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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】HER2/NEU癌ワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220711BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220711BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220711BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220711BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220711BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220711BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220711BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220711BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
C07K14/705
C07K19/00
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K39/00 H
A61K39/39
A61K47/64
A61K9/10
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020179595
(22)【出願日】2020-10-27
(62)【分割の表示】P 2015561979の分割
【原出願日】2014-03-11
(65)【公開番号】P2021035375
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】13001211.5
(32)【優先日】2013-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515250532
【氏名又は名称】アイコン ジェネティクス ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】506148936
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ サウサンプトン
【氏名又は名称原語表記】University of Southampton
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サヴェリエヴァ、ナターリア
(72)【発明者】
【氏名】ヤルチェウスキー、フランツィスカ
(72)【発明者】
【氏名】カンヅィア、ロミー
(72)【発明者】
【氏名】ニクスタット、アニヤ
(72)【発明者】
【氏名】ティーメ、フランク
(72)【発明者】
【氏名】クリミュク、ヴィクトール
(72)【発明者】
【氏名】グレバ、ユーリ
(72)【発明者】
【氏名】ブイ - ミン、デュク
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンソン、フリーダ ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】チョトプラカイキアット、ワラユット
【審査官】玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-514199(JP,A)
【文献】特表2010-505850(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1861630(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 14/00-14/825
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質抗原及び前記タンパク質抗原に共有結合した免疫原性担体を含むタンパク質コンジュゲートであって、前記タンパク質抗原が、(i)配列番号2のアミノ酸配列の配列セグメントを有する;又は(ii)配列番号2のアミノ酸配列において1~20の置換、欠失、又は付加を有する変異体の配列セグメントを有する
ここで、前記タンパク質抗原が、配列番号18のアミノ酸1から253からの配列部分からの20又はそれ以上の連続するアミノ酸残基のさらなるアミノ酸配列セグメントを含まない、上記タンパク質コンジュゲート。
【請求項2】
前記タンパク質抗原又は前記タンパク質コンジュゲートが、以下のさらなるアミノ酸配列セグメント:
a)配列番号18のアミノ酸1から253からの配列部分からの10又はそれ以上の連続するアミノ酸残基の、及びアミノ酸670から開始する配列部分からの10又はそれ以上の連続するアミノ酸残基のさらなるアミノ酸配列セグメント;或いは、
b)配列番号18のアミノ酸1から253からの配列部分と50%を上回る配列同一性を有する、及びアミノ酸670から開始する配列部分と50%を上回る配列同一性を有する20を上回る連続するアミノ酸残基のさらなるアミノ酸配列セグメント
を含まない、請求項1に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項3】
前記b)における配列部分が、配列番号18のアミノ酸1から283からである、請求項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項4】
前記b)における配列部分が、配列番号18のアミノ酸654から開始する、請求項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項5】
前記タンパク質抗原又は前記タンパク質コンジュゲートが、配列番号18のHer2/neuタンパク質の膜貫通ドメイン又は細胞内ドメインからの10又はそれ以上の連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列セグメントを含まない、請求項1からまでのいずれか一項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項6】
前記さらなるアミノ酸配列セグメントが、5又はそれ以上の連続するアミノ酸残基からなる、請求項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項7】
前記タンパク質抗原が、さらなるセグメントとして、そのN又はC末端の精製タグ、又は抗体軽鎖の定常領域を含み、及び、前記精製タグと前記タンパク質抗原の配列セグメントを連結するリンカーを含んでいてもよい、請求項1からまでのいずれか一項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項8】
前記精製タグが6X-Hisタグである、請求項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項9】
前記タンパク質抗原の少なくとも7アミノ酸残基長の任意のさらなる配列セグメントが、配列番号18の同一の長さの任意の配列部分と50%未満のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1からまでのいずれか一項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項10】
前記免疫原性担体が、免疫原性タンパク質又は免疫原性タンパク質凝集体であるか、又はそれを含む、請求項1からまでのいずれか一項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項11】
前記免疫原性タンパク質が、破傷風毒素フラグメントC又はそのDOM1フラグメントであるか、又はそれを含み、或いは、前記タンパク質凝集体がウイルス粒子である、請求項10に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項12】
前記ウイルス粒子が植物ウイルス粒子である、請求項11に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項13】
免疫原性担体タンパク質は、その配列セグメントが、配列番号18の同一の長さの任意の配列部分と50%を上回るアミノ酸配列同一性を有する、20又はそれ以上の連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列セグメントを有さない、請求項1から12までのいずれか一項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項14】
前記アミノ酸配列セグメントが、10又はそれ以上の連続するアミノ酸残基からなる、請求項13に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項15】
項目(ii)の前記変異体配列セグメントは、配列番号2の前記アミノ酸配列と比較して、前記変異体配列セグメントにおいて1~10の置換、欠失、又は付加を有している;又は
項目(ii)の前記変異体配列セグメントは、配列番号2の前記アミノ酸配列と比較して、前記変異体配列セグメントにおいて1~10の欠失又は付加を有している、
請求項1から14までのいずれか一項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項16】
前記タンパク質抗原と前記免疫原性担体が、化学的架橋剤を使用した化学的架橋により共有結合されている、請求項1から15までのいずれか一項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項に記載のタンパク質抗原。
【請求項18】
請求項17に記載のタンパク質抗原をコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項17に記載のタンパク質抗原及びタンパク質コンジュゲートを形成するために前記タンパク質抗原と架橋するための免疫原性タンパク質又はタンパク質凝集体を含むキット。
【請求項20】
請求項1から16までのいずれか一項に記載のタンパク質コンジュゲート又は請求項17に記載のタンパク質抗原を含む抗癌ワクチン。
【請求項21】
前記タンパク質コンジュゲートが分散している水、及び、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでいてもよい、請求項20に記載の抗癌ワクチン。
【請求項22】
免疫学的アジュバントをさらに含む、請求項20又は21に記載の抗癌ワクチン。
【請求項23】
請求項1から16までのいずれか一項に記載のタンパク質コンジュゲート、又は、請求項17に記載のタンパク質抗原、又は、請求項20から22までのいずれか一項に記載の抗癌ワクチンを含む、HER2/Neu陽性癌に罹患している患者におけるHER2/Neu陽性癌を処置するための医薬組成物。
【請求項24】
HER2/Neu陽性癌を処置する方法における使用のための、請求項1から16までのいずれか一項に記載のタンパク質コンジュゲート、又は、請求項17に記載のタンパク質抗原、又は、請求項20から22までのいずれか一項に記載の抗癌ワクチン。
【請求項25】
前記タンパク質抗原又は前記変異体を準備すること、及び前記タンパク質抗原又は前記変異体を前記免疫原性担体と架橋することを含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載のタンパク質コンジュゲートを生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Her2/Neuの細胞外ドメインからのタンパク質抗原又はHer2/Neuの細胞外ドメインの特定の部分に対して高い配列同一性若しくは類似性を有するタンパク質抗原を含むタンパク質コンジュゲートに関する。本発明は、また、タンパク質抗原に関する。タンパク質コンジュゲートは、タンパク質抗原、及びタンパク質抗原に共有結合した免疫原性担体を含む。タンパク質コンジュゲート又はタンパク質抗原は、Her2/Neu陽性癌のための癌ワクチンとして使用することができる。本発明は、さらに、Her2/Neu陽性癌に対する癌ワクチンを提供する。癌ワクチンは、タンパク質コンジュゲート又はタンパク質抗原並びに適切なアジュバント及び/又は薬学的に許容される添加剤を含む。本発明は、また、癌ワクチンを用いたHer2/neu陽性癌を予防及び/又は処置する方法を提供する。タンパク質コンジュゲートを産生するプロセスがさらに提供される。さらに、本発明は、タンパク質抗原をコードする核酸、及びタンパク質コンジュゲートを産生するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト上皮成長因子受容体Her2は、Neu、ErbB-2、又はp185としても公知であり、上皮成長因子受容体(EGFR/ErbB)ファミリーのメンバーであり、ERBB2遺伝子によりコードされる。本明細書において、用語「HER2」又は「Her2」及び「Her2/neu」は互換的に使用される。ErbBファミリーの他のメンバーとしては、Her2が、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び下流のシグナル伝達分子と相互作用することができる細胞内ドメインで構成される膜結合型受容体チロシンキナーゼである。他のファミリーのメンバーとは異なり、HER2は、それが公知のリガンドを有さないため、オーファン受容体であると考えられる。HER2は、他のErbBファミリー受容体とヘテロ二量体化することができ、それらの好ましい二量体化パートナーであると考えられる。二量体化は、受容体の細胞質ドメイン内のチロシン残基の自己リン酸化をもたらし、増殖及びアポトーシスの阻害に導く種々のシグナル伝達経路を開始する。
【0003】
ERBB2遺伝子の増幅は、ヒトの乳癌及び卵巣癌の20~30%において発生し、より侵襲性の疾患経過及び予後不良に関連付けられる(Bange,J.、Zwick E.&Ullrich A.、2001、Nature Medicine、7:548-552;Slamon,D.J.、Clark,G.M.、Wong,S.G.ら、1987’ Science、235:177-182;Slamon,D.J.、Godolphin,W.、Jones,L.A.ら、1989、Science,244:707-712;Berchuck,A.、Kamel,A.、Whitaker.R.、ら、1990,Cancer Research 50:4087-4091)。ERBB2腫瘍細胞において、受容体が独自に機能することができ、及び/又は、それは、細胞の腫瘍性挙動に関与する脱制御増殖シグナルを伝達するために、別のErbBメンバーとヘテロ二量体化する必要がある。
【0004】
近年では、HER2は、特にモノクローナル抗体治療による乳癌の治療のための重要な標的として進化しており、例えば、ハーセプチン(トラスツズマブ)は、この表面標的に対するヒト化モノクローナル抗体であり、1998年にFDAにより承認されている。ハーセプチンは、HER2陽性乳癌患者の生存率に有意な影響を有する(Tan,A.R.&Swain,S.M.、2002、Seminars in Oncology、30:54-64)。HER2ホモダイマーに対して活性であるが、トラスツズマブは、リガンド誘導性HER2ヘテロ二量体に対して効果的ではない(Agus,D.B.、Akita,R.W,、Fox,W.D.、ら、2002、Cancer Cell、2:127-137;Cho,H.S.、Mason,K.、Ramyar,K.X,、ら、2003、Nature、421:756-60)。また、癌は、通常、トラスツズマブへの耐性を発生する(Cho,H.S.、Mason,K.、Ramyar,K.X.、ら、2003、Nature,421:756-760)。トラスツズマブは、末期の転移性癌の処置のために効率的であるが、それが初期段階の癌に効果的であるか否かは明らかではない(Editorial、2005、Lancet、366:1673)。
【0005】
2012年6月、FDAは、転移性疾患のために先行する抗HER2療法又は化学療法を受けていない患者のために、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)とドセタキセル化学療法の組み合わせにおいて、HER2/neu陽性転移性乳癌の処置のために、さらに別のモノクローナル抗体ペルツズマブ(US7449184;US7981418)を承認した(2012年6月8日のGenentech プレスリリースhttp://www.gene.com/gene/news/press-releases/display.do?method=detail&id=14007)。このアプローチによって、中央値6.1ヶ月間にわたり患者の癌無進行期間を延長することが可能であった。
【0006】
治療用抗体を用いたHER2/neu陽性癌の処置の代替又は補完として、異なる癌ワクチンが現在テスト中である。このアプローチは、癌治療において最も劇的なシフトを提供する。なぜなら、患者自身の免疫系が訓練され、HER2陽性癌細胞を認識し、除去することができうるからである。異なるワクチン設計(単純なペプチド、HER2領域をコードするDNA、HER2タンパク質フラグメント、及び全細胞ワクチン)は、ヒト臨床治験においてテストされ、耐久性のある体液性又はT細胞HER2免疫の有意なレベルを、能動免疫を用いて生成することができることが示されてきた(Ladjemi,M.Z.、Jacot,W.、Charde’s,T.ら、2010、Cancer Immunol.Immunother.、59:1295-1312)。最も先進的な臨床試験では、ペプチドベースのワクチン、特にE75ペプチドベースのワクチンが用いられている(Disis,M.L.、&KSchiffman,K.、2001、Semin Oncol.、28:12-20;Murray,J.L.、Gillogly,M.E.、Przepiorka,D.ら、2002、Clin Cancer Res.、8:3407-3418;Peoples,G.E.、Gurney,J.M.、Hueman,M.T.、ら、2005,J Clin Oncol 23:7536-7545;Ross,J.S.、Slodkowska,E.A.、Symmans,W.F.、ら、2009、The Oncologist,14:320-368;US 8,222,214;for review see Ladjemi,MZ.、Jacot,W.、Chardes,T.ら、2010、Cancer Immunol.Immunother.、59:1295-1312)。このワクチン接種は、内在性HER2受容体に対する寛容を破壊することができる。ワクチンの重要な成分は、ペプチドE75(9個のアミノ酸残基のペプチド)である(US 8,222,214;Mittendorf,E.A.、Clifton,G.T.、Holmes,J.P.ら、2012,Cancer,118:2594-602)。癌ワクチンは、通常、治療用抗体又は化学療法剤の使用と典型的に関連する毒性を起こさない(例、Peoples,G.E.、Gurney,J.M.、Hueman,M.T.、ら、2005,J.Clin.Oncol.、23:7536-7545;Ross,J.S.、Slodkowska,E.A.、Symmans,W.F.、ら、2009、The Oncologist、14:320-368;Dabney,R.S.、Hale,D.F.、Vreeland,T.J.、ら、2012,J.Clin.Oncol、30(ASCO suppl;abstr 2529);Hamilton,E.、Blackwell,K.、Hobeika,A.C.、ら、2012、J.Transl.Med.、10:28)。
