(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】蓄電モジュール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220712BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20220712BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220712BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20220712BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220712BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220712BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20220712BHJP
H01M 50/627 20210101ALI20220712BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/12
H01G11/78
H01G11/80
H01G11/84
H01M10/058
H01M50/184 A
H01M50/627
(21)【出願番号】P 2019035686
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】柘植 昭人
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016459(JP,A)
【文献】特開2018-125141(JP,A)
【文献】特開2018-106976(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123502(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/159456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 11/12
H01G 11/78
H01G 11/80
H01G 11/84
H01M 10/058
H01M 50/184
H01M 50/627
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、前記集電体の一方面に設けられた正極、及び前記集電体の他方面に設けられた負極を有するバイポーラ電極を含む複数の電極が、セパレータを介して積層方向に沿って積層される電極積層体と、
前記電極積層体の周囲を囲んで設けられる封止体と、
を備え、
前記封止体は、前記バイポーラ電極の周縁部に結合する第1封止部と、前記第1封止部に結合する第2封止部とを有し、
前記第1封止部は、前記電極積層体において隣り合う前記電極の間に形成される内部空間に連通する第1貫通孔を有し、
前記第1封止部における前記第1貫通孔の周囲には、前記第1封止部の側面より前記内部空間の側に向かって窪む凹部が設けられ、
前記凹部には、前記第2封止部が充填されている、
蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第2封止部は、前記第1貫通孔と前記封止体の外部とをつなぐ第2貫通孔を有し、
前記凹部は、前記第2貫通孔に近づくほど拡径している、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記凹部は、多段階に拡径している、請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記積層方向における前記凹部の両縁は、前記第1貫通孔が設けられる前記第1封止部とは異なる第1封止部に設けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
枠形状を呈する第1封止部が結合された複数の電極を、セパレータを介して積層方向に沿って積層することによって、電極積層体を形成する第1工程と、
積層された前記第1封止部同士を仮溶着する第2工程と、
仮溶着された前記第1封止部同士を結合する第2封止部を形成する第3工程と、
を備え、
前記第1工程では、前記電極積層体において隣り合う前記電極の間に形成される内部空間に連通すると共に、前記第1封止部に設けられる第1貫通孔に貫通孔形成部材を配置した状態にて、前記電極積層体を形成し、
前記第2工程では、前記貫通孔形成部材の周囲に位置する前記第1封止部の側面に、前記内部空間の側に向かって窪む凹部を形成し、
前記第3工程では、前記凹部に前記第2封止部を充填する、
蓄電モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記第3工程は、
第1金型を用いて、前記第1封止部の前記側面を覆うと共に、前記凹部を埋める第1樹脂部分を射出成形する工程と、
第2金型を用いて、前記第1樹脂部分の側面を覆う第2樹脂部分を射出成形する工程と、を備え、
前記積層方向において、前記第1樹脂部分を構成する樹脂の射出方向と、前記第2樹脂部分を構成する樹脂の射出方向とは、互いに反対向きである、請求項5に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記第3工程後、前記貫通孔形成部材を抜出することによって、前記第1貫通孔に連通する第2貫通孔を前記第2封止部に形成する第4工程をさらに備える、請求項5又は6に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。バイポーラ電池は、バイポーラ電極とセパレータとが積層方向に沿って交互に積層された積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向に互いに隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。
【0003】
