(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】流動床炉
(51)【国際特許分類】
F23C 10/28 20060101AFI20220712BHJP
F23G 5/30 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
F23C10/28
F23G5/30 A
(21)【出願番号】P 2017229178
(22)【出願日】2017-11-29
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐司
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 実
(72)【発明者】
【氏名】前川 勇
(72)【発明者】
【氏名】清水 敬哲
(72)【発明者】
【氏名】武藤 貞行
(72)【発明者】
【氏名】清瀧 元
(72)【発明者】
【氏名】福本 康二
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆平
(72)【発明者】
【氏名】村岡 利紀
(72)【発明者】
【氏名】熊田 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴大
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-182903(JP,A)
【文献】特開2003-227604(JP,A)
【文献】特開2003-161410(JP,A)
【文献】特開2001-272014(JP,A)
【文献】特開平09-060843(JP,A)
【文献】特開平08-005039(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016556(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 10/28
F23G 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させる流動床部と、
前記流動床部の上方に位置するフリーボード部と、
前記フリーボード部に前記燃料を投入する燃料投入口と、
前記燃料の前記フリーボード部における異常燃焼を抑制させるように、前記フリーボード部で生成された燃焼排ガスにより酸素濃度が調整された二次燃焼用ガスを前記フリーボード部へ吹き込む二次燃焼用ガス供給部と、を備え、
前記二次燃焼用ガス供給部が、前記フリーボード部の前記燃料投入口よりも
ガスの流れの下流側で且つ前記燃料投入口に隣接した位置へ向けて、前記二次燃焼用ガスを吹き込む
ガス供給口を含む、
流動床炉。
【請求項2】
燃料を燃焼させる流動床部と、
前記流動床部の上方に位置するフリーボード部と、
前記フリーボード部に前記燃料を投入する燃料投入口と、
前記燃料の前記フリーボード部における異常燃焼を抑制させるように、前記フリーボード部で生成された燃焼排ガスにより酸素濃度が調整された二次燃焼用ガスを前記フリーボード部へ吹き込む二次燃焼用ガス供給部と、を備え、
前記二次燃焼用ガス供給部は、前記二次燃焼用ガスが前記燃料と混合した状態で前記燃料投入口から供給されるように、前記燃料投入口へ至る燃料供給経路へ前記二次燃焼用ガスを供給する燃料シュートパージガス供給管を含む、
流動床炉。
【請求項3】
燃料を燃焼させる流動床部と、
前記流動床部の上方に位置するフリーボード部と、
前記フリーボード部に前記燃料を投入する燃料投入口と、
前記燃料の前記フリーボード部における異常燃焼を抑制させるように、前記フリーボード部で生成された燃焼排ガスにより酸素濃度が調整された二次燃焼用ガスを前記フリーボード部へ吹き込む二次燃焼用ガス供給部と、
前記燃焼排ガスによって酸素濃度が調整された、前記二次燃焼用ガスよりも酸素濃度が高い三次燃焼用ガスを、前記フリーボード部の前記二次燃焼用ガス供給部よりも
ガスの流れの下流側へ吹き込む三次燃焼用ガス供給部とを、備えた、
流動床炉。
【請求項4】
前記三次燃焼用ガス供給部は、
ガスの流れの下流側ほど酸素濃度が高い三次燃焼用ガスを供給する、
ガスの流れ方向に分散した複数段の三次燃焼用ガス供給口を含む、
