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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】窒化物半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/38 20100101AFI20220707BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20220707BHJP
【FI】
H01L33/38
H01L33/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018082347
(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公開番号】P2019192732
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒輔
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-071339(JP,A)
【文献】特開2007-287912(JP,A)
【文献】特開2007-311764(JP,A)
【文献】特開2011-258670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0328812(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導電型の第一窒化物半導体層と、
前記第一窒化物半導体層上の一部に形成された、窒化物半導体発光層および第二導電型の第二窒化物半導体層を含む窒化物半導体積層体と、
前記第一窒化物半導体層上に形成され、第一の方向に延伸している複数の第一電極と、
前記窒化物半導体積層体の前記第二窒化物半導体層上に形成され、前記第一の方向に延伸している複数の第二電極と、
を備え、
前記第一電極と前記第二電極の平面視での配置は、前記第一電極と前記第二電極が前記第一の方向と垂直な第二の方向に間隔を開けて交互に並び、前記第一電極は前記第二電極の両側に存在し、前記第二電極に挟まれた前記第一電極と前記第二電極に挟まれていない前記第一電極とを有し、前記前記第二電極の前記第一の方向における外側に前記第一電極が存在しない配置であり、
前記第二電極に挟まれた前記第一電極は、前記第二の方向の寸法が、前記第二電極に挟まれていない前記第一電極の前記第二方向の寸法よりも大きい窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記第二電極に挟まれた前記第一電極は、前記第一の方向の寸法が、前記第二電極に挟まれていない前記第一電極の前記第一の方向の寸法よりも大きい、請求項1記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記第二電極の前記第一の方向における端部は、丸くなっている請求項1または2記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項4】
前記第一窒化物半導体層は長方形の平面形状を有し、
前記第一の方向と前記長方形の長辺とが平行または略平行であり、
前記長方形の長辺の寸法L1と、前記第二電極に挟まれていない前記第一電極の前記第一の方向の寸法L2と、の関係を示す下記の(1)式、および、前記長方形の長辺の寸法L1と、前記第二電極に挟まれていない前記第一電極の隣に配置された前記第二電極の前記第一の方向の寸法L3と、の関係を示す下記の(2)式の少なくともいずれかを満たす請求項1~のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子。
140μm<L1-L2<650μm…(1)
140μm<L1-L3<650μm…(2)
【請求項5】
前記第一窒化物半導体層は長方形の平面形状を有し、
前記第一の方向と前記長方形の長辺とが平行または略平行であり、
前記第二電極に挟まれていない前記第一電極の前記第一の方向の寸法L2と、前記第二電極に挟まれた前記第一電極の前記第一の方向の寸法L4と、の差の絶対値が0より大きく500μmより小さい請求項1~のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項6】
前記第一窒化物半導体層は長方形の平面形状を有し、
前記第一の方向と前記長方形の長辺とが平行または略平行であり、
