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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】サッシ枠特定システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20220711BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20220711BHJP
   E06B 1/56 20060101ALI20220711BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
G06T7/00 300E
E04G23/02 H
E06B1/56 A
G06T1/00 200E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018056143
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019168924
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】石井 利昌
(72)【発明者】
【氏名】小林 朋寛
【審査官】大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-262396(JP,A)
【文献】特開2003-122757(JP,A)
【文献】特開2006-031200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G23/00-23/08
E06B 1/00-1/70
G06T 1/00
G06T7/00-7/90
G06T11/60-13/80
G06T17/05
G06T19/00-19/20
G06V10/00-20/90
G06V30/418
G06V40/16
G06V40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影したサッシ枠の画像情報から生成された比較用形状情報を受け付ける受付部と、
前記サッシ枠の形状に基づく特定用形状情報が複数種類登録されるサッシ枠登録部と、
前記サッシ枠登録部に登録された前記特定用形状情報と前記比較用形状情報を比較し、類似度が所定基準を上回った前記特定用形状情報を候補サッシ枠として設定するサッシ枠判定部と、を備え
前記比較用形状情報は、下枠、上枠及び縦枠のうち何れか1つの枠の画像情報であり、
複数種類登録される前記特定用形状情報は、前記画像情報に設定された前記枠の形状に基づくものである、サッシ枠特定システム。
【請求項2】
前記比較用形状情報は、下枠の画像情報であり、
複数種類登録される前記特定用形状情報は、下枠の形状に基づくものである請求項1に記載のサッシ枠特定システム。
【請求項3】
前記サッシ枠登録部には、前記特定用形状情報に設定された以外の枠の形状情報が前記特定用形状情報に関連付けて登録される請求項1又は2に記載のサッシ枠特定システム。
【請求項4】
前記サッシ枠登録部には、前記特定用形状情報に関連付けて納まり図の画像情報が登録される請求項1から3の何れかに記載のサッシ枠特定システム。
【請求項5】
前記特定用形状情報に対応する新設サッシ枠に関する新設サッシ枠情報が登録される新設サッシ枠登録部と、
前記サッシ枠判定部によって設定された前記候補サッシ枠に対応する前記納まり図の画像情報に前記新設サッシ枠情報を反映する画像情報生成部と、を更に備える請求項4に記載のサッシ枠特定システム。
【請求項6】
前記サッシ枠の画像情報は、携帯端末によって撮影されたものであり、
前記携帯端末から受信した情報に基づいて前記サッシ枠判定部によって設定された前記候補サッシ枠の情報を前記携帯端末に送信可能に構成される請求項1から5の何れかに記載のサッシ枠特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシ枠を特定するサッシ枠特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンション等のリフォームにおいて、既に設置される既設枠を取り外さずに当該既設枠の上に新設枠をかぶせるカバー工法が行われている。カバー工法では、取り付ける新設枠の形状を決めるために、窓枠に水平水準器を当てながら直尺等で既設枠の寸法の測定が行われることがある。特許文献1には、既設サッシの既設サッシ枠内に新設サッシの新設サッシ枠を取り付けて既設サッシを新設サッシに改修する際に、既設サッシ枠の開口高さに応じた新設サッシ枠の高さを採寸するサッシ改修用採寸治具について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-224468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、採寸して取得した寸法に基づいて手書きでスケッチしたものをCAD化し、当該CAD化に基づいて新設枠を決定したり、納まり図を作成してリフォーム後のイメージ確認を行ったりすることがある。しかし、現場でのスケッチが正確に行われていなければカバー工法で使用する下地材の選定ができないため、再測定を行わなければならなくなる。また、実際の現場では居住中の場合等、測定に十分な時間がとれないこともあり、経験を積んだ作業者が作業する必要があった。
