基の構造を有することを特徴とする、請求項
2に記載の
リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜。
【請求項5】
前記末端にアミノ基が導入されたポリエチレンオキサイドは、ポリエチレンオキサイド-カルボニル-エチレンジアミンまたはエチレンジアミン-カルボニル-ポリエチレンオキサイド-カルボニル-エチレンジアミンであることを特徴とする、請求項
4に記載の
リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜。
【請求項6】
前記伝導性炭素は、カーボンナノチューブ、グラフェン及び還元グラフェンオキサイドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の
リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜。
【請求項7】
前記伝導性炭素は熱的剥離還元グラフェンオキサイド(TErGO)であることを特徴とする、請求項
6に記載の
リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜。
【請求項8】
前記PEO-伝導性炭素複合層を構成する伝導性炭素とポリエチレンオキサイドの重量比は1:0.01ないし100であることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の
リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜。
【請求項9】
前記PEO-伝導性炭素複合層の厚さは0.1ないし15μmであることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の
リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜。
【請求項10】
前記PEO-伝導性炭素複合層のコーティング重量は、前記ベース分離膜の表面積を基準にして1ないし300μg/cm
2であることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の
リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜。
【請求項11】
(a)ポリエチレンオキサイドの末端を改質させる段階;
(b)前記改質されて形成されたポリエチレンオキサイドの末端官能基と伝導性炭素を化学結合させてPEO-伝導性炭素複合体を製造する段階;及び
(c)前記製造されたPEO-伝導性炭素複合体をベース分離膜の表面にコーティングさせる段階;を含
み、
前記(b)段階のポリエチレンオキサイドの末端官能基は、前記伝導性炭素のヒドロキシ基またはカルボキシ基と化学結合し、
前記末端官能基はアミノ基またはカルボキシ基である、リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜の製造方法。
【請求項12】
正極;負極;前記正極と負極の間に介在される請求項1に記載の
リチウム-硫黄二次電池用機能性分離膜;及び電解質;を含むリチウム二次電池。
【請求項13】
前記リチウム二次電池はリチウム-硫黄電池であることを特徴とする、請求項
12に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年05月03日付韓国特許出願第10-2019-0052308号及び2020年04月24日付韓国特許出願第10-2020-0049795号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、機能性分離膜、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池に係り、より詳しくは、リチウムポリスルフィドの溶出によって発生する問題を解決するために、分離膜の表面にリチウムポリスルフィドの還元が可能な物質をコーティングすることで電池の容量と寿命を向上させることができる、機能性分離膜、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギー貯蔵技術に対する関心がますます高まるにつれ、携帯電話、タブレット(tablet)、ノートパソコン(laptop)及びカムコーダー、ひいては電気自動車(EV)及びハイブリッド電気自動車(HEV)のエネルギーまで適用分野が拡がりながら、電気化学素子に対する研究及び開発が段々増大している。電気化学素子はこのような側面で最も注目を浴びる分野であり、その中でも充放電可能なリチウム-硫黄電池のような二次電池の開発は関心の的になっていて、最近はこのような電池を開発するに当たり容量密度及び非エネルギーを向上させるために新しい電極と電池設計に対する研究開発につながっている。
【0004】