請求項3に記載の流動床炉。
【請求項5】
前記三次燃焼用ガス供給部は、吹き込まれた前記三次燃焼用ガスの拡散領域の温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出値に基づいて、空気に対する前記燃焼排ガスの混合量を変化させることにより、前記温度センサの検出値が所定の範囲内となるように前記三次燃焼用ガスの酸素濃度を調整する制御装置とを、含む、
請求項3又は4に記載の流動床炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床炉及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、炉内下部に充填された流動媒体を炉底から吹き出す流動用ガスで流動させてなる流動床を備え、流動床で燃料(燃焼対象物)の低空気比燃焼を行う流動床炉が知られている。ここで、燃料の低空気比燃焼では、流動用ガスの空気比を1未満の低空気比とし、燃料を部分燃焼させることにより、燃料が乾燥及び熱分解されてガス化される。特許文献1,2には、この種の流動床炉が開示されている。
【0003】
特許文献1の流動床炉は、流動床部と、当該流動床部の上部に位置するフリーボード部とから構成されている。この流動床炉では、流動床部の底部には空気比が0.3~0.6の流動用ガスが供給され、流動床の表面近傍に空気比が0.4~0.7のダイオキシン類分解用燃焼用空気が供給され、フリーボード部に二次空気が供給される。そして、この流動床炉では、流動床部での燃料の部分燃焼が行われ、流動床部で生成した生成ガス及びチャーをフリーボード部で燃焼させる。
【0004】
また、特許文献2の流動床炉は、流動床部と、流動床部の上方に位置するフリーボード部と、フリーボード部の上方に位置する後燃焼領域とから構成されている。流動床部の底部には空気比が1以下の一次空気が供給され、フリーボード部は吹き込まれる二次空気によって空気比が1.0~1.5の高酸化雰囲気とされ、後燃焼領域は吹き込まれる三次空気によって空気比が1.5以上とされる。そして、この流動床炉では、流動床部で燃料の部分燃焼が行われ、流動床部で生成した生成ガスをフリーボード部で燃焼させ、フリーボード部の排ガス中の未燃ガス成分を後燃焼領域で燃焼させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-40938号公報
【文献】特開平6-18017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2のように、流動床部で燃料の部分燃焼が行われると、流動床部における燃料の未燃分(未燃チャー)の割合が増大し、未燃チャーやその揮発分がフリーボード部やその後燃焼領域で急激な燃焼反応を生じさせるおそれがある。
【0007】
急激な燃焼反応により流動床部の表層部が高温に晒されると、表層部でアグロメレーションが生じ、流動床の流動特性が悪化するおそれがある。また、急激な燃焼反応により炉内が局所的に高温となると、炉壁などの炉構成要素の局所的な劣化が生じる。このような理由から、フリーボード部やその後燃焼領域がおける急激な燃焼反応を抑えることが望ましい。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、燃料の緩慢な部分燃焼が行われる流動床部と、その上側に設けられたフリーボード部とを備えた流動床炉において、フリーボード部における急激な燃焼反応を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る流動床炉は、
燃料を燃焼させる流動床部と、
前記流動床部の上方に位置するフリーボード部と、
前記フリーボード部に前記燃料を投入する燃料投入口と、
前記燃料の前記フリーボード部における異常燃焼を抑制させるように、前記フリーボード部で生成された燃焼排ガスにより酸素濃度が調整された二次燃焼用ガスを前記フリーボード部へ吹き込む二次燃焼用ガス供給部と、を備え、
前記二次燃焼用ガス供給部が、前記フリーボード部の前記燃料投入口よりもガスの流れの下流側で且つ前記燃料投入口に隣接した位置へ向けて、前記二次燃焼ガスを吹き込むガス供給口を含んだものである。
【0012】