前記第二電極に挟まれていない前記第一電極の隣に配置された前記第二電極の前記第一の方向の寸法L3と、前記第二電極に挟まれた前記第一電極と前記第二電極に挟まれた前記第一電極との間に配置された前記第二電極の前記第一の方向の寸法L5と、の差の絶対値が0より大きく500μmより小さい請求項1~のいずれか一項に記載の窒化物半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒化物半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体発光素子は、例えば、基板と、基板上に形成されたn型窒化物半導体層と、n型窒化物半導体層上の一部に形成された窒化物半導体積層体(窒化物半導体発光層およびp型窒化物半導体層を含むメサ部)と、n型窒化物半導体層上に形成されたn型電極と、窒化物半導体積層体のp型窒化物半導体層上に形成されたp型電極と、で構成されている。
【0003】
特許文献1には、窒化物半導体発光素子のメサ部(第一領域)の形状を、平面視で三方から第二領域(第一領域以外の領域)を囲む凹部を有する形状とし、第二領域の形状を、平面視で第一領域の凹部に囲まれた凹部領域と、この凹部領域以外の周辺領域が連続して構成された形状とすることが記載されている。また、n型電極を、第二領域内のn型半導体層上に、凹部領域及び周辺領域にまたがって形成し、p型電極を、p型半導体層の最上面に形成することが記載されている。さらに、n型電極が、平面視で、n型電極の外形線がメサ部の外形線に対して、一定の間隔を介して沿うように形成されている。
【0004】
窒化物半導体発光素子には、発光面において発光効率が高い素子を実現するためには発光を素子内で均一化することが求められている。発光光量の不均一性の原因の一つとして、p型電極とn型電極との間に流れる電流が部分的に集中することが挙げられる。
その対策として、特許文献2には、p型電極を、p型半導体層を面状に覆うように形成し、p型半導体層もしくはp型電極よりも高抵抗の高抵抗層を、p型半導体層の表面において、n型電極に近い側でn型電極におけるp型半導体層側の形状に沿った形状に形成することにより、発光面積を減少させずに電流集中を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5985782号公報
【文献】特開2014-96460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている窒化物半導体発光素子は、電流集中の抑制が考慮された構成を有していない。
特許文献2に記載されている窒化物半導体発光素子には、電流集中を抑制するために高抵抗層を形成しているため、製造コストが高くなるという問題点がある。
本発明の課題は、電流集中が抑制された窒化物半導体発光素子を低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の一態様の窒化物半導体発光素子は、下記の構成要件(a)と(b)を有する。
(a)第一導電型の第一窒化物半導体層と、第一窒化物半導体層上の一部に形成された、窒化物半導体発光層および第二導電型の第二窒化物半導体層を含む窒化物半導体積層体(メサ部)と、第一窒化物半導体層上に形成され、第一の方向に延伸している第一電極と、窒化物半導体積層体の第二窒化物半導体層上に形成され、第一の方向に延伸している第二電極と、を備える。
(b)第一電極と第二電極とは、平面視で、第一の方向と垂直な第二の方向に、間隔を開けて並んで配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の窒化物半導体発光素子は、電流集中の抑制が期待される窒化物半導体発光素子であって、低コストで提供することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の窒化物半導体発光素子を説明する平面図である。
図2】本発明の一実施形態の窒化物半導体発光素子を示す断面図であり、図1のA-A断面図に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[一態様の窒化物半導体発光素子]
一態様の窒化物半導体発光素子は、上記構成要件(a)と(b)を有するが、下記の構成(c)~(i)の少なくとも一つ以上を有することで、それらの構成を有さない場合よりも、電流集中の抑制効果が高くなると考えられる。
(c)第一電極は第二電極の両側に配置されている。
(d)第二電極に挟まれた第一電極は、第二の方向の寸法が、第二電極に挟まれていない第一電極の第二方向の寸法よりも大きい。
(e)第二電極に挟まれた第一電極は、第一の方向の寸法が、第二電極に挟まれていない第一電極の第一の方向の寸法よりも大きい。
