(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】情報管理装置、制御システム、情報管理方法、および情報管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/087 20060101AFI20220712BHJP
G08G 1/0965 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G08G1/087
G08G1/0965
(21)【出願番号】P 2018038722
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大和
(72)【発明者】
【氏名】小暮 正道
(72)【発明者】
【氏名】相原 淳良
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-222475(JP,A)
【文献】特開2005-031907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点を優先的に通行させる車両の状況を示す証明書を受信すると、受信した前記証明書が予め登録された証明装置において生成された正当なものであるかどうかを検証する証明書確認部と、
前記証明書確認部によって正当なものであることが検証された証明書に基づく証拠データを記憶する記憶部と、
前記車両を優先的に通行させることを要求する制御要求を要求装置から受信すると、前記記憶部に記憶された前記証拠データに基づいて、
受信した前記制御要求の正当性を検証する制御要求検証部と、
前記制御要求検証部が前記制御要求を正当であると判断した場合、前記制御要求に応じた制御指示を出力する制御指示部と、を備え
、
前記制御指示部は、出力した前記制御指示に基づく制御が実行されたことを前記記憶部に記憶させ、
前記制御要求検証部は、受信した前記制御要求について、出力した前記制御指示に基づく制御が実行されたことを前記記憶部に記憶していれば、正当であると判断しない、
情報管理装置。
【請求項2】
前記車両を優先的に通行させる制御の権利の付与を要求する権利要求を前記要求装置から受信すると、この権利要求の正当性を検証する権利要求検証部と、
前記権利要求検証部が前記権利要求を正当であると判断した場合、前記要求装置に前記
車両を優先的に通行させる制御の権利を付与したことを前記証拠データとして前記記憶部に記憶
させる権利付与部と、を
備え、
前記権利要求検証部は、受信した前記権利要求に含まれている前記車両の状況を、前記証明書確認部によって正当であることが検証された前記証明書が示す前記車両の状況と照合して、受信した前記権利要求の正当性を検証し、
前記制御要求検証部は、前記証拠データとして、前記要求装置に前記車両を優先的に通行させる制御の権利を付与したことを記憶していなければ、受信した前記制御要求を正当でないと判断する、
請求項1に記載の情報管理装置。
【請求項3】
前記要求装置は車両に設けられ、
前記制御指示部は、信号機を制御する
制御装置に前記制御指示を出力する、
請求項
1または2に記載の情報管理装置。
【請求項4】
制御対象を制御する複数の制御装置と、
ネットワークを形成し、前記制御装置を管理する複数の情報管理装置と、を備え、
前記情報管理装置は、
交差点を優先的に通行させる車両の状況を示す証明書を受信すると、受信した前記証明書が予め登録された証明装置において生成された正当なものであるかどうかを検証する証明書確認部と、
前記証明書確認部によって正当なものであることが検証された証明書に基づく証拠データを記憶する記憶部と、
前記車両を優先的に通行させることを要求する制御要求を要求装置から受信すると、前記記憶部に記憶された前記証拠データに基づいて、
受信した前記制御要求の正当性を検証する制御要求検証部と、
前記制御要求検証部が前記制御要求を正当であると判断した場合、前記制御要求に応じた制御指示を
前記制御装置に出力する制御指示部と、を備え
、
前記制御指示部は、出力した前記制御指示に基づく制御が実行されたことを前記記憶部に記憶させ、
前記制御要求検証部は、受信した前記制御要求について、出力した前記制御指示に基づく制御が実行されたことを前記記憶部に記憶していれば、正当であると判断しない、
制御システム。
【請求項5】
コンピュータが
交差点を優先的に通行させる車両の状況を示す証明書を受信すると、受信した前記証明書が予め登録された証明装置において生成された正当なものであるかどうかを検証する証明書確認ステップと、
前記証明書確認ステップで正当なものであることが検証された証明書に基づく証拠データを
記憶部に記憶させる記憶ステップと、
前記車両を優先的に通行させることを要求する制御要求を要求装置から受信すると、前記記憶部に記憶された前記証拠データに基づいて、
受信した前記制御要求の正当性を検証する
制御要求検証ステップと、
前記制御要求検証
ステップで前記制御要求を正当であると判断
された場合、前記制御要求に応じた制御指示を出力する
制御指示ステップと、を実行
し、
前記制御指示ステップは、出力した前記制御指示に基づく制御が実行されたことを前記記憶部に記憶させるステップであり、
前記制御要求検証ステップは、受信した前記制御要求について、出力した前記制御指示に基づく制御が実行されたことを前記記憶部に記憶していれば、正当であると判断しないステップである、
情報管理方法。
【請求項6】
交差点を優先的に通行させる車両の状況を示す証明書を受信すると、受信した前記証明書が予め登録された証明装置において生成された正当なものであるかどうかを検証する証明書確認ステップと、
前記証明書確認ステップで正当なものであることが検証された証明書に基づく証拠データを
記憶部に記憶させる記憶ステップと、
前記車両を優先的に通行させることを要求する制御要求を要求装置から受信すると、前記記憶部に記憶された前記証拠データに基づいて、
受信した前記制御要求の正当性を検証する
制御要求検証ステップと、