上記構成の流動床炉によれば、フリーボード部へ空気よりも酸素濃度の低い燃焼排ガスを含む二次燃焼用ガスが吹き込まれることによって、フリーボード部での局所的で且つ急激な燃焼反応が抑制される。そのうえ、燃料投入口の直ぐ下流側へ空気よりも酸素濃度の低い燃焼排ガスを含む二次燃焼用ガスが吹き込まれることによって、フリーボード部、とりわけ、燃料投入口及びその周囲での局所的で且つ急激な燃焼反応が抑制される。
【0013】
本発明の別の一態様に係る流動床炉は、
燃料を燃焼させる流動床部と、
前記流動床部の上方に位置するフリーボード部と、
前記フリーボード部に前記燃料を投入する燃料投入口と、
前記燃料の前記フリーボード部における異常燃焼を抑制させるように、前記フリーボード部で生成された燃焼排ガスにより酸素濃度が調整された二次燃焼用ガスを前記フリーボード部へ吹き込む二次燃焼用ガス供給部と、を備え、
前記二次燃焼用ガス供給部は、前記二次燃焼用ガスが前記燃料と混合した状態で前記燃料投入口から供給されるように、前記燃料投入口へ至る燃料供給経路へ前記二次燃焼用ガスを供給する二次燃焼用ガス供給管を含んでいるものである。
【0014】
上記構成の流動床炉によれば、フリーボード部へ空気よりも酸素濃度の低い燃焼排ガスを含む二次燃焼用ガスが吹き込まれることによって、フリーボード部での局所的で且つ急激な燃焼反応が抑制される。そのうえ、燃料投入口から投入された燃料が、燃料投入口及びその周囲での局所的で且つ急激な燃焼反応が抑制される。
【0015】
本発明の別の一態様に係る流動床炉は、
燃料を燃焼させる流動床部と、
前記流動床部の上方に位置するフリーボード部と、
前記フリーボード部に前記燃料を投入する燃料投入口と、
前記燃料の前記フリーボード部における異常燃焼を抑制させるように、前記フリーボード部で生成された燃焼排ガスにより酸素濃度が調整された二次燃焼用ガスを前記フリーボード部へ吹き込む二次燃焼用ガス供給部と、
前記燃焼排ガスによって酸素濃度が調整された、前記二次燃焼用ガスよりも酸素濃度が高い三次燃焼用ガスを、前記フリーボード部の前記二次燃焼用ガス供給部よりもガスの流れの下流側へ吹き込む三次燃焼用ガス供給部とを、備えるものである。
【0016】
上記構成の流動床炉によれば、フリーボード部へ空気よりも酸素濃度の低い燃焼排ガスを含む二次燃焼用ガスが吹き込まれることによって、フリーボード部での局所的で且つ急激な燃焼反応が抑制される。そのうえ、フリーボード部へ空気よりも酸素濃度の低い燃焼排ガスを含む三次燃焼用ガスが吹き込まれることによって、フリーボード部における可燃性ガスの燃焼を緩慢にすることができる。
【0017】
上記流動床炉において、前記三次燃焼用ガス供給部は、燃焼ガスの流れの下流側ほど酸素濃度が高い三次燃焼用ガスを供給する、燃焼ガスの流れ方向に分散した複数段の三次燃焼用ガス供給口を含んでいてよい。
【0018】
これにより、燃焼ガスの未燃分の多い燃焼ガスの流れの下流側ほど酸素濃度の高い三次燃焼用ガスが供給されることによって、フリーボード部における可燃性ガスの燃焼を緩慢にし、且つ、局所的で且つ急激な燃焼反応が抑制することができる。
【0019】
上記流動床炉において、前記三次燃焼用ガス供給部は、吹き込まれた前記三次燃焼用ガスの拡散領域の温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出値に基づいて、空気に対する前記燃焼排ガスの混合量を変化させることにより、前記温度センサの検出値が所定の範囲内となるように前記三次燃焼用ガスの酸素濃度を調整する制御装置とを、含んでいてよい。
【0020】
このように、フリーボード部の温度が所定の範囲内となるように三次燃焼用ガスの酸素濃度が調整されるので、フリーボード部における可燃性ガスの燃焼を緩慢にすることができ、また、フリーボード部における局所的で且つ急激な燃焼反応を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば燃料の緩慢な部分燃焼が行われる流動床部と、その上側に設けられたフリーボード部とを備えた流動床炉において、フリーボード部における急激な燃焼反応を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る流動床炉を含む燃焼システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る流動床炉の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、流動床炉の流動床部の拡大図である。
