(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】金属空気電池
(51)【国際特許分類】
H01M 12/06 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
H01M12/06 E
H01M12/06 Z
(21)【出願番号】P 2019187092
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519366525
【氏名又は名称】QEエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168251
【氏名又は名称】矢上 礼宣
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】森 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】石川 忠
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-176698(JP,A)
【文献】特公昭47-039056(JP,B1)
【文献】特開2018-195529(JP,A)
【文献】実開昭56-007274(JP,U)
【文献】実開昭56-007268(JP,U)
【文献】実開昭52-052625(JP,U)
【文献】特開2016-152133(JP,A)
【文献】特開2014-179196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/06
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向、幅方向及び前後方向を有し、収容ケースと前記収容ケースに収容された電池セルユニットとを含む金属空気電池において、
前記電池セルユニットは、カソード体と、前記カソード体と前記前後方向において対向して位置するアノード体を備えた負極パネルとを有する複数の電池セルを含み、
前記負極パネルの上面には、前記幅方向へ延びる取手部材が取り付けられていて
、
前記取手部材は、長手方向の中央に位置する把持部と、前記把持部の両側に位置するフレーム状の連結部とを有し、前記連結部に前記アノード体の負極端子板の両端が挿入されることによって、前記取手部材が前記負極パネルに取り付けられることを特徴とする前記金属空気電池。
【請求項2】
前記負極端子板は、他の部分に比して幅狭の一対の幅狭部分を有し、前記幅狭部分が前記取手部材の前記連結部に挿入されることによって、前記連結部は前記幅狭部分に対して前記幅方向へ摺動可能である請求項
1に記載の金属空気電池。
【請求項3】
前記電池セルユニットの上面を蓋止する中蓋をさらに有し、前記中蓋の底面には、弾性かつ突起状の複数の押し当て部が配置されていて、前記中蓋が閉蓋された状態において、前記複数の電池セル内に配置された前記負極パネルの負極端子と接続端子とが、前記押し当て部によって圧接される請求項1
又は2に記載の金属空気電池。
【請求項4】
前記アノード体の全体が、網目状の被覆カバーによって被覆される請求項1~
3のいずれかに記載の金属空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気や水等の自然燃料を利用して発電する金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気や水等の自然燃料を利用して発電する金属空気電池は、公知である。例えば、特許文献1には、収容ケース内に複数の電池セルが内部に配置された金属空気電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の金属空気電池によれば、収容ケース内に、カソード体とアノード体を有する負極パネルとを備えた複数の電池セルを幅方向に並べて電気的に直列接続することで、比較的に高い起電力を出力することができる。
【0005】
しかし、電池セルは収容ケース内においてほぼ隙間なく配置されていることから、使用済の負極パネルを交換するときに、把持して引き出し難く、交換作業が手間であった。
【0006】
本発明は、従来の金属空気電池の改良であって、負極パネルの交換を素早く行うことのできる金属空気電池の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上下方向、幅方向及び前後方向を有し、収容ケースと前記収容ケースに収容された電池セルユニットとを含む金属空気電池に関する。
【0008】