【0005】
本発明は、画像情報を利用して既設枠の形状を効率的かつ正確に特定できるサッシ枠特定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、撮影したサッシ枠(例えば、後述の下枠40)の画像情報から生成された比較用形状情報(例えば、後述のキー形状50)を受け付ける受付部(例えば、後述の受付部21)と、前記サッシ枠の形状に基づく特定用形状情報(例えば、後述の既設下枠形状60)が複数種類登録されるサッシ枠登録部(例えば、後述のサッシ枠データベース22)と、前記サッシ枠登録部に登録された前記特定用形状情報と前記比較用形状情報を比較し、類似度が所定基準を上回った前記特定用形状情報から前記サッシ枠の種類を特定するサッシ枠判定部(例えば、後述のサッシ枠判定部23)と、を備えるサッシ枠特定システム(例えば、後述のサッシ枠特定システム1)に関する。
【0007】
前記サッシ枠特定システムは、前記比較用形状情報が、下枠の画像情報であり、複数種類登録される前記特定用形状情報は、下枠の形状に基づくものであることが好ましい。
【0008】
前記サッシ枠特定システムは、前記比較用形状情報が、下枠、上枠及び縦枠のうち何れか1つの枠の画像情報であり、複数種類登録される前記特定用形状情報は、前記画像情報に設定された前記枠の形状に基づくものであり、前記サッシ枠登録部には、前記特定用形状情報に設定された以外の枠の形状情報が前記特定用形状情報に関連付けて登録されることが好ましい。
【0009】
前記サッシ枠特定システムは、前記サッシ枠登録部には、前記特定用形状情報に関連付けて納まり図の画像情報が登録されることが好ましい。
【0010】
前記サッシ枠特定システムは、前記特定用形状情報に対応する新設サッシ枠に関する新設サッシ枠情報が登録される新設サッシ枠登録部(たとえば、後述の新設サッシデータベース24)と、前記サッシ枠判定部によって特定された前記サッシ枠に対応する前記納まり図の画像情報に前記新設サッシ枠情報を反映する画像情報生成部(例えば、後述の画像情報生成部25)と、を更に備えることが好ましい。
【0011】
前記サッシ枠特定システムは、前記サッシ枠の画像情報が、携帯端末(例えば、後述のスマートフォン10)によって撮影されたものであり、前記携帯端末から受信した情報に基づいて前記サッシ枠判定部によって判定された候補サッシ枠の情報を前記携帯端末に送信可能に構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のサッシ枠特定システムによれば、画像情報を利用して既設枠の形状を効率的かつ正確に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るサッシ枠特定システムの基本的構成を示す図である。
図2】本実施形態のキー形状(比較形状情報)の生成の説明図である。
図3】本実施形態のサッシ枠データベースに登録される複数種類の既設下枠形状(特定用形状情報)のリストを示す一例である。
図4】Zernike Momentによる類似度の判定処理を段階的に示す説明図である。
図5】Grid Fourierによる類似度の判定処理を段階的に示す説明図である。
図6】Line Directionによる類似度の判定処理を段階的に示す説明図である。
図7】本実施形態のスマートフォンの操作によるサッシ枠特定を説明する説明図である。
図8】本実施形態のサッシ枠特定システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るサッシ枠特定システム1の基本的構成を示す図である。図2は、本実施形態のキー形状50(比較形状情報)の生成の説明図である。まず、サッシ枠特定システム1の全体構成について説明する。
【0016】
本実施形態のサッシ枠特定システム1は、スマートフォン10と、サッシ枠特定サーバ20と、指定コンピュータ30と、を含むように構成される。
【0017】