【
図4】
図4は、変形例1に係る流動床炉の流動床部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔燃焼システム100の構成〕
まず、本発明の一実施形態に係る流動床炉1を含む燃焼システム100の構成について説明する。
図1に示す燃焼システム100は、石炭、バイオマス、RDF、都市ごみ、産業廃棄物などの燃料(燃焼対象物)を燃焼して、その排熱を回収するシステムである。
【0024】
燃焼システム100は、燃料を燃焼する流動床炉1を備えている。流動床炉1の燃焼排ガス系統3には、熱交換装置31、サイクロン式集塵機32、バグフィルタ33、及び誘引ファンである誘引ブロワ34が設けられている。流動床炉1の燃焼排ガスは、熱交換装置31で排熱が回収され、サイクロン式集塵機32及びバグフィルタ33で塵が分離され、その一部が誘引ブロワ34によって図示されない煙突を通じて系外へ排出される。
【0025】
燃焼排ガス系統3のバグフィルタ33の下流側には排ガス再循環系統4が接続されている。排ガス再循環系統4には、ガス再循環ブロワ40が設けられており、このガス再循環ブロワ40によって燃焼排ガス系統3の燃焼排ガスの一部が、流動床炉1へ戻される。排ガス再循環系統4によって流動床炉1へ戻された燃焼排ガスは、流動用ガス(一次燃焼ガス)、二次燃焼用ガス、及び三次燃焼用ガスとして利用される。
【0026】
〔流動床炉1の構成〕
次に、本発明の一実施形態に係る流動床炉1の構成について説明する。
図2に示す流動床炉1は、炉下部の流動床部11及びその上方のフリーボード部12からなる燃焼室が設けられた炉本体10と、流動床炉1の運転を制御する運転制御装置15と備えている。フリーボード部12の下部には、燃焼室の余の部分と比較してガス通路断面積が絞られた絞り部13が存在する。フリーボード部12では、燃焼ガスが下から上に向かって流れ、フリーボード部12の上部に接続された煙道には、熱交換装置31を構成する伝熱管が設置されている。
【0027】
図3は、流動床部11の拡大図である。
図2及び
図3に示すように、流動床部11には珪砂などの流動媒体が充填された流動層51と、流動層51へその底部から流動用ガスを供給する流動用ガス供給装置52と、流動層51を3つのセル61,62,63に仕切る仕切壁41,42とによって、内部循環流動床が形成されている。
【0028】
第1仕切壁41は、流動床部11を含む炉本体10の下部分を、燃焼領域53と熱回収領域54とに仕切っている。第2仕切壁42は、熱回収領域54において、第1仕切壁41に近接し、且つ、第1仕切壁41と平行に設けられている。これらの仕切壁41,42によって、流動床部11は、炉本体10の第1側壁10aと第1仕切壁41との間に形成された「燃焼セル61」、第1仕切壁41と第2仕切壁42との間に形成された「循環セル62」、及び、第2仕切壁42と炉本体10の第2側壁10bとの間に形成された「収熱セル63」の3つのセルに仕切られている。収熱セル63には、過熱器管又は蒸発器管などの伝熱管64が設けられている。この伝熱管64を通過する熱媒体により熱回収が行われる。
【0029】
燃焼領域53の上方には、鉛直方向に直線状に延びる燃焼室が形成されている。一方、熱回収領域54の上方には、熱回収領域54の上部を塞ぐ天井壁43が設けられている。第1仕切壁41の上端は天井壁43に近接しており、第1仕切壁41の上端と天井壁43との間に未燃ガス供給口68となる上部連通口が形成されている。第1仕切壁41の下端は第2仕切壁42の下端よりも高く、これにより、第1仕切壁41の下部に流動媒体が流通する下部連通口55が形成されている。また、第2仕切壁42の上部及び下部には、循環セル62と収熱セル63とを連通し、流動媒体が流通する連通口56,57が形成されている。
【0030】