下記特許文献1の蓄電モジュールでは、積層体の側面に設けられた封止体と積層体全体を密封するラミネートフィルムとから、蓄電モジュールの封止構造が構成されているが、ラミネートフィルムに替えて、積層体の周囲に射出成形により封止体を直接形成する構造が考えられる。この場合、封止体は、例えば、第1封止部及び第2封止部とから構成され得る。第1封止部は、例えば、各バイポーラ電極の電極板の縁部に溶着などにより設けられる。第1封止部が設けられた電極板を積層することで積層体が構成される。第2封止部は、例えば、積層体の側面に露出すると共に各電極板に設けられた第1封止部を覆い、且つ、各電極板の第1封止部同士を結合するように、射出成形により設けられる。第2封止部の耐圧強度は、第1封止部の耐圧強度よりも高く構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
封止体には、蓄電モジュールの内部空間へ電解液を注液するための貫通孔(注液口)が設けられる。上記のように封止体を第1封止部と第2封止部とから構成する場合においては、予め連通部が形成された第1封止部に対して射出成形により第2封止部を形成することがある。この場合、第1封止部における連通部が設けられる箇所及びその周辺と、第2封止部との接続領域が小さくなる。このため、上記箇所及びその周辺のシール強度(耐圧強度)が低下してしまう。そのため、第1封止部と第2封止部との境界であって、貫通孔が設けられる箇所及びその周辺においては、封止体の破壊が発生しやすい傾向にある。
【0006】
本発明の目的は、封止体において貫通孔が設けられる箇所及びその周辺の破壊を抑制可能な蓄電モジュール及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、集電体、集電体の一方面に設けられた正極、及び集電体の他方面に設けられた負極を有するバイポーラ電極を含む複数の電極が、セパレータを介して積層方向に沿って積層される電極積層体と、電極積層体の周囲を囲んで設けられる封止体と、を備える。封止体は、バイポーラ電極の周縁部に結合する第1封止部と、第1封止部に結合する第2封止部とを有し、第1封止部は、電極積層体において隣り合う電極の間に形成される内部空間に連通する第1貫通孔を有する。第1封止部における第1貫通孔の周囲には、第1封止部の側面より内部空間の側に向かって窪む凹部が設けられ、凹部には、第2封止部が充填されている。
【0008】
この蓄電モジュールに含まれる第1封止部の側面には、第1貫通孔の周囲に位置すると共に、内部空間の側に向かって窪む凹部が設けられる。また、この凹部には第2封止部が充填されている。これにより、第1封止部において第1貫通孔が設けられる箇所の周辺と、第2封止部との接触面積を増加できる。このため、第1封止部と第2封止部との境界であって、第1貫通孔が設けられる箇所及びその周辺における封止体の耐圧強度を向上できる。したがって上記蓄電モジュールによれば、封止体において貫通孔が設けられる箇所及びその周辺の破壊を抑制可能である。
【0009】
第2封止部は、第1貫通孔と封止体の外部とをつなぐ第2貫通孔を有し、凹部は、第2貫通孔に近づくほど拡径してもよい。この場合、第2封止部を構成する材料が凹部に充填されやすくなる。したがって、第1貫通孔が設けられる箇所及びその周辺における封止体の耐圧強度を良好に向上できる。
【0010】
凹部は、多段階に拡径してもよい。この場合、第1封止部において第1貫通孔が設けられる箇所の周辺と、第2封止部との接触面積を良好に増加できる。
【0011】
積層方向における凹部の両縁は、第1貫通孔が設けられる第1封止部とは異なる第1封止部に設けられてもよい。この場合、第1封止部において貫通孔が設けられる箇所の周辺と、第2封止部との接触面積を良好に増加できる。
【0012】
本発明の別の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、枠形状を呈する第1封止部が結合された複数の電極を、セパレータを介して積層方向に沿って積層することによって、電極積層体を形成する第1工程と、積層された第1封止部同士を仮溶着する第2工程と、仮溶着された第1封止部同士を結合する第2封止部を形成する第3工程と、を備える。第1工程では、電極積層体において隣り合う電極の間に形成される内部空間に連通すると共に、第1封止部に設けられる第1貫通孔に貫通孔形成部材を配置した状態にて、電極積層体を形成し、第2工程では、貫通孔形成部材の周囲に位置する第1封止部の側面に、内部空間の側に向かって窪む凹部を形成し、第3工程では、凹部に第2封止部を充填する。
【0013】
この蓄電モジュールの製造方法によれば、第2工程にて貫通孔形成部材の周囲に位置する第1封止部の側面に、内部空間の側に向かって窪む凹部が形成される。そして第3工程にて凹部に第2封止部が充填される。これにより、第1封止部において第1貫通孔が設けられる箇所の周辺と、第2封止部との接触面積を増加できる。このため、第1封止部と第2封止部との境界であって、貫通孔が設けられる箇所及びその周辺における耐圧強度を向上できる。したがって上記製造方法によって製造される蓄電モジュールによれば、封止体において貫通孔が設けられる箇所及びその周辺の破壊を抑制可能である。
【0014】
第3工程は、第1金型を用いて、第1封止部の側面を覆うと共に、凹部を埋める第1樹脂部分を射出成形する工程と、第2金型を用いて、第1樹脂部分の側面を覆う第2樹脂部分を射出成形する工程と、を備え、積層方向において、第1樹脂部分を構成する樹脂の射出方向と、第2樹脂部分を構成する樹脂の射出方向とは、互いに反対向きであってもよい。この場合、積層方向において互いに対向しており、電極積層体に対して拘束力を付加するオーバーハング部を良好に形成できる。したがって、封止体の耐圧強度をさらに向上できる。
【0015】
上記蓄電モジュールの製造方法は、第3工程後、貫通孔形成部材を抜出することによって、第1貫通孔に連通する第2貫通孔を第2封止部に形成する第4工程をさらに備えてもよい。この場合、第1工程にて単に貫通孔形成部材を用いることによって、互いに連通する第1貫通孔及び第2貫通孔を容易に形成できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、封止体において貫通孔が設けられる箇所及びその周辺の破壊を抑制可能な蓄電モジュール及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、蓄電モジュールを含む蓄電装置の概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図2とは異なる位置における蓄電モジュールの要部拡大断面図である。