【0007】
また、正常組織に対する有意な毒性自己免疫はワクチンでは遭遇されていない(Bernhard,H.、Salazar,L.、Schiffman,K.ら、2002,Endocr Relat Cancer 9:33-44;Ladjemi,M.Z.、Jacot,W.、Charde’s,T.ら、2010、Cancer Immunol.Immunother.、59:1295-1312)。これらのワクチンの大半が、T細胞免疫に焦点を当てており、ペプチド又は少数のエピトープの混合物からなり、登録時にHLAが一致する患者コホートを必要とし、結果的に、狭い免疫応答を示す(Ladjemi,M.Z.、Jacot,W.、Charde’s,T.ら、2010,Cancer Immunol.Immunother.、59:1295-1312)。
【0008】
ペプチドワクチンのための標的部位の狭いスペクトルに加えて、ペプチドベースのワクチンの使用は、最も有望なペプチドの同定において困難に悩まされうる。ペプチドワクチンは、組成物中の1つ又は少数のペプチドに限定された免疫応答を起こす。有望な代替は、製造が簡単で、CD8+T細胞応答を誘導する際にペプチドよりも優れているDNAワクチンであり(Chaise,C.、Buchan,S.L.、Rice,J.ら、2008、Blood,112:2956-2964;Rolla,S.、Marchini,C.、Malinarich,S.ら、2008,Human Gene Therapy,19:229-239;US8207141)、それらは、典型的には、抗体応答を誘導する際に、タンパク質ワクチンほど効果的ではない。
【0009】
HER2タンパク質ベースのワクチンを用いた臨床治験も行われた。1つの場合において、HER2 ICD(細胞内ドメイン、aa 676-1255)がアジュバントワクチンとして使用された(Disis,M.L.、Schiffman,K.、Guthrie,K.ら、2004、J.Clin.Oncol.、22:1916-1925)。ワクチンは良好に寛容され、最高用量で処置された患者は、より迅速に免疫を発生することが示された。治療効果は報告されなかった。アジュバントの複雑な混合物とチロシンキナーゼ阻害剤ラパチニブを組み合わせた、完全細胞外ドメイン(ECD)及び細胞内ドメイン(ICD)の部分からなるdHER2を用いた第I相臨床治験では、(心臓)毒性効果は示されなかったが、また、弱いT細胞応答及び進行期間の中央値55日間が示された(Hamilton,E.、Blackwell,K.、Hobeika,A.C.ら、2012、J.Trans.Med.、10:28、http://www.translational-medicine.com/content/10/1/28)。コレステリルプルランナノゲル(CHP-HER2)と複合体化したHER2 ECDドメイン(アミノ酸1-146)の部分の使用は、患者により良好に寛容され、切断HER2タンパク質へのT細胞応答を誘導した(Kitano,S.、Kageyama,S.、Nagata,Y.ら、2006、Clin.Cancer.Res.、12:7397-7405)。しかし、同じ抗原を用いた第2治験では、誘導されたAb(抗体)が、癌細胞の表面で、その天然形態において発現されたHER2抗原を認識しなかったことが示された(Kageyama,S.、Kitano,S.、Hirayama,M.ら、2008,Cancer Sci.、99:601-6070)。CHP-HER2と、さらに別の腫瘍特異的抗原NY-ESO-1との組み合わせは、免疫応答の改善に導かなかった。逆に、CHP-HER2単独と比較して、混合ワクチン中のHER2に弱い抗体応答があった(Aoki,M.、Ueda,S.、Nishikawa,H.ら、2009、Vaccine、27:6854-6861)。
【0010】
要約すると、開発中の既存のワクチンは、いくつかの限界に悩まされる(Ladjemi,M.Z.、Jacot,W.、Charde’s,T.ら、2010、Cancer Immunol.Immunother.、59:1295-1312):全腫瘍細胞ワクチンは個別に作製されなければならず、免疫応答はモニターするのが困難であり、アジュバントの存在下での自己免疫誘導のリスクがある。DNAワクチンは、細胞ゲノム中へのDNA組込みに起因して、悪性腫瘍を促進するリスクを伴う。ペプチドワクチンは、1つ又は数個のエピトープに限定される免疫応答を生成し、アジュバントの非存在下で分解する可能性があり、HLA集団が制限される。現在までのHER2タンパク質ベースのワクチンでは、有意な治療効果が示されていない。
【0011】
Esserman ら、Cancer Immunol.Immunother(1999)47:337-342は、HER2の細胞外ドメイン(ECD)を用いたneuトランスジェニックマウスのワクチン接種に関する。著者らは、Neu ECDでの免疫化が、腫瘍成長の発症を遅延することを報告している。しかし、著者らは、また、一度、腫瘍が成長し始めたら、それらは、対照免疫マウスにおける、即ち、Neu ECD抗原を用いないマウスと同じ速度で成長するように見えたことを報告している。
【0012】
Schwaninger ら、Cancer Immunol.Immunother(2004)53:1005-1017には、Her2/neu癌ワクチン用の担体系としてビロソームが記載されている。ビロソームに結合したHer2/neuタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)でワクチン接種したマウスは、体液性及び細胞傷害性免疫応答を生成した。しかし、一度、腫瘍がそれらのマウスモデルにおいて形成された場合、ワクチン接種は、腫瘍進行に対して影響を有さなかった、即ち、治療効果を有さなかった。
【0013】
したがって、HER2/neu陽性癌のための癌ワクチンとして、適切なタンパク質コンジュゲートを提供することが本発明の目的である。タンパク質抗原及びHER2陽性癌に対する治療効果を有するタンパク質コンジュゲートを提供することが別の目的である。長期のT細胞依存性免疫応答を誘発することが可能であるタンパク質コンジュゲート又は癌ワクチンを提供することが別の目的である。強力な防御体液性及び細胞性免疫応答を誘導することができるワクチンを使用して、HER2/neu陽性癌を処置する方法を提供することが別の目的である。前記ワクチンの製剤を提供することが本発明の別の目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、以下により達成される:
(1)タンパク質抗原及び前記タンパク質抗原に共有結合した免疫原性担体を含む
タンパク質コンジュゲートであって、前記タンパク質抗原が
(i)配列番号1のアミノ酸配列の300又はそれ以上の連続アミノ酸の配列セグメントを有する;又は
(ii)300又はそれ以上のアミノ酸残基の変異体配列セグメントを有し、前記変異体配列セグメントのアミノ酸配列が、配列番号1からの配列部分と少なくとも85%の配列同一性を有する;又は
(iii)300又はそれ以上のアミノ酸残基の変異体配列セグメントを有し、配列番号1又は2のアミノ酸配列の300又はそれ以上のアミノ酸残基の配列セグメントと比較して、前記変異体配列セグメントにおいて1~20の置換、欠失、又は付加を有している、タンパク質コンジュゲート。
(2)前記タンパク質抗原が、配列番号2のアミノ酸配列の300又はそれ以上の連続アミノ酸残基の配列セグメントを有する、又は
前記タンパク質抗原が、300又はそれ以上のアミノ酸残基の変異体配列セグメントを有し、前記変異体配列セグメントのアミノ酸配列が、配列番号2からの配列部分と少なくとも85%の配列同一性を有する、項目1に記載のタンパク質コンジュゲート。
(3)前記タンパク質抗原が、前記配列セグメント又は前記変異体配列セグメントにおいて、最大で500、好ましくは最大で400の、配列番号1又は2からの連続アミノ酸残基を有する、項目1又は2に記載のタンパク質コンジュゲート。
(4)前記配列セグメントが、配列番号2、4、又は5のアミノ酸配列からなり、好ましくは、前記タンパク質抗原が、配列番号2、4、又は5のアミノ酸配列及び、任意選択で、精製タグからなる、項目2に記載のタンパク質コンジュゲート。
(5)前記タンパク質抗原が、さらなるセグメントとして、そのN又はC末端の6X-Hisタグなどの精製タグ、又は抗体軽鎖の定常領域、及び、任意選択で、精製タグとタンパク質抗原の配列セグメントを連結するリンカーを含み、好ましくは、前記タンパク質抗原が、前記配列セグメント又は変異体配列セグメント、前記精製タグ、及び、任意選択で、前記リンカーからなる、項目1~4のいずれか1つに記載のタンパク質コンジュゲート。
(6)前記免疫原性担体が、免疫原性タンパク質又は免疫原性タンパク質凝集体である、又はそれを含む、項目1~5のいずれか1つに記載のタンパク質コンジュゲート。
(7)前記免疫原性タンパク質が、破傷風毒素フラグメントC又はそのDOM1フラグメントである、又はそれを含む、項目6に記載のタンパク質コンジュゲート。
(8)前記タンパク質凝集体が、ウイルス粒子、例えば植物ウイルス粒子などである、又はそれを含む、項目6に記載のタンパク質コンジュゲート。
(9)前記変異体が、さらに、配列番号1又は2の前記アミノ酸配列と比較して、前記変異体配列セグメントにおいて1~10の欠失又は付加を有している、項目1~8のいずれか1つに記載のタンパク質コンジュゲート。
(10)前記変異体が、配列番号1又は2の前記アミノ酸配列と比較して、前記配列セグメントにおいて1~10の置換、欠失、又は付加を有している、項目1~8のいずれか1つに記載のタンパク質コンジュゲート。
(11)項目1~10のいずれか1つに記載のタンパク質コンジュゲート又はタンパク質抗原を含む抗癌ワクチン。
(12)前記タンパク質コンジュゲートが分散している水、及び、任意選択で、さらに、薬学的に許容される添加剤をさらに含む、項目11に記載の抗癌ワクチン。
(13)免疫学的アジュバントをさらに含む、項目11又は12に記載の抗癌ワクチン。
(14)HER2/Neu陽性癌を処置する方法における使用のための、項目1~10のいずれか1つにおいて定義する通りのタンパク質コンジュゲート。
(15)本発明のタンパク質抗原、又は、好ましくは、本発明のタンパク質コンジュゲートを、HER2/Neu陽性癌に罹患している患者に1から複数回投与することを含む、そのような癌に罹患している患者においてHER2/Neu陽性癌を処置する方法。
(16)植物の真核細胞において前記タンパク質抗原又は前記変異体を発現させ、前記タンパク質抗原又は前記変異体を精製し、精製されたタンパク質抗原又は前記変異体を前記担体と架橋することを含む、本発明のタンパク質コンジュゲートを生成する方法。
(17)変異体配列セグメントのアミノ酸配列が、配列番号1からの配列部分と少なくとも85%の配列同一性を有する、配列番号1のアミノ酸配列の300又はそれ以上の連続アミノ酸の配列セグメントを有するタンパク質抗原、又は300又はそれ以上のアミノ酸残基の変異体配列セグメントを有するタンパク質抗原。
(18)Her2/neuタンパク質のアミノ酸配列と類似性を有する第1のアミノ酸配列セグメント、及び、任意選択で、1つ又は複数のさらなるアミノ酸配列セグメントからなるタンパク質抗原であって、前記第1の配列セグメントが、
(i)配列番号2のアミノ酸配列の300又はそれ以上の連続アミノ酸のアミノ酸配列を有する;又は
(ii)300又はそれ以上のアミノ酸残基の変異体アミノ酸配列を有し、前記変異体配列セグメントのアミノ酸配列が、配列番号2からの配列部分と少なくとも85%の配列同一性を有する;又は
(iii)300又はそれ以上のアミノ酸残基の変異体アミノ酸配列を有し、配列番号2のアミノ酸配列の300又はそれ以上のアミノ酸残基の配列セグメントと比較して、前記変異体配列において1~20の置換、欠失、又は付加を有し;
20又はそれ以上、好ましくは10又はそれ以上の任意のさらなるアミノ酸配列セグメントが、配列番号18のアミノ酸1~253、好ましくは1~283、より好ましくは1~300の配列部分、又は、アミノ酸670から、好ましくはアミノ酸654から開始する配列部分を含まず;或いは
20を上回る連続アミノ酸の任意のさらなるアミノ酸配列セグメントが、配列番号18のアミノ酸1~253、好ましくは1~283、より好ましくは1~300の配列部分、又は、アミノ酸670から、好ましくはアミノ酸654から開始する配列部分と50%を上回る配列同一性を有さないタンパク質抗原;及び、そのようなタンパク質抗原を含むタンパク質コンジュゲート。
(19)項目17又は18のタンパク質抗原をコードする核酸配列。
(20)項目1~10のいずれか1つにおいて定義されたタンパク質抗原及び前記タンパク質抗原と架橋するための免疫原性タンパク質又はタンパク質凝集体を含むキット。
【0015】
本発明の癌ワクチンは、ヒトHER2 ECDに応答して広範なポリクローナル抗体を誘導し、加えて、外来T細胞を動員し、担体、例えば破傷風フラグメントC又は植物RNAウイルス粒子などへのコンジュゲーションを介した体液性応答を増強するのを助ける能力を有する。本発明は、腫瘍が、癌発生のための予防効果だけでなく、腫瘍が既に発生している場合、ワクチン接種による治療効果も提供する。そのような治療効果は、従来技術において達成されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】Her2-ED44のアミノ酸配列の図である。A)ヒトHER2/neuタンパク質(GenBank受託番号:AAA75493)の残基310-653を包含するヒトHer2-ED44(配列番号2)のアミノ酸配列。より短いHer2-ED44バージョン中の除去された残基は太字で書かれている(Cにおけるバージョンについて)又は下線が引かれている(Dにおけるバージョンについて)。B)ラットHER2/neuタンパク質(GenBank受託番号:NP_058699)の残基314-657を包含するラットHer2-ED44(配列番号3)のアミノ酸配列。C)ヒトHER2/neuタンパク質の残基312-649を包含する、Her2-ED44(配列番号4)の短縮バージョン。D)ヒトHER2/neuタンパク質の残基340-649を包含する、Her2-ED44(配列番号5)の短縮バージョン。
図2】ラット(配列番号3)及びヒト(配列番号2)Her2-ED44アミノ酸配列のアライメントの図である。ラットHer2-ED44(ラットED44)をイタリック体で、ヒトHer2-ED44(ヒトED44)を太字で示す。配列は、BLASTPを使用して整列させた。同一のアミノ酸残基を両方の配列の間で示し、BLOSUM62マトリクスに従った類似の残基を「+」で示す。2つの配列は86%の同一性及び91%の類似性を示す。
図3】Her2-ED44及び破傷風毒素フラグメントCの構築ブロック並びにワクチンの構造の模式図である。(A)Hisタグ付きHer2-ED44、(B)リンカー領域及びヒトカッパ定常領域を含むHer2-ED44及び破傷風毒素フラグメントC(免疫原担体)融合タンパク質、又は(C)リンカー及びタバコ・モザイク・ウイルス粒子(免疫原性担体)にコンジュゲートされたヒトカッパ定常領域を含むHer2-ED44融合タンパク質を含むワクチンの設計。2つの成分、即ち、Her2-ED44及び破傷風毒素フラグメントC又はタバコ・モザイク(Mosic)・ウイルス粒子を伴うワクチン又はタンパク質抗原を、グルタルジアルデヒドを使用して架橋する。タバコ・モザイク・ウイルスのコートタンパク質は、そのN末端領域中にリシン残基を導入することにより改変し、より効率的な架橋を可能にした。
図4】ラットHer2-ED44構築物のためのクローニングスキームである。(A)Hisタグ及び(B)ヒトカッパ定常領域への融合物を伴うラットHer2-ED44構築物のためのクローニングスキーム。シグナルペプチド、ラットHer2-ED44、及び6x Hisタグ又は(GGGGS)リンカー、及びヒトカッパ定常領域用の配列モジュールを、タイプIIS酵素BsaIを使用して、TMVベースのウイルスバイナリー発現ベクター中にクローニングする。BsaI制限消化後のモジュールに隣接するオーバーハングを示す。
図5】ラットHer2-ED44-His構築物(配列番号6)の配列及びアミノ酸配列(配列番号7)。コメのαアミラーゼシグナルペプチドの配列(太字、斜体)、ラットHer2-ED44及び6x Hisタグ(太字、斜体)を示す図である。BsaIクローニングのために使用されるオーバーハング配列を太字で示し、下線が引かれている。TMVベースのウイルスバイナリー発現ベクター中でのクローニング後、BsaI認識部位はもはや存在しない。
図6】ラットHer2-ED44-カッパ構築物(配列番号8)及びアミノ酸配列(配列番号9)の配列。コメのαアミラーゼシグナルペプチド(太字、斜体)、ラットHer2-ED44、(GGGGS)リンカー(太字、斜体)、及びヒトカッパ定常領域の配列の図である。BsaIクローニングのために使用されるオーバーハング配列を太字で示し、下線が引かれている。TMVベースのウイルスバイナリー発現ベクター中でのクローニング後、BsaI認識部位はもはや存在しない。
図7】ヒトHer2-ED44の構築物用のクローニングスキームである。(A)Hisタグ及び(B)ヒトカッパ定常領域への融合物を用いたヒトHER2-ED44構築物用のクローニングスキーム。シグナルペプチド、ラットHer2-ED44及び6x Hisタグ又は(GGGGS)リンカー、並びにヒトカッパ定常領域用の配列モジュールを、タイプIIS酵素BsaIを使用して、TMVベースのウイルスバイナリー発現ベクター中にクローニングする。BsaI制限消化後のモジュールに隣接するオーバーハングを示す。
図8】ヒトHer2-ED44-His構築物の配列(配列番号10)及びアミノ酸配列(配列番号11)。コメのαアミラーゼシグナルペプチド(太字、斜体)、ヒトHer2-ED44及び6x Hisタグ(太字、斜体)の配列の図である。BsaIクローニング用に使用したオーバーハング配列を太字で示し、下線を引いている。TMVベースのウイルスバイナリー発現ベクター中でのクローニング後、BsaI認識部位はもはや存在しない。
図9】ヒトHer2-ED44-カッパ構築物の配列(配列番号12)及びアミノ酸配列(配列番号13)。コメのαアミラーゼシグナルペプチド(太字、斜体)、ヒトHer2-ED44、(GGGGS)リンカー(太字、斜体)、及びヒトカッパ定常領域の配列の図である。BsaIクローニング用に使用したオーバーハング配列を太字で示し、下線を引いている。TMVベースのウイルスバイナリー発現ベクター中でのクローニング後、BsaI認識部位はもはや存在しない。
図10】破傷風毒素フラグメントC構築物用のクローニングスキームである。ヒトカッパ定常領域への破傷風毒素フラグメントCの融合用のクローニングスキームを示す。シグナルペプチド、破傷風毒素フラグメントC、(GGGGS)リンカー、及びヒトカッパ定常領域用の配列モジュールを、タイプIIS酵素BsaIを使用して、TMVベースのウイルスバイナリー発現ベクター中にクローニングする。BsaI制限消化後のモジュールに隣接するオーバーハングを示す。
