(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】ワークを検出するための方法、装置、システム、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20220712BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20220712BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2020543534
(86)(22)【出願日】2018-03-05
(86)【国際出願番号】 IB2018051394
(87)【国際公開番号】W WO2019171122
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】三角 修一
(72)【発明者】
【氏名】内田 悟
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 純
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-192032(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145960(WO,A1)
【文献】特開2015-191426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0288186(US,A1)
【文献】LI,Kewen,et al.,An imbalanced data classification method driven by boundary samples-Boundary-Boost,2016 3rd International Conference on Information Science and Control Engineering,米国,IEEE,2016年07月10日,pp.194-199,INSPEC Accession Number:16430529
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを検出するための方法であって、
前記ワークに関連する原訓練データを取得することであって、前記原訓練データが、予め第1の類別に分類された訓練データと、予め第2の類別に分類された訓練データとを含むことと、
前記原訓練データから、所定の条件を満たす第1の訓練データを取得することと、
前記第1の類別又は前記第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、前記取得された第1の訓練データの前記内容の一部又は全てを処理することと、
訓練を経た機械学習モデルを得るため、所定の機械学習モデルを訓練するために前記新訓練データと前記原訓練データとを用いることと、
前記ワークを検出するため、訓練を経た前記機械学習モデルを用いることと
を含み、
前記所定の条件を満たす前記第1の訓練データが、前記第1の類別と前記第2の類別との間の境界領域内の前記訓練データで
あり、
前記原訓練データから前記所定の条件を満たす前記第1の訓練データを取得することが、前記第1の類別の前記訓練データが前記第2の類別に分類される可能性を判定することと、前記可能性が所定の閾値を超える前記訓練データを前記第1の訓練データとして選択することと、
を含み、
各前記訓練データが、それ自身の固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、複数の類別のうちの1つの類別に分類され、
前記少なくとも1つの閾値又は前記閾値範囲が、異なる類別の境界を区別する基礎であり、
前記第1の類別の前記訓練データが前記第2の類別に分類される前記可能性を判定することが、前記固有値と、前記少なくとも1つの閾値又は前記閾値範囲との間の前記関係性に基づき、前記第1の類別の前記訓練データが前記第2の類別に分類される前記可能性を判定すること、
を含む、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
ワークを検出するための方法であって、
前記ワークに関連する原訓練データを取得することであって、前記原訓練データが、予め第1の類別に分類された訓練データと、予め第2の類別に分類された訓練データとを含むことと、
前記原訓練データから、所定の条件を満たす第1の訓練データを取得することと、
前記第1の類別又は前記第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、前記取得された第1の訓練データの前記内容の一部又は全てを処理することと、
訓練を経た機械学習モデルを得るため、所定の機械学習モデルを訓練するために前記新訓練データと前記原訓練データとを用いることと、
前記ワークを検出するため、訓練を経た前記機械学習モデルを用いることと
を含み、
前記所定の条件を満たす前記第1の訓練データが、前記第1の類別と前記第2の類別との間の境界領域内の前記訓練データであり、
前記原訓練データから前記所定の条件を満たす前記第1の訓練データを取得することが、前記第2の類別の前記訓練データが前記第1の類別に分類される可能性を判定することと、前記可能性が所定の閾値を超える前記訓練データを前記第1の訓練データとして選択することと、
を含み、
各前記訓練データが、それ自身の固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、複数の類別のうちの1つの類別に分類され、
前記少なくとも1つの閾値又は前記閾値範囲が、異なる類別の境界を区別する基礎であり、
前記第2の類別の前記訓練データが前記第1の類別に分類される前記可能性を判定することが、前記固有値と、前記少なくとも1つの閾値又は前記閾値範囲との間の前記関係性に基づき、前記第2の類別の前記訓練データが前記第1の類別に分類される前記可能性を判定すること、
を含む、
ことを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記原訓練データから前記所定の条件を満たす前記第1の訓練データを取得することが、
前記第1の類別の前記訓練データから、固有値が所定の範囲にある所定の訓練データを前記第1の訓練データとして抽出することであって、前記所定の訓練データが、前記固有値が前記所定の訓練データの前記固有値と前記同一の所定の範囲にあるM個の訓練データのうちの、少なくともN個の訓練データが前記第2の類別に属しているという前記訓練データであり、Mが2以上の整数であり、Nが1以上の整数であること
を含む、
請求項1
又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記原訓練データから前記所定の条件を満たす前記第1の訓練データを取得することが、
前記第1の類別の前記訓練データから、固有値が所定の範囲にある所定の訓練データを前記第1の訓練データとして抽出することであって、前記所定の訓練データが、前記固有値が前記所定の訓練データの前記固有値と前記同一の所定の範囲にあるM個の訓練データのうちの少なくともN個の訓練データが前記第1の類別に属しているという前記訓練データであり、Mが2以上の整数であり、Nが1以上の整数であること
を含む、
請求項1
又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記取得された第1の訓練データの前記内容の一部又は全てを処理することが、
基準訓練データとして、
前記第1の類別に属する前記訓練データから所定の規則に基づき前記訓練データを抽出すること、又は、前記第1の類別に属する全ての前記訓練データの平均値又は中央値を算出することと、
前記基準訓練データに基づき、前記取得された第1の訓練データの前記内容の一部又は全てを処理することと
を含む、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
