(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】流路ユニット、圧力検出装置、および流路ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 19/00 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
G01L19/00 A
(21)【出願番号】P 2018231082
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591257111
【氏名又は名称】サーパス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今井 弘
(72)【発明者】
【氏名】阿保 一夫
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-014571(JP,A)
【文献】特開2017-009467(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104158(WO,A1)
【文献】特開2013-040897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0314058(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力検出部に伝達される圧力を検出する圧力検出ユニットに着脱可能に取り付けられる流路ユニットであって、
流入口から流入する液体を流出口へ導くとともに可撓性材料により形成される可撓性流路を有する可撓性流路部と、
前記可撓性流路部の外周面を取り囲む圧力伝達空間を形成する本体部と、
前記本体部に取り付けられ、一方の面が前記圧力伝達空間に面するとともに他方の面が前記圧力検出部と接触可能な薄膜状の圧力伝達部と、
前記圧力伝達空間に充填された非圧縮性の圧力伝達媒体と、を備え、
前記可撓性流路は、所定内径を有するとともに軸線に沿って直線状に延びる流路であることを特徴とする流路ユニット。
【請求項2】
前記流入口および前記流出口のいずれか一方と連通する第1流路を有する第1流路部と、
前記流入口および前記流出口のいずれか他方と連通する第2流路を有する第2流路部と、
前記第1流路部と前記可撓性流路部の一端を連結するとともに前記第1流路と前記可撓性流路を連通させる第1連結流路を有する第1連結部と、
前記第2流路部と前記可撓性流路部の他端を連結するとともに前記第2流路と前記可撓性流路を連通させる第2連結流路を有する第2連結部と、を備え、
前記第1流路、前記第2流路、前記第1連結流路、および前記第2連結流路は、それぞれ前記所定内径を有するとともに前記軸線に沿って直線状に延びる流路であることを特徴とする請求項1に記載の流路ユニット。
【請求項3】
前記第1流路部と前記本体部とが一体に形成されており、
前記第2流路部と前記第2連結部とが一体に形成されており、
前記本体部には、前記第1流路に沿って延びるとともに前記第1流路側に底部を有する挿入穴が形成されており、
前記第1連結部は、前記挿入穴の前記底部に取り付けられており、
前記第2連結部は、前記挿入穴の入口部に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の流路ユニット。
【請求項4】
前記本体部には、外部空間と前記圧力伝達空間を連通させるとともに前記圧力伝達媒体を前記圧力伝達空間へ充填するための開口部が形成されており、
前記開口部は、前記圧力伝達空間に前記圧力伝達媒体が充填された状態で封止部材により封止されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の流路ユニット。
【請求項5】
前記圧力伝達空間には、脱泡処理が行われた前記圧力伝達媒体が充填されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の流路ユニット。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流路ユニットと、
前記圧力伝達部から前記圧力検出部に伝達される圧力を検出する圧力検出ユニットと、
前記流路ユニットを前記圧力検出ユニットに着脱可能に取り付ける取付機構と、を備えることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項7】
圧力検出部に伝達される圧力を検出する圧力検出ユニットに着脱可能に取り付けられる流路ユニットの製造方法であって、
前記流路ユニットは、
液体が流入する流入口および液体が流出する流出口のいずれか一方と連通する第1流路を有する第1流路部と、
前記流入口および前記流出口のいずれか他方と連通する第2流路を有する第2流路部と、
可撓性材料により形成される第3流路を有する可撓性流路部と、
前記第1流路部と前記可撓性流路部の一端を連結するとともに前記第1流路と前記第3流路を連通させる第1連結流路を有する第1連結部と、
前記第2流路部と前記可撓性流路部の他端を連結するとともに前記第2流路と前記第3流路を連通させる第2連結流路を有する第2連結部と、
前記可撓性流路部の外周面を取り囲む圧力伝達空間を形成する本体部と、を備え、
前記第1流路部と前記本体部とが一体に形成されており、
前記第2流路部と前記第2連結部とが一体に形成されており、
前記本体部には、前記第1流路に沿って延びるとともに前記第1流路側に底部を有する挿入穴が形成されており、
前記可撓性流路部の一端に前記第1連結部を取り付けるとともに前記可撓性流路部の他端に前記第2連結部を取り付けて組立体とする工程と、
前記組立体を前記挿入穴へ挿入し、前記第1連結部を前記底部に取り付け、前記第2連結部を前記挿入穴の入口部へ取り付ける工程と、
前記本体部に、一方の面が前記圧力伝達空間に面するとともに他方の面が前記圧力検出部と接触可能な薄膜状の圧力伝達部を取り付ける工程と、
前記圧力伝達空間に前記本体部に形成された開口部から非圧縮性の圧力伝達媒体を充填する工程と、
前記圧力伝達媒体が充填された前記圧力伝達空間を減圧して前記圧力伝達媒体を脱泡処理する工程と、