前記制御要求検証
ステップで前記制御要求を正当であると判断
された場合、前記制御要求に応じた制御指示を出力する
制御指示ステップと、
をコンピュータに実行させ
、
前記制御指示ステップは、出力した前記制御指示に基づく制御が実行されたことを前記記憶部に記憶させるステップであり、
前記制御要求検証ステップは、受信した前記制御要求について、出力した前記制御指示に基づく制御が実行されたことを前記記憶部に記憶していれば、正当であると判断しないステップである、
情報管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通にかかる要求に応じて装置を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、緊急車両の要求に応じて信号機の点灯状態を制御する緊急車両支援システムが提案されている。この緊急車両支援システムでは、信号機に信号機制御装置が搭載されている。緊急車両の情報送信装置は、その現在地情報を含む情報を送信する。信号機制御装置は、緊急車両の情報送信装置から送信された情報を受信し、当該情報に基づいて信号機の点灯状態を制御する。信号機制御装置は、緊急車両が通行する道路側の信号機を青色に点灯させ、緊急車両が通行する道路と交差する道路側の信号を赤色に点灯させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1に記載された緊急車両支援システムにおいて、信号機制御装置は、接近する車両の情報送信装置から送信された情報を受信した場合、当該車両が緊急車両でなくても、当該情報に基づいて信号機の点灯状態を制御する。即ち、信号機制御装置は、接近する車両が本当に緊急車両かどうか、また接近する車両が緊急を要する状態かどうかを検証しない。このため、特許文献1に記載された緊急車両支援システムでは、緊急を要しない車両が緊急車両に成り済まして優先的に交差点を通行できてしまう。
【0005】
本発明の目的は、交通にかかる要求の正当性を検証できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例である情報管理装置は、交通にかかる状況に基づく証拠データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記証拠データに基づいて、要求装置からの制御要求の正当性を検証する制御要求検証部と、前記制御要求検証部が前記制御要求を正当であると判断した場合、前記制御要求に応じた制御指示を出力する制御指示部と、を備える。
【0007】
交通にかかる状況は、例えば、緊急車両の出動、バスの遅延である。証拠データは要求装置からの制御要求の正当性の証拠となる。要求装置は特定の装置に特定の制御を要求する。制御要求は、特定の装置に特定の制御を要求するために行われる。制御指示は、特定の装置に特定の制御を指示するために行われる。上記構成によれば、交通にかかる状況に基づいて制御要求の正当性が検証される。このため、交通にかかる要求の正当性を検証できる。
【0008】
前記交通にかかる状況に関する状況データに基づいて、前記要求装置に制御の権利を付与することを要求する権利要求の正当性を検証する権利要求検証部と、前記権利要求検証部が前記権利要求を正当であると判断した場合、前記要求装置に前記制御の権利を付与したことを前記証拠データとして前記記憶部に記憶する権利付与部と、をさらに備えてもよい。制御の権利は、特定の装置に特定の制御を実行させるために行使される。この構成では、要求装置に事前に付与された制御の権利に基づいて要求装置からの制御要求の正当性が検証される。
【0009】
前記制御指示部は、前記制御指示に基づく制御が実行されたことを前記記憶部に記憶してもよい。この構成では、同一の証拠データを根拠とする同一の制御要求が複数回認められることを防止できる。
【0010】
前記要求装置は車両に設けられ、前記制御指示部は、信号機を制御する前記制御指示を出力してもよい。この構成では、車両からの正当な制御要求に応じて信号機が制御される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、交通にかかる要求の正当性を検証できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態の信号機制御システムを例示する概略図である。
【
図2】
図2(A)は証明書のデータ構造を例示する概念図である。
図2(B)は優先権要求のデータ構造を例示する概念図である。
図2(C)は優先制御要求のデータ構造を例示する概念図である。
【
図3】
図3は要求装置3の主要部の構成を例示するブロック図である。
【
図4】
図4は情報管理装置4の主要部の構成を例示するブロック図である。
【
図5】
図5(A)は、分散台帳44に記録された証明書処理データを例示する概念図である。
図5(B)は、分散台帳44に記録された優先権処理データを例示する概念図である。
【
図6】
図6は、情報管理装置4における証明書に関する処理を例示するフローチャートである。
【
図7】
図7は、情報管理装置4における優先権付与の処理を例示するフローチャートである。
【
図8】
図8(A)は、優先権付与の処理が完了した後の分散台帳44の優先権処理データを例示する概念図である。
図8(B)は、交差点Aに対して優先権が行使された後の分散台帳44の優先権処理データを例示する概念図である。
図8(C)は、交差点A,Cに対して交差点A,Cの順で優先権が行使された後の分散台帳44の優先権処理データを例示する概念図である。
【
図9】
図9は、情報管理装置4における優先権行使の処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
§1 適用例
図1は、本実施形態の信号機制御システムを例示する概略図である。信号機制御システムは、特定の車両が優先的に交差点を通行できるように、信号機を制御するものである。信号機制御システムは本発明の「制御システム」の一例である。