取得された前記第1の訓練データの前記内容の一部又は全てを処理することが、
基準訓練データとして、前記第2の類別に属する前記訓練データから所定の規則に基づき前記訓練データを抽出すること、又は、前記第2の類別に属する全ての前記訓練データの平均値又は中央値を算出することと、
前記基準訓練データに基づき、前記取得された第1の訓練データの前記内容の一部又は全てを処理することと
を含む、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記原訓練データが画像データであり、
前記取得された第1の訓練データの前記内容の一部又は全てを処理することが、
前記第1の類別に属する前記画像データ又は前記第2の類別に属する前記画像データに基づき、前記取得された第1の訓練データである前記画像データの少なくとも1つの特徴領域を改変すること
を含む、
請求項1
又は請求項2に記載の方法。
【請求項8】
ワークを検出するための装置であって、
前記ワークに関連する原訓練データを取得し、前記原訓練データから所定の条件を満たす第1の訓練データを取得する取得部であって、前記原訓練データが、第1の類別に予め分類された訓練データと、第2の類別に予め分類された訓練データとを含む、取得部と、
前記第1の類別又は前記第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、前記取得された第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理する、処理部と、
訓練を経た機械学習モデルを得るため、所定の機械学習モデルを訓練するために前記原訓練データと前記新訓練データとを用いる、訓練部と、
前記ワークを検出するため、訓練を経た前記機械学習モデルを用いる、検出部と
を含み、
前記所定の条件を満たす前記第1の訓練データが、前記第1の類別と前記第2の類別との間の境界領域内の前記訓練データで
あり、
前記取得部が、前記第1の類別の前記訓練データが前記第2の類別に分類される可能性を判定する、判定部と、前記可能性が所定の閾値を超える前記訓練データを前記第1の訓練データとして選択する選択部と、
を含み、
各前記訓練データが、それ自身の固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、複数の類別のうちの1つの類別に分類され、
前記少なくとも1つの閾値又は前記閾値範囲が、異なる類別の境界を区別するための基礎であり、
前記判定部が、前記固有値と前記少なくとも1つの閾値又は前記閾値範囲との間の前記関係性に基づき、前記第1の類別の前記訓練データが前記第2の類別に分類される前記可能性を判定する、
ことを特徴とする、装置。
【請求項9】
ワークを検出するための装置であって、
前記ワークに関連する原訓練データを取得し、前記原訓練データから所定の条件を満たす第1の訓練データを取得する取得部であって、前記原訓練データが、第1の類別に予め分類された訓練データと、第2の類別に予め分類された訓練データとを含む、取得部と、
前記第1の類別又は前記第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、前記取得された第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理する、処理部と、
訓練を経た機械学習モデルを得るため、所定の機械学習モデルを訓練するために前記原訓練データと前記新訓練データとを用いる、訓練部と、
前記ワークを検出するため、訓練を経た前記機械学習モデルを用いる、検出部と
を含み、
前記所定の条件を満たす前記第1の訓練データが、前記第1の類別と前記第2の類別との間の境界領域内の前記訓練データであり、
前記取得部が、前記第2の類別の前記訓練データが前記第1の類別に分類される可能性を判定する、判定部と、前記可能性が所定の閾値を超える前記訓練データを前記第1の訓練データとして選択する選択部と、
を含み、
各前記訓練データが、それ自身の固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、複数の類別のうちの1つの類別に分類され、
前記少なくとも1つの閾値又は前記閾値範囲が、異なる類別の境界を区別するための基礎であり、
前記判定部が、前記固有値と前記少なくとも1つの閾値又は前記閾値範囲との間の前記関係性に基づき、前記第2の類別の前記訓練データが前記第1の類別に分類される前記可能性を判定する、
ことを特徴とする、装置。
【請求項10】
前記取得部が、
前記第1の類別の前記訓練データから、固有値が所定の範囲にある訓練データを前記第1の訓練データとして抽出し、前記所定の訓練データが、前記固有値が前記所定の訓練データの前記固有値と前記同一の所定の範囲にあるM個の訓練データのうちの少なくともN個の訓練データが前記第2の類別に属しているという訓練データであり、Mが2以上の整数であり、Nが1以上の整数である、
請求項
8又は請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記取得部が、
前記第1の類別の前記訓練データから、固有値が所定の範囲にある訓練データを前記第1の訓練データとして抽出し、前記所定の訓練データが、前記固有値が前記所定の訓練データの前記固有値と前記同一の所定の範囲にあるM個の訓練データのうちの少なくともN個の訓練データが前記第1の類別に属しているという訓練データであり、Mが2以上の整数であり、Nが1以上の整数である、
請求項
8又は請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記処理部が、
基準訓練データとして、前記第1の類別に属する前記訓練データから所定の規則に基づき前記訓練データを抽出する、又は、前記第1の類別に属する全ての前記訓練データの平均値又は中央値を算出し、
前記基準訓練データに基づき、前記取得された第1の訓練データの前記内容の一部又は全てを処理する、
請求項
8又は請求項11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記処理部が、
基準訓練データとして、前記第2の類別に属する前記訓練データから所定の規則に基づき前記訓練データを抽出する、又は、前記第2の類別に属する全ての前記訓練データの平均値又は中央値を算出し、
前記基準訓練データに基づき、前記取得された第1の訓練データの前記内容の一部又は全てを処理する、
請求項1
8又は請求項11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記原訓練データが画像データであり、
前記処理部が、
前記第1の類別に属する前記画像データ又は前記第2の類別に属する前記画像データに基づき、前記取得された第1の訓練データである前記画像データの少なくとも1つの特徴領域を改変する、
請求項
8又は請求項9に記載の装置。
【請求項15】
訓練データを生成するための方法であって、
所定の条件を満たす第1の訓練データを取得することと、
第1の類別又は第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、前記取得された第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理することと、
を含み、
前記所定の条件を満たす前記第1の訓練データが、前記第1の類別と前記第2の類別との間の境界領域内の前記訓練データである
ことを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項16】
訓練データを生成するための装置であって、
所定の条件を満たす第1の訓練データを取得する、取得部と、
第1の類別又は第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、前記取得された第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理する、処理部と、
