IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】高分子化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
C08G61/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019523519
(86)(22)【出願日】2018-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2018021334
(87)【国際公開番号】W WO2018225674
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2017112969
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真佑子
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 健
(72)【発明者】
【氏名】八文字 保孝
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/185079(WO,A1)
【文献】特開2013-127057(JP,A)
【文献】特開2009-287000(JP,A)
【文献】特開2009-263665(JP,A)
【文献】特開2015-117271(JP,A)
【文献】特開2008-260792(JP,A)
【文献】特開2002-265519(JP,A)
【文献】特開2002-241426(JP,A)
【文献】特開2011-149013(JP,A)
【文献】特開2014-001349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G61/00- 61/12
H01L51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性基を有する高分子化合物の製造方法であって、
(1)遷移金属錯体の存在下、溶媒中で、架橋性基を有する単量体を含む単量体成分を重合させることにより、架橋性基を有する第一の高分子化合物を得る工程、並びに、
(2)第一の溶媒と前記第一の高分子化合物とを含む溶液、及び、第二の溶媒を混合した後、2以上の層に分離させ、ポリスチレン換算の重量平均分子量が最も大きい高分子化合物を含む層を選別することにより、架橋性基を有する第二の高分子化合物を得る工程、
を含む、高分子化合物の製造方法;
ここで、前記第一の溶媒は工程(1)で用いた溶媒と同種の溶媒を含み、前記第一の溶媒は、芳香族炭化水素溶媒及びエーテル溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記第二の溶媒は前記第一の高分子化合物に対して貧溶媒であり、前記第二の溶媒は、アミド溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、エステル溶媒、及びニトリル溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記2以上の層の各層に含まれる溶媒は実質的に有機溶媒である、
ここで、前記単量体成分が、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物であり、且つ、
前記第一の高分子化合物及び前記第二の高分子化合物が、それぞれ、式(3)で表される構成単位と式(4)で表される構成単位とを含む高分子化合物である、
[式中、
a及びbは、それぞれ独立に、0~2の整数を表す。
Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基、2価の複素環基、又は2価の芳香族炭化水素基と2価の複素環基が結合した基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar又はArが複数存在する場合、それらは各々同一又は異なっていてもよい。
Ar及びArは、それぞれ独立に、1価の芳香族炭化水素基、又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar又はArが複数存在する場合、それらは各々同一又は異なっていてもよい。
ただし、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar又はArのうちの少なくとも一つは、置換基として架橋性基を含む基を有する。
は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は-O-S(=O)2a1を表す。Ra1は、アルキル基又はアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するX1は、同一又は異なっていてもよい。
2は、-B(OH)2、ボラン残基、ホウ酸エステル残基、又は-BF3Tを表す。Tは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子、又はセシウム原子を表す。複数存在するX2は、同一又は異なっていてもよい。
ここで、前記架橋性基を含む基が、式(5)で表される基である、
[式中、
Lは、単結合、或いは、-(CH )-、-O-、-S-、-(CO)-、-(C )-、又はこれらから選ばれる2個以上の基が結合した2価の基を表す。但し、-O-同士、-S-同士、並びに、-O-及び-S-は、互いに直接結合しない。
nは1を表す。
Yは架橋性基を表す。]
ここで、Yで表される架橋性基が、架橋性基群Aから選択される基である。
<架橋性基群A>
[式中、
これらの基はそれぞれ、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよい。
XL は、0~5の整数を表す。n XL が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
XL は、-(CH )-、-O-、-S-、-(CO)-、又はこれらから選ばれる2個以上の基が結合した2価の基を表す。但し、-O-同士、-S-同士、並びに、-O-及び-S-は、互いに直接結合しない。R XL が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
*はLとの結合部位である。]
【請求項2】
前記式(5)において、
Lが、-(CH-、-(CH-(C)-(CH-、-(CH-O-(CH-、又は-(CH-(C)-O-(CHu-であり、
mは0~20の整数を表し、pは0~10の整数を表し、qは0~10の整数を表し、rは0~10の整数を表し、sは0~10の整数を表し、tは0~10の整数を表し、uは0~10の整数を表す、
請求項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項3】
前記遷移金属錯体が、
トリアルキルホスフィン、ジアルキルモノアリールホスフィン、モノアルキルジアリールホスフィン、及びトリアリールホスフィンからなる群から選択される少なくとも1種の配位子(当該ホスフィン上のアリール基はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基(当該フェニル基は、アルキル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)、及び置換アミノ基からなる群より選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)と、
パラジウムとを含むパラジウム錯体である、
請求項1又は2に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項4】
前記架橋性基が、式(XL-1)及び式(XL-16)からなる群から選ばれる基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項5】
前記第一の溶媒が芳香族炭化水素溶媒であり、前記第二の溶媒がアルコール溶媒である、請求項1~のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項6】
前記第一の溶媒及び架橋性基を有する第一の高分子化合物を含む溶液100重量部に対して、前記第二の溶媒20~300重量部を使用する、請求項1~のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項7】
前記工程(2)の前に、前記工程(1)で得られた前記第一の高分子化合物を吸着精製する工程を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子等の材料として、例えば、高分子化合物が用いられている。当該有機エレクトロルミネッセンス素子の特性を向上させるために、当該高分子化合物は、低分子量の化合物の含有量が少なく、且つ、多分散度(Mw/Mn)が小さいことが望ましい。
【0003】
高分子化合物は、例えば、遷移金属錯体の存在下、芳香族ジボロン酸と芳香族ジハロゲン化物とを鈴木カップリング反応させることにより合成することができる。例えば、非特許文献1には、フルオレンのジボロン酸とトリアリールアミンのジブロモ体とを、鈴木カップリング反応させて合成する方法が報告されている。しかし、この方法では、多分散度が十分に小さい高分子化合物を得ることが困難であった。
【0004】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子等の製造において、湿式成膜法を用いて有機薄膜の積層化を行う場合、有機薄膜の形成に架橋性基を有する高分子化合物を用いることが報告されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-287000号公報
【文献】特開2009-263665号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】RSC Advances, 2015, 5, p101826-101833
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低分子量の化合物の含有量が少なく、且つ、多分散度が十分に小さい、架橋性基を有する高分子化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1] 架橋性基を有する高分子化合物の製造方法であって、
(1)遷移金属錯体の存在下、溶媒中で、単量体成分を重合させることにより、架橋性基を有する第一の高分子化合物を得る工程、ここで、前記単量体成分は架橋性基を有する単量体を含む、並びに、
(2)第一の溶媒と前記第一の高分子化合物とを含む溶液、及び、第二の溶媒を混合した後、2以上の層に分離させ、ポリスチレン換算の重量平均分子量が最も大きい高分子化合物を含む層を選別することにより、架橋性基を有する第二の高分子化合物を得る工程、ここで、前記第一の溶媒は工程(1)で用いた溶媒と同種の溶媒を含み、前記第二の溶媒は前記第一の高分子化合物に対して貧溶媒であり、前記2以上の層の各層に含まれる溶媒は実質的に有機溶媒である、
を含む、高分子化合物の製造方法。