流動用ガス供給装置52は、燃焼セル61、循環セル62、及び収熱セル63の各々に独立して流量が調整された流動用ガスを供給する。燃焼セル61、循環セル62、及び収熱セル63の各セルの底部には、側方へ向けて開口した多数の吹出口を有する一又は複数の散気管80が設けられている。各散気管80は、第1仕切壁41及び第2仕切壁42の下端よりも下方に配置されている。但し、流動用ガス供給装置52は、散気管80の代わりに、各セル61,62,63の底部に配置された風箱と、風箱の上部を塞ぐように設けられたガス分散版とを備えていてもよい(いずれも図示略)。
【0031】
散気管80はセル61,62,63ごとにヘッダで連結されており、各ヘッダにはダンパ(又はバルブ)等の流量調整手段81a,82a,83a及び流量計81b,82b,83bを備えた流動用ガス供給配管81,82,83が接続されている。燃焼セル61の底部に配置される散気管80と接続される流動用ガス供給配管81、及び、循環セル62の底部に配置される散気管80と接続される流動用ガス供給配管82へは、押込ブロワ79によって空気が供給される。また、収熱セル63の底部に配置される散気管80と接続される流動用ガス供給配管83には排ガス再循環系統4が接続されている。
【0032】
運転制御装置15は、流動層51において燃焼セル61及び収熱セル63の温度を検出する温度センサ(図示略)及び流量計81b,82b,83bなどの検出値に基づいて、各流動用ガス供給配管81,82,83の流動用ガスの流量を調整するように、流量調整手段81a,82a,83aを動作させる。燃焼セル61及び循環セル62の底部からは、流動用ガスとして空気が吹き出し、収熱セル63の底部からは、流動用ガスとして燃焼排ガスが吹き出す。
【0033】
ここで、燃焼セル61の流動用ガスの空塔速度は収熱セル63の流動用ガスの空塔速度よりも大きく、且つ、循環セル62の流動用ガスの空塔速度は、燃焼セル61の流動用ガスの空塔速度及び収熱セル63の流動用ガスの空塔速度よりも大きくなるように、流動用ガスの流量が調整される。これにより、燃焼セル61の流動媒体は第1仕切壁41の下部連通口55を通って循環セル62へ移動し、循環セル62の流動媒体は第2仕切壁42の上部連通口56を通って収熱セル63へ移動し、収熱セル63の流動媒体は第2仕切壁42の下部連通口57を通って燃焼セル61及び循環セル62へ循環するような、流動媒体の流れが生じる。このような流動媒体の循環によって、燃焼セル61で高温となった流動媒体の持つ熱エネルギーが、収熱セル63において外部へ取り出され、温度が低下した流動媒体が燃焼セル61へ戻されることによって、燃焼セル61の流動媒体の温度上昇が抑制される。
【0034】
フリーボード部12において、運転時における流動床部11の表層部の直ぐ上方であって、第1側壁10aには、燃料投入口65が開口している。燃料投入口65は、絞り部13よりも燃焼ガスの流れの上流側に位置する。この燃料投入口65へ、図示されない燃料供給装置によって燃料が供給される。燃料投入口65から炉内へ投入された燃料は、流動床部11の燃焼セル61の上部に落下する。
【0035】
フリーボード部12において、燃料投入口65よりも燃焼ガスの流れの下流側であって絞り部13のあたりの炉壁には、未燃ガス供給口68が開口している。未燃ガス供給口68からは、熱回収領域54の流動層51に配置された散気管80から流動層51内へ吹き出されて、流動層51を通過したあとの空気及び燃焼排ガスの混合気が、二次燃焼用ガスとして吹き出す。
【0036】
フリーボード部12において、未燃ガス供給口68よりも燃焼ガスの流れの下流側の炉壁には複数段の三次燃焼用ガス供給口69が開口している。複数段の三次燃焼用ガス供給口69は、複数の高さ位置に分散して、換言すれば、燃焼ガスの流れ方向に分散して設けられている。各三次燃焼用ガス供給口69への空気の供給路と燃焼排ガスの供給路とには、ダンパ(又はバルブ)等の流量調整手段88,89が設けられている。また、それらの三次燃焼用ガス供給口69から吹き出した三次空気の拡散領域に含まれる炉壁には、温度センサ70が設けられている。
【0037】
〔流動床炉1の運転方法〕
ここで、上記構成の流動床炉1の運転方法について説明する。流動床炉1では、流動床部11において低空気比燃焼が行われる。より詳細には、流動床部11とフリーボード部12との総空気比を1よりも大きい値としながら、流動床部11の燃焼セル61の空気比(即ち、一次空気比)、及び燃料投入口65の周囲の空気比(二次空気比)がいずれも1未満の低空気比となるように、燃焼セル61への流動化空気及び二次燃焼用ガスの供給量、及び/又は、その空気含有量が調整される。望ましくは、一次空気比は、二次空気比よりも低い。例えば、流動床部11とフリーボード部12との総空気比を1.2とする場合に、一次空気比を0.4とし、二次空気比を0.8としてよい。