前記圧力伝達媒体が前記脱泡処理された後に前記開口部を封止して前記圧力伝達空間を閉空間とする工程と、を備えることを特徴とする流路ユニットの製造方法。
【請求項8】
前記圧力伝達媒体は、所定温度以上とすることによりゲル化する媒体からなり、
前記圧力伝達媒体が前記脱泡処理された後に前記圧力伝達媒体を前記所定温度以上に加熱する工程を備えることを特徴とする請求項7に記載の流路ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路ユニット、圧力検出装置、および流路ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を流通させる流路の一部に圧力伝達面が形成された流路ユニットと、圧力検出面に伝達される圧力を検出する圧力検出ユニットと、これらを着脱可能に取り付ける取付機構とを備える圧力検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示される圧力検出装置は、流路ユニットが圧力検出ユニットに対して着脱可能となっているため、例えば、取り扱う液体が血液や透析液等である場合に、使用済みの流路ユニットを新たな流路ユニットに交換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される流路ユニットは、流入口から流出口へ向けて直線状に延びる流路から分岐する導入流路を介して、流路を流通する液体を流体室へ導く。流路ユニットは、流体室に設けられた圧力伝達面から圧力検出ユニットの圧力検出面へ液体の圧力を伝達する。
しかしながら、特許文献1に開示される流路ユニットは、直線状の流路から導入流路を分岐させて流体室に液体を導くため、液体が流通せずに滞留する空間(いわゆるデッドボリューム)を有する。また、直線状の流路から導入流路へ液体を導く際に、液体の流通方向が変わるため、液体の流れによどみが生じてしまう。
【0005】
特許文献1の流路ユニットは、液体が滞留する空間を有するため、この空間に滞留する液体に雑菌が発生する等の不具合が生じる可能性がある。例えば、液体が血液である場合には、空間に滞留する血液の一部が凝固し、流路ユニットから外部へ流出してしまう可能性がある。
また、特許文献1の流路ユニットは、直線状の流路から導入流路へ導かれる液体の流れによどみが生じるため、液体の一部がよどみに滞留し、雑菌の発生や液体の凝固等の不具合が発生する可能性がある。
さらに、特許文献1の流路ユニットは、流路ユニットに液体を流通させる際に、液体が滞留する空間を満たす必要がある。そのため、流路ユニットを交換するたびに高価な液体(培養液、試薬等)を廃棄する無駄が生じてしまう。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、雑菌の発生や液体の凝固等の不具合を発生させることなく、流路を流通する液体の圧力を圧力検出ユニットに確実に伝達することが可能な流路ユニット、圧力検出装置、および流路ユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明の一態様にかかる流路ユニットは、圧力検出部に伝達される圧力を検出する圧力検出ユニットに着脱可能に取り付けられ、流入口から流入する液体を流出口へ導くとともに可撓性材料により形成される可撓性流路を有する可撓性流路部と、前記可撓性流路部の外周面を取り囲む圧力伝達空間を形成する本体部と、前記本体部に取り付けられ、一方の面が前記圧力伝達空間に面するとともに他方の面が前記圧力検出部と接触可能な薄膜状の圧力伝達部と、前記圧力伝達空間に充填された非圧縮性の圧力伝達媒体と、を備え、前記可撓性流路は、所定内径を有するとともに軸線に沿って直線状に延びる流路であることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様にかかる流路ユニットによれば、流入口から流入した液体を流出口へ導く可撓性流路が、所定内径を有するとともに直線状に延びる流路となっている。そのため、可撓性流路には、液体が流通せずに滞留する空間が存在せず、雑菌の発生や液体の凝固等の不具合が発生しない。
【0009】
また、本発明の一態様にかかる流路ユニットによれば、可撓性流路部へ流入した液体の圧力は、可撓性流路の内周面に伝達される。可撓性流路部の外周面を取り囲むように圧力伝達空間が形成され、この圧力伝達空間に非圧縮性の圧力伝達媒体が充填されている。圧力伝達媒体が非圧縮性であるため、可撓性材料により形成される可撓性流路が液体の圧力により微小に変形した場合でも、圧力伝達媒体の容積は変化しない。そのため、可撓性流路の変形に伴って圧力伝達部が変形する。流路ユニットが圧力検出ユニットに取り付けられた状態では、圧力伝達部が圧力検出部と接触するため、圧力伝達部の変形に応じた圧力が圧力検出部に伝達される。このように、本発明の一態様にかかる流路ユニットによれば、流路ユニットを流通する液体の圧力を圧力検出ユニットに確実に伝達することができる。
【0010】
本発明の一態様にかかる流路ユニットにおいて、好ましくは、前記流入口および前記流出口のいずれか一方と連通する第1流路を有する第1流路部と、前記流入口および前記流出口のいずれか他方と連通する第2流路を有する第2流路部と、前記第1流路部と前記可撓性流路部の一端を連結するとともに前記第1流路と前記可撓性流路を連通させる第1連結流路を有する第1連結部と、前記第2流路部と前記可撓性流路部の他端を連結するとともに前記第2流路と前記可撓性流路を連通させる第2連結流路を有する第2連結部と、を備え、前記第1流路、前記第2流路、前記第1連結流路、および前記第2連結流路は、それぞれ前記所定内径を有するとともに前記軸線に沿って直線状に延びる流路であることを特徴とする。
【0011】
本構成の流路ユニットによれば、第1流路部と可撓性流路部の一端を第1連結部により連結することにより、第1流路と可撓性流路が第1連結流路を介して連通した状態となる。また、第2流路部と可撓性流路部の他端を第2連結部により連結することにより、第2流路と可撓性流路が第2連結流路を介して連通した状態となる。第1流路、第2流路、第1連結流路、および第2連結流路が、可撓性流路と同様に、所定内径を有するとともに直線状に延びる流路となっている。そのため、流入口から流出口へ至るまで、液体が流通せずに滞留する空間が存在せず、雑菌の発生や液体の凝固等の不具合が発生しない。
