(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】築炉装置及び築炉方法
(51)【国際特許分類】
F27D 1/16 20060101AFI20220708BHJP
C10B 29/02 20060101ALN20220708BHJP
【FI】
F27D1/16 Q
C10B29/02
(21)【出願番号】P 2018004148
(22)【出願日】2018-01-15
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】中澤 睦裕
【審査官】岡田 眞理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-010145(JP,A)
【文献】特開平10-046216(JP,A)
【文献】特開2000-319709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00- 1/18
C10B 1/00-57/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンガ複合体を積載可能な本体と、
伸びることで前記本体を持ち上げる第1ジャッキと、
前記本体に対して水平方向に相対移動可能に支持されるスライド部材と、
伸びることで前記スライド部材を持ち上げる第2ジャッキと、
を備え、
前記本体には、積載された前記レンガ複合体を下ろして設置するための移載装置が設けられ、
前記第1ジャッキが接地し、当該第1ジャッキが前記本体を介して前記スライド部材を持ち上げることにより前記第2ジャッキが接地しない状態で
、前記本体に対して前記スライド部材
とともに前記第2ジャッキを水平方向に移動させる第1動作と、
前記第2ジャッキが接地し、当該第2ジャッキが前記スライド部材を介して前記本体を持ち上げることにより前記第1ジャッキが接地しない状態で
、前記スライド部材に対して前記本体
とともに前記第1ジャッキを水平方向に移動させる第2動作と、
を交互に行うことにより、水平な直線状の経路に沿って移動し、
前記移動の過程で前記レンガ複合体を設置することにより、前記レンガ複合体を前記経路に沿って並べて配置することを特徴とする築炉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の築炉装置であって、
前記第1動作における前記スライド部材の移動ストローク、及び、前記第2動作における前記本体の移動ストロークは、前記経路の方向における前記レンガ複合体の設置間隔と等しいことを特徴とする築炉装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の築炉装置であって、
前記移載装置は、前記本体を基準として、前記築炉装置の進行方向と同じ側及び反対側のうち少なくとも何れかに前記レンガ複合体を設置可能であることを特徴とする築炉装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の築炉装置であって、
前記レンガ複合体を水平な直線状に並べた後、当該レンガ複合体の上に築炉装置が乗るように、前記第1ジャッキ及び前記第2ジャッキが制御されることを特徴とする築炉装置。
【請求項5】
請求項4に記載の築炉装置であって、
前記第2ジャッキは、複数箇所で前記スライド部材を持ち上げるように構成されており、
前記スライド部材を持ち上げるストロークが、前記スライド部材を持ち上げる箇所に応じて変更可能であることを特徴とする築炉装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の築炉装置であって、
前記レンガ複合体の上に乗った後、乗る前の進行方向と逆向きに進行しながら、前記レンガ複合体の上に前記レンガ複合体を設置することを特徴とする築炉装置。
【請求項7】
レンガ複合体を積載可能な本体と、
伸びることで前記本体を持ち上げる第1ジャッキと、
前記本体に対して水平方向に相対移動可能に支持されるスライド部材と、
伸びることで前記スライド部材を持ち上げる第2ジャッキと、
を備え、
前記本体には、積載された前記レンガ複合体を下ろして設置するための移載装置が設けられる築炉装置