【0014】
信号機制御システムは、証明装置1、車両2、要求装置3、複数の情報管理装置4、複数の制御装置5、および複数の信号機6を備える。信号機制御システムは、複数の証明装置1、複数の車両2、および複数の要求装置3を備えてもよい。信号機6は本発明の「制御対象」の一例である。
【0015】
以下では、複数の情報管理装置4のそれぞれを区別する場合、それらを情報管理装置4A,4Bのように記載することがある。複数の制御装置5のそれぞれを区別する場合、それらを制御装置5A,5Bのように記載することがある。複数の信号機6のそれぞれを区別する場合、それらを信号機6A,6Bのように記載することがある。
【0016】
証明装置1は、例えば、病院、救急センタ、消防署、警察署、バス停に設置される。証明装置1は、車両2の状況を証明する証明書を情報管理装置4に送信(発行)する。車両2の状況は、例えば、救急車の出動、消防車の出動、パトカーの出動、バスの遅延である。車両2の状況は本発明の「交通にかかる状況」の一例である。証明書は本発明の「状況データ」の一例である。証明装置1は、その近くに位置する情報管理装置4と有線または無線通信できる。
【0017】
要求装置3は車両2に設けられる。車両2および要求装置3には識別子が割り当てられる。車両2と要求装置3とは信号機制御システム上一対一で紐づけられる。車両2は、例えば、救急車、消防車、パトカー、バス、一般車両である。要求装置3は、車両2が優先的に交差点を通行する優先権の付与を情報管理装置4に要求する。換言すると、要求装置3は情報管理装置4に優先権要求を送信する。優先権は、より正確には、車両2が優先的に交差点を通行するように信号機6を制御することを制御装置5に実行させる権利である。換言すると、優先権は制御装置5に優先制御を実行させる権利である。優先権は本発明の「制御の権利」の一例である。優先権要求は本発明の「権利要求」の一例である。また、要求装置3は、制御装置5に優先制御を実行させることを情報管理装置4に要求する。換言すると、要求装置3は情報管理装置4に優先制御要求を送信する。優先制御要求は本発明の「制御要求」の一例である。要求装置3は、車両2の近くに位置する情報管理装置4と無線通信できる。
【0018】
情報管理装置4は、ネットワークを形成し、ネットワークのノードとなる。情報管理装置4は、例えば、分散ネットワークを形成する。情報管理装置4は、例えば、複数のノードがP2Pで通信するメッシュ状のネットワークを形成する。情報管理装置4は互いに有線または無線通信できる。情報管理装置4は、ネットワーク内のトランザクションを記録する台帳を有する。情報管理装置4は、例えば、後述の分散台帳44を有する(
図4参照)。分散台帳44は本発明の「記憶部」の一例である。
【0019】
情報管理装置4および制御装置5は、例えば、交差点または信号機6の付近に設置される。情報管理装置4は、信号機6を制御する制御装置5を管理する。
図1では、制御装置5および信号機6の一部の図示を省略している。1つの情報管理装置4は1つまたは複数の制御装置5を管理する。情報管理装置4の一部は制御装置5を管理しなくてもよい。1つの制御装置5は1つまたは複数の信号機6を制御する。1つの制御装置5は、1つまたは複数の交差点に設置される複数の信号機6を制御してもよい。情報管理装置4は、自らが管理する制御装置5と有線または無線通信できる。
【0020】
情報管理装置4は、証明書を受信した場合、証明書を確認する。情報管理装置4は、証明書を正当であると判断した場合、証明書に関する処理を証明書処理データとして分散台帳44に記録する。情報管理装置4は、優先権要求を受信した場合、証明書処理データに基づいて優先権要求の正当性を検証する。情報管理装置4は、優先権要求を正当であると判断した場合、優先権付与の処理を優先権付与処理データとして分散台帳44に記録する。優先権付与処理データは本発明の「証拠データ」の一例である。情報管理装置4は、優先制御要求を受信した場合、優先権付与処理データに基づいて優先制御要求の正当性を検証する。優先制御要求は本発明の「制御要求」の一例である。情報管理装置4は、優先制御要求を正当であると判断した場合、優先制御を制御装置5に指示する。優先制御の指示は本発明の「制御指示」の一例である。
【0021】
このように、本実施形態において、情報管理装置4は、証明装置1が発行した証明書を根拠として要求装置3に優先権を付与し、当該優先権を根拠として優先制御を制御装置5に指示する。このため、本実施形態では、優先制御要求を送信した装置にかかる車両が、優先制御を要する車両かどうか、即ち偽装または成り済ましではないかを検証できる。従って、優先制御を要する特定の車両のみが優先的に交差点を通行できる。
【0022】
§2 構成例
<証明装置>
証明装置1は、上記のように、車両2の状況等を証明する証明書を情報管理装置4に送信する。証明装置1は、例えば、通信部、記憶部、制御部を有してもよい(何れも図示せず)。証明装置1の通信部は、有線または無線通信を行うためのインタフェースであり、外部機器とのデータ通信を制御する。証明装置1の記憶部は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、証明装置1の制御部で実行されるプログラム等を記憶する。証明装置1の制御部は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含む。証明装置1の制御部は、証明装置1の記憶部に記憶されたプログラムをRAMに展開し、当該プログラムをCPUにより解釈および実行することで、証明書の発行等の処理を行う。
【0023】
ここで、証明書のデータ構造について説明しておく。