図11】破傷風毒素フラグメントC-カッパ構築物(配列番号14)の配列及びアミノ酸配列(配列番号15)の図である。コメのαアミラーゼシグナルペプチド(太字、斜体)、破傷風毒素フラグメントC、(GGGGS)リンカー(太字、斜体)、及びヒトカッパ定常領域の配列。BsaIクローニング用に使用したオーバーハング配列を太字で示し、下線を引いている。TMVベースのウイルスバイナリー発現ベクター中でのクローニング後、BsaI認識部位はもはや存在しない。
図12】タバコ・モザイク・ウイルス粒子を含むTMV-CPLysの図である。TMV-CPLysを含むタバコ・モザイク・ウイルス粒子の産生用のTMVベースのベクターの概略図。CPLysの配列(配列番号16)(野生型CPについての受託番号:Q88922)を示し、リシン残基を含むN末端での伸長(ADFK)を太字で示し、下線を引いている。ニコチアナ・ベンタミアナ(Nicotiana benthamiana)におけるこのウイルス構築物の発現は、タバコ・モザイク・ウイルス粒子を含むCPLysの形成に導く。
図13】TMVベースのウイルスバイナリーベクター(magnICON(登録商標)システム)の概略マップである。バイナリーベクターの骨格エレメントは、Agrobacteriumにおけるプラスミド複製用のpVS1起点、大腸菌(E.coli)におけるプラスミド複製用のcolE1起点、及び選択用のnptIIIカナマイシン抗生物質耐性遺伝子である。植物細胞へのTMVベースのウイルスベクターの送達のために、Agrobacterium tumefaciensを使用する。したがって、完全なウイルス構築物を、T-DNAの左とバイナリーベクターの右の境界の間にクローニングした。ウイルス構築物は、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)及び移行タンパク質(MP)をコードするウイルスcDNAからなる。効率的な発現のために、植物イントロンをRdRP配列とMP配列内に加えた。コートタンパク質についての遺伝子を除去し、最終的な発現ベクター中で、目的の遺伝子により置換する。ウイルス構築物は、また、複製のために必須である5’及び3’非翻訳(NTR)ウイルス配列を含む。植物細胞中でのウイルスRNAの効率的な発現のために、ウイルスcDNAを、植物プロモーターと植物ターミネーター(Act2及びnos)の間にクローニングしている。青色/白色選択を容易にするために、lacZαカセットを、目的の遺伝子のフレームクローニングにおいてシームレスを可能にする2つのBsaI制限部位の間に挿入した。全ての天然のBsaI認識部位を除去した。
図14】ニコチアナ・ベンタミアナ(Nicotiana benthamiana)において作製されたHer2-ED44ベースのワクチンの評価のための実験計画の概略図である。Balb/cマウスの別々の群を、50μgのラットHer2-ED44-Hisワクチン又はコンジュゲートワクチンHer2ED44-FrC又はHer2ED44-TMV(両方とも同等量のHer2-ED44を含む)で免疫化する。全てのHer2ED44含有ワクチンを、等量のミョウバンアジュバント(Sigma)と組み合わせ、合計200μLのミョウバン吸着ワクチンを、脇腹における2つの部位に皮下投与した。対照ワクチンについては、130μgの植物で発現された無関係なタンパク質(ICONにより作製された5T33Ig-hkappa-フラグメントC融合タンパク質)を上の通りに与える。Her2/neuの全長細胞外+膜貫通ドメイン(EC-TM)をコードするDNAワクチン(50μg)(Prof.Forni,University of Turin,Italy;Quagliino,E.、Mastini,C.、Forni,G.ら、2008、Curr.Protoc.Immunol.、Ch.20:Unit 20.9.1-20.9-10)を、マウスの別々の群中に筋内投与し、比較ワクチンとしての役割を果たした。1群当たり少なくとも5匹のマウスを、各実験毎にワクチン接種した。マウスの各群は、最初の注射後3週目(D21)に、同量の相同ワクチンの2回目の注射を受けた。マウスを、最初の注射後3週目と2回目の注射の前に、並びに2週間の間隔(5週目及び7週目)で2回目の注射後に2回採血した。試料は、Her2-ED44に対する反応性について、及び膜結合Her2/Neuに対する反応性について、ラットHer2(Neu)を発現するTUBO腫瘍細胞系又はヒトHer2を発現するD2F2/E2腫瘍細胞系を使用して、ELISAにより分析した。腫瘍攻撃実験において、以前に2用量のワクチンで注射されたマウスを、TUBO細胞又はD2F2/E2細胞のいずれかで攻撃した。マウス1匹当たり10個の細胞を、それぞれの例において、ワクチンの最後の注射後7週目に脇腹中に皮下注射した。
図15】ラットHer2-ED44ベースのワクチン、rHer2-ED44-TMV(ED44-TMV)、rHer2-ED44-フラグメントC(ED44-FrC)、又はrHer2-ED44-His(ED44)でのワクチン接種に続いてBalb/cマウスで誘導される全IgG抗体応答及び抗体アイソタイプ。抗体アイソタイプを5週目に測定した。
図16】TUBO癌細胞系の表面上に発現されたラットHer2/Neuへの結合の図である。ヒストグラム上のFACSプロットの数字は、蛍光強度(MFI)の平均値を表す。Tubo癌細胞系での攻撃に対するラットHer2-ED44ワクチン接種マウスの防御。
図17】D2F2/E2癌細胞系の表面上に発現されたヒトHer2/neuへの結合の図である。ヒストグラム上のFACSプロットの数字は、蛍光強度(MFI)の平均値を表す。D2F2/E2細胞系での攻撃に対するラットHer2-ED44ワクチン接種マウスの防御。
図18】ヒトED44 Her2-FRC試験D2F2/E2乳癌モデル:予防的設定の図である。ヒト(hu)ED44-FrCコンジュゲートワクチン又は非コンジュゲートhuED44による防御免疫の誘導。A.予防的設定におけるD2F2/E2乳癌に対する防御。B.5週目での2回の注射(0日目及び21日目)後の抗Her2/neu抗体のレベル。C.フローサイトメトリーにより測定した、D2F2/E2腫瘍細胞上での天然Her2/neuへの誘導抗体の結合。
図19】huED44-FrCコンジュゲートワクチンで誘導された抗体によるHer2/neu媒介性シグナル伝達(Aktリン酸化)の阻害の図である。ハーセプチン及びPI3K(Her2シグナル伝達の下流)阻害剤LY294002と比較した、in vitroでHer2媒介性シグナル伝達を阻害する、huED44-FrCコンジュゲートワクチンにより誘導された抗体の能力の評価。Her2陽性ヒト乳癌細胞系BT474を、示した希釈でのhuED44-FRC、対照ワクチン、ハーセプチン又はLY294002(30μM)でワクチン接種したマウスからの血清を用いて別々に処理し、Aktリン酸化(細胞シグナル伝達)を阻害する。ウェスタンブロット分析を、リン酸化Akt(Ser473、上パネル)、全Akt(中央パネル)、又はBアクチン(下パネル)のいずれかに対する抗体を使用して、示す通りに、処置後に行った。ヒトHER2陽性乳癌細胞系BT474を、別々に、示した希釈でのワクチン接種マウスからのプール血清試料、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、Roche、UK)、又は30μM LY294002阻害剤(inhibotor)(Cell Signalling Tecnology、米国マサチューセッツ州)で1時間にわたりインキュベートした。全ての処置を、37℃、10%COで、10%FCSを添加した完全DMEM培地中で行った。インキュベーション後、細胞を収集し、溶解し、1試料当たり10μgのタンパク質を、95℃で5分間にわたり変性した後、SDS-PAGE(NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4~12%ビス-トリスゲル、Invitrogen Life Technologies、米国カリフォルニア州)に供した。電気泳動に続き、タンパク質をポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(Amersham Hybond(商標)P、GE Healthcare、英国バッキンガムシャー)に移し、0.1%Tween(登録商標)20を伴うトリス緩衝生理食塩水(TBS)中の5%無脂肪ミルク中でブロッキングした後、(TBS-T)を、抗pAkt(ウサギ抗リン酸化Akt(Ser 473)抗体、Cell Signalling Technologies)、Akt(ウサギ抗Akt抗体、Cell Signalling Technologies)、又はβアクチン(マウス抗ヒトβアクチン抗体、クローン2F1-1、BioLegend)抗体と、1/1,000希釈で連続的にインキュベートした。その後の各抗体を適用する前に、以前の抗体を除去した。TBS-Tで3回洗浄後、膜を、HRPコンジュゲート二次抗体(抗ウサギ IgG-HRP、Cell Signalling Technologies又は抗マウスIgG(Gamma)(AFF)-PEROX, The Binding Site、英国バーミンガム)のTBS-T中での1/1,000で、1時間にわたり室温でインキュベートした。膜をSuperSignal(商標)ウェストピコ化学発光基質(Thermo Scientific、米国イリノイ州)を用いて、c検出前に、再びTBS-Tで3回洗浄した。化学発光シグナルを、Bio-Radイメージングシステム(Fluor-S(登録商標)MultiImager、Bio-Rad)を使用して捕捉した。
図20】ラットED44 Her2-FrC試験TUBOモデル:予防的設定の図である。予防設定のTUBOモデルにおけるラットED44-FrCコンジュゲートワクチン及び非コンジュゲートラットED44の実験計画及びテスト。両方のワクチンが、EC-TM DNAワクチン(Forni教授(トリノ大学、イタリア)からの寄贈;Quagliino,E.、Mastini,C.、Forni,G.ら、2008、Curr.Protoc.Immunol.、Ch.20:Unit 20.9.1-20.9-10)と同様の、腫瘍攻撃に対する高度に有意な防御を誘導した(左上パネル)。この防御は、両方のワクチンによるHer2 ED44に対する抗体の誘導を伴い、それぞれの場合におけるレベルが、DNAワクチンにより誘導されるものよりも有意に高かった(右上パネル)。誘導された抗体は、また、TUBO細胞の表面上で発現された天然Her2に結合した(下パネル)。
図21】自然発症の転移性乳癌のBalb-NeuTモデルにおけるED44-FrCワクチンのテストの実験計画及び結果の図である。A.転移性乳癌(Balb-NeuTモデル)の治療設定における実験のためのワクチン接種及び試料回収のためのプロトコール。治療設定における実験の概略図。10~11週齢のBalb-NeuT雌マウス(それらが、骨髄及び肺において微小の複数の癌腫を発生する齢)を、示したワクチン接種及び出血のためのプロトコールに従ったTUBOモデルについて、ラットED44、ED44-FrCワクチン、又はEC-TM DNAの同じ量及び製剤でワクチン接種した(対照ワクチン、Quagliino,E.、Mastini,C.、Forni,G.ら、2008、Curr.Protoc.Immunol.、Ch.20:Unit 20.9.1-20.9-10)。合わせた腫瘍の大きさが15mmに達した場合、Balb-NeuTマウスを終了した。実験の結果をBに示す。B.Balb-NeuTモデルトランスジェニック:転移を伴う乳癌の治療設定ED44-FrCが、腫瘍からの有意な防御を生成したのに対し、非コンジュゲートワクチンのED44又はEC-TM DNAワクチンは、有意な防御を生成することができなかった(上パネル)。ED44-FrCワクチンは、また、ED44又はEC-TM DNAワクチンよりも有意に高いIgG抗体レベルを誘導した(左下パネル)。ED44-FrCワクチン接種マウスにおけるHer2ED44特異的抗体の親和性は、ED44ワクチン接種マウスよりも有意に高かった(右下パネル)。抗体親和性は、カオトロピックELISAを使用して測定した。故に、治療設定におけるコンジュゲートED44-FrCワクチンは、非コンジュゲート又はEC-TM DNAワクチンよりも高い抗Her2抗体レベル及び親和性を誘導する。EC-TM DNAワクチンは、G.Forniの研究室(トリノ大学、イタリア)からである。
図22図21Aにおける通りの実験計画(転移を伴う乳癌の治療設定)を使用した、自然発生の転移性乳癌のBalb-NeuTモデルにおけるED44-TMVワクチンのテストの結果の図である。10~11週齢のBalb-NeuT雌マウス(それらが、骨髄及び肺において微小の複数の癌腫を発生する齢)を、TUBOモデルについてのワクチン接種及び出血のためのプロトコールに従って、ミョウバンを伴う、50μgのラットED44又は70μgのED44-TMVでワクチン接種した。ED44-TMVワクチンはED44よりも高いIgG抗体レベルを誘導した。ED44-TMVワクチン接種マウスにおけるHer2ED44特異的抗体の親和性は、また、ED44-ワクチン接種したマウスよりも高かった。IgGレベル及び抗体親和性の両方を、最初の注射後5週目に測定した。抗体親和性を、カオトロピックELISAを使用して測定した。Quaglino E,Mastini C,Forni G,Cavallo F.(2008)のErbB2トランスジェニックマウス:乳癌の免疫予防及び処置の研究用のツール。Curr Protoc Immunol.2008年8月;20章:Unit 20.9.1-20.9-10.doi:10.1002/0471142735.im2009s82.
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタンパク質コンジュゲートは、タンパク質抗原と免疫原性担体(単に「担体」という)とのコンジュゲートである。本発明のコンジュゲートにおいて、タンパク質抗原及び担体は架橋されており、それらが、少なくとも1つの共有化学結合により連結されていることを意味する。しかし、タンパク質抗原の1つの分子と担体粒子又は担体分子の間に複数の共有結合が存在しうる。タンパク質抗原は、1つのアミノ酸配列からなりうるタンパク質である。タンパク質抗原の目的は、HER2/Neuの細胞外ドメインに対するポリクローナル免疫応答を生成することである。担体の目的は、HER2/Neuに対する耐久性のある体液性又はT細胞依存性免疫を生成し、HER2/Neuに対する寛容性を克服することである。このように、タンパク質コンジュゲートは、HER2/Neu陽性癌に対する広範且つ耐久性のある体液性又はT細胞依存性免疫をもたらすことができる。
【0018】
1255アミノ酸(配列番号18)のヒトHER2タンパク質は、アミノ酸653まで、及びそれを含むように拡張されるように本明細書において定義されるN末端細胞外ドメイン、アミノ酸654から675の膜貫通ドメイン、並びに配列番号18のアミノ酸676から1255までのC末端細胞内ドメイン(ICD)を有する。
【0019】
本発明において、タンパク質抗原は、タンパク質コンジュゲート又はタンパク質抗原をワクチンとして患者に投与した場合に、HER2/Neuタンパク質に対する免疫応答を誘発することができるセグメントを含む、又はそれからなるタンパク質である。このセグメントは、また、本明細書において「第1のセグメント」として言及される。本明細書において、セグメントは、タンパク質の線形アミノ酸配列の部分である。タンパク質抗原は、HER2/Neuタンパク質に対する免疫応答を誘発することができるセグメントからなりうる。しかし、一般的に、タンパク質抗原は、HER2/Neuタンパク質に対する免疫応答を誘発することができるセグメントに加えて、さらなる部分又はセグメントを含む。そのようなさらなる部分又はセグメントは、シグナルペプチド、又は発現されたタンパク質抗原の簡単な精製を可能にする部分(例えば精製タグなど)として機能する部分でありうる。精製タグ、及び他の部分は、タンパク質抗原の残りの部分にリンカーペプチドを介して連結されてもよく、それにより、リンカーによってタグの切断が可能になりうる。精製タグの例は、6×Hisタグ又は抗体軽鎖の定常部分である。軽鎖は、カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖でありうる。軽鎖は、好ましくは、ワクチン接種される種から採取される。本発明の主な目的は、ヒトのワクチン接種であるため、ヒト抗体の軽鎖が、好ましくは、精製タグとして使用される。好ましい精製タグは、抗体軽鎖からの定常領域である。なぜなら、それらは患者の血流中に豊富であり、したがって、一般的に、任意の有害反応を起こさないからである。このように、そのような精製タグは、タンパク質抗原の発現及び精製後にタンパク質抗原から切断する必要はない。
【0020】
本明細書において、HER2/Neuタンパク質に対する免疫応答を誘発することができる(タンパク質抗原の)セグメントは、好ましくは、HER2/NeuのECDの複数のエピトープに対するポリクローナル免疫応答を生成するために、実質的な長さを有する。この目的のために、タンパク質抗原は、HER2/Neuタンパク質のECD又はHER2/Neuタンパク質のECDからのセグメントに対して高い配列類似性又は同一性を有する実質的な長さのセグメントから取られた、実質的な長さのセグメントを有する。セグメントの長さは、少なくとも300アミノ酸残基、好ましくは少なくとも320アミノ酸残基である。長さは、好ましくは最大600アミノ酸、好ましくは最大500、より好ましくは最大400のアミノ酸残基である。他の好ましい実施形態において、長さは、300から400までのアミノ酸、又は320から370までのアミノ酸である。さらにより好ましい実施形態において、このセグメントの長さは、330から360まで、又は337から350までのアミノ酸残基である。実施例において、344アミノ酸を有するセグメントが使用され、それは本明細書において「ED44」として言及され、「44」は、44kDaの分子を示し、「ED」は、「細胞外ドメイン」を表す。
【0021】
HER2/Neuに対する免疫応答を誘発することができるセグメントは、配列番号1に与えられるHER2/NeuのEDから取られたアミノ酸配列を有しうる。配列番号1のアミノ酸配列の300又はそれ以上の連続アミノ酸配列のタンパク質抗原の配列セグメントは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸332から631まで、より好ましくはアミノ酸325から640まで、さらにより好ましくはアミノ酸317から647までのアミノ酸配列セグメント又は項目(II)若しくは(III)において定義する通りの変異体配列セグメントを含む。以下にさらに説明する通り、タンパク質抗原は、一般的に、HER2タンパク質の任意の配列セグメントと50%を上回る配列同一性を有するさらなる配列セグメントを含まない。
【0022】
別の実施形態において、タンパク質抗原は、配列番号2のアミノ酸配列の300、好ましくは330、より好ましくは337又はそれ以上の連続アミノ酸残基の配列セグメントを有する。また、本実施形態において、タンパク質抗原は、一般的に、HER2タンパク質の任意の配列セグメントと50%を上回る配列同一性を有するさらなる配列セグメントを含まない。
【0023】