(f)第二電極の第一の方向における端部は、丸くなっている。
【0011】
(g)第一窒化物半導体層は長方形の平面形状を有し、第一の方向と上記長方形の長辺とが平行または略平行であり、上記長方形の長辺の寸法L1と、第二電極に挟まれていない第一電極の第一の方向の寸法L2と、の関係を示す下記の(1)式、および、上記長方形の長辺の寸法L1と、第二電極に挟まれていない第一電極の隣に配置された第二電極の第一の方向の寸法L3と、の関係を示す下記の(2)式の少なくともいずれかを満たす。
140μm<L1-L2<650μm…(1)
140μm<L1-L3<650μm…(2)
【0012】
(h)第一窒化物半導体層は長方形の平面形状を有し、第一の方向と上記長方形の長辺とが平行または略平行であり、第二電極に挟まれていない第一電極の第一の方向の寸法L2と、第二電極に挟まれた第一電極の第一の方向の寸法L4と、の差の絶対値が0より大きく500μmより小さい。
(i)第一窒化物半導体層は長方形の平面形状を有し、第一の方向と上記長方形の長辺とが平行または略平行であり、第二電極に挟まれていない第一電極の隣に配置された第二電極の第一の方向の寸法L3と、第二電極に挟まれた第一電極と第二電極に挟まれた第一電極との間に配置された第二電極の第一の方向の寸法L5と、の差の絶対値が0より大きく500μmより小さい。
【0013】
[実施形態]
以下、この発明の実施形態について説明するが、この発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、この発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定はこの発明の必須要件ではない。
なお、以下の説明で使用する図において、図示されている各部の寸法関係は、実際の寸法関係と異なる場合がある。
【0014】
〔全体構成〕
図2に示すように、半導体チップ(窒化物半導体発光素子)1は、基板11と、n型窒化物半導体層(第一導電型の第一窒化物半導体層)12と、窒化物半導体積層体3a~3dと、n型電極15a~15eと、p型電極16a~16dと、n型電極15a~15e上のパッド電極150a~150dと、p型電極16a~16d上のパッド電極160a~160dと、絶縁層17を有する。
n型窒化物半導体層12は、基板11の一面110上に形成されている。n型窒化物半導体層12は、厚い部分121と、それ以外の部分である薄い部分122を有する。
【0015】
窒化物半導体積層体3a~3dは、n型窒化物半導体層2上に形成された四(N-1)個のメサ部であり、n型窒化物半導体層12の厚い部分121の基準面Kより上側の部分、窒化物半導体発光層13、およびp型窒化物半導体層(第二導電型の第二窒化物半導体層)14で形成されている。基準面Kは、n型窒化物半導体層12の薄い部分122の上面である。
各窒化物半導体積層体3a~3dにおいて、窒化物半導体発光層13は、n型窒化物半導体層12の厚い部分121の上に形成されている。p型窒化物半導体層14は、窒化物半導体発光層13上に形成されている。
【0016】
n型電極15a~15eは、n型窒化物半導体層12の薄い部分122に形成されている。p型電極16a~16dは、p型窒化物半導体層14上に形成されている。
なお、窒化物半導体積層体3a~3dを形成するためのメサエッチングで、n型電極15a~15eが形成される部分に存在していた積層体が、n型窒化物半導体層12の厚さ方向の途中で除去されている。その結果、n型窒化物半導体層12に薄い部分122が形成される。
【0017】
〔材料など〕
半導体チップ1は、ピーク波長範囲が300nm以下の紫外線光を発光する素子である。基板11は、一面110上に窒化物半導体層を形成することが可能なものであれば特に制限されない。基板11を形成する材料の具体例としては、サファイア、Si、SiC、MgO、Ga23、Al23、ZnO、GaN、InN、AlN、あるいはこれらの混晶等が挙げられる。これらのうち、GaNおよびAlNおよびAlGaN等の窒化物半導体で形成された基板を用いると、基板11上に形成される各窒化物半導体層との格子定数差が小さく、欠陥の発生の少ない窒化物半導体層を成長できるため好ましく、AlN基板を用いることがより好ましい。また、基板11を形成する上記材料には不純物が混入していてもよい。
【0018】
n型窒化物半導体層12を形成する材料は、AlN、GaN、InNの単結晶および混晶であることが好ましく、具体例としてはn-AlxGa(1-x)N(x≧0.4)が挙げられる。また、これらの材料には、P、As、SbといったN以外のV族元素や、C、H、F、O、Mg、Siなどの不純物が含まれていてもよい。