を含み、
前記所定の条件を満たす前記第1の訓練データが、前記第1の類別と前記第2の類別との間の境界領域内の前記訓練データである
ことを特徴とする、
請求項8又は請求項9に記載の装置。
【請求項17】
ワークを検出するためのシステムであって、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の前記方法を実行する、処理部と、
前記ワークの検出結果を出力する、出力部と
を含むことを特徴とする、システム。
【請求項18】
ワークを検出するためのプログラムであって、
実行されたとき、請求項1から
7のいずれか1項に記載の前記方法を実行することを特徴とする、プログラム。
【請求項19】
プログラムと共に格納される、記憶媒体であって、
前記プログラムが、実行されたとき、請求項1から
7のいずれか1項に記載の前記方法を実行する、記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワーク検出の分野に関するものであり、特に、ワークを検出するための方法、装置、システム、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク検出の分野において、ワークの品質を検出するため、機械学習モデルを用いることができる。
【0003】
しかし、機械学習モデルを訓練するには、多くの訓練データを要する。一般的に、より多くの訓練データがあるほど、訓練を経た機械学習モデルの判定結果の精度は高くなる。つまり、訓練を経た機械学習モデルの判定結果の精度は、訓練データを増加させることにより向上できる。
【0004】
しかし、訓練データの増加は訓練プロセスを長くさせ、システムの負担を増加させる。訓練データが一定の量に達すると、判定結果の精度は、単純に訓練データの増加により効果的に向上させることができず、これによりワークの品質を検出する精度を効果的に向上できない。
【0005】
上述した問題に対し、効果的な解決方法はまだ提案されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに対し、ワークの品質の検出のため機械学習モデルが用いられるとき、判定結果の精度を効果的に向上できないという関連技術における課題を解決するため、ワークを検出するための方法、装置、システム、プログラム、及び記憶媒体が、本発明において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の様態によると、ワークを検出するための方法が提供される。該方法は、ワークに関連する原訓練データを取得することであって、原訓練データが、第1の類別に予め分類された訓練データと、第2の類別に予め分類された訓練データとを含むことと、原訓練データから所定の条件を満たす第1の訓練データを取得することと、第1の類別又は第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、取得した第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理することと、訓練を経た機械学習モデルを得るため、所定の機械学習モデルを訓練するために原訓練データと新訓練データとを用いることと、ワークを検出するため、訓練を経た機械学習モデルを用いることとを含む。
【0008】
新訓練データを生成するため、原訓練データにおいて所定の条件を満たす訓練データを処理することにより、訓練データの総量が増加し、所定の機械学習モデルは原訓練データと新訓練データとを用いることにより訓練され、機械学習モデルの判定結果の精度が効果的に向上され、これによりワークの品質を検出する精度が向上する。
【0009】
更に、原訓練データから所定の条件を満たす第1の訓練データを取得することが、第1の類別の訓練データが第2の類別に分類される可能性を判定することと、該可能性が所定の閾値を超える訓練データを第1の訓練データとして選択することとを含む。
【0010】
更に、原訓練データから所定の条件を満たす第1の訓練データを取得することが、第2の類別の訓練データが第1の類別に分類される可能性を判定することと、該可能性が所定の閾値を超える訓練データを第1の訓練データとして選択することとを含む。
【0011】
所定の閾値を超える、第1の類別の訓練データが第2の類別に分類される可能性、又は、所定の閾値を超える、第2の類別の訓練データが第1の類別に分類される可能性は、訓練データが第1の類別と第2の類別との間の境界領域に位置する可能性が高いことを示し、境界領域にあるそのような訓練データを、処理すべき第1の訓練データとして選択することは、訓練データの総量を効果的に増加させることができ、これにより機械学習モデルの判定結果の精度が向上する。
【0012】
具体的には、各訓練データは、それ自身の固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、複数の類別のうちの1つの類別に分類され、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲は、異なる類別の境界を区別する基礎であり、そのうち、第1の類別の訓練データが第2の類別に分類される可能性を判定することは、固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、第1の類別の訓練データが第2の類別に分類される可能性を判定することを含む。
【0013】
具体的には、各訓練データは、それ自身の固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、複数の類別のうちの1つの類別に分類され、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲は、異なる類別の境界を区別する基礎であり、そのうち、第2の類別の訓練データが第1の類別に分類される可能性を判定することは、固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、第2の類別の訓練データが第1の類別に分類される可能性を判定することを含む。
【0014】
訓練データの固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、訓練データが第1の類別と第2の類別との間の境界領域内に位置していることを容易に判定できる。
【0015】
任意にて、原訓練データから所定の条件を満たす第1の訓練データを取得することは、第1の類別の訓練データから、固有値が所定の範囲にある所定の訓練データを、第1の訓練データとして抽出することを含み、そのうち、所定の訓練データは、固有値が所定の訓練データの固有値と同一の所定の範囲にあるM個の訓練データのうちの少なくともN個の訓練データが第2の類別に属しているという訓練データであり、Mは2以上の整数であり、Nは1以上の整数である。
【0016】
任意にて、原訓練データから所定の条件を満たす第1の訓練データを取得することは、第2の類別の訓練データから、固有値が所定の範囲にある所定の訓練データを第1の訓練データとして抽出することを含み、そのうち、所定の訓練データは、固有値が所定の訓練データの固有値と同一の所定の範囲にあるM個の訓練データのうちの少なくともN個の訓練データが第1の類別に属しているという訓練データであり、Mは2以上の整数であり、Nは1以上の整数である。
【0017】
境界領域内の訓練データを取得するもう1つの方法として、第1の類別と第2の類別との間の境界領域の境界線が明らかでない場合、上述した方法は境界領域内の訓練データを効果的に抽出できる。
【0018】
更に、取得した第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理することは、基準訓練データとして、第1の類別に属する訓練データから所定の規則に基づき訓練データを抽出すること、又は、第1の類別に属する全ての訓練データの平均値又は中央値を算出することと、基準訓練データに基づき、取得した第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理することとを含む。