[2] 前記単量体成分が、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物であり、且つ、
前記第一の高分子化合物及び前記第二の高分子化合物が、それぞれ、式(3)で表される構成単位と式(4)で表される構成単位とを含む高分子化合物である、[1]に記載の高分子化合物の製造方法。
[式中、
a及びbは、それぞれ独立に、0~2の整数を表す。
Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基、2価の複素環基、又は2価の芳香族炭化水素基と2価の複素環基が結合した基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar又はArが複数存在する場合、それらは各々同一又は異なっていてもよい。
Ar及びArは、それぞれ独立に、1価の芳香族炭化水素基、又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar又はArが複数存在する場合、それらは各々同一又は異なっていてもよい。
ただし、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar又はArのうち少なくとも一つは、置換基として架橋性基を含む基を有する。
は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は-O-S(=O)2a1を表す。Ra1は、アルキル基又はアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するX1は、同一又は異なっていてもよい。
2は、-B(OH)2、ボラン残基、ホウ酸エステル残基、又は-BF3Tを表す。Tは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子、又はセシウム原子を表す。複数存在するX2は、同一又は異なっていてもよい。]
[3] 前記架橋性基を含む基が、式(5)で表される基である、[2]に記載の高分子化合物の製造方法。
[式中、
Lは、それぞれ独立に、単結合、或いは、-(CH)-、-O-、-S-、-(CO)-、-(C)-、又はこれらから選ばれる2個以上の基が結合した2価の基を表す。但し、-O-同士、並びに、-S-同士、-O-及び-S-は、互いに直接結合しない。
nは1~5の整数を表す。
Yは架橋性基を表す。Yが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
[4] 前記式(5)において、
Lが、-(CH-、-(CH-(C)-(CH-、-(CH-O-(CH-、又は-(CH-(C)-O-(CHu-であり、
mは0~20の整数を表し、pは0~10の整数を表し、qは0~10の整数を表し、rは0~10の整数を表し、sは0~10の整数を表し、tは0~10の整数を表し、uは0~10の 整数を表す、
[3]に記載の高分子化合物の製造方法。
[5] 前記式(5)において、
Yで表される架橋性基が、架橋性基群Aから選択される基である、[3]又は[4]に記載の高分子化合物の製造方法。
<架橋性基群A>
[式中、
これらの基はそれぞれ、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよい。
XLは、0~5の整数を表す。nXLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
XLは、-(CH) -、-O-、-S-、-(CO)-、又はこれらから選ばれる2個以上の基が結合した2価の基を表す。但し、-O-同士、-S-同士、並びに、-O-及び-S-は、互いに直接結合しない。RXLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
*はLとの結合部位である。]
[6] 前記遷移金属錯体が、
トリアルキルホスフィン、ジアルキルモノアリールホスフィン、モノアルキルジアリールホスフィン、及びトリアリールホスフィンからなる群から選択される少なくとも1種の配位子(当該ホスフィン上のアリール基はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基(当該フェニル基は、アルキル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)、及び置換アミノ基からなる群より選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)と、
パラジウムとを含むパラジウム錯体である、
[1]~[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[7] 前記架橋性基が、式(XL-1)及び式(XL-16)からなる群から選ばれる基である、[5]又は[6]に記載の高分子化合物の製造方法。
[8] 前記第一の溶媒が芳香族炭化水素溶媒であり、前記第二の溶媒がアルコール溶媒である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
[9] 前記第一の溶媒及び架橋性基を有する第一の高分子化合物を含む溶液100重量部に対して、前記第二の溶媒20~300重量部を使用する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
[10] 前記工程(2)の前に、前記工程(1)で得られた前記第一の高分子化合物を吸着精製する工程を含む、[1]~[9]のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、低分子量の化合物の含有量が少なく、且つ、多分散度が十分に小さい、架橋性基を有する高分子化合物を製造することができる。また、本発明の方法によれば、重合により得られる架橋性基を有する高分子化合物の多分散度を飛躍的に小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.共通する用語の説明
本明細書及び特許請求の範囲で使用する用語を以下に説明する。
【0011】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。
【0012】
「アルキル基」とは、直鎖、分岐及び環状のアルキル基を意味する。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、通常1~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。分岐及び環状のアルキル基の炭素原子数は、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。当該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-n-プロピルヘプチル基、n-デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-n-ヘキシル-デシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
【0013】
「アルキル基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基及びアルコキシ基からなる群から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基等が挙げられる。「アルキル基」はこれらの置換基から選択される1~20個の置換基を有していてもよい。当該置換アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-n-ヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基等が挙げられる。
【0014】
「アルキレン基」とは、前記「アルキル基」から水素原子1個を除いた2価の基を意味する。当該アルキレン基としては、例えば、ジメチレン基、トリメチレン基等が挙げられる。「アルキレン基」は置換基を有していてもよく、当該アルキレン基は、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基及びアルコキシ基からなる群から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基等が挙げられる。「アルキレン基」はこれらの置換基から選択される1~20個の置換基を有していてもよい。
【0015】
「アリール基」とは、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた1価の基を意味する。アリール基の炭素原子数は、通常6~60であり、好ましくは6~20であり、より好ましくは6~10である。当該アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基等が挙げられる。
【0016】
「アリール基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、アルキル基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基及びアルコキシ基からなる群から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基等が挙げられる。「アリール基」はこれらの置換基から選択される1~10個の置換基を有していてもよい。
当該置換アリール基としては、例えば、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基等が挙げられる。
【0017】
「アルコキシ基」とは、直鎖、分岐及び環状のアルコキシ基を意味する。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、通常1~40であり、好ましくは4~10である。分岐及び環状のアルコキシ基の炭素原子数は、通常3~40であり、好ましくは4~10である。当該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。
【0018】
「アルコキシ基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基及びアルコキシ基からなる群から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基等が挙げられる。「アルコキシ基」はこれらの置換基から選択される1~10個の置換基を有していてもよい。
【0019】
「アリールオキシ基」とは、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を酸素原子に置き換えた1価の基を意味する。アリールオキシ基の炭素原子数は、通常6~60であり、好ましくは7~48である。当該アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基等が挙げられる。
【0020】