を用いた築炉方法であって、
前記第1ジャッキが接地し、当該第1ジャッキが前記本体を介して前記スライド部材を持ち上げることにより前記第2ジャッキが接地しない状態で
、前記本体に対して前記スライド部材
とともに前記第2ジャッキを水平方向に移動させる動作を
前記築炉装置にさせる第1工程と、
前記第2ジャッキが接地し、当該第2ジャッキが前記スライド部材を介して前記本体を持ち上げることにより前記第1ジャッキが接地しない状態で
、前記スライド部材に対して前記本体
とともに前記第1ジャッキを水平方向に移動させる動作を
前記築炉装置にさせる第2工程と、
前記移載装置によって前記レンガ複合体を設置する動作を
前記築炉装置にさせる第3工程と、
を含むことを特徴とする築炉方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、炉体を構築する築炉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コークス炉等の炉体を構築する際に、巻上機等の装置を用いてレンガ(煉瓦)を運ぶことによって、作業効率の向上を図ることが提案されている。特許文献1から3は、この種の方法を開示する。
【0003】
特許文献1には、複数の把持機構を備えた搬送フレームを用いて複数段のレンガ層からなるレンガ壁モジュールを積み重ねることによって、炉体を構築する方法が開示されている。この方法では、搬送フレームの把持機構でレンガ壁モジュールの最下段の外壁部分を内方に向かって挟持した状態で、レンガ壁モジュールを据付位置に着地させる作業を繰り返すことによって、炉体が構築される。
【0004】
なお、レンガ壁モジュールの最下段のレンガの下面には、レンガ壁モジュール間に離間距離を確保するためのスペーサが設けられている。特許文献1は、これにより、モルタルの厚さを確保することができるとする。
【0005】
特許文献2には、定型耐火物を把持することができる定型耐火物把持装置をアームの先端に取り付けた積みロボットを用いて、定型耐火物を積む方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、レンガ壁を構築する現場を覆う建屋に、レンガを乗せたパレット等を巻き上げる巻上機を設け、この巻上機を用いてコークス炉を構築する方法が開示されている。この方法は、先ずは巻上機を用いてレンガを乗せたパレットを巻上げることによって、当該パレットを最上段のレンガの上部に載置する。このとき、最上段の端側に位置するレンガの上面を露出させるように、数ブロック分だけ長手方向にズラしてパレットを載置する。それから、作業者が、露出しているレンガの上部にパレットに乗せられたレンガを積み下ろし、パレットを分割する作業を繰り返す。このようにして、一日毎に一段ずつ、作業者がレンガの段を形成することによって、コークス炉が構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6217796号公報
【文献】特開2017-193629号公報
【文献】特開2016-41782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1の構成は、大きなレンガ壁モジュールを搬送フレームで把持し、当該レンガ壁モジュールの据付を行う方法であり、レンガのサイズや形状によっては搬送フレームでレンガを把持することが容易ではないので、利便性の観点で改善の余地があった。
【0009】
上記特許文献2の構成は、積みロボットが作業を行うことができる範囲が狭いので、定型耐火物を積むことができる範囲が限定される。従って、作業効率が十分に良いとは言えず、この点で改善の余地があった。
【0010】
上記特許文献3の構成は、人手を用いてパレットに乗せられたレンガを一つずつ設置する必要があり、作業者に大きな負担が掛かっていた。また、巻上機を利用するために建屋を建造する手間が掛かるので、利便性が十分とはいえなかった。