このような電気化学素子、その中でリチウム-硫黄電池(Li-S battery)は高いエネルギー密度(理論容量)を有し、リチウムイオン電池を代替することができる次世代二次電池として脚光を浴びている。このようなリチウム-硫黄電池内では、放電時の硫黄の還元反応とリチウムメタルの酸化反応が起こり、この時、硫黄はリング構造のS8から線状構造のリチウムポリスルフィド(Lithium Polysulfide、LiPS)を形成するようになるが、このようなリチウム-硫黄電池はポリスルフィドが完全にLi2Sに還元されるまで段階的に放電電圧を示すことが特徴である。
【0005】
しかし、リチウム-硫黄電池の商業化における最大の障害物はリチウムポリスルフィドの溶出及びシャトル現象であり、これによってリチウム-硫黄電池の容量が減少するという大きな問題点がある。すなわち、正極で溶出されたポリスルフィドは有機電解液への溶解度が高いため、電解液を通して負極の方へ望まない移動(PS shuttling)が起こることがあり、その結果、正極活物質の非可逆的損失による容量減少、及び副反応によるリチウムメタル表面への硫黄粒子の蒸着によって電池寿命減少が発生する。このような問題点を解決するために、正極複合体にPS吸着物質を添加したり、既存のPEなどからなる分離膜を改質させるなどの様々な研究が行われているが、明らかな解決策を提示することはできない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、リチウムポリスルフィドの溶出によって発生する問題を解決するために分離膜の表面にリチウムポリスルフィドの還元が可能な伝導性炭素と、効率を極大化するためのポリエチレンオキサイドが化学的に結合されたコーティング層を形成させることで電池の容量と寿命を向上させることができる、機能性分離膜、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、ベース分離膜;及び前記ベース分離膜の表面に位置するポリエチレンオキサイド(PEO)-伝導性炭素複合層;を含む機能性分離膜を提供する。
【0008】
また、本発明は、(a)ポリエチレンオキサイドの末端を改質させる段階;(b)前記改質されて形成されたポリエチレンオキサイドの末端官能基と伝導性炭素を化学結合させてPEO-伝導性炭素複合体を製造する段階;及び(c)前記製造されたPEO-伝導性炭素複合体をベース分離膜の表面にコーティングさせる段階;を含む機能性分離膜の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極の間に介在される前記機能性分離膜;及び電解質;を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明による機能性分離膜、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池は、リチウムポリスルフィドの溶出によって発生する問題を解決するために、分離膜表面にリチウムポリスルフィドの還元が可能な伝導性炭素と、効率を極大化するためのポリエチレンオキサイドが化学結合されたコーティング層を形成させることで電池の容量と寿命を向上させることができる長所を持っている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例及び比較例によるリチウム-硫黄電池の放電容量を比較対照したグラフである。
【
図2】本発明の一実施例及び比較例によるリチウム-硫黄電池の放電容量を比較対照したグラフである。
【
図3】本発明の一実施例及び比較例によるリチウム-硫黄電池の放電容量を比較対照したグラフである。
【
図4】本発明の一実施例及び比較例によるリチウム-硫黄電池の寿命特性を比較対照したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0013】
本発明による機能性分離膜は、ベース分離膜及び前記ベース分離膜の表面に位置するポリエチレンオキサイド(PEO)-伝導性炭素複合層を含む。
【0014】
前記分離膜は正極と負極の間に介在されるものであって(すなわち、電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜)、正極と負極を互いに分離または絶縁させながら正極と負極の間にリチウムイオンの輸送ができるようにする。特に、電解質のイオン移動に対して抵抗が低くて電解質の含湿能に優れるほど好ましく、多孔性で非伝導性または絶縁性の物質からなってもよい。
【0015】
前記PEO-伝導性炭素複合層が排除された状態のベース分離膜は、フィルムのような独立的な部材であったり、または正極及び負極のいずれか一つ以上に付加(接着または対面)されたコーティング層であってもよく、具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用したものであったり、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維またはポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0016】