「アリールオキシ基」における「アリール」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、アルキル基、(当該アリール基は、アルキル基及びアルコキシ基からなる群から選ばれる1~3個の基の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基等が挙げられる。当該「アリール」はこれらの置換基から選択される1~10個の置換基を有していてもよい。当該置換アリールオキシ基としては、例えば、2-フェニルフェノキシ基、3-フェニルフェノキシ基、4-フェニルフェノキシ基等が挙げられる。
【0021】
「置換アミノ基」は、2つの置換基を有するアミノ基を意味する。当該置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基及びアルキレン基からなる群より選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基等が挙げられる。当該置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ジ(モノ又はジアルキルアリール)アミノ基が挙げられ、具体的には、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基等が挙げられる。
【0022】
「1価の芳香族炭化水素基」とは、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた1価の基を意味する。芳香族炭化水素の炭素原子数は、通常6~60であり、好ましくは6~20であり、より好ましくは6~10である。当該1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基等が挙げられる。
【0023】
「1価の芳香族炭化水素基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、アルキル基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基及びアルコキシ基からなる群から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、アルキレン基(ジメチレン基、トリメチレン基等)等が挙げられる。「1価の芳香族炭化水素基」はこれらの置換基から選択される1~10個の置換基を有していてもよい。当該置換された1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、ベンゾシクロブテニル基等が挙げられる。
【0024】
「2価の芳香族炭化水素基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた2価の基、及び当該2価の基からなる群から選ばれる複数個(例えば、2~5個)が結合した2価の基を意味する。2価の芳香族炭化水素基の炭素原子数は、通常、6~60であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。当該2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ナフタセンジイル基、フルオレンジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、クリセンジイル基等が挙げられる。
【0025】
「2価の芳香族炭化水素基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、アルキル基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基及びアルキルフェニル基からなる群から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、アルキレン基(ジメチレン基、トリメチレン基等)等が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基はこれらの置換基から選択される1~10個の置換基を有していてもよい。当該置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、式(A-1)~式(A-20)で表される基が挙げられる。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
[式中、R及びRaは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基及びアルキルフェニル基からなる群から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又は置換アミノ基を表す。複数存在するR及びRaは、各々、同一でも異なっていてもよい。隣接するRa同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0030】
隣接するRa同士が互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成する場合、当該2個のRa同士が互いに結合した基としては、例えば、アルキレン基、2,2’-ビフェニレン基(当該2,2’-ビフェニレン基は、1~5個のアルキル基を有していてもよい)等が挙げられる。
【0031】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表し、特に、pは1又は2である。)とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いたp価の基を意味する。p価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いたp価の基である「p価の芳香族複素環基」が好ましい。
【0032】
「芳香族複素環式化合物」としては、例えば、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ジベンゾシロール、ジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物、;フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環されている化合物;並びにそれらの化合物が複数結合した化合物のいずれをも意味する。
【0033】
「p価の複素環基」の炭素原子数は、通常、2~60であり、好ましくは3~20である。
【0034】
「p価の複素環基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、アルキル基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基及びアルキルフェニル基からなる群から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、アルキレン基(ジメチレン基、トリメチレン基等)等が挙げられる。「p価の複素環基」はこれらの置換基から選択される1~10個の置換基を有していてもよい。
【0035】
「1価の複素環基」としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、トリアジニル基等が挙げられる。
【0036】
「1価の複素環基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、アルキル基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基及びアルキルフェニル基からなる群から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、アルキレン基(ジメチレン基、トリメチレン基等)等が挙げられる。1価の複素環基は、これらの置換基から選択される1~5個の置換基を有していてもよい。
【0037】
「2価の複素環基」としては、例えば、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジン、ジヒドロアクリジン、フラン、チオフェン、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール等の芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基、及び当該2価の基からなる群から選ばれる複数(例えば、2~4個)が結合した2価の基が挙げられる。
【0038】
「2価の複素環基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、アルキル基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基及びアルキルフェニル基からなる群から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、アルキレン基(ジメチレン基、トリメチレン基等)等が挙げられる。2価の複素環基は、これらの置換基から選択される1~5個の置換基を有していてもよい。当該置換基を有していてもよい2価の複素環基として好ましくは、式(A-21)~式(A-52)で表される基である。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
[式中、R及びRaは、前記と同じ意味を表す。R’は、アルキル基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基及びアルキルフェニル基からなる群から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)、又は1価の複素環基を表す。R’が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0045】
「2価の芳香族炭化水素基と2価の複素環基とが結合した基」としては、上述した2価の芳香族炭化水素基の1個又は2個以上と、上述した2価の複素環基の1個又は2個以上とが任意に結合した2価の基を意味する。2価の芳香族炭化水素基及び2価の複素環基としては、上述したものが挙げられる。
【0046】
当該「2価の芳香族炭化水素基と2価の複素環基とが結合した基」は置換基を有していてもよく、その部分構造である2価の芳香族炭化水素基及び/又は2価の複素環基の一部又は全部には、上述した、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基及びアルキルフェニル基からなる群から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、及びアルキレン基から選択される1~10個の置換基を有していてもよく、また他の部分構造である2価の複素環基上には、上述した、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基(当該アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基及びアルキルフェニル基からなる群から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、及びアルキレン基から選択される1~5個の置換基を有していてもよい。
【0047】
2.高分子化合物の製造方法
次に、本実施形態の高分子化合物の製造方法について説明する。
本発明の架橋性基を有する高分子化合物の製造方法は、