タンパク質抗原がHER2に対する所望の免疫応答を誘発するために、配列番号1又は配列番号2の配列部分への配列同一性は、100%である必要はない。代わりに、配列セグメントは、配列番号1又は配列番号2からの配列部分と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する変異体でありうる。アミノ酸配列の同一性は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%でありうる。配列同一性パーセントを計算する際、2つの配列を整列させて、2つの配列間でのヌクレオチド又はアミノ酸残基の同一のマッチ数を決定する。同一のマッチ数は、整列された領域の長さ(即ち、整列されたヌクレオチド又はアミノ酸残基の数)により分割され、100を乗じ、パーセント配列同一性の値に達する。配列セグメント(整列された領域)の可能性のある、好ましい長さは、上に定義した通りである。
【0024】
別の実施形態においては、配列セグメントは、配列番号1又は配列番号2からの配列部分と少なくとも91%の配列類似性を有するアミノ酸配列を有する変異体でありうる。アミノ酸配列同一性は、少なくとも91%、好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも97%、さらにより好ましくは少なくとも99%でありうる。整列された領域の可能性のある、好ましい長さは、上で定義する通りである。アミノ酸配列の類似性及び同一性は、BLASTX2.2.14を使用して、標準的な設定を使用して決定されうる。標準設定は、例えば、アラインメント中の配列ギャップについて可能である。
【0025】
或いは、タンパク質抗原の変異体配列セグメントは、変異体配列が、動物(例えばラット又はマウスなど)に注入された場合、依然としてヒトHER2タンパク質のECDに対する抗体の形成を誘発すると仮定し、セグメントの長さにわたり、配列番号1又は配列番号2からの配列部分と比較して、アミノ酸のいくつかの付加、置換、又は欠失を有しうる。アミノ酸の付加、置換、又は欠失の最大数は、最大20、好ましくは最大10、より好ましくは最大5の付加、置換、及び付加でありうるが、それにより、付加、置換及び付加の総数は、一緒に、「アミノ酸付加、置換、又は欠失」の数を決定する。付加、置換、及び付加のこれらの数は、300又はそれ以上のアミノ酸残基の配列セグメントの長さにわたり生じる。好ましい長さは、上に与える長さである。置換は、例えば図1に示すアライメントのように、整列させたラット及びヒトHER2タンパク質が逸脱するアミノ酸配列中のこれらの位置で起こりうる。これは、ラットHER2タンパク質のECDに対する抗体が、ヒトHER2タンパク質のECDと交差反応性である、及びその逆もあるとの事実に基づく。好ましくは、配列番号1の以下の位置:317、318、352、353、356、353、359、361、365、387、398、390、394、420、429、430、451、452、470、472、497、498、502、503、505、506、510、512、513、517、533、547、548、556から559、572、574、579、585、593~595、622、639、640、651の1つ又は複数でのアミノ酸が、他のアミノ酸の残基により置換されうる。
【0026】
最小の配列同一性又は類似性による、及び付加又は欠失の最大数による変異体配列セグメントの定義を組み合わせてもよい。このように、変異体配列セグメントは、配列番号1又は2との最小配列同一性又は類似性、及び1から20まで、好ましくは1から10まで、より好ましくは1から5までの付加及び/又は欠失を有してもよく、配列同一性又は類似性を決定する際に、最適化されたアライメントを可能にする。好ましくは、変異体配列セグメントは、配列番号1又は2の最小配列同一性、及び1から10までの付加及び/又は欠失を有しうる。
【0027】
或いは、タンパク質抗原の変異体配列セグメントは、配列番号1又は配列番号2をコードする核酸配列に相補的である核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされうる。ハイブリダイゼーション条件は、DNAプローブのG/C組成及びハイブリダイゼーション緩衝液中の塩濃度に依存する。ハイブリダイゼーションのために、通常、異なる濃度のSSC緩衝液が使用される。1×SSC緩衝液は、150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム、pH7.0を含む。ハイブリダイゼーションの結果は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー、例えば、実験が実施されるDNAのTm(融解温度)を下回る度数に直接的に関連する。Tmよりも高い度数は、より弱いハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに対応する。DNAの水溶液(無塩)について、Tm用の式は、Tm=69.3℃+0.41(%G+C)℃である。ここで、ストリンジェントな条件は、例えば、ハイブリダイゼーションが、60℃で、0.1%SDSを含む1×SSC中で起こる条件である。
【0028】
本発明のタンパク質抗原、及び、好ましくは、タンパク質コンジュゲートは、好ましくは、以下の通りの、さらなるアミノ酸配列セグメントを含まない:
配列番号18のアミノ酸1から253、好ましくは1から283、より好ましくは1から300からの配列部分からの、又はアミノ酸670から、好ましくはアミノ酸654から開始し、アミノ酸1255までの配列部分からの20又はそれ以上、好ましくは10又はそれ以上の連続アミノ酸残基のさらなるアミノ酸配列セグメント;或いは、配列番号18のアミノ酸1から253、好ましくは1から283、より好ましくは1から300からの配列部分、又はアミノ酸670から、好ましくはアミノ酸654から開始し、アミノ酸1255までの配列部分と50%を上回る、好ましくは40%を上回る配列同一性を有する20を上回る連続アミノ酸残基のさらなるアミノ酸配列セグメント。
【0029】
一実施形態において、タンパク質抗原、及びタンパク質抗原を含むタンパク質コンジュゲートは、配列番号18のHer2/neuタンパク質の膜貫通ドメイン又は細胞内ドメインからの10又はそれ以上、好ましくは5又はそれ以上の連続アミノ酸残基のアミノ酸配列セグメントを含まない。
【0030】
別の実施形態において、前記タンパク質抗原の少なくとも7つのアミノ酸残基の長さの(タンパク質抗原の)任意のさらなる配列セグメントは、配列番号18の同一の長さの任意の配列部分とアミノ酸配列同一性50%未満を有する。
【0031】
さらなる実施形態において、タンパク質抗原は、HER2タンパク質に対する免疫応答を誘発することができる第1の配列セグメント及び任意選択でさらなる配列セグメントからなり、前記第1の配列セグメントは、
(i)配列番号2のアミノ酸配列の300、好ましくは330、より好ましくは337のアミノ酸配列又はより多くの連続アミノ酸残基を有し;又は
(ii)300、好ましくは330、より好ましくは337又はそれ以上のアミノ酸残基の変異体アミノ酸配列を有し、前記変異体配列セグメントのアミノ酸配列は、配列番号2からの配列部分と少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有し;又は
(iii)300の、好ましくは330の、より好ましくは337又はそれ以上のアミノ酸残基の変異体アミノ酸配列を有し、300又はそれ以上のアミノ酸残基、又はアミノ酸残基の数に関して同じ長さのアミノ酸配列の、配列番号2のアミノ酸配列の配列セグメントと比較して、1から20の置換、欠失、又は付加を前記変異体配列中に有し;
前記タンパク質抗原(又はタンパク質抗原を含むタンパク質コンジュゲート)が、配列番号18のアミノ酸1から253、好ましくは1から283からの配列部分からの、又はアミノ酸670から、好ましくはアミノ酸654から開始する配列部分からの20又はそれ以上、好ましくは10又はそれ以上の連続アミノ酸残基のさらなるアミノ酸配列セグメントを含まない。
【0032】
タンパク質抗原を含むタンパク質のコンジュゲートにおいて、タンパク質抗原及び免疫原性担体は、好ましくは、化学的架橋剤を使用した化学的架橋により共有結合されている。
【0033】
タンパク質抗原は、一般的に公知である方法に従ってクローニングし、発現させることができる。しかし、発現は、好ましくは、真核細胞中で行われる。HER2/Neuの細胞外ドメインからの所望の部分又は第1セグメントをコードする核酸を、HER2遺伝子の公知の遺伝子配列を使用して、そのような部分のために設計されたプライマーを使用してクローニングすることができる。HER2/neu遺伝子についてのGenBank受託番号はAAA75493(配列番号18)である。安定なトランスジェニック又は一過性発現のいずれかのために設計された異なる産生宿主(細菌、真菌、動物、昆虫、及び植物細胞)及び発現ベクターに基づく、多くの異なる発現系を使用することができる。全てのそのような系は、当業者に周知であり、記載されており(総説については、Huang,C.J.、Lin,H.&Yang,X.2012、J.Ind.Microbiol.Biotechnol.、39:383-399;Hou,J.、Tyo,K.E.、Liu,Z.ら、2012、FEMS Yeast Res.、12:491-510;Martinez,J.L,、Liu,L.、Petranovic,D.ら、2012、Curr.Opin.Biotechnol.、Apr 12.[Epub ahead of print];Su,X.、Schmitz,G.、Zhang,M.ら、2012、Adv Appl Microbiol.、81:1-61;Ghaderi,D.、Zhang,M.、Hurtado-Ziola,N.&Varki,A.2012、Biotechnol.Genet.Eng.Rev.、28:147-175;Egelkrout,E.、Rajan,V.&Howard,J.A.、2012、Plant Sci.、184:83-101を参照のこと)、系の選択は、因子、例えば材料のコスト又はタンパク質産生のために要求されるスピードなどに依存する。本発明者らの好ましい選択は、モノクローナル抗体などのヘテロオリゴマータンパク質を含む、異なる型の組換えタンパク質の産生におけるスピード、収率、及び普遍性に起因して、植物発現系、特に植物ウイルスベースの一過性発現系である。植物発現系の別の重要な利点は、発現ベクターからの植物ウイルスコートタンパク質又は融合タンパク質の発現を可能にすることにより、植物ウイルス粒子の産生を提供する能力である(Werner,S.ら、2006,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:17678-17683;WO2007031339)。そのような系は、多数の研究論文、総説、及び特許において詳細に記載されている(Marillonnet,S.、Thoeringer,C.、Kandzia,R.ら、2005、Nat.Biotechnol.、23:718-723;Giritch,A.、Marillonnet,S.、Engler,C.、ら、2006、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:14701-14706;Gleba,Y.、Klimyuk,V.&Marillonnet,S.2007、Curr.Opin.Biotechnol.、18:134-141;Klimyuk,V.、Pogue,G.、Herz,S.ら、2012、Curr Top Microbiol Immunol.、Apr 15;WO2005049839;WO2006079546)。WO2005049839には、その可能な植物ウイルス発現ベクター、その改変、及びその配列情報の詳細情報が含まれている。ウイルスベクターの設計、クローニング戦略、並びに組換えタンパク質及びウイルス粒子の発現は、例1において、本明細書において詳細に記載される。異なるDNAフラグメントを一緒にシームレスに繋ぐためのモジュラークローニング戦略が、本発明者らの研究室において確立され、構築物の操作のために使用された(Engler,C.、Kandzia,R.&Marillonnet,S.、2008,PLoS One,3:e3647;Weber E.、Engler,C.、Guetzner,R.ら、2011、PLoS One、6:e16765;Engler,C.&Marillonnet,S.2011、Methods Mol Biol.、729:167-81;Thieme,F.、Engler,C.、Kandzia,R.ら、2011,PLoS One,6:e20556)。この系は、シンプルで、信頼でき、使用するのが便利であり、任意の複雑度の速い構造操作を可能にする。ヒトHer2/neuのED44(アミノ酸310~653残基;図1A)及びその2つの切断変異体(アミノ酸残基310~649及び340~649;図1C、D)をウイルスベクター中にクローニングし、発現レベルについてテストしており、コンジュゲート生成及びワクチン製剤のために使用した。
【0034】
好ましくは真核生物宿主におけるタンパク質抗原の発現後、それは、一般的に公知である方法を使用して精製される。一実施形態において、タンパク質抗原は、精製タグを有する。精製は、次に、精製タグに対する親和性を有するマトリクスを使用したカラムクロマトグラフィーを含むことができる。
【0035】
免疫原性担体は、少なくとも5kDaの、好ましくは少なくとも10kDaの、より好ましくは少なくとも15kDaの、さらにより好ましくは少なくとも20kDaの分子量を有しうる。分子量は、しかし、依然として20kDaのよりもずっと大きくてもよく、100kDaよりも高くてもよい。担体はタンパク質であってもなくてもよい。好ましくは、しかし、担体はタンパク質でもある。担体タンパク質は、単量体タンパク質、例えば破傷風毒素フラグメントC若しくはDOM1フラグメント(配列番号17)など、又はその多量体タンパク質でありうる。多量体タンパク質は、タンパク質サブユニットのジ、トリ又はそれよりも高いオリゴマー又はポリマーでありうる。高分子タンパク質であり、広く使用されている担体の例は、キーホールリンペットヘモヘモシアニン(KLH)である(Harris,J.R.&Markl,J.1999、Micron.、30:597-623;Harris,J.R.&Markl,J.2000,Eur.Urol.、3:24-33)。他の高分子タンパク質の例は、多数の単量体タンパク質分子又はサブユニット、一般的には、コートタンパク質単量体の多量体からなる、又はそれを含みうるウイルス粒子である。そのようなウイルス粒子は、ウイルスRNA又はDNAを含みうる。ウイルス粒子が好ましい担体である。なぜなら、それらが、特に哺乳動物、例えばヒトなどにおいて高度に免疫原性であり、強い免疫応答を起こすことができるからである。一実施形態において、ウイルス粒子は、例えば植物トバモウイルスなどの植物ウイルス粒子である。本発明のタンパク質コンジュゲートにおいて免疫原性担体として使用されうるウイルス粒子、特に植物ウイルス粒子が、以下においてより詳細に記載される。
【0036】
ウイルス粒子は、複数のウイルスコートタンパク質分子を含む多量体粒子である。Analytical Biochem.、333(2004)230-235に記載されている通りに電子顕微鏡法において決定されるウイルス粒子のサイズは、最短寸法で少なくとも10nm、より好ましくは最短寸法で少なくとも13nmでありうる。
【0037】
以前に言及した通り、ウイルス粒子は、一般的に、多くのコートタンパク質分子で形成される。ウイルス粒子、特に植物ウイルス粒子は、WO 2007/031339において記載される通り、適切な宿主、例えば植物又はその細胞などにおいてコートタンパク質分子を発現させることにより、又は植物ウイルスで感染された植物宿主から植物ウイルス粒子を精製することにより形成することができる。
【0038】
植物ウイルス(その植物ウイルス粒子が、本発明のタンパク質コンジュゲートにおいて使用されうる)が公知であり、例えば、Drews,Adam,Heinze,“Molekulare Pflanzenvirologie”,Springer-Verlag Berlin,Heidelberg 2004の書籍を参照のこと。ウイルス粒子は、細菌宿主又は植物宿主においてウイルス粒子を形成するために集合する(単量体)タンパク質、一般的に、コートタンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現させることにより産生されうる。植物宿主は、植物細胞、植物組織、又は植物全体でありうる。コートタンパク質をコードすることとは別に、前記ポリヌクレオチドは、選ばれた宿主においてコートタンパク質の発現のために要求される調節エレメントを有するであろう。ポリヌクレオチドを発現させる際、本発明のウイルス粒子は、一般的に、宿主細胞内で集合する、又は適切な条件下で宿主細胞からのコートタンパク質を単離した後、in vitroで集合しうる。
【0039】
植物ウイルスコートタンパク質は、例えば、任意の植物ウイルス、例えば以下に列挙する植物ウイルスなどに由来しうる。一実施形態において、前記植物ウイルスコートタンパク質は、桿状のウイルス粒子を形成する植物ウイルスに由来する。他の例は、糸状及び二十面体植物ウイルス粒子である。「由来する」は、植物ウイルス粒子を形成するコートタンパク質が、植物ウイルスの天然コートタンパク質と同一である必要はないことを意味する。代わりに、使用されるコートタンパク質は、植物ウイルスの天然コートタンパク質と比べて、付加、欠失、挿入、又は変異を有しうる。一実施形態において、天然植物ウイルスコートタンパク質の最大で20のアミノ酸残基が欠失及び/又は変異している。別の実施形態において、最大で20のアミノ酸残基が、コートタンパク質が由来する植物ウイルスの植物ウイルスコートタンパク質の天然配列中に挿入される。
【0040】
植物ウイルス粒子(及び植物ウイルス粒子を形成する植物ウイルスコートタンパク質)、及び植物ウイルス粒子は、RNAウイルス、例えば植物プラスセンス一本鎖RNAウイルスなど、又はDNAウイルスに由来しうる。本発明のために使用されうるコートタンパク質を提供する植物ウイルスの例は、前記フラグメント又は相同体がウイルス粒子を形成することができるという条件で、トバモウイルス、例えばタバコ・モザイク・ウイルス(TMV)、カブ葉脈透化ウイルス(TVCV)、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、及びそのフラグメント又はホモログを含む。一実施形態において、使用されるコートタンパク質は、カブ静脈クリアリングウイルスのコートタンパク質、タバコ・モザイク・ウイルス、ジャガイモウイルスX、又はジャガイモウイルスYと少なくとも50%の配列同一性を有する。別の実施形態において、前記の配列同一性は、少なくとも60%である;さらなる実施形態において、前記の配列同一性は、少なくとも70%である。重要な実施形態において、コートタンパク質は、少なくとも90%のタバコ・モザイク・ウイルスのコートタンパク質との配列同一性を有する。
【0041】
ウイルス粒子を形成する別の分類群に属する植物ウイルスは、本発明の原理に従った免疫原性担体として使用することができる。これは、RNA含有ウイルス及びDNA含有ウイルスの両方について右側であり、それらの例を以下に与える。目、科、及び属の名称は、それらがICTVにより承認された場合、イタリック体である。引用中の分類群名(イタリック体ではない)は、この分類群がICTVの国際承認名を有さないことを示す。種(固有)名を、通常のスクリプト中に与える。属又は科に正式に割り当てられていないウイルスを示す:
DNAウイルス:
環状dsDNAウイルス:科:カリモウイルス科(Caulimoviridae)、属:バドナウイルス(Badnavirus)、基準種:コメリナ・イエロー・モット・ルウイルス(commelina yellow mottle virus)、属:カリモウイルス(Caulimovirus)、基準種:カリフラワー・モザイク・ウイルス(cauliflower mosaic virus)、属「SbCMV様ウイルス」、基準種:ダイズ・クロロティック斑紋ウイルス(Soybean chloroticmottle virus)、属「CsVMV様ウイルス」、基準種:キャッサバ・ベイン・モザイクウイルス(Cassava vein mosaicvirus)、属「RTBV様ウイルス」、基準種:ライス・ツングロ・バシリホルムウイルス(Rice tungro bacilliformvirus)、属「ペチュニア・ベイン・クリアリング様ウイルス(Petunia vein clearing-like viruses)」、基準種:ペチュニア・ベイン・クリアリングウイルス(Petunia vein clearing virus);
環状ssDNAウイルス:科:ジェミニウイルス科(Geminiviridae)、属:マストレウイルス(Mastrevirus)(サブグループIジェミニウイルス(Subgroup I Geminivirus))、基準種:メイズ・ストリーク・ウイルス(maize streak virus)、属:カートウイルス(Curtovirus)(サブグループIIジェミニウイルス(Subgroup II Geminivirus))、基準種:ビート・カーリー・トップ・ウイルス(beet curly top virus)、属:ベゴモウイルス(Begomovirus)(サブグループIIIジェミニウイルス(Subgroup III Geminivirus))、基準種:ビーン・ゴールデン・モザイク・ウイルス(bean golden mosaic virus);
RNAウイルス:
ssRNAウイルス:科:ブロモウイルス科(Bromoviridae)、属:アルファモウイルス(Alfamovirus)、基準種:アルファルファ・モザイク・ウイルス、属:イラルウイルス(Ilarvirus)、基準種:タバコ・モザイク・ウイルス(tobacco streak virus)、属:ブロモウイルス(Bromovirus)、基準種:ブロム・モザイク・ウイルス(brome mosaic virus)、属:ククモウイルス(Cucumovirus)、基準種:キュウリ・モザイク・ウイルス(cucumber mosaic virus);科:クロステロウイルス科(Closteroviridae)、属:クロステロウイルス(Closterovirus)、基準種:ビート萎黄ウイルス(beet yellows virus)、属:クリニウイルス(Crinivirus)、基準種:レタス感染性イエローズ・ウイルス(Lettuce infectious yellows virus)、科:コモウイルス科(Comoviridae)、属:コモウイルス(Comovirus)、基準種:カウピー・モザイク・ウイルス(cowpea mosaic virus)、属:ファバウイルス(Fabavirus)、基準種:ソラマメ・ウイルト・ウイルス1(broad bean wilt virus 1)、属:ネポウイルス(Nepovirus)、基準種:タバコ輪点ウイルス(tobacco ringspot virus);科:ポティウイルス科(Potyviridae)、属:ポティウイルス(Potyvirus)、基準種:ジャガイモYウイルス(potato virus Y)、属:リモウイルス(Rymovirus)、基準種:ライグラス・モザイク・ウイルス(ryegrass mosaic virus)、属:ビモウイルス(Bymovirus)、基準種:オオムギ縞萎縮ウイルス(barley yellow mosaic virus);科:セキウイルス科(Sequiviridae)、属:セキウイルス(Sequivirus)、基準種:パースニップ・イエロー・フレック・ウイルス(parsnip yellow fleck virus)、属:ワイカウイルス(Waikavirus)、基準種:ライス・ツングロ・スフェリカル・ウイルス(rice tungro spherical virus)、科:トムブスウイルス科(Tombusviridae)、属:カルモウイルス(Carmovirus)、基準種:カーネーション斑紋ウイルス(carnation mottle virus)、属:ディアンソウイルス(Dianthovirus)、基準種:カーネーション・リングスポット・ウイルス(carnation ringspot virus)、属:マクロモウイルス(Machlomovirus)、基準種:メイズ・クロロティック斑紋ウイルス(maize chlorotic mottle virus)、属:ネクロウイルス(Necrovirus)、基準種:タバコ・ネクロシス・ウイルス(tobacco necrosis virus)、属:トムブスウイルス(Tombusvirus)、基準種:トマト・ブッシィ・スタント・ウイルス(tomato bushy stunt virus)、未帰属のssRNAウイルス属、属:カピロウイルス(Capillovirus)、基準種:リンゴ・ステム・グルービング・ウイルス(apple stem grooving virus);属:カルラウイルス(Carlavirus)、基準種:カーネーション潜在ウイルス(carnation latent virus)、属:エナモウイルス(Enamovirus)、基準種:ピー・エネーション・モザイク・ウイルス(pea enation mosaic virus);属:フロウイルス(Furovirus)、基準種:ムギ類萎縮ウイルス(soil-borne wheat mosaic virus)、属:ホルデイウイルス(Hordeivirus)、基準種:ムギ斑葉モザイク・ウイルス(barley stripe mosaic virus)、属:イダエオウイルス(Idaeovirus)、基準種:ラズベリ・ブッシィ・ドワーフ・ウイルス(raspberry bushy dwarf virus);属:ルテオウイルス(Luteovirus)、基準種:オオムギ黄萎ウイルス(barley yellow dwarf virus);属:マラフィウイルス(Marafivirus)、基準種:メイズ・ラヤド・フィノ・ウイルス(maize rayado fino virus);属:ポテックスウイルス(Potexvirus)、基準種:ジャガイモXウイルス(potato virus X);属:ソベモウイルス(Sobemovirus)、基準種:インゲンマメ南部モザイク・ウイルス(Southern bean mosaic virus)、属:テヌイウイルス(Tenuivirus)、基準種:イネ縞葉枯ウイルス(rice stripe virus)、属:トバモウイルス(Tobamovirus)、基準種:タバコ・モザイク・ウイルス(tobacco mosaic virus)、属:トブラウイルス(Tobravirus)、基準種:タバコ茎えそウイルス(tobacco rattle virus)、属:トリコウイルス(Trichovirus)、基準種:リンゴ・クロロティック・リーフ・スポット・ウイルス(apple chlorotic leaf spot virus);属:ティモウイルス(Tymovirus)、基準種:ターニップ・イエロー・モザイク・ウイルス(turnip yellow mosaic virus);属:ウムブラウイルス(Umbravirus)、基準種:キャロット斑紋ウイルス(carrot mottle virus);
マイナスssRNAウイルス:目:モノネガウイルス(Mononegavirales)、科:ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、属:シトラブドウイルス(Cytorhabdovirus)、基準種:レタス・ネクロティック・イエローズ・ウイルス(lettuce necrotic yellows virus)、属:ヌクレオラブドウイルス(Nucleorhabdovirus)、基準種:ポテト・イエロー・ドワーフ・ウイルス(potato yellow dwarf virus);
マイナスssRNAウイルス:科:ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、属:トスポウイルス(Tospovirus)、基準種:トマト黄化えそウイルス(tomato spotted wilt virus);
dsRNAウイルス:科:パルティティウイルス科(Partitiviridae)、属:アルファクリプトウイルス(Alphacryptovirus)、基準種:シロクローバ潜伏ウイルス1(white clover cryptic virus 1)、属:ベータクリプトウイルス(Betacryptovirus)、基準種:シロクローバ潜伏ウイルス2(white clover cryptic virus 2)、科:レオウイルス科(Reoviridae)、属:フィジーウイルス(Fijivirus)、基準種:フィジー・ディジーズ・ウイルス(Fiji disease virus)、属:フィトレオウイルス(Phytoreovirus)、基準種:ウンド・テュモア・ウイルス(wound tumor virus)、属:オリザウイルス(Oryzavirus)、基準種:イネ・ラギット・スタント・ウイルス(rice ragged stunt virus);
未帰属のウイルス:ゲノムssDNA:種:バナナ・バンチー・トップ・ウイルス(banana bunchy top virus)、種:ココヤシ葉腐食ウイルス(coconut foliar decay virus)、種:サブタレニアン・クローバー・スタント・ウイルス(subterranean clover stunt virus)、ゲノム:dsDNA、種:キュウリ葉脈黄化ウイルス(cucumber vein yellowing virus);ゲノム:dsRNA、種:タバコ・スタント・ウイルス(tobacco stunt virus)、
ゲノム:ssRNA:種:ガーリックA、B、C、Dウイルス(Garlic viruses A,B,C,D);種:グレープバイン・フレック・ウイルス(grapevine fleck virus);種:メイズ・ホワイト・ライン・モザイク・ウイルス(maize white line mosaic virus);種:オリーブ・ラテント・ウイルス2(olive latent virus 2);種:オールミア・メロン・ウイルス(ourmia melon virus);種:ペラルゴニューム・ゾネート・スポット・ウイルス(Pelargonium zonate spot virus)。
【0042】
選択された植物ウイルスの大きさ及び形状の例は、以下の通りである。
桿状ウイルス-TMV:ビリオンは、長さ≒300nm及び直径≒18nmを有する。PVX(糸状;通常は屈曲性;明確なモード長):長さ515nm、直径13nm;ブロムモザイク・ウイルス:直径26nm。
対称/形状-正二十面体:アルファルファ・モザイク・ウイルス(ヌクレオカプシド桿菌、又は準アイソメトリック伸長):長さ35nm(Tb)又は長さ30nm;桿状(Ta-b)形状又は楕円(Ta-t)形状のいずれかで生じた)明確なモード長なし:長さ56nm(B);長さ43nm(M);直径18nm。
【0043】
好ましい植物ウイルス粒子は、一本鎖プラスセンスRNAゲノムを有する植物ウイルスからである。ウイルス(タバコ・モザイク・ウイルス及びジャガイモウイルスX)が、前記ウイルスのための十分に確立された発現系(ヘテロオリゴマータンパク質の発現のために非常に最近開発された系(EP出願第05 001 819.1号;WO2006/079546)を含む)を使用して発現されうる(Donson ら、1991、Proc Natl Acad Sci USA、88:7204-7208;Shivprasad ら、1999、Virology、255:312-323;Marillonnet ら、2004、Proc Natl Acad Sci USA、101:6852-6857;Marillonnet ら、2005、Nat Biotechnol.、23:718-723;Chapman,Kavanagh&Baulcombe,1992,Plant J.、2:549-557;Baulcombe,Chapman&Santa Cruz、1995、Plant J.、7:1045-1053;Angell&Baulcombe,1997,EMBO J.、16:3675-3684)。DNAウイルスを含む他のウイルスからの植物ウイルス粒子を、本発明を実施するために使用することができる(総説については、以下を参照のこと:Mullineaux ら、1992、Genetic Engineering in Plant Viruses,CRC Press Inc.、pp187-215;Timmermans ら、1994、Ann.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.、45:79-112;Porta&Lomonossoff、2002、Biotechnol.Genet.Engineering Rev.、19:245-291)。
【0044】
このように、免疫原性担体は、RNAウイルス(例えばトバモウイルスなど)に由来しうる植物ウイルス粒子でありうる。別の実施形態において、免疫原性担体(carrir)は、ポティウイルス科からのウイルスの植物ウイルス粒子である。他の選択肢を上に言及する。
【0045】
多量体担体タンパク質が、例えば、図3Cに例示する通り、複数のタンパク質抗原分子に共有結合されうる。注目すべきことに、担体としてのウイルス粒子は、タンパク質抗原の複数の分子に共有結合されうる。
【0046】
非タンパク質性担体の最も公知である例は、リポソームである(総説については、以下を参照のこと:Felnerova,D.、Viret,J.F.、Gluck,R.、ら、2004,Curr Opin Biotechnol.、15:518-29;Tiwari,S.、Agrawal,G.P.&Vyas,S.P.2010、Nanomedicine,5:1617-1650)。
【0047】
担体タンパク質を、当技術分野において一般的に公知の通りに、例えば、上に言及するような発現系を使用して、発現させることができる。植物ウイルスコートタンパク質の発現及び植物ウイルス粒子の産生は、WO2007031339に詳細に記載されている。他の担体は、Sigma-Aldrich(T3694 Sigma)から、又はMerck-Millipore(582235号)からの破傷風毒素フラグメントCとして商業的に入手可能である。さらなる代替として、DOM1と呼ばれる破傷風毒素フラグメントCの一部(配列番号17を参照のこと)を使用することができる。それは、破傷風フラグメントCとは異なり、DOM1は患者におけるB細胞のための新規抗原であり、故に、破傷風の予防接種(それは、恐らくは、免疫応答を遅らせうる)(Low,L.、Manderr,A.、McCann,K.ら、2009、Human Gene Ther.、20:1269-1278)のために誘導される既存の抗体により認識されないであろうことが示された。
【0048】
担体は、タンパク質担体である本発明の一実施形態において、タンパク質抗原と担体タンパク質を含むタンパク質コンジュゲートは、融合タンパク質として、即ち、1つのアミノ酸配列の部分として発現されうる。そのような実施形態において、タンパク質抗原と担体タンパク質の間での共有結合は、融合タンパク質のペプチド結合である。リンカーペプチドを、融合タンパク質のタンパク質抗原ドメイン及び担体タンパク質ドメインの独立したフォールディングを可能にするために、タンパク質抗原と担体タンパク質の間で使用してもよい。WO2007031339には、組換えタンパク質としてのタンパク質抗原を、植物ウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてどのように同時発現させるのかが記載されている。コートタンパク質ドメインは、次に、任意選択で遊離ウイルスコートタンパク質の存在下で集合し、それらの表面上にタンパク質抗原ドメインを呈示する植物ウイルス粒子を形成しうる。
【0049】
免疫原性担体タンパク質は、好ましくは、HER2タンパク質との類似性を有さない。このように、担体タンパク質は、好ましくは、50又はそれ以上の、好ましくは30又はそれ以上の、より好ましくは20又はそれ以上の、さらにより好ましくは10又はそれ以上の連続アミノ酸残基のアミノ酸配列セグメントを有さず、その配列セグメントは、配列番号18の同一の長さ(アミノ酸残基の数に関して)の任意の配列部分と50%を上回るアミノ酸配列同一性を有する。
【0050】
1つ又は複数の共有結合によるタンパク質抗原と担体のコンジュゲーションを次に記載する。2つ又はそれ以上の異なるタンパク質又はペプチドの共有結合的な連結は、いくつかの周知のアプローチを使用して達成することができる。これらは、以下に限定されない:翻訳融合;インテイン媒介性のシス又はトランススプライシング、ジスルフィド結合形成を介したヘテロオリゴマータンパク質集合、架橋剤を使用した化学的コンジュゲーション。最も一般に使用されるアプローチの1つは、目的のタンパク質又はそのフラグメントの翻訳(インフレーム)融合であり、そこでは、それらは、単一のプロモーターの制御下で、1つの転写ユニットから発現される。異なるタンパク質又はその部分の間での翻訳融合物の生成は、周知の先行技術であり、標準的な分子生物学技術(Sambroock,J.、Fritsch,E.F.、Maniatis,T.1989、Molecular cloning:a Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を使用して行うことができる。アプローチは、組換えタンパク質の発現を改善し、その精製を促進する(Butt,T.R.、Edavettal,S.C.、Hall,J.P.ら、2005、Protein Expr.Purif.、43:1-9;Fazen,C.H.、Kahkoska,A..R,Doyle,R.P.、2012、Protein Expr.Purif.、85:51-59;for review see:Lichty,J.J.、Malecki,J.L.、Agnew,H.D.、ら、2011、Protein Expr.Purif.、Sep 3.[Epub ahead of print])、目的のタンパク質の組織、細胞、又は細胞内区画を決定する、又はそれらの相互作用を試験する(例、GFP or GUS reporter gene fusions-Sepulveda-Garcia,E.&Rocha-Sosa,M.2012、Plant Sci.、195:36-47;Ahn,C.S.、Han,J.A.&Pai,H.S.2012,Planta,Sept 22,[Epub ahead of print])又はキメラタンパク質を作製するために異種ドメインを融合させるなどの任意の他の用途のために(Meng,Z.F.、Wang,H.J.、Yao,X.ら、2012、Chin.Med.J.、125:3266-3272;Eon-Duval,A.,Valax,P.、Solacroup,T.ら、2012、J Pharm Sci.、101:3604-3618)頻繁に使用される。
【0051】