図2(A)は証明書のデータ構造を例示する概念図である。証明書は、例えば、証明内容、証明者、対象、対象地点、状況、およびエビデンスにかかるデータを含む。証明内容にかかるデータは、証明書で証明される事実を示すものである。証明者にかかるデータは、証明書を発行した証明装置1の識別子である。対象にかかるデータは、証明書で証明される事実に関係する要求装置3の識別子である。例えば、証明書で証明される事実がバスの遅延の場合、対象にかかるデータは、遅延しているバスに設けられた要求装置3の識別子である。証明書で証明される事実が救急車の出動の場合、対象にかかるデータは、出動する救急車に設けられた要求装置3の識別子である。対象地点にかかるデータは、証明書で証明される事実に関係する交差点の識別子である。例えば、証明書で証明される事実がバスの遅延の場合、対象地点にかかるデータは、遅延しているバスが今後通行する交差点の識別子である。証明書で証明される事実が救急車の出動の場合、対象地点にかかるデータは、出動する救急車が今後通行する交差点の識別子である。状況にかかるデータは、証明書で証明される事実の具体的な状況を示すものである。エビデンスにかかるデータは、証明書の正当性の根拠を示すものである。
【0024】
なお、上記のように、車両2と要求装置3とは一対一で紐づけられるので、要求装置3の識別子に代えて車両2の識別子を用いてもよい。
【0025】
<要求装置>
図3は、要求装置3の主要部の構成を例示するブロック図である。要求装置3は、例えば、制御部31、操作部32、表示部33、通信部34、記憶部35および位置情報取得部36を有してもよい。
【0026】
操作部32は操作者の入力操作を受け付ける。表示部33は、要求装置3から操作者への出力を表示する。操作部32および表示部33は、例えば、タッチパネルで実現される。通信部34は、無線通信を行うためのインタフェースであり、外部機器とのデータ通信を制御する。記憶部35は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、制御部31で実行されるプログラム、交差点の位置データ等を記憶する。位置情報取得部36は車両2の現在位置のデータを取得する。位置情報取得部36は、例えば、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して測位を行うGPS受信機である。
【0027】
制御部31は、例えば、権利要求部311、接近判定部312および制御要求部313を有してもよい。権利要求部311、接近判定部312および制御要求部313は、車両2が優先制御を要する場合に動作する。権利要求部311は、要求装置3に優先権を付与することを要求する優先権要求を作成し、当該優先権要求を情報管理装置4に送信する。接近判定部312は、位置情報取得部36から出力された車両2の現在位置データと、記憶部35に記憶された交差点の位置データとに基づいて、車両2が交差点に接近したかどうかを判定する。制御要求部313は、車両2が交差点に接近したと判定された場合、優先制御要求を作成し、当該優先制御要求を情報管理装置4に送信する。
【0028】
制御部31は、CPU、RAM、ROM等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。制御部31は、記憶部35に記憶されたプログラムをRAMに展開し、当該プログラムをCPUにより解釈および実行する。これにより、制御部31は、権利要求部311、接近判定部312および制御要求部313として動作する。
【0029】
ここで、優先権要求および優先制御要求のデータ構造について説明しておく。
図2(B)は優先権要求のデータ構造を例示する概念図である。
図2(C)は優先制御要求のデータ構造を例示する概念図である。
【0030】
図2(B)に例示するように、優先権要求は、例えば、内容、要求者、付与対象、対象地点、要求理由、エビデンスにかかるデータを含む。内容にかかるデータは要求の種類を示すものである。要求者にかかるデータは、優先権を要求する要求装置3の識別子である。付与対象にかかるデータは、優先権を付与される要求装置3の識別子である。対象地点にかかるデータは、要求装置3が優先制御を要求する交差点の識別子である。要求理由にかかるデータは、要求装置3が優先制御を要求する理由を示すものである。エビデンスにかかるデータは、優先権要求の正当性の根拠となる証明書処理データのTxID(トランザクションID)である。
【0031】
図2(C)に例示するように、優先制御要求は、例えば、内容、要求者、接近情報を含む。内容にかかるデータは要求の種類を示す。要求者にかかるデータは、優先制御を要求する要求装置3の識別子である。接近情報にかかるデータは、例えば、車両2の現在位置を示すものである。接近情報にかかるデータは、例えば、車両2が接近している交差点の識別子と、当該交差点に車両2が到達するまでにかかる所要時間とを含むデータでもよい。
【0032】
<情報管理装置>
図4は、情報管理装置4の主要部の構成を例示するブロック図である。情報管理装置4は、例えば、制御部41、通信部42、記憶部43および分散台帳44を有してもよい。
【0033】
通信部42は、有線または無線通信を行うためのインタフェースであり、外部機器とのデータ通信を制御する。記憶部43は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、制御部41で実行されるプログラム、交差点の位置データ等を記憶する。
【0034】
分散台帳44は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、情報管理装置4の分散ネットワーク内のトランザクションを記憶する。具体的には、分散台帳44は、証明書処理データ、後述の優先権処理データ等を記憶する。例えば、分散台帳44はブロックチェーン技術を用いて実現される。例えば、各情報管理装置4が保有する台帳は、同一であり、また全てのトランザクションが記録されている完全なものである。
【0035】
なお、各情報管理装置4が保有する台帳は、各情報管理装置4が必要なデータのみを記録していてもよい。
【0036】
分散台帳44の閲覧は、所定の者にのみ許可されるが、任意の者に許可されてよい。但し、任意の者が分散台帳44を閲覧できる場合、証明装置1および要求装置3が情報管理装置4に送信するデータには、電子署名等の本人認証のデータが付される。