(1)遷移金属錯体の存在下、溶媒中で、単量体成分を重合させることにより、架橋性基を有する第一の高分子化合物を得る工程、ここで、前記単量体成分は架橋性基を有する単量体を含む、並びに、(2)第一の溶媒と前記第一の高分子化合物とを含む溶液、及び、第二の溶媒を混合した後、2以上の層に分離させ、ポリスチレン換算の重量平均分子量が最も大きい高分子化合物を含む層を選別することにより、架橋性基を有する第二の高分子化合物を得る工程、ここで、前記第一の溶媒は工程(1)で用いた溶媒と同種の溶媒を含み、前記第二の溶媒は前記第一の高分子化合物に対して貧溶媒であり、前記2以上の層の各層に含まれる溶媒は実質的に有機溶媒である、を含むことを特徴とする。
【0048】
2.1 工程(1)
工程(1)は、遷移金属錯体の存在下、溶媒中で、架橋性基を有する単量体を含む単量体成分を重合させて、架橋性基を有する第一の高分子化合物を得る工程である。
【0049】
工程(1)では、不活性ガス置換により反応容器内の酸素濃度を低減させた後、架橋性基を有する単量体を含む単量体成分を重合することが好ましい。重合反応開始後、必要に応じて、反応系内に、遷移金属錯体、溶媒、及び架橋性基を有する単量体を含む単量体成分からなる群から選ばれる少なくとも一種を更に添加してもよい。
【0050】
工程(1)では、反応を促進するために、必要に応じて、塩基及び相関移動触媒を使用してもよい。
【0051】
<遷移金属錯体>
遷移金属錯体は、架橋性基を有する単量体を含む単量体成分を重合(カップリング反応)するための触媒として用いられる。具体的には、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物を互いに重合する触媒として用いられる。遷移金属錯体としては、第10族遷移金属錯体が好ましく、パラジウム錯体がより好ましい。前記第10族遷移金属錯体としては、0価第10族遷移金属錯体又は2価第10族遷移金属錯体が好ましく、2価第10族遷移金属錯体がより好ましい。前記パラジウム錯体としては、均一系パラジウム錯体であっても不均一系パラジウム錯体であってもよく、好ましくは、均一系パラジウム錯体である。
【0052】
遷移金属錯体が有する配位子としては、遷移金属(特に、パラジウム)に配位し得るものであれば特に限定はない。配位子として、例えば、窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子、炭素-炭素不飽和結合、カルベン、一酸化炭素、ハロゲン原子等の原子又は原子団を有する配位子が挙げられ、単座配位子又は多座配位子(二座配位子、三座配位子等)の何れであってもよい。このうち、ホスフィン配位子が好ましく、トリアルキルホスフィン配位子、ジアルキルモノアリールホスフィン配位子、モノアルキルジアリールホスフィン配位子、トリアリールホスフィン配位子がより好ましく、ジアルキルアリールホスフィン配位子、トリアリールホスフィン配位子がさらに好ましい。当該ホスフィン配位子上のアリール基は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基(当該フェニル基は、アルキル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)、及び置換アミノ基からなる群より選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい。
【0053】
遷移金属錯体としてはパラジウム錯体が好ましく、具体例として、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス[トリス(2-メチルフェニル)ホスフィン]パラジウム、ジクロロビス[トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン]パラジウム、ジクロロビス[ジシクロペンチル(2-メチルフェニル)ホスフィン]パラジウム、ジクロロビス[ジシクロペンチル(2、6-ジメチルフェニル)ホスフィン]パラジウム、ジクロロビス[ジシクロペンチル(2-メトキシフェニル)ホスフィン]パラジウム、ジクロロビス[ジシクロペンチル(2、6-ジメトキシフェニル)ホスフィン]パラジウム、ジクロロビス[ジ-tert-ブチル(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン]パラジウム、ジクロロビス[ジ-tert-ブチル(3、5-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィン]パラジウム、パラジウムアセテート、ジクロロビス(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル)パラジウム、ジクロロビス(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル)パラジウム、ジクロロビス(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル)パラジウム、ジクロロビス(1,1’-ジフェニルホスフィノフェロセン)パラジウム、ジクロロビス[ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]パラジウム、[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]パラジウム、ジクロロ[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム、ジクロロ[1,3-ビス(2,6-ジ-3-ペンチルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム等が挙げられる。
【0054】
遷移金属錯体は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0055】
さらに、これらの遷移金属錯体に対して、トリフェニルホスフィン、トリ(tert-ブチルホスフィン)、トリシクロヘキシルホスフィン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン及びビピリジル等の当該錯体が有する配位子とは異なる配位子を共存させて、反応系内で新たな遷移金属(例えば、パラジウム)錯体を形成することもできる。
【0056】
<溶媒>
工程(1)で用いる溶媒は、生成する架橋性基を有する第一の高分子化合物を溶解し得るもの、即ち、第一の高分子化合物に対する良溶媒であれば特に限定はない。
【0057】
当該溶媒(第一の高分子化合物に対する良溶媒)は、第一の高分子化合物の特性に応じて、種々の溶媒の中から選択することができる。具体的には、第一の高分子化合物の溶解度(20℃)が1g/100g以上となる溶媒として定義することができる。
【0058】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド溶媒;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;及びクロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル溶媒等が挙げられる。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよく、さらに水と併用してもよい。
【0059】
これらのうち、溶媒は、芳香族炭化水素溶媒及びエーテル溶媒が好ましく、芳香族炭化水素溶媒がより好ましい。
芳香族炭化水素溶媒の炭素数は、好ましくは6~12であり、より好ましくは7~9である。芳香族炭化水素溶媒としては、好ましくはトルエン、キシレン及びメシチレンである。
エーテル溶媒は、直鎖状、分岐状及び環状のエーテル溶媒のいずれであってもよいが、好ましくは環状のエーテル溶媒である。エーテル溶媒の炭素数は、好ましくは4~7である。エーテル溶媒としては、好ましくはテトラヒドロフランである。
【0060】
溶媒の使用量は、原料の単量体成分の合計量1モルに対して、通常100~100000gであり、好ましくは500~20000gである。
【0061】
<塩基>
塩基としては、工程(1)のカップリング反応(重合反応)を促進するものであれば特に限定はない。塩基は、無機塩基及び有機塩基のいずれでもよく、好ましくは有機塩基である。塩基は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0062】
無機塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩が挙げられる。
【0063】
有機塩基としては、例えば、水酸化テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウムカーボネート、テトラアルキルアンモニウムジカーボネート、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック-7-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジメチルアミノピリジン、ピリジン、トリアルキルアミン、及びテトラアルキルアンモニウムフルオライド等が挙げられる。好ましくは、水酸化テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウムカーボネート、テトラアルキルアンモニウムジカーボネート、テトラアルキルアンモニウムフルオライドであり、より好ましくは、水酸化テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウムカーボネート、テトラアルキルアンモニウムジカーボネートであり、更に好ましくは水酸化テトラアルキルアンモニウムである。
【0064】
水酸化テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化フェニルトリメチルアンモニウム、(C5114NOH、(C1633)(CH33NOH、(C1633)(CH33NOH、(C8173(CH3)NOH、(C8172(C1021)(CH3)NOH、(C817)(C10212(CH3)NOH、(C10213(CH3)NOH、(C8174NOH、水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム等が挙げられる。
【0065】
テトラアルキルアンモニウムカーボネートとしては、例えば、炭酸テトラメチルアンモニウム、炭酸テトラエチルアンモニウム、炭酸テトラプロピルアンモニウム、炭酸ベンジルトリメチルアンモニウム、炭酸テトラブチルアンモニウム、水酸化フェニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0066】
テトラアルキルアンモニウムジカーボネートとしては、例えば、重炭酸テトラメチルアンモニウム、重炭酸テトラエチルアンモニウム、重炭酸テトラプロピルアンモニウム、重炭酸ベンジルトリメチルアンモニウム、重炭酸テトラブチルアンモニウム、重炭酸フェニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0067】
塩基の使用量は、原料の単量体成分の合計量1モルに対して、通常、0.5モル~100モルであり、好ましくは0.5モル~75モルであり、より好ましくは0.5モル~50モルである。