【0011】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主な目的は、炉体を容易に築炉することができる築炉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0013】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の築炉装置が提供される。即ち、この築炉装置は、本体と、第1ジャッキと、スライド部材と、第2ジャッキと、を備える。前記本体は、レンガ複合体を積載可能である。前記第1ジャッキは、伸びることで前記本体を持ち上げる。前記スライド部材は、前記本体に対して水平方向に相対移動可能に支持される。前記第2ジャッキは、伸びることで前記スライド部材を持ち上げる。前記本体には、積載された前記レンガ複合体を下ろして設置するための移載装置が設けられる。この築炉装置は、第1動作と、第2動作と、を交互に行うことにより、水平な直線状の経路に沿って移動する。前記第1動作は、前記第1ジャッキが接地し、当該第1ジャッキが前記本体を介して前記スライド部材を持ち上げることにより前記第2ジャッキが接地しない状態で、前記本体に対して前記スライド部材とともに前記第2ジャッキを水平方向に移動させる。前記第2動作は、前記第2ジャッキが接地し、当該第2ジャッキが前記スライド部材を介して前記本体を持ち上げることにより前記第1ジャッキが接地しない状態で、前記スライド部材に対して前記本体とともに前記第1ジャッキを水平方向に移動させる。前記移動の過程で前記レンガ複合体を設置することにより、前記レンガ複合体を前記経路に沿って並べて配置する。
【0014】
これにより、自走しながらレンガ複合体を並べることで築炉を行うことができるので、従来の人手による築炉と比較して大幅な省力化を実現することができ、特に大規模な炉体を構築する場合に好適である。また、ジャッキとスライド部材の組合せによって、自走機能を簡素な構成で実現することができる。更に、レンガ複合体を単位として設置作業を行うことで、施工工数を低減することができる。
【0015】
本発明の第2の観点によれば、以下の築炉方法が提供される。即ち、この築炉方法において用いられる築炉装置は、本体と、第1ジャッキと、スライド部材と、第2ジャッキと、を備える。前記本体は、レンガ複合体を積載可能である。前記第1ジャッキは、伸びることで前記本体を持ち上げる。前記スライド部材は、前記本体に対して水平方向に相対移動可能に支持される。前記第2ジャッキは、伸びることで前記スライド部材を持ち上げる。前記本体には、積載された前記レンガ複合体を下ろして設置するための移載装置が設けられる。当該築炉方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を含む。前記第1工程では、前記第1ジャッキが接地し、当該第1ジャッキが前記本体を介して前記スライド部材を持ち上げることにより前記第2ジャッキが接地しない状態で、前記本体に対して前記スライド部材とともに前記第2ジャッキを水平方向に移動させる動作を前記築炉装置にさせる。前記第2工程では、前記第2ジャッキが接地し、当該第2ジャッキが前記スライド部材を介して前記本体を持ち上げることにより前記第1ジャッキが接地しない状態で、前記スライド部材に対して前記本体とともに前記第1ジャッキを水平方向に移動させる動作を前記築炉装置にさせる。前記第3工程では、前記移載装置によって前記レンガ複合体を設置する動作を前記築炉装置にさせる。
【0016】
これにより、自走しながらレンガ複合体を並べることで築炉を行うことができるので、従来の人手による築炉と比較して大幅な省力化を実現することができ、特に大規模な炉体を構築する場合に好適である。また、ジャッキとスライド部材の組合せによって、自走機能を簡素な構成で実現することができる。更に、レンガ複合体を単位として設置作業を行うことで、施工工数を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、炉体を容易に築炉することができる築炉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る築炉装置の全体的な構成を示す側面図。
【
図2】レンガ複合体を並べて設置する様子を示す平面図。
【
図3】築炉装置がレンガ複合体を設置しながら移動する動作の前半を説明する模式側面図。
【
図4】築炉装置がレンガ複合体を設置しながら移動する動作の後半を説明する模式側面図。
【