前記PEO-伝導性炭素複合層を構成する伝導性炭素は、前記ベース分離膜の表面にポリエチレンオキサイド(PEO)とともにコーティングされるものであって、それ自体に気孔構造を持っていて電解液の出入りが自在である。また、前記伝導性炭素はその名の通り伝導性を有していて、このような性質によって電子を伝達することでリチウムポリスルフィドを還元させる構成要素である。
【0017】
前記伝導性炭素では、前記のような効果を示すことができる伝導性炭素材であれば特に制限されずに適用される。その中でも、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン(graphene)及び還元グラフェンオキサイド(rGO)を挙げることができ、これらの中で、前記還元グラフェンオキサイドの使用が好ましく、熱膨張によって剥離が有利で、これによって薄く大面積コーティングが可能で優れる性能を示すことができる熱的剥離還元グラフェンオキサイド(thermally exfoliated reduced graphene oxide;TErGO)を使用するがより好ましい。
【0018】
前記熱的剥離還元グラフェンオキサイド(TErGO)は、グラフェンオキサイドを熱処理して熱膨張グラフェンオキサイド(または、熱的剥離グラフェンオキサイド)を製造した後、これを還元処理したものである。この時、熱膨張グラフェンオキサイドを製造するための熱処理は、公知の方法またはこれを変形する多様な方法によって行われることができ、本発明で特に限定しない。一例として、前記熱処理は300ないし900℃の温度範囲で10分ないし3時間行われることができる。
【0019】
特に、前記熱的剥離還元グラフェンオキサイド(TErGO)は剥離されたものであって、厚さが0.5ないし40nm、好ましくは5ないし30nm、より好ましくは10ないし20nmであってもよく、板状またはフレーク形状であってもよい。また、前記熱的剥離還元グラフェンオキサイド(TErGO)の熱膨張度合いは、BETの範囲で100m2/g未満から900m2/gまで様々であり、還元度合いはXPSやEAを通じて測定可能である。また、一般的なグラフェンオキサイドは炭素と酸素の質量比が約1:1であることに対し、還元されたグラフェンオキサイドは約9:1程度である。
【0020】
一般に、剥離前の還元グラフェンオキサイドは厚さが約50ないし500nmであって、粒子形態でコーティングする時、容易に脱離されるので(分離膜ではなくても)バインダーの使用を必要とするだけでなく、コーティングの密度が低くて目的とした効果を充分に得られなかった。しかし、本発明は、剥離を通じて一定範囲の厚さを有する板状またはフレーク形状の熱的剥離還元グラフェンオキサイドを使うことで基材上に均一で緻密にコーティングすることができる。
【0021】
一方、前記ベース分離膜とPEO-伝導性炭素複合層の間には、前記PEO-伝導性炭素複合層が前記ベース分離膜の表面にもっと容易にコーティングされるようにするバインダーが介在されてもよい。しかし、本発明の伝導性炭素、特に、還元グラフェンオキサイド(rGO)の中でも熱的剥離還元グラフェンオキサイド(TErGO)を使用する場合は、伝導性炭素が板状またはフレーク構造からなるので、前記伝導性炭素層はバインダーがなくてもフリー-スタンディング(free-standing)され、ベース分離膜の表面に容易にコーティングされることができる。
【0022】
前記伝導性炭素以外にPEO-伝導性炭素複合層を構成するポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide(PEO)、またはポリエチレングリコール)は、リチウムポリスルフィドの還元効率を極大化させるために使われるものであって、前記伝導性炭素との化学結合またはそれ自体の物性によってベース分離膜との結合力を向上させると同時にリチウムイオンをより円滑に伝達することができる。
【0023】
より具体的に、前記ポリエチレンオキサイドは前記伝導性炭素と化学結合をするものであって、鎖型、枝型または放射状などであってもよく、改質されて末端に特定の官能基が導入されたものであってもよい。前記ポリエチレンオキサイドの末端に官能基が導入される場合、前記官能基はアミノ基(-NH2)及びカルボキシ基(-COOH)などであってもよい。例えば、前記ポリエチレンオキサイドの末端にアミノ基が導入された時は、前記伝導性炭素のカルボキシ基とアミド結合(amide bond)を成すことができ、前記ポリエチレンオキサイドの末端にカルボキシ基が導入された時は、前記伝導性炭素のヒドロキシ基(-OH)またはカルボキシ基とエステル(ester)結合を成したり、脱水縮合反応によって無水物(anhydride)を形成することができる。その他、前記ポリエチレンオキサイドに官能基が導入されていない場合は、前記ポリエチレンオキサイド自体のヒドロキシ基と伝導性炭素のカルボキシ基が組み合わせられてエステル結合を成すことができる。
