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特許7103276蓄電モジュールの製造装置及び蓄電モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造装置及び蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220712BHJP
   B29C 45/36 20060101ALI20220712BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20220712BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20220712BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220712BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20220712BHJP
   H01M 50/627 20210101ALI20220712BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
B29C45/36
H01G11/84
H01G13/00 381
H01M10/058
H01M50/184 A
H01M50/627
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019039571
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020145032
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100116920
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】河端 栄克
(72)【発明者】
【氏名】中山 博治
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016459(JP,A)
【文献】特開2018-174079(JP,A)
【文献】特開2018-120719(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
B29C 45/36
H01G 11/84
H01G 13/00
H01M 10/058
H01M 50/184
H01M 50/627
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、前記第1方向から見て前記電極積層体を取り囲むシール部材とを備える蓄電モジュールの製造装置であって、
前記複数の電極は、電極板、前記電極板の一方面に設けられた正極及び前記電極板の他方面に設けられた負極を有するバイポーラ電極を含み、
前記シール部材は、隣り合う前記電極間に設けられた内部空間と連通された第1連通孔を形成した第1樹脂部と、前記第1連通孔と連通された第2連通孔を形成した第2樹脂部と、を備え、
前記製造装置は、
前記第1樹脂部及び前記第2樹脂部を樹脂成形により形成するための型と、
前記型に取り付けられて前記第1樹脂部の樹脂成形に用いられ、前記第1連通孔を形成するための第1連通孔形成部を有する第1入れ子型と、
前記型に取り付けられて前記第2樹脂部の樹脂成形に用いられ、前記第2連通孔を形成するための第2連通孔形成部を有する第2入れ子型と、を備え、
前記第2連通孔形成部は、前記第2入れ子型において揺動可能に支持され、前記第2樹脂部の樹脂成形時に前記第1連通孔に挿入されて用いられる、
蓄電モジュールの製造装置。
【請求項2】
前記第2連通孔形成部の断面は、前記第1連通孔形成部の断面と比べて小さく形成されている、
請求項1に記載の蓄電モジュールの製造装置。
【請求項3】
前記第2連通孔形成部の断面は、縦及び横の一方又は双方の寸法において前記第1連通孔形成部の断面と比べて小さく形成されている、
請求項2に記載の蓄電モジュールの製造装置。
【請求項4】
前記第2連通孔形成部の先端の角部が面取りされている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電モジュールの製造装置。
【請求項5】
第1方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、前記第1方向から見て前記電極積層体を取り囲むシール部材とを備える蓄電モジュールの製造方法であって、
前記複数の電極は、電極板、前記電極板の一方面に設けられた正極及び前記電極板の他方面に設けられた負極を有するバイポーラ電極を含み、
前記シール部材は、隣り合う前記電極間に設けられた内部空間と連通された第1連通孔を形成した第1樹脂部と、前記第1連通孔と連通された第2連通孔を形成した第2樹脂部と、を備え、
前記製造方法は、
前記第1連通孔を形成するための第1連通孔形成部を有する第1入れ子型を型に取り付け、前記型を用いた樹脂成形により前記第1樹脂部を形成する第1成形工程と、
前記第2連通孔を形成するための第2連通孔形成部を有する第2入れ子型を前記型に取り付け、前記型を用いた樹脂成形により前記第2樹脂部を形成する第2成形工程と、を含み、
前記第2成形工程は、前記第2連通孔形成部が揺動可能に支持されている前記第2入れ子型を前記型に取り付けて、前記第2樹脂部の樹脂成形を行う、
蓄電モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記第2連通孔形成部の断面は、前記第1連通孔形成部の断面と比べて小さく形成されている、
請求項5に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記第2連通孔形成部の断面は、縦及び横の一方又は双方の寸法において前記第1連通孔形成部の断面と比べて小さく形成されている、
請求項6に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記第2連通孔形成部の先端の角部が面取りされている、
請求項5~7のいずれか一項に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールの製造装置及び蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電モジュールとして、例えば、特開2011-204386号公報に示されるように、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている。バイポーラ電池は、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層してなる積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向に隣り合うバイポーラ電極間を封止するシール部材が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。この蓄電モジュールの製造は、樹脂成形により積層体の側部にシール部材を形成して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような蓄電モジュールにおいて、シール部材が、内部空間と連通された第1連通孔が設けられた第1樹脂部と、第1連通孔と連通された第2連通孔が設けられた第2樹脂部とを備える場合がある。この場合、第2連通孔及び第1連通孔を通じて電解液が内部空間に注入される。第2樹脂部を射出成形により形成する場合、第2連通孔を形成するためのプレート(中子)が第1樹脂部の第1連通孔内に挿入された状態の積層体を金型内に配置し、第2樹脂部を構成する樹脂材料を金型内に射出して第2樹脂部が形成される。積層体にプレートを挿入する際に、第1連通孔とプレートの位置関係が、挿入方向に対して上下左右にずれていると、プレートを第1連通孔にスムーズに挿入することができず、蓄電モジュールの製造が円滑に行えないこととなる。