【0012】
本発明の一態様にかかる流路ユニットにおいて、好ましくは、前記第1流路部と前記本体部とが一体に形成されており、前記第2流路部と前記第2連結部とが一体に形成されており、前記本体部には、前記第1流路に沿って延びるとともに前記第1流路側に底部を有する挿入穴が形成されており、前記第1連結部は、前記挿入穴の前記底部に取り付けられており、前記第2連結部は、前記挿入穴の入口部に取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
本構成の流路ユニットによれば、第2流路部と第2連結部とが一体に形成される一方、第1流路部と第1連結部とは一体に形成されていない。そのため、第1連結部に可撓性流路部の一端を取り付け、第2連結部に可撓性流路の他端を取り付けることにより、第2流路部、可撓性流路部、第1連結部、第2連結部を、第1流路部および本体部とは独立した組立体とすることができる。そして、組立体を本体部に形成された挿入穴へ挿入し、第1連結部を挿入穴の底部へ取り付けることにより、第1流路部と可撓性流路部が第1連結部により連結された状態となる。第2連結部を挿入穴の入口部へ取り付けることにより、挿入穴が閉塞されて圧力伝達空間が閉空間となる。このように、本構成の流路ユニットによれば、第1流路、第2流路、および第3流路が連通し、かつ可撓性流路部の外周面に圧力伝達空間が形成された状態を、比較的容簡易な組立作業により実現することができる。
【0014】
本発明の一態様にかかる流路ユニットにおいて、好ましくは、前記本体部には、外部空間と前記圧力伝達空間を連通させるとともに前記圧力伝達媒体を前記圧力伝達空間へ充填するための開口部が形成されており、前記開口部は、前記圧力伝達空間に前記圧力伝達媒体が充填された状態で封止部材により封止されていることを特徴とする。
本構成の流路ユニットによれば、本体部に形成された開口部から圧力伝達媒体を圧力伝達空間へ充填することができる。また、圧力伝達空間へ圧力伝達媒体を充填した後は、開口部を封止部材により封止することにより、圧力伝達空間を外部空間から隔離された閉空間とすることができる。
【0015】
本発明の一態様にかかる流路ユニットにおいて、好ましくは、前記圧力伝達空間には、脱泡処理が行われた前記圧力伝達媒体が充填されていることを特徴とする。
本構成の流路ユニットによれば、圧力伝達空間に充填される圧力伝達媒体は、脱泡処理が行われている。圧力伝達媒体が気泡を含まないため、可撓性流路部が第3流路を流通する液体の圧力により変形する場合に変形による変位が圧力伝達媒体に吸収されずに圧力検出部に確実に伝達される。
【0016】
本発明の一態様にかかる圧力検出装置は、上記のいずれかに記載の流路ユニットと、前記圧力伝達部から前記圧力検出部に伝達される圧力を検出する圧力検出ユニットと、前記流路ユニットを前記圧力検出ユニットに着脱可能に取り付ける取付機構と、を備えることを特徴とする。
本発明の一態様にかかる圧力検出装置によれば、雑菌の発生や液体の凝固等の不具合を発生させることなく、流路を流通する液体の圧力を圧力検出ユニットに確実に伝達することが可能な流路ユニットを備える圧力検出装置を提供することができる。
【0017】
本発明の一態様にかかる流路ユニットの製造方法は、圧力検出部に伝達される圧力を検出する圧力検出ユニットに着脱可能に取り付けられる流路ユニットの製造方法であって、前記流路ユニットは、液体が流入する流入口および液体が流出する流出口のいずれか一方と連通する第1流路を有する第1流路部と、前記流入口および前記流出口のいずれか他方と連通する第2流路を有する第2流路部と、可撓性材料により形成される第3流路を有する可撓性流路部と、前記第1流路部と前記可撓性流路部の一端を連結するとともに前記第1流路と前記第3流路を連通させる第1連結流路を有する第1連結部と、前記第2流路部と前記可撓性流路部の他端を連結するとともに前記第2流路と前記第3流路を連通させる第2連結流路を有する第2連結部と、前記可撓性流路部の外周面を取り囲む圧力伝達空間を形成する本体部と、を備え、前記第1流路部と前記本体部とが一体に形成されており、前記第2流路部と前記第2連結部とが一体に形成されており、前記本体部には、前記第1流路に沿って延びるとともに前記第1流路側に底部を有する挿入穴が形成されており、前記可撓性流路部の一端に前記第1連結部を取り付けるとともに前記可撓性流路部の他端に前記第2連結部を取り付けて組立体とする工程と、前記組立体を前記挿入穴へ挿入し、前記第1連結部を前記底部に取り付け、前記第2連結部を前記挿入穴の入口部へ取り付ける工程と、前記本体部に、一方の面が前記圧力伝達空間に面するとともに他方の面が前記圧力検出部と接触可能な薄膜状の圧力伝達部を取り付ける工程と、前記圧力伝達空間に前記本体部に形成された開口部から非圧縮性の圧力伝達媒体を充填する工程と、前記圧力伝達媒体が充填された前記圧力伝達空間を減圧して前記圧力伝達媒体を脱泡処理する工程と、前記圧力伝達媒体が前記脱泡処理された後に前記開口部を封止して前記圧力伝達空間を閉空間とする工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様にかかる流路ユニットの製造方法によれば、可撓性流路部と第1連結部と第2連結部とを組立体とした後に本体部へ挿入することにより、可撓性流路部の外周面を取り囲む圧力伝達空間を容易に形成することができる。また、圧力伝達媒体が充填された圧力伝達空間を減圧して圧力伝達媒体を脱泡処理することにより、第3流路を流通する液体の圧力を損失させることなく確実に圧力検出部に伝達することができる。
【0019】
本発明の一態様にかかる流路ユニットの製造方法において、好ましくは、前記圧力伝達媒体は、混合した状態で所定温度以上とすることによりゲル化する媒体からなり、前記圧力伝達媒体が前記脱泡処理された後に前記圧力伝達媒体を前記所定温度以上に加熱する工程を備えることを特徴とする。