【0024】
一方、前記末端に官能基が導入されたポリエチレンオキサイドは、ポリエチレンオキサイド-リンカー(linker)-官能基の構造を有してもよく、官能基がアミノ基の場合の例としては、ポリエチレンオキサイド-カルボニル-エチレンジアミン及びエチレンジアミン-カルボニル-ポリエチレンオキサイド-カルボニル-エチレンジアミンなどを例示することができる。
【0025】
前記PEO-伝導性炭素複合層において、前記伝導性炭素とポリエチレンオキサイドの重量比は1:0.01ないし100、好ましくは1:0.08ないし0.6、より好ましくは1:0.1ないし0.5であってもよく、前記重量比を脱する場合は、ポリエチレンオキサイドを使うことで得られる効果が微々たるものである。また、前記ポリエチレンオキサイドの数平均分子量(Mn)は200ないし10,000,000、好ましくは500ないし50,000であってもよい。
【0026】
前記PEO-伝導性炭素複合層は、前記ベース分離膜の表面の一部に形成されてもよいが、伝導性炭素及びポリエチレンオキサイドの使用による効果の発現を極大化させるために前記ベース分離膜の表面全体に形成させることが好ましい。前記PEO-伝導性炭素複合層の厚さは0.1ないし15μm、好ましくは0.5ないし10μm、より好ましくは0.5ないし5μmであって、前記PEO-伝導性炭素複合層の厚さが0.1μm未満であれば、伝導性ネットワークが十分に形成されないため電子伝導性が低くなる問題が発生することがあるし、15μmを超過する場合は、リチウムイオンの通行を邪魔してセルの抵抗が大きくなり、また体積当たりエネルギー密度の面でも不利な問題が生じる恐れがある。
【0027】
また、前記PEO-伝導性炭素複合層のコーティング重量は、そのコーティング対象であるベース分離膜の表面積を基準にして1ないし300μg/cm2、好ましくは3ないし80μg/cm2、より好ましくは5ないし80μg/cm2であってもよい。もし、前記PEO-伝導性炭素複合層のコーティング重量がベース分離膜の表面積を基準にして1μg/cm2未満であれば、伝導性炭素及びポリエチレンオキサイドの使用による効果が微々たるものであり、300μg/cm2を超過する場合は、伝導性炭素及びポリエチレンオキサイドを使うことによって得られる、それ以上の効果がない。
【0028】
次に、本発明による機能性分離膜の製造方法について説明する。前記機能性分離膜の製造方法は、(a)ポリエチレンオキサイドの末端を改質させる段階、(b)前記改質されて形成されたポリエチレンオキサイドの末端官能基と伝導性炭素を化学結合させてPEO-伝導性炭素複合体を製造する段階、及び(c)前記製造されたPEO-伝導性炭素複合体をベース分離膜の表面にコーティングさせる段階を含む。
【0029】
前記(a)段階において、ポリエチレンオキサイドの末端を改質させる(具体的には、特定の官能基で改質させる)方法は、例えば、溶媒下でエチレンジアミンなどアミノ基を2以上含むアミン系化合物をポリエチレンオキサイドと反応させるなど、化合物の末端に特定の官能基(functional group)を導入する一般的な改質方法であってもよい。
【0030】
前記溶媒では、水(water)や、エタノール、アセトン、IPA、THF、MC、DMF、DMSO及びDMAcなどの有機溶媒を例えることができ、この中でTHFまたはこれと類似な性質を有する化合物を溶媒で適用することが好ましい。また、前記(a)段階での反応は常温ないし100℃、好ましくは40ないし70℃下で1ないし24時間行われることができる。
【0031】
前記(b)段階は、前記(a)段階で改質されて導入または形成されたポリエチレンオキサイドの末端官能基に伝導性炭素のヒドロキシ基またはカルボキシ基を化学的に結合させてPEO-伝導性炭素複合体を製造する過程である。前記化学結合は高温下での反応によって行われることができ、前記反応は、例えば、70ないし150℃、好ましくは80ないし120℃、より好ましくは約100℃の温度で8ないし48時間、好ましくは15ないし30時間行われることができる。
【0032】
以上のような反応によって行われるポリエチレンオキサイドの官能基と伝導性炭素のヒドロキシ基またはカルボキシ基の化学的結合を通じて、前記伝導性炭素とポリエチレンオキサイドの間の結合力はもちろん、伝導性炭素とポリエチレンオキサイドを含むPEO-伝導性炭素複合体とベース分離膜の間の結合力まで優秀になりながら、リチウムイオンの伝達は円滑になる長所を得ることができる。
【0033】