窒化物半導体発光層13は、単層でも、多層でも良く、例えば、AlGaNからなる量子井戸層とAlGaNからなる電子バリア層とからなる多重量子井戸構造(MQW)を有する層である。また、窒化物半導体発光層13には、P、As、SbといったN以外のV族元素や、C、H、F、O、Mg、Siなどの不純物が含まれていてもよい。
【0019】
p型窒化物半導体層14としては、例えばp-GaN層、p-AlGaN層などが挙げられ、p-GaN層であることが好ましい。また、p型窒化物半導体層14には、Mg、Cd、Zn、Be等の不純物が含まれていてもよい。
絶縁層17は、n型窒化物半導体層2のn型電極15a~15eで覆われていない部分と、窒化物半導体積層体3a~3dのp型電極16a~16dで覆われていない部分と、n型電極15a~15eおよびp型電極16a~16dのパッド電極150a~150d,160a~160dの下部の側面に形成されている。絶縁層17は、例えばSiNや、SiO2、SiON、Al23、ZrO層などの酸化物や窒化物が挙げられるが、この限りでは無い。
【0020】
n型電極15a~15eの材料としては、例えば、Ti、Al、Ni、Au、Cr、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wおよびその合金、またはITO等が使用できる。p型電極16a~16dの材料としては、例えば、Ni、Au、Pt、Ag、Rh、Pd、Pt、Cuおよびその合金、またはITO等が使用できる。これらのうち、窒化物半導体層とのコンタクト抵抗が小さいNi、Auもしくはこれらの合金、またはITOを使用することが好ましい。
パッド電極150a~150d,160a~160dの材料としては、例えばAu、Al、Cu、Ag、Wなどが挙げられるが、導電性の高いAuが望ましい。
【0021】
〔平面形状〕
図1では、パッド電極150a~150d、パッド電極160a~160d、および絶縁層17が省略されている。
図1に示すように、半導体チップ1の基板11は正方形であり、その全面にn型窒化物半導体層12が形成されている。つまり、n型窒化物半導体層12は正方形(長方形)の平面形状を有する。
図1に示すように、平面視で、半導体チップ1は、並列に配置された五個(二以上)のn型電極15a~15eと四個(一以上)のp型電極16a~16dを有する。これらのn型電極15a~15eとp型電極16a~16dとが、平面視で間隔を開けて交互に並列に配置されている。
【0022】
具体的には、並列の配置において、n型電極15a,15bは、p型電極16aの両側に存在して、p型電極16aを挟んでいる。n型電極15b,15cは、p型電極16bの両側に存在して、p型電極16bを挟んでいる。n型電極15c,15dは、p型電極16cの両側に存在して、p型電極16cを挟んでいる。n型電極15d,15eは、p型電極16dの両側に存在して、p型電極16dを挟んでいる。
n型電極15aとp型電極16aとの間隔K1、p型電極16aとn型電極15bとの間隔K2、n型電極15bとp型電極16bとの間隔K3、p型電極16bとn型電極15cとの間隔K4、n型電極15cとp型電極16cとの間隔K5、p型電極16cとn型電極15dとの間隔K6、n型電極15dとp型電極16dとの間隔K7、およびp型電極16dとn型電極15eとの間隔K8は、例えば、2μm~50μm、好ましくは5μm~25μmであることが好ましい。
【0023】
間隔K1~K8を50μm以下にすることでpn電極間の抵抗を低減でき、2μm以上にすることでリソグラフィーのずれによる電極間ショートが発生するリスクが抑制できる。間隔K1~K8は、等間隔であることが好ましく、差がある場合には、最大値と最小値との差を5μm以下とし、好ましくは2μm以下にする。
n型電極15a~15eおよびp型電極16a~16dは、帯状の平面形状を有し、帯状の長手方向が平行に配置されている。n型電極15a~15eおよびp型電極16a~16dの帯状の長手方向と、基板11をなす正方形の辺のうち図1の左右に延びる第一の辺(長方形の長辺)11aとが平行である。つまり、n型電極15a~15eおよびp型電極16a~16dは、平面視で、延伸方向である第一の方向と垂直な第二の方向に並んで配置されている。
【0024】
第一の辺11aとn型電極15a~15eおよびp型電極16a~16dの帯状の長手方向とは、厳密に平行でなく、略平行であってもよい。略平行とは、ずれ(平行に対する傾き)が5°未満であることを意味する、このずれは3°未満であることが好ましい。
n型電極15a~15eの平面形状は、具体的には、細長い長方形であり、その長辺が第一の辺11aと平行である。