【0019】
任意にて、取得した第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理することは、基準訓練データとして、第2の類別に属する訓練データから所定の規則に基づき訓練データを抽出すること、又は、第2の類別に属する全ての訓練データの平均値又は中央値を算出することと、該基準訓練データに基づき、取得した第1の訓練データの一部又は全ての内容を処理することとを含む。
【0020】
第1の訓練データを処理するため第1の類別の訓練データ又は第2の類別の訓練データを基準訓練データとすることは、処理された後の第1の訓練データを確実に第1の類別又は第2の類別に属させることができる。
【0021】
具体的には、原訓練データは画像データであり、そのうち、取得された第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理することは、第1の類別に属する画像データ又は第2の類別に属する画像データに基づき、取得した第1の訓練データである画像データの少なくとも1つの特徴領域を改変することを含む。
【0022】
画像データとして具現化された訓練データに対し、第1の訓練データの少なくとも1つの特徴領域が、第1の類別に属する画像データ又は第2の類別に属する画像データに基づき改変され、第1の訓練データの処理がより直感的となる。
【0023】
本発明の第2の様態によると、ワークを検出するための装置が提供される。該装置は、第1の類別に予め分類された訓練データと第2の類別に予め分類された訓練データとを含むワークに関連する原訓練データを取得し、原訓練データから所定の条件を満たす第1の訓練データを取得する、取得部と、第1の類別又は第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、取得された第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理する、処理部と、訓練を経た機械学習モデルを得るため、所定の機械学習モデルを訓練するために原訓練データと新訓練データとを用いる、訓練部と、ワークを検出するため、訓練を経た機械学習モデルを用いる、検出部とを含む。
【0024】
更に、取得部は、第1の類別の訓練データが第2の類別に分類される可能性を判定する、判定部と、該可能性が所定の閾値を超える訓練データを第1の訓練データとして選択する、選択部とを含む。
【0025】
更に、取得部は、第2の類別の訓練データが第1の類別に分類される可能性を判定する、判定部と、該可能性が所定の閾値を超える訓練データを第1の訓練データとして選択する、選択部とを含む。
【0026】
具体的には、各訓練データは、それ自身の固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、複数の類別のうちの1つの類別に分類され、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲は、異なる類別の境界を区別する基礎であり、そのうち、判定部は、固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、第1の類別の訓練データが第2の類別に分類される可能性を判定する。
【0027】
具体的には、各訓練データは、それ自身の固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、複数の類別のうちの1つの類別に分類され、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲は、異なる類別の境界を区別する基礎であり、そのうち、判定部は、固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、第2の類別の訓練データが第1の類別に分類される可能性を判定する。
【0028】
任意にて、取得部は、第1の類別の訓練データから、固有値が所定の範囲にある所定の訓練データを第1の訓練データとして抽出し、そのうち、所定の訓練データは、固有値が所定の訓練データの固有値と同一の所定の範囲にあるM個の訓練データのうちの少なくともN個の訓練データが第2の類別に属しているという訓練データであり、Mは2以上の整数であり、Nは1以上の整数である。
【0029】
任意にて、取得部は、第2の類別の訓練データから、固有値が所定の範囲にある所定の訓練データを第1の訓練データとして抽出し、そのうち、所定の訓練データは、固有値が所定の訓練データの固有値と同一の所定の範囲にあるM個の訓練データのうちの少なくともN個の訓練データが第1の類別に属しているという訓練データであり、Mは2以上の整数であり、Nは1以上の整数である。
【0030】
更に、処理部は、基準訓練データとして、所定の規則に基づき第1の類別に属する訓練データを抽出する、又は、第1の類別に属する全ての訓練データの平均値又は中央値を算出し、該基準訓練データに基づき、取得された第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理する。
【0031】
更に、処理部は、基準訓練データとして、所定の規則に基づき第2の類別に属する訓練データを抽出する、又は、第2の類別に属する全ての訓練データの平均値又は中央値を算出し、該基準訓練データに基づき、取得された第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理する。
【0032】
具体的には、原訓練データは画像データであり、そのうち、処理部は、第1の類別に属する画像データ又は第2の類別に属する画像データに基づき、取得した第1の訓練データである画像データの少なくとも1つの特徴領域を改変する。
【0033】
本発明の第3の様態によると、訓練データを生成するための方法が提供される。該方法は、所定の条件を満たす第1の訓練データを取得することと、第1の類別又は第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、取得した第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理することとを含む。
【0034】
訓練データを第1の類別又は第2の類別に分類するために所定の条件を満たす訓練データを処理することにより、訓練データの総量が増加し、次いで、そのような訓練データが機械学習モデルを訓練するために用いられ、機械学習モデルの判定結果の精度が向上できる。
【0035】
本発明の第4の様態によると、訓練データを生成するための装置が提供される。該装置は、所定の条件を満たす第1の訓練データを取得する、取得部と、第1の類別又は第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、取得した第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理する、処理部とを含む。
【0036】
本発明の第5の様態によると、ワークを検出するためのシステムが提供される。該システムは、本発明の第4の様態による方法を実行する、処理部と、ワークの検出結果を出力する、出力部とを含む。
【0037】
本発明の第6の様態によると、ワークを検出するためのプログラムが提供される。該プログラムは、実行されるとき、本発明の第1の様態による方法を実行する。
【0038】
本発明の第7の様態によると、プログラムが格納される、記憶媒体が提供され、該プログラムは、実行されるとき、本発明の第1の様態による方法を実行する。
【発明の効果】
【0039】
本発明において、訓練を経た機械学習モデルの判定結果の精度が効果的に向上され、これによりワークの品質を検出する精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