このように、伝導性炭素とポリエチレンオキサイドが化学結合されたPEO-伝導性炭素複合体が製造された後は、前記PEO-伝導性炭素複合体をベース分離膜の表面にコーティングさせることで、本発明による機能性分離膜が製造される。この時、前記コーティングはドロップキャスト法(dropcast)、ディップ-コーティング(dip-coating)方式、ブレードコーティング(blade coating)方式、スプレイコーティング(spray coating)方式、メイヤーバーコーティング(meyer bar coating)方式または真空ろ過(vacuum filter)によって行われることができる。
【0034】
最後に、本発明が提供する機能性分離膜を含むリチウム二次電池について説明する。前記機能性分離膜を含むリチウム二次電池は、正極、負極、前記正極と負極の間に介在される前記機能性分離膜及び電解質を含み、リチウム-硫黄電池、リチウム空気電池及びリチウムメタル電池など、当業界に知られた全てのリチウム二次電池を例えることができ、この中でリチウム-硫黄電池であることが好ましい。前記リチウム二次電池に含まれる機能性分離膜に対する説明は前述したことに代わり、その他、リチウム二次電池に適用される他の正極、負極及び電解質は当業界で使用する通常のものであってもよく、これに対する具体的な説明は後述する。
【0035】
一方、本発明は、前記リチウム二次電池を単位セルで含む電池モジュール及びこれを含む電池パックの提供も可能である。前記電池モジュールまたは電池パックはパワーツール(Power tool);電気自動車(Electric vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in hybrid electric vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システム;のいずれか一つ以上の中大型デバイス電源で利用されることができる。
【0036】
以下、本発明によるリチウム二次電池に適用される正極、負極及び電解質に対する説明を付け加える。
【0037】
正極
本発明に使われる正極について説明すれば、正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極組成物を製造した後、これを所定の溶媒(分散媒)に希釈して製造されたスラリーを正極集電体上に直接コーティング及び乾燥することで正極層を形成することができる。または、前記スラリーを別途支持体上に鋳造した後、前記支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションして正極層を製造することができる。以外も、当該技術分野における通常の知識を有する技術者に広く知られた方法を利用して様々な方式で正極を製造することができる。
【0038】
前記導電材(Conducting material)は正極集電体から電子が正極活物質まで移動する経路の役目をして電子伝導性を与えるだけでなく、電解質と正極活物質を電気的に連結させて電解質内のリチウムイオン(Li+)が硫黄まで移動して反応させる経路の役目を同時にするようになる。よって、導電材の量が十分ではなかったり、まともに役目を遂行できなくなると、電極内の硫黄の中で反応できない部分が増加し、結局容量減少を起こすようになる。また、高率放電特性と充放電サイクル寿命にも悪影響を及ぼすようになるので、適切な導電材の添加が必要である。前記導電材の含量は正極組成物の総重量を基準にして0.01ないし30重量%の範囲内で適切に添加することが好ましい。
【0039】
前記導電材は当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、グラファイト;デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム及びニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛及びチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使われてもよい。市販中の導電材の具体例としては、アセチレンブラック系列のシェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)やデンカブラック(Denka Singapore Private Limited)、ガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製品、ケッチェンブラック(Ketjenblack)、EC系列のアルマックカンパニー(Armak Company)製品、バルカン(Vulcan)XC-72キャボットカンパニー(Cabot Company)製品及びスーパー-ピー(Super-P;Timcal 社製品)などが使われてもよい。
【0040】
前記バインダーは正極活物質を集電体によく付着させるためのものであって、溶媒によく溶解しなければならず、正極活物質と導電材との導電ネックワークをよく構成しなければならないうえ、電解液の含浸性も適当に持たなければならない。前記バインダーは当該業界で公知された全てのバインダーであってもよく、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブチジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー、ポリエステル系バインダー、シラン系バインダー;からなる群から選択された1種以上の混合物や共重合体であってもよいが、これに制限されない。