【
図4】
図4(a)~(c)は、蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。
【
図9】
図9(a)は、第1変形例に係る蓄電モジュールの要部拡大断面図であり、
図9(b)は、第2変形例に係る蓄電モジュールの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、
図1及び
図2を参照しながら、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法によって製造される蓄電モジュールを含む蓄電装置の構成を説明する。
図1は、蓄電モジュールを含む蓄電装置の概略断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、又は電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対して拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。以下では、蓄電モジュール4が積層する方向を単に「積層方向D(Z軸方向)」とする。また、積層方向Dに交差もしくは直交する方向を水平方向とする。水平方向は、例えば互いに直交するX軸方向とY軸方向とを有する。本実施形態では、「積層方向Dから見る」は、平面視に相当する。
【0019】
モジュール積層体2は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では4つ)の導電構造体5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向Dから見て略矩形状を呈している。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタ等である。以下の説明では、蓄電モジュール4としてニッケル水素二次電池を例示する。
【0020】
積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電構造体5を介して電気的に接続されている。すなわち、隣り合う蓄電モジュール4の間には、導電構造体5が設けられている。また、導電構造体5は、積層方向Dの両端に位置する蓄電モジュール4の外側にも配置されている。積層方向Dの一端(本実施形態では上端)に位置する導電構造体5には、負極端子6が接続されている。積層方向Dの他端(本実施形態では下端)に位置する導電構造体5には、正極端子7が接続されている。負極端子6及び正極端子7のそれぞれは、例えばX軸方向に延在している。このような負極端子6及び正極端子7を設けることにより、蓄電装置1の充放電を実施できる。
【0021】
導電構造体5は、蓄電装置1における放熱板としても機能し得る。導電構造体5は、例えば蓄電モジュール4において発生した熱を放出し得る。導電構造体5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えばY軸方向に沿って延在している。これらの流路5aを空気等の冷媒が通過することによって、蓄電モジュール4にて発生した熱を効率的に外部に放出できる。
図1の例では、平面視にて、導電構造体5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さい。しかし、放熱性の向上の観点から、平面視にて、導電構造体5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じでもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0022】
拘束部材3は、蓄電モジュール4を積層方向Dに拘束する部材であり、モジュール積層体2を積層方向Dに挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とを有する。このため、モジュール積層体2には、導電構造体5を介して拘束部材3の拘束力が加わる。エンドプレート8は、積層方向Dから見た蓄電モジュール4及び導電構造体5の面積よりも一回り大きい面積を有する金属板であり、略矩形状を呈する。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電構造体5との間が絶縁されている。
【0023】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電構造体5は、エンドプレート8によって挟持され、且つ、モジュール積層体2としてユニット化される。また、ユニット化されたモジュール積層体2に対しては、積層方向Dに沿った拘束力が付加される。
【0024】
次に、
図2を参照しながら、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11の側面を囲う封止体12とを備える。また、図示はしないが、蓄電モジュール4内には電解液が収容されている(詳細は後述)。
【0025】
まず、蓄電モジュール4の電極積層体11の構成について説明する。電極積層体11は、セパレータ13を介して積層方向Dに積層された複数の電極を含む。複数の電極は、バイポーラ電極14と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。以下では、積層方向Dに沿って交互に積層されるバイポーラ電極14及びセパレータ13を、積層体とも呼称する。この場合、負極終端電極18は積層方向Dにおいて積層体の一端に位置し、正極終端電極19は積層方向Dにおいて積層体の他端に位置する。
【0026】
バイポーラ電極14及びセパレータ13は、積層方向Dに沿って互いに積層されており、例えば平面視にて矩形状を呈している。セパレータ13は、隣り合うバイポーラ電極14の間に配置されている。バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む集電体15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有している。