【0037】
制御部41は、例えば、証明書確認部411、権利要求検証部412、権利付与部413、制御要求検証部414および制御指示部415を有してもよい。
【0038】
証明書確認部411は、車両2の状況等を証明する証明書を確認する。証明書確認部411は、証明書を正当であると判断した場合、証明書に関する処理を証明書処理データとして分散台帳44に記録する。
【0039】
権利要求検証部412は、証明書処理データに基づいて、要求装置3に優先権を付与することを要求する優先権要求の正当性を検証する。権利付与部413は、権利要求検証部412が優先権要求を正当であると判断した場合、要求装置3に優先権を付与したことを優先権付与処理データとして分散台帳44に記録する。
【0040】
制御要求検証部414は、分散台帳44に記録された優先権付与処理データに基づいて、要求装置3からの優先制御要求の正当性を検証する。制御指示部415は、制御要求検証部414が優先制御要求を正当であると判断した場合、優先制御要求に応じた優先制御の指示を制御装置5に送信する(出力する)。また、制御指示部415は、優先制御が実行されたこと、換言すると、優先権行使の処理を優先権行使処理データとして分散台帳44に記録する。優先制御は本発明の「制御指示に基づく制御」の一例である。
【0041】
制御部41は、CPU、RAM、ROM等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。制御部41は、記憶部43に記憶されたプログラムをRAMに展開し、当該プログラムをCPUにより解釈および実行する。これにより、制御部41は、証明書確認部411、権利要求検証部412、権利付与部413、制御要求検証部414および制御指示部415として動作する。
【0042】
ここで、証明書処理データおよび優先権処理データについて説明しておく。優先権処理データは、優先権付与処理データおよび優先権行使処理データを含む。
図5(A)は、分散台帳44に記録された証明書処理データを例示する概念図である。
図5(B)は、分散台帳44に記録された優先権処理データを例示する概念図である。
【0043】
図5(A)に例示するように、証明書処理データは、例えば、TxID、記録時刻、証明内容、証明者、対象、対象地点、状況、およびエビデンスにかかるデータ、または当該データの保存場所のアドレスを含む。TxIDにかかるデータはトランザクションの識別子である。記録時刻にかかるデータは、トランザクションが記録された時刻を示すものである。他の項目にかかるデータは、上記の証明書のデータ構造において例示されたものと同様である。
【0044】
なお、
図5(A)では、救急車の往路のみに対して証明書を発行した例を示しているが、救急車の復路のみ、または救急車の往復路に対して証明書を発行してもよい。
【0045】
図5(B)に例示するように、優先権処理データは、TxID、記録時刻、内容、要求者、付与対象、対象地点、要求理由、エビデンス、行使した優先権、および有効期限にかかるデータを含む。TxIDにかかるデータはトランザクションの識別子である。記録時刻にかかるデータは、トランザクションが記録された時刻を示すものである。内容にかかるデータは、優先権に関してなされた行為を示すものである。要求者にかかるデータは、優先権付与または優先制御(即ち、優先権行使)を要求した要求装置3の識別子である。付与対象にかかるデータは、優先権を付与された要求装置3の識別子である。対象地点にかかるデータは、優先制御の対象となる交差点の識別子である。要求理由にかかるデータは、優先権要求または優先制御要求の理由を示すものである。エビデンスにかかるデータは、優先権要求または優先制御要求の正当性の根拠となるTxIDである。行使された優先権にかかるデータは、行使された優先権が付与された処理のTxIDである。有効期限にかかるデータは、優先権の有効期限を示すものである。優先権に有効期限を設けることで、優先権要求の理由に沿わない優先権の行使を防止できる。
【0046】
<制御装置>
制御装置5は信号機6の点灯状態を制御する。制御装置5は、例えば、通信部、記憶部、制御部を有してもよい(何れも図示せず)。制御装置5の通信部は、有線または無線通信を行うためのインタフェースであり、外部機器とのデータ通信を制御する。制御装置5の記憶部は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、制御装置5の制御部で実行されるプログラム等を記憶する。制御装置5の制御部は、CPU、RAM、ROM等を含む。制御装置5の制御部は、制御装置5の記憶部に記憶されたプログラムをRAMに展開し、当該プログラムをCPUにより解釈および実行することで、信号機の制御等の処理を行う。
【0047】
§3 動作例
まず、証明装置1における証明書の送信処理の一例について説明する。証明装置1は、車両2の状況等を証明する証明書を作成し、当該証明書を情報管理装置4に送信する。この際、証明装置1と車両2の要求装置3とは、証明書で証明される車両2の状況等を共有している。
【0048】
例えば、車両2はバスであり、証明装置1はバス停に設置されてもよい。車両2の要求装置3は、車両2の運行中、運行データを証明装置1に送信する。運行データは、例えば、車両2または要求装置3の識別子、車両2の走行予定経路、車両2が前のバス停に到着した時刻、車両2のGPS情報等のデータを含む。証明装置1は、運行データに基づいて車両2の遅延を検出した場合、車両2の要求装置3に車両2の遅延を通知する。また、証明装置1は、車両2の遅延を証明する証明書を作成し、当該証明書を情報管理装置4に送信する。
【0049】
また、例えば、車両2は救急車であり、証明装置1は救急センタに設置されてもよい。車両2の出動が決定された場合、車両2の出動が証明装置1および車両2に通知される。当該通知は、例えば、車両2または要求装置3の識別子、車両2の行先、車両2の走行予定経路、患者の容態の記録、救急通報の記録等のデータを含んでもよい。証明装置1は、車両2の出動を通知された場合、車両2の出動を証明する証明書を作成し、当該証明書を情報管理装置4に送信する。