n型電極15a~15eのうち、第一窒化物半導体層12の面内で、第一の辺11aに沿う(帯状の長手方向に沿う)縁部125に最も近い位置に配置されたn型電極(縁部第一電極、第二電極に挟まれていない第一電極)15a,15eをなす長方形の幅(短辺の寸法)W1は、これらよりも中央側(縁部から離れる側)に配置されたn型電極(内側第一電極、第二電極に挟まれた第一電極)15b~15dをなす長方形の幅W2よりも狭い。幅W1は5μm以上50μm以下であることが好ましい。幅の比(W2/W1)は1.2以上3.0以下であることが好ましい。
【0025】
n型電極15aとn型電極15eは同じ平面形状と寸法を有し、n型電極15b~15dは同じ平面形状と寸法を有する。n型電極15a~15eの平面視での配置は、基板11をなす正方形の中心Cを通り第一の辺11aに垂直な直線L01と、中心Cを通り第一の辺11aと平行な直線L02の両方に対して線対称である。
p型電極16a~16dの平面形状は、具体的には、n型電極15a~15eよりも短辺が長い長方形であって、その長辺方向(長手方向)の両端部161a~161dは、先端が凸の半円弧(曲線)となっている。p型電極16a,16dは、n型電極(縁部第一電極)15a,15eの隣に配置された縁側第二電極であり、p型電極16b,16cは、p型電極16a,16dよりも中央側(縁部から離れる側)に配置された内側第二電極である。
【0026】
p型電極16aとp型電極16dは同じ平面形状と寸法を有し、p型電極16bとp型電極16cは同じ平面形状と寸法を有する。p型電極16a~16dの平面視での配置は、直線L01と直線L02の両方に対して線対称である。つまり、n型電極15a~15eおよびp型電極16a~16dの全ての平面視での配置は、直線L01と直線L02の両方に対して線対称である。
また、半導体チップ1のn型窒化物半導体12の面内には、n型電極15a~15eおよびp型電極16a~16d以外のn型電極およびp型電極が存在しない。つまり、n型電極15a~15eをなす帯状の長手方向(並列の方向と垂直な方向)の外側に、並列の配置から外れるp型電極(第二電極)が存在しない。p型電極16a~16dをなす帯状の長手方向(並列の方向と垂直な方向)の外側に、並列の配置から外れるn型電極(第一電極)が存在しない。
【0027】
第一の辺11aの寸法L1と、n型電極(縁部第一電極)15a,15eの長辺の長さ(長手方向の寸法)L2は、下記の(1)式を満たす。第一の辺11aの寸法L1と、p型電極(縁部第二電極)16a,16dの長辺の長さ(長手方向の寸法)L3は、下記の(2)式を満たす。L1とL2の関係は下記の(11)式を満たすことが好ましい。L1とL3の関係は下記の(21)を満たすことが好ましい。
140μm<L1-L2<650μm…(1)
140μm<L1-L3<650μm…(2)
200μm<L1-L2<500μm…(11)
200μm<L1-L3<500μm…(21)
【0028】
n型電極(縁部第一電極)15a,15eの長辺の長さ(長手方向の寸法)L2と、n型電極(内側第一電極)15b~15dの長辺の長さ(長手方向の寸法)L4と、の差の絶対値(|L4-L2|)は、0より大きく500μmより小さい。|L4-L2|は400μm以上500μm未満であることが好ましい。
p型電極(縁部第二電極)16a,16dの長辺の長さ(長手方向の寸法)L3と、p型電極(内側第二電極)16b,16cの長手方向の寸法L5と、の差の絶対値は、0より大きく500μmより小さい。|L5-L3|は100μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0029】
p型電極16a~16dの半円弧(曲線)161a~161dは、全て同じになっている。つまり、p型電極(縁部第二電極)16a,16dとp型電極(内側第二電極)16b,16cとで、長手方向両端をなす「先端が凸の曲線」の曲率半径Rが同じになっている。この曲率半径Rは0より大きく200μmより小さいことが好ましく、20<R<150μmを満たすことがより好ましく、80<R<120μmを満たすことがさらに好ましい。
【0030】
なお、並列に配置された第一電極および第二電極(この例では、n型電極15a~15eおよびp型電極16a~16d)の合計数は、以下に説明する値「t」、または「t+1」、または「t-1」であることが好ましい。値tは、第一電極および第二電極が並ぶ方向の第一窒化物半導体層の寸法(この例では、第一辺11aに垂直な辺の寸法であってL1に等しい)S1と、第一電極の幅(この例では、W1とW2の平均値)S2と、第二電極の幅S3を用いて下記の(3)式で得られるTに基づき、整数の場合はTをtとし、整数でない場合はTを四捨五入して得られる整数をtとする。