【0027】
集電体15は、水平方向に延在する板形状を呈する導電体であり、可撓性を示す。このため水平方向は、集電体15の延在方向とも言える。集電体15は、例えばニッケル箔、メッキ処理が施された鋼板、またはメッキ処理が施されたステンレス鋼板である。鋼板としては、例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等)が挙げられる。ステンレス鋼板としては、例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304等が挙げられる。集電体15の厚さは、例えば0.1μm以上1000μm以下である。なお、集電体15がニッケル箔である場合、当該ニッケル箔にメッキ処理が施されてもよい。
【0028】
バイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極17と向かい合っている。正極16は、集電体15の一方面15aに正極活物質を塗工することにより形成されている。正極活物質は、例えば、水酸化ニッケルである。水酸化ニッケルには、コバルト酸化物等が被覆されてもよい。
【0029】
バイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極16と向かい合っている。負極17は、集電体15の他方面15bに負極活物質を塗工することにより形成されている。負極活物質は、例えば水素吸蔵合金である。なお、集電体15の周縁部15cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。
【0030】
負極終端電極18は、集電体15と、集電体15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18に含まれる集電体15の他方面15bは、電極積層体11における積層方向Dの内側(中央側)を向く面である。負極終端電極18に含まれる集電体15の一方面15aは、電極積層体11の積層方向Dにおける一方の外表面を構成する面であり、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電構造体5と電気的に接続されている。負極終端電極18の集電体15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介してバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0031】
正極終端電極19は、積層方向Dの他端に配置されており、集電体15と、集電体15の他方面15bに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19に含まれる集電体15の一方面15aは、電極積層体11における積層方向Dの内側を向く面である。正極終端電極19に含まれる集電体15の他方面15bは、積層方向Dにおける電極積層体11の他方の外側面を構成する面であり、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電構造体5と電気的に接続されている。正極終端電極19の集電体15の他方面15bに設けられた正極16は、セパレータ13を介してバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0032】
セパレータ13は、正極16と負極17とを隔離するための部材であり、正極16と負極17との間に配置される。セパレータ13は、例えばシート形状を呈する。セパレータ13は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルムである。セパレータ13は、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等でもよい。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されてもよい。セパレータ13は、シート形状に限られず、袋状でもよい。
【0033】
次に、封止体12の構成について説明する。封止体12は、電極積層体11の周囲を囲んで設けられる樹脂部材である。封止体12は、集電体15の周縁部15cを包囲するように設けられる。封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって形成されており、全体として矩形筒形状を呈する。絶縁性の樹脂は、例えば、耐アルカリ性を示す熱可塑性樹脂である。このような熱可塑性樹脂は、例えば、PP、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等である。封止体12は、集電体15の周縁部15cに結合された複数の第1封止部21と、第1封止部21の側面21aを覆う第2封止部22とを有する。
【0034】
第1封止部21は、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19のそれぞれの縁部に結合する樹脂部材である。具体的には、第1封止部21は、バイポーラ電極14、負極終端電極18及び正極終端電極19に含まれる集電体15の周縁部15cのそれぞれに結合する。第1封止部21は、対応する周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられる。このため、第1封止部21は、積層方向Dから見て矩形枠形状を呈する。第1封止部21は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有する樹脂フィルムである。第1封止部21は、樹脂シートを打ち抜き加工することによって形成されてもよいし、金型を用いた射出成形によって形成されてもよい。第1封止部21の厚さは、例えば100μm以上150μm以下である。
【0035】
