(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】流量測定装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/696 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
G01F1/696 Z
(21)【出願番号】P 2017190844
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-03-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 克行
(72)【発明者】
【氏名】半田 憲一
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】濱野 隆
【審判官】佐藤 久則
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-197303(JP,A)
【文献】特開2004-069530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流路を流れる測定対象流体の流量に応じた値を、定められた測定タイミングで検出する流量検出部と、
前記流量検出部が検出した前記流量に応じた値に基づいて、前記測定対象流体の流量を算出する流量算出部と、
前記流量算出部が算出した流量に基づいて流量の周期的な変化を検知した場合に、検知された周期的な変化に基づいて前記測定タイミングを変更する測定間隔変更部と、
を備え、
前記測定間隔変更部は、前記流量算出部が算出する流量において、所定の閾値以上の極大値の間、又は所定の閾値以下の極小値の間に、所定の時点における流量に対する誤差が所定値以下の値が所定回数出現すると共に前記極大値または前記極小値が規則的に出現する場合に、前記周期的な変化であると判断
し、当該周期的な変化に基づき、断続的に前記流量に応じた値を検出させる前記測定タイミングを、変化の周期の整数倍の間隔で開始されるように変更する
流量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒータおよびセンサを備え、流体の流れによって変化する温度分布をセンサが検知することにより、流体の流速又は流量を算出する測定装置が提案されていた。
【0003】
例えば、被測定流体が流れる流路の壁面に流量センサを設け、流量センサの下流側に流量センサが設けられた位置の流路の断面に比べて極小な断面を有する極小断面流路を有する部材を配設した流量測定装置が提案されている(例えば、特許文献1)。本技術によれば、有孔板を設けることにより、脈動の影響を低減させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサを利用した流量測定装置においては、センサのサンプリング間隔を短くすることで流量の測定精度を向上させることができる。しかしながら、サンプリング間隔を短くすることで、時間あたりの測定回数が増加するとともに、センサの消費電力も増加するという問題があった。
【0006】
また、例えばガスメータ等のように、センサの用途によっては、センサに許容される圧力損失が制限される場合がある。すなわち、圧力損失が増大すると、例えば配管の末端に接続された機器まで流体を供給できなくなるおそれがある。このような用途においては、流路に有孔板を設けるような構造的な対策のみによって流量の細かな変動の影響を低減させるのは困難であった。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、流量測定装置において、圧力損失の増加を抑えつつ、測定精度を維持すると共に消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る流量測定装置は、主流路を流れる測定対象流体の流量に応じた値を、定められた測定タイミングで検出する流量検出部と、流量検出部が検出した流量に応じた値に基づいて、測定対象流体の流量を算出する流量算出部と、流量算出部が算出した流量に基づいて流量の周期的な変化を検知した場合に、検知された変化の周期に基づいて測定タイミングを変更する測定間隔変更部とを備える。
【0009】
流量の周期的な変化を検知した場合に、測定された周期に基づいて測定タイミングを変更することで、測定対象流体の流量に例えば脈動や揺らぎが生じた場合に、その周期的な変化に基づいて測定タイミングを変更することができる。したがって、流量に偏りが生じないように測定するタイミングを決定しつつ、時間当たりの測定回数を少なくして消費電力を低減させることができる。また、このような処理であれば、ソフトウェアにより処理することができるため、構造的な対策は必要なく、圧力損失を生じさせるおそれもない。
【0010】
また、測定間隔変更部は、流量算出部が算出した流量の値の変化を検出し、当該変化を用いて周期的な変化を検知するようにしてもよい。具体的には、流量の値から周期性を検知するための基準として、任意の測定値を用いることができる。すなわち、任意の値が測定されるタイミングの規則性に基づいて、周期的な変化を検知することができる。