【0041】
前記バインダーの含量は正極組成物の総重量を基準にして0.5ないし30重量%であってもよいが、これに限定されるものではない。前記バインダー樹脂の含量が0.5重量%未満の場合は、正極の物理的性質が低下されて正極活物質と導電材が脱落することがあり、30重量%を超過する場合は正極で活物質と導電材の割合が相対的に減少して電池容量が減少されることがあって、抵抗要素として作用して効率が低下することがある。
【0042】
前記正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極組成物は所定の溶媒に希釈され、正極集電体上に当業界で知られている通常の方法を利用してコーティングすることができる。先ず、正極集電体を用意する。前記正極集電体は一般的に3ないし500μmの厚さを使用する。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使われてもよい。集電体はその表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0043】
次に、前記正極集電体上に正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極組成物を溶媒に希釈したスラリーを塗布する。前述した正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極組成物を所定の溶媒と混合してスラリーで製造することができる。この時、溶媒は乾燥が容易でなければならず、バインダーをよく溶解させることができて、正極活物質及び導電材は溶解させずに分散状態で維持させることが最も好ましい。溶媒が正極活物質を溶解させる場合は、スラリーで硫黄の比重(D=2.07)が高いため硫黄がスラリーで沈むようになり、コーティングの際に集電体に硫黄が集まって導電ネットワークに問題が起こり、電池作動に問題が発生する傾向がある。前記溶媒(分散媒)は水または有機溶媒が可能で、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド、イソプロピルアルコールまたはアセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン群から選択される1種以上であってもよい。
【0044】
続いて、前記スラリー状態の正極組成物を塗布する方法は特に制限されず、例えば、ドクターブレードコーティング(Doctor blade coating)、ディップコーティング(Dip coating)、グラビアコーティング(Gravure coating)、スリットダイコーティング(Slit die coating)、スピンコーティング(Spin coating)、コンマコーティング(Comma coating)、バーコーティング(Bar coating)、リバースロールコーティング(Reverse roll coating)、スクリーンコーティング(Screen coating)、キャップコーティング(Cap coating)方法などを遂行して製造することができる。このようなコーティング過程を経った正極組成物は、以後乾燥過程を通じて溶媒(分散媒)の蒸発、コーティング膜の稠密性、及びコーティング膜と集電体との密着性などが行われる。この時、乾燥は通常の方法によって実施され、これを特に制限しない。
【0045】
負極
負極としてはリチウムイオンを吸蔵及び放出することができるものを全て使用することができ、例えば、リチウム金属、リチウム合金などの金属材と、低結晶炭素、高結晶性炭素などの炭素材を例えることができる。低結晶性炭素としては、軟化炭素(Soft carbon)及び硬化炭素(Hard carbon)が代表的で、高結晶性炭素としては、天然黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(Pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(Mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(Meso-carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(Petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。この他、シリコンが含まれた合金系列やLi4Ti5O12などの酸化物もよく知られた負極である。
【0046】