平面視における第1封止部21の内側部分は、例えば超音波処理又は熱処理の実施を経て、各周縁部15cに溶着されている。本実施形態では、上記内側部分は、バイポーラ電極14における周縁部15cの一方面15aと、負極終端電極18における周縁部15cの一方面15aと、正極終端電極19における周縁部15cの一方面15a及び他方面15bとに溶着されている。このため、正極終端電極19には、2つの第1封止部21が溶着されている。各集電体15と第1封止部21とは、気密に結合されている。
【0036】
第1封止部21は、互いに異なる形状を呈する封止部21A,21Bを有する。封止部21Aは、バイポーラ電極14及び正極終端電極19に含まれる集電体15の一方面15aに溶着される。封止部21Bは、負極終端電極18に含まれる集電体15の一方面15aと、正極終端電極19に含まれる集電体15の他方面15bとに溶着される。封止部21Aは2層構造を示す一方で、封止部21Bは単層構造を示す。例えば、封止部21Aの一部が折りたたまれることによって、封止部21Aは2層構造を示す。本実施形態では、バイポーラ電極14には封止部21Aが溶着され、負極終端電極18には封止部21Bが溶着され、正極終端電極19には封止部21A,21Bが溶着される。
【0037】
平面視における第1封止部21の外側部分は、水平方向において集電体15よりも外側に位置している。当該外側部分の少なくとも一部は、第2封止部22に保持されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部21同士は、接している。これにより、当該第1封止部21同士は液密及び気密に溶着される。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部21同士は、離間してもよい。
【0038】
以下では、積層方向Dにおいて集電体15と第1封止部21とが結合する領域を、結合領域Kとする。集電体15において、少なくとも結合領域Kに含まれる表面は、粗面化されている。本実施形態では、バイポーラ電極14及び負極終端電極18に含まれる集電体15の一方面15aにおける全体と、正極終端電極19に含まれる集電体15の全体とのそれぞれが、粗面化されている。
【0039】
表面の粗面化は、表面粗さの拡大に相当する。粗面化は、例えば、電解メッキによる複数の突起の形成により実現される。例えば、集電体15の一方面15aに複数の突起が形成された場合、当該一方面15aと第1封止部21との接合界面では、溶融状態の樹脂が複数の突起間に入り込む。これにより、アンカー効果が発揮されるので、集電体15と第1封止部21との間の結合強度を向上できる。粗面化の際に形成される突起は、例えば基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。この場合、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となるので、アンカー効果が良好に発揮される。
【0040】
第2封止部22は、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成する部材であり、各第1封止部21の外表面を覆っている。第2封止部22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2封止部22は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形の筒状(環状)を呈している。第2封止部22は、例えば射出成形時の熱によって第1封止部21の外表面に溶着されている。これにより、第2封止部22は、各第1封止部21を結合している。
【0041】
第2封止部22は、各第1封止部21の側面21aを直接覆う第1樹脂部分31と、第1樹脂部分31の側面を覆う第2樹脂部分32とを有する。第1樹脂部分31は、主部31a及びオーバーハング部31bを有する。主部31aは、第1樹脂部分31の側面を構成する部分である。オーバーハング部31bは、積層方向Dにおける主部31aの一端と共に封止体12の角部を構成する部分であり、当該一端から水平方向に沿って内側に張り出している。第2樹脂部分32は、第1樹脂部分31と同様に、主部32a及びオーバーハング部32bを有する。主部32aは、封止体12の側壁として機能する部分であり、第1樹脂部分31の側面を覆っている。オーバーハング部32bは、積層方向Dにおける主部32aの他端と共に封止体12の別の角部を構成する部分であり、当該他端から水平方向に沿って内側に張り出している。このため、オーバーハング部31b,32bは、積層方向Dにおいて互いに対向しており、電極積層体11に対して積層方向Dに沿った拘束力を付加する。
【0042】
第1封止部21及び第2封止部22は、電極積層体11内に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。具体的には、第2封止部22は、第1封止部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び、積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、電極積層体11と封止体12とによって、内部空間Vが形成される。より具体的には、隣り合う電極の間(すなわち、互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間)には、気密に仕切られた内部空間Vが形成される。この内部空間Vには、例えば水溶液系の電解液(具体例としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、もしくはこれらの混合液等のアルカリ性電解液)が収容されている。この電解液は、第1封止部21に設けられる連通孔(不図示)を介して、内部空間Vに収容される。当該連通孔は、電解液の注入後に例えば圧力調整弁等によって塞がれる。なお、「内部空間の体積」と言う場合は、セパレータ13の空隙を含む体積を意味する。
【0043】
図3は、
図2とは異なる位置における蓄電モジュールの内部構成を示す要部拡大断面図である。
図2,3は、互いに直交した断面を示す。
図3に示されるように、封止体12の外表面には、図示しない圧力調整弁等を装着するための被装着部40が設けられる。加えて、封止体12には、被装着部40に連通すると共に、内部空間Vと封止体12の外部とをつなぐ貫通孔50が設けられる。貫通孔50は、内部空間Vに電解液を注液するために設けられる開口であり、積層方向Dに交差する方向に沿って延在する。本実施形態では、貫通孔50は、水平方向に沿って延在している。