【0011】
また、測定間隔変更部は、検知された変化の周期に基づき断続的に流量に応じた値を検出させる測定タイミングに変更するようにしてもよい。検知された変化の周期に基づいて断続的に流量に応じた値を検出すれば、1つの周期内において流量が変動する場合であっても、偏りなくサンプリングすることができ、測定される流量の精度を維持することができる。
【0012】
また、断続的に行われる流量に応じた値の検出の各々は、検知された変化の周期の整数倍の間隔で開始されるようにしてもよい。このようにすれば、流量の変化の周期を単位として偏りなくサンプリングすることができ、測定される流量の精度を維持することができる。
【0013】
なお、課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。また、課題を解決するための手段に示した流量測定装置の内容は、方法又はプロセッサ等の演算装置に実行させるプログラム、若しくはプログラムを格納する媒体として提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
流量測定装置において、圧力損失の増加を抑えつつ、測定精度を維持すると共に消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】流量測定装置の一例を示す分解斜視図である。
【
図5】センサ素子の仕組みを説明するための断面図である。
【
図8】回路基板の機能構成を示すブロック図である。
【
図9】流量測定処理の一例を示す処理フロー図である。
【
図10】流量の変化に脈動が生じる場合の単位時間当たりの流量の時間的な変化を模式的に表す図である。
【
図11】センサ素子のマイクロヒータの温度と測定タイミングとの関係を模式的に示す図である。
【
図12】縦軸にセンサ感度比、横軸に熱伝導率を示すグラフである。
【
図13】縦軸にセンサ感度比、横軸にΔTを示すグラフである。
【
図20】回路基板及びホスト装置を含む変形例の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る流量測定装置について、図面を用いて説明する。なお、以下に示す実施形態は、流量測定装置の一例であり、本発明に係る流量測定装置は、以下の構成には限定されない。
【0017】
<装置構成>
図1は、本実施形態に係る流量測定装置1の一例を示す分解斜視図である。
図2は、流量測定装置1の一例を示す断面図である。流量測定装置1は、例えばガスメータや燃焼機器、自動車等の内燃機関、燃料電池、その他医療等の産業機器、組込機器に組み込まれ、流路を通過する流体の量を測定する。なお、
図1及び
図2の破線の矢印は、流体の流れる方向を例示している。
【0018】
また、
図1に示すように、本実施形態に係る流量測定装置1は、主流路部2と、副流路部3と、シール4と、回路基板5と、カバー6とを備えている。
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、流量測定装置1は主流路部2から分岐した副流路部3を有する。また、流量測定装置1は、流量検出部11と、物性値検出部12とを副流路部3に備える。流量検出部11及び物性値検出部12は、マイクロヒータによって形成される加熱部とサーモパイルによって形成される温度検出部とを含む熱式のフローセンサである。また、本実施形態では、物性値検出部12を利用して流体の温度を検出する。また、本実施形態では、算出される流量を物性値に基づいて補正するものとするが、流量測定装置1は、物性値検出部12を備えていなくてもよい。
【0019】
主流路部2は、測定対象である流体の流路(以下、主流路ともいう)が長手方向に貫通した管状の部材である。
図2に示すように、主流路部2の内周面には、測定対象流体の流れ方向に対して、上流側に流入口(第1流入口)34Aが形成され、下流側に流出口(第1流出口)35Aが形成されている。例えば主流路部2の軸方向の長さは約50mmであり、内周面の直径(主流路部2の内径)は約20mmであり、主流路部2の外径は約24mmであるが、このような例には限定されない。また、主流路部2には、流入口34Aと流出口35Aとの間にオリフィス21が設けられている。オリフィス21は、主流路部2においてその前後よりも内径が小さくなった抵抗体であり、オリフィス21の大きさによって副流路部3へ流入する流体の量を調整することができる。
【0020】
図1及び
図2においては、主流路から分岐した副流路を内部に含む部分である副流路部3は主流路部2の鉛直上方に設けられている。また、副流路部3内の副流路は、流入用流路34と、物性値検出用流路32と、流量検出用流路33と、流出用流路35とを含む。流入用流路34は、主流路部2から分岐する流入口34Aに通じ、流出用流路35は、主流路部2に合流する流出口35Aに通じており、副流路部3には、主流路部2を流れる流体の一部が分岐して流入する。
【0021】