スマートフォン10、サッシ枠特定サーバ20及び指定コンピュータ30は、ネットワーク2を介して接続されており、相互に通信可能となっている。なお、ネットワーク2の種類に特に限定はない。例えば、インターネットやLAN(Local Area Network)によりネットワーク2を実現できる。
【0018】
スマートフォン10は、撮影部としてのカメラ、表示画面及び操作部としてのタッチパネルディスプレイを備え、無線通信によりネットワーク2に接続可能に構成される携帯端末である。本実施形態のスマートフォン10は、撮影した下枠40の画像情報から所定のアルゴリズムで処理してキー形状50を生成し、サッシ枠特定サーバ20に送信する。
【0019】
サッシ枠特定サーバ20は、スマートフォン10とは物理的に離れた場所に設置されるコンピュータである。スマートフォン10から送信されるキー形状50に基づいて下枠40の特定を行う。なお、サッシ枠特定サーバ20とスマートフォン10の通信には暗号化等のセキュリティ対策が行われることが好ましい。
【0020】
次に、スマートフォン10によって生成されるキー形状50について説明する。図1の「下枠の撮影」に示すように、スマートフォン10を用いて下枠40の外側(例えば見込面側)を撮影する。この画像情報では、サッシ枠特定サーバ20で下枠40を特定できないため、下枠40の断面形状の特徴を有する画像に変換する。この画像変換の方法は、適宜の方式を採用できる。
【0021】
図2の下部に示すキー形状50が、下枠40の外側を撮影した画像情報から生成された比較形状情報である。図2の上部に示す実際の下枠40の形状と比較すると判るように、キー形状50自体が下枠40の断面形状に精密に一致する必要はなく、サッシ枠特定サーバ20が特定できる程度に断面形状の特徴が表現されていればよい。なお、キー形状50が実際の下枠40の形状に一致するように精密に再現されることを本発明から排除するわけではない。
【0022】
本実施形態では、サッシ枠特定システム1専用のアプリケーションソフトウェアをスマートフォン10に予めインストールし、該アプリケーションソフトによって下枠40を特定するためのキー形状50を生成する処理が行われる。ユーザは、スマートフォン10を操作してアプリケーションソフトを起動し、アプリケーションソフトの指示(表示)に従って下枠40の撮影を行う。スマートフォン10は、撮影された画像情報から生成されたキー形状50をサッシ枠特定サーバ20に送信する。
【0023】
次に、サッシ枠特定サーバ20の構成について説明する。図1に示すように、本実施形態のサッシ枠特定サーバ20は、受付部21と、サッシ枠データベース22と、サッシ枠判定部23と、新設サッシデータベース24と、画像情報生成部25と、を含むように構成される。
【0024】
受付部21は、ネットワーク2を介してスマートフォン10からキー形状50を受け付ける入力部である。
【0025】
サッシ枠データベース22は、既存のサッシ枠に関する情報が登録されるサッシ枠登録部である。サッシ枠データベース22には、上述のキー形状50と比較するために既設下枠形状(特定用形状情報)60がサッシ枠の種類ごとに複数記憶される。図3は、本実施形態のサッシ枠データベース22に登録される複数種類の既設下枠形状60のリストを示す一例である。既設下枠形状60は、例えば拡張子DWG.等のCAD情報でサッシ枠データベース22に記憶される。
【0026】
本実施形態のサッシ枠データベース22には、既設下枠形状60だけではなく、既設下枠形状60に対応する文字情報や上枠及び縦枠の画像情報等の関連情報66が記憶される。文字情報は、メーカー名、商品名、発売年代、図番等を示す情報である。画像情報は、既設下枠形状60に対応する上枠、縦枠、下地材、クレセント錠等の部品を示す画像やサッシ枠の納まり図を示す画像等である。本実施形態の納まり図は、サッシ枠を建物に取り付けた状態を示す画像であり、横断面や縦断面等の断面図を含むものである。なお、これらの文字情報や画像情報が記憶される場所は、サッシ枠データベース22に限られず、外部データベースであり、外部データベースから読み出す形式であってもよい。
【0027】
サッシ枠判定部23は、受付部21が受け付けたキー形状50と、サッシ枠データベース22に登録される既設下枠形状60と、を比較し、類似度が基準値を上回った特定用形状情報を候補下枠として設定する。
【0028】
本実施形態のサッシ枠判定部23は、Zernike Moment、Grid Fourier又はLine Directionの3つのフィルタ(判定方法)から1つを選ぶことができる。以下、各方法について説明する。
【0029】
図4は、Zernike Momentによる類似度の判定処理を段階的に示す説明図である。Zernike Momentは、図面重心を中心とする座標系を定義し、その座標系上の関数へ投影した値の総和を計算する方法である。
【0030】