図5】並べられたレンガ複合体の上に築炉装置が乗る動作の前半を説明する模式側面図。
【
図6】並べられたレンガ複合体の上に築炉装置が乗る動作の後半を説明する模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る築炉装置1の全体的な構成を示す側面図である。
図2は、レンガ複合体2を水平方向に並べて配置する様子を示す平面図である。
図3及び
図4は、築炉装置1がレンガ複合体2を設置しながら移動する動作を示す模式側面図である。
【0020】
図1に示す築炉装置1は、本体11と、本体ジャッキ(第1ジャッキ)25と、移動用フレーム(スライド部材)61と、フレームジャッキ(第2ジャッキ)75と、を備える。
【0021】
本体11には、コークス炉等を築炉するための材料であるレンガ複合体2を、上下方向に複数重ねた状態で積載することができる。また、本体11は移載ユニット(移載装置)17を備えている。この移載ユニット17は、例えば電動モータや油圧シリンダ等のアクチュエータによって駆動されることで、本体11に積載されたレンガ複合体2を1つずつ保持して本体11の外部に取り出し、下に置くことができる。築炉装置1は、レンガ複合体2を水平方向に並べながら積み上げていくことで、築炉作業を行う。
【0022】
レンガ複合体2は
図2に示すように、複数の耐火レンガ3を所定の形状に並べ、モルタル等を用いて互いに固定することにより一体化した構成となっている。このレンガ複合体2はレンガ段の1段分の厚みを有しており、それぞれのレンガ複合体2の厚み方向が上下方向に向くようにして多数のレンガ複合体2が設置されることにより、炉体が構築される。なお、レンガ複合体2の形状は、
図2の例に限定されない。例えば耐火レンガ3の形状、数、配置等を変更することによって、様々な形状のレンガ複合体2を実現することができる。
【0023】
厚み方向に平行な向きで見たときに、1つのレンガ複合体2は
図2に示すように、長方形において互いに向かい合う2辺をそれぞれ片側へほぼ2倍に延長したような形状となっている。この辺の延長方向でレンガ複合体2同士を繋げながら複数のレンガ複合体2を水平に並べると、平面視で、上記の長方形が直線状に繰り返し現れるような形状の細長いレンガ列4を得ることができる。
【0024】
このように、本実施形態では、耐火レンガ3ではなく、レンガ複合体2を単位として設置作業を行う。これにより、1回の作業で複数個の耐火レンガ3をまとめて設置できることになるので、作業効率を向上させることができる。また、施工現場から離れた場所でモルタルを用いてレンガ複合体2を予め製造し、これを現場に搬入して設置することで、現場で施工するモルタルの量を減少させることができる。この結果、現場における施工工数を効果的に減らすことができる。
【0025】
築炉装置1は、直線的に所定の距離だけ移動してレンガ複合体2を置く動作を反復することによって、レンガ複合体2を連結しつつ直線状に並べて配置することができる。以下の説明では、1段分のレンガ複合体2が並べられる方向を、「水平並べ方向」と呼ぶことがある。
【0026】
図1に示すように、本体11は、ベース部材15と、ガイドフレーム16と、上述の移載ユニット17と、を備える。
【0027】
ベース部材15は、直方体のブロック状に構成されている。このベース部材15の下部には、4つの本体ジャッキ25が取り付けられている。更に、ベース部材15の下方には、後述の移動用フレーム61がスライド可能に支持されている。
【0028】
ベース部材15の上部には、ローラコンベア23が設けられている。このローラコンベア23によって、レンガ複合体2を水平に滑らせるようにしてベース部材15の上に載せることができるため、本体11に対するレンガ複合体2の補充作業が容易になる。なお、レンガ複合体2を案内可能であれば良いので、ローラコンベア23は、公知の搬送装置に変えてもよい。この搬送装置には、例えば、ベルトコンベアが含まれる。
【0029】
ガイドフレーム16は、上下方向に細長い直方体の骨組み状となるように構成されており、ベース部材15に固定されている。ガイドフレーム16の内側には、レンガ複合体2を上下方向に積層した状態で収容するための収容空間11sが形成される。
【0030】