本発明に係る金属空気電池は、前記電池セルユニットは、カソード体と、前記カソード体と前記前後方向において対向して位置するアノード体を備えた負極パネルとを有する複数の電池セルを含み、前記負極パネルの上面には、前記幅方向へ延びる取手部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。該実施の形態は、分離して又は互いに組み合わせて採択することができる。
(1)前記取手部材は、長手方向の中央に位置する把持部と、前記把持部の両側に位置するフレーム状の連結部とを有し、前記連結部に前記アノード体の負極端子板の両端が挿入されることによって、前記取手部材が前記負極パネルに取り付けられる。
(2)前記負極端子板は、他の部分に比して幅狭の一対の幅狭部分を有し、前記幅狭部分が前記取手部材の前記連結部に挿入されることによって、前記連結部は前記幅狭部分に対して前記幅方向へ摺動可能である。
(3)前記電池セルユニットの上面を蓋止する中蓋をさらに有し、前記中蓋の底面には、弾性かつ突起状の複数の押し当て部が配置されていて、前記中蓋が閉蓋された状態において、前記複数の電池セル内に配置された前記負極パネルの負極端子と接続端子とが、前記押し当て部によって圧接される。
(4)前記アノード体の全体が、網目状の被覆カバーによって被覆される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施の形態に係る金属空気電池においては、負極パネルの上面に取手部材が取り付けられていることから、電池セルユニットから各負極パネルを容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面は、本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
【
図3】中蓋と電池セルユニットとが分離した状態を示す図。
【
図4】電池セルユニットから負極パネルを引き出す様子を示す図。
【
図6】(a)中蓋の底面の平面図。(b)中蓋が閉蓋した状態における、負極端子と接続端子とが接触した様子を示す図。
【
図7】(a)負極パネルを上方から視た斜視図。(b)取手部材を引き出した状態における
図7(a)と同様の図。
【
図8】変形例の一例における、負極パネルの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記の各実施の形態は、
図1~8に示す金属空気電池1に関し、発明の不可欠な構成ばかりではなく、選択的及び好ましい構成を含む。
【0013】
図1及び
図2を参照すると、可搬用の金属空気電池(水電池、電源装置、発電装置)1は、上下方向Y、幅方向X及び前後方向Zを有し、その外形をなす収容ケース10を含む。収容ケース10は、前面10aと、後面10bと、上面10cと、底面10dと、幅方向Xにおいて互いに対向する両側面10e,10fとを有し、電池ユニットが収容されたケース本体20と、開閉可能に取り付けられた蓋体30とを備える。収容ケース10は、非導電性の材料、例えば、硬質プラスチック材料から形成することができる。
【0014】
ケース本体20の内部空間Sには、複数の電池セル(小収容室)41を有する電池セルユニット40と、電池セルユニット40用の中蓋50とが収容される。電池セル41には、それぞれ、プレート状のアノード体62を有する負極パネル60が配置されている。電池セル41は、カソード体(空気極)42を有し、カソード体42に空気が供給されるとともに、内部空間Sに注入された反応液が酸化触媒として作用してカソード体42とアノード体62との間にイオン化反応が生じることによって、所定の起電力が発生する。反応液には、水のほかに、塩水などの各種反応液を好適に使用することができる。
【0015】
蓋体30は、背面側に位置するヒンジ部を介してケース本体20に開閉可能に取り付けられていて、閉蓋された状態において、前面10a側に位置する係合孔21に係止された係止部31を押圧して係止を解除することによって、開蓋することができる。蓋体30の上面10cには、カソード体42とアノード体62との電気化学反応によって収容ケース10内に発生した反応ガスを外部に排出するための一対の排気口と、それを被覆する排気カバー32とが配置されている。排気カバー32は、略6角形状であって、下面に複数の支持突起を有し、該複数の支持突起を排気口の周辺に配置された複数の開口に挿入することで、蓋体30の上面10cから着脱可能及び起立可能に配置される。
【0016】