ここで説明される図面は、本発明の更なる理解を提供するために用いられ、本発明の一部を形成する。本発明の例示的な実施形態とその説明は、本発明を説明するために用いられ、本発明の不適切な定義を形成しない。図面において:
【0041】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態による、情報処理システムのハードウェア構造を示す様式図である。
【
図2】
図2は、画像に基づき製品が合格であるか否かを判定する場合の、訓練データの分布図である。
【
図3】
図3は、本発明による、ワークを検出するフロー図である。
【
図4】
図4は、本発明による、境界領域内の訓練データを処理する例を示す。
【
図5】
図5は、本発明による、ワークを検出するための装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
当業者が本発明の解決方法をより理解できるよう、本発明の実施形態における技術的解決が、以下の本発明の実施形態において、図面と併せて、明確且つ完全に説明される。説明される実施形態は、本発明の全ての実施形態ではなく、実施形態の一部のみであることは明らかである。本発明の実施形態に基づき、当業者により発明的努力なく得られるその他の実施形態は、本発明の保護範囲内に入る。
【0043】
ワークの品質を検出するために機械学習モデルが用いられるとき、判定結果の精度を効果的に向上できないという課題を解決するため、本発明は、原訓練データから新訓練データを生成することにより、訓練データの総量を増加させ、機械学習モデルの判定結果の精度を効果的に向上させ、これによりワークの品質を検出する精度を向上させる。
【0044】
具体的には、本発明によれば、ワークに関連する原訓練データが取得され、次いで、訓練データが第1の類別と第2の類別に属する可能性を示す値を得るため、原訓練データが訓練を経た機械学習モデルに入力され、第1の類別の値と第2の類別の値との間の差が所定の値より低い訓練データを処理すべき訓練データとする。処理すべき訓練データの固有値又は特徴領域は、新訓練データを形成するため、第1の類別に確実に属する訓練データ又は第2の類別に確実に属する訓練データを用いて改変される。機械学習モデルは、ワークを検出するために用いられるよう、原訓練データと新訓練データとを用いて訓練され、これによりワークの品質を検出する機械学習モデルの精度を向上させる。
【0045】
先ず、本発明の1つの実施形態による情報処理システム100のハードウェア構造を説明する。
【0046】
図1は、本発明の1つの実施形態による、情報処理システムのハードウェア構造を示す様式図である。
図1に示されるように、例えば、情報処理システム100は、汎用コンピュータアーキテクチャの汎用コンピュータにより実現できる。情報処理システム100は、プロセッサ110と、メインメモリ112と、メモリ114と、入力インターフェイス116と、表示インターフェイス118と、通信インターフェイス120とを含む。これら部分は、例えば、内部バス122により互いに通信できる。
【0047】
プロセッサ110は、メモリ114に格納されたプログラムを、実行されるよう、メインメモリ112に展開し、これにより後述する機能と処理を達成する。メインメモリ112は、揮発性メモリとして構成でき、プログラムを実行するためプロセッサ110により必要とされるワークメモリとしての役割を果たす。
【0048】
入力インターフェイス116は、操作者による入力部の操作により入力された命令を受け取るため、例えば、マウスとキーボードといった、入力部と接続できる。
【0049】
表示インターフェイス118は、ディスプレイに接続でき、プログラムを実行するプロセッサ110により生成された様々な処理結果がディスプレイに出力されることができる。
【0050】
通信インターフェイス120は、ネットワーク200により、PLCとデータベース装置等と通信するために用いられる。
【0051】
メモリ114は、例えば、情報処理プログラム、OS(オペレーティングシステム)等の、コンピュータを情報処理システム100として機能させるプログラムを格納できる。
【0052】
メモリ114に格納された情報処理プログラムは、例えばデジタル多用途ディスク(DVD)である光学記憶媒体、又は、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)メモリである半導体記憶媒体により、情報処理システム100にインストールされることができる。或いは、情報処理プログラムは、ネットワーク上のサーバ装置等からダウンロードされることもできる。
【0053】
本実施形態による情報処理プログラムは、他のプログラムと組み合わせる方法で提供されてもよい。この場合、情報処理プログラム自体は、上述したような組合せの他のプログラムにより含まれるモジュールを含まないが、他のプログラムと連携して処理を実行する。このように、本実施形態による情報処理プログラムは、他のプログラムとの組合せの形態であることもできる。
【0054】
図1は、情報処理システム100を実現するため、汎用コンピュータを用いる例を示しているが、本発明はこれに限定されず、その機能の全て又は一部は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の、専用回路で達成することができる。加えて、情報処理システム100の処理の一部は、ネットワークにより接続された外部装置により実行されてもよい。
【0055】
本発明をよりよく理解するため、以下において、ワークの品質を検出するために機械学習モデルを用いる処理における新訓練データを生成する基本原理を説明するため、製品が合格品であるか否かを検出することを例とする。そのうち、機械学習モデルを訓練するために用いられる訓練データは、製品画像に基づき、製品が合格であるか否かを判定することのできる機械学習モデルを訓練するために用いられる訓練データであり、訓練データの分類類別数は2である。しかし、本発明はこれに限定されず、訓練データは他の目的のために用いられる訓練データであってよく、訓練データの分類類別数は3以上であってよい。
【0056】
画像に基づき製品が合格であるか否かを判定する場合、
図2に示されるように、訓練データは2つの類別に分類され、1つの類別は丸(〇:正)で表される合格品を表し、もう1つの類別はバツ(×:負)で表される不合格品を表す。
【0057】
理想的な状況において、合格品と不合格品との間には、
図2の(a)に示されるように、明確は境界線L1が存在し、線L1の左側の訓練データが不合格品を表し、線L1の右側の訓練データが合格品を表す。線L1は、訓練データに含まれる固有値に関連する閾値を表すことができる。固有値が閾値の一方の側にあるとき、固有値を含む訓練データは不合格品を表し、固有値が閾値の他方の側にあるとき、固有値を含む訓練データは合格品を表す。
【0058】
ただし、実際には、「合格品のような不合格品」又は「不合格品のような合格品」が存在し、
図2の(b)に示されるように、合格品と不合格品との間の境界線が変化する。合格品と不合格品との間の境界線は、線L1から線L1’に変化する。つまり、線L1の左側の特定領域(線L1と線L2との間)において、不合格品を表す訓練データと合格品を表す訓練データとの両方が存在し、線L1の右側の特定領域(線L1と線L3との間)において、合格品を表す訓練データと不合格品を表す訓練データとの両方が存在する。つまり、「境界領域」L2L3が存在する。該領域において、合格品を表す訓練データと不合格品を表す訓練データとが存在する。
【0059】
もう1つの例として、「合格品のような不合格品」又は「不合格品のような合格品」は、合格品と不合格品との間の境界線付近に分散しており、
図2の(c)に示されるように、合格品と不合格品との間の境界線を不明確にしている。ここで、合格品を表す訓練データと不合格品を表す訓練データとの両方が存在する領域、即ち線L2と線L3との間の領域も、「境界領域」と呼ばれる。