ガイドフレーム16には、1対の昇降部材18が上下移動可能に支持されている(
図1には、一側の昇降部材18だけが示されている)。1対の昇降部材18は、本体11に形成された前記収容空間11sを挟むように配置される。平面視で昇降部材18同士が向かい合う方向は、上記の水平並べ方向と垂直になっている。それぞれの昇降部材18は、例えばネジ軸からなる図略の昇降軸に連結されている。電動モータ等の適宜のアクチュエータで当該ネジ軸を回転させることにより、昇降部材18を上下方向に移動させることができる。
【0031】
2つの昇降部材18の下部には、水平移動フレーム19が、水平並べ方向に平行な向きで移動可能に支持されている。水平移動フレーム19は平面視で細長い長方形枠状に形成されており、その長手方向が水平並べ方向と一致するように配置される。水平移動フレーム19は、昇降部材18に対して移動することにより、水平並べ方向の一側に張り出した状態と、他側に張り出した状態と、を切り換えることができる。
【0032】
水平移動フレーム19の下部には、保持部材20が、水平並べ方向に平行な向きで移動可能に支持されている。保持部材20は平面視で矩形の平板状に形成され、その下面には、適宜の方法によりレンガ複合体2を保持可能なクランプ21が多数取り付けられている。水平移動フレーム19及び保持部材20が、水平並べ方向にスライドすることにより、保持部材20は、収容空間11sから水平並べ方向の一側に出た位置と、他側に出た位置と、収容空間11s内の位置と、の間で移動することができる。
【0033】
このように、本実施形態の移載ユニット17は、保持部材20が上下方向、及び、水平並べ方向の何れにも移動できるように構成されている。また、移載ユニット17は、水平移動フレーム19及び保持部材20が何れもスライド可能に支持される2重スライド構造を有している。
【0034】
本体ジャッキ25は、本体11を構成するベース部材15の下部に、平面視で矩形の頂点をなすように4つ取り付けられている(
図1には、2つの本体ジャッキ25だけが示されている)。それぞれの本体ジャッキ25は、その伸縮方向が上下方向を向くように配置されている。4つの本体ジャッキ25を伸長させることにより、当該本体ジャッキ25の下端部が接地して、本体11を上昇させることができる。なお、本体ジャッキ25を伸縮させるアクチュエータは、例えば電動モータや油圧シリンダ等とすることができる。
【0035】
移動用フレーム61は、水平並べ方向に平行な向きで移動可能となるように、ベース部材15の下部に支持されている。移動用フレーム61は、上記の水平移動フレーム19と同様に、平面視で細長い矩形枠状に形成されており、その長手方向が水平並べ方向と一致するように配置される。
【0036】
移動用フレーム61を本体11に対して水平方向に相対移動させるために、本体11の下部に適宜のアクチュエータ(具体的には、ジップチェーンアクチュエータ22)が設けられている。ジップチェーンアクチュエータ22は互いに噛み合うことが可能な2本のチェーンを備え、チェーン同士が噛み合わないときは巻いてコンパクトに収納できる一方、チェーン同士が噛み合ったときは強固な棒状となって押し引きが可能となる。2本のチェーンの先端部は、移動用フレーム61の適宜の箇所に固定されている。この構成で、ジップチェーンアクチュエータ22に内蔵される図略の電動モータを駆動することで、移動用フレーム61の本体11からの押出し/引張りにより、当該移動用フレーム61を本体11に対して相対移動させることができる。なお、移動用フレーム61を移動させるアクチュエータとして、例えば油圧シリンダを用いることもできる。
【0037】
フレームジャッキ75は、平面視で矩形の頂点をなすように4つ配置され、それぞれが移動用フレーム61に取り付けられている(
図1には、2つのフレームジャッキ75だけが示されている)。それぞれのフレームジャッキ75は、その伸縮方向が上下方向を向くように配置されている。4つのフレームジャッキ75を伸長させることにより、当該フレームジャッキ75の下端部が接地して、移動用フレーム61を上昇させることができる。なお、フレームジャッキ75を伸縮させるアクチュエータは、例えば電動モータや油圧シリンダとすることができる。
【0038】
