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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】サイホン排水システム
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
E03C1/122 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018145927
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020020201
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】豊田 秀司
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025341(JP,A)
【文献】特開2012-219526(JP,A)
【文献】特開2008-025246(JP,A)
【文献】特開2009-030332(JP,A)
【文献】特開2015-025310(JP,A)
【文献】特開2018-025073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
F16L 55/00
F16L 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水廻り器具に接続された第1排水管と、
前記第1排水管の下流側に接続された排水トラップと、
前記排水トラップの下流側に接続された第2排水管と、
前記第2排水管の下流側に接続されたサイホン排水管の横引き管と、
前記横引き管の下流側に接続され、前記横引き管からの排水を下方へ流す前記サイホン排水管の竪管と、
前記横引き管と前記竪管との境界部、又は前記竪管に接続され、前記竪管に呼び水を供給可能な給水部と、
を有するサイホン排水システム。
【請求項2】
前記第2排水管には、前記第2排水管での排水の通過を検知する第1センサが設けられ、
前記第1センサからの信号に基づき前記給水部の作動を制御する制御部を更に有し、
前記第1センサにより第2排水管における排水の通過が検知されると、前記制御部が前記給水部を作動させ、前記竪管に呼び水が供給される請求項1に記載のサイホン排水システム。
【請求項3】
前記第1排水管には、前記第1排水管の水位を検知する第2センサが設けられ、
前記第2センサにより前記第1排水管の水位が所定値を超えたことが検知されると、前記制御部がアラームを発報する請求項2に記載のサイホン排水システム。
【請求項4】
前記第1センサの計測ログ、前記第2センサの計測ログ及び前記アラームの発報が、データとして保存される請求項3に記載のサイホン排水システム。
【請求項5】
前記データは、ネットワークを介して記憶装置に保存される請求項4に記載のサイホン排水システム。
【請求項6】
前記横引き管と前記竪管との境界部には、前記給水部の配管と接続される接続口が設けられており、
前記配管は、前記接続口から取外し可能とされている請求項1~請求項5の何れか1項に記載のサイホン排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイホン排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水廻り器具と、サイホン排水管との間に、排水の一時貯留槽が接続されたサイホン排水システムが開示されている。この一時貯留槽は、スラブと床面との間の床下空間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-315036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイホン排水管は、横引き管(水平管)と、該横引き管からの排水を下方へ流す竪管とを有している。排水が横引き管内を移動して竪管に入り、該竪管内が満流になると、竪管内を落下する排水の位置エネルギーによってサイホン力が発生し、後続の排水が竪管に引き込まれて排水される。
【0005】
このとき、横引き管が長いと、横引き管内を移動する排水が竪管に到達し、サイホン力が発生するまでにより多くの時間を要する。また、水廻り器具からの排水量が多いと、排水が横引き管の上流側に滞留する場合がある。上記した従来例に記載の一時貯留槽は、この滞留を抑制するために用いられる。
【0006】
しかしながら、一時貯留槽にはある程度の高さが必要であり、この高さに応じて床下空間を確保する必要がある。更なる低床化のためには、一時貯留槽を不要とするか、一時貯留槽を小型化することが望まれている。
【0007】