【0068】
<相間移動触媒>
相間移動触媒としては、例えば、アンモニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物及び大環状ポリエーテル等が挙げられ、好ましくは、アンモニウム塩化合物である。相間移動触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0069】
アンモニウム塩化合物としては、例えば、弗化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、沃化テトラブチルアンモニウム、弗化テトラペンチルアンモニウム、塩化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、沃化テトラペンチルアンモニウム、(C1633)(CH33NCl、(C8173(CH3)NCl、(C8172(C1021)(CH3)NCl、(C817)(C10212(CH3)NCl、(C10213(CH3)NCl、(C8174NBr、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、及び、塩化セチルピリジニウム等が挙げられ、好ましくは、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウムである。
【0070】
相間移動触媒の使用量は、原料の単量体成分の合計量1モルに対して、通常、0.001モル~50モルであり、好ましくは0.005モル~10モルであり、より好ましくは0.01モル~1モルである。
【0071】
<工程(1)の反応条件>
工程(1)では、反応容器内を不活性ガス雰囲気とし酸素濃度を低減させた後、架橋性基を有する単量体を含む単量体成分を重合することが好ましい。
【0072】
反応時の酸素濃度は、0.5体積%以下であることが好ましく、0.2体積%以下であることがより好ましく、0.05体積%以下であることが更に好ましい。
【0073】
反応温度は、通常、-100℃~200℃であり、好ましくは0℃~150℃であり、より好ましくは50℃~100℃である。
【0074】
反応時間は、通常、1時間~96時間であり、好ましくは2時間~48時間である。反応圧力は、通常大気圧である。
【0075】
重合反応において、反応系を撹拌することが好ましく、その撹拌動力は、通常、0.001kW/m3~10kW/m3であり、好ましくは0.01kW/m3~2kW/m3である。
【0076】
<単量体成分>
工程(1)の反応に用いられる原料の「架橋性基を有する単量体を含む単量体成分」とは、架橋性基を有する単量体を含み、さらに必要に応じて架橋性基を含まない他の単量体を含む1又は2以上の単量体を意味する。
【0077】
この「架橋性基を有する単量体を含む単量体成分」はいずれも、分子内に重合(カップリング)可能な反応性基を2個有していることが好ましい。当該反応性基は、例えば、式(1)及び式(2)で表される化合物における、X及びXが挙げられる。これらの反応性基は、鈴木カップリング反応に用いられる典型的な反応性基である。
【0078】
「架橋性基」とは、上記「架橋性基を有する単量体を含む単量体成分」を重合して得られる高分子化合物を、さらに熱、紫外線等で架橋することができる基を意味する。
【0079】
「架橋性基を有する単量体を含む単量体成分」としては、例えば、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物が挙げられる。式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物は、それぞれ、1種又は2種以上(特に、2~5種)の化合物を包含していてもよい。
[式中、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、X、X、a及びbは前記に同じ。]
【0080】
Ar、Ar、Ar、及びArとしては、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基と2価の複素環基が結合した基が好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0081】
Ar、Ar、Ar、及びArで表される2価の芳香族炭化水素基は、好ましくは式(A-1)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-9)~式(A-11)又は式(A-19)で表される基であり、より好ましくは式(A-1)又は式(A-9)で表される基であり、さらに好ましくは式(A-9)で表される基である。
【0082】
Ar、Ar、Ar、及びArで表される2価の複素環基は、好ましくは式(A-21)、式(A-22)、式(A-24)又は式(A-27)~式(A-46)で表される基であり、より好ましくは式(A-21)、式(A-22)又は式(A-24)で表される基である。
【0083】
Ar、Ar、Ar、及びArで表される2価の芳香族炭化水素基と2価の複素環基が結合した基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられ、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0084】
【0085】
Ar及びArとしては、それぞれ独立に、1価の芳香族炭化水素基が好ましく、当該基は置換基を有していてもよい。
【0086】
a及びbは、それぞれ独立に、0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
【0087】
式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物のうちの少なくとも1種の化合物は、a又はbが1又は2であることが好ましい。
【0088】
は、臭素原子、ヨウ素原子、又は-O-S(=O)2a1(Ra1は前記に同じ)が好ましく、臭素原子がより好ましい。
【0089】
-O-S(=O)2a1で表される基としては、例えば、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0090】
2で表されるボラン残基としては、例えば、式(G-1)で表される基が挙げられる。
【0091】
【0092】
2で表されるホウ酸エステル残基としては、例えば、式(G-2)~式(G-11)で表される基が挙げられ、好ましくは、式(G-4)又は式(G-5)で表される基である。
【0093】
【0094】
2としては、ホウ酸エステル残基が好ましい。
【0095】
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar又はArのうち少なくとも一つは、置換基として、架橋性基を含む基を有している。上記Ar~Arのうち架橋性基を含む基を有するものは、通常1~5個であり、好ましくは1~3個である。
【0096】
架橋性基を含む基としては、例えば、式(5)で表される基が挙げられる。
[式中、Lは、それぞれ独立に、単結合、或いは、-(CH)-、-O-、-S-、-(CO)-、-(C)-、又はこれらから選ばれる2個以上の基が結合した2価の基を表す。但し、-O-同士、-S-同士、-O-及び-S-は、互いに直接結合しない。Yは架橋性基を表す。nは1~5の整数を表す。]
【0097】
Lとして、例えば、-(CH-、-(CH-(C)-(CH-、-(CH-O-(CH-、-(CH-(C)-O-(CHu-等が挙げられる。ここで、mは0~20の整数を表し、pは0~10の整数を表し、qは0~10の整数を表し、rは0~10の整数を表し、sは0~10の整数を表し、tは0~10の整数を表し、uは0~10の整数を表す。
【0098】
Lとしては、-(CH-(mが0~10の整数)、-(CH-(C)-(CH-(pが0~5の整数、qが0~10の整数)、-(CH-O-(CH-(rが0~5の整数、sが0~10の整数)が好ましい。
【0099】
nは、1~2の整数が好ましく、1がより好ましい。
【0100】
Yで表される架橋性基は、高分子化合物を架橋し得る基であれば特に限定はない。具体的には、架橋性基群Aから選択される基であることが好ましい。
<架橋性基群A>
(式中、これらの基はそれぞれ、アルキル基及びアリール基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。RXLは、-(CH) -、-O-、-S-、-(CO)-、又はこれらから選ばれる2個以上の基が結合した2価の基を表す。但し、-O-同士、-S-同士、-O-及び-S-は、互いに直接結合しない。nXLは、0~5の整数を表す。RXLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、nXLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。*はLとの結合部位である。)
【0101】
架橋性基群Aの中では、式(XL-1)、式(XL-7)~式(XL-16)、式(XL-18)、式(XL-19)、式(XL-22)、及び式(XL-23)で表される基が好ましく、式(XL-1)、式(XL-10)、式(XL-12)、式(XL-16)、式(XL-18)、及び式(XL-19)で表される基がより好ましく、式(XL-1)、式(XL-16)、及び式(XL-19)で表される基がさらに好ましく、式(XL-1)及び式(XL-16)で表される基が特に好ましい。
【0102】
架橋性基を有する単量体の具体例として、下記の式(2-1)~式(2-31)及び式(2’-1)~式(2’-9)で示される構造を有する化合物が挙げられ、好ましくは、下記の式(2-1)~式(2-30)及び式(2’-1)~式(2’-9)で示される構造を有する化合物である。これらは置換基を有していてもよい。これらの構造は、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物から、それぞれ反応性基(X及びX)を除いた2価の基として表している。

【0103】
架橋性基を有しないその他の単量体の具体例として、下記の式(1-11)~式(1-46)及び式(X1-1)~式(X1-16)で示される構造を有する化合物が挙げられる。これらは置換基を有していてもよい。これらの構造は、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物から、それぞれ反応性基(X及びX)を除いた2価の基として表している。
【0104】
原料の全単量体成分中の架橋性基を有する単量体の割合は、全単量体成分100モルに対し、好ましくは1~90モルであり、より好ましくは5~50モルであり、更に好ましくは8~25モルである。
【0105】
原料の全単量体成分中の架橋性基の割合は、全単量体成分100モルに対し、通常1~180モルであり、好ましくは5~100モルであり、より好ましくは8~50モルである。
【0106】
<第一の高分子化合物>
第一の高分子化合物は、架橋性基を有する単量体のみを重合した化合物、又は架橋性基を有する単量体とその他の単量体とを重合した化合物のいずれをも包含する。そのうち、架橋性基を有する単量体とその他の単量体とを重合した化合物が好ましい。