【0005】
そこで、本発明は、蓄電モジュールの製造が円滑に行える蓄電モジュールの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造装置は、第1方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、第1方向から見て前記電極積層体を取り囲むシール部材とを備える蓄電モジュールの製造装置であって、複数の電極は電極板、電極板の一方面に設けられた正極及び電極板の他方面に設けられた負極を有するバイポーラ電極を含み、シール部材は隣り合う電極間に設けられた内部空間と連通された第1連通孔を形成した第1樹脂部と、第1連通孔と連通された第2連通孔を形成した第2樹脂部とを備え、前記製造装置は、第1樹脂部及び第2樹脂部を樹脂成形により形成するための型と、型に取り付けられて第1樹脂部の樹脂成形に用いられ、第1連通孔を形成するための第1連通孔形成部を有する第1入れ子型と、型に取り付けられて第2樹脂部の樹脂成形に用いられ、第2連通孔を形成するための第2連通孔形成部を有する第2入れ子型とを備え、第2連通孔形成部は、第2入れ子型において揺動可能に支持され、第2樹脂部の樹脂成形時に第1連通孔に挿入されて用いられる。この蓄電モジュールの製造装置によれば、第2連通孔形成部が揺動可能に支持されていることにより、第2樹脂部を樹脂成形する際に第2連通孔形成部を第1連通孔へ挿入しやすくなる。このため、第2樹脂部の成形が円滑に行え、蓄電モジュールの製造が円滑に行える。
【0007】
また、本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造装置において、第2連通孔形成部の断面は、第1連通孔形成部の断面と比べて小さく形成されていてもよい。この場合、第2連通孔形成部の断面が第1連通孔形成部の断面と比べて小さく形成されているため、第1連通孔形成部を用いて形成された第1連通孔に対し第2連通孔形成部を挿入しやすくなる。このため、第2樹脂部の成形が円滑に行え、蓄電モジュールの製造が円滑に行える。
【0008】
また、本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造装置において、第2連通孔形成部の断面は、縦及び横の一方又は双方の寸法において第1連通孔形成部の断面と比べて小さく形成されていてもよい。
【0009】
また、本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造装置において、第2連通孔形成部の先端の角部が面取りされていてもよい。この場合、第2連通孔形成部の先端の角部が面取りされているため、第2連通孔形成部が第1連通孔へ挿入しやすくなる。このため、第2樹脂部の成形が円滑に行え、蓄電モジュールの製造が円滑に行える。
【0010】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、第1方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、第1方向から見て電極積層体を取り囲むシール部材とを備える蓄電モジュールの製造方法であって、複数の電極は電極板、前記電極板の一方面に設けられた正極及び前記電極板の他方面に設けられた負極を有するバイポーラ電極を含み、シール部材は隣り合う電極間に設けられた内部空間と連通された第1連通孔を形成した第1樹脂部と、第1連通孔と連通された第2連通孔を形成した第2樹脂部とを備え、前記製造方法は、第1連通孔を形成するための第1連通孔形成部を有する第1入れ子型を型に取り付け、型を用いた樹脂成形により第1樹脂部を形成する第1成形工程と、第2連通孔を形成するための第2連通孔形成部を有する第2入れ子型を型に取り付け、型を用いた樹脂成形により第2樹脂部を形成する第2成形工程とを含み、第2成形工程は、第2連通孔形成部が揺動可能に支持されている第2入れ子型を型に取り付けて第2樹脂部の樹脂成形を行うように構成される。この蓄電モジュールの製造方法によれば、第2連通孔形成部が揺動可能に支持されていることにより、第2樹脂部を樹脂成形する際に第2連通孔形成部を第1連通孔へ挿入しやすくなる。このため、第2樹脂部の成形が円滑に行え、蓄電モジュールの製造が円滑に行える。
【0011】
また、本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法において、第2連通孔形成部の断面は第1連通孔形成部の断面と比べて小さく形成されていてもよい。この場合、第2連通孔形成部の断面が第1連通孔形成部の断面と比べて小さく形成されているため、第2連通孔形成部が第1連通孔へ挿入しやすくなる。このため、第2樹脂部の成形が円滑に行え、蓄電モジュールの製造が円滑に行える。
【0012】
また、本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法において、第2連通孔形成部の断面は、縦及び横の一方又は双方の寸法において第1連通孔形成部の断面と比べて小さく形成されていてもよい。
【0013】
また、本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法において、第2連通孔形成部の先端の角部が面取りされていてもよい。この場合、第2連通孔形成部の先端の角部が面取りされているため、第2連通孔形成部が第1連通孔へ挿入しやすくなる。このため、第2樹脂部の成形が円滑に行え、蓄電モジュールの製造が円滑に行える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蓄電モジュールを円滑に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る製造装置及び製造方法により製造される蓄電モジュールを用いた蓄電装置を示す概略断面図である。
図2図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3図2に示された蓄電モジュールの斜視図である。
図4図3に示された蓄電モジュールの一部を示す斜視図である。
図5図4に示されたV-V線に沿った断面図である。