本発明は、水廻り器具からの排水が開始されてから、サイホン力が発生するまでのタイムラグを少なくし、横引き管の上流側での排水の滞留を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係るサイホン排水システムは、水廻り器具に接続された第1排水管と、前記第1排水管の下流側に接続された排水トラップと、前記排水トラップの下流側に接続された第2排水管と、前記第2排水管の下流側に接続されたサイホン排水管の横引き管と、前記横引き管の下流側に接続され、前記横引き管からの排水を下方へ流す前記サイホン排水管の竪管と、前記横引き管と前記竪管との境界部、又は前記竪管に接続され、前記竪管に呼び水を供給可能な給水部と、を有する。
【0009】
このサイホン排水システムでは、給水部により、サイホン排水管の竪管に呼び水を供給可能である。水廻り器具からの排水がサイホン排水管の横引き管内を移動し、竪管に到達していない時でも、呼び水が竪管に供給されることで竪管内が満流になり、サイホン力が発生する。一旦サイホン力が発生すると、横引き管に負圧が生じ、横引き管内の排水と呼び水との間に位置する空気が竪管に引き込まれると共に、横引き管内の排水も竪管に引き込まれる。したがって、竪管に呼び水を供給しない場合と比較して、水廻り器具からの排水が開始されてからサイホン力が発生するまでの時間が短くなる。このため、横引き管が長い場合や、水廻り器具からの排水量が多い場合でも、排水が横引き管の上流側に滞留することがない。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係るサイホン排水システムにおいて、前記第2排水管には、前記第2排水管での排水の通過を検知する第1センサが設けられ、前記第1センサからの信号に基づき前記給水部の作動を制御する制御部を更に有し、前記第1センサにより第2排水管における排水の通過が検知されると、前記制御部が前記給水部を作動させ、前記竪管に呼び水が供給される。
【0011】
このサイホン排水システムでは、排水トラップと横引き管との間に接続された第2排水管に、該第2排水管での排水の通過を検知する第1センサが設けられている。第2排水管における排水の通過が第1センサにより検知されると、制御部が給水部を作動させ、竪管に呼び水を供給する。したがって、排水がサイホン排水管の横引き管に概ね到達する適切なタイミングで竪管に呼び水を供給できるので、更に排水の滞留が起こり難くなる。
【0012】
第3の態様は、第2の態様に係るサイホン排水システムにおいて、前記第1排水管には、前記第1排水管の水位を検知する第2センサが設けられ、前記第2センサにより前記第1排水管の水位が所定値を超えたことが検知されると、前記制御部がアラームを発報する。
【0013】
このサイホン排水システムでは、水廻り器具と排水トラップとの間に接続された第1排水管に、該第1排水管の水位を検知する第2センサが設けられている。第1排水管の水位が所定値を超えたことが第2センサにより検知されると、制御部がアラームを発報する。第1排水管の水位が所定値を超えたときには、排水トラップの上流側に排水が滞留しており、サイホン排水管に排水不良(故障)が生じていると考えることができる。このサイホン排水システムでは、このような排水不良の発生をアラームにより使用者に知らせることができる。
【0014】
第4の態様は、第3の態様に係るサイホン排水システムにおいて、前記第1センサの計測ログ、前記第2センサの計測ログ及び前記アラームの発報が、データとして保存される。
【0015】
このサイホン排水システムでは、第1センサの計測ログ、第2センサの計測ログ及びアラームの発報が、データとして保存されるので、サイホン排水管における排水不良の履歴を容易に確認することができる。
【0016】
第5の態様は、第4の態様に係るサイホン排水システムにおいて、前記データは、ネットワークを介して記憶装置に保存される。
【0017】
このサイホン排水システムでは、第1センサの計測ログ、第2センサの計測ログ及びアラームの発報のデータが、ネットワークを介して記憶装置に保存されるので、サイホン排水管における排水不良の発生を遠隔で検知したり、排水不良の履歴を遠隔で確認したりすることができる。
【0018】
第6の態様は、第1~第5の態様の何れか1態様に係るサイホン排水システムにおいて、前記横引き管と前記竪管との境界部には、前記給水部の配管と接続される接続口が設けられており、前記配管は、前記接続口から取外し可能とされている。
【0019】
このサイホン排水システムでは、給水部の配管が、横引き管と竪管との境界部に設けられた接続口から取外し可能とされているので、給水部の配管を接続口から取り外すことで、該接続口をサイホン排水管の清掃口として使用することができる。このため、サイホン排水管における排水不良の発生時等、緊急対応的にサイホン排水管の清掃や点検を行い易い。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るサイホン排水システムによれば、水廻り器具からの排水が開始されてから、サイホン力が発生するまでのタイムラグを少なくし、横引き管の上流側での排水の滞留を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係るサイホン排水システムの概要を示す断面図である。
図2】第1実施形態に係るサイホン排水システムの概要を示す正面図である。