【0107】
具体的には、例えば、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物を重合(例えば、鈴木カップリング反応)して得られる、式(3)で表される構成単位と式(4)で表される構成単位とを含有する高分子化合物が挙げられる。
[式中、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、X、X、a及びbは前記に同じ。]
【0108】
第一の高分子化合物には、例えば、式(3)で表される構成単位を1種又は2種以上含み、また、式(4)で表される構成単位を1種又は2種以上含む。
【0109】
工程(1)で得られる第一の高分子化合物は、重合(例えば、鈴木カップリング反応)条件に依存して、一般に、低分子量の重合体を含むことが多く、その多分散度も大きくなる傾向にある。例えば、第一の高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常、3×104~3×105であり、好ましくは3×104~2×105であり、その多分散度は、通常、3~100であり、好ましくは3~15となる。
【0110】
なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び多分散度(Mw/Mn)は、実施例に記載される分子量分析に従って測定及び算出することができる。
【0111】
2.2 工程(2)
工程(2)は、第一の溶媒及び前記第一の高分子化合物を含む溶液に、前記第一の高分子化合物に対して貧溶媒である第二の溶媒を添加した後、2以上の層に分離させ、ポリスチレン換算の重量平均分子量が最も大きい高分子化合物を含む層を選別することにより、架橋性基を有する第二の高分子化合物を得る工程である。
【0112】
ここで、前記第一の溶媒は工程(1)で用いた溶媒と同種の溶媒を含み、且つ、前記2以上の層の各層に含まれる溶媒は実質的に有機溶媒であることを特徴とする。
【0113】
<第一の溶媒>
第一の溶媒は、工程(1)で用いた溶媒と同種の溶媒を含み、当該溶媒は、第一の高分子化合物を溶解し得る溶媒(良溶媒)であることが好ましい。第一の溶媒は工程(1)で用いた溶媒の中から、第一の高分子化合物に対して良溶媒となるものを選択して使用することができる。第一の溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよく、また、水を含有していてもよい。これらのうち、芳香族炭化水素溶媒及びエーテル溶媒が好ましく、芳香族炭化水素溶媒がより好ましい。
【0114】
芳香族炭化水素溶媒の炭素数は、好ましくは6~12であり、より好ましくは7~9である。芳香族炭化水素溶媒としては、好ましくはトルエン、キシレン及びメシチレンである。
【0115】
エーテル溶媒は、直鎖状、分岐状及び環状のエーテル溶媒のいずれであってもよいが、好ましくは環状のエーテル溶媒である。エーテル溶媒の炭素数は、好ましくは4~7である。エーテル溶媒としては、好ましくはテトラヒドロフランである。
【0116】
より好ましい態様として、工程(1)で用いた溶媒をそのまま工程(2)の第一の溶媒として使用する態様が挙げられる。これにより、工程(1)の後、溶媒を留去して第一の高分子化合物を取り出すことなく、そのまま工程(2)に供することができるため操作が簡便となる。特に、大量スケールで実施する場合には、極めて効率的な方法となる。
【0117】
第一の溶媒は、実質的に有機溶媒であることが好ましく、例えば、第一の溶媒中、有機溶媒が、例えば、80重量%以上であり、さらに90重量%以上であることが好ましく、特に100重量%であることが好ましい。
【0118】
工程(2)に供される第一の溶媒及び第一の高分子化合物を含む溶液中の、第一の溶媒の使用量は、第一の高分子化合物の合計量1重量部に対して、通常、10~1000重量部であり、好ましくは50~300重量部である。
【0119】
工程(2)に供される第一の溶媒及び第一の高分子化合物を含む溶液は、吸着精製されていることが好ましい。用いる吸着剤としては、例えば、アルミナ、シリカゲル等が挙げられる。具体的には、第一の高分子化合物が吸着剤で処理されていることにより不純物が除去され、工程(2)における分画操作(層分離)を円滑に行うことができる。
【0120】
<第二の溶媒>
第二の溶媒は、第一の高分子化合物に対して貧溶媒である。
【0121】
第二の溶媒は、第一の高分子化合物の特性に応じて、種々の溶媒の中から選択することができる。具体的には、第一の高分子化合物の溶解度(20℃)が1g/100g未満の溶媒と定義することができる。また、第二の溶媒は、工程(1)で得られた第一の高分子化合物に含まれる重合度が小さい低分子量の化合物を溶解し得るものであることが好ましい。
【0122】
第二の溶媒は、第一の高分子化合物に対して貧溶媒となるものを選択して使用することができる。第二の溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよく、また、水を含有していてもよい。
【0123】
第二の溶媒としては、例えば、アミド溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、エステル溶媒、及びニトリル溶媒が挙げられ、アルコール溶媒が好ましい。アミド溶媒として、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。アルコール溶媒として、炭素数が1~6のアルコール溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノールがより好ましい。ケトン溶媒として、炭素数が3~6のケトン溶媒が好ましく、アセトン、メチルエチルケトンがより好ましい。エステル溶媒として、炭素数が3~6のエステル溶媒が好ましく、酢酸メチル、酢酸エチルがより好ましい。中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチルが好ましく、メタノールがより好ましい。
【0124】
第二の溶媒は、実質的に有機溶媒であることが好ましく、例えば、第二の溶媒中、有機溶媒が、例えば、80重量%以上、さらに90重量%以上であることが好ましく、特に100重量%であることが好ましい。
【0125】
<工程(2)の操作手順>
工程(2)は、第一の溶媒及び第一の高分子化合物を含む溶液と、第二の溶媒とを混合した後、撹拌し、静置して2以上の層(液層)に分離させ、重量平均分子量が最も大きい高分子化合物を含む層を選別する。これにより、より大きい重量平均分子量を有し、且つ、多分散度が小さい架橋性基を有する第二の高分子化合物を取得することができる。
【0126】
第二の溶媒の使用量は、第一の溶媒及び架橋性基を有する第一の高分子化合物を含む溶液100重量部に対し、5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましく、1000重量部以下が好ましく、800重量部以下がより好ましく、500重量部以下がさらに好ましく、300重量部以下が特に好ましい。
【0127】
第二の溶媒を添加する時の溶液の温度は、-30℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましい。また、60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。
【0128】
第二の溶媒を添加する時は撹拌することが好ましく、その撹拌動力は、通常、0.001kW/m3~10kW/m3であり、好ましくは0.01kW/m3~2kW/m3であり、より好ましくは0.1kW/m3~1kW/m3である。
【0129】
2以上の層に分離させるための静置時間は、通常、10分以上であり、好ましくは1時間~48時間であり、より好ましくは1時間~24時間である。
【0130】
2以上の層に分離させるための静置温度は、-30℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましい。また、60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。
【0131】
工程(2)では、2以上の層(液層)に分離させることが肝要である。ここで固体が析出してしまうと、多分散度の小さい第二の高分子化合物を得ることができない(例えば、比較例1を参照)。従って、本工程(2)の分画工程は、高分子化合物が溶解した溶液と貧溶媒とを混合して固体を析出させる晶析工程とは全く異なるものである。この2以上の液層に分離する操作は、第一の高分子化合物の特性に応じて、第一の溶媒及び第二の溶媒の種類や使用量を適宜調整して実施することができる。
【0132】
2以上に分離した全ての層において、各層に含まれる全溶媒は実質的に有機溶媒である。ここで、「実質的に」とは、各層に含まれる全溶媒中、80重量%以上、さらに90重量%以上、特に95重量%以上が有機溶媒であることを意味する。
【0133】
上記操作にて分離した各層を分画し、各層に含まれる高分子化合物の重量平均分子量を測定し、最も大きい重量平均分子量をもつ高分子化合物を含む層を取得する。一般に、分離した各層のうち、重量平均分子量が最も大きい高分子化合物を含む層は下位の層に、重量平均分子量が小さい高分子化合物を含む層は上位の層に分離する傾向がある。そのため、通常、下位層を分取することで、所望の第二の高分子化合物を取得することができる。
【0134】
工程(2)では、必要に応じ、上記の分画操作を繰り返して実施することができる。これにより、多分散度のより小さい第二の高分子化合物を取得することができる。
【0135】
<第二の高分子化合物>
工程(2)の分画操作により得られる第二の高分子化合物は、基本的に、第一の高分子化合物と同じく、式(3)で表される構成単位と式(4)で表される構成単位とを含有する化合物である。しかし、第二の高分子化合物は、低分子量の化合物が工程(2)の分画操作により除かれているため、第一の高分子化合物に比べて、重量平均分子量がより大きく、且つ、多分散度が飛躍的に小さくなっている。
【0136】
第二の高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常、7×104~6×106であり、好ましくは7×104~3×105であり、より好ましくは1×105~3×105であり、その多分散度(Mw/Mn)は、通常、1~20であり、好ましくは1~3であり、より好ましくは1.1~2.5である。
【0137】
2.3 その他の工程
上記の工程(1)及び工程(2)は連続した工程であっても、両工程の間に他の工程を設けてもよい。また、工程(2)の後に、さらに他の工程を設けてもよい。他の工程としては、例えば、工程(1)で得られた第一の高分子化合物の末端封止工程、分液工程、共沸脱水工程、精製工程等が挙げられる。
【0138】
末端封止工程は、工程(1)の反応終了後(即ち、第一の高分子化合物の分子量の伸長が停止した後)、単官能性化合物を反応液に添加して、第一の高分子化合物中の反応性末端基を単官能性化合物で封止(置換)する工程である。
【0139】
ここで、「第一の高分子化合物の分子量の伸長が停止」とは、反応の際、30分間隔で重量平均分子量を測定した場合に、重量平均分子量の変化が30分前に比べて3%以下になった状態を意味する。重量平均分子量は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0140】