図6図5に示された蓄電モジュールの断面図の一部を拡大した図である。
図7】第2方向から見た第1樹脂シールを示す側面図である。
図8】第2方向から見た第2樹脂シールを示す側面図である。
図9】一実施形態に係る蓄電モジュールの製造装置を示す平面図である。
図10】一実施形態に係る蓄電モジュールの製造装置を示す平面図である。
図11】入れ子型を示す斜視図である。
図12】入れ子型を示す斜視図である。
図13図9のXIII-XIII線に沿っての断面図である。
図14図10のXIV-XIV線に沿っての断面図である。
図15】入れ子型に取り付けられる連通孔形成部の平面図である。
図16】連通孔形成部の断面図である。
図17】入れ子型の取り付け工程における蓄電モジュールの製造装置の一部を示す平面図である。
図18】入れ子型の押し出し工程における蓄電モジュールの製造装置の一部を示す平面図である。
図19】入れ子型の押し出し工程におけるユニット積層体、型、入れ子型及び移動機構の断面図である。
図20】入れ子型の取り付け工程における蓄電モジュールの製造装置の一部を示す平面図である。
図21】入れ子型の押し出し工程における蓄電モジュールの製造装置の一部を示す平面図である。
図22】入れ子型の押し出し工程におけるユニット積層体、型、入れ子型及びカム機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0017】
図1は、蓄電モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図であって、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法及び製造装置によって製造される蓄電モジュールを備えた蓄電装置を示している。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、互いに複数の蓄電モジュール4を積層してなる蓄電モジュール積層体2と、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0018】
蓄電モジュール積層体2は、複数(本実施形態では3体)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では4枚)の導電板5とによって構成されている。蓄電モジュール4は、例えば後述するバイポーラ電極14を備えたバイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0019】
積層方向に隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側と、にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0020】
各導電板5には、空気等の冷却流体を流通させる複数の流路5aが設けられている。各流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とにそれぞれ交差(直交)する方向に互いに平行に延在している。これらの流路5aに冷却流体を流通させることで、導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。なお、図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0021】
拘束部材3は、蓄電モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(蓄電モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0022】
エンドプレート8の縁部には、蓄電モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されて蓄電モジュール積層体2としてユニット化されると共に、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0023】
次に、蓄電モジュール4の構成について更に詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。同図に示すように、蓄電モジュール4は、積層方向D1(第1方向)に積層された複数の電極Eを含む電極積層体11と、積層方向D1から見て電極積層体11を取り囲むシール部材12とを備えている。電極積層体11とシール部材12との間は封止(シール)される。
【0024】
電極積層体11は、セパレータ13を介して積層方向D1に積層された複数の電極Eを含む。複数の電極Eは、複数のバイポーラ電極14と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。この例では、電極積層体11の積層方向D1は蓄電モジュール積層体2の積層方向と一致している。バイポーラ電極14は、電極板15、電極板15の一方面15aに設けられた正極16、電極板15の他方面15bに設けられた負極17を含んでいる。正極16は、正極活物質が塗工されてなる正極活物質層である。負極17は、負極活物質が塗工されてなる負極活物質層である。電極積層体11において、バイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向D1に隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、バイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向D1に隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0025】
電極積層体11において、積層方向D1の一端には負極終端電極18が配置され、積層方向D1の他端には正極終端電極19が配置されている。負極終端電極18は、電極板15、及び電極板15の他方面15bに設けられた負極17を含んでいる。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して積層方向D1の一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。負極終端電極18の電極板15の一方面15aには、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5が接触している。正極終端電極19は、電極板15、及び電極板15の一方面15aに設けられた正極16を含んでいる。正極終端電極19の電極板15の他方面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5が接触している。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して積層方向D1の他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0026】