以上の構成で、本体ジャッキ25を伸ばし、フレームジャッキ75を縮めた状態では、フレームジャッキ75の下端が接地しないので、移動用フレーム61の移動がフリーとなっている。従って、ジップチェーンアクチュエータ22の駆動により、接地している本体11に対して移動用フレーム61を水平並べ方向に移動させることができる。
【0039】
一方、本体ジャッキ25を縮め、フレームジャッキ75を伸ばした状態では、本体ジャッキ25の下端が接地しないので、本体11の移動がフリーとなっている。従って、ジップチェーンアクチュエータ22の駆動により、接地している移動用フレーム61に対して本体11を水平並べ方向に移動させることができる。
【0040】
このように、本体11に対する移動用フレーム61の移動と、移動用フレーム61に対する本体11の移動と、を交互に繰り返すことで、水平並べ方向に沿う向きでの築炉装置1の移動を実現することができる。
【0041】
本体11に対する移動用フレーム61の1回の移動ストローク、及び、移動用フレーム61に対する本体11の1回の移動ストロークは、水平並べ方向におけるレンガ複合体2の設置間隔と等しくするのが好ましい。この設置間隔は、水平並べ方向におけるレンガ複合体2の寸法と、水平並べ方向で隣り合うレンガ複合体2同士を接合するためのモルタルの厚さと、を考慮して定められる。これにより、移載ユニット17によるレンガ複合体2の設置動作と、移動用フレーム61に対する本体11の移動と、本体11に対する移動用フレーム61の移動と、を循環的に繰り返すシンプルな制御で、レンガ複合体2を水平並べ方向で等しい間隔で並べることができる。
【0042】
築炉装置1がレンガ複合体2を並べて設置するための動作を説明する。まず、
図3(a)に示すように、本体ジャッキ25及びフレームジャッキ75の両方が縮んだ状態で、本体11に積載されるうち最も上のレンガ複合体2が移載ユニット17によって取り出され、地面に設置される。次に、
図3(b)のようにフレームジャッキ75が伸びた状態で、設置されたレンガ複合体2から離れる方向に、移動用フレーム61に対して本体11を移動させる。更に、
図3(c)に示すように、本体ジャッキ25が伸び、フレームジャッキ75が縮んだ状態で、設置されたレンガ複合体2から離れる方向に、本体11に対して移動用フレーム61を移動させる。その後、本体ジャッキ25を縮めることで、
図4(d)の状態になる。以上のサイクルを築炉装置1が繰り返すことで、移動しながら進行方向と反対側にレンガ複合体2を1つずつ直線状に並べて設置することができる。
【0043】
築炉装置1を一方向に移動させながら1段目のレンガ複合体2を所望の数だけ並べた後は、築炉装置1の移動方向が反転する。築炉装置1は、既に並べたレンガ複合体2の上を移動しながら、1段目と同様に2段目のレンガ複合体2を並べる。これを反復することにより、所望の段数のレンガ複合体2を上下方向に積層して炉体を構築することができる。
【0044】
以下、移動方向の反転のための動作の一例を説明する。
図5及び
図6には、並べられたレンガ複合体2の上に築炉装置1が乗る動作が順に示されている。
【0045】
図5(a)の状態は、
図4(d)で説明した状態と実質的に同じである。その後、
図5(b)のように、本体ジャッキ25を大きく伸ばして、移動用フレーム61の下面がレンガ複合体2の1段分よりも高くなるように上昇させ、この状態で、直前に設置したレンガ複合体2の上に移動用フレーム61を張り出させるように、本体11に対して移動用フレーム61を移動させる。次に、
図5(c)のように、フレームジャッキ75を伸ばし、本体ジャッキ25を縮める。
図5(c)の状態では、4つのフレームジャッキ75のうち2つのフレームジャッキ75は、レンガ複合体2の上面に乗ることになる。築炉装置1の傾斜を防止するため、レンガ複合体2の上面に乗る2つのフレームジャッキ75については、他のフレームジャッキ75よりも、その伸びるストロークがレンガ複合体2の1段分の高さだけ小さくなるように制御される。
【0046】
図5(c)の状態で、移載ユニット17によりレンガ複合体2が地面に設置される。
図5(c)と
図5(a)とを比較するとわかるように、このときにレンガ複合体2が設置される側は、直前に設置したときと反対側となっている。この結果、レンガ複合体2は、今まで並べられたレンガ複合体2に対して、1つ分の隙間をあけて設置される。