図3においては、貫通孔50は封止体12に1つ設けられているが、これに限られない。例えば、封止体12には、各内部空間Vに応じて設けられる複数の貫通孔50が設けられてもよい。この場合、複数の内部空間Vに電解液を同時に注液する観点から、少なくとも一部の貫通孔50同士は、積層方向Dにおいて互いに重ならなくてもよい。
【0044】
貫通孔50は、第1封止部21に設けられる第1貫通孔51と、第2封止部22に設けられる第2貫通孔52とを有する。
図3においては、第1貫通孔51は、内部空間Vに連通する開口であり、負極終端電極18に隣接するバイポーラ電極14に結合する第1封止部21に設けられる。第2貫通孔52は、第1貫通孔51と封止体12の外部とをつなぐ開口であり、第2封止部22における第1樹脂部分31及び第2樹脂部分32の両方に形成される。第2貫通孔52は、例えば被装着部40に装着される圧力調整弁等(不図示)等に連通する。本実施形態では、積層方向Dに沿った第1貫通孔51の径は、積層方向Dに沿った第2貫通孔52の径と同一もしくは略同一である。また、本実施形態では、第1貫通孔51の一端は第1封止部21の内側面に位置し、第1貫通孔51の他端は第1封止部21の側面21aに位置するものとする。
【0045】
第1封止部21の側面21aには、第1貫通孔51の周囲に位置する凹部53,54が設けられる。凹部53,54は、第1封止部21の側面21aより内部空間Vの側に向かって窪んでおり、第1貫通孔51と一体化している。このため、第1貫通孔51の一部は、凹部53,54が設けられることによって拡径している。凹部53,54が設けられることによって、第1貫通孔51の一部は、少なくとも積層方向Dにおいて拡径している。凹部53,54には、第2封止部22が充填されている。より具体的には、凹部53,54には、第1樹脂部分31を構成する樹脂が充填されている。このため、第1貫通孔51の外側の開口端は、第2封止部22によって構成される。なお、凹部53,54のそれぞれは、底部を有さなくてもよい。
【0046】
凹部53は、第1貫通孔51が設けられる第1封止部21の側面21aに設けられている。一方、凹部54は、第1貫通孔51に隣接する第1封止部21の側面21aに設けられている。
図3においては、凹部54は、負極終端電極18に結合する第1封止部21の側面21aに設けられている。また、凹部53,54は、水平方向において集電体15の周縁部15cよりも外側に位置する。これにより、凹部53,54の形成時に周縁部15cが露出することを防止できる。本実施形態では、凹部53,54は、水平方向において第2貫通孔52に近づくほど拡径している。すなわち、凹部53,54は、水平方向において内部空間Vから遠ざかるほど拡径している。
【0047】
次に、
図4~8を参照しながら、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法について説明する。
図4(a)~(c)、及び
図5~8のそれぞれは、蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。
【0048】
まず、
図4(a)~(c)に示されるように、各電極(バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19)に対して第1封止部21を成形する。この工程では、最初に、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19を準備する。続いて、バイポーラ電極14、負極終端電極18及び正極終端電極19に含まれる集電体15の一方面15aに、第1封止部21を溶着する。具体的には、バイポーラ電極14及び正極終端電極19のそれぞれに対して、封止部21Aを結合する。さらに、負極終端電極18に含まれる集電体15の一方面15aと、正極終端電極19に含まれる集電体15の他方面15bのそれぞれに対して、封止部21Bを溶着する。なお、バイポーラ電極14に結合する第1封止部21の少なくとも一部には、第1貫通孔51が形成されている。
【0049】
次に、
図5に示されるように、電極積層体11を形成する(第1工程)。第1工程では、各電極とセパレータ13とを積層方向に沿って交互に積層することによって、電極積層体11を形成する。具体的には、まず、バイポーラ電極14及びセパレータ13を積層方向Dに沿って交互に積層することによって、積層体を形成する。続いて、積層方向Dにおける積層体の一端に負極終端電極18を配置すると共に、積層方向Dにおける積層体の他端に正極終端電極19を配置する。これにより、バイポーラ電極14、セパレータ13、負極終端電極18、及び正極終端電極19を有する電極積層体11を形成する。
【0050】
第1工程では、第1貫通孔51の閉塞を防止するため、第1貫通孔51に貫通孔形成部材60を配置した状態にて電極積層体11を形成する。
図5では、貫通孔形成部材60は、第1封止部21に設けられる第1貫通孔51に隙間なく挿入されている。貫通孔形成部材60は、上述したように第1貫通孔51の閉塞を防止するための部材であり、且つ、後述する第2貫通孔52を形成するための部材である。貫通孔形成部材60は、例えば板形状を呈しており、後述する第2封止部22の形成時において変形等が発生しない強度を有する。貫通孔形成部材60の一部は、水平方向において第1封止部21の側面よりも外側に露出している。
【0051】
次に、
図6に示されるように、積層された第1封止部21同士を仮溶着する(第2工程)。第2工程では、まず、一対の押圧治具71,72を用いて、積層方向Dに沿って電極積層体11を挟持する。押圧治具71,72のそれぞれは、例えば矩形板形状を呈する部材である。ここで、押圧治具71,72の縁は、平面視にて、第1封止部21の外縁よりも内側であって、第1封止部21の内縁よりも外側に位置する。このため、押圧治具71,72のそれぞれは、平面視にて第1封止部21の一部を覆う。換言すると、第1封止部21の他部は、平面視にて押圧治具71,72から露出している。本実施形態では、押圧治具71,72の縁は、平面視にて、集電体15の周縁部15cよりも外側に位置している。