電極板15は、板形状を呈する導電体であり、可撓性を示す。電極板15は、例えば水平方向に延在している。電極板15としては、例えば矩形の金属箔が用いられる。具体的には、電極板15として、ニッケル箔、メッキ処理が施された鋼板、またはメッキ処理が施されたステンレス鋼板が用いられる。電極板15の厚さは、例えば0.1μm以上1000μm以下とされる。なお、電極板15がニッケル箔である場合、このニッケル箔にメッキ処理が施されてもよい。電極板15の周縁部15c(バイポーラ電極14の周縁部)は、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0027】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0028】
シール部材12は、例えば絶縁性の樹脂によって矩形の枠状に形成されている。シール部材12を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。シール部材12は、電極積層体11を取り囲み、複数の電極板15の周縁部15cを保持するように構成されている。
【0029】
シール部材12は、周縁部15cに設けられた一次シール21と、積層方向D1から見て一次シール21を取り囲む二次シール22とを備えている。一次シール21は所定の厚さ(積層方向D1の長さ)を有するフィルムである。一次シール21は、積層方向D1から見て、矩形枠状をなし、例えば超音波又は熱により、周縁部15cの全周にわたって連続的に溶着されている。一次シール21は、電極板15の他方面15b側の周縁部15cに設けられている。一次シール21は、周縁部15cを埋設した状態で、周縁部15cに設けられ、電極板15の端面を覆っている。一次シール21は、積層方向D1から見て、正極16及び負極17から離間して設けられている。積層方向D1で隣り合う一次シール21同士は、例えば、互いに当接して設けられる。
【0030】
一次シール21は、第1部分21aと第2部分21bとを有している。第1部分21aは、他方面15b上に設けられ、積層方向D1から見て電極板15と重なっている。第2部分21bは、第1部分21aと一体的に形成され、積層方向D1から見て電極板15の外側に設けられている。第1部分21aの厚さは、第2部分21bの厚さよりも薄く、負極17の厚さと同等であるが、同等以上であってもよい。第1部分21aと第2部分21bとの間には、積層方向D1に延在する段差面21cが形成されている。
【0031】
第1部分21aの上面には、セパレータ13の外縁部が配置されている。積層方向D1から見て、第1部分21aとセパレータ13の外縁部とは互いに重なっている。セパレータ13の外縁部は、セパレータ13の外縁に沿って並ぶ複数箇所において、例えば溶着により第1部分21aの上面に固定されている。セパレータ13の外縁は、段差面21cに当接していてもよいし、段差面21cから離間していてもよい。本実施形態では、段差面21cの高さ(積層方向D1の長さ)は、セパレータ13の厚さと正極16の厚さとの和と同等であるが、同等以上であってもよい。
【0032】
二次シール22は、電極積層体11及び一次シール21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。二次シール22は、例えば、後述するように樹脂の射出成形によって形成され、積層方向D1において電極積層体11の全長にわたって延在している。二次シール22は、積層方向D1を軸方向として延在する筒状部である。二次シール22は、積層方向D1に延在する一次シール21の外側面を覆っている。二次シール22は、一次シール21の外側面に接合され、一次シール21の外側面をシールしている。二次シール22は、例えば、射出成形時の熱によって一次シール21の外側面に溶着されている。一次シール21を構成する樹脂材料と二次シール22を構成する樹脂材料とは互いに相溶可能である。一次シール21は例えばPPからなり、二次シール22は例えば変性PPEからなる。
【0033】
電極積層体11内には複数の内部空間Vが設けられている。各内部空間Vは、隣り合う複数の電極E間に設けられる。内部空間Vは、積層方向D1で隣り合う電極板15の間において、当該電極板15とシール部材12とにより気密及び水密に仕切られた空間である。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16及び負極17内に含浸されている。電解液は強アルカリ性なので、シール部材12は、耐強アルカリ性を有する樹脂材料により構成されている。
【0034】
図3は、図2に示された蓄電モジュール4の斜視図である。図3に示されるように、蓄電モジュール4は、複数(ここでは4つ)の圧力調整弁28をさらに備えている。圧力調整弁28は、内部空間V内のガスを蓄電モジュール4の外部に放出することによって、内部空間Vの圧力を調整できる。二次シール22の外形は、積層方向D1から見て例えば矩形枠状を有している。二次シール22は、第1側部22aと、第2側部22bと、一対の第3側部22c,22cを有する。積層方向D1から見て第1側部22a及び第2側部22bが二次シール22の短辺部分となり、一対の第3側部22c,22cが二次シール22の長辺部分となる。
【0035】
各第3側部22cは、積層方向D1に交差する長手方向D3(第3方向)に延在する。各第3側部22cは、第1側部22a及び第2側部22bを互いに接続している。第1側部22a及び第2側部22bは、積層方向D1及び長手方向D3の両方に交差する短手方向D2(第2方向)に延在する。第1側部22a及び第2側部22bは、一対の第3側部22c,22cを互いに接続している。積層方向D1、短手方向D2及び長手方向D3は互いに直交し得る。第1側部22a及び第2側部22bは、長手方向D3で互いに対向している。一対の第3側部22c,22cは、短手方向D2で互いに対向している。圧力調整弁28は、第1側部22aに取り付けられているが、1つの第3側部22cに取り付けられてもよい。
【0036】
図4は、図3に示された蓄電モジュール4の一部を示す斜視図である。図5は、図4に示されたV-V線に沿った断面図である。図6は、図5に示された蓄電モジュール4の断面図の一部を拡大した図である。図4及び図5では、圧力調整弁28が省略されている。
【0037】
図4図6に示されるように、二次シール22は、第1樹脂シール23と第2樹脂シール24とを備える。第1樹脂シール23は、二次シール22において内側(中心側)に設けられる第1樹脂部である。第2樹脂シール24は、二次シール22において外側に設けられる第2樹脂部である。第1樹脂シール23の外形は、積層方向D1から見て例えば矩形筒状を有する。第1樹脂シール23は、積層方向D1から見て、一次シール21と第2樹脂シール24との間に配置されている。第1樹脂シール23は、積層方向D1から見て一次シール21を取り囲む。第1樹脂シール23は、一次シール21の積層方向D1に延在する側面21sに設けられている。
【0038】