【0050】
次に、情報管理装置4における証明書に関する処理の一例について説明する。
図6は、情報管理装置4における証明書に関する処理を例示するフローチャートである。
【0051】
まず、情報管理装置4の証明書確認部411は、受信した証明書の正当性を確認する(s11)。例えば、情報管理装置4の記憶部43は、証明装置1が登録された登録者リストを記憶しており、証明書確認部411は、証明書を送信した装置のIPアドレスを登録者リストと照合することで証明書の正当性を確認してもよい。また、証明書確認部411は、証明書に付された電子署名を検証することで証明書の正当性を確認してもよい。
【0052】
証明書確認部411は、証明書を正当であると判断した場合(s11:Yes)、証明書に関する処理を証明書処理データとして分散台帳44に記録する(s12)。そして、証明書確認部411は、証明書を送信した装置に、証明書処理データの記録の完了を通知する(s13)。当該通知は、例えば、分散台帳44に今回記録された証明書処理データのTxIDを含む。
【0053】
ここで、情報管理装置4が分散台帳44にトランザクションを記録する手順の一例について説明する。まず、トランザクションを実行した情報管理装置4は、トランザクションデータを分散ネットワークにブロードキャストし、トランザクションデータを他の情報管理装置4と共有する。トランザクションは、例えば、証明書、優先権に関する処理である。トランザクションデータは、例えば、証明書処理データ、優先権処理データである。次に、代表の資格を有する情報管理装置4が、トランザクションの正当性を検証する。次に、各情報管理装置4はコンセンサスアルゴリズムに従って合意形成を図る。各情報管理装置4は、合意形成が成功した後、トランザクションを承認して分散台帳44に記録する。
【0054】
証明書確認部411は、証明書を正当ではないと判断した場合(s11:No)、証明書に関する処理を分散台帳44に記録しない。そして、証明書確認部411は、証明書に関する処理の記録を拒否することを、証明書を送信した装置に送信する(s14)。
【0055】
次に、要求装置3における優先権の要求処理の一例について説明する。まず、要求装置3の権利要求部311は、優先権要求の正当性の根拠となる証明書処理データが分散台帳44に記録されたことを知得する。例えば、証明装置1が、証明書処理データの記録の完了を要求装置3に通知してもよい。当該通知は当該証明書処理データのTxIDを含む。また、例えば、要求装置3は、自らが関係する証明書処理データを分散台帳44から抜き出した後、抜き出した証明書処理データの中から優先権要求の正当性の根拠となるものを選定してもよい。そして、権利要求部311は、車両2の状況等にかかるデータ、証明書処理データのTxID等に基づいて優先権要求を作成し、当該優先権要求を情報管理装置4に送信する。
【0056】
次に、情報管理装置4における優先権付与の処理の一例について説明する。
図7は、情報管理装置4における優先権付与の処理を例示するフローチャートである。
【0057】
まず、情報管理装置4の権利要求検証部412は、受信した優先権要求の正当性を検証する(s21)。例えば、権利要求検証部412は、優先権要求に含まれるTxIDを有する証明書処理データが分散台帳44に記録されているかどうか確認してもよい。さらに、例えば、権利要求検証部412は、優先権要求に含まれる要求理由(
図2(B)参照)が所定要件を満たすかどうか確認することで、要求理由の妥当性を検証してもよい。さらに、例えば、権利要求検証部412は、正当性の根拠として同一のTxIDを含む優先権要求がない、即ち互いに競合する優先権要求がないことを確認してもよい。
【0058】
情報管理装置4の権利付与部413は、権利要求検証部412が優先権要求を正当であると判断した場合(s21:Yes)、優先権付与の処理を優先権付与処理データとして分散台帳44に記録する(s22)。優先権付与の処理が完了した後の分散台帳44の優先権処理データは、例えば、
図8(A)に示すようなものである。そして、権利付与部413は、優先権の付与が完了したことを、優先権要求を送信した装置に通知する(s23)。権利付与部413は、権利要求検証部412が優先権要求を正当ではないと判断した場合(s21:No)、優先権要求を拒否し、優先権付与の処理を分散台帳44に記録しない。そして、権利付与部413は、優先権要求を拒否することを、優先権要求を送信した装置に通知する(s24)。
【0059】
次に、要求装置3における優先制御の要求処理の一例について説明する。要求装置3の接近判定部312は、車両2が交差点に接近したかどうか判定する。例えば、接近判定部312は、位置情報取得部36から出力された車両2の現在位置データと、記憶部35に記憶された交差点の位置データとから、車両2と交差点との距離を算出する。そして、接近判定部312は、車両2と交差点との距離が所定閾値未満の場合、車両2が交差点に接近したと判定してもよい。要求装置3の制御要求部313は、車両2が交差点に接近したと判定された場合、優先制御要求を作成し、当該優先制御要求を情報管理装置4に送信する。制御要求部313は、優先制御要求に電子署名を付してもよいし、要求装置3の識別子と対となるパスワードを優先制御要求とともに送信してもよい。
【0060】
次に、情報管理装置4における優先権行使の処理の一例について説明する。
図9は、情報管理装置4における優先権行使の処理を例示するフローチャートである。
【0061】
まず、情報管理装置4の制御要求検証部414は、優先制御要求に含まれる接近情報(
図2(C)参照)に基づいて、車両2が管理対象の交差点に接近しているかどうか検証する(s31)。ここで、情報管理装置4の管理対象の交差点は次のようなものに相当する。例えば、情報管理装置4Aが制御装置5Aを管理し、制御装置5Aが信号機6Aを制御し、信号機6Aが交差点Aに設置されている場合、情報管理装置4Aの管理対象の交差点は交差点Aに相当する(