2つ又はそれ以上の異なるタンパク質又はタンパク質フラグメントの共有結合的なインフレーム融合は、インテイン媒介性トランススプライシングを使用することにより達成することができる。インテインは、最初に、タンパク質前駆体中にインフレームで埋め込まれたタンパク質配列として同定され、タンパク質の成熟過程の間に切除された(Perler,F.B.、Davis,E.O.、Dean,G.E.ら、1994,Nucleic Acids Res.、22:1125-1127;Perler,F.B.、1998、Cell、92:1-4)。自己スプライシング反応を実施するために必要な全ての情報及び触媒基が、インテイン及び2つの隣接アミノ酸中に存在する。タンパク質スプライシングの化学的機構が、Perlerらにより詳細に記載されている(1997,Curr.Opin.Chem.Biol.、1:292-299)及びShao&Kent(1997、Chem.Biol.、4:187-194)。インテインは、通常、N末端及びC末端スプライシング領域並びに中央のホーミングエンドヌクレアーゼ領域又は小さなリンカー領域からなる。100を超えるインテインが、真核生物、古細菌、及び真正細菌を含む異なる生物の核及びオルガネラゲノムの間で分布していることがこれまでに公知である(http://www.neb.com/neb/inteins.html)。分割インテインの操作が、例えば、Brenzel,S.、Kurpiers,T.&Mootz,H.D.2006、Biochemistry、45:1571-1578において記載されている。新たな自然分割インテインの発見が、Carvajal-Vallejos,P.、Pallisse,R.、Mootz,H.D.ら、2012、J.Biol.Chem.、287:28686-96において記載されている。これは、インテイン分子はトランス-スプライシングすることが可能であることが示された。中央のホーミングエンドヌクレアーゼ領域の除去は、インテインの自己スプライシングに対する任意の効果を有さない。これによって、また、トランス-スプライシング系の設計が可能になり、それにおいて、インテインのN末端及びC末端フラグメントは別々のフラグメントとして同時発現され、エクステインに融合した場合(インテインの助けで一緒に連結されたタンパク質フラグメント)、in vivoでのトランス-スプライシングを実施することができる(Shingledecker,K.、Jiang,S.Q.&Paulus,H.、1998、Gene、207:187-195)。また、結核菌RecAインテインのN末端及びC末端セグメントを用いて、タンパク質トランス-スプライシングがin vitroで起こりうることが示された(Mills,K.V.、Lew,B.M.、Jiang,S.、ら、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:3543-3548)。この現象は、また、Synechocystis sp.PCC6803株のDnaEタンパク質について同定された(Wu,H.、Hu,Z.&Liu,X.Q.、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:9226-9231)。反対側のDNA鎖上で700Kb.p.を上回り離れて位置づけられる2つの異なる遺伝子が、このタンパク質をコードする。また、これらの遺伝子によりコードされる2つのインテイン配列が、分割ミニインテインを再構成し、大腸菌細胞においてテストした場合、タンパク質トランス-スプライシング活性を媒介することができることが示された。大腸菌で、同じ起源のインテイン分子(Synechocystis sp.PCC6803株からのDnaEインテイン)を使用して、2つの裏地のないフラグメントからの機能的な除草剤耐性アセト乳酸合成酵素11(Sun,L.、Ghosh,I.、Paulus,H.ら、2001、Appl.Environ.Microbiol.、67:1025-29)及び5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(EPSPS)(Chen,L.,Pradhan,S.&Evans,T.C.、2001、Gene,263;39-48)を産生した。
【0052】
2つ又はそれ以上のポリペプチドを一緒に連結させるさらに別の方法は、ジスルフィド結合の形成を介したそれらの集合である。これを達成するための最も簡単な方法は、好ましくは、ジスルフィド結合を形成するために、互いの間に相互作用することが公知であるタンパク質のフラグメントを使用することである。そのようなフラグメントの例は、免疫グロブリン軽鎖(例、「カッパ」又は「ラムダ」)及び重鎖(例、IgGのFc)の定常領域である。このアプローチは、定常領域、重鎖(US7067110)への抗原融合及び二重特異性IgG設計からなるホモ二量体の形成のために使用することができる(Zuo,Z.、Jimenez,X.、Witte,L.&Zhu,Z.2000、Protein Eng.、13:361-367;Davis,J.H.、Aperlo,C.、Li,Y.ら、2010、Protein Eng.Des.Sel.、23:195-202;総説については、Carter,P.2001、J.Immunol.Methods、248:7-150;Thakur,A.、Lum,L.G.2010、Curr.Opin.Mol.Ther.、12:340-3490を参照のこと)。
【0053】
2つ又はそれ以上の異なるタンパク質を共有結合的に連結するための最も普遍的なアプローチは、化学的架橋剤を使用することであり、それは、本発明においてタンパク質抗原及び担体タンパク質を連結するために好ましい。種々の公知の架橋剤は、この目的のために適用することができる。頻繁に用いられる架橋剤は、グルタルアルデヒド(Maloney,D.G.、Kaminski,M.S.、Burowski,D.ら、1985、Hybridoma、4:192-209;Timmerman,J.M.&Levy,R.、2000、J.Immunol.、164:4797-47803;Bendandi,M.、Gocke,C.D.、Kobrin,C.B.ら、1999,Nat.Med.、5:1171-1177;Bendandi,M.、Marillonnet,S.、Kandzia,R.ら、2010、Ann.Oncol.、21:2420-2427)、マレイミド(Betting,D.J.、Kafi,K.、Abdollah-Fard,A.ら、2008、J.Immunol.、181:4131-4140;Kafi,K.、Betting,D.J.、Yamada,R.E.ら、2009、Mol.Immunol.、46:448-4560)、及び多くの他のものである。グルタルアルデヒドは、主にリシン残基を介してタンパク質を架橋し、システイン、チロシン、及びヒスチジン残基での二次反応を伴う(Migneault,I.、Dartiguenave,C.、Bertrand,M.J.&Waldron,K.C.、2004、Biotechniques、37:790-796)。マレイミドは、(還元型)システインスルフヒドリル基に作用する(Betting,D.J.、Kafi,K.、Abdollah-Fard,A.ら、2008、J.Immunol.、181:4131-4140)。架橋の技術並びに多数の架橋剤が、当業者に周知であり、多くの総説及びプロトコールにおいて記載されている(Wong,S.S.&Wong,L.J.1993,Enzyme Microb.Technol.、14:866-874;Wong,S.S.&Jameson,D.M.2009、Chemistry of Protein and Nucleic Acid Cross-Linking and Conjugation、CRC Press、Second Edition;Thermo Scientific Pierce Crosslinking Technical Handbook、2009、Thermo Scientific;for downloading more info or protocols-www.thermo.com/pierce)。架橋剤は、また、商業的に入手可能であり、製造者の架橋タンパク質のプロトコールに従ってもよい。このように、そのような実施形態において、タンパク質コンジュゲートは、タンパク質抗原及び免疫原性担体を、別々のタンパク質分子として提供し、化学的架橋剤(グルタルアルデヒドなど)を使用してリンカーを介してタンパク質抗原と免疫原性担体を架橋することを含む過程により産生することができる。
【0054】
本発明のキットは、本明細書において定義するタンパク質抗原及びタンパク質コンジュゲートを形成するための前記タンパク質抗原との架橋のための免疫原性タンパク質又はタンパク質凝集体を含む。キットは、さらに、化学的架橋剤を含みうる。
【0055】
上に記載する通りに得られたタンパク質コンジュゲートは、一般的に、水性媒質中で保存される。より長い保存時間のために、それは、凍結又は凍結乾燥することができる。水性媒質は、pHを制御するための緩衝液を含んでもよく、生理食塩水及び/又は他の添加剤を含んでもよい。
【0056】
本発明の抗癌ワクチンは、本発明のタンパク質コンジュゲート及び適切な薬理学的に許容される添加剤を含む。別の実施形態において、抗癌ワクチンは、タンパク質抗原を含み、それにより、タンパク質抗原が、免疫原性担体又は免疫原性担体タンパク質、及び適切な薬理学的に許容される添加剤に共有結合的に連結されないであろう。本発明は、また、本明細書に記載する通りのタンパク質抗原を含むワクチンを提供し、それにおいて、項目(ii)又は項目(iii)のタンパク質抗原は、HER2/Neu陽性癌に対する防御、特に、Balb-NeuT転移性乳癌モデルにおいて決定される通りの、腫瘍形成後での治療防御を提供することが可能である。
【0057】
抗癌ワクチンは、一般的に、注射により患者に投与されるため、抗癌ワクチンは、一般的に、液体水性製剤である。しかし、抗癌ワクチンは、また、投与前に水性媒質で再構成される、固体形態中(例えば凍結乾燥形態など)でありうる。添加剤の例は、滅菌水性溶液、懸濁液、及びエマルションを含むが、これらに限定されない。水性添加剤は、水、アルコール、生理食塩水、及び緩衝溶液を含むが、これらに限定されない。保存剤及び他の添加剤(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤など)も存在してもよい。
【0058】
US 8,222,214に記載されているのと同様に、抗癌ワクチンは、ワクチンの防御効力を増強する薬剤(例えばアジュバントなど)を含むことができる。アジュバントは、タンパク質コンジュゲートへの防御免疫応答を増加させるように作用する任意の化合物又は化合物を含み、それにより、ワクチンにおいて必要な抗原の量、及び/又は防御免疫応答を生成するために必要な投与の頻度を低下させる。アジュバントは、例えば、乳化剤、ムラミルジペプチド、ピリジン、水性アジュバント、例えば水酸化アルミニウム、アルミニウム塩、キトサンベースのアジュバントなど、並びに種々のサポニン、油、及び当技術分野において公知の他の物質(例えばAmphigenなど)、LPS、細菌細胞壁抽出物、細菌DNA、CpG配列、合成オリゴヌクレオチド及びそれらの組み合わせ(Schijns ら(2000)Curr.Opin.Immunol.12:456)、マイコバクテリウムフレイ(M.フレイ)細胞壁抽出物(MCWE)(米国特許第4,744,984号)、M.フレイDNA(M-DNA)、及びM-DNA-M.フレイ細胞壁複合体(MCC)のいずれかを含むことができる。乳化剤として役立つことができる化合物は、天然及び合成の乳化剤、並びにアニオン性、カチオン性、及び非イオン性化合物を含む。合成化合物の間で、アニオン性乳化剤は、例えば、ラウリン酸及びオレイン酸のカリウム塩、ナトリウム塩、及びアンモニウム塩、脂肪酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩、並びに有機スルホン酸(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)を含む。合成カチオン性剤は、例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム(cetyltrhethylammonlum bromide)を含み、合成非イオン性薬剤は、グリセリルエステル(例、グリセリルモノステアレート)、ポリオキシエチレングリコールエステル及びエーテル、並びにソルビタン脂肪酸エステル(例、ソルビタンモノパルミテート)及びそれらのポリオキシエチレン誘導体(例、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート)により例示される。天然乳化剤は、アカシア、ゼラチン、レシチン、及びコレステロールを含む。
【0059】
他の適切なアジュバントは、油成分、例えば単一の油、油の混合物、油中水型エマルション、又は水中油型エマルションを用いて形成することができる。油は、鉱物油、植物油、又は動物油でありうる。鉱物油は、蒸留技術を介してワセリンから得られる液体炭化水素であり、また、当技術分野において、液体パラフィン、液体ワセリン、又は白色鉱油として言及される。適切な動物油は、例えば、タラ肝油、オヒョウ油、ニシン油、オレンジラフィー油、及びサメ肝油を含み、それらの全てが商業的に入手可能である。適切な植物油は、例えば、キャノーラ油、アーモンド油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、又は大豆油を含む。フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)は、ワクチン製剤中で一般に使用される2つの一般のアジュバントであり、また、本発明における使用のために適切である。FCAとFIAの両方が、鉱物油中水滴形エマルションである;しかし、FCAは、また、殺したマイコバクテリウム属を含む。
【0060】
免疫調節性サイトカインを、ワクチンの有効性を増強するために、例えば、アジュバントとして、ワクチン組成物において使用することができる。そのようなサイトカインの非限定的な例は、インターフェロンα(IFN-α)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、又はそれらの組み合わせを含む。GM-CSFは、サイトカインとして好ましい。
【0061】
本発明の抗癌ワクチンは、哺乳動物において、好ましくはヒトにおいてHER2/Neu陽性癌を処置又は防止するために使用することができる。HER2/Neu陽性癌を処置することは、その防止よりも好ましい。処置は、ワクチンが、癌を有する対象に投与されることを意味する。本発明の好ましい抗癌ワクチンは、治療効果を有し、それは、ワクチンが、癌が患者において既に形成された際に投与された場合でさえ、HER2/Neu陽性癌のさらなる発生を防止又は減速させることができることを意味する。実施例において、治療が研究されており、「治療設定」として言及される実験において実証されている。癌の多くの異なる型は、HER2/Neu陽性でありうる(例えば乳癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膀胱癌、精巣癌、胃癌、食道癌、又は甲状腺癌など)。これらの癌におけるHER2遺伝子又はタンパク質の検出は、例えば、抗HER2/Neuモノクローナル又はポリクローナル抗体を使用した生検における免疫応答によりうる、又はHER2遺伝子からの発現RNAの決定によりうる。HER2遺伝子の増幅は、Science 235(1987)177-182においてテストされ、乳癌の予後と相関した。
【0062】
例えば、そのような癌に罹患している患者においてHER2/Neu陽性癌を処置する際、抗癌ワクチンが患者に投与される。ワクチンの投与は、注入又は注射(例、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、髄腔内、十二指腸内、腹腔内など)によることができる。好ましくは、組成物又はワクチンは、皮内注射により投与される。
【0063】
抗癌ワクチンは、治療有効量で患者に投与される。量は、いくつかの変数、例えば患者の大きさ又は体重及び患者の状態などに依存する。ワクチンの毒性及び治療効力は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順により決定することができる。毒性と治療効果の間の用量比率が、治療指数であり、比率LD50/ED50として表すことができる。細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、患者における使用のための用量の範囲で製剤化する際に使用することができる。そのようなワクチン組成物の投与量は、好ましくは、ほとんど又は全く毒性を伴わないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる投薬形態及び利用される投与経路に依存して、この範囲内で変動しうる。
【0064】
ワクチンは、癌に対する防御免疫を誘導及び/又は持続させ、より具体的には、タンパク質抗原への体液性、好ましくは細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導及び/又は持続させるために適当な任意のスケジュールで患者に投与することができる。例えば、患者には、本明細書に記載及び例示する一次免疫としてワクチン組成物を投与することができ、防御免疫を強化及び/又は維持するためのブースターの投与が続く。一部の態様において、患者には、1ヶ月当たり1、2、又はそれ以上、ワクチン組成物を投与することができる。連続6ヶ月にわたり1ヶ月当たり1回が、防御免疫応答(特に一次免疫化スケジュールに関して)を確立するために好ましい。一部の態様において、ブースターは、一次免疫化スケジュールの終了後、6ヶ月又はそれ以上毎に定期的な期間で投与することができる。ブースターの投与は6ヶ月毎でよい。一次免疫及びブースター投与を含むワクチン投与スケジュールは、患者のために必要とされる限り、例えば、数年の経過にわたり、患者の寿命にわたり継続することができる。一部の態様において、ワクチンスケジュールは、ワクチン計画の開始時でのより高頻度の投与を含み、防御免疫を維持するための時間にわたり、より少ない頻度の投与(例、ブースター)を含む。
【0065】
本発明のワクチンは、1投与当たり、HER2タンパク質の、又はタンパク質抗原の変異体配列セグメントECDからの300又はそれ以上の連続アミノ酸の配列セグメントの0.1mgから50mgまでの投与量においてヒト患者に投与されうる。そのような投与量は、また、その後の投与において使用されうる。
【実施例
【0066】
以下において、本発明を、さらに、実施例を使用して例証する。本発明は、しかし、これらの実施例に限定されない。
【0067】
(例1)
構築物の設計
ラットのHer2-ED44配列(GenBank受託番号:NP_058699、アミノ酸残基314-657=344残基、図1-2)を、隣接するBsaI部位を付加し、2つの内部のBsaI部位を除去することにより、それぞれのcDNAから、PCRを使用して生成した。ヒトHER2-ED44配列(GenBank受託番号:AAA75493、アミノ酸残基310-653=344残基、図1-2)を、ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)のコドン使用頻度を用いた遺伝子合成を使用して生成した。ラット及びヒトHer2-ED44から、異なるバージョン(モジュール)を、PCRを使用して生成した。これらのモジュールは、クローニングのために使用される、隣接するBsaI制限部位により作製されたオーバーハングにおいて異なる(図4-9)。