第2樹脂シール24の外形は、積層方向D1から見て例えば矩形筒状を有する。第2樹脂シール24は、積層方向D1から見て第1樹脂シール23を取り囲む。第2樹脂シール24は、第1樹脂シール23の積層方向D1に延在する側面23sに設けられている。第2樹脂シール24は、長手方向D3に突出する複数の突起部24pを有する。各突起部24pは、複数(ここでは6個)の開口24hを形成する枠形状を有する。各突起部24pは、圧力調整弁28を接続するための接続用突起部として機能する。よって、突起部24pの数は、圧力調整弁28の数と同じである。第2樹脂シール24のうち、第1側部22aに含まれる部分が突起部24pを有する。
【0039】
図5に示されるように、第1樹脂シール23及び第2樹脂シール24は、長手方向D3において、一次シール21と電極積層体11とを備えるユニット積層体30の外側に位置する。ユニット積層体30は、積層方向D1に交差する矩形状の第1面30aと、第1面30aとは反対側の矩形状の第2面30bと、積層方向D1に延在する4つの矩形状の側面30cとを有する。第1面30aは正極終端電極19の表面を含む。第2面30bは負極終端電極18の表面を含む。側面30cは、積層方向D1に延在する一次シール21の側面21s(図6参照)を含む。側面30cは、第1面30aと第2面30bとの間を繋いでいる。
【0040】
第1樹脂シール23は、第1面30aの周縁部上に設けられた庇部23bと、各側面30c上に位置する側部23cとを有する。庇部23bは、第1樹脂シール23における積層方向D1の一端から電極積層体11の内側に延びる。庇部23bは、第1面30aの周縁部を全周にわたって覆う枠形状を有する。側部23cは、積層方向D1から見てユニット積層体30を取り囲む筒形状を有する。第2樹脂シール24は、第2面30bの周縁部上に設けられた庇部24bと、第1樹脂シール23の側部23c上に位置する側部24cとを有する。庇部24bは、第2面30bの周縁部を全周にわたって覆う枠形状を有する。側部24cは、積層方向D1から見て第1樹脂シール23の側部23cを取り囲む筒形状を有する。
【0041】
一次シール21には、各内部空間Vと連通された連通孔21dが形成される(図6参照)。第1樹脂シール23には、各連通孔21dと連通された連通孔23aが形成される。連通孔23aは、内部空間Vと連通された第1連通孔である。例えば、連通孔23aは、連通孔21dを通じて内部空間Vと連通している。第2樹脂シール24には、各連通孔23aと連通された連通孔24aが形成される。連通孔24aは、連通孔23aと連通する第2連通孔である。連通孔21dの幅(積層方向D1における連通孔21dの長さ)と連通孔23aの幅(積層方向D1における連通孔23aの長さ)は例えば同じである。連通孔24aの幅(積層方向D1における連通孔23aの長さ)は、連通孔23aの幅と比べて小さい。例えば、連通孔24aの幅は、連通孔23aの幅と比べてやや小さく形成される。連通孔21dの幅は、例えば段差面21cの高さ(積層方向D1における段差面21cの長さ)と同じである。
【0042】
長手方向D3から見て、突起部24pは各連通孔24aを取り囲むように配置される。各連通孔24aは、突起部24pにより形成された開口24hと連通されている。開口24hの幅(積層方向D1における開口24hの長さ)は、連通孔24aの幅(積層方向D1における連通孔24aの長さ)よりも大きい。
【0043】
図7は、長手方向D3から見た第1樹脂シール23を示す側面図である。図7には、第1樹脂シール23のうち、第1側部22aに含まれる部分が示されている。図7に示されるように、第1樹脂シール23には複数(ここでは24個)の連通孔23a(以下、連通孔23a1~23a24ともいう)が形成されている。長手方向D3から見て各連通孔23aは例えば短手方向D2に延びる長方形形状を有する。積層方向D1における連通孔23a1~23a24の位置は、互いに異なっている。これにより、連通孔23a1~23a24のそれぞれは互いに異なる内部空間Vと連通可能となる。連通孔23a1~23a24の数は、内部空間Vの数と同じである。連通孔23a1~23a24は、複数(ここでは4個)のグループに分けられる。各グループは複数(ここでは6個)の連通孔23aを含む。第1グループの連通孔23a1~23a6は、第1の圧力調整弁28に接続される。第2グループの連通孔23a7~23a12は、第2の圧力調整弁28に接続される。第3グループの連通孔23a13~23a18は、第3の圧力調整弁28に接続される。第4グループの連通孔23a19~23a24は、第4の圧力調整弁28に接続される。
【0044】
連通孔23a1は、連通孔23a1~23a24のうち積層方向D1において最も端に位置する。第1樹脂シール23は、連通孔23a1の外側において積層方向D1に突出する凸部23pを有する。その結果、第1樹脂シール23のうち連通孔23a1の外側に位置する部分の積層方向D1における幅Lが大きくなる。連通孔23a7は、積層方向D1において連通孔23a1を除いて最も端に位置する。連通孔23a7の外側にも凸部23pが設けられている。連通孔23a13は、積層方向D1において連通孔23a1,23a7を除いて最も端に位置する。連通孔23a13の外側にも凸部23pが設けられている。連通孔23a19は、積層方向D1において連通孔23a1,23a7,23a13を除いて最も端に位置する。連通孔23a19の外側にも凸部23pが設けられている。これらの凸部23pは、第2樹脂シール24(庇部24b)によって覆われる(図5参照)。凸部23pは、積層方向D1において庇部23bが設けられた一端とは反対側の他端に設けられる。本実施形態では、第1樹脂シール23が複数(ここでは4個)の凸部23pを有しているが、単一の凸部23pを有してもよい。この場合、短手方向D2において隣り合う凸部23p同士が互いに繋がっている。
【0045】
第1樹脂シール23は、射出成形により形成された複数のゲート痕23qを有している。複数のゲート痕23qは、長手方向D3から見て短手方向D2に配列される。各ゲート痕23qは例えば積層方向D1に突出する円柱状の突起である。長手方向D3から見て、隣り合う複数のゲート痕23qの中間点を通って積層方向D1に延びる直線W1は連通孔23a1~23a24と重ならないように位置している。隣り合う複数のゲート痕23qの中間点は、短手方向D2における各ゲート痕23qの中心位置の中点である。したがって、短手方向D2における各ゲート痕23qの中心位置から直線W1までの距離は等しい。短手方向D2において、ゲート痕23qの位置は連通孔23a1~23a24の位置からずれている。図示を省略するが、第1樹脂シール23のうち、第2側部22bに含まれる部分、及び一対の第3側部22c,22cに含まれる部分もゲート痕23qを有している。
【0046】
図8は、長手方向D3から見た第2樹脂シール24を示す側面図である。図8には、第2樹脂シール24のうち、第1側部22aに含まれる部分が示されている。図8に示されるように、第2樹脂シール24には複数(ここでは24個)の連通孔24a(以下、連通孔24a1~24a24ともいう)が形成されている。長手方向D3から見て各連通孔24aは例えば短手方向D2に延びる長方形形状を有する。連通孔24a1~24a24の数は、連通孔23a1~23a24の数と同じである。長手方向D3から見て、連通孔24a1~24a24は、連通孔23a1~23a24とそれぞれ重なるように位置している。長手方向D3から見て、連通孔24a1~24a24のそれぞれは、突起部24pの各開口24h内に位置している。