蓋体30の内部には、発電装置1の制御回路(図示せず)が設けられていて、その前面には、USBデバイスに電流を供給するための複数のUSBポート33が幅方向Xに並んで配置されている。USBポート33の下方には、発電装置1の残電池容量を示す複数のLEDランプ(インジケータ)34が配置されている。使用者は、LEDランプ34の点灯数によって残電池容量を確認することができ、電池セル41の交換時期を容易に識別することができる。
【0017】
蓋体30(収容ケース10)の上面10cの後面10b側の隅部には、内部空間Sに反応液を注入するための注入口と、それを封止するための注入口キャップ35が配置されている。注入口が、上面10cの前面10a側または中央近傍に位置する場合には、注水するときにいきおい前面10a側に反応液が垂れてUSBポート33が濡れてしまい、USBポート33の金属の腐食化の原因となるおそれがある。本実施形態においては、注入口が上面10cの後面10b側の隅部に位置することで、注水口が前面10a側や中央近傍に位置する場合に比べて、反応液が前面10a側に垂れるのを抑制することができる。
【0018】
また、蓋体30の前面において、USBポート33及びLEDランプ34は、周壁36に囲まれた領域に配置されている。USBポート33が周壁36に囲まれた領域に配置されていることによって、反応液の注入時に前面10a側へ垂れた反応液が直接USBポート33に入り込むのを制御することができる。
【0019】
ケース本体20の前面には、発電装置の電源スイッチ22が位置している。また、電源スイッチ22の下方には、ケース本体20の開口24とそれに連通された電池セルユニット40の開口49とを貫通するようにスラブオフ棒70が前後方向Zに延びている。スラブオフ棒70は、水栓キャップ71と、水栓キャップ71から延出するスラブ受容部72とを有する。水栓キャップ71は、ケース本体20の周辺から前方へ突出する突出部分に着脱可能に螺着されている。
【0020】
スラブ受容部72は、その延在方向に並ぶ分離壁を有し、分離壁間に電池セルユニット40の各電池セル41が位置する。発電時において、スラブ受容部72の該区域に各電池セル41で発生した析出物が受容される。析出物がスラブ受容部72に受容されることによって、電池セルユニット40の底に析出物が堆積するのを防止することができる。また、電池セルユニット40を貫通するスラブオフ棒70を外部に取り出すことによって、すべての電池セル41で発生した析出物を同時に廃棄処理することができるので、電池セル41ごとに析出物を取り出して廃棄処理する場合に比べて、素早く廃棄処理を行うことができる。
【0021】
ケース本体20の両側面には、ベルト(ショルダーベルト)5の取付金具5aを係止するためのフック6が配置されている。フック6の耐荷重は少なくとも15kg以上、好ましくは30kg以上であって、ケース本体20に十分な量の反応液(例えば、1.5~5.0L)を注入して加重されたとしても、金属空気電池1を吊持した状態で安全に持ち運ぶことができる。
【0022】
また、ケース本体20の両側面のうちの一方側面には、外部の空気を収容ケース20の内部に取り込むための通気口7が設けられていて、他方面には、収容ケース内の空気を外部に排出するための排気口8が設けられている。図示していないが、収容ケース10は、その内部において、通気口7から取り入れた酸素をカソード体42に供給するための吸気ファンと、収容ケース10内の空気を排気口8から外部に排出するための排気ファンとを含む、制御回路によって制御された換気機構を備えている。
【0023】
図4を参照すると、電池セルユニット40は、絶縁材料、例えば、硬質プラスチック材料から形成されたハウジング43を有する。ハウジング43は、前面部43aと、後面部43bと、両側部43c,43dと、前後面部43a,43b間において前後方向Zに並ぶ分離壁44と、それらによって隔離された複数の電池セル41と、一方側部43cの上方に位置する連結板45と、他方側部43dに位置するサイド壁部46とを有する。サイド壁部46は、幅方向Xの外側へ延びて、さらに上方へ屈曲した形状を有する。電池セル41には、それぞれ、負極パネル60が配置されている。
【0024】
サイド壁部46には、締結ナット52を操作するための操作具(ソケットレンチ等)9を収納するためのスペースが設けられている。具体的には、サイド壁部46の底面には、前後方向へ延びる一対の支持突起が位置していて、操作具9を支持突起間に挟圧した状態で配置することによって、収容ケース10内に安定的に操作具9を収納することができる。
【0025】