図3】給水部の配管とサイホン排水管との接続部の変形例を示す拡大部分断面図である。
図4】第2実施形態に係るサイホン排水システムの概要を示す断面図である。
図5】第2実施形態に係るサイホン排水システムにおいて、給水部の配管を接続口から取り外した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0023】
[第1実施形態]
まず、本実施形態に係るサイホン排水システム10の全体構成を説明する。図1には、本実施形態に係るサイホン排水システム10の全体構成が概略図にて示されている。サイホン排水システム10は、サイホン力を利用して水廻り器具からの排水を効率よく排出する排水システムである。このサイホン排水システム10は、第1排水管31と、排水トラップ18と、第2排水管32と、横引き管21と、竪管22と、給水部40と、を有している。
【0024】
サイホン排水システム10は、例えば複数階で構成された集合住宅に用いられ、図1に示すように、排水を下方へ流す排水立て管12を備えている。この排水立て管12は、集合住宅の上下方向(縦方向)に延設され、集合住宅の各階の床スラブ14を貫いている。
【0025】
集合住宅の各階には、水廻り器具の一例としての台所シンク16が設けられている。この台所シンク16の底部には、排水部30が設けられている。排水部30は、台所シンク16の底部に設けられた排水口16Aに開口するように設置されている。台所シンク16からの排水は、排水口16Aを通じて排水部30へ流入するようになっている。
【0026】
第1排水管31は、台所シンク16の排水部30に接続されている。この第1排水管31は上下方向に延設され、排水部30から下方に延びている。排水トラップ18は、第1排水管31の下流側に接続されている。排水トラップ18は、例えばS字トラップである。第2排水管32は、排水トラップ18の下流側に接続されている。この第2排水管32は、上下方向に延設され、排水トラップ18の下流側端部から床スラブ14の上面近くまで下方に延びている。
【0027】
サイホン排水管23は、横引き管21及び竪管22を含んで構成されている。横引き管21は、第2排水管32の下流側に接続された管である。横引き管21は、床スラブ14上に無勾配で横方向に延設されている。第2排水管32から横引き管21に流入した排水は、該横引き管21内を横方向へ流れるようになっている。
【0028】
竪管22は、横引き管21の下流側に接続され、横引き管21から排水を下方へ流す管である。竪管22は、排水立て管12に沿って、上下方向(縦方向)に延設されている。横引き管21から竪管22へ流入した排水等を下方へ落下させることによりサイホン力が発生する。竪管22の下流側端部と排水立て管12の間には、両者を連結する排水継手50が設けられている。排水継手50は、竪管22からの排水等を排水立て管12へ合流させる。サイホン排水管23における横引き管21の内径と竪管22の内径は、台所シンク16からの排水が満水の状態で流れ易くなるように、例えば20mmとされている。
【0029】
給水部40は、横引き管21と竪管22との境界部、又は竪管22に接続され、竪管22に呼び水を供給可能に構成されている。ここで、境界部とは、横引き管21と竪管22とが接続される部だけでなく、竪管22より上流側である横引き管21の下流側の端部を含む。本実施形態では、横引き管21と竪管22との接続部に、弧状に湾曲した湾曲部44(エルボ管、又はL字管)が設けられている。
【0030】
図1図2に示される例では、給水部40の配管42の下端が、竪管22の上端に接続されている。換言すれば、竪管22の上方への延長上に配管42が設けられている。一方、図3に示される例では、配管42が、湾曲部44に対して接線方向に接続されている。横引き管21の上流側と配管42とがなす角度θが鋭角となっている。これにより、配管42から竪管22へ呼び水が流れ易くなり(矢印A方向)、横引き管21の上流側へ逆流し難くなっている(矢印B方向)。この構成は、呼び水の量が多い場合に特に有効である。
【0031】
サイホン力を早期に発生させ、横引き管21の上流側への呼び水の逆流を抑制するために、サイホン排水管23に対する給水部40の配管42の接続箇所は、竪管22になるべく近いことが望ましい。なお、呼び水によりサイホン力を発生させることができれば、給水部40の配管42は、竪管22の上端より下側に接続されていてもよい。
【0032】
給水部40には、呼び水の供給の有無を切り替える弁46が設けられている。この弁46の開閉は、後述する制御部34(図2)により制御されるようになっている。
【0033】
図2において、第2排水管32には、第2排水管32での排水の通過を検知する第1センサ51が設けられている。第1センサ51として、例えば圧力センサや導電センサを用いることができる。なお、第1センサ51は、第2排水管32に排水が流れて来たことを検知できるものであれば、どのようなセンサを用いてもよい。
【0034】