流入用流路34は、主流路部2を流れる測定対象流体を流入させて、物性値検出用流路32および流量検出用流路33に分流させるための流路である。流入用流路34は、主流路部2における流体の流れ方向と垂直な方向に沿って形成されており、一端が流入口34Aに連通し、他端は物性値検出用流路32および流量検出用流路33に連通している。主流路部2を流れる測定対象流体の一部は、流入用流路34を介して、さらに物性値検出用流路32および流量検出用流路33に分流する。このような物性値検出用流路32及び流量検出用流路33には、主流路部2を流れる流体の量に応じた量の流体が流入する。したがって、例えば流量検出部11は、主流路部2を流れる流体の量に応じた値を検出することができる。
【0022】
図1に示すように、物性値検出用流路32は、主流路部2の鉛直上方に形成され、主流路部2と平行な方向に延在する、上側から見た断面が略コ字型の流路である。物性値検出用流路32は、その内部に、測定対象流体の物性値を検出するための物性値検出部12が配置されている。物性値検出用流路32の一端は、流入用流路34を介して流入口34Aに連通しており、他端は、流出用流路35を介して流出口35Aに連通している。
【0023】
流量検出用流路33も、主流路部2における流体の流れ方向と平行な方向に延在する、上側から見た断面が略コの字型の流路である。流量検出用流路33には、その内部に、測定対象流体の流量を検出するための流量検出部11が配置されている。また、流量検出用流路33の一端は、流入用流路34を介して流入口34Aに連通しており、他端は、流出用流路35を介して流出口35Aに連通している。なお、物性値検出部12、流量検出部11は、それぞれ回路基板5上に実装される。そして、回路基板5は、上部が開いた物性値検出用流路32、流量検出用流路33の上部を覆うと共に、物性値検出用流路32に物性値検出部12が位置し、流量検出用流路33に流量検出部11が位置するように配置される。
【0024】
流出用流路35は、物性値検出用流路32および流量検出用流路33を通過した測定対象流体を、主流路部2に流出させるための流路である。流出用流路35は、主流路部2と垂直な方向に沿って形成されており、一端が流出口35Aに連通し、他端は物性値検出用流路32および流量検出用流路33に連通している。物性値検出用流路32および流量検出用流路33を通過した測定対象流体は、流出用流路35を介して、主流路部2に流出する。
【0025】
このように、1つの流入口34Aから流入させた測定対象流体を、物性値検出用流路32および流量検出用流路33に分流させることで、物性値検出部12および流量検出部11は、それぞれ温度、密度などの条件がほぼ等しい測定対象流体に基づいて物性値や流量を検出することができる。
【0026】
なお、流量測定装置1は、副流路部3にシール4を嵌め込んだ後、回路基板5が配置され、さらにカバー6によって回路基板5を副流路部3に固定することで、副流路部3の内部の気密性を確保している。
【0027】
図3は、
図1に示される副流路部3の平面図である。
図3に示すように、物性値検出用流路32は、一端が流入用流路34に連通し、他端が流出用流路35に連通している。同様に、流量検出用流路33は、一端が流入用流路34に連通し、他端が流出用流路35に連通している。
【0028】
また、矢印P及びQは、物性値検出用流路32および流量検出用流路33に分流する測定対象流体の流量の比率を模式的に表している。本実施形態では、分流される流体の量が
P対Qの割合になるように、物性値検出用流路32および流量検出用流路33の断面積が定められている。
【0029】
実際に物性値検出用流路32および流量検出用流路33を流れる流体の量は、主流路部2を流れる測定対象流体の流量に応じて変動するが、通常の使用態様において、物性値検出用流路32を流れる流体の量は物性値検出部12の検出レンジ内の値となり、流量検出用流路33を流れる流体の量は流量検出部11の検出レンジ内の値となるように、主流路部2に対する副流路部3の大きさやオリフィス21の大きさ、物性値検出用流路32および流量検出用流路33の幅がそれぞれ設定されている。なお、物性値検出用流路32及び流量検出用流路33の幅は例示であり、
図3に示す例には限定されない。
【0030】
このように、流量測定装置1では、物性値検出用流路32および流量検出用流路33に分流する測定対象流体の流量を、それぞれの幅を調整することで個別に制御することが可能である。このため、物性値検出部12の検出レンジに応じて物性値検出用流路32を流れる測定対象流体の流量を制御し、流量検出部11の検出レンジに応じて流量検出用流路33を流れる測定対象流体の流量を制御することができる。
【0031】
物性値検出用流路32および流量検出用流路33は、何れも上面視において略コ字型に形成された構成には限定されない。すなわち、物性値検出用流路32および流量検出用流路33は、物性値検出用流路32および流量検出用流路33を通過する測定対象流体の流量が制御可能な幅(断面積)に設定されていれば、他の形状を採用するようにしてもよい。
【0032】
また、物性値検出用流路32および流量検出用流路33において物性値検出部12、流量検出部11が配置される空間の形状を上面視において略正方形にしているが、本発明はこれに限定されない。物性値検出用流路32および流量検出用流路33の形状は、物性値検出部12または流量検出部11が配置可能であればよく、配置される物性値検出部12および流量検出部11の形状等に応じて決定することができる。