【0047】
次に、
図6(d)のように、直前に設置されたレンガ複合体2から離れる方向に、移動用フレーム61に対して本体11を移動させる。そして、
図6(e)のように、本体ジャッキ25が伸び、フレームジャッキ75が縮んだ状態で、直前に設置されたレンガ複合体2から離れる方向に、本体11に対して移動用フレーム61を移動させる。その後、
図6(f)のように、本体ジャッキ25及びフレームジャッキ75を縮めた状態で、1段目のところに形成されていた隙間を埋めるように、移載ユニット17によりレンガ複合体2が地面に設置される。以上により1段目のレンガ複合体2の設置がすべて完了し、築炉装置1は、1段目のレンガ複合体2の上に乗った状態で、2段目のレンガ複合体2を1段目と同様に並べて設置していく。
【0048】
なお、築炉装置1の移載ユニット17は、水平並べ方向の一側/他側の何れにもレンガ複合体2を置くことができる。従って、築炉装置1は、進行方向と同じ側にもレンガ複合体2を設置することが可能である。例えば、築炉装置1がレンガ複合体2を設置した後に当該レンガ複合体2の上に乗るように進行して、新しいレンガ複合体2を更に進行方向側に設置する動作を繰り返すことで、レンガ複合体2を並べることができる。ただし、モルタルが乾いていない間にレンガ複合体2の上に築炉装置1が乗ると、レンガ複合体2の位置ズレ等が生じるおそれがある。この点を考慮すると、上述のように、レンガ複合体2は築炉装置1の進行方向と反対側に設置されつつ並べられることが好ましい。
【0049】
新しいレンガ段のレンガ複合体2を並べる前に築炉装置1の位置を水平並べ方向で適宜調整することで、上下方向で隣り合うレンガ段の間で、レンガ複合体2が例えば上記の設置間隔の略1/2だけズレるように並べることができる。この場合、レンガ複合体2の千鳥配置が実現される。水平並べ方向の端部に生じ得るレンガ複合体2の略1/2の空間については、例えば、耐火レンガ3を手作業で配置すれば良い。
【0050】
次に、築炉装置1に対するレンガ複合体2の補充について説明する。
【0051】
築炉装置1がレンガ複合体2を並べて設置していくに従って、本体11に積載されるレンガ複合体2の数は減少するため、適宜のタイミングでレンガ複合体2を補充する必要がある。
【0052】
そこで、本実施形態では、
図1に鎖線で示すように、築炉装置1の作業経路の中途にレンガ補充用冶具91を設置できるように構成されている。このレンガ補充用冶具91は、所定の数のレンガ複合体2を積載した状態で、クレーン等を用いて適宜の場所に設置される。レンガ複合体2を築炉装置1に補充した後、レンガ補充用冶具91はクレーン等を用いて撤去される。
【0053】
レンガ補充用冶具91は、積載台92と、ローラコンベア93と、を備える。積載台92は直方体ブロック状に形成されており、地面又はレンガ複合体2の上に置くことができる。積載台92の上部にはローラコンベア93が取り付けられる。ローラコンベア93の上には、複数のレンガ複合体2を、上下方向に積層した状態で載せることができる。
【0054】
本体11に対して前記水平並べ方向で隣接するようにレンガ補充用冶具91を設置したとき、ローラコンベア93の搬送面の高さは、本体11が有するローラコンベア23の搬送面の高さと実質的に一致している。従って、ローラコンベア93に載っているレンガ複合体2を水平方向に移動させることで、本体11の収容空間11sに容易に移動させることができる。この結果、補充作業を簡単に行うことができる。なお、ローラコンベア93は、築炉装置1のローラコンベア23と同様に、他の公知の搬送装置に変更することもできる。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態の築炉装置1は、本体11と、本体ジャッキ25と、移動用フレーム61と、フレームジャッキ75と、を備える。本体11は、レンガ複合体2を積載可能である。本体ジャッキ25は、伸びることで本体11を持ち上げる。移動用フレーム61は、本体11に対して水平方向に相対移動可能に支持される。フレームジャッキ75は、伸びることで移動用フレーム61を持ち上げる。本体11には、積載されたレンガ複合体2を下ろして設置するための移載ユニット17が設けられる。この築炉装置1は、第1動作と、第2動作と、を交互に行うことにより、直線状の経路に沿って移動する。第1動作では、本体ジャッキ25によって本体11を持ち上げた状態で当該本体11に対して移動用フレーム61を移動させる。第2動作では、フレームジャッキ75によって移動用フレーム61を持ち上げた状態で当該移動用フレーム61に対して本体11を移動させる。移動の過程でレンガ複合体2を設置することにより、レンガ複合体2を前記経路に沿って並べて配置する。