【0047】
第2樹脂シール24は、射出成形により形成された複数のゲート痕24qを有している。複数のゲート痕24qは、長手方向D3から見て短手方向D2に配列される。各ゲート痕24qは例えば積層方向D1に突出する円柱状の突起である。長手方向D3から見て、隣り合う複数のゲート痕24qの中間点を通って積層方向D1に延びる直線W2は突起部24pと重ならないように位置している。隣り合う複数のゲート痕24qの中間点は、短手方向D2における各ゲート痕24qの中心位置の中点である。したがって、短手方向D2における各ゲート痕24qの中心位置から直線W2までの距離は等しい。短手方向D2において、ゲート痕24qの位置は突起部24pの位置からずれている。図示を省略するが、第2樹脂シール24のうち、第2側部22bに含まれる部分、及び一対の第3側部22cに含まれる部分もゲート痕24qを有している。
【0048】
次に、図9図14を参照しながら、本実施形態に係る蓄電モジュール4の製造装置100について説明する。図9及び図10は、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造装置を示す平面図である。図11及び図12は、入れ子型を示す斜視図である。図13は、図9のXIII-XIII線に沿っての断面図である。図14は、図10のXIV-XIV線に沿っての断面図である。
【0049】
図9図14に示されるように、製造装置100は、二次シール22を射出成形により形成するための型Mと、型Mに取り付けられる入れ子型42,52と、入れ子型42,52を押し出す移動機構60とを備える。製造装置100は、二次シール22を射出成形により形成する射出成形機である。図9には、型Mに対して入れ子型42及び入れ子型41が取り付けられた状態が示されている。図10には、型Mに対して入れ子型52及び枠状の入れ子型51が取り付けられた状態が示されている。型Mは、例えば金属製の金型である。型Mは、互いに対向する一対の型M1,M2を有している。一対の型M1,M2の対向方向は、積層方向D1と一致している。図9及び図10では、型M2の図示が省略されている。
【0050】
入れ子型41,42は、第1樹脂シール23を射出成形により形成するために用いられる。入れ子型41,42は、例えば金属製の型である。図9に示されるように入れ子型41,42は、型M1に取り付けられる。入れ子型41,42が取り付けられた型M1と、型M2とが互いに組み合わされた型閉状態において、一対の型M1,M2の内部には空間S1が形成される。入れ子型41,42は、第1樹脂シール23の外形に対応する形状を有している。入れ子型41は、第1樹脂シール23のうち、第2側部22b及び一対の第3側部22c,22cに含まれる部分を形成するために用いられる。入れ子型41は、連通孔形成部を有していない。
【0051】
入れ子型42は、第1樹脂シール23のうち、第1側部22aに含まれる部分を形成するために用いられる第1入れ子型である。入れ子型42は、短手方向D2に延在している。入れ子型42は、図11に示されるように、本体43と、連通孔23aを形成するための複数の連通孔形成部44と、突条部45と、を有する。本体43は、空間S1に臨む矩形状の側面43aを有している。側面43aは、短手方向D2及び積層方向D1に延在している。複数の連通孔形成部44は、長手方向D3に沿って、側面43aから空間S1に突出する。複数の連通孔形成部44は、積層方向D1から見て、短手方向D2に並んでいる。連通孔形成部44の少なくとも一部は、連通孔21d内に配置される。連通孔形成部44は、例えば金属プレートである。連通孔形成部44は、連通孔23aを形成するための第1連通孔形成部である。連通孔形成部44は、第1樹脂シール23の成形時に連通孔21dに挿入されて用いられる。連通孔形成部44の形状は、連通孔21dの形状と、連通孔23aの形状とに対応している。突条部45は、側面43aの積層方向D1の一端において短手方向D2に沿って延在している。突条部45は、長手方向D3に沿って、空間S1に突出している。
【0052】
入れ子型51,52は、第2樹脂シール24を射出成形により形成するために用いられる。入れ子型51,52は、例えば金属製の型である。図10に示されるように入れ子型51,52は、型M1に取り付けられる。入れ子型51,52が取り付けられた型M1と、型M2とが互いに組み合わされた型閉状態において、一対の型M1,M2の内部には空間S2が形成される。入れ子型51,52は、第2樹脂シール24の外形に対応する形状を有している。空間S2は空間S1よりも広い。入れ子型51は、第2樹脂シール24のうち、第2側部22b及び一対の第3側部22c,22cに含まれる部分を形成するために用いられる。入れ子型51は、連通孔形成部を有していない。
【0053】
入れ子型52は、第2樹脂シール24のうち、第1側部22aに含まれる部分を形成するために用いられる第2入れ子型である。入れ子型52は、短手方向D2に延在している。入れ子型52は、図12に示されるように、本体53と、連通孔24aを形成するための複数の連通孔形成部54と、突条部55と、を有する。本体53は、空間S2に臨む矩形状の側面53aを有している。複数の連通孔形成部54は、長手方向D3に沿って、側面53aから空間S2に突出する。連通孔形成部54は、連通孔24aを形成するための第2連通孔形成部である。連通孔形成部54は、第2樹脂シール24の樹脂成形時において、連通孔23aに挿入されて用いられる。連通孔形成部54は、連通孔23aに挿入されたときに連通孔23aを貫通しない長さに形成されている。複数の連通孔形成部54は、積層方向D1から見て、短手方向D2に並んでいる。連通孔形成部54の少なくとも一部は、連通孔23a内に配置される。連通孔形成部54の少なくとも一部は、連通孔21d内に配置されてもよい。連通孔形成部54は、例えば金属プレートである。連通孔形成部54の形状は、連通孔23aの形状と、連通孔24aの形状とに対応している。突条部55は、側面53aの積層方向D1の一端において短手方向D2に沿って延在している。突条部55は、長手方向D3に沿って、空間S2に突出している。図12では図示を省略するが、側面53aには、突起部24p(図5参照)を形成するための凹部が形成されている。
【0054】
次に、図15および図16を参照して、連通孔形成部54の支持構造及び形状について説明する。図15は、入れ子型52の水平断面図であって、連通孔形成部54を上方から見た図である。連通孔形成部54は、入れ子型52において揺動可能に支持されている。例えば、連通孔形成部54は、入れ子型52の本体53に対し一定の範囲で移動可能に支持されている。具体的には、連通孔形成部54は、入れ子型52の本体53の内部に設けられるピン57により支持され、基端側をピン57を中心に回動可能に取り付けられる。ピン57は、上下方向(短手方向D2)に延びる棒体であり、連通孔形成部54の基端側の位置を貫通して設けられている。連通孔形成部54は、矩形状の板体であって、本体53に形成される設置空間58内に収容されている。設置空間58は、連通孔形成部54の外形より大きく形成されている。このため、連通孔形成部54は、設置空間58内で設置空間58の内部で移動可能な状態で取り付けられる。これにより、連通孔形成部54は、上下左右に所定の範囲で動ける状態で支持される。入れ子型52の本体53は、複数のブロック体を組み合わせて構成されていてもよい。なお、連通孔形成部54が揺動可能に支持できれば、上述した支持構造以外の構造を用いてもよい。