本構成の流路ユニットの製造方法によれば、ゲル化前の粘度が低い液体状の圧力伝達媒体を本体部に形成された開口部から圧力伝達空間へ容易に充填することができる。また、圧力伝達空間に充填された圧力伝達媒体を加熱してゲル化させることにより、圧力伝達媒体の圧力伝達空間からの流出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、雑菌の発生や液体の凝固等の不具合を発生させることなく、流路を流通する液体の圧力を圧力検出ユニットに確実に伝達することが可能な流路ユニット、圧力検出装置、および流路ユニットの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】圧力検出装置の一実施形態を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す圧力検出装置から流路ユニットを取り外した状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す圧力検出ユニットから流路ユニットを取り外した状態を示すI-I矢視図である。
【
図4】
図1に示す圧力検出ユニットに流路ユニットを取り付けた状態を示すII-II矢視断面図である。
【
図5】
図1に示す流路ユニットのI-I矢視断面図である。
【
図6】
図5に示す流路ユニットのIII-III矢視断面図である。
【
図9】
図1に示す圧力検出ユニットに流路ユニットを取り付けた状態を示すI-I矢視図である。
【
図10】流路ユニットの製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】可撓性流路部と第1連結部と第2連結部を組み立てた組立体を示す図である。
【
図12】本体部の挿入穴に組立体を挿入した状態を示す図である。
【
図13】圧力伝達空間に圧力伝達媒体を充填した状態を示す図である。
【
図14】流路ユニットの第1変形例を示す図である。
【
図15】流路ユニットの第2変形例を示す図である。
【
図16】流路ユニットの第3変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されている。本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る圧力検出装置100を図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、本実施形態の圧力検出装置100は、圧力検出ユニット10と、流入口20Aから流出口20Bへ向けた直線状の流通方向に沿って液体を流通させる流路が内部に形成された流路ユニット20と、流路ユニット20を圧力検出ユニット10に着脱可能に取り付けるナット30(取付機構)とを備える。
【0024】
本実施形態の圧力検出装置100において、流路ユニット20は、ナット30によって圧力検出ユニット10に取り付けられる。圧力検出装置100は、流路ユニット20がナット30によって圧力検出ユニット10に取り付けられて一体化した状態で、設置面(図示略)に取り付けられている。
【0025】
図3および
図4に示すように、流路ユニット20の流入口20Aには液体を流入口20Aへ流入させる流入側配管(図示略)が取り付けられ、流路ユニット20の流出口20Bには流出口20Bから流出する液体を流通させる流出側配管(図示略)が取り付けられる。流入口20Aから流出口20Bへ向けた流路を流通する液体の圧力は、圧力検出ユニット10によって検出される。ここで、液体とは、例えば、血液、細胞の培養液、液体試薬、透析液等の医療、ライフサイエンスの用途で扱われるものである。また、液体は、半導体製造用に用いられる薬液、洗浄液等であってもよい。
【0026】
図3に示すように、圧力検出ユニット10は、設置面(図示略)に取り付けられる本体部13を備える。
図2に示すように、圧力検出ユニット10の本体部13には、内部に配置される圧力センサ12と外部の制御装置(図示略)とを電気的に接続するケーブル19が、ケーブル取付ナット19aを介して取り付けられている。
【0027】
次に、
図1から
図3を参照して圧力検出ユニット10について詳細に説明する。
図1から
図3に示す圧力検出ユニット10は、ダイアフラム(圧力検出部)12aに伝達される圧力を検出する装置である。
図1から
図3に示すように、圧力検出ユニット10は、本体部13と、本体部13の内部に配置される圧力センサ12と、圧力センサ12を本体部13に保持するセンサ保持部14と、圧力センサ12とケーブル19との間で電源および電気信号を伝達するためのセンサ基板(設定部)15と、流路ユニット20の流路を所定の取付位置に案内する一対のガイド部材(案内部)16と、圧力センサ12のゼロ点調整を行うためのゼロ点調整スイッチ(図示略)と、備える。
【0028】
図3に示すように、圧力センサ12は、耐腐食性のある材料(例えば、サファイア)により薄膜状に形成されるダイアフラム12a(圧力検出面)と、ダイアフラム12aに貼り付けられる歪抵抗(図示略)と、ダイアフラム12aを保持するベース部12bとを備える。
圧力センサ12は、伝達される圧力に応じてダイアフラム12aとともに変形する歪抵抗の変化に応じた圧力信号を出力する歪式のセンサである。ベース部12bにはダイアフラム12aと連通する貫通穴(図示略)が形成されており、ダイアフラム12aの一方の面が大気圧に維持される。そのため、圧力センサ12は、大気圧を基準にしたゲージ圧を検出するセンサとなっている。
【0029】
センサ保持部14は、軸線Y1(第1軸線)回りに円筒状に形成される部材である。センサ保持部14は、上端の内径が圧力センサ12の外径よりも小さいため、圧力センサ12が上方へ抜けないように保持することができる。
図3に示すように、圧力検出ユニット10の圧力センサ12およびセンサ保持部14は、本体部13から軸線Y1に沿って上方に突出し、ダイアフラム12aが頂部に配置される突部11を形成する。
【0030】
センサ基板15は、圧力センサ12が出力する圧力信号を増幅する増幅回路(図示略)と、増幅回路により増幅された圧力信号をケーブル19の圧力信号線(図示略)に伝達するインターフェース回路と、ケーブル19を介して外部から供給される電源電圧を圧力センサ12へ伝達する電源回路(図示略)と、ゼロ点調整スイッチが押下された場合にゼロ点調整を行うゼロ点調整回路(図示略)等を備える。ゼロ点調整回路は、ゼロ点調整スイッチが押下された場合に、その時点で圧力センサ12が出力する圧力信号を基準値(例えば、ゼロ)として設定するように調整する回路である。
【0031】
図2は、
図1に示す圧力検出装置100から流路ユニット20を取り外した状態を示す図である。