反応終了後の第一の高分子化合物の反応性末端基としては、式(1)及び式(2)で表される原料の単量体成分に由来する、X又はXで示される基がこれに該当し、例えば、Xとして、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、-O-S(=O)2a1が挙げられ、Xとして、-B(OH)2、ボラン残基、ホウ酸エステル残基、-BF3T(ここで、Ra1、Tは前記に同じ)が挙げられる。
【0141】
添加する単官能性化合物としては、鈴木カップリング反応により、第一の高分子化合物の反応性末端基を封止し得る反応性基を1個有する化合物が挙げられる。第一の高分子化合物の反応性末端基がXである場合、単官能性化合物は反応性基Xを1個有する化合物であり、第一の高分子化合物の反応性末端基がXである場合、単官能性化合物は反応性基Xを1個有する化合物である。単官能性化合物の具体例として、反応性基X又はXとアリール基とが結合した化合物、反応性基X又はXと複素環基とが結合した化合物等が挙げられる。より具体的には、フェニルボロン酸、フェニルブロミド等が挙げられる。
或いは、単官能性化合物として、前述の架橋性基群Aから選ばれる架橋性基を有するアリール基又は1価の複素環基と反応性基X又はXとが結合した化合物、式(XL-16)で表される基と反応性基X又はXとが結合した化合物等が挙げられる。
【0142】
第一の高分子化合物中の反応性末端基が封止された高分子化合物についても、上記工程(2)と同様の操作で分画することにより、所望の反応性末端基が封止された第二の高分子化合物を取得することができる。
【0143】
分液工程は、第一の高分子化合物を含む反応液と、塩酸等の酸性水溶液、アンモニア水溶液等の塩基性水溶液、水、食塩水等のうちの少なくとも一種とを混合し、水層と有機層に分離し、所望の第一の高分子化合物を含む有機層を取得する工程である。この工程は、反応液から第一の高分子化合物を含む有機物を抽出及び洗浄する工程であり、本発明の工程(2)、即ち、低分子量の化合物を除去して所望の第二の高分子化合物を取得する分画工程とは全く異なることに留意すべきである。
【0144】
共沸脱水工程は、第一の高分子化合物を含む溶液を、常圧で又は減圧しながら共沸脱水させる工程である。
【0145】
精製工程は、第一の高分子化合物を、例えば、再沈殿、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィーにより精製する工程、晶析工程、吸着精製(吸着剤で処理する工程)等である。この精製工程は、何れも公知の方法を用いて実施することができる。この精製工程は、工程(2)の後に設けてもよい。
【0146】
本発明における単量体成分から第二の高分子化合物を製造する一連の工程の典型例としては、「工程(1)」/末端封止工程/分液工程/脱水工程/カラムクロマトグラフィー工程/「工程(2)」、「工程(1)」/末端封止工程/分液工程/カラムクロマトグラフィー工程/「工程(2)」、「工程(1)」/末端封止工程/分液工程/「工程(2)」等が挙げられる。
【実施例
【0147】
以下、本発明を更に詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0148】
<分子量分析>
高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、多分散度(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により求めた。
・分析条件
測定装置:HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
カラム:PLgel 10μm MIXED-B(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
流量:0.5mL/分
検出波長:228nm
【0149】
<実施例1>
[重合工程:工程(1)]
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物(M1)(20.26mmol)、化合物(M2)(18.01mmol)、化合物(M3)(2.25mmol)、化合物(M4)(2.25mmol)、ジクロロビス[トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン]パラジウム(0.0135mmol)、及びトルエン(165.1g)を加えた。その後、反応容器内の酸素濃度を0.01体積%未満に調整し、80℃に加熱した。その後、そこへ、20重量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(124.3g)を加え、3時間撹拌した。その後、化合物(M1)(0.80mmol)を加え3時間撹拌し、さらに化合物(M1)(0.80mmol)を加え2時間撹拌し、さらに化合物(M1)(0.19mmol)を加え2時間撹拌し、第一の高分子化合物の粗生成物を得た。第一の高分子化合物の粗生成物は、Mnが2.8×104であり、Mwが9.5×104であり、多分散度が3.7であった。
【0150】
[末端封止工程]
重合完了後の反応液に、フェニルボロン酸(2.25mmol)を加え5時間撹拌した。
【0151】
[分液工程]
反応液を室温まで冷却し、反応液をトルエン(1074.3g)で希釈し分液後、イオン交換水(372g)で3回洗浄した。
【0152】
[脱水工程]
トルエン溶液を、18kPaまで減圧し、65℃まで加熱し、還流脱水を実施した。
【0153】
[カラム工程]
得られたトルエン溶液を、アルミナ及びシリカゲルを混合したカラムに通すことにより吸着精製し、1000.2gの第一の高分子化合物(P1)のトルエン溶液を得た。第一の高分子化合物(P1)は、Mnが2.8×104であり、Mwが9.6×104であり、多分散度が3.4であった。
【0154】
[分画工程:工程(2)]
得られた第一の高分子化合物(P1)のトルエン溶液(553.7g)に対し、撹拌動力0.3kW/m3で、メタノール(149.5g)(トルエン溶液100重量部に対しメタノール27重量部)を滴下し、1時間撹拌した。得られた混合物を22℃で17.5時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をトルエン(310.5g)で希釈し、第二の高分子化合物(P2)を得た。第二の高分子化合物(P2)は、Mnが6.1×104であり、Mwが1.3×105であり、多分散度が2.1であった。
【0155】
[晶析工程]
得られた第二の高分子化合物(P2)のトルエン溶液をメタノール(2117g)に滴下し、1時間撹拌した後、得られた固体をろ取し、乾燥させ、高分子化合物(P3)を得た。高分子化合物(P3)は、Mnが6.3×104であり、Mwが1.3×105であり、多分散度が2.1であった。
【0156】
<実施例2>
[分画工程:工程(2)]
実施例1のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P1)のトルエン溶液100重量部に対し、エタノール39重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で2.5時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をトルエンで希釈し、第二の高分子化合物(P4)を得た。高分子化合物(P4)は、Mnが8.8×104であり、Mwが1.7×105であり、多分散度が2.0であった。
【0157】
<実施例3>
[分画工程:工程(2)]
実施例1のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P1)のトルエン溶液100重量部に対し、イソプロパノール60重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で20時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をトルエンで希釈し、第二の高分子化合物(P5)を得た。高分子化合物(P5)は、Mnが6.8×104であり、Mwが1.3×105であり、多分散度が2.0であった。
【0158】
<実施例4>
[分画工程:工程(2)]
実施例1のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P1)のトルエン溶液100重量部に対し、アセトン90重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で20時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をトルエンで希釈し、第二の高分子化合物(P6)を得た。高分子化合物(P6)は、Mnが8.3×104であり、Mwが1.5×105であり、多分散度が1.8であった。
【0159】
<実施例5>
[分画工程:工程(2)]
実施例1のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P1)のトルエン溶液100重量部に対し、酢酸エチル254重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で20時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をトルエンで希釈し、第二の高分子化合物(P7)を得た。高分子化合物(P7)は、Mnが1.3×105であり、Mwが2.1×105であり、多分散度が1.6であった。
【0160】
<比較例1>
[晶析工程]
実施例1のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P1)のトルエン溶液(277.0g)を、分画工程を経ることなく、メタノール(1802g)に滴下し、1時間撹拌した。得られた固体をろ取し、乾燥させ、高分子化合物(P8)を得た。高分子化合物(P8)は、Mnが3.0×104であり、Mwが9.6×104であり、多分散度が3.2であった。
これより、分画工程を経ずに晶析して得られた高分子化合物の多分散度は、カラム工程後の高分子化合物の多分散度とほとんど変化がないことが確認された。
【0161】
<比較例2>
[分画工程:工程(2)]
実施例1のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P1)のトルエン溶液100重量部に対し、キシレン50重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で24時間静置したが、二層に分離しなかった。トルエン及びキシレンの混合溶液中の高分子化合物(P22)は、Mnが2.8×104であり、Mwが9.6×104であり、多分散度が3.4であった。
【0162】
<比較例3>
[分画工程:工程(2)]
実施例1のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P1)のトルエン溶液100重量部に対し、テトラヒドロフラン50重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で24時間静置したが、二層に分離しなかった。トルエン及びテトラヒドロフランの混合溶液中の高分子化合物(P23)は、Mnが2.6×104であり、Mwが9.5×104であり、多分散度が3.6であった。