【0060】
本発明において、製品が合格品か否かを検出する処理において、上記の境界領域内の訓練データが取得され、次いで、その特徴が改変された後、新訓練データを得るため、第1の類別又は第2の類別に分類され、その間、境界領域内の訓練データは留められる。このように、一方で訓練データの量が増加し、他方で、新訓練データが原訓練データの境界領域から取得されることで、機械学習モデルの判定結果の精度を効果的に向上でき、これにより製品の品質検出の精度が向上する。
【0061】
本発明の実施形態によると、ワークを検出するための方法の実施形態が提供される。
図3は、本発明によるワークを検出するフロー図を示し、ここでのワークは、例えばコイル等の特定の製品であり、具体的な詳細は、以下に
図3を伴い説明される。
【0062】
フローはステップS310で始まる。ステップS301において、ワークに関連する原訓練データが取得される。
【0063】
ここでの原訓練データは、画像データ、ベクターデータ等を含むがこれらに限定されない、如何なる種類の訓練データであってもよい。
【0064】
原訓練データの分類類別数は2以上である。簡略化のため、ここでは取得された原訓練データの分類類別数を2と仮定する。製品が合格か否かを判定するために用いられる訓練データを例とすると、原訓練データの分類類別は「合格品」と「不合格品」であってよい。ただし、本発明はこれに限定されず、原訓練データは製品が合格か否かを判定するための訓練データに限定されず、原訓練データの分類類別数は3以上であってよい。
【0065】
原訓練データを取得する方法は様々であり、本技術分野において知られている。本発明を不必要に不明瞭にすることを避けるため、原訓練データを取得する方法は、ここでは繰り返し説明しない。
【0066】
ステップS303において、所定の条件を満たす訓練データが、原訓練データから取得される。
【0067】
製品が合格か否かを判定する上記例において、
図2の(b)と(c)に示されるように、合格品を表す訓練データと不合格品を表す訓練データとの間の境界領域L2L3が存在する。
図2と組み合わせ、このステップにおいて、所定の条件を満たす訓練データの取得は、境界領域L2L3内の訓練データの取得である。
【0068】
各訓練データは、1以上の固有値とラベルデータで構成されることができる。例えば、製品が合格か否かを判定するために用いられる訓練データについて、各訓練データの固有値は、製品の形状(円、楕円)、製品の色(赤、青)、製品のコイル接続性等を含んでよい。所定の閾値又は閾値範囲を満たす固有値の訓練データについて、そのラベルデータは、訓練データが「合格品」に予め分類されていることを表す「1」に設定されてよく、以降「第1の類別」として言及される。所定の閾値又は閾値範囲を満たさない固有値の訓練データについて、そのラベルデータは、訓練データが「不合格品」に予め分類されていることを表す「0」に設定されてよく、以降「第2の類別」として言及される。訓練データの固有値と、対応する固有値に対応する閾値又は閾値範囲との間の関係は、「第2の類別」から「第1の類別」を区別する。
【0069】
上述したように、訓練データを分類する処理において、第1の類別又は第2の類別に確実に分類されることのできる訓練データと、境界領域内に入る訓練データとが存在する。例えば、第1の類別に分類される訓練データについて、第1の類別の訓練データが第2の類別に分類される可能性を判定するため、それが第1の類別に分類される可能性と、それが第2の類別に分類される可能性との間の差が算出される。例えば、訓練データが合格品又は不合格品を表す訓練データである場合、機械学習モデルの演算を介し訓練データから得られる値は[a,b]であると仮定し、そのうち、aは訓練データが合格品に分類される可能性を表し、bは訓練データが不合格品に分類される可能性を表す。演算により得られた値が[0.7,0.1]である訓練データAは、確実に合格品に分類され、それが不合格品に分類される可能性は相対的に低く、この場合、aとbとの間の差は0.6である。一方、値が[0.6,0.3]である訓練データBについて、これも合格品に分類されるが、これが不合格品に分類される可能性は訓練データAよりも高く、この場合、aとbとの間の差は0.3である。即ち、aとbとの間の差が大きいほど、合格品類別の訓練データが不合格品に分類される可能性は低くなり、aとbとの間の差が小さいほど、合格品類別の訓練データが不合格品に分類される可能性が高くなる。このため、境界領域のための所定の閾値が設定でき、上述した可能性が所定の閾値を超えるとき、訓練データが第1の類別と第2の類別との間の境界領域内にあることを示し、このような訓練データは処理すべき訓練データとして抽出される。第2の類別に分類される訓練データについて、第2の類別の訓練データが第1の類別に分類される可能性を判定するため、上述した方法に類似の方法を用いることができる。
【0070】
第1の類別の訓練データが第2の類別に分類される可能性を判定する方法、又は、第2の類別の訓練データが第1の類別に分類される可能性を判定する方法は、上述した方法に限定されない。例えば、各訓練データが複数の固有値を含む場合、複数の固有値は、例えば、ワークの形状特徴、色特徴等を表すために用いられる。各固有値は、それに対応する少なくとも1つの閾値又は閾値範囲を有し、固有値により表される製品の特徴が合格であるか不合格であるかは、閾値又は閾値範囲に基づき判定される。即ち、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲が、異なる類別の訓練データの境界を区別する基礎とされることができる。このように、各訓練データは、それ自身の固有値と、少なくとも1つの閾値又は閾値範囲との間の関係性に基づき、第1の類別又は第2の類別、例えば、合格品類別又は不合格品類別、に分類される。合格品類別の訓練データについて、その固有値と閾値又は閾値範囲との間の差が相対的に小さいならば、訓練データは境界に近く、訓練データが不合格品に分類される可能性は相対的に高いことを示し、合格品類別の訓練データについて、その固有値と閾値又は閾値範囲との間の差が相対的に大きいならば、訓練データは境界から遠く、このため訓練データが不合格品に分類される可能性は相対的に低いことを示す。同様に、不合格品類別の訓練データについて、その固有値と閾値又は閾値範囲との間の差が相対的に小さいならば、訓練データは境界に近く、訓練データが合格品に分類される可能性は相対的に高いことを示し、不合格品類別の訓練データについて、その固有値と閾値又は閾値範囲との間の差が相対的に大きいならば、訓練データは境界から遠く、このため訓練データが合格品に分類される可能性は相対的に低いことを示す。
【0071】
もう1つの例として、境界領域に属する訓練データの取得は、以下の方法でも達成できる。
【0072】
図2の(c)に示されるように、境界領域L2L3において、合格品(第1の類別)を表す訓練データと、不合格品(第2の類別)を表す訓練データとの両方が存在する。即ち、境界領域L2L3において、合格品を表す訓練データの周囲に不合格品を表す複数の訓練データが存在する。境界領域から遠い距離で、例えば、図
2の(c)に示されるような右方向において、合格品を表す訓練データの周囲の不合格品を表す訓練データは少なくなる。このため、合格品を表す訓練データの周囲の不合格品を表す訓練データの数は、合格品を表す訓練データが境界領域内にあるか否かを特徴付けるために用いられることができる。例えば、合格品類別の各訓練データDについて、その固有値と固有値が同一の所定の範囲にあるM個の訓練データが選択され、M個の訓練データの一部又は全て、例えば、N個の訓練データが不合格品類別の訓練データに属するならば、訓練データDは境界領域内にあると考えられ、処理すべき訓練データとして抽出され、そのうち、Mは2以上の整数であり、Nは1以上の整数であり、所定の範囲は実際の要件に基づき設定できる。類似の方法において、境界領域内の訓練データは、これら訓練データを処理すべき訓練データとするため、不合格品を表す訓練データからも抽出されることができる。