【0052】
続いて第2工程では、水平方向に沿って、加熱治具73によって各第1封止部21を押圧すると共に加熱する。まず、加熱治具73は、押圧治具71,72に突き当たるまで、水平方向に沿って各第1封止部21を押圧する。このとき、加熱治具73によって第1封止部21が加熱される。これにより、各第1封止部21が変形し、積層方向Dにおいて互いに隣り合う第1封止部21同士の隙間(
図5を参照)が埋められる。加えて、加熱された第1封止部21の表面が溶融することによって、互いに隣り合う第1封止部21同士が仮溶着される。このような第2工程を実施することによって、電極積層体11に含まれるバイポーラ電極14、負極終端電極18及び正極終端電極19を互いに仮固定できる。
【0053】
加熱治具73は、第1封止部21を押圧及び加熱するための治具であり、例えば略角筒形状を呈する。図示しないが、加熱治具73は、2つ以上の部品に分解可能である。加熱治具73は、貫通孔形成部材60が挿通される開口73aと、開口73aの周囲に設けられる凸部73bとを有する。凸部73bは、水平方向において電極積層体11に向かって突出する部分であり、開口73aの縁に沿って連続的に設けられている。本実施形態では、凸部73bは先細り形状を呈する。したがって本実施形態では、凸部73bの幅は、その先端に向かうほど狭まっている。
【0054】
第2工程では、加熱治具73に凸部73bが設けられることにより、第1封止部21の側面21aにおいて第1貫通孔51の周囲に位置する部分が、凸部73bによって押圧される。凸部73bが開口73aの縁に沿って連続的に設けられているので、第1封止部21の側面21aが窪むことによって凹部53,54が形成される。具体的には、バイポーラ電極14に結合する第1封止部21に凹部53が設けられると共に、負極終端電極18に結合する第1封止部21に凹部54が設けられる。なお、第1貫通孔51には貫通孔形成部材60が隙間なく挿入されているので、凸部73bによって押し出された樹脂によって第1貫通孔51は閉塞しない。加えて、凸部73bが開口73aの縁に沿って連続的に設けられているので、凹部53,54は、第1貫通孔51と一体化する。
【0055】
次に、仮溶着された各第1封止部21を結合する第2封止部22を形成する(第3工程)。第3工程では、まず、
図7に示されるように、例えば第1金型81を用いて、各第1封止部21の外周面上に加熱溶融材料である樹脂を射出成形する。これにより、第1封止部21の側面21aを覆うと共に、凹部53,54を埋める第1樹脂部分31を射出形成する。なお、第1樹脂部分31を形成する樹脂は、第1金型81に設けられる射出口81aを介して、積層方向Dにおける一端側(上端側)から他端側(下端側)へ向かって射出される。また、第1金型81は、貫通孔形成部材60が挿通する開口81bを有する。このため、第1樹脂部分31は、貫通孔形成部材60が第1貫通孔51に隙間なく挿入された状態にて射出成形される。したがって、第3工程後、第1貫通孔51は、第1樹脂部分31を形成する樹脂によって埋められない。
【0056】
続いて、
図8に示されるように、例えば第2金型82を用いて、少なくとも第1樹脂部分31の側面を覆う第2樹脂部分32を射出成形する。これにより、第1樹脂部分31及び第2樹脂部分32を含む第2封止部22を形成する。このとき、第2樹脂部分32に被装着部40も形成する。なお、第2樹脂部分32を形成する樹脂は、第2金型82に設けられる射出口82aを介して、積層方向Dにおける他端側から一端端側へ向かって射出される。このため、第1樹脂部分31を構成する樹脂の射出方向と、第2樹脂部分32を構成する樹脂の射出方向とは、互いに反対向きである。また、第2金型82は、第1金型81と同様に、貫通孔形成部材60が挿通する開口82bを有する。このため、第2樹脂部分32もまた、貫通孔形成部材60が第1貫通孔51に隙間なく挿入された状態にて射出成形される。したがって、第3工程後、第1貫通孔51は、第2封止部22を形成する樹脂によって埋められない。
【0057】
次に、貫通孔形成部材60を抜出することによって、第1貫通孔51に連通する第2貫通孔52を第2封止部22に形成する(第4工程)。第4工程では、貫通孔形成部材60を水平方向に沿って電極積層体11から取り出す。これによって、第1樹脂部分31及び第2樹脂部分32において貫通孔形成部材60によって埋められなかった部分が、開口される。この開口が、第1貫通孔51と外部とをつなぐ第2貫通孔52になる。以上の工程を経て、
図2に示されるように、第1貫通孔51を有する第1封止部21と、第2貫通孔52を有する第2封止部22とを備える封止体12を形成する。そして図示はしないが、第4工程後、貫通孔50を介して内部空間V内に電解液を注入し、被装着部40に圧力調整弁等が装着される。以上の工程を経て、蓄電モジュール4が製造される。
【0058】
以上に説明した本実施形態に係る製造方法によって製造された蓄電モジュール4によれば、第1貫通孔51が設けられる第1封止部21の側面21aには、第1貫通孔51と一体化する凹部53が設けられる。また、第1貫通孔51に隣接する第1封止部21の側面21aにも、第1貫通孔51と一体化する凹部54が設けられる。加えて、凹部53,54には第2封止部22が充填されている。これにより、第1封止部21において第1貫通孔51が設けられる箇所の周辺と、第2封止部22との接触面積を増加できる。このため、第1封止部21と第2封止部22との境界であって、第1貫通孔51が設けられる箇所及びその周辺における封止体12の耐圧強度を向上できる。したがって本実施形態によれば、封止体12において貫通孔50が設けられる箇所及びその周辺の破壊を抑制可能である。
【0059】
加えて本実施形態では、負極終端電極18に結合する第1封止部21の側面21aであって、第1貫通孔51の周囲に位置する凹部54が設けられる。そしてこの凹部54には第2封止部22が充填されている。これにより、負極終端電極18に結合する第1封止部21は、積層方向Dにおける両側から第2封止部22によって挟まれている。このため、第2封止部22による負極終端電極18の固定強度を向上できる。したがって、蓄電モジュール4の内圧上昇に起因した負極終端電極18の剥離を抑制できる。