T=S1/(S2+S3)…(3)
【0031】
また、この実施形態の半導体チップ1では、縁部第一電極である二つのn型電極15a,15eの幅W1が同じであるが、二つの縁部第一電極の幅は異なっていてもよい。また、内側第一電極である三つのn型電極15b~15dの幅W2が同じであるが、複数の内側第一電極において、一部の内側第一電極の幅が他と異なっていてもよいし、全ての内側第一電極の幅が異なっていてもよい。
また、この実施形態の半導体チップ1は、n型電極が第一電極、p型電極が第二電極となっているが、一態様の窒化物半導体発光素子は、p型電極が第一電極、n型電極が第二電極の場合にも適用できる。
【0032】
〔作用、効果〕
実施形態の半導体チップ(窒化物半導体発光素子)1は、n型電極15a~15eおよびp型電極16a~16dが、上述の平面形状および平面視での配置を有することで、従来の窒化物半導体発光素子(n型電極およびp型電極の平面形状および平面視での配置が半導体チップ1とは異なる、例えば特許文献1に記載された窒化物半導体発光素子)と比較して、電流集中が抑制される。その結果、半導体チップ1は、低電圧で高出力を得ることができる。つまり、発光効率が高くなる。
【0033】
窒化物半導体発光素子で用いる窒化物半導体は、LSIで用いるSiなどと比較して一般的に抵抗値が高く、電流の偏りが顕著となる。そのため、窒化物半導体発光素子においては、電極の配置の設計自由度を高めることで得られる効果は非常に高い。
特許文献1に記載された窒化物半導体発光素子では、p型電極とn型電極を一つずつ有する。p型電極は、平面視で間隔を介して並列に配置された複数の帯状部の長手方向中心同士が、繋ぎ部で結合された形状を有する。複数の帯状部の長手方向両端部は先端が凸部になっている。
【0034】
そして、p型電極の外側に、p型電極の外形線に沿った内形線を有するn型電極が存在する。つまり、p型電極を構成する複数の帯状部の並列の配置と垂直な方向の外側にn型電極の一部が存在する。これに伴い、p型電極の凸部に電流が集中する。また、p型電極の複数の帯状部の間(繋ぎ部を挟んだ両側にのみ存在する)には、n型電極の帯状部が存在する。つまり、n型電極を構成する複数の帯状部の並列の配置と垂直な方向の外側にp型電極の一部が存在する。
これに対して、実施形態の半導体チップ1では、並列に配置されたp型電極16a~16dの並列の方向と垂直な方向の外側に、第一電極が存在しないため、p型電極16a~16dの並列の方向と垂直な方向の端部に電流が集中することが抑制される。また、p型電極16a~16dの両端部に角部があると角部に電流が集中するが、両端部161a~161dは先端が凸の半円弧(曲線)となっているため、電流集中がより一層抑制される。
【0035】
また、内側第一電極であるn型電極15b~15dの幅W2を縁部第一電極であるn型電極15a,15eの幅W1の二倍とすることで、n型電極15a,15bからp型電極16aに、n型電極15b,15cからp型電極16bに、n型電極15c,15dからp型電極16cに、およびn型電極15d,15eからp型電極16dにそれぞれ流れる電流を同じにすることができる。そのため、W1<W2とすることで、W1≧W2とした場合よりも、電流集中を抑制することができる。
さらに、実施形態の半導体チップ1は、特許文献2に記載されている窒化物半導体発光素子と比較して、製造コストを低く押さえることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 半導体チップ(窒化物半導体発光素子)
11 基板
110 基板の一面(第一窒化物半導体層が形成されている面)
12 n型窒化物半導体層(第一窒化物半導体層)
125 縁部
13 窒化物半導体発光層
14 p型窒化物半導体層(第二窒化物半導体層)
15a n型電極(第一電極、縁部第一電極、第二電極に挟まれていない第一電極)
15b n型電極(第一電極、内側第一電極、第二電極に挟まれた第一電極)
15c n型電極(第一電極、内側第一電極、第二電極に挟まれた第一電極)
15d n型電極(第一電極、内側第一電極、第二電極に挟まれた第一電極)
15e n型電極(第一電極、縁部第一電極、第二電極に挟まれていない第一電極)
16a p型電極(第二電極、縁部第二電極)
16b p型電極(第二電極、内側第二電極)
16c p型電極(第二電極、内側第二電極)
16d p型電極(第二電極、縁部第二電極)
161a~161d p型電極(第二電極)の帯状の長辺方向(長手方向)の両端部
150a~150e パッド電極
160a~160d パッド電極
17 絶縁層
3a~3d 窒化物半導体積層体
図1
図2