ハウジング43の前後面部43a,43bと分離壁44とには、格子状の複数の窓を有する窓枠が設けられていて、窓枠の内側または外側には、それを覆うように薄膜状のカソード体(空気極)42が取り付けられている。カソード体42は、電気伝導率の良好な金属、例えば、金、銀、銅合金や活性炭、塩化銀、ステンレス等を用いることができる。カソード体42は、単層から形成することのほかに、起電力及び集電性能を向上させるために、例えば、カーボン材等の導電性材料から形成された第1層(電極層)と、第1層の一方面に取り付けられた活性炭等の正極活物質から形成された第2層(活性層)と、第1層の他方面に取り付けられた、導電性金属から形成された板状の第3層(集電層)とから構成された複数層から形成することもできる。
【0026】
負極パネル60は、基部61と、基部61から下方へ延出するアノード体62とを有する。アノード体62は、薄板状であって、イオン化傾向の比較的に大きな電極活物質、例えば、金属マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等を用いることができる。
【0027】
かかる構成を有する発電装置1を使用する場合には、まず、上面10cの後面10b側の隅部に位置する注入口キャップ35を取り外した状態において、注入口から反応液を注入する。注入された反応液は、注入口から内部空間Sに延びる通液チューブ75を介して電池セルユニット40内に移動する。所要量(例えば、約3.0L)の反応液が注入されることによって電池セルユニット40内には注液域が形成され、電池セルユニット40の前後面部40a,40b及び分離壁44の窓枠に取り付けられたカソード体42と、各電池セル41内に挿入された負極パネル60のアノード体62とが注液域内において前後方向Zに対向して位置する。
【0028】
反応液の注入後、電源スイッチ22をONにすることによって、発電装置1の回路が閉じて、換気機構が作動して収容ケース10内に通気口から空気が取り込まれてカソード体42に空気が供給されるとともに、注液域の反応液が酸化触媒として作用してカソード体42とアノード体62との間にイオン化反応が生じる。すなわち、イオン化したアノード体62から発生した電子がカソード体42で酸素と反応液中の水と反応して放電反応が生じ、カソード体42とアノード体62との間に電位差が生じて所定の起電力が発生する。電池セルユニット40内で発生した水素等の反応ガスは、排気チューブ76を介して蓋体30の排気口から外部に放出される。
【0029】
図5を参照すると、負極パネル60の基部61は、上面側から下面側へ凹となり、かつ、幅方向Xへ延びる配置凹部63と、下面からさらに下方へ延びる一対の固定部64とを有する。固定部64は、上下方向Yに貫通された貫通孔を有し、該貫通孔にはアノード体62のうちの上方へ延びる突出部分62aが嵌挿されている。基部61の配置凹部63には、幅方向Xへ延びる、銅、銀等の優れた導電性を有する材料から形成された薄板帯状の負極端子板65が配置されている。負極端子板65の両端には、透孔が位置し、該透孔を貫通するねじ(締結手段)66aが固定部64に嵌挿されたアノード体62の突出部分62aにまで延びて、負極端子板65とアノード体62とが互いに締結している。
【0030】
負極端子板65は、ねじ66aの幅方向Xの外側であって、上方へ屈曲した部分の先端に位置する負極端子66をさらに有する。負極端子66は透孔を有し、基部61の両端壁に形成された開口を通過して基部61からさらに幅方向Xの外側へ延出している。
【0031】
絶縁材料から形成された連結板45には、複数の接続端子47が前後方向Zへ並んで配置されている。接続端子47は連結板45を貫通した状態で配置されていて、各接続端子47の上端に負極パネル60の負極端子66が接触されるとともに、該接続端子47の下端に該負極パネル60の位置する電池セル41に隣接するカソード体42の正極端子が接続されることによって、複数の電池セル41は電気的に直列接続される。なお、本実施形態において、電池セル41は電気的に直列接続されているが、並列接続されていてもよいし、直列接続と並列接続とが併用されていてもよい。
【0032】
図6(a),(b)を参照すると、また、硬質合成樹脂製の中蓋50の底面50bには、中蓋50とは別体に形成された、軟質合成樹脂製からなる弾性を有する押し当て部51が位置する。押し当て部51は、負極端子66よりも僅かに大きな略円形状を有する。発電装置1の組立工程において、中蓋50をハウジング43の上面から上方へ突出する複数の螺旋凸部48に締結ナット52を締結することで電池セルユニット40に固定する際に、押し当て部51が負極端子66に押し当てられて負極端子66が接続端子47に圧接される。押し当て部51の弾性反撥性を利用して負極端子66と接続端子47とをより強く圧接させることができることから、負極パネル60の負極端子66の浮き上りを確実に防止することができる。
【0033】