【0073】
ステップS305において、新訓練データを生成するため、取得された訓練データが処理される。
【0074】
境界領域から取得された処理すべき訓練データについて、訓練データは、処理された訓練データが第1の類別又は第2の類別に分類されるよう、様々な方法で処理されてよく、これにより新訓練データを形成する。
【0075】
具体的には、所定の規則に基づき第1の類別の訓練データから抽出された訓練データが、基準訓練データとされ、そのうち、所定の規則は、例えば、次の要件、即ち、訓練データが第1の類別に属する可能性と訓練データが第2の類別に属する可能性との差が、所定値より大きいこと、に符合する、機械学習モデルの演算を介し第1の類別の訓練データから生成された可能性であってよい。任意にて、所定の規則は、例えば、第1の類別の訓練データの固有値と対応する閾値又は閾値範囲との間の差が、所定値より大きいことであってよい。換言すると、確実に第1の類別に分類される、第1の類別の訓練データから抽出された訓練データが、基準訓練データとされる。境界領域から取得された処理すべき訓練データの内容の一部又は全てが、基準訓練データに基づき処理される。例えば、処理すべき訓練データの固有値が、基準訓練データの1以上の固有値に対応する閾値又は閾値範囲に基づき改変されることで、処理された訓練データは第1の類別に分類され、これにより新訓練データを形成する。
【0076】
任意にて、訓練データは、上記に類似の方法で、第2の類別の訓練データから基準訓練データとして抽出されてよい。処理すべき訓練データの固有値が、基準訓練データの1以上の固有値に対応する閾値又は閾値範囲に基づき改変されることで、処理された訓練データは第2の類別に分類され、これにより新訓練データを形成する。
【0077】
もう1つの例として、第1の類別に属する全ての訓練データの平均値又は中央値が、基準訓練データとして算出される。具体的には、第1の類別の全ての訓練データに対応する同一の固有値が平均化される、又はそれらの中央値が算出され、対応する固有値が該平均値又は中央値である訓練データが、基準訓練データとして形成される。処理すべき訓練データの固有値が、基準訓練データの固有値に基づき改変されることで、処理された訓練データは第1の類別に分類され、これにより新訓練データを形成する。
【0078】
或いは、第2の類別に属する全ての訓練データの平均値又は中央値が、基準訓練データとして算出される。具体的には、第2の類別の全ての訓練データに対応する同一の固有値が平均化される、又はそれらの中央値が算出され、対応する固有値が該平均値又は中央値である訓練データが、基準訓練データとして形成される。処理すべき訓練データの固有値が、基準訓練データの固有値に基づき改変されることで、処理された訓練データは第2の類別に分類され、これにより新訓練データを形成する。
【0079】
ステップS307において、原訓練データと新訓練データとが、訓練を経た機械学習モデルを得るため、所定の機械学習モデルを訓練するために用いられる。
【0080】
新訓練データは、境界領域から取得された訓練データが処理された後に、境界領域内の原訓練データを置き換えることなく得られ、つまり、新訓練データは原訓練データを留めたまま生成される。
【0081】
このため、訓練データの全体量が増加し、新訓練データが第1の類別と第2の類別との間の境界領域内の訓練データを処理することにより生成されることから、新訓練データは第1の類別又は第2の類別に確実に分類され、これにより機械学習モデルの判定結果の精度を効果的に向上させる。
【0082】
ステップS309において、訓練を経た機械学習モデルが、ワークの品質を検出するために用いられる。
【0083】
ワークの検出データ、例えば画像データが、訓練を経た機械学習モデルに入力され、次いで、製品が合格品であるか不合格品であるかが、機械学習モデルの出力結果に基づき判定されることができる。
【0084】
【0085】
図4は、本発明による境界領域内の訓練データの処理の例を示す。これら例において、訓練データはコイルの画像データである。ここでの例は単なる例示的な例であり、本発明はこれに限定されない。以下に、
図4と共に説明する。
【0086】
先ず、コイルの原画像データが、コイルが合格品であるか否かを判定するため、訓練を経た機械学習モデルに入力され、画像データが合格のコイルを表すか不合格のコイルを表すかが、機械学習モデルの出力結果に基づき判定される。例えば、コイルの画像データが訓練を経た機械学習モデルに入力された後、得られる出力結果は[c,d]であり、そのうち、cはコイルが合格品であることを表す画像データである可能性であり、dはコイルが不合格品であることを表す画像データである可能性である。所定の閾値、例えば、c0=0.5、に基づき、cがc0以上である出力結果を有する画像データについて、該画像データより表されたコイルは合格品に分類され、cがc0未満である出力結果を有する画像データについては、該画像データにより表されたコイルは不合格品に分類される。
【0087】
上記方法により、
図4の(a)と(b)に示されるように、「不合格品」類別(第2の類別)に属する2つの訓練データが得られる。
【0088】
図4の(a)に示されるように、機械学習モデルの演算を介し訓練データから生成された可能性が、
図4の(a)の底部に示され、これらは訓練データが「不合格品」又は「合格品」に属する可能性である。
図4の(a)に示されるように、訓練データが「不合格品」に属する可能性は0.31であり、訓練データが「合格品」に属する可能性は0.14である。つまり、訓練データが「不合格品」に属する可能性は、訓練データが「合格品」に属する可能性よりも高い。
【0089】
図4の(a)に示されるように、コイルは断線しており、断線部分の2つの合わせ目が上下方向においてずれており、従って異なる高さにある。訓練データにおいて、そのような断線したコイルは容易に「不合格品」として判定される。
【0090】
図4の(b)に示されるように、コイルが断線しているとはいえ、断線部分の2つの合わせ目は同一の高さにあり、上下方向にずれていない。このため、機械学習モデルの演算を介し訓練データから生成された可能性について、訓練データが「合格品」に属する可能性が増加する。
図4の(b)に示されるように、訓練データが「不合格品」に属する可能性は0.15であり、「合格品」に属する可能性は0.28である。
【0091】
図4の(a)と(b)における2つの訓練データについて、後者が「不合格品」に属する可能性と後者が「合格品」に属する可能性との間の差(0.13)は、前者が「不合格品」に属する可能性と前者が「合格品」に属する可能性との間の差(0.17)よりも小さい。
【0092】
可能性における差が所定の閾値以下である訓練データが、処理されることができる。例えば、所定の閾値が0.15に設定され、
図4の(b)における訓練データについて、それが「不合格品」に属する可能性と、それが「合格品」に属する可能性との間の差(0.13)は、所定の閾値0.15未満であり、訓練
データは、それが「合格品」に属する可能性又はそれが「不合格品」に属する可能性を増加させるよう処理されることできる。
図4の(a)における訓練データについては、それが「不合格品」に属する可能性と、それが「合格品」に属する可能性との間の差(0.17)は、所定の閾値0.15より大きく、訓練
データは処理されない。
【0093】
1つの例として、
図4の(b)における訓練データが抽出され、抽出された訓練データにおいて画像処理が実行されてよい。例えば、それが「合格品」に属する可能性を向上させるため、断線部分が互いに接続され、次いで、改変された訓練データは「合格品」類別に分類され、これにより「合格品」を表す新訓練データを得ることができる。
【0094】
もう1つの例として、
図4の(b)における訓練データが抽出され、抽出された訓練データにおいて画像処理が実行されてよい。例えば、断線部分の2つの合わせ目が異なる高さにされる、又は、訓練データが