図1参照)。
【0062】
例えば、制御要求検証部414は、優先制御要求に含まれる車両2の現在位置にかかるデータと、情報管理装置4の記憶部43に記憶された交差点の位置データとから、車両2と交差点との距離を算出する。そして、制御要求検証部414は、車両2と交差点との距離が所定閾値未満の場合、車両2が管理対象の交差点に接近したと判断する。
【0063】
なお、車両2が交差点に接近しているかどうかの検証は、要求装置3または情報管理装置4の何れか一方で行われてもよい。
【0064】
制御要求検証部414は、車両2が交差点に接近したと判断した場合(s31:Yes)、優先制御要求の正当性を検証する(s32)。例えば、制御要求検証部414は、優先制御要求を要求した装置への優先権の付与が分散台帳44に記録され、当該優先権にかかる優先権行使の処理が分散台帳44に記録されておらず、かつ、当該優先権の有効期限内に優先制御要求が受信された場合、優先制御要求を正当であると判断する。制御要求検証部414は、例えば、分散台帳44の優先権付与処理データから優先権の有効期限を取得できる(
図5(B)参照)。優先権行使の処理が分散台帳44に記録されていないことを確認することで、優先権の二重利用を防止できる。
【0065】
制御要求検証部414は、優先制御要求を正当であると判断した場合(s32:Yes)、情報管理装置4が通常制御モードであるかどうか確認する(s33)。情報管理装置4は、制御装置5に優先制御を指示した後、優先制御モードとなり、制御装置5から優先制御の終了を通知された後、通常制御モードに戻る。
【0066】
情報管理装置4の制御指示部415は、情報管理装置4が通常制御モードの場合(s33:Yes)、制御装置5に優先制御を指示する(s34)。当該優先制御の指示は、例えば、車両2が通行する道路、車両2が交差点を通行する予測時間を含む。このように、情報管理装置4は、同時期に複数の適切な優先制御要求を受信した場合、その中で最も先に受信された優先制御要求で要求される優先制御を制御装置5に指示してもよい。ここで、適切な優先制御要求は、交差点に接近した車両2から情報管理装置4に送信された正当な優先制御要求である。
【0067】
なお、情報管理装置4は、同時期に複数の適切な優先権要求を受信した場合、当該優先権要求で要求された優先制御の中で最も高い優先度の優先制御を制御装置5に指示してもよい。例えば、情報管理装置4は、バスの遅延を理由とした優先制御の優先度より、救急車の出動を理由とした優先制御の優先度が高いと判断してもよい。
【0068】
次に、制御指示部415は、制御装置5から優先制御の終了を通知された後(s35:Yes)、優先権行使の処理を優先権行使処理データとして分散台帳44に記録する(s36)。優先権行使の処理が完了した後の分散台帳44の優先権処理データは、例えば、
図8(B)、
図8(C)に示すようなものである。
図8(B)は、交差点Aに対して優先権が行使された後の分散台帳44の優先権処理データを例示する概念図である。
図8(C)は、交差点A,Cに対して交差点A,Cの順で優先権が行使された後の分散台帳44の優先権処理データを例示する概念図である。
【0069】
制御指示部415は、車両2が交差点に接近していないと判断された場合(s31:No)、優先制御要求が正当ではないと判断された場合(s32:No)、または情報管理装置4が優先制御モードである場合(s33:No)、優先制御要求を拒否する。制御指示部415は、制御装置5に優先制御を指示せず、また優先権行使の処理を分散台帳44に記録しない。制御指示部415が優先制御要求を拒否した場合の分散台帳44の優先権処理データは、例えば、
図8(B)に示すようなものから変化しない。制御指示部415は、優先制御を拒否することを、優先制御要求を送信した装置に通知してもよい(s37)。当該通知は、優先制御要求が拒否された理由を含んでもよい。この場合、当該通知を受信した装置は、優先制御要求が拒否された理由に基づいて、さらに優先制御要求を送信するかどうか判断してもよい。
【0070】
次に、制御装置5における優先制御処理の一例について説明する。制御装置5は、情報管理装置4から送信された優先制御の指示に基づいて、優先制御を行う。例えば、制御装置5は、優先制御の指示に基づいて、車両2が交差点を停止せずに通行できるように、信号機6の点灯を切替える時間を定めたスケジュールを作成する。そして、制御装置5は、当該スケジュールに従って信号機6の点灯を切替える。制御装置5は、優先制御を終了した後、情報管理装置4に優先制御の終了を通知する。
【0071】
以上のように、本実施形態において、情報管理装置4は、分散台帳44に記録された証明書処理データを根拠として要求装置3に優先権を付与する。情報管理装置4は、分散台帳44に記録された優先権付与処理データを根拠として優先制御を制御装置5に指示する。このため、本実施形態では、優先制御要求を送信した装置にかかる車両が、優先制御を要する車両かどうか、即ち偽装または成り済ましではないかを検証できる。従って、優先制御を要する特定の車両のみが優先的に交差点を通行できる。
【0072】
また、情報管理装置4は、証明装置1が発行した証明書を根拠として要求装置3に優先権を付与する。このため、車両2の状況に応じて一時的に車両2の要求装置3に優先権を付与できる。
【0073】
§4 変形例
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0074】
<4.1>
上記の実施形態において、要求装置3は優先権を情報管理装置4に要求し、情報管理装置4は、証明書処理データを根拠として要求装置3に優先権を付与する。そして、要求装置3は優先制御を要求し、情報管理装置4は、優先権付与処理データを根拠として優先制御を制御装置5に指示する。
【0075】
しかしながら、要求装置3は優先権を要求せず、情報管理装置4は優先権を付与しなくてもよい。要求装置3は優先制御を要求し、情報管理装置4は、証明書処理データを根拠として優先制御を制御装置5に指示してもよい。この場合、証明処理データが本発明の「証拠データ」の一例である。