【0055】
連通孔形成部54の先端の角部54aは面取りされている。すなわち、連通孔形成部54の先端の角部54aは、斜めに削り取られた形状とされている。図15では、湾曲状に面取りされているが、斜めの直線状に面取りされていてもよい。また、図15では、連通孔形成部54の先端の左右の角部54aが面取りされているが、連通孔形成部54の先端の上下の角部を面取りしてもよい。このように、連通孔形成部54の先端の角部54aを面取りすることにより、連通孔形成部54の先端の端面の面積が小さくなる。このため、連通孔23aに対し連通孔形成部54が挿入しやすくなる。また、連通孔形成部54が揺動可能な状態で支持され、連通孔形成部54の先端が移動したとしても、連通孔形成部54を連通孔23aに挿入することができる。
【0056】
図16は、連通孔形成部の断面図を示している。図16の(a)は、図15のXVI-XVIにおける連通孔形成部54の垂直断面図である。図16の(b)は、連通孔形成部44の垂直断面図である。連通孔形成部54の断面形状は、横長の矩形であり、高さH54(縦の寸法)に対し横幅W54(横の寸法)が大きい。連通孔形成部54の断面は、連通孔形成部44の断面と比べて小さく形成されている。連通孔形成部44は、第1樹脂シール23の樹脂成形に用いられる連通孔形成部である。例えば、連通孔形成部54の断面は、高さH54及び横幅W54の一方又は双方の寸法において連通孔形成部44の断面と比べて小さく形成される。つまり、連通孔形成部54の高さH54と横幅W54の双方が連通孔形成部44の高さH44と横幅W44より小さくてもよいし、連通孔形成部54の高さH54及び横幅W54の一方のみが連通孔形成部44の高さH44及び横幅W44より小さくてもよい。このように、連通孔形成部54の断面を連通孔形成部44の断面と比べて小さく形成することにより、連通孔形成部54の断面が連通孔23aより小さくなり、連通孔形成部54が連通孔23aに挿入しやすくなる。また、連通孔形成部54は、連通孔23aに挿入されたときに連通孔23aと連通孔形成部54の間に樹脂が流入しない程度に小さく形成される。すなわち、連通孔形成部54が連通孔23aに対し小さすぎると、第2樹脂シール24の成形時に連通孔形成部54と連通孔23aの間に樹脂が流入して連通孔23aが設計値より小さくなってしまう。このような不具合を回避すべく、連通孔形成部54が連通孔23aに挿入されたときに連通孔23aと連通孔形成部54の間に樹脂が流入しない程度に、連通孔形成部54が小さく形成される。
【0057】
移動機構60は、入れ子型42,52を長手方向D3に押し出す。移動機構60は、図17図19に示されるように、連通孔形成部44の少なくとも一部が連通孔21d内に配置されるように、入れ子型42を一次シール21に向かって押し出す。移動機構60は、図20図22に示されるように、連通孔形成部54の少なくとも一部が連通孔23a内に配置されるように、入れ子型52を第1樹脂シール23に向かって押し出す。移動機構60は、入れ子型42,52を長手方向D3に対し進退可能に移動できる機構であれば、いずれの形式の機構であってもよく、例えばリンク機構など公知の機構を用いることができる。
【0058】
型M2は、図13に示されるように、第1樹脂シール23を形成するための第1樹脂材料が注入される複数のゲートG1を有している。第1樹脂材料は、溶融状態で各ゲートG1を通って空間S1に注入される。ゲートG1は、積層方向D1から見て、空間S1の外縁部と重なるように、空間S1の外縁部の全周にわたって並んで設けられている。ゲートG1の形状は、図7のゲート痕23qに対応している。
【0059】
型M2は、図14に示されるように、第2樹脂シール24を形成するための第2樹脂材料が注入される複数のゲートG2を有している。第2樹脂材料は、溶融状態で各ゲートG2を通って空間S2に注入される。ゲートG2は、積層方向D1から見て、空間S2の外縁部と重なるように、空間S2の外縁部の全周にわたって並んで設けられている。ゲートG2の形状は、図8のゲート痕24qに対応している。
【0060】
続いて、図17図22を参照しながら蓄電モジュール4の製造方法について説明する。蓄電モジュール4は、上述の製造装置100を用いて以下のように製造され得る。
【0061】
(ユニット積層体の準備工程)
まず、電極積層体11と一次シール21とを含むユニット積層体30を準備する。この工程では、バイポーラ電極14に一次シール21及びセパレータ13を取り付けてユニットを作製する。負極終端電極18にも同様に一次シール21及びセパレータ13を取り付けてユニットを作製する。正極終端電極19には一次シール21を取り付けてユニットを作製する。これらのユニットを積層することによってユニット積層体30を得る。
【0062】
(二次シールの形成工程)
次に、型Mを用いた射出成形により、積層方向D1から見て一次シール21を取り囲む二次シール22を形成する。この工程は、第1樹脂シール23を形成する工程(第1成形工程)と、第2樹脂シール24を形成する工程(第2成形工程)と、を含む。第1樹脂シール23を形成する工程と、第2樹脂シール24を形成する工程とは、この順に行われる。
【0063】
<第1樹脂シールの形成工程>
第1樹脂シール23を形成する工程は、入れ子型42の取り付け工程及び入れ子型42の押し出し工程を含む。まず、図17に示されるように、入れ子型41,42を型M1に取り付ける。ユニット積層体30は、枠状の入れ子型41内に配置される。入れ子型42は、移動機構60に取り付けられる。この状態において、入れ子型42は、入れ子型41及びユニット積層体30から離間している。
【0064】
次に、図18及び図19に示されるように、連通孔形成部44の少なくとも一部が連通孔21d内に配置されるように、移動機構60により入れ子型42をユニット積層体30の一次シール21に向かって押し出す。これにより、入れ子型42が長手方向D3に押し出される。複数の連通孔形成部44の各先端が、対応する連通孔21d内に挿入される。この状態において、入れ子型42は、移動機構60によって支持されているので、入れ子型42が射出圧によって一次シール21から離れることが抑制される。入れ子型42は、入れ子型41に嵌め合わされる。その後、型M1に型M2を組み合わせる。その結果、型M、入れ子型41,42、及びユニット積層体30によって囲まれた空間S11が形成される。
【0065】
このように型M内にユニット積層体30を収容した状態で、第1樹脂シール23(図5参照)を形成するための溶融した第1樹脂材料を所定の射出圧で空間S11内に供給する。溶融した第1樹脂材料は、型M2に形成されたゲートG1から積層方向D1に向かって空間S11に注入される。空間S11の形状は、第1樹脂シール23の形状に対応している。第1樹脂材料が冷却されて固化した後、型M2を取り外す。その後、型M1から入れ子型41,42を取り外す。このようにして、第1樹脂シール23が形成される。