第1センサ51による検知位置は、例えば第2排水管32の下端部である。これは、排水がサイホン排水管23の横引き管21に流入するタイミングを検知し易いからである。なお、第1センサ51による検知位置は、第2排水管32における他の位置であってもよい。また、第1センサ51を複数設けてもよい。この場合、第2排水管32での排水の滞留を検知することも可能となる。
【0035】
サイホン排水システム10は、制御部34を更に有している。制御部34は、第1センサ51からの信号に基づき給水部40の作動、具体的には、弁46の開閉を制御する部位である。第1センサ51により第2排水管32における排水の通過が検知されると、制御部34が給水部40を作動させ、竪管22に呼び水が供給されるようになっている。具体的には、制御部34が弁46を開くことで、配管42を通じて竪管22に呼び水が供給されるようになっている。
【0036】
給水部40の配管42は例えば上水道に接続されているが、これに限られず、雨水等の貯水タンク(図示せず)に接続されていてもよい。つまり、呼び水は、水道水だけでなく、貯め水であってもよい。
【0037】
第1排水管31には、第1排水管31の水位を検知する第2センサ52が設けられている。第2センサ52は、制御部34に接続されている。第2センサ52により第1排水管31の水位が所定値を超えたことが検知されると、制御部34がアラーム36を発報するようになっている。第2センサ52は、第1排水管31での排水の滞留を検知するためのセンサである。第2センサ52としては、例えばフロートセンサや、水面の高さを検知するレーザセンサを用いることができる。なお、第2センサ52は、第1排水管31での排水の滞留を検知できるものであれば、どのようなセンサを用いてもよい。第2センサ52による検知位置は、例えば第1排水管31の上下方向の中央部である。
【0038】
なお、第2センサ52による検知位置は、第1排水管31における他の位置であってもよい。第1排水管31での排水の滞留を早期に検知するには、第2センサ52による検知位置は、第1排水管31の下部に設定される。また、第2センサ52を複数設けてもよい。複数の第2センサ52を用いることで、第1排水管31を排水が流れているのか滞留しているのかをより正確に判定できる。
【0039】
第1センサ51の計測ログ、第2センサ52の計測ログ及びアラーム36の発報は、データとして保存されるようになっている。具体的には、データは、ネットワーク48を介して記憶装置49に保存されるようになっている。記憶装置49は、サイホン排水システム10が設置される集合住宅から離れた遠隔地に設置されてもよいし、当該集合住宅内に設置されてもよい。記憶装置49が遠隔地に設置される場合、ネットワーク48はインターネット等のWAN(Wide Area Network)を含む。記憶装置49が集合住宅に設置される場合、ネットワーク48はLAN(Local Area Network)に相当する。なお、ネットワーク48を用いずに、制御部34内又はその近傍に記憶装置(図示せず)を設け、該記憶装置にデータを保存するようにしてもよい。
【0040】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1において、このサイホン排水システム10によれば、台所シンク16から排出された排水は、排水部30を経て第1排水管31、排水トラップ18、第2排水管32を順に流れ、更にサイホン排水管23における無勾配の横引き管21内を横方向へ流れる。次いで、排水は、竪管22を落下し、竪管22におけるサイホン水頭Hsの位置エネルギーにより、サイホン力が起動する。このサイホン力により、サイホン排水管23の横引き管21及び竪管22内の排水、更には第2排水管32内の排水が誘導され、その排水が促進される。このため、竪管22側へ下る下り勾配が横引き管21になくとも、サイホン力により、排水等を導くことができる。なお、横引き管21には、竪管22側へ下る下り勾配があってもよい。
【0041】
また、本実施形態では、給水部40により、サイホン排水管23の竪管22に呼び水を供給可能である。台所シンク16からの排水がサイホン排水管23の横引き管21内を移動し、竪管22に到達していない時でも、呼び水が竪管22に供給されることで竪管22内が満流になり、サイホン力が発生する。一旦サイホン力が発生すると、横引き管21に負圧が生じ、横引き管21内の排水と呼び水との間に位置する空気が竪管22に引き込まれると共に、横引き管21内の排水も竪管22に引き込まれる。したがって、竪管22に呼び水を供給しない場合や、第2排水管32等、横引き管21の上流側に呼び水を供給する場合と比較して、台所シンク16からの排水が開始されてからサイホン力が発生するまでの時間が短くなる。このため、横引き管21が長い場合や、台所シンク16からの排水量が多い場合でも、排水が横引き管21の上流側に滞留することがない。
【0042】
また、図2に示されるように、本実施形態では、排水トラップ18と横引き管21との間に接続された第2排水管32に、該第2排水管32での排水の通過を検知する第1センサ51が設けられている。第2排水管32における排水の通過が第1センサ51により検知されると、制御部34が給水部40を作動させる。具体的には、制御部34により給水部40の弁46が開かれる。これにより、配管42から竪管22に呼び水が供給される。したがって、排水がサイホン排水管23の横引き管21に概ね到達する適切なタイミングで竪管22に呼び水を供給できるので、更に排水の滞留が起こり難くなる。