【0033】
したがって、例えば、物性値検出用流路32の幅よりも、物性値検出部12のサイズが小さい場合には、物性値検出用流路32の幅を物性値検出部12の幅に一致させてもよい。すなわち、この場合は、物性値検出用流路32の長手方向に延在する部分は、幅がほぼ一定の形状になる。なお、流量検出用流路33についても同様である。
【0034】
以上のように、物性値検出用流路32および流量検出用流路33を流れる流体の量は、主流路部2を流れる流体の量よりも少ないが、それぞれ主流路部2を流れる流体の量に応じて変化する。仮に流量測定装置1を主流路部2に配置する場合は、主流路部2を流れる流体の量に応じて流量検出部11および物性値検出部12の規模を大きくする必要が生じるが、本実施形態では主流路部2から分岐する副流路部3を設けることにより、規模の小さい流量検出部11および物性値検出部12によって流体の流量を測定できるようにしている。
【0035】
また、物性値検出用流路32の断面積の方が流量検出用流路33の断面積よりも小さく、
図3において矢印P及びQの大きさで表したように物性値検出用流路32を流れる流体の量の方が流量検出用流路33を流れる流体の量よりも少なくなっている。このように、流量検出部11を流れる流体の量よりも物性値検出部12を流れる流体の量の方が少なくすることにより、物性値検出部12が流体の物性値や温度を検出する際の流量の影響による誤差を小さくすることができる。
【0036】
図4は、流量検出部及び物性値検出部に用いられるセンサ素子の一例を示す斜視図であ
る。また、
図5は、センサ素子の仕組みを説明するための断面図である。センサ素子100は、マイクロヒータ(加熱部)101と、マイクロヒータ101を挟んで対称に設けられたサーモパイル(温度検出部)102とを備える。すなわち、マイクロヒータ101とサーモパイル102とは、所定の方向に並ぶように配置されている。これらの上下には、
図5に示すように絶縁薄膜103が形成され、マイクロヒータ101、サーモパイル102及び絶縁薄膜103はシリコン基台104上に設けられている。また、マイクロヒータ101及びサーモパイル102の下方のシリコン基台104には、エッチング等により形成されるキャビティ(空洞)105が設けられている。マイクロヒータ101は、例えばポリシリコンで形成された抵抗である。
図5においては、破線の楕円によって、マイクロヒータ101が発熱した場合の温度分布を模式的に示している。なお、破線が太いほど温度が高いことを示すものとする。空気の流れがない場合、
図5の上段(1)に示すようにマイクロヒータ101の周囲の温度分布はほぼ均等になる。一方、例えば
図5の下段(2)において破線の矢印で示す方向に空気が流れた場合、周囲の空気が移動するため、マイクロヒータ101の風上側よりも風下側の方が、温度は高くなる。センサ素子は、このようなヒータ熱の分布の偏りを利用して、流量を示す値を出力する。センサ素子の出力電圧ΔVは、例えば次のような式(1)で表される。
【数1】
なお、Thはマイクロヒータ101の温度(サーモパイル102におけるマイクロヒータ101側の端部の温度)、Taはサーモパイル102におけるマイクロヒータ101から遠い側の端部の温度のうち低い方の温度(
図5の上段(1)では左側のサーモパイル102の左端の温度又は右側のサーモパイル102の右端の温度であり、
図5の下段(2)では上流側の端部である左側のサーモパイル102の左端の温度)、Vfは流速の平均値、A及びbは所定の定数である。
【0037】
また、流量測定装置1の回路基板5は、IC(Integrated Circuit)等により実現される制御部(図示せず)を備え、流量検出部11の出力に基づいて流量を算出する。また、物性値検出部12の出力に基づいて所定の特性値を算出し、特性値を用いて流量を補正してもよい。
【0038】
<流量検出部及び物性値検出部>
図6は、
図1に示した流量検出部11の概略構成を示す平面図であり、
図7は、
図1に示した物性値検出部12の概略構成を示す平面図である。流量測定装置1では、物性値検出用流路32と流量検出用流路33とは、流路の幅がそれぞれ異なっており、物性値検出用流路32の物性値検出部12が配置された流路の幅は、流量検出用流路33の流量検出部11が配置された流路の幅よりも狭くなっている。これにより、流量測定装置1では、物性値検出用流路32および流量検出用流路33に分流される測定対象流体の流量を、それぞれ個別に制御している。
【0039】
図6に示すように、流量検出部11は、測定対象流体の温度を検出する第1サーモパイル(温度検出部)111および第2サーモパイル(温度検出部)112と、測定対象流体を加熱するマイクロヒータ(「加熱部」とも呼ぶ)113とを備えている。加熱部113と、温度検出部111および温度検出部112とは、流量検出部11内において、測定対象流体の流れ方向Pに沿って並べて配置されている。また、加熱部113、温度検出部111、および温度検出部112の形状は、平面視においてそれぞれ略矩形であり、各々の長手方向は測定対象流体の流れ方向Pと直交する。
【0040】
温度検出部111および温度検出部112は、加熱部113の上流側に温度検出部112が配置され、下流側に温度検出部111が配置されて、加熱部113を挟んで対称な位置の温度を検出する。