図2に示すように、圧力検出ユニット10に流路ユニット20が取り付けられていない状態においては、圧力センサ12のダイアフラム12aが外部へ露出した状態となっている。
【0032】
ガイド部材16は、流路ユニット20を圧力検出ユニット10に取り付ける際に、流路を所定の取付位置に案内する溝部16aを有する部材である。ガイド部材16は、軸線Y1に対して対象となる位置に一対で設けられている。一対のガイド部材16は、流路の流入口20A側の一部と流出口20B側の一部とを、所定の取付位置にそれぞれ案内する。所定の取付位置とは、
図4に示すように、流路(後述する第1流路部21)の外周面がガイド部材16の溝部16aに囲まれる位置をいう。
【0033】
次に、
図5から
図9を参照して流路ユニット20について詳細に説明する。
図5および
図6に示すように、流路ユニット20は、第1流路部21と、第2流路部22と、可撓性流路部23と、第1連結部24と、第2連結部25と、本体部26と、ダイアフラム(圧力伝達部)27と、圧力伝達空間S1に充填された圧力伝達媒体28と、蓋部(封止部材)29と、を備える。
【0034】
第1流路部21は、液体が流入する流入口20Aと連通する第1流路20aを有する。第2流路部22は、液体が流出する流出口20Bと連通する第2流路20bを有する。可撓性流路部23は、第3流路(可撓性流路)20cを有する。第1連結部24は、第1流路20aと第3流路20cを連通させる第1連結流路20dを有する。第2連結部25は、第2流路20bと第3流路20cを連通させる第2連結流路20eを有する。
【0035】
なお、以上の説明では、第1流路20aが流入口20Aと連通し、第2流路20bが流出口20Bと連通するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、第1流路部21に流出口20Bを配置して第2流路部22に流入口20Aを配置する場合、第1流路20aが流出口20Bと連通して第2流路20bが流入口20Aと連通する。
【0036】
第1流路20a、第2流路20b、第3流路20c、第1連結流路20d、および第2連結流路20eは、断面視が円形の流路であり、内径D1(例えば、0.3mm以上10mm以下)を有するとともに軸線Xに沿って直線状に延びる流路である。これらの流路は、全体として、流入口20Aから流出口20Bへ至るまで、同一の内径で直線状に延びる流路を形成する。流路ユニット20が備える流路は、流入口20Aから流出口20Bへ至るまでの全領域において内径の変化がない。
【0037】
第1流路部21、第2流路部22、第1連結部24、および第2連結部25は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の比較的硬度の高い熱可塑性樹脂により形成されている。そのため、第1流路20a、第2流路20b、第1連結流路20d、および第2連結流路20eは、流通する液体の圧力(例えば、0以上500KPa(G)以下)により内径D1が変化することがない。
【0038】
一方、可撓性流路部23は、シリコーンゴム、塩化ビニル、ブチルゴム、イソプレンゴム、天然ゴム等の非圧縮性の可撓性材料により形成されている。可撓性材料は、例えば、内径D1が0.3mm以上かつ10mm以下であり、肉厚が0.05mm以上かつ1.00mm以下とするのが望ましい。この場合、外径D2は、0.4mm以上かつ12.0mm以下となる。可撓性材料の硬度は、例えば、タイプAデュロメータ硬さ(ISO7619に準拠)が50(A50/S)以下とするのが望ましい。
【0039】
第1流路部21は、軸線Xに沿って延びる円筒状に形成され、流入口20A側に取り付けられる配管(図示略)を係止するための段部21aを有する部材である。第1流路部21は、本体部26と同一材料により一体に形成されている。
【0040】
第2流路部22は、軸線Xに沿って延びる円筒状に形成され、流出口20B側に取り付けられる配管(図示略)を係止するための段部22aを有する部材である。第2流路部22は、第2連結部25と同一材料により一体に形成されている。
【0041】
可撓性流路部23は、軸線Xに沿って延びる円筒状の形状を有し、一端が第1連結部24の段部に取り付けられ、他端が第2連結部25の段部に取り付けられている。可撓性流路部23は、可撓性材料により形成されているため、第3流路20cを流通する液体の圧力により微小に変形する。可撓性流路部23は、第3流路20cを流通する液体の圧力が大きくなるにつれて、内径が大きくなるように変形する。可撓性流路部23の変形は、圧力伝達媒体28を介してダイアフラム27に伝達される。
【0042】
第1連結部24は、第1流路部21と可撓性流路部23の流入口20A側の端部を連結する部材である。第1連結部24の流入口20A側は、軸線Xに沿って延びる円筒状に形成されており、本体部26の挿入穴26aの内径よりもわずかに小さい外径を有する。第1連結部24の流出口20B側は、可撓性流路部23の流入口20A側の端部を係止するための段部を有する形状に形成されている。第1連結部24は、第1流路部21および本体部26とは独立した構造体であり、接着剤により本体部26の挿入穴26aの底部26bに取り付けられている。
【0043】
第2連結部25は、第2流路部22と可撓性流路部23の流出口20B側の端部を連結する部材である。第2連結部25の流出口20B側は、軸線Xに沿って延びる円筒状に形成されており、本体部26の挿入穴26aの内径よりもわずかに小さい外径を有する。第2連結部25の流入口20A側は、可撓性流路部23の流出口20B側の端部を係止するための段部を有する形状に形成されている。第2連結部25は、第2流路部22と同一材料により一体に形成されている。第2連結部25は、本体部26とは独立した構造体であり、接着剤により本体部26の挿入穴26aの入口部26cに取り付けられている。
【0044】
本体部26は、第1連結部24、第2連結部25、および可撓性流路部23を内部に収容する部材である。本体部26には、第1流路20aと同軸の軸線Xに沿って延びるとともに第1流路20a側に底部26bを有する挿入穴26aが形成されている。本体部26には、ダイアフラム27の平面に直交する軸線Y2に沿って円筒状に延びる空間が形成されている。挿入穴26aと円筒状に延びる空間を併せた空間は、可撓性流路部23の外周面を取り囲む圧力伝達空間S1となっている。