図4(a)に示すように、並進対応を行うために画像情報における図面重心を極座標の中心に設定する。次に、図4(b)に示すように、スケール変化に対応するためにスケールの統一処理を行う。図4(c)に示すように、全体的に平均的なパターンのものや変化の激しいパターンのもの等、画像中心から同心円状に広がる関数を、関数1,関数2・・・のように複数生成する。続いて画像の回転に対応するため、図4(d)のグラフに示す処理を行う。図4(d)のグラフの横軸は「関数の種類」(関数1,関数2・・)であり、縦軸は「関数に図面を投影した画素ごとの積の総和」である。この処理により、関数に図面を投影した画素ごとの積の総和を関数の種類別に並べて特徴量とする。そして、図4(e)に示すように、特徴量ベクトル間のユークリッド距離を計算して比較し、類似度を算出する。サッシ枠判定部23は、この類似度が基準値を上回る場合、類似度が高いため当該下枠を候補として設定する。
【0031】
図5は、Grid Fourierによる類似度の判定処理を段階的に示す説明図である。Grid Fourierは、図面重心を中心とする座標系を定義し、グリッド(セル)内の画素数をカウントし、フーリエ展開することで回転不変な特徴量とする方法である。
【0032】
図5(a)に示すように、並進対応を行うために画像情報における図面重心を極座標の中心に設定する。次に、図5(b)に示すように、スケール変化に対応するためにスケールの統一処理を行う。この処理では最遠画素までの距離が等しくなるように変換する。次に、図5(c)に示すように、極座標系でセルに分割する。続いて図5(d)に示すように、各セル内の黒画素数を計算し、ヒストグラムを作成する。図5(d)のヒストグラムは、横軸が「セル番号」であり、縦軸が「黒画素数/セル内の画素数」である。そして、図5(e)に示すように、回転によるセル番号のずれを調整した後のヒストグラムを形状特徴量として比較し、類似度を計算する。サッシ枠判定部23は、この類似度が基準値を上回る場合、類似度が高いため当該下枠を候補として設定する。
【0033】
図6は、Line Directionによる類似度の判定処理を段階的に示す説明図である。Line Directionは、図面を構成する線分から向きに応じたヒストグラムを計算し、フーリエ展開することで回転不変な特徴量データを計算する方法である。
【0034】
図6(a)に示すように、画像の細線化処理を行う。次に、図6(b)に示すように各線分を抽出して並進に対応する。図6(c)に示すように、全ピクセルで線分の方向を算出し、方向のヒストグラムを生成する。図6(c)のヒストグラムは、横軸が「Direction」であり、縦軸が「Pixel Number」である。続いて図6(d)に示すように、スケール変化に対応するためにヒストグラムの合計を1に規格化し、スケールを統一する。そして、図6(e)に示すように、ヒストグラムをフーリエ変換したものを形状特徴量として比較し、類似度を計算する。サッシ枠判定部23は、この類似度が基準値を上回る場合、類似度が高いため当該下枠を候補として設定する。
【0035】
上述のように、本実施形態では3種の判定方法を選択することができる。判定方法の選択は、スマートフォン10による遠隔操作又はサッシ枠データベース22の直接操作によって行われる。例えば、図3に示すように、検索条件の設定画面からプルダウンメニューでZernike Moment、Grid Fourier、Line Directionの何れかを選択するインターフェースとすることができる。また、判定方法だけでなく、類似度等の設定も変更できるようにしてもよい。
【0036】
なお、判定方法は、3つのフィルタのうちの1つに固定されていてもよいし、別の方法で画像比較を行うようにしてもよい。
【0037】
新設サッシデータベース24には、特定したサッシ枠に取り付けられる新設サッシ枠の画像情報が登録される。新設サッシ枠の画像情報は、後述するサッシ枠判定部23による判定処理により特定された既設のサッシ枠に取り付けられるものである。
【0038】
画像情報生成部25は、既設のサッシ枠の納まり図の画像情報と、選択された新設サッシ枠の画像情報と、に基づいて新設サッシ枠が適用された状態の納まり図の画像情報65を生成するためのものである(図1参照)。なお、新設サッシ枠の選択は、既設のサッシ枠の特定後に行われる。
【0039】
次に、サッシ枠特定システム1の処理の流れについて説明する。図7は、本実施形態のスマートフォン10の操作によるサッシ枠特定を説明する説明図である。図8は、本実施形態のサッシ枠特定システム1の処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