図4の(b)に示されるのと同じような、いくつかの断線部分を有するようにされ、それが「不合格品」に属する可能性が向上され、次いで、改変された訓練データは確実に「不合格品」類別に分類され、これにより「不合格品」を表す新訓練データを得る。
【0095】
図4の(a)と(b)における断線部分は、エッジ検出といった既知の方法により検出できる。或いは、断線部分は人の目視により確認できる。
【0096】
図4は、第1の類別(合格品)と第2の類別(不合格品)との間の境界領域内の訓練データ(
図4の(b)における画像)が抽出され、コイルの断線部分が互いに接続される、又はコイルの断線部分の特徴がより明らかとなるよう、訓練データが改変されることで、改変された訓練データが確実に第1の類別又は第2の類別に分類され、これにより新画像データを形成することを示している。
【0097】
本発明の実施形態によると、ワークを検出するための装置の実施形態が提供される。
図5は、本発明による、ワークを検出するための装置のブロック図である。
【0098】
図5に示されるように、検出するための装置は、取得部502と、処理部504と、訓練部506と、検出部508とを含む。そのうち、取得部502は、ワークに関連する原訓練データを取得するよう構成される。処理部504は、第1の類別又は第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、境界領域内の取得された訓練データの内容の一部又は全てを処理するよう構成される。
訓練部506は、訓練を経た機械学習部を得るため、所定の機械学習部を訓練するために原訓練データと新訓練データとを用いる
ように構成される。
検出部508は、ワークを検出するため、訓練を経た機械学習部を用いる
ように構成される。
【0099】
取得部502は、判定部と選択部(図示せず)とを更に含む。境界領域内の訓練データを取得する1つの例において、判定部は、第1の類別の訓練データが第2の類別に分類される可能性、又は、第2の類別の訓練データが第1の類別に分類される可能性を判定することができ、選択部は、該可能性が所定の閾値を超える訓練データを、境界領域内の訓練データとして選択できる。
【0100】
更に、境界領域内の訓練データを取得するための、そして、境界領域から取得された処理すべき訓練データを処理するための、様々な実装方法を上記で詳細に説明しているが、これら実装方法は、それぞれ取得部502と処理部504により実行されることができる。重複を避けるため、境界領域内の訓練データを取得する取得部502と境界領域から取得された訓練データを処理する処理部504の様々な実装方法については、繰り返し説明しない。
【0101】
本実施形態による機械学習モデルを用いてワークを検出するための装置について、新訓練データは、境界領域から取得された訓練データが処理されて分類された後に、境界領域内の既存の訓練データを置き換えることなく得られ、つまり、新訓練データは既存の訓練データを留めたまま生成される。
【0102】
このため、訓練データの総量が増加し、増加した訓練データは、第1の類別と第2の類別との間の境界領域内の訓練データを処理して分類することにより生成され、これにより機械学習モデルの判定結果の精度を効果的に向上させ、これによりワークの品質を検出する精度が向上する。
【0103】
本発明の実施形態によると、訓練データを生成するための方法が提供される。該方法は、所定の条件を満たす第1の訓練データを取得することと、第1の類別又は第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、取得された第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理することとを含む。
【0104】
境界領域の訓練データを取得するための、そして、境界領域から取得された処理すべき第1の訓練データを処理するための、様々な実装方法は上記で詳細に説明している。このため、重複を避けるため、説明済みの内容はここでは繰り返し説明しない。
【0105】
本発明の実施形態によると、訓練データを生成するための装置が提供される。該装置は、所定の条件を満たす第1の訓練データを取得する取得部と、第1の類別又は第2の類別に分類される新訓練データを生成するため、取得された第1の訓練データの内容の一部又は全てを処理する処理部とを含む。
【0106】
境界領域の訓練データを取得するための、そして、境界領域から取得された処理すべき第1の訓練データを処理するための、様々な実装方法は上記で詳細に説明している。これら実装方法は、それぞれ取得部と処理部により実行されることができる。このため、重複を避けるため、境界領域内の第1の訓練データを取得する取得部と、境界領域から取得された処理すべき訓練データを処理する処理部については、ここでは繰り返し説明しない。
【0107】
本発明の実施形態によると、ワークを検出するためのシステムが提供される。該システムは、処理部と出力部とを含み、そのうち、処理部はここで説明されたワークを検出するための方法を実行し、出力部はワークの検出結果を出力する。
本発明の実施形態によると、ワークを検出するためのプログラムが提供される。該プログラムは、実行されたとき、ここで説明されたワークを検出するための方法を実行する。
【0108】
本発明の実施形態によると、プログラムが格納される、記憶媒体が提供される。該プログラムは、実行されたとき、本実施形態において説明された方法を実行する。
【0109】
本発明における、ワークを検出し、訓練データを生成するための方法、装置、プログラム、及び記憶媒体が、合格品/不合格品の判定に関連して上記で説明されているとはいえ、本発明はこれに限定されず、本発明は人の状態又は姿勢等の判定に適用することができる。例えば、人の姿勢を判定するため機械学習モデルを用いる処理において、曖昧な姿勢を表す画像データについて、そのような画像データは本発明において説明された方法に基づき抽出されることができ、抽出された画像データは、画像データが明確な姿勢を表す類別に分類されることができるよう、処理されることができる。
【0110】
本発明の上記実施形態において、各実施形態の説明は異なる重点を有しており、特定の実施形態において詳細に説明されていないものは、他の実施形態の関連する説明を参照できる。
【0111】
本発明において提供されたいくつかの実施形態において、開示された技術内容は他の方法で実装されてよいことを理解されたい。説明された装置の実施形態は単なる例示である。例えば、構成単位の分割は、論理的機能の分割とすることができ、実際の実装では他の分割であってよい。例えば、複数の構成単位又は部品が、もう1つのシステムに合併又は統合されてよく、或いは、いくつかの特徴が無視又は実行されなくてもよい。加えて、表示された又は論じられた相互結合又は直接結合、又は通信接続は、いくつかのインターフェイスを介し実装されてよい。構成単位又はモジュール間の間接的な結合又は通信接続は、電子的に、又は他の形態で、実装されてよい。
【0112】
更に、本発明の各実施形態における機能単位は、1つの処理部に統合されてよく、或いは、各単位が物理的に単独で存在してもよく、或いは、2以上の単位が1つの単位に統合されてもよい。統合された単位は、ハードウェア又はソフトウェア機能単位のかたちで実装されてよい。
【0113】
上記説明は、僅かに本発明の好ましい実施形態である。当業者は、本発明の技術的原理を逸脱することなく、いくつかの改善と改変を行うこともでき、これら改善と改変も本発明の保護範囲内として考慮されるべきであることに留意されたい。
【符号の説明】
【0114】
100 情報処理システム
110 プロセッサ
112 メインメモリ
114 メモリ
116 入力インターフェイス
118 表示インターフェイス
120 通信インターフェイス
122 内部バス
200 ネットワーク
502 取得部
504 処理部
506 訓練部
508 検出部