この時、負極は結着剤を含むことができ、結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(Polymethylmethacrylate)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)など、多様な種類のバインダー高分子が使われることができる。
【0047】
前記負極は、前記負極活物質及びバインダーを含む負極活性層を支持するための負極集電体を選択的にさらに含むこともできる。前記負極集電体は具体的に、銅、ステンレススチール、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されてもよく、前記合金としては、アルミニウム-カドミウム合金が使われてもよい。その他にも焼成炭素、導電剤で表面処理された非伝導性高分子、または伝導性高分子などが使われてもよい。
【0048】
前記バインダーは、負極活物質のペースト化、活物質間の相互接着、活物質と集電体との接着、活物質の膨張及び収縮に対する緩衝効果などの役割をする。具体的に、前記バインダーは正極のバインダーでの説明と同一である。また、前記負極は、リチウム金属またはリチウム合金であってもよい。非制限的な例として、負極はリチウム金属の薄膜であってもよく、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al及びSnからなる群から選択される1種以上の金属との合金であってもよい。
【0049】
電解質
電解液は溶媒(Solvents)及びリチウム塩(Lithium Salt)を含み、必要に応じて、添加剤(Additives)をさらに含むことができる。前記溶媒としては、電池の電気化学的反応に係わるイオンが移動できる媒質の役目をする通常の非水性溶媒を特に制限せずに使用することができる。前記非水性溶媒の例としては、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒及び非プロトン性溶媒などを挙げることができる。
【0050】
より具体的に例えば、前記カーボネート系溶媒としてジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート(BC)などがあり、前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)及びカプロラクトン(carprolactone)などがあり、前記エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及びポリエチレングリコールジメチルエーテルなどがある。また、前記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどがあり、前記アルコール系溶媒としてはエタノール及びイソプロピルアルコールなどがあり、 前記非プロトン性溶媒としては、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソラン(DOL)などのジオキソラン類及びスルホラン(sulfolane)などがある。以上のような非水性溶媒は単独または2つ以上混合して使用することができ、2つ以上混合する場合の混合の割合は、目的とする電池性能によって適宜調節することができ、1,3-ジオキソランとジメトキシエタンを1:1の体積比で混合した溶媒を例示することができる。
【0051】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付された特許請求範囲に属することも当然である。
【0052】
[実施例1]機能性分離膜の製造
先ず、溶媒(THF)及びエチレンジアミンなどを利用した下記反応式1の反応を通じて、ポリエチレンオキサイドの両端をアミノ基で改質させた。
【0053】
【0054】
また、グラフェンオキサイド(SE2430、Sixth Element、China)を300℃で1時間熱処理して還元させた後、高速混合器と超音波ホモジナイザーを利用して厚さ15nmの熱的剥離還元グラフェンオキサイドを製造した。
【0055】
次いで、前記製造された熱的剥離還元グラフェンオキサイドと、熱的剥離還元グラフェンオキサイド100重量部に対して10重量部の(両端にアミノ基が形成された)ポリエチレンオキサイドを100℃で24時間反応させ、ポリエチレンオキサイドのアミノ基とTErGOのカルボキシ基が化学結合されたPEO-伝導性炭素複合体を製造した。
【0056】
次いで、ポリエチレン材質の多孔性ベース分離膜に、前記製造されたPEO-伝導性炭素複合体を真空ろ過方式でコーティングした後乾燥し、コーティング層(PEO-伝導性炭素複合層)の重さがベース分離膜の表面積を基準にして6μg/cm2であり、厚さが4μmの機能性分離膜を製造した。
【0057】
[実施例2]機能性分離膜の製造
コーティング層(PEO-伝導性炭素複合層)の重さをベース分離膜の表面積を基準にして22μg/cm2に、厚さを6μmに変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行って機能性分離膜を製造した。