【0076】
<4.2>
上記の実施形態において、証明装置1は証明書を情報管理装置4に送信し、要求装置3は優先権要求を情報管理装置4に送信する。しかしながら、証明装置1は、証明書とともに、要求装置3への優先権の付与を要求する優先権要求を送信してもよい。要求装置3は優先権要求を送信しなくてもよい。
【0077】
<4.3>
上記の実施形態において、証明装置1は証明書を情報管理装置4に送信し、要求装置3は優先権要求を情報管理装置4に送信する。しかしながら、証明装置1は証明書を情報管理装置4に送信しなくてもよい。要求装置3は、証明装置1から取得した証明書とともに優先権要求を情報管理装置4に送信してもよい。
【0078】
<4.4>
上記の実施形態の信号機制御システムにおいて、要求装置3は、車両2が交差点に接近した後、優先制御要求を送信する。情報管理装置4は制御装置5に優先制御を指示する。制御装置5は情報管理装置4に優先制御の終了を通知する。情報管理装置4は、制御装置5から優先制御の終了を通知された後、優先権行使の処理を分散台帳44に記録する。
【0079】
しかしながら、信号機制御システムは次のように構成されてもよい。要求装置3は、絶えず、接近情報を含む優先制御要求を送信する。情報管理装置4は、車両2が交差点に接近していることを確認した場合、制御装置5に優先制御の開始を指示する。情報管理装置4は、車両2が交差点を通過したことを確認した場合、制御装置5に優先制御の終了を指示する。制御装置5は、情報管理装置4に優先制御の終了を通知しなくてもよい。情報管理装置4は、車両2が交差点を通過したことを確認した場合、優先権行使の処理を分散台帳44に記録する。
【0080】
§5 他の実施形態
<5.1>
本発明の実施形態はポイント発行システムでもよい。ポイント発行システムは、ドライバーが安全運転または思いやり運転を実行している場合、ドライバーにポイントを発行する。ポイント発行システムは、例えば、車載センサ、端末および情報管理装置を備えてもよい。情報管理装置は、例えば、分散台帳、制御要求検証部、制御指示部およびポイント発行部を有してもよい。分散台帳には、車載センサから取得されるドライバーの運転記録が記録される。制御要求検証部は、ドライバーの端末からポイント発行を要求された場合、分散台帳に記録されたドライバーの運転記録に基づいて、当該ドライバーの運転が安全運転または思いやり運転であるかどうか判断する。制御指示部は、当該ドライバーの運転が安全運転または思いやり運転であると判断された場合、当該ドライバーへのポイントの発行をポイント発行部に指示する。ポイント発行部は、ポイントにかかるデータを当該ドライバーの端末に送信する。これにより、ポイント発行の要求の正当性が検証される。
【0081】
<5.2>
本発明の実施形態は遅延証明システムでもよい。遅延証明システムはバスの遅延証明書を乗客に発行する。遅延証明システムは、例えば、証明装置、端末および情報管理装置を備えてもよい。情報管理装置は、例えば、分散台帳、制御要求検証部および制御指示部を有してもよい。分散台帳には、バス停に設置された証明装置から取得されるバスの遅延記録が記録される。制御要求検証部は、バスの乗客が端末から遅延証明書の発行を要求した場合、当該乗客の乗車記録、および分散台帳に記録されたバスの遅延記録に基づいて、当該乗客が遅延したバスに乗車していたかどうかを確認する。制御指示部は、当該乗客が遅延したバスに乗車していた場合、当該乗客への遅延証明書の発行を端末に指示する。端末は当該乗客に遅延証明書を発行する。これにより、遅延証明書発行の要求の正当性が検証される。
【0082】
<5.3>
本発明の実施形態は別の信号機制御システムでもよい。当該信号機制御システムは、交通弱者が余裕をもって道路を横断できるように信号機を制御する。交通弱者は、例えば、車椅子を使用している人、足を怪我している人、目が不自由な人である。当該信号機制御システムは、例えば、証明装置、端末、情報管理装置および制御装置を備えてもよい。情報管理装置は、例えば、分散台帳、制御要求検証部および制御指示部を有してもよい。病院、市役所等はビーコン等の端末を交通弱者に配布する。分散台帳には、病院、市役所等に設置された証明装置から取得される交通弱者の登録者リストが記録される。登録者リストは、例えば、交通弱者に配布された端末の識別子を含む。制御要求検証部は、端末から信号機の交通弱者用の制御が要求された場合、分散台帳に記録された登録者リストに基づいて、当該端末のユーザが交通弱者の登録者リストに登録されているかどうかを確認する。制御指示部は、当該ユーザが交通弱者の登録者リストに登録されている場合、信号機の交通弱者用の制御を制御装置に指示する。制御装置は、当該ユーザが余裕をもって道路を横断できるように信号機を制御する。これにより、交通弱者用の制御の要求の正当性が検証される。
【0083】
上記の実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0084】
(付記)
交通にかかる状況に基づく証拠データを記憶する記憶部(44)と、
前記記憶部(44)に記憶された前記証拠データに基づいて、要求装置(3)からの制御要求の正当性を検証する制御要求検証部(414)と、
前記制御要求検証部(414)が前記制御要求を正当であると判断した場合、前記制御要求に応じた制御指示を出力する制御指示部(415)と、を備える、情報管理装置(4)。
【符号の説明】
【0085】
1…証明装置
2…車両
3…要求装置
4…情報管理装置
5…制御装置
6…信号機
31…制御部
32…操作部
33…表示部
34…通信部
35…記憶部
36…位置情報取得部
41…制御部
42…通信部
43…記憶部
44…分散台帳
311…権利要求部
312…接近判定部
313…制御要求部
411…証明書確認部
412…権利要求検証部
413…権利付与部
414…制御要求検証部
415…制御指示部