【0045】
本体部26の圧力伝達空間S1の上方には、蓋部29を取り付けるための開口部26eが形成されている。開口部26eは、外部空間S2と圧力伝達空間S1を連通させる貫通穴となっている。開口部26eは、圧力伝達媒体28を圧力伝達空間S1へ充填するために用いることができる。
【0046】
図5に示すように、本体部26のナット30側の端部には、凹部26fが形成されている。ダイアフラム27は、凹部26fの底部に取り付けられているため、ダイアフラム27が他の部材と接触して破損する不具合を抑制することができる。
【0047】
ダイアフラム27は、耐腐食性のある材料(例えば、シリコーン樹脂,ポリカーボネート樹脂)により薄膜状に形成される部材である。
図5に示すように、ダイアフラム27は、本体部26に形成された開口部26dを閉塞するように、本体部26に紫外線硬化接着剤等により取り付けられている。開口部26dは、軸線Y2に沿ったナット30側に向けて開口している。ダイアフラム27は、一方の面が圧力伝達空間S1に面し、他方の面が軸線Y2に沿ったナット30側に面している。他方の面は、流路ユニット20が圧力検出ユニット10に取り付けられた状態で、圧力センサ12のダイアフラム12aと接触する。
【0048】
図9に示すように流路ユニット20が圧力検出ユニット10に取り付けられた状態においては、流路ユニット20のダイアフラム27が圧力検出ユニット10のダイアフラム12aに接触した状態となる。そのため、ダイアフラム27は、可撓性流路部23を流通する液体の圧力を、圧力伝達媒体28を介してダイアフラム12aに伝達するための圧力伝達面となっている。
【0049】
圧力伝達媒体28は、複数種類のシリコーン液を所定の割合(例えば、2種類を1:1)で混合し、所定時間(例えば、30分間)に渡って所定温度(例えば、70℃)以上を維持することにより、粘度を増加させたゲル状の媒体である。圧力伝達媒体28の硬度は、例えば、針入度を50以上とするのが望ましい。圧力伝達媒体28は、蓋部29により封止されて閉空間となっている圧力伝達空間S1に、隙間なく充填されている。
【0050】
なお、圧力伝達媒体28としては、他の媒体を用いることができる。例えば、混合することにより室温(例えば、20℃~30℃)で粘度が増加する2種類のシリコーン液を用いてもよい。また、例えば、所定時間(例えば、30分間)に渡って所定温度(例えば、70℃)以上を維持することにより粘度が増加する単一種類のシリコーン液を用いてもよい。また、例えば、架橋剤を添加することにより粘度が増加する水と高分子の混合液を用いてもよい。また、例えば、凍結と解凍を繰り返すことで粘度が増加する水と高分子の混合液(ハイドロゲル)を用いてもよい。混合液が水を主成分とすることから、高分子として水溶性ポリマーを用いるのが好ましい。また、例えば、純水、生理食塩水等の他の非圧縮性媒体を用いることができる。
【0051】
蓋部29は、軸線Y2に沿って円筒状に形成される部材であり、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂により形成されている。蓋部29の軸線Y2回りの周方向の外周面には、雄ねじが形成されている。蓋部29は、外周面に形成された雄ねじを、本体部26の開口部26eの内周面に形成される雌ねじに係合させることにより、本体部26に固定される。本体部26の開口部26eは、圧力伝達空間S1に圧力伝達媒体28が充填された状態で蓋部29により封止されている。
【0052】
図7は、
図1に示す流路ユニット20の背面図である。
図8は、
図1に示す流路ユニット20の底面図である。
図7に示すように、流路ユニット20は、圧力検出ユニット10に取り付けられていない状態においては、ダイアフラム27が外部へ露出した状態となっている。一方、
図8に示すように、ダイアフラム27は本体部26の凹部26fの底部に配置されるため、凹部26fおよびナット30により保護された状態となる。そのため、作業者がダイアフラム27を誤って触ってしまう危険が少ない。
【0053】
図3に示すように、流路ユニット20の凹部26fの外周面には、軸線Y2回りに延びる無端状の環状溝部26gが形成されている。一方、ナット30の内周面には、軸線Y2回りに延びる無端状の環状突起部30bが形成されている。弾性変形可能な材料(例えば、樹脂材料)により形成されるナット30は、凹部26fの外周面に形成された環状溝部26gに向けて押し込まれることにより、環状突起部30bが環状溝部26gに係合した状態となる。
【0054】
図3に示すように環状突起部30bが環状溝部26gに係合した状態において、環状突起部30bの外周面と環状溝部26gの内周面との間には、微小な隙間が設けられる。そのため、ナット30は、圧力検出ユニット10に取り付けられた状態で、突部11に対して軸線Y1回りに相対的に回転可能となっている。これにより、作業者は、圧力検出ユニット10を設置面に固定した状態で、ナット30を軸線Y1回りに回転させることが可能である。
【0055】
図3に示すように、ナット30は、軸線Y2回りに延びる雌ねじ30aが内周面に形成された円環状の部材である。ナット30は、雌ねじ30aを流路ユニット20の突部11の外周面に形成される雄ねじ11cに締結し、あるいはその締結を解除することにより、流路ユニット20を圧力検出ユニット10に着脱可能に取り付ける機構である。
【0056】
次に、本実施形態の流路ユニット20の製造方法について
図10から
図13を参照して説明する。
図10は、本実施形態の流路ユニット20の製造方法を示すフローチャートである。
図11は、可撓性流路部23と第1連結部24と第2連結部25を組み立てた組立体を示す図である。
図12は、本体部26の挿入穴26aに組立体を挿入した状態を示す図である。
図13は、圧力伝達空間S1に圧力伝達媒体28を充填した状態を示す図である。
【0057】
ステップS101で、流路ユニット20を製造する作業者は、可撓性流路部23の一端に第1連結部24の段部を取り付け、可撓性流路部23の他端に第2連結部25に第2連結部25の段部を取り付ける。
図11に示すように、可撓性流路部23、第1連結部24、および第2連結部25は、これらが連結された組立体となる。
【0058】