【0038】
酸素濃度の低い還元雰囲気の流動床部11では、燃料の緩慢な乾燥と熱分解によって、可燃性熱分解ガスと熱分解残渣が生じる。熱分解残渣や燃料の燃え残りは、燃焼セル61の底部であって、第1側壁10aと第1仕切壁41との間の中間位置に設けられた流動媒体及び不燃物の抜出口72から炉外へ排出される。流動床部11で生じた熱分解ガスは二次燃焼用ガスで燃焼し、その燃焼ガス中の未燃分は、三次燃焼用ガスで完全燃焼し、その燃焼排ガスが燃焼排ガス系統3へ排出される。
【0039】
上記構成に係る流動床炉1の燃焼セル61では、燃料を低空気比燃焼させることから、空気比が1以上の場合と比較して、燃焼セル61における燃料の未燃分(未燃チャー)の割合が大きい。前述の例のように一次空気比を0.4とする場合には、従来の空気比が0.8~0.9程度の場合と比較して、燃焼セル61における未燃チャーの割合はとりわけ大きくなる。
【0040】
燃焼セル61の未燃チャーは、流動媒体の循環によって、燃焼セル61から収熱セル63へ移動する可能性がある。しかしながら、収熱セル63で燃焼反応が生じることは望ましくない。
【0041】
そこで、上記流動床炉1では、空気よりも酸素濃度の低い燃焼排ガスを収熱セル63の流動用ガスとして用いて、収熱セル63を燃焼セル61や循環セル62と比較して更に低空気比とすることにより、収熱セル63での未燃チャーの燃焼反応を抑制している。
【0042】
また、フリーボード部12において、未燃チャーを含む飛灰や未燃チャーの揮発分の割合が増えると、フリーボード部12で急激な燃焼反応が生じる可能性がある。流動床部11の流動層51に近いフリーボード部12で急激な燃焼反応が生じると、流動床部11の表層部が高温に晒されて、表層部でアグロメレーションが生じ、流動床部11の流動特性が悪化するおそれがある。また、フリーボード部12で急激な燃焼反応が生じると、爆発的な空気の膨張が生じて炉運転の安定性が損なわれたり、炉本体10の劣化が進んだりするおそれがある。
【0043】
そこで、上記流動床炉1では、フリーボード部12で生成された燃焼排ガスにより酸素濃度が調整された二次燃焼用ガスをフリーボード部12へ吹き込む二次燃焼用ガス供給部86を備え、フリーボード部12の上流部の空気比を1未満に抑えている。この二次燃焼用ガス供給部86によって、フリーボード部12へ空気よりも酸素濃度の低い燃焼排ガスを含む二次燃焼用ガスが吹き込まれ、フリーボード部12での局所的で且つ急激な燃焼反応やが異常燃焼が抑制される。
【0044】
フリーボード部12のなかでも、燃料投入口65の近傍は、燃料投入口65から炉内へ投入された燃料から舞い上がった微粉やその揮発分によって、特にガス中の未燃分が多い。そこで、二次燃焼用ガス供給部86は、フリーボード部12の燃料投入口65よりも燃焼ガスの流れの下流側で且つ燃料投入口65に隣接した位置へ向けて、二次燃焼用ガスを吹き込む未燃ガス供給口68を含む。なお、「燃料投入口65に隣接した位置」とは、燃料投入口65の周囲であって、燃料投入口65から投入された燃料から舞い上がった微粉やその揮発分によって特にガス中の未燃分の多い部分である。これにより、燃料投入口65の直ぐ下流側へ空気よりも酸素濃度の低い燃焼排ガスを含む二次燃焼用ガスが吹き込まれ、フリーボード部12、とりわけ、燃料投入口65及びその周囲での局所的で且つ急激な燃焼反応が抑制される。
【0045】
本実施形態においては、未燃ガス供給口68から、燃料投入口65の燃焼ガスの流れの直ぐ下流側の絞り部13に向けて二次燃焼用ガスが吹き込まれる。未燃ガス供給口68からフリーボード部12へ吹き込まれる二次燃焼用ガスは、収熱セル63を通過することによって更に酸素濃度が低下した燃焼排ガスを多く含むことから、より効果的に燃料投入口65及びその周囲の燃焼反応が抑えられることが期待される。
【0046】