【0058】
[実施例3]機能性分離膜の製造
コーティング層(PEO-伝導性炭素複合層)の重さをベース分離膜の表面積を基準にして74μg/cm2に、厚さを10μmに変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行って機能性分離膜を製造した。
【0059】
[実施例4]機能性分離膜の製造
両端にアミノ基が形成されたポリエチレンオキサイドの含量をTErGO 100重量部に対して50重量部となるように変更し、コーティング層(PEO-伝導性炭素複合層)の重さをベース分離膜の表面積を基準にして16μg/cm2に変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行って機能性分離膜を製造した。
【0060】
[実施例5]機能性分離膜の製造
両端にアミノ基が形成されたポリエチレンオキサイドの含量をTErGO 100重量部に対して50重量部となるように変更し、コーティング層(PEO-伝導性炭素複合層)の重さをベース分離膜の表面積を基準にして23μg/cm2に、厚さを6μmに変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行って機能性分離膜を製造した。
【0061】
[実施例6]機能性分離膜の製造
両端にアミノ基が形成されたポリエチレンオキサイドの含量をTErGO 100重量部に対して50重量部となるように変更し、コーティング層(PEO-伝導性炭素複合層)の重さをベース分離膜の表面積を基準にして64μg/cm2に、厚さを10μmに変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行って機能性分離膜を製造した。
【0062】
[比較例1]通常の分離膜
別途コーティングせずに、ポリエチレン(PE)からなるベア(bare)状態の分離膜を用意した。
【0063】
[比較例2]通常の分離膜の製造
ポリエチレン材質の多孔性ベース分離膜に、伝導性炭素である熱的剥離還元グラフェンオキサイド(TErGO)のみを真空ろ過方式でコーティングした後乾燥し、コーティング層の重さがベース分離膜の表面積を基準にして6μg/cm2で、厚さが4μmの分離膜を製造した。
【0064】
[比較例3]通常の分離膜の製造
両端にアミノ基が形成されたポリエチレンオキサイドの代わりにポリエチレンイミンを使用したことを除いては、前記実施例1と同様に行って分離膜を製造した。
【0065】
[実施例1~6、比較例1~3]リチウム-硫黄電池の製造
前記実施例1ないし6及び比較例1ないし3で製造された分離膜と、電解液(DOL:DME(1:1(vol))、1.0M LiTFSI、1wt% LiNO3)70μl、そして硫黄正極及びリチウムメタル負極を含むリチウム-硫黄電池を製造した。
【0066】
[実験例1]リチウム-硫黄電池の放電容量及び寿命特性評価
前記製造されたリチウム-硫黄電池の放電電流速度を0.1Cで3回、0.2Cで3回、以後0.5Cで設定した後、放電容量及び寿命特性を観察した。
図1ないし3は本発明の一実施例及び比較例によるリチウム-硫黄電池の放電容量を比較対照したグラフで、
図4は本発明の一実施例及び比較例によるリチウム-硫黄電池の寿命特性を比較対照したグラフである。
【0067】
前記製造されたリチウム-硫黄電池の初期放電容量を評価した結果、PEO-伝導性炭素複合体をベース分離膜のコーティング層で適用した実施例1ないし3の電池は、
図1に図示されたように、ベース分離膜に何のコーティングもしていない比較例1の電池に比べて放電量が高いことを確認することができた。
【0068】
また、PEO-伝導性炭素複合体をベース分離膜のコーティング層で適用した実施例4ないし6の電池は、
図2に図示されたように、ベース分離膜に何のコーティングもしていない比較例1の電池に比べて過電圧が改善され、放電量も小幅に増加したことが分かった。
【0069】
また、前記製造されたリチウム-硫黄電池の初期以後の放電容量を評価した結果、PEO-伝導性炭素複合体をベース分離膜のコーティング層で適用した実施例4ないし6の電池は、
図3に図示されたように、ベース分離膜に何のコーティングもしていない比較例1の電池に比べて過電圧が改善され、確実な放電量の増加を確認することができた。
【0070】
一方、前記製造されたリチウム-硫黄電池の寿命特性を評価した結果、PEO-伝導性炭素複合体をベース分離膜のコーティング層で適用した実施例1及び2の電池は、
図4に図示されたように、ベース分離膜に何のコーティングもしていない比較例1の電池、ベース分離膜に熱的剥離還元グラフェンオキサイド(TErGO)のみをコーティングさせた比較例2の電池、そして、改質ポリエチレンオキサイドの代わりにポリエチレンイミンを使用した比較例3の電池に比べて寿命が増加したことが分かった。