【0056】
これにより、機械が自走しながらレンガ複合体2を並べることで築炉を行うことができるので、従来の手作業による築炉と比較して大幅な省力化を実現することができ、特に大規模な炉体を構築する場合に好適である。築炉が機械によって行われるので、手作業と比較して、安定した品質を実現することができる。また、本体ジャッキ25、フレームジャッキ75と移動用フレーム61の組合せによって、自走機能を簡素な構成で実現することができる。更に、レンガ複合体2を単位として設置作業を行うことで、施工工数を低減することができる。
【0057】
また、本実施形態の築炉装置1において、第1動作における移動用フレーム61の移動ストローク、及び、第2動作における本体11の移動ストロークは、前記経路の方向におけるレンガ複合体2の設置間隔と等しい。
【0058】
これにより、簡単な制御で、レンガ複合体2を水平並べ方向で等間隔に並べることができる。
【0059】
また、本実施形態の築炉装置1において、移載ユニット17は、本体11を基準として、築炉装置1の進行方向と同じ側及び反対側のうち少なくとも何れかにレンガ複合体2を設置可能である。
【0060】
これにより、周囲の作業空間が狭い場合でも、レンガ複合体2を容易に並べることができる。
【0061】
また、本実施形態の築炉装置1においては、レンガ複合体2を水平な直線状に並べた後、当該レンガ複合体2の上に築炉装置1が乗るように、本体ジャッキ25及びフレームジャッキ75が制御される。
【0062】
これにより、レンガ複合体2を複数段積層することが可能になる。
【0063】
また、本実施形態の築炉装置1において、フレームジャッキ75は、4箇所で移動用フレーム61を持ち上げるように構成されている。移動用フレーム61を持ち上げるストロークが、移動用フレーム61を持ち上げる箇所に応じて変更可能である。
【0064】
これにより、並べたレンガ複合体2の上に乗る過程で、移動用フレーム61を持ち上げるフレームジャッキ75のストロークを
図5(c)のように互いに異なるように制御することで、築炉装置1の傾斜を容易に防止することができる。
【0065】
また、本実施形態の築炉装置1は、レンガ複合体2の上に乗った後、乗る前の進行方向と逆向きに進行しながら、レンガ複合体2の上にレンガ複合体2を設置する。
【0066】
これにより、レンガ複合体2を複数段積層する作業を効率良く行うことができる。なお、新しいレンガ段では築炉装置1がレンガ複合体2の設置間隔の略半分だけ移動してからレンガ複合体2を並べることによって、レンガ複合体2の千鳥配列を実現することもできる。
【0067】
また、本実施形態においては、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を含む方法によって築炉が行われている。第1工程では、築炉装置1に、本体ジャッキ25によって本体11を持ち上げた状態で当該本体11に対して移動用フレーム61を移動させる動作をさせる。第2工程では、築炉装置1に、フレームジャッキ75によって移動用フレーム61を持ち上げた状態で当該移動用フレーム61に対して本体11を移動させる動作をさせる。第3工程では、移載ユニット17によってレンガ複合体2を設置する動作をさせる。
【0068】
これにより、レンガ複合体2を効率よく並べて配置することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 築炉装置
2 レンガ複合体
3 耐火レンガ
11 本体
17 移載ユニット(移載装置)
25 本体ジャッキ(第1ジャッキ)
61 移動用フレーム(スライド部材)
75 フレームジャッキ(第2ジャッキ)