【0041】
流量測定装置1では、物性値検出部12および流量検出部11に、実質的に同一構造のセンサ素子100が用いられており、測定対象流体の流れ方向に対する配置角度を、センサ素子100の平面視上、90度異ならせて配置されている。これにより、同一構造のセンサを物性値検出部12または流量検出部11として機能させることができ、流量測定装置1の製造コストを低減させることができる。
【0042】
一方、
図7に示すように、物性値検出部12は、測定対象流体の温度を検出する第1サーモパイル(「温度検出部」とも呼ぶ)121および第2サーモパイル(「温度検出部」とも呼ぶ)122と、測定対象流体を加熱するマイクロヒータ(「加熱部」とも呼ぶ)123とを備えている。加熱部123と、温度検出部121および温度検出部122とは、物性値検出部12内において、測定対象流体の流れ方向Qと直交する方向に並んで配置されている。また、加熱部123、温度検出部121、および温度検出部122の形状は、平面視においてそれぞれ略矩形であり、各々の長手方向は測定対象流体の流れ方向Qに沿っている。また、温度検出部121および温度検出部122は、加熱部123を挟んで左右対称に配置されており、加熱部123の両側の対称な位置の温度を検出する。したがって、温度検出部121および温度検出部122の測定値はほぼ同一であり、平均値を採用するようにしてもよいし、いずれか一方の値を採用するようにしてもよい。
【0043】
ここで、測定対象流体の流れによって温度分布は下流側に偏るため、流れ方向と直交する方向の温度分布の変化は、測定対象流体の流れ方向の温度分布の変化に比べて小さい。このため、温度検出部121と、加熱部123と、温度検出部122とを、この順で測定対象流体の流れ方向と直交する方向に並べて配置することにより、温度分布の変化による温度検出部121および温度検出部122の出力特性の変化を低減することができる。したがって、測定対象流体の流れによる温度分布の変化の影響を低減して、物性値検出部12による検出精度を向上させることができる。
【0044】
また、加熱部123の長手方向が測定対象流体の流れ方向に沿って配置されているため、加熱部123は測定対象流体の流れ方向の広範囲に亘って測定対象流体を加熱することが可能となる。このため、測定対象流体の流れによって温度分布が下流側に偏った場合であっても、温度検出部121および温度検出部122の出力特性の変化を低減することができる。同様に、流体温度を測定する場合においては、流速により生じる測定値の誤差を低減することができる。なお、流体温度は、温度検出部121および温度検出部122が検出した温度から、加熱部123による加熱での温度上昇分を減じて求めるようにしてもよいし、加熱部123が加熱を行わない状態で検出するようにしてもよい。物性値検出部12によれば、測定対象流体の流れによる温度分布の変化の影響を抑え、物性値及び流体温度の検出精度を向上させることができる。
【0045】
さらに、温度検出部121および温度検出部122の長手方向が測定対象流体の流れ方向に沿って配置されているため、温度検出部121および温度検出部122は測定対象流体の流れ方向に亘って広範囲に温度を検出することが可能となる。このため、測定対象流体の流れによって温度分布が下流側に偏った場合であっても、温度検出部121および温度検出部122の出力特性の変化を低減することができる。したがって、測定対象流体の流れによる温度分布の変化の影響を低減して、物性値検出部12による検出精度を向上させることができる。
【0046】
<機能構成>
図8は、流量測定装置1が備える回路基板5の機能構成の一例を示すブロック図である。流量測定装置1は、流量検出部11と、物性値検出部12と、制御部13とを備えている。流量検出部11は、温度検出部111と、温度検出部112とを備える。物性値検出部12は、温度検出部121と、温度検出部122とを備える。なお、
図6に示した加熱部113及び
図7に示した加熱部123は、図示を省略している。また、制御部13は、検出値取得部131と、特性値算出部132と、流量算出部133と、測定パラメータ変更部134とを含む。
【0047】
流量検出部11は、温度検出部111および温度検出部112から出力された温度検出信号に基づいて、測定対象流体の流量を示す値を検出する。例えば、流量検出部11は、温度検出部111から出力された温度検出信号と温度検出部112から出力された温度検出信号との差分を算出し、差分に基づいて測定対象流体の流量を示す値を求める。そして、流量検出部11は、流量を示す値を制御部13に出力する。
【0048】
物性値検出部12は、温度検出部121から出力された温度検出信号を特性値算出部132に出力する。なお、物性値検出部12は、温度検出部121および温度検出部122から出力された温度検出信号の平均値を求め、特性値算出部132に出力するようにしてもよい。また、温度検出部121又は温度検出部122のいずれか一方を用いて温度検出信号を取得するようにしてもよい。
【0049】