【0068】
フラグメントCは、HER2についての自己寛容を破壊するのを助ける、ワクチン中の免疫原性担体タンパク質としての役割を果たす。破傷風毒素は、破傷風菌(破傷風の原因物質)により産生される、強力な神経毒である。フラグメントCは、ニューロンへの結合を付与する、破傷風毒素の非毒性C末端部分である(Swiss-Prot受託番号:P04958、アミノ酸残基865-1315=451残基)。破傷風毒素フラグメントC配列を、遺伝子合成により生成した。また、ここで、本来合成されたフラグメントC配列から、異なるモジュールを、PCRを使用して生成した(図10-11)。
【0069】
Her2-ED44と破傷風毒素フラグメントCモジュールは、タイプIIS制限酵素BsaI(それぞれのモジュールについて異なるカスタマイズされたオーバーハングを生成し、それにより、これらの制限部位を除去することによる最終構築物の組み立てを可能にする)を使用して、TMVベースのウイルス発現ベクター(magnICON(登録商標)システム、下記を参照)中にクローニングした(Engler,C.、Kandzia,R.&Marillonnet,S.2008、PLoS One,3:e3647;図4図7図10)。TMVベースのウイルスベクター構築物は、また、コメのαアミラーゼ3Aシグナルペプチド(Swiss-Prot受託番号:P27932)を含み、それは、植物体において切断され、それが蓄積するアポプラスト植物において目的のタンパク質を送達するのに役立つ。コメのαアミラーゼのシグナルペプチドは、オリザ・サチバ(Oryza sativa)のゲノムDNAから増幅され、シグナルペプチドの最後の2つのアミノ酸が、クローニングの理由に起因して、HAからSGに改変される(野生型:MGKQMAALCGFLLVALLWLTPDVAHA;改変:MGKQMAALCGFLLVALLWLTPDVASG)。加えて、Her2-ED44及び破傷風毒素フラグメントCを、(GGGGS)リンカー及び6×Hisタグ又は、N.タバクムコドン使用頻度について遺伝子合成により最適化したヒトカッパ軽鎖定常領域(Swiss-Prot受託番号:P01834)に融合した(図4-11)。
【0070】
代替免疫原性担体として、タバコ・モザイク・ウイルス(TMV)粒子を用いた。TMV粒子は、長さが約300nm及び直径18nmの桿状構造を有する。粒子は、ウイルスのゲノム一本鎖RNAの周囲に集合するコートタンパク質(CP)サブユニットで構築される。グルタルジアルデヒドによるコンジュゲーション効率を改善するために、コートタンパク質を改変した。TVCVコートタンパク質(Swiss-Prot受託番号:Q88922)のN末端改変、即ち、4つのアミノ酸残基ADFKの付加は、PCR(プライマー配列:TTT GGTCTC A AATG GCT GAC TTT AAG AGC TAT AAC ATC ACG AAT CCT AAC C;BsaI制限部位、オーバーハングを生成し、追加コドンを導入した)により、野生型配列において導入した。CPLysタンパク質をコードする、結果として得られたDNAモジュールも、タイプIIS酵素BsaIを使用して、magnICON(登録商標)TMVベースのウイルス発現ベクター中にクローニングした(図12)。
【0071】
ウイルスバイナリー発現ベクターは、magnICON(登録商標)技術(Gleba,Y.、Klimyuk,V.&Marillonnet,S.、2005、Vaccine、2005、23:2042-2048;Gleba,Y.、Klimyuk,V.&Marillonnet,S.2007、Curr.Opin.Biotechnol.、18:134-141)に基づいて、タバコウイルスからの、即ち、2つの密接に関連する植物ウイルスであるTVCV(カブ葉脈透化ウイルス;Lartey,R.T.、Lane,L.C.&Melcher,U.1994、Arch.Virol.、138:287-298;Lartey,R.T.、Voss,T.C.&Melcher,U.1995、Gene、166:331-332)及びcrTMV(アブラナ感染トバモウイルス;Dorokhov,Y.L.、Ivanov,P.A.、Novikov,V.K.、ら、1994、FEBS Lett.、350:5-8)のcDNAからのエレメントを使用して開発された。結果として得られたベクターは、「TMV系」と呼ばれる。なぜなら、両方の親ウイルスが、トバモウイルスであり、周知のタバコ・モザイク・ウイルス(TMV)に関連するからである。全ての3つのウイルス(TVCV、crTMV、及びTMV)が、プラス鎖RNAウイルスであり、同じ全体構造と複製様式を有する。基本的に、ウイルスは、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)、移行タンパク質(MP)、及びコートタンパク質(CP)をコードする。RdRPは、完全なウイルスRNA転写産物(ゲノムRNA)並びに2つの他のウイルスタンパク質MP及びCPの発現のために要求される2つのサブゲノムRNA(sgRNA)を複製する。MPは、浸透した葉内でのウイルスゲノムRNAの短距離細胞間移行のために要求される。CPは、ウイルス粒子の形成及び血管系を介した葉から葉への長距離全身移動のために要求される。ウイルス粒子の形成は、細胞間移動のために要求されない。したがって、CPは、ウイルスベクターから除去し、目的の遺伝子で置換した。このように、ウイルスベクターは、ウイルス粒子を産生することができず、目的の遺伝子が高レベルで発現される。ウイルスタンパク質及び目的の遺伝子に加えて、ウイルスベクターには、複製のために必須である5’及び3’非翻訳(5’ntr及び3’ntr)ウイルス配列も含まれなければならない(Marillonnet,S.、Giritch,A.、Gils,M.ら、2004、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、101:6852-7;図13)。
【0072】
植物細胞におけるTMVベースのウイルスベクターの効率的な発現のために、ウイルスベクターのcDNAを、植物プロモーターと植物ターミネーター(Act2及びnos)の間にクローニングし(Marillonnet,S.、Giritch,A.、Gils,M.ら、2004、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、101:6852-6857)、植物イントロンをRdRP配列及びMP配列内に加えた(Marillonnet,S.、Thoeringer,C.、Kandzia,R.ら、2005、Nat.Biotechnol.、23:718-723)。TMVベースのウイルスベクターの効率的な送達のために、植物細胞に、本発明者らは、Agrobacterium tumefaciensを使用する。したがって、完全なウイルスベクター(植物プロモーター、目的の遺伝子を伴うTMVベースのウイルスベクター配列、植物ターミネーター)が、バイナリーベクターのT-DNAの左境界と右境界の間にクローニングされている。バイナリーベクターのエレメントは、Agrobacteriumにおけるプラスミド複製のためのPVS1起点である(Hajdukiewicz,P.、Svab,Z.&Maliga,P.、1994、Plant Mol Biol.、25:989-994)、大腸菌(E.coli)におけるプラスミド複製のためcolE1起点、nptIIIカナマイシン抗生物質耐性遺伝子(Frisch,D.A.、Harris-Haller,L.W.、Yokubaitis,N.T.ら、1995、Plant Mol.Biol.、27:405-409)、並びに植物細胞に移されるDNAの末端を区切るためのT-DNAの左境界及び右境界(Frisch,D.A.、Harris-Haller,L.W.、Yokubaitis,N.T.ら、1995、Plant Mol.Biol.、27:405-409)である。青色/白色選択を促進するために、pUC19から増幅したlacZαカセットを、目的の遺伝子のシームレスなフレームクローニングを可能にする2つのBsaI制限部位間に挿入した。したがって、ウイルスベクターの初期構築の間に、全ての天然BsaI認識部位を、目的の遺伝子の簡単で頑強なクローニングを可能にするために除去した(図13)。
【0073】
(例2)
ワクチン成分の発現、精製、及びコンジュゲーション
N.benthamiana植物におけるHer2-ED44-hKappa、Her2-ED44-His、破傷風毒素フラグメントC-hKappa、及びTMV粒子の異種発現(magnICON(登録商標)システム)
組換えタンパク質の産生のために、TMVベースの発現ベクターを保有する選択されたAgrobacterium株を、トリプトンを置換する大豆ペプトン(Duchefa Biochemie、ハーレム、オランダ)を伴う、50μg/mLリファンピシン及び50μg/mLカナマイシンが添加された液体LBS培地中で増殖させた。アグロバクテリウム培養物を、OD600が2から4に達するまで、28℃で増殖させる。浸潤溶液を、定義された細胞濃度(1.0のOD600を伴う培養物の200倍希釈物と等価である)まで浸潤緩衝液(10mM MES、pH5.5、10mM硫酸マグネシウム)中にアグロバクテリウム培養物を希釈することにより調製する。
【0074】
約40から80のニコチアナ・ベンタミアナ植物(TMV粒子の収集のための5から10)を、制御された標準化条件下で6~8週間にわたり増殖させ、アグロバクテリウム浸潤溶液を用いて真空浸潤させ、次に、組換えタンパク質の発現及び蓄積のために、温室中で7~12日間にわたり保った。植物の葉を、次に、液体窒素中で、収集し、細かい葉の粉末になるまで粉砕し、タンパク質抽出まで-80℃で保ち、精製が続いた。
【0075】
Ni-NTIアフィニティークロマトグラフィーを使用したHer2-ED44-Hisタグの精製
葉粉末(0.6から1kg)を、抽出緩衝液の約2倍容量(w/v)を伴う、20 mMリン酸ナトリウム、pH6.0、0.5 M NaCl、10mMイミダゾール中で抽出した。抽出は、40分間にわたり振盪することにより+ 4℃で実施する。ホモジネートを、10分間にわたる15.000×gでの遠心分離により清澄化し、MiraClothフィルターを通した濾過が続いた。ペレット化した植物組織を、同じ抽出条件を使用して再抽出した。抽出液を合わせ、pH調整に供する。清澄化ホモジネートのpHを、ルビスコを含む、宿主細胞タンパク質の除去のために、5N HClを使用して5.0まで低下させる。約30分間にわたる撹拌を伴うpH5でのインキュベーション後、粗抽出物のpHを、5N NaOHを用いてpH7.4に再調整する。粗抽出物を、次に、細胞破片及び沈殿物を除去するために遠心分離する(15分間にわたり20.000xg)。粗抽出物をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用する前に、粗抽出物を、いくつかの濾過膜(20μm-8μm-3μm-0.45μm)で濾過する。透明な濾液を、20 CVの洗浄緩衝液(20mMリン酸ナトリウムpH7.5、0.5M NaCl、20mMイミダゾール)で平衡化した5mm HisTrap(商標)FFカラム(GE Healthcare、17-5255-01)に適用する。ロード後、カラムを20CVの洗浄緩衝液で洗浄する。Her2-ED44-Hisを、20CVの溶出緩衝液(20mMリン酸ナトリウムpH7.5、0.5MNaCl、0.5Mイミダゾール)で溶出する。研磨ステップを適用し、DNA、宿主細胞タンパク質、及び内毒素を除去する。溶出されたHer2-ED44-His溶液を、強塩基性陰イオン交換体であるSartobindQ(登録商標)SingleSepミニカプセル(Sartorius、#92IEXQ42D4-SS)に供する。SartobindQ(登録商標)SingleSepミニカプセルを1N NaOHで清浄し、PBS pH5.0での平衡化が続く。Her2-ED44-His溶出液をSartobindQ(登録商標)SingleSepミニカプセルにロードする前に、Her2-ED44-His溶出液のpHを、5N HClを使用してpH5.0に調整する。SartobindQ(登録商標)SingleSepミニカプセルのフロースルーを回収し、カプセルを、ベースラインのUV 280nmに達するまで、PBS緩衝液、pH5.0で洗浄する。精製されたHer2-ED44-Hisは、スピン-X UF濃縮器30K MWCO(Corning、#431489)を使用して濃縮する。最後に、濃縮物を、0.2μmフィルターを使用して滅菌濾過する。
【0076】
精製されたHer2-ED44-Hisのタンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific、#23225)を使用して決定する。Hisタグ付きHer2-ED44のイムノブロット分析を、一次抗tetra-His抗体(QIAGEN、#34670)及び二次抗マウスIgGホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigma Aldrich、A4416)を使用して行った。エンドトキシンの決定は、Endosafe(登録商標)PTSカートリッジ、感度10-0.1EU/ml(Charles River Laboratories、#PTS201)を伴うEndosafe(登録商標)PTSシステム(Charles River Laboratories、#PTS100)を使用して行った。
【0077】
KappaSelect上でのアフィニティークロマトグラフィーを使用した精製Her2-ED44-Kappa及び破傷風毒素フラグメントCカッパ
タンパク質抽出のために、凍結した葉の粉末(約600gから1kg)を、約2容量(w/v)の抽出緩衝液(200mMクエン酸ナトリウム、pH6、5mM EDTA)と混合し、約40分間にわたり振盪しながらインキュベートする。ホモジネートを、10分間にわたる15.000×gでの遠心分離により清澄化し、MiraClothフィルターを通して濾過する。抽出を、発現された組換えタンパク質の最大収率を確実にするために繰り返した。
【0078】
清澄化ホモジネートのpHを、次に、ルビスコを含む宿主細胞タンパク質の除去のために、クエン酸ナトリウム溶液を使用してpH5.0まで低下させる。約30分間にわたるpH5でのインキュベーション後、粗抽出物のpHを、5 N NaOHでpH7.4に再調整する。抽出物を、15分間にわたり20.000×gで遠心分離し、沈殿物及び細胞破片を除去し、その後、いくつかの膜フィルター(20μm-8μm-3μm及び0.45μm)を通して濾過し、その後のカラムクロマトグラフィーに適した抽出物を得る。
【0079】
全てのクロマトグラフィーステップを、GE Healthcare AKTA Purifier Chromatography Systemを使用して室温で行う。KappaSelect(GE Healthcare、17-5458-01)を用いたアフィニティークロマトグラフィーを実施し、精製タグとしてカッパ定常領域を含む組換え融合タンパク質を精製する。
【0080】
カラム材料を、濾過したタンパク質抽出液をロードする前に、20カラム(CV)容量のPBS pH7.34で平衡化する。ロード後、カラムを、20 CVの洗浄緩衝液PBS、pH7.34で洗浄する。カラムに結合したタンパク質は、ピークベースの分画を介して、低pH緩衝液(0.1MグリシンpH2.9)で溶出し、0.4 M NaHPO4で中性pHに調整する。
【0081】
KappaSelectアフィニティークロマトグラフィーの後、溶出液を、さらに、SartobindQ(登録商標)SingleSepミニカプセル、強塩基性陰イオン交換体(Sartorius、#92IEXQ42D4-SS)で精製する(研磨ステップ)。SartoBinQカラムは、使用前に、1 N NaOHで清浄し、PBS pH5.0での平衡化が続いた。溶出液のpHを、SartoBindQカラム中へのロードの前に、4.8に調整した。フロースルーを回収し、カラムを、ベースラインのUV 280nmに達するまで、PBS緩衝液(pH5.0)で洗浄した。
【0082】
精製されたHer2-ED44-Kappaを、Spin-X UF濃縮器30K MWCO(Corning、#431489)を使用して濃縮し、精製された破傷風毒素フラグメントC-Kappaを、Spin-X UF濃縮器50K MWCO(Corning、#431490)を使用して濃縮した。濃縮物を、次に、0.2μmフィルターを使用して滅菌濾過した。精製されたタンパク質の濃度を、BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific、#23225)を使用して決定する。エンドトキシンの決定は、Endosafe(登録商標)PTSカートリッジ、感度10-0.1EU/ml(Charles River Laboratories、#PTS201)を伴うEndosafe(登録商標)PTSシステム(Charles River Laboratories、#PTS100)を使用して行った。
【0083】
TMVウイルス粒子の精製
凍結葉粉末を、3~5容量(w/v)の0.1 Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.0と混合する。ホモジネートを、シェーカー上で、氷上で約30分間にわたりインキュベートする。次に、ホモジネートを、予冷チューブ中に、MiraClothフィルターを通して濾過する。濾液を遠心分離管に移し、1/4容量のクロロホルムを添加し、溶液を穏やかに、しかし完全に、20分間にわたり氷上で混合する。混合物を4℃で15分間にわたり10,000×gで遠心分離する。上の水相を新たな遠心チューブに移し、1/10容量の12%塩化ナトリウム及び1/5容量の25%PEG-6000を添加する。混合物を、氷上で約1時間にわたりインキュベートし、4℃で15分間にわたり10,000×gで遠心分離する。上清を注意深く除去し、1/5容量の0.1 Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.0を添加する。最後に、混合物を、ペレットが溶解するまで、氷上でインキュベートする。ウイルス粒子の品質を、SDS-PAGEにより分析する。約12mgの精製されたTMV粒子を、6gの新鮮な葉材料から得ることができる。
【0084】
グルタルアルデヒドを使用したHer2-EC-Kappaと破傷風毒素フラグメントC-Kappa又はTMVウイルス粒子とのコンジュゲーション
Her2-ED44-Kappa及び破傷風毒素フラグメントC-Kappa又はTMVウイルス粒子を、コンジュゲーション反応のために混合する(それぞれの3mg)。グルタルアルデヒド(25%)を、0.1%の最終濃度までタンパク質混合物に添加する。混合物を、2時間にわたり穏やかに撹拌しながら、室温でインキュベートする。反応を、2Mグリシンを最終濃度20mMまで添加することにより停止させ、インキュベーションを30分間にわたり継続する。全体の反応物を、残りのグルタルジアルデヒド及び非コンジュゲートタンパク質を除去するために、ゲル濾過に供する。最大容量2mlの反応混合物を、流速1ml/分でSuperdex(商標)200カラム(GE Healthcare、#17-1043-02)にロードした。移動相はPBS緩衝液pH7.34であり、フロースルーを、全ピーク面積にわたり10画分中に回収した。コンジュゲーション効率を、抗ヒトカッパ抗体(Sigma Aldrich、#A7164)を使用して、還元条件及びイムノブロット分析下での8%SDS-PAGEにより分析する(各画分の15μl)。全てのコンジュゲート含有画分(分子量>70 kDa)をプールし、Spin-X UF濃縮器50K MWCO(Corning、#431490)を使用して濃縮した。コンジュゲートのタンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイキット(Thermo scientific#23225)を使用して決定する。エンドトキシンの決定は、Endosafe(登録商標)PTSカートリッジ、感度10-0.1EU/ml(Charles River Laboratories、#PTS201)を伴うEndosafe(登録商標)PTSシステム(Charles River Laboratories、#PTS100)を使用して行った。