更に、上記流動床炉1では、燃焼排ガスによって酸素濃度が調整された三次燃焼用ガスを、フリーボード部12の未燃ガス供給口68よりも燃焼ガスの流れの下流側へ吹き込む三次燃焼用ガス供給部87を備えている。このように、フリーボード部12の未燃ガス供給口68よりも燃焼ガスの流れの下流側へ空気よりも酸素濃度の低い燃焼排ガスを含む三次燃焼用ガスが吹き込まれることによって、フリーボード部12における可燃性ガスの燃焼が緩慢となり、且つ、局所的で且つ急激な燃焼反応が抑制することができる。なお、三次燃焼用ガスは、二次燃焼用ガスよりも酸素濃度が高い。
【0047】
三次燃焼用ガス供給部87は、燃焼ガスの流れ方向に分散した複数段の三次燃焼用ガス供給口69、吹き込まれた三次燃焼用ガスの拡散領域の温度を検出する温度センサ70、及び、温度センサ70の検出値に基づいて三次燃焼用ガスの酸素濃度を調整する運転制御装置15を含む。各三次燃焼用ガス供給口69から吹き出した三次燃焼用ガスの拡散領域の温度は温度センサ70で検出され、運転制御装置15は、検出された温度が所定の範囲内に収まるように、各三次燃焼用ガス供給口69から吹き込む三次燃焼用ガスの酸素濃度を調整する。
【0048】
具体的には、運転制御装置15は、流量調整手段88,89の開度を変化させることにより空気と燃焼排ガスとの混合割合を変化させて、三次燃焼用ガスの酸素濃度を調整する。運転制御装置15は、或る箇所の温度センサ70で検出された温度が所定の範囲を超える場合は、三次燃焼用ガスの流量を所定流量に維持しながら、その箇所へ供給される三次燃焼用ガスの酸素濃度が減るように、また、検出された温度が所定の範囲を下回る場合は、その箇所へ供給される三次燃焼用ガスの酸素濃度が増えるように、流量調整手段88,89の開度を調整する。
【0049】
燃焼ガスの流れ方向に分散した複数段の三次燃焼用ガス供給口69からは、燃焼ガスの流れの下流側ほど酸素濃度が高い三次燃焼用ガスが供給される。つまり、燃焼ガスの未燃分の多い燃焼ガスの流れの下流側ほど酸素濃度の高い三次燃焼用ガスが供給される。これにより、フリーボード部12における可燃性ガスの燃焼が緩慢となり、且つ、局所的で且つ急激な燃焼反応が抑制することができる。
【0050】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の精神を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。
【0051】
例えば、上記実施形態に係る流動床炉1において、二次燃焼用ガスは未燃ガス供給口68からフリーボード部12へ吹き込まれるが、これに加えて/代えて、二次燃焼用ガスは燃料と混合させた状態で燃料投入口65から供給されてもよい。この場合、
図4に示すように、二次燃焼用ガス供給部86は、二次燃焼用ガスが燃料と混合した状態で燃料投入口65から供給されるように、燃料投入口65へ至る燃料供給経路66へ二次燃焼用ガスを供給する燃料シュートパージガス供給管67を含む。これにより、燃料は二次燃焼用ガスに伴ってフリーボード部12へ投入されるので、燃料投入口65及びその周囲での局所的で且つ急激な燃焼反応を抑制することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 :流動床炉
3 :燃焼排ガス系統
4 :排ガス再循環系統
10 :炉本体
10a :第1側壁
10b :第2側壁
11 :流動床部
12 :フリーボード部
13 :絞り部
15 :運転制御装置
31 :熱交換装置
32 :サイクロン式集塵機
33 :バグフィルタ
34 :誘引ブロワ
40 :ガス再循環ブロワ
41 :第1仕切壁
42 :第2仕切壁
43 :天井壁
51 :流動層
52 :流動用ガス供給装置
53 :燃焼領域
54 :熱回収領域
55,56,57 :連通口
61 :燃焼セル
62 :循環セル
63 :収熱セル
64 :伝熱管
65 :燃料投入口
66 :燃料供給経路
67 :燃料シュートパージガス供給管
68 :未燃ガス供給口
69 :三次燃焼用ガス供給口
70 :温度センサ
72 :抜出口
79 :押込ブロワ
80 :散気管
81,82,83 :流動用ガス供給配管
81a,82a,83a :流量調整手段
81b,82b,83b :流量計
86 :二次燃焼用ガス供給部
87 :三次燃焼用ガス供給部
88,89 :流量調整手段
100 :燃焼システム