ステップS102で、作業者は、ステップS101で組み立てた組立体を本体部26の挿入穴26aへ挿入する。作業者は、組立体を挿入穴26aへ挿入する前に、挿入穴26aの内周面に接着剤を塗布する。接着剤を塗布する領域は、挿入穴26aの第1連結部24と接触する底部26bの近傍、および挿入穴26aの第2連結部25と接触する入口部26cの近傍である。
【0059】
図12に示すように、底部26bに接着剤が塗布されているため、組立体を挿入穴26aへ挿入すると、第1連結部24が底部26bに取り付けられた状態となる。また、入口部26cに接着剤が塗布されているため、組立体を挿入穴26aへ挿入すると、第2連結部25が入口部26cに取り付けられた状態となる。
図12に示す状態で、圧力伝達空間S1は、開口部26eを介して外部空間S2と連通した状態となっている。
【0060】
ステップS103で、作業者は、本体部26の凹部26fの底部に、圧力検出ユニット10のダイアフラム12aと接触可能な薄膜状のダイアフラム27を紫外線硬化接着剤等により取り付ける。ダイアフラム27が取り付けられることにより、本体部26の開口部26dが閉塞された状態となる。
【0061】
ステップS104で、作業者は、複数種類のシリコーン液を所定の割合(例えば、2種類を1:1)で混合する。この作業は、混合したシリコーン液の粘度が上昇する所定温度(例えば、70℃)よりも十分に低い温度(例えば、20℃~30℃の室温)の環境で行われる。シリコーン液は、流路ユニット20とは別の容器(シリンジ等)で混合される。
【0062】
ステップS105で、作業者は、混合したシリコーン液を収納する容器を真空チャンバーに収容し、シリコーン混合液の脱泡処理を行う。脱泡処理とは、液体の圧力を段階的に-90kPa(G)以下まで低下させることにより、液体に含まれる気泡を除去する処理をいう。シリコーン混合液は、圧力伝達媒体28として用いられるものである。脱泡処理を行うのは、圧力伝達媒体28に気泡が含まれていると、可撓性流路部23から伝達される圧力の一部が気泡により吸収されてしまうためである。
【0063】
ステップS106で、作業者は、シリコーン混合液の充填処理を行う。作業者は、容器(図示略)に収納された脱泡処理済みのシリコーン混合液を本体部26に形成された開口部26eから圧力伝達空間S1へ充填する。容器がシリンジである場合、作業者は、シリンジの先端を開口部26eに挿入した状態でプランジャーを押すことにより、シリコーン混合液を圧力伝達空間S1へ注入する。圧力伝達空間S1への圧力伝達媒体28の充填が完了すると、
図13に示す状態となる。
【0064】
ステップS107で、作業者は、圧力伝達媒体28が充填された流路ユニット20を真空チャンバーに収容し、流路ユニット20の脱泡処理を行う。流路ユニット20の脱泡処理は、流路ユニット20が存在する外部空間S2を段階的に-90kPa(G)以下まで減圧して、圧力伝達空間S1に存在する空気を除去する処理である。流路ユニット20の脱泡処理を行うことにより、圧力伝達空間S1を形成する本体部26の内周面と、圧力伝達空間S1に充填された圧力伝達媒体28との隙間に存在する空気が外部空間S2へ放出される。
【0065】
ステップS108で、作業者は、脱泡処理が行われた流路ユニット20を真空チャンバーから取り出し、大気圧状態の環境で所定温度以上に維持された恒温槽(図示略)で加熱する。流路ユニット20に充填された圧力伝達媒体28は、混合した状態で所定温度(例えば、70℃)以上とすることにより粘度が上昇してゲル化する複数の媒体からなる。流路ユニット20は、恒温槽において、少なくとも所定時間(例えば、30分間)に渡って所定温度以上に維持される。シリコーン混合液は、粘度が増加してゲル状の媒体となる。
【0066】
ステップS109で、作業者は、圧力伝達媒体28が脱泡処理された後に開口部26eを蓋部29により封止して圧力伝達空間S1を閉空間とする。以上の工程により、閉空間である圧力伝達空間S1に圧力伝達媒体28が充填された流路ユニット20が製造される。
【0067】
以上で説明した製造方法は、圧力伝達媒体28として、所定温度以上に加熱することによりゲル化する媒体を用いる場合に実行される製造方法である。圧力伝達媒体28として、架橋剤を添加することにより粘度が増加する水と高分子の混合液を用いる場合、以下の点で
図10に示す製造方法を変形したものとなる。第1に、ステップS104の工程は、水と高分子と架橋剤を混合して混合液を作成する工程となる。第2に、ステップS105の工程は、ステップS104で混合した混合液の脱泡処理を行う工程となる。第3に、ステップS106の工程は、ステップS105で脱泡処理した混合液を充填する充填処理を行う工程となる。第5に、ステップS108の工程は、ステップS107で脱泡処理された流路ユニットの混合液を室温(例えば、20℃~30℃)で所定時間(例えば、12時間)放置してゲル化させる工程となる。
【0068】
また、圧力伝達媒体28として、凍結と解凍を繰り返すことで粘度が増加する水と高分子の混合液を用いる場合、前述した変形例にかかる製造方法を変形したものとなる。すなわち、ステップS108の工程は、流路ユニットに充填された混合液の凍結と解凍を繰り返して混合液をゲル化させる工程となる。
【0069】
以上説明した本実施形態が奏する作用及び効果について説明する。
本実施形態の流路ユニット20によれば、第1流路部21と可撓性流路部23の一端が第1連結部24により連結され、第1流路20aと第3流路20cが第1連結流路20dを介して連通した状態となる。また、第2流路部22と可撓性流路部23の他端が第2連結部25により連結され、第2流路20bと第3流路20cが第2連結流路20eを介して連通した状態となる。第1流路20a、第2流路20b、第3流路20c、第1連結流路20d、および第2連結流路20eは、それぞれ内径がD1で同じで直線状に延びる流路である。そのため、流入口20Aから流出口20Bへ至るまで、液体が流通せずに滞留する空間が存在せず、雑菌の発生や液体の凝固等の不具合が発生しない。
【0070】