検出値取得部131は、所定の測定間隔で、流量検出部11が出力する流体の流量に応じた検出値を取得する。特性値算出部132は、物性値検出部12の温度検出部121及び温度検出部122の少なくともいずれかの検出値に基づいて特性値を算出する。なお、特性値算出部132は、物性値検出部12のマイクロヒータの温度を変化させ、変化の前後においてサーモパイルが検出した測定対象流体の温度の差に所定の係数を乗じて特性値を算出するようにしてもよい。また、流量算出部133は、検出値取得部131が取得した検出値に基づいて、流量を算出する。このとき、流量算出部133は、物性値検出部12が算出した特性値をさらに用いて流量を補正するようにしてもよい。また、測定パラメータ変更部134は、測定結果に基づいて算出される測定間隔等の測定パラメータに設定を変更する。例えば、測定パラメータ変更部134は、流量算出部133が算出した流量に基づいて、検出値取得部131が検出値を取得する間隔を変更する。
【0050】
<流量測定処理>
図9は、流量測定処理の一例を示す処理フロー図である。本実施形態では、例えば定期的に流量検出部11の測定間隔(サンプリング間隔)等の測定パラメータを修正する。すなわち、回路基板5の測定パラメータ変更部134は、周波数を検知するタイミングであるか判断する(
図9:S1)。本ステップでは、前回の修正から所定期間が経過した場合、測定パラメータ変更部134は、周波数を検知するタイミングであると判断する。
【0051】
周波数を検知するタイミングであると判断された場合(S1:YES)、測定パラメータ変更部134は、検出値取得部131に、通常よりも測定間隔の短い高速サンプリングにより検出値を取得させる(S2)。本ステップでは、流量の変化をより詳細に検知するため、測定間隔を短くする。すなわち、検出値取得部131は、短い測定間隔で、温度検出部111及び温度検出部112の温度検出信号に基づく測定対象流体の流量に応じた検出値を取得する。具体的には、流量検出部11は、温度検出部111から出力された温度検出信号と温度検出部112から出力された温度検出信号とを出力する。また、検出値取得部131は、2つの温度検出信号の差分を算出する。また、流量算出部133は、検出値に基づいて流量を算出する。なお、流量算出部133は、特性値に基づいて流量を補正するようにしてもよい。
【0052】
また、測定パラメータ変更部134は、算出された流量に基づいて、流量の変化の周波数又は周期を算出する(S3)。本ステップでは、算出された流量の変化から周期性のような規則性を検知し、単位時間あたりの繰り返しの数又は繰り返しにかかる時間を求める。
【0053】
図10は、流量の変化に脈動が生じる場合の単位時間当たりの流量の時間的な変化を模式的に表す図である。
図10のグラフは、縦軸が1時間あたりの流量(L/h)を表し、横軸が時間(s)を表す。また、
図10の例では、実線の曲線で示すように、20Hz程度の周波数で流量に脈動が生じている。このような脈動や揺らぎは、例えば流量測定装置が設置される配管の構造に起因して発生することがある。また、
図10の丸印は、サンプリングのタイミングを示している。
【0054】
S
3においては、例えばある時点における流量に対し誤差が所定値以下の値が規則的に出現するか、極大値及び極小値の少なくともいずれかが規則的に出現するか等の判断基準に基づいて、流量の変化の周期性を検知し、周波数を求める。周期性の検知は、上述した高速サンプリングにより取得された検出値に基づいて算出される流量の値に基づいて、ある時点に算出された流量の値とほぼ同じ値が周期的に算出されるか判断する。また、直近の所定数の流量の値を用いて、極大値や極小値を検出し、判断に用いるようにしてもよい。例えば、算出される流量の値が増加傾向にある期間と減少傾向にある期間とが、周期的に繰り返されるか判断するようにしてもよい。例えば、初期的に検出されたある時点における流量の値と、時間経過に伴う流量の増減とを検出し、周波数を求めることができる。すなわち、
図10に両端が矢印の区間で示すように、流量が増加傾向にある区間において算出されたある流量とほぼ同じ値が、同様に流量が増加傾向にある区間において繰り返し算出される場合、当該値の間を1周期と判断して周波数を計数することができる。このとき、流量が減少傾向にある区間において当該値が算出されても、周期の区切れ目ではないと判断できる。同様に、極大値や極小値を検知し、極大値又は極小値の間を1周期と判断して周波数を計数するようにしてもよい。この場合は、例えば、流量が増加傾向にある区間の後に現れる、流量の増減を表す傾きがゼロのピーク値を極大値と判断したり、流量が減少傾向にある区間の後に現れる、傾きがゼロのピーク値を極小値と判断したりする。また、
図10に示すような波形に限らず、複雑な波形形状が周期的に現れる場合もある。よって、所定の閾値以上の極大値の間、又は所定の閾値以下の極小値の間に、ある時点に測定された流量に対する誤差が所定値以下の値が所定回数出現する場合に、周期性があると判断するようにしてもよい。このとき、例えば算出される流量の移動平均を用いるようにしてもよい。総括すると、測定パラメータ変更部134は、流量の値の変化を用いて周期性を検知する。
【0055】