まず、ユーザは、アプリケーションソフトウェアを起動し、当該アプリケーションソフトウェアによって示される操作手順に従って既設の下枠の撮影を行う。操作手順は、スマートフォン10の位置、角度や、撮影回数等であり、画像処理の方法に応じて設定される。下枠の画像情報が取得されると、図7(a)に示すように、アプリケーションソフトウェアは、当該画像情報を処理してキー形状50を生成し、インターネット等のネットワーク2を介してサッシ枠特定サーバ20に当該キー形状50を送信する。
【0041】
図8に示すように、サッシ枠特定サーバ20は、受付部21がスマートフォン10からキー形状50を受信すると形状検索を実行する(ステップS101、ステップS102)。形状検索では、サッシ枠データベース22に登録される下枠の中から類似度が基準値を上回る候補下枠があるか否かが判定される(ステップS103)。
【0042】
ステップS103の判定で類似度が基準値を上回った場合は候補下枠の画像情報をスマートフォン10に送信し(ステップS104)、類似度が基準値を上回るものがない又は処理の過程で明らかに異なる画像であることが判明した場合は再測定指示又はエラー結果をスマートフォン10に送信する(ステップS105)。
【0043】
図7(b)に示すように、ステップS105の処理により、スマートフォン10には候補下枠が表示され、当該候補下枠で正しいか否かをユーザに問う確認ボタンが表示される。ここで、ユーザは、スマートフォン10に表示された候補下枠が撮影した下枠と一致すると判断した場合はOK操作を行ってOK情報をサッシ枠特定サーバ20に送信する。ユーザが、候補下枠が撮影した下枠に一致しないと判断した場合はNG操作を行ってNG情報をサッシ枠特定サーバ20に送信する。
【0044】
サッシ枠特定サーバ20は、スマートフォン10からOK情報を受信すると縦枠と上枠の画像情報をスマートフォン10に送信する処理に移行する(ステップS106,ステップS107)。ステップS107の縦枠と上枠の画像情報は、候補下枠に関連付けられる関連情報66であり、候補下枠の決定に伴ってサッシ枠データベース22から読み出される。なお、ステップ106でNG情報を受信すると、別の候補下枠の画像情報を送信するステップS104の処理に移行する。このとき、送信される候補下枠は、例えば類似度が次に高かった既設下枠形状60である。
【0045】
図7(c)に示すように、ステップS107の処理により、スマートフォン10には、左右の縦枠、上枠の画像情報(関連情報66)が表示される。ここで、ユーザは、スマートフォン10に表示された左右の縦枠、上枠が現場の縦枠、上枠に一致すると判断した場合はOK操作を行ってOK情報をサッシ枠特定サーバ20に送信し、一致しないと判断した場合はNG操作を行ってNG情報をサッシ枠特定サーバ20に送信する。
【0046】
サッシ枠特定サーバ20は、スマートフォン10からOK情報を受信すると納まり図の画像情報を指定先に送信する処理に移行するする(ステップS108,ステップS109)。ステップS108でNG情報を受信すると、ステップS106と同様に、別の候補下枠の画像情報を送信するステップS104の処理に移行する。
【0047】
ステップS109の処理では、例えば、予め設定される指定先の指定コンピュータ30に納まり図の画像情報を自動的に送信する(図1参照)。あわせて、スマートフォン10にも指定先に納まり図の画像情報を送信した結果を通知してもよい。これらの処理により、スマートフォン10で撮影した画像を利用した下枠40の形状特定をスムーズかつ迅速に行うことができる。
【0048】
次に、既設のサッシ枠を特定した後の処理について説明する。なお、移行の処理は、指定コンピュータ30で行ってもよいし、スマートフォン10を用いて行ってもよいものとする。ユーザによって新設サッシ枠が選択されると、サッシ枠特定サーバ20は、選択された新設サッシ枠の画像情報を新設サッシデータベース24から取得する。
【0049】
次に、画像情報生成部25が、ステップS108で送信された納まり図の画像情報と、選択された新設サッシ枠の画像情報と、に基づいて新設サッシ枠が適用された納まり図の画像情報65を自動生成する。サッシ枠特定サーバ20は、生成した納まり図の画像情報65を指定先である指定コンピュータ30又はスマートフォン10に送信する。これにより、ユーザは、作図等の必要なく、新設サッシ枠が反映された納まり図の画像情報65を取得することができる。
【0050】
上記実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
サッシ枠特定システム1は、撮影した下枠(サッシ枠)40の画像情報から生成されたキー形状(比較用形状情報)50を受け付ける受付部21と、下枠40の形状に基づく既設下枠形状(特定用形状情報)60が複数種類登録されるサッシ枠データベース(サッシ枠登録部)22)と、サッシ枠データベース22に登録された既設下枠形状60とキー形状50を比較し、類似度が所定基準を上回った既設下枠形状60から下枠40の種類を特定するサッシ枠判定部23と、を備える。