【0085】
(例3)
マウス及び実験プロトコール
手順の開始時に6~10週齢のBALB/c雌マウスを、Home Office Guidelinesに従って飼育した。実験は、Project Licence JR 70/6401又はAM 30/3028及びPersonal Licence PIL 70/20084(UoS)下で実施した。マウスは、等量のHer2-ED44を含む50μgのHer2-ED44-His又はコンジュゲートワクチンを用いて注射した。各マウスは、等容量のミョウバンアジュバント(Sigma)と組み合わせた100μLの生理食塩水中の50μgのHer2-ED44、又は130マイクログラムのHer2-ED44-KappaフラグメントCカッパ、又は91μgのHer2-ED44-Kappa-TMVのいずれかを受けた。注射の前に、ミョウバンと組み合わせたワクチンを、周囲温度で1時間にわたり転倒で混合した。注射は、脇腹において2つの部位中に皮下で行った。1群当たり少なくとも5匹のマウスが、各実験毎にワクチン接種された(群のサイズが小さかったBalb-NeuTを除く)。対照ワクチンのために、無関係なタンパク質(ICONにより作製された5T33Ig-hkappa-フラグメントC融合タンパク質)を発現する130μgの植物を与えた。比較ワクチンであるHer2/Neu-EC-TM DNAワクチン(50μg)を、2つの部位中に筋肉内注射した。野生型マウスに、同量のワクチンで2回注入し、第2の注射を、第1の注射から3週間後に与えた(図14)。マウスを、第1の注射から3週間後、第2の注射後に2回出血させ、出血間に2週間の間隔を伴った(5週目及び7週目)。Balb-NeuTトランスジェニックマウスは、10週齢目に与えた第1の注射を用いて5回ワクチン接種し、その後の注射は3週間毎に与えた。血液試料を、各注射から2週間後に採取した。試料を、Her2-ED44に対する反応性について、及び膜結合Her2/neuに対する反応性について、並びにIgGアイソタイプ及び親和性について、ELISAにより分析した。
【0086】
連続血液採取
ワクチン誘導性の抗体応答を検出するために、血液試料を、ワクチン接種マウスから尾の出血により採取した。局所麻酔(Instillagal(登録商標)、FARCO-PHARMA GmbH、ケルン、ドイツ)を尾の先に適用し、マウスを37℃で5分間にわたり温めた。尾の先端1~2mm切片を、メスで切断し、最大200μLの血液を、マウス1匹当たり除去した。凝固後、全血を10分間にわたり10,000rpmで遠心分離し、血清を収集した。血清試料を、1mLの1mMアジ化ナトリウムの添加により保存し、-20℃で保存した。
【0087】
ELISAによる総IgG抗体及び抗体アイソタイプの抗Her2-ED44レベルの評価
ELISAのために、96ウェルの平底Nunc Immunos(商標)ELISAプレート(NUNC)を、Her2-ED44-His(炭酸塩/重炭酸塩緩衝液pH9.6中3μg/mL)で終夜コーティングした。翌日、プレートを周囲温度で1時間にわたりPBS中の1%BSAでブロックした。3週目の試料について1/100から1/6400までの範囲の、その後の各時間点について1/1000から1/64000までの範囲の試料の連続4×希釈物を、プレートに添加して、シェーカー上で37℃で1.5時間にわたりインキュベートした。PBS/0.1%Tween20(Sigma #p1379)での4回洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(The Binding site,Birmingham,UK;# AP272;1/1000希釈)で標識された検出抗マウスIgG抗体を、プレートと1.5時間にわたりインキュベートした。PBS/0.1%Tweenでのさらに4回の洗浄後、o-フェニレンジアミンジヒドロクロリド基質(Sigma,#P4664)を添加して、反応物を発色させ、次に、2.5M HSOの添加により停止させた。光学密度を、Dynex MRX Plateリーダーを使用して490nmで測定した。測定の結果を図15A;18B;20及び21Bに示す。
【0088】
抗体アイソタイプの評価のために、同様のプロトコールを適用したが、以下の通り、異なる検出抗体を使用した:抗IgG1(Biorbyt Ltd.、カタログ番号orb27074)、抗IgG2a(Serotec #STAR13313、1/4000希釈)及び抗IgG2b(Harlan Sera-Lab ltd#SBA 1090-05;1/1000希釈)。血清抗体レベルを、標準曲線から算出し、1mL当たりの任意の単位として表現した(図15、パネルB)。
【0089】
哺乳動物癌細胞系
TUBO細胞は、形質転換r-Her2/neu癌遺伝子についてトランスジェニックであるBALB/cマウスに由来するクローン系であり(Balb-NeuT)(Rovero、2000年)、ラットHer2/neuとの反応性を評価するための結合アッセイにおいて使用した。TUBO細胞を、ペニシリン-ストレプトマイシン及び20%FCSを補充したDMEM高グルコース(PAA Laboratories)中で培養した。細胞が60~70%コンフルエントに達した際、それらを37℃で5~10分間にわたりTRYPSIN-EDTA(PAA Laboratories、パッシング、オーストリア)とインキュベートし、次に、トリプシンを、分割希釈により停止させる。分割希釈は1:3から1:6又は1:8の範囲でありうる。
【0090】
D2F2/E2細胞は、ヒトERBB2(Her2/neu)遺伝子を安定的に発現するベクターでトランスフェクトされたBALB/cマウスからの乳腺腫瘍系に属する(Piechocki,M.P.、Pilon,S.A.&Wei,W.Z.2001、J.Immunol.、167:3367-3374)。D2F2/E2細胞を、ヒトHer2/neuとの反応性を評価するための結合アッセイにおいて使用した。D2F2/E2細胞を、ペニシリン-ストレプトマイシン、20%FCS、及び800μg/mLのG418(Gibco)を補充した高グルコースDMEM中で培養した。コンフルエント時、細胞をトリプシン処理し、1:4~1:8の間で希釈することにより分割した。FACS分析及び腫瘍攻撃実験のために、単一細胞懸濁液を、トリプシン処理した後、シリンジを通じて細胞を通過させることにより調製する。
【0091】
FACS分析による表面Her2/neuへの結合についての誘導マウス抗体の評価
誘導抗体の結合を、改変を伴う、以前に公開されたプロトコールを使用したFACS染色(Rovero、2000)により分析した。簡単に説明すると、2×10個(Tubo又はD2F2/E2のいずれか)細胞を、最初に、非特異的結合とを減少させるために、ナイーブマウスからの血清と、次に、ワクチン接種マウス由来の免疫血清の1/100希釈物とプレインキュベートした。染色は、100μLの総容量で行った。eFluor660(eBioscience#50-4010-82、1/200希釈)で標識された二次抗マウスF(ab’)2 IgGを使用して、FACS Callibur及びCell Questソフトウェアを使用して、その後のFACS分析を用いて、誘導された抗体結合のレベルを検出した。測定結果を図16~18及び20に示す。
【0092】
腫瘍攻撃実験
防御実験は、TUBO細胞系又はD2F2/E2細胞系を使用して実施した。ワクチンの2用量後、マウスを、10個の腫瘍細胞で攻撃した。攻撃は、最後のワクチン注射から4-6週間後であった。注射を受けなかったマウスの群を、追加の対照として使用した。マウスは、腫瘍の徴候について観察した。一度、腫瘍が目に見えた後、マウスを一日おきに測定し、腫瘍≧1.5cmを伴うマウスは、人道的見地から終了した。生存グラフを、Graphpad PRISM 4.03ソフトウェアを使用して作成した。異なるワクチンで注射された群を比較するための統計分析を、ノンパラメトリックデータについてのマン-ホイットニー検定を使用して実施した。
【0093】
hu Her 2 ED44-FrCコンジュゲートワクチンで誘導された抗体によるHer2/neu媒介性シグナル伝達の阻害
ヒトHER2陽性乳癌細胞系BT474を、示した希釈でワクチン接種されたマウスからのプール血清、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、Roche、UK)又は30μMのPI3K(Her2シグナル伝達の下流)阻害剤LY294002(Cell Signalling Technology、マサチューセッツ州、米国)を用いて、1時間にわたり別々にインキュベートした。全ての処置を、37℃、10%COで、10%FCSを補充した完全DMEM培地中で行った。インキュベーション後、細胞を収集し、溶解し、1試料当たり10μgのタンパク質を、95℃で5分間にわたる変性後、SDS-PAGE(NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4~12%Bis-Tris Gels、Invitrogen Life Technologies、カリフォルニア州、米国)に供した。電気泳動後、タンパク質をポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(Amersham Hybond(商標)-P、GE Healthcare、バッキンガムシャー、UK)に移し、0.1% Tween(登録商標)20を伴うトリス緩衝生理食塩水(TBS)中の5%無脂肪ミルク中でのブロッキング後、(TBS-T)を、抗pAkt(ウサギ抗リン酸Akt(Ser473)抗体、Cell Signalling Technologies)、Akt(ウサギ抗Akt抗体、Cell Signalling Technologies)又はβアクチン(マウス抗ヒトβアクチン抗体、クローン2F1-1、BioLegend)抗体(1/1,000希釈)と連続的にインキュベートした。それぞれのその後の抗体を適用する前に、前の抗体を除去した。TBS-Tで3回洗浄後、膜をHRP-コンジュゲート二次抗体(抗ウサギIgG-HRP、Cell Signalling Technologies又は抗マウスIgG(ガンマ)(AFF)PEROX、The Binding Site、バーミンガム、英国)のTBS-T中(1/1,000)で、室温で1時間にわたりインキュベートした。膜を、SuperSignal(商標)West Pico Chemiluminescent Substrate(Thermo Scientific、イリノイ州、米国)を用いて検出する前に、再びTBS-Tで3回洗浄した。化学発光シグナルを、Bio-Radイメージングシステム(Fluor-S(登録商標)MultiImager,Bio-Rad)を使用して捕捉した。ウェスタンブロットの結果を図19に示す。
【0094】
ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の概要
配列番号1:ヒトHER2タンパク質の細胞外ドメインのアミノ酸配列(GenBank AAA75493からのアミノ酸1~653):
melaalcrwg lllallppga astqvctgtd mklrlpaspe thldmlrhly qgcqvvqgnl
eltylptnas lsflqdiqev qgyvliahnq vrqvplqrlr ivrgtqlfed nyalavldng
dplnnttpvt gaspgglrel qlrslteilk ggvliqrnpq lcyqdtilwk difhknnqla
ltlidtnrsr achpcspmck gsrcwgesse dcqsltrtvc aggcarckgp lptdccheqc
aagctgpkhs dclaclhfnh sgicelhcpa lvtyntdtfe smpnpegryt fgascvtacp
ynylstdvgs ctlvcplhnq evtaedgtqr cekcskpcar vcyglgmehl revravtsan
iqefagckki fgslaflpes fdgdpasnta plqpeqlqvf etleeitgyl yisawpdslp
dlsvfqnlqv irgrilhnga ysltlqglgi swlglrslre lgsglalihh nthlcfvhtv
pwdqlfrnph qallhtanrp edecvgegla chqlcarghc wgpgptqcvn csqflrgqec
veecrvlqgl preyvnarhc lpchpecqpq ngsvtcfgpe adqcvacahy kdppfcvarc
psgvkpdlsy mpiwkfpdee gacqpcpinc thscvdlddk gcpaeqrasp lts
配列番号2:ヒトHER2-ED44のアミノ酸配列(ヒトHER2/Neuのアミノ酸310~653)
配列番号3:ラットHER2-ED44のアミノ酸配列(GenBank受託番号:NP_058699のラットHER2/Neuのアミノ酸314~657)
配列番号4:ヒトHER2/neuタンパク質の残基312~649を包含するヒトHer2-ED44の短縮バージョン
配列番号5:ヒトHER2/neuタンパク質のアミノ酸残基340~649を包含するヒトHer2-ED44の短縮バージョン
配列番号6:ラットHer2-ED44-His構築物
配列番号7:ラットHer2-ED44-His
配列番号8:ラットHer2-ED44-kappa構築物
配列番号9:ラットHer2-ED44-kappa
配列番号10:ヒトHer2-ED44-His構築物
配列番号11:ヒトHer2-ED44-His
配列番号12:ヒトHer2-ED44-kappa構築物
配列番号13:ヒトHer2-ED44-kappa
配列番号14:破傷風毒素フラグメントC-kappa構築物
配列番号15:破傷風毒素フラグメントC-kappa
配列番号16:TMV-CPLysアミノ酸配列
配列番号17:破傷風毒素フラグメントCのDOM1ドメインのアミノ酸配列
mgwsciiffl vatatgvhsk nldcwvdnee didvilkkst ilnldinndi isdisgfnss vitypdaqlv pgingkaihl vnnesseviv hkamdieynd mfnnftvsfw lrvpkvsash leqygtneys iissmkkhsl sigsgwsvsl kgnnliwtlk dsagevrqit frdlpdkfna ylankwvfit itndrlssan lyingvlmgs aeitglgair ednnitlkld rcnnnnqyvs idkfrifcka lnpkeiekly tsyls
配列番号18:GenBank AAA75493からのヒトHER2タンパク質のアミノ酸配列
1 melaalcrwg lllallppga astqvctgtd mklrlpaspe thldmlrhly qgcqvvqgnl
61 eltylptnas lsflqdiqev qgyvliahnq vrqvplqrlr ivrgtqlfed nyalavldng
121 dplnnttpvt gaspgglrel qlrslteilk ggvliqrnpq lcyqdtilwk difhknnqla
181 ltlidtnrsr achpcspmck gsrcwgesse dcqsltrtvc aggcarckgp lptdccheqc
241 aagctgpkhs dclaclhfnh sgicelhcpa lvtyntdtfe smpnpegryt fgascvtacp
301 ynylstdvgs ctlvcplhnq evtaedgtqr cekcskpcar vcyglgmehl revravtsan
361 iqefagckki fgslaflpes fdgdpasnta plqpeqlqvf etleeitgyl yisawpdslp
421 dlsvfqnlqv irgrilhnga ysltlqglgi swlglrslre lgsglalihh nthlcfvhtv
481 pwdqlfrnph qallhtanrp edecvgegla chqlcarghc wgpgptqcvn csqflrgqec
541 veecrvlqgl preyvnarhc lpchpecqpq ngsvtcfgpe adqcvacahy kdppfcvarc
601 psgvkpdlsy mpiwkfpdee gacqpcpinc thscvdlddk gcpaeqrasp ltsivsavvg
661 illvvvlgvv fgilikrrqq kirkytmrrl lqetelvepl tpsgampnqa qmrilketel
721 rkvkvlgsga fgtvykgiwi pdgenvkipv aikvlrents pkankeilde ayvmagvgsp
781 yvsrllgicl tstvqlvtql mpygclldhv renrgrlgsq dllnwcmqia kgmsyledvr
841 lvhrdlaarn vlvkspnhvk itdfglarll dideteyhad ggkvpikwma lesilrrrft
901 hqsdvwsygv tvwelmtfga kpydgipare ipdllekger lpqppictid vymimvkcwm
961 idsecrprfr elvsefsrma rdpqrfvviq nedlgpaspl dstfyrslle dddmgdlvda
1021 eeylvpqqgf fcpdpapgag gmvhhrhrss strsgggdlt lglepseeea prsplapseg
1081 agsdvfdgdl gmgaakglqs lpthdpsplq rysedptvpl psetdgyvap ltcspqpeyv
1141 nqpdvrpqpp spregplpaa rpagatlera ktlspgkngv vkdvfafgga venpeyltpq
1201 ggaapqphpp pafspafdnl yywdqdpper gappstfkgt ptaenpeylg ldvpv
配列番号19:野生型コメαアミラーゼシグナルペプチド
配列番号20:改変コメαアミラーゼシグナルペプチド
配列番号21:(GGGGS)リンカー
配列番号22:TVCVコートタンパク質のN末端中にADFKを導入するためのプライマー
【0095】
2013年3月11日に出願された欧州特許出願第13 001 211.5号の内容(説明、特許請求の範囲、及び図面を含む)が、参照により本明細書に組み入れられる。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18-1】
図18-2】
図19
図20
図21A
図21B-1】
図21B-2】
図22
【配列表】
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