【0163】
比較例2、及び比較例3より、分画工程において良溶媒を添加しても二層に分離せず、得られた高分子化合物の多分散度は、カラム工程後の高分子化合物の多分散度とほとんど変化がないことが確認された。
【0164】
<実施例6>
[重合工程:工程(1)]
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物(M1)(18.96mmol)、化合物(M2)(7.98mmol)、化合物(M3)(2.00mmol)、化合物(M4)(2.00mmol)、化合物(M5)(7.98mmol)、ビス[ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]ジクロロパラジウム(0.0100mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(643.7mg)、及びキシレン(168.3g)を加えた。その後、反応容器内の酸素濃度を0.01体積%未満に調整し、80℃に加熱した。その後、そこへ、15重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(101.4g)を加え、2時間撹拌し、第一の高分子化合物の粗生成物を得た。第一の高分子化合物の粗生成物は、Mnが1.2×104であり、Mwが1.0×105であり、多分散度が8.4であった。
【0165】
[末端封止工程]
重合完了後の反応液に、フェニルボロン酸(9.97mmol)を加え8時間撹拌した。
【0166】
[分液工程]
反応液を室温まで冷却し、反応液をキシレン(1061.0g)で希釈し分液後、イオン交換水(372g)で3回洗浄した。
【0167】
[脱水工程]
キシレン溶液を、18kPaまで減圧し、65℃まで加熱し、還流脱水を実施した。
【0168】
[カラム工程]
得られたキシレン溶液を、アルミナ及びシリカゲルを混合したカラムに通すことにより吸着精製し、第一の高分子化合物(P9)のキシレン溶液を得た。高分子化合物(P9)は、Mnが1.1×104であり、Mwが9.9×104であり、多分散度が8.7であった。
【0169】
[分画工程:工程(2)]
得られた第一の高分子化合物(P9)のキシレン溶液100重量部に対し、メタノール24重量部を滴下し、23℃で撹拌した。得られた混合物を23℃で1.5時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をキシレンで希釈し、第二の高分子化合物(P10)を得た。第二の高分子化合物(P10)は、Mnが5.3×104であり、Mwが1.2×105であり、多分散度が2.3であった。
【0170】
<実施例7>
[分画工程:工程(2)]
実施例6のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P9)のキシレン溶液100重量部に対し、エタノール40重量部を滴下し、撹拌した後、23℃で1.5時間静置し二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別し、キシレンで希釈し、第二の高分子化合物(P11)を得た。高分子化合物(P11)は、Mnが5.1×104であり、Mwが1.2×105であり、多分散度が2.3であった。
【0171】
<実施例8>
[分画工程:工程(2)]
実施例6のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P9)のキシレン溶液100重量部に対し、イソプロパノール46重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で2時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をキシレンで希釈し、第二の高分子化合物(P12)を得た。高分子化合物(P12)は、Mnが6.6×104であり、Mwが1.5×105であり、多分散度が2.3であった。
【0172】
<実施例9>
[分画工程:工程(2)]
実施例6のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P9)のキシレン溶液100重量部に対し、アセトン65重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で2時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をキシレンで希釈し、第二の高分子化合物(P13)を得た。高分子化合物(P13)は、Mnが7.2×104であり、Mwが1.8×105であり、多分散度が2.5であった。
【0173】
<実施例10>
[分画工程:工程(2)]
実施例6のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P9)のキシレン溶液100重量部に対し、酢酸エチル150重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で3時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をキシレンで希釈し、第二の高分子化合物(P14)を得た。高分子化合物(P14)は、Mnが7.6×104であり、Mwが1.6×105であり、多分散度が2.2であった。
【0174】
<実施例11>
[分画工程:工程(2)]
実施例6のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P9)のキシレン溶液100重量部に対し、N-メチル-2-ピロリドン161重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で22時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をキシレンで希釈し、第二の高分子化合物(P15)を得た。高分子化合物(P15)は、Mnが8.1×104であり、Mwが1.7×105であり、多分散度が2.1であった。
【0175】
<実施例12>
[分画工程:工程(2)]
実施例6のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P9)のキシレン溶液100重量部に対し、メタノール24重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を10℃で3時間静置し二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をキシレンで希釈し、第二の高分子化合物(P16)を得た。高分子化合物(P16)は、Mnが5.0×104であり、Mwが1.2×105であり、多分散度が2.4であった。
【0176】
<実施例13>
[分画工程:工程(2)]
実施例6のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P9)のキシレン溶液100重量部に対し、メタノール24重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を35℃で3時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をキシレンで希釈し、第二の高分子化合物(P17)を得た。高分子化合物(P17)は、Mnが5.1×104であり、Mwが1.2×105であり、多分散度が2.4であった。
【0177】
<実施例14>
[重合工程:工程(1)]
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物(M6)(5.00mmol)、化合物(M2)(4.75mmol)、化合物(M7)(0.28mmol)、炭酸カリウム(25mmol)、テトラヒドロフラン(75g)、及び水(12.5g)を加えた。その後、反応容器内の酸素濃度を0.01体積%未満に調整し、80℃に加熱した。その後、そこへ、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム(0.100mmol)、及びトリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(0.400mmol)を加え、3時間撹拌し、第一の高分子化合物の粗生成物を得た。
【0178】
[分液工程]
反応液を室温まで冷却し、反応液をトルエン(264.7g)で希釈し分液後、イオン交換水(90g)で3回洗浄した。
【0179】
[カラム工程]
得られたテトラヒドロフラン及びトルエンの混合溶液を、アルミナ及びシリカゲルを混合したカラムに通すことにより吸着精製し、282.8gの第一の高分子化合物(P18)のテトラヒドロフラン及びトルエンの混合溶液を得た。第一の高分子化合物(P18)は、Mnが4.4×103であり、Mwが2.7×105であり、多分散度が61.3であった。
【0180】
[分画工程:工程(2)]
得られた第一の高分子化合物(P18)のテトラヒドロフラン及びトルエンの混合溶液100重量部に対し、メタノール20重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で1.5時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をトルエンで希釈し、第二の高分子化合物(P19)を得た。第二の高分子化合物(P19)は、Mnが2.4×104であり、Mwが3.4×105であり、多分散度が13.9であった。
【0181】
<実施例15>
[分画工程:工程(2)]
実施例14のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P18)のテトラヒドロフラン及びトルエンの混合溶液100重量部に対し、メタノール16重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で1.5時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をトルエンで希釈し、第二の高分子化合物(P20)を得た。第二の高分子化合物(P20)は、Mnが2.8×104であり、Mwが5.3×105であり、多分散度が18.9であった。
【0182】
<実施例16>
[分画工程:工程(2)]
実施例14のカラム工程で得られた第一の高分子化合物(P18)のテトラヒドロフラン及びトルエンの混合溶液100重量部に対し、酢酸エチル100重量部を滴下し、撹拌した。得られた混合物を23℃で1.5時間静置することで二層に分離し、ポリスチレン換算の重量平均分子量が大きい下層を分別した。分別された下層をトルエンで希釈し、第二の高分子化合物(P21)を得た。第二の高分子化合物(P21)は、Mnが3.3×104であり、Mwが4.9×105であり、多分散度が14.7であった。
【0183】
【表1】
【0184】
表1に示すように、工程(2)の分画操作により、高分子化合物の多分散度を飛躍的に小さくできることが明らかとなった。