【0060】
本実施形態では、第2封止部22は、水平方向に延在し、第1貫通孔51と封止体12の外部とをつなぐ第2貫通孔52を有し、凹部53は、水平方向において第2貫通孔52に近づくほど拡径している。このため、第2封止部22を構成する材料が凹部53,54に充填されやすくなる。したがって、第1貫通孔51が設けられる箇所及びその周辺における封止体12の耐圧強度を良好に向上できる。
【0061】
本実施形態では、上記第3工程は、第1金型81を用いて、凹部53を埋めると共に第1封止部21の側面を覆う第1樹脂部分31を射出成形する工程と、第2金型82を用いて、第1樹脂部分31の側面を覆う第2樹脂部分32を射出成形する工程と、を備え、積層方向Dにおいて、第1樹脂部分31を構成する樹脂の射出方向と、第2樹脂部分32を構成する樹脂の射出方向とは、互いに反対向きである。このため、積層方向Dにおいて互いに対向しており、電極積層体11に対して拘束力を付加するオーバーハング部31b,32bを良好に形成できる。したがって、封止体12の耐圧強度をさらに向上できる。
【0062】
本実施形態では、蓄電モジュール4の上記製造方法は、貫通孔形成部材60を抜出することによって、第1貫通孔51に連通する第2貫通孔52を第2封止部22に形成する上記第4工程を備える。このため、上記第1工程にて単に貫通孔形成部材60を用いることによって、互いに連通する第1貫通孔51及び第2貫通孔52を容易に形成できる。
【0063】
以下では、
図9(a),(b)を参照しながら、上記実施形態の各変形例について説明する。以下の各変形例において、上記実施形態と重複する箇所の説明は省略する。したがって以下では、上記実施形態と異なる箇所を主に説明する。
【0064】
図9(a)は、第1変形例に係る蓄電モジュールの要部拡大断面図である。
図9(a)に示されるように、第1変形例では、凹部53Aは、多段階に拡径している。加えて、第1貫通孔51に隣接する第1封止部21の側面に設けられる凹部54Aもまた、多段階に拡径している。第1変形例においては、凹部53A,54Aの表面は、ステップ状に変化している。このような第1変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、第1封止部21において第1貫通孔51が設けられる箇所の周辺と、第2封止部22との接触面積を良好に増加できる。
【0065】
図9(b)は、第2変形例に係る蓄電モジュールの要部拡大断面図である。
図9(b)に示されるように、第2変形例では、積層方向Dにおける凹部53Bの縁と、積層方向Dにおける凹部54Bの縁とのそれぞれ(すなわち、積層方向における凹部の両縁)は、第1貫通孔51が設けられる第1封止部21とは異なる第1封止部21に設けられる。このような第2変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、第2変形例においても、第1封止部21において第1貫通孔51が設けられる箇所の周辺と、第2封止部22との接触面積を良好に増加できる。
【0066】
本発明に係る蓄電モジュール及びその製造方法は、上記実施形態及び上記変形例に限定されず、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態及び上記変形例は、適宜組み合わされてもよい。例えば、上記第1変形例と上記第2変形例とは、組み合わされてもよい。この場合、第1封止部において第1貫通孔が設けられる箇所の周辺と、第2封止部との接触面積を良好に増加できる。
【0067】
上記実施形態及び上記変形例では、各集電体における一方面が粗面化されているが、これに限られない。例えば、当該一方面のうち結合領域に含まれる箇所のみが粗面化されてもよい。また、導電板の一方面のうち、結合領域に含まれる箇所のみが粗面化されてもよい。
【0068】
上記実施形態及び上記変形例では、集電体は平面視にて略矩形状を呈するが、これに限られない。集電体は、平面視にて多角形状でもよいし、円形状でもよいし、楕円形状でもよい。同様に、エンドプレートと、セパレータとのそれぞれは、平面視にて略矩形状を呈さなくてもよいし、封止体(具体的には、第1封止部及び第2封止部)もまた平面視にて略矩形枠形状を呈さなくてもよい。
【0069】
上記実施形態及び上記変形例では、第2工程において用いられる押圧治具と加熱治具とは、互いに異なる治具であるが、これに限られない。例えば、押圧治具は、加熱治具の一部でもよい。また、上記実施形態及び上記変形例では、加熱治具によって第1封止部に凹部が形成されるが、これに限られない。例えば、加熱治具による第1封止部同士の仮溶着後に凹部を形成してもよい。また、第2工程以降では、同一の貫通孔形成部材が用いられているが、これに限られない。例えば、加熱治具に挿通する貫通孔形成部材と、第1金型に挿通する貫通孔形成部材と、第2金型に挿通する貫通孔形成部材とは、互いに異なってもよい。第1金型と第2金型とには、予め貫通孔形成部材が取り付けられてもよい。
【0070】
上記実施形態及び上記変形例では、第2封止部は第1樹脂部分及び第2樹脂部分を有しているが、これに限られない。例えば、第2封止部は、第1樹脂部分のみによって形成されてもよい。この場合、積層方向における第1樹脂部分の両端には、オーバーハング部が形成される。
【0071】
上記実施形態及び上記変形例では、封止体に設けられる貫通孔は水平方向に沿って延在しているが、これに限られない。例えば、貫通孔は、積層方向に交差する交差方向に沿って延在してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…蓄電装置、2…モジュール積層体、3…拘束部材、4…蓄電モジュール、5…導電構造体、11…電極積層体、12…封止体、13…セパレータ、14…バイポーラ電極、15…集電体、15a…一方面、15b…他方面、15c…周縁部、18…負極終端電極、19…正極終端電極、21…第1封止部、22…第2封止部、31…第1樹脂部分、31b…オーバーハング部、32…第2樹脂部分、32b…オーバーハング部、51…第1貫通孔、52…第2貫通孔、53,54…凹部、71,72…押圧治具、73…加熱治具、81…第1金型、82…第2金型、D…積層方向、K…結合領域、V…内部空間。