【0043】
更に、本実施形態では、台所シンク16と排水トラップ18との間に接続された第1排水管31に、該第1排水管31の水位を検知すると共に制御部34に接続された第2センサ52が設けられている。第1排水管31の水位が所定値を超えたことが第2センサ52により検知されると、制御部34がアラーム36を発報する。第1排水管31の水位が所定値を超えたときには、排水トラップ18の上流側の第1排水管31に排水が滞留しており、サイホン排水管23に排水不良(故障)が生じていると考えることができる。本実施形態では、このような排水不良の発生をアラーム36により使用者に知らせることができる。
【0044】
また、本実施形態では、第1センサ51の計測ログ、第2センサ52の計測ログ及びアラーム36の発報が、データとして保存されるので、サイホン排水管23における排水不良の履歴を容易に確認することができる。第1センサ51の計測ログ、第2センサ52の計測ログ及びアラーム36の発報のデータが、ネットワーク48を介して記憶装置49に保存される場合には、サイホン排水管23における排水不良の発生を遠隔で検知したり、排水不良の履歴を遠隔で確認したりすることができる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、呼び水によりサイホン力を速やかに発生させることができるので、排水の滞留を防止するための一時貯留槽(図示せず)を不要とするか、一時貯留槽を設ける場合でも該一時貯留槽を小型化することができる。
【0046】
台所シンク16からの排水が少ない場合には、竪管22が満流にならずサイホン力が発生しないこともあり得るが、本実施形態によれば、台所シンク16からの排水が少ない場合でも、サイホン力を速やかに発生させることができる。
【0047】
集合住宅においては、配管スペースに水道系統が設けられているので、該水道系統から配管を分岐させることで、給水部40を構成することができる。したがって、給水部40の設置のために大きなスペースを必要としない。
【0048】
[第2実施形態]
図4図5において、本実施形態に係るサイホン排水システム20では、横引き管21と竪管22との境界部に、給水部40の配管42と接続される接続口54が設けられている。具体的には、横引き管21の下流側端部と湾曲部44との間には、境界部の一例としての清掃口付き継手56が設けられている。この清掃口付き継手56における清掃口が接続口54を兼ねている。清掃口付き継手56は、継手本体58と、蓋60とを有している。接続口54は、継手本体58に設けられている。接続口54は例えば円筒状に構成されている。蓋60は、接続口54を閉塞するための部材であり、ねじ嵌合により継手本体58に着脱可能とされている。
【0049】
給水部40の配管42は、接続口54から取外し可能とされている。具体的には、図5に示されるように、配管42の下端部が蓋60に差し込まれている。上記のように、蓋60は継手本体58に対して着脱可能であるので、配管42を接続口54に接続したり、接続口54から取り外したりすることが可能となっている。
【0050】
このサイホン排水システム20では、給水部40の配管42が、横引き管21と竪管22との境界部に設けられた接続口54から取外し可能とされているので、給水部40の配管42を接続口54から取り外すことで、該接続口54をサイホン排水管23の清掃口として使用することができる。このため、サイホン排水管23における排水不良の発生時等、緊急対応的にサイホン排水管23の清掃や点検を行い易い。
【0051】
なお、給水部40の配管42と接続される接続口54の構成は、上記の構成に限られず、例えば横引き管21と竪管22との境界部に3又の管継手を設け(図示せず)、該管継手に対して配管42を着脱可能としてもよい。
【0052】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0053】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0054】
第1実施形態では、第1センサ51により第2排水管32での排水の通過を検知して、呼び水を竪管22に供給するものとしたが、これに限られず、使用者の操作により呼び水を任意に供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…サイホン排水システム、16…台所シンク(水廻り器具)、18…排水トラップ、21…横引き管、22…竪管、23…サイホン排水管、31…第1排水管、32…第2排水管、34…制御部、36…アラーム、40…給水部、42…配管、44…湾曲部(境界部)、48…ネットワーク、49…記憶装置、51…第1センサ、52…第2センサ、54…接続口、56…清掃口付き継手(境界部)
図1
図2
図3
図4
図5