【0066】
<第2樹脂シールの形成工程>
第2樹脂シール24を形成する工程は、入れ子型52の取り付け工程及び入れ子型52の押し出し工程を含む。まず、図20に示されるように、入れ子型51,52を型M1に取り付ける。ユニット積層体30及び第1樹脂シール23は、枠状の入れ子型51内に配置される。入れ子型52は、移動機構60に取り付けられる。この状態において、入れ子型52は、入れ子型51、ユニット積層体30及び第1樹脂シール23から離間している。
【0067】
次に、図21及び図22に示されるように、連通孔形成部54の少なくとも一部が連通孔23a内に配置されるように、移動機構60により入れ子型52をユニット積層体30の第1樹脂シール23に向かって押し出す。これにより、入れ子型52が長手方向D3に押し出される。複数の連通孔形成部54の各先端が、対応する連通孔23a内に挿入される。
【0068】
このとき、連通孔形成部54が揺動可能に支持されているため、連通孔形成部54の先端が移動可能となっている。これにより、連通孔23aに対し連通孔形成部54が振動などによって位置ずれしたとしても、連通孔形成部54を連通孔23aへ挿入することができる。また、連通孔形成部54の断面は、連通孔形成部44の断面と比べて小さく形成されている。このため、連通孔形成部54は、連通孔23aより小さく形成されている。従って、連通孔形成部54を連通孔23aへ挿入しやすくなっている。さらに、連通孔形成部54の先端の角部54aは面取りされている。このため、連通孔形成部54の先端面は小さくなっており、連通孔23aへ挿入しやすくなっている。以上により、連通孔形成部54を連通孔23aへ円滑に挿入することができる。連通孔形成部54が連通孔23aへ挿入できずに第2樹脂シール24の成形が中断されるなどの不具合が抑制され、蓄電モジュール4の製造が円滑に行える。
【0069】
この状態において、入れ子型52は、移動機構60によって支持されているので、入れ子型52が射出圧によって第1樹脂シール23から離れることが抑制される。入れ子型52は、入れ子型51に嵌め合わされる。その後、型M1に型M2を組み合わせる。その結果、型M、入れ子型51,52、ユニット積層体30及び第1樹脂シール23によって囲まれた空間S21が形成される。
【0070】
なお、図20では、連通孔形成部54は、連通孔23aの中央位置まで挿入されているが、連通孔23aを貫通しない中間位置であれば、中央位置より浅い位置又は中央位置より深い位置であってもよい。また、連通孔23aに対する連通孔形成部54の挿入の深さは、入れ子型52の突条部55の押し当てにより調整してもよい。例えば、突条部55における長手方向D3へ長さを変更して、連通孔形成部54の挿入の深さを調整してもよい。
【0071】
このように型M内にユニット積層体30及び第1樹脂シール23を収容した状態で、第2樹脂シール24(図5参照)を形成するための溶融した第2樹脂材料を所定の射出圧で空間S21内に供給する。溶融した第2樹脂材料は、型M2に形成されたゲートG2から積層方向D1に向かって空間S21に注入される。空間S21の形状は、第2樹脂シール24の形状に対応している。第2樹脂材料が冷却されて固化した後、型M2を取り外す。その後、入れ子型51,52を取り外す。このようにして、第2樹脂シール24が形成される。
【0072】
上述のように二次シール22を形成した後、連通孔24a1~24a24のそれぞれから電解液を各内部空間Vに注入する。その後、圧力調整弁28を突起部24pに接続することによって連通孔24a1~24a24を封止する。このようにして、蓄電モジュール4が製造される。
【0073】
以上説明したように、蓄電モジュール4の製造方法及び製造装置100によれば、入れ子型52において、連通孔形成部54が揺動可能に支持され、連通孔形成部54の先端が移動可能となっている。このため、連通孔23aに対し連通孔形成部54が振動などによって位置ずれしたとしても、連通孔形成部54を連通孔23aへ挿入することができる。従って、第2樹脂シール24の成形が円滑に行え、蓄電モジュール4の製造が円滑に行える。
【0074】
また、蓄電モジュール4の製造方法及び製造装置100によれば、連通孔形成部54の断面が連通孔形成部44の断面と比べて小さく形成されている。このため、連通孔形成部54が連通孔23aへ挿入しやすくなっている。このため、第2樹脂シール24の成形が円滑に行え、蓄電モジュール4の製造が円滑に行える。
【0075】
また、蓄電モジュール4の製造方法及び製造装置100によれば、連通孔形成部54の先端の角部54aが面取りされている。このため、連通孔形成部54の先端面が小さくなっており、連通孔形成部54が連通孔23aへ挿入しやすくなっている。このため、第2樹脂シール24の成形が円滑に行え、蓄電モジュール4の製造が円滑に行える。
【0076】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述した実施形態では、図1のように蓄電モジュール4を積層した蓄電装置1に用いる場合について説明したが、蓄電モジュール4を異なる装置などに用いてもよいし、蓄電モジュール4を異なる構造又は形式で用いてもよい。また、上述した実施形態では、蓄電モジュール4をフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いる場合について説明したが、その他の用途に用いてもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、入れ子型52において、連通孔形成部54を揺動可能に支持しているが、連通孔形成部54を固定支持してもよい。例えば、入れ子型52の本体53に対し連通孔形成部54を固定して支持してもよい。この場合であっても、連通孔形成部54の断面が連通孔形成部44の断面と比べて小さく形成されることにより、連通孔形成部54が連通孔23aへ挿入しやすくなる。また、連通孔形成部54の先端の角部54aが面取りされることにより、連通孔形成部54が連通孔23aへ挿入しやすくなる。このため、これらの点について、上述の実施形態と同様に、第2樹脂シール24の成形が円滑に行え、蓄電モジュール4の製造が円滑に行える。
【符号の説明】
【0078】
4…蓄電モジュール、11…電極積層体、12…シール部材、14…バイポーラ電極、21…一次シール、21d…連通孔、22…二次シール、23…第1樹脂シール(第1樹脂部)、23a…連通孔(第1連通孔)、24…第2樹脂シール(第2樹脂部)、24a…連通孔(第2連通孔)、42…入れ子型(第1入れ子型),52…入れ子型(第2入れ子型)、44…連通孔形成部(第1連通孔形成部)、54…連通孔形成部(第2連通孔形成部)、54a…角部、57…ピン、60…移動機構、100…製造装置、D1…積層方向(第1方向)、D2…短手方向(第2方向)、E…電極、H44…高さ、H54…高さ、M,M1,M2…型、V…内部空間、W44…横幅、W54…横幅。
図1
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