その後、前回周波数を検知する処理(S1~S3)を行ったときの測定周期(又は周波数)と、今回周波数を検知する処理を行ったときの測定周期(又は周波数)とが不一致であるか判断する(S4)。本ステップでは、前回においても今回においても周期性が検知された場合において、その周期が変化したか判断する。
【0056】
S4において前回の測定周期と一致しない(S4:YES)と判断された場合、測定パラメータ変更部134は、周期性に基づいて測定パラメータ(測定間隔等)を変更する(S5)。測定は、例えば数周期ごとに、1周期分の期間の流量を所定の間隔で行うものとする。すなわち、本ステップでは、測定パラメータ変更部134は、断続的に行われる測定の各々の始期が、例えば検知された周期の整数倍の間隔になるよう設定する。また、流量の測定を1周期分の期間継続するように、測定の継続期間を設定する。なお、1周期分でなく、周期の整数倍の期間継続するようにしてもよい。また、各期間における測定間隔は、例えばS2において周期性を検知するために高速で行ったサンプリングよりも低い速度で行うようにしてもよい。なお、各期間における測定間隔は、例えば流量の変化率が短
期間で大きく変わる場合に短く設定するようにしてもよい。
【0057】
そして、S5の後、S1において測定間隔を修正するタイミングではないと判断された場合(S1:NO)、又はS4において前回の測定周期と一致していると判断された場合(S4:NO)、検出値取得部131及び流量算出部133は、設定された測定パラメータ(測定間隔等)で流量を測定する(S6)。本ステップでは、S5において設定された測定間隔で測定を開始する。また、所定のサンプリングレートで、S5において設定された測定期間継続して測定を行う。すなわち、測定される流量の変化の周期に基づいて断続的に測定を行い、測定を行っていない期間の流量は前後の期間における流量に基づいて補完することで、全体の流量を求める。
【0058】
流量測定装置1は、以上のような流量測定処理を繰り返す。
【0059】
<効果>
流量測定装置1によれば、測定対象流体に脈動や揺らぎが生じる場合に、測定の精度を維持しつつ消費電力を低減することができる。すなわち、流量の変化の周期に基づいて測定間隔を設定するため、サンプリング対象の偏りを抑え、測定の精度を維持することができる。また、流量の変化の周期に基づいて断続的に測定を行うことにより、サンプリングを継続する場合よりも消費電力を抑えることができる。
【0060】
図11は、
図4等に示したセンサ素子100のマイクロヒータ101の温度と測定タイミングとの関係を模式的に示す図である。
図11のグラフは、縦軸がマイクロヒータ101の温度を示し、横軸が時間の経過を示している。流量測定装置1は、マイクロヒータ101を備えるセンサ素子100を利用しており、流量の測定時には、例えば制御部13の検出値取得部131の制御に基づいてマイクロヒータ101を加熱する。従って、測定回数を減らすことにより、マイクロヒータ101の加熱による電力の消費を抑えることができる。
【0061】
(特性値に基づく補正)
流量測定装置1は、流量の値を特性値に基づいて補正するようにしてもよい。特性値に基づく補正をさらに行うことにより、様々な測定対象流体について流量の値を適切に補正することができるが、必ずしも本補正を行う必要はない。次に、物性の特性値に基づく補正について説明する。特性値に基づく補正においては、センサ感度比を求める。センサ感度比とは、基準となる気体を流した場合のセンサ出力値に対する、所定の気体を流した場合のセンサ出力値の比であり、熱拡散率を表す特性値である。センサ感度比αは、下記の式(2)で求められる。
α = β × ΔT ・・・(2)
なお、βは所定の係数である。また、ΔTは、加熱部123の温度変化の前後において温度検出部121及び温度検出部122により出力された検出値の差分である。
【0062】
その後、流量算出部133は、下記の式(3)を用いて、補正後の流量を算出する。
補正後の出力 = 流量算出部の出力 × α ・・・(3)
【0063】
本実施形態では、ヒータの温度を変化させた際にヒートパイルで検出される温度の変化量(ΔT)を用いることで、測定対象流体の熱拡散率を検出することができるようになる。熱式のフローセンサが出力する流量は、熱拡散率と相関があり、本実施形態に係る流量の補正処理によれば、あらゆる気体について適切に補正できるようになる。したがって、熱拡散率が異なる測定対象流体に対し、流量の測定の精度を向上させることができる。
【0064】
図12は、縦軸にセンサ感度比、横軸に熱伝導率を示すグラフである。ここで、
図12
に示すように、例えば組成の異なる混合ガスのように熱伝導率以外の物性値が異なる複数のガス群が存在する場合、物性値としてある熱伝導率が求められただけではいずれのセンサ感度比を用いて補正すればよいのか定まらない。すなわち、マイクロヒータの加熱温度とサーモパイルの検知温度とを1組用いて補正を行う手法では、所定のガス群に属する2以上の基準ガスに基づいて補正を行っていたところ、複数のガス群について適切に補正を行うことはできなかった。
【0065】
図13は、縦軸にセンサ感度比、横軸にΔTを示すグラフである。
図12に示した、センサ感度比と熱伝導率とが一直線に近似されないガスについても、センサ感度比とΔTとは一直線に近似される。したがって、本実施形態では熱拡散率が未知のガス群についても補正を行うことができる。