図3を参照すると、中蓋50は、電池セルユニット40の上面から上方へ突出する複数の螺旋凸部48と、中蓋50の両側部に位置する凹部に配置された締結ナット52とによる締結手段によって電池セルユニット40に固定されている。締結手段を構成する締結ナット52は、中蓋50の両側部に2つずつ(合計で4つ)で配置されている。従来、この種の金属空気電池においては、負極端子66を接続端子47に圧接するために、負極端子66の真上にそれと同数の締結ナット52を配置して締結する必要があり、手間であった。本実施形態においては、中蓋50の底面50bに弾性の押し当て部51を設けることで、その弾性を利用して負極端子66と接続端子47とを圧接できるようにしたことから、固定ボルトの数を4つに減らしても、使用中に、負極端子66が接続端子47から浮き上ってしまうおそれはない。
【0034】
このように、締結ナット52の数を比較的に少なくすることによって、素早く中蓋50の取付け及び取外し操作を行うことができるので、発電装置1の組立時や負極パネル60の交換時における手間を軽減することができる。
【0035】
電池セルユニット40によって発生した電力は制御回路(図示せず)によって制御され、DC-DCコンバータを介して安定的に10.0~15.0V程度の電圧が供給される。また、制御回路によって換気機構が制御されて吸気ファンと排気ファンとが作動するとともに、3~8V程度に制御された電圧がUSBポートに供給される。
【0036】
図5及び
図7(a),(b)を参照すると、負極パネル60は、幅方向Xへ延びる取手部材67を有する。取手部材67は、薄板帯状を有し、絶縁かつ軟質の材料、例えば、シリコン、軟質ゴム、軟質合成樹脂等から形成されたものであって、中央に位置する把持部67aと、両側に位置して透孔を有する連結端部67bとを備える。また、取手部材67のうちの把持部67aと連結端部67bとの間には、取手部材67に局部的に剛性を付与するための上方へ突出する突起68が位置する。負極パネル60の基部61の配置凹部63に配置された負極端子板65は、幅方向Xにおいて離間して位置する幅狭部分65aを有し、取手部材67の連結端部67bに幅狭部分65aが挿通されることによって、取手部材67は負極端子板65に連結されている。
【0037】
図4及び
図7(a)を参照すると、取手部材67が負極端子板65に連結された態様において、把持部67aは負極端子板65から上方へ僅かに離間している。電池セルユニット40内に負極パネル60が収容された状態において、取手部材67の把持部67aと負極端子板65とが互いに重なるように接触している場合には取手部材67を把持し難いところ、使用者は取手部材の把持部を容易に把持することができる。使用者が把持部67aを把持して引き上げたときには、取手部材67の連結端部67bが負極端子板65の幅狭部分65aに摺接しながら互いに接近するように移動し、把持部67aはさらに上方へ離間した態様となって、より簡易に引き出し操作を行うことができる。
【0038】
使用者が負極パネル60を引き出してアノード体62を交換した後に、把持部67aを把持して負極パネル60を電池セル41内に再び挿し入れて、使用者が把持部67aから手を放すと、取手部材67が上方へ引っ張る力から解放される。
それによって、取手部材67の連結端部67bは、自動的に幅狭部分65aを摺接しながら互いに離間するように幅方向Xの外側へ移動する。
【0039】
<変形例>
図8は、金属空気電池1の変形例の一例における、負極パネルの斜視図である。
本変形例にかかる負極パネル60のアノード体62は、被覆カバー80によって全体的に被覆されている。被覆カバー80は、網目(メッシュ)状であって、プラスチックフィルム、天然繊維、合成樹脂繊維等を使用した繊維不織布シート、フィルムと不織布との積層シート等から形成することができる。被覆カバー80の網目は、注液域内の反応液をアノード体62に供給することができるとともに、水酸化マグネシウム等の析出物が網目を通過して外部に露出せずに被覆カバー80内に沈殿させることができる程度の大きさを有する。
【0040】
本変形例によれば、各負極パネル60で発生した析出物を被覆カバー80内に滞留させることができるので、析出物が注液域内において沈殿することで、交換後の新しい反応液による電気化学反応を阻害するおそれはない。
【符号の説明】
【0041】
1 金属空気電池
10 収容ケース
40 電池セルユニット
41 電池セル
42 カソード体
47 接続端子
50 中蓋
50b 中蓋の底面
51 押し当て部
62 アノード体
65 負極端子板
65a 幅狭部分
66 負極端子
67 取手部材
67a 把持部
67b 連結部
80 被覆カバー
X 幅方向
Y 上下方向
Z 前後方向