また、本実施形態の流路ユニット20によれば、可撓性流路部23へ流入した液体の圧力は、第3流路20cの内周面に伝達される。可撓性流路部23の外周面を取り囲むように圧力伝達空間S1が形成され、この圧力伝達空間S1に非圧縮性の圧力伝達媒体28が充填されている。圧力伝達媒体28が非圧縮性であるため、可撓性材料により形成される第3流路20cが液体の圧力により微小に変形した場合でも、圧力伝達媒体28の容積は変化しない。そのため、第3流路20cの変形に伴ってダイアフラム27が変形する。流路ユニット20が圧力検出ユニット10に取り付けられた状態では、ダイアフラム27がダイアフラム12aと接触するため、ダイアフラム27の変形に応じた圧力がダイアフラム12aに伝達される。このように、本実施形態の流路ユニット20によれば、流路ユニット20を流通する液体の圧力を圧力検出ユニット10に確実に伝達することができる。
【0071】
本実施形態の流路ユニット20によれば、第2流路部22と第2連結部25とが一体に形成される一方、第1流路部21と第1連結部24とは一体に形成されていない。そのため、第1連結部24に可撓性流路部23の一端を取り付け、第2連結部25に可撓性流路部23の他端を取り付けることにより、第2流路部22、可撓性流路部23、第1連結部24、第2連結部25を、第1流路部21および本体部26とは独立した組立体とすることができる。
【0072】
そして、組立体を本体部26に形成された挿入穴26aへ挿入し、第1連結部24を挿入穴26aの底部26bへ取り付けることにより、第1流路部21と可撓性流路部23が第1連結部24により連結された状態となる。第2連結部25を挿入穴26aの入口部26cへ取り付けることにより、挿入穴26aが閉塞されて圧力伝達空間S1が閉空間となる。このように、本実施形態の流路ユニット20によれば、第1流路20a、第2流路20b、および第3流路20cが連通し、かつ可撓性流路部23の外周面に圧力伝達空間S1が形成された状態を、比較的容簡易な組立作業により実現することができる。
【0073】
本実施形態の流路ユニット20によれば、本体部26に形成された開口部26eから圧力伝達媒体28を圧力伝達空間S1へ充填することができる。また、圧力伝達空間S1へ圧力伝達媒体28を充填した後は、開口部26eを蓋部29により封止することにより、圧力伝達空間S1を外部空間S2から隔離された閉空間とすることができる。
【0074】
本実施形態の流路ユニット20によれば、圧力伝達空間S1に充填される圧力伝達媒体28は、脱泡処理が行われている。圧力伝達媒体28が気泡を含まないため、可撓性流路部23が第3流路20cを流通する液体の圧力により変形する場合に変形による変位が圧力伝達媒体28に吸収されずにダイアフラム12aに確実に伝達される。
【0075】
本実施形態の流路ユニット20の製造方法によれば、可撓性流路部23と第1連結部24と第2連結部25とを組立体とした後に本体部26の挿入穴26aへ挿入することにより、可撓性流路部23の外周面を取り囲む圧力伝達空間S1を容易に形成することができる。また、圧力伝達媒体28が充填された圧力伝達空間S1を減圧して圧力伝達媒体28を脱泡処理することにより、第3流路20cを流通する液体の圧力を損失させることなく確実にダイアフラム12aに伝達することができる。
【0076】
本実施形態の流路ユニット20の製造方法によれば、粘度が低い圧力伝達媒体28を本体部26に形成された開口部26eから圧力伝達空間S1へ容易に充填することができる。また、圧力伝達空間S1に充填された圧力伝達媒体28の粘度を上昇させることにより、圧力伝達媒体28の圧力伝達空間S1からの流出を抑制することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【0078】
例えば、以上の説明においては、本体部26の開口部26eを外周面に雄ねじが形成された蓋部29により封止するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、
図14の第1変形例に示すように、本体部26の開口部26eを鉄等の金属材料により形成された球体(封止部材)29Aにより封止してもよい。この場合、開口部26eの内周面に雌ねじは形成されておらず、開口部26eの内径は球体29Aの外径よりも微小に小さくなっている。作業者は球体29Aを開口部26eに押し込んで隙間嵌めされた状態とすることにより、開口部26eを封止する。
【0079】
また、例えば、
図15の第2変形例に示すように、本体部26の開口部26eを樹脂材料により形成された蓋部(封止部材)29Bにより封止してもよい。この場合、開口部26eの内周面に雌ねじは形成されておらず、開口部26eの内径は蓋部29Bの外径よりも微小に小さくなっている。作業者は蓋部29Bを開口部26eに打ち込んで隙間嵌めされた状態とすることにより、開口部26eを封止する。
【0080】
また、例えば、
図16の第3変形例に示すように、本体部26の開口部26eを接着剤で充填することにより封止してもよい。この場合、開口部26eの内周面に雌ねじは形成されていない。
【0081】
また、以上の説明において、第1流路20a、第2流路20b、第3流路20c、第1連結流路20d、および第2連結流路20eは、全ての領域において同一の内径を有するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、第3流路20cの内径をD1a(例えば、1mm以上かつ10mm以下)とし、第1流路20a、第2流路20b、第1連結流路20d、および第2連結流路20eの内径をD1aよりも小さいD1b(例えば、0.15mm以上かつ10mm未満)としてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10・・・圧力検出ユニット、 12a・・・ダイアフラム、 20・・・流路ユニット、 20A・・・流入口、 20B・・・流出口、 20a・・・第1流路、 20b・・・第2流路、 20c・・・第3流路、 20d・・・第1連結流路、 20e・・・第2連結流路、 21・・・第1流路部、 22・・・第2流路部、 23・・・可撓性流路部、 24・・・第1連結部、 25・・・第2連結部、 26・・・本体部、 26a・・・挿入穴、 26b・・・底部、 26c・・・入口部、 26d・・・開口部、 26e・・・開口部、 27・・・ダイアフラム、 28・・・圧力伝達媒体、 29・・・蓋部、 100・・・圧力検出装置、 S1・・・圧力伝達空間、 S2・・・外部空間、 X,Y1,Y2・・・軸線