【0051】
これにより、下枠40を建物から取り外したり、治具を用いて実際に採寸したりすることなく、下枠40の特定を速やかに行うことができる。画像情報から生成されたキー形状50を利用するので、採寸の仕方や作図のスキルによって下枠の形状が実際の形状から外れてしまい、下枠の種類が正確に把握できない事態の発生を効果的に防止できる。下枠40の特定により下地材の選定も速やかに行うことができる。特に本実施形態では、既設下枠形状60に関連付けられた関連情報の中に下地材が含まれているので、下枠40の特定とともに下地材又はその候補を速やかに決定することができる。
【0052】
また、本実施形態のサッシ枠特定システム1は、キー形状50が、下枠40の画像情報であり、複数種類登録される既設下枠形状60は下枠の形状に基づくものである。
【0053】
これにより、上枠や縦枠に比べてバリエーションが多く画像処理によって特徴点を表現しやすく下枠40が判断対象となるので、判定精度をより一層向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態のサッシ枠特定システム1は、サッシ枠データベース22には、既設下枠形状60に設定された以外の枠である上枠及び縦枠の形状情報が当該既設下枠形状60に関連付けて登録される(図7(c)参照)。
【0055】
これにより、設定された枠(下枠40)を特定することでそれ以外の枠(上枠、横枠)が自動的に決まるとともに、設定された下枠40以外の枠を参照して判定された枠が正しいか否かを判定することも可能となる。
【0056】
また、本実施形態のサッシ枠特定システム1は、サッシ枠データベース22には既設下枠形状60に関連付けて納まり図の画像情報65が登録される。
【0057】
これにより、下枠40の特定によって納まり図の画像情報を取得することができ、実際の施工を行うための作業に速やかに移行することができる。
【0058】
また、本実施形態のサッシ枠特定システム1は、既設下枠形状60に対応する新設サッシ枠に関する新設サッシ枠情報が登録される新設サッシデータベース24と、サッシ枠判定部23によって特定された下枠40に対応する納まり図の画像情報65に新設サッシ枠情報を反映する画像情報生成部25と、を更に備える。
【0059】
これにより、新設サッシ枠が反映された画像情報を利用し、施工作業を行うための図面や顧客にリフォーム提案をおこなうための資料を容易に作成することができる。
【0060】
また、本実施形態のサッシ枠特定システム1は、下枠40の画像情報が、スマートフォン(携帯端末)10によって撮影されたものであり、スマートフォン10から受信したキー形状50に基づいてサッシ枠判定部23によって判定された候補サッシ枠の情報をスマートフォン10に送信可能に構成される。
【0061】
これにより、スマートフォン10を利用して下枠40の特定を現場で行うことができ、現地調査に掛かる時間と手間を効果的に削減できる。ユーザが特別な装置を持つ必要がないのでサッシ枠特定システム1を実現するためのコストも抑制することができる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0063】
上記実施形態では、スマートフォン10の撮影対象が下枠であり、サッシ枠データベース22には既設下枠形状60が登録されているが、この構成に限定されない。上枠又は縦枠をスマートフォン10の撮影対象としてキー形状を生成し、サッシ枠データベース22に登録される上枠又は縦枠の形状を示す形状情報とキー形状を比較して上枠又は縦枠を特定するようにしてもよい。
【0064】
上記実施形態では、新設サッシ枠が反映された納まり図の画像情報を生成したが、3次元画像情報を利用してモデル図を提案図として作成するようにしてもよい。
【0065】
上記実施形態では、携帯端末としてのスマートフォン10で撮影された画像情報を用いてサッシ枠の判定を行っているが、この構成に限定されない。デジタルカメラ等の画像情報を用いて同様の判定を行ってもよい。また、ネットワーク2を介さずSDカード等のメディアを用いて受付部21に画像情報を送信する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 サッシ枠特定システム
10 スマートフォン(携帯端末)
21 受付部
22 サッシ枠データベース(サッシ枠登録部)
23 サッシ枠判定部
40 下枠(サッシ枠)
50 キー形状(比較用形状情報)
60 既設下枠形状(特定用形状情報)
65 納まり図の画像情報
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8