【0066】
以上のように、物性値検出部12によって、流体温度の検出と物性値の検出とを行うことにより、部品の点数を増価させることなく、温度補償の精度を向上させることができる。また、同一構造のセンサ素子100を物性値検出部12及び流量検出部11として共通に用いるようにすれば、部品の種類を削減し、流量測定装置1の製造コストを低減させることができる。
【0067】
<副流路部の変形例>
図14A~
図14Dは、副流路部3の上面において流入用流路34と流出用流路35との間に形成される、物性値検出用流路32および流量検出用流路33の変形例を示す上面図である。例えば、
図14Aに示すように、物性値検出用流路32を直線状に形成し、流量検出用流路33を略コ字型に形成してもよい。
【0068】
また、
図14B~
図14Dに示すように、流量検出用流路33に対して測定対象流体を流入させる方向と、物性値検出用流路32に対して測定対象流体を流入させる方向とが直交するように、物性値検出用流路32を形成してもよい。すなわち、測定対象流体が流れる方向と、物性値検出用流路32に配置された物性値検出部12上において温度検出部121、加熱部123、及び温度検出部122が並ぶ所定の方向とが、垂直になるように配置される。測定対象流体が流れる方向に対して、物性値検出部12のセンサ素子100と流量検出部11のセンサ素子100とは平面視上において90度回転させた向きで配置される。したがって、
図14B~
図14Dのように、測定対象流体が流れる方向を直交させる場合は、物性値検出部12のセンサ素子100及び流量検出部11のセンサ素子100の配置する向きを一致させることができる。したがって、流量測定装置1の製造過程において、回路基板5に物性値検出部12および流量検出部11を実装する工程を簡略化することができる。
【0069】
<流量測定装置の変形例1>
本発明に係る流量測定装置の他の変形例について、
図15A~
図15Cに基づいて説明する。なお、上述した実施形態と対応する部材に関しては、対応する符号を付し、その説明を省略する。本変形例に係る流量測定装置は、流量検出部が主流路に配置される。
【0070】
【0071】
図15A~
図15Cに示されるように、流量測定装置1aでは、主流路部2aの内周面の流入口34Aと流出口35Aとの間に、開口部37Aが形成されている。副流路部3aの内部には、流量検出部11が配置されたセル状の流量検出用流路37aが形成されており、流量検出用流路37aは開口部37Aに連通している。このため、流量検出用流路3
7aには、開口部37Aを介して主流路部2aを流れる測定対象流体が流入し、流量検出部11によってその流量が検出される。なお、開口部37Aの大きさを制御調整することによって、主流路部2aから流量検出用流路37aに流入する測定対象流体の流量を制御することができる。
【0072】
副流路部3aは、流入用流路34と、物性値検出用流路32と、流出用流路35とから構成されており、物性値検出用流路32は、長手方向に延在する流路に、測定対象流体の物性値を検出するための物性値検出部12が配置された物性値検出用流路32を有している。
【0073】
このように、流量測定装置1aでは、物性値検出部12が副流路部3aに配置され、流量検出部11が主流路部2aに配置されている。このため、流量測定装置1aでも、物性値検出部12の検出レンジに応じた流量に制御することが可能である。したがって、本変形例によっても、測定対象流体の温度や物性値を精度よく検出することができる。なお、本変形例において、流量検出部11と物性値検出部12とを逆に配置してもよい。このような構成であっても、流体の温度に応じた値を直接検出するため、流体温度と環境温度との差の影響を低減させることができる。
【0074】
<流量測定装置の変形例2>
本発明に係る流量測定装置の他の変形例について、
図16A及び
図16Bに基づいて説明する。なお、実施形態と対応する部材に関しては、対応する符号を付し、その説明を省略する。本変形例に係る流量測定装置は、独立した2つの副流路を有する点で、上述の流量測定装置とは異なっている。
【0075】
図16Aは、本実施形態に係る流量測定装置1bを示す斜視図であり、
図16Bは、
図16Aに示される副流路部3を示す上面図である。
図16Aおよび
図16Bに示されるように、流量測定装置1bでは、副流路部3bは、その内部および上面に2つの副流路部が形成されている。
【0076】
第1の副流路部は、流入用流路34bと、物性値検出用流路32bと、流出用流路35bとから構成されており、物性値検出用流路32bには、長手方向に延在する流路に、測定対象流体の物性値を検出するための物性値検出部12が配置されている。
【0077】
第2の副流路部は、流入用流路34Bと、流量検出用流路33Bと、流出用流路35Bとから構成されており、流量検出用流路33Bには、長手方向に延在する流路に、測定対象流体の流量を検出するための流量検出部11が配置されている。
【0078】
このように、流量測定装置1bでは、副流路部3bが独立した2つの副流路を有しており、物性値検出部12が第1の副流路部に配置され、流量検出部11が第2の副流路部に配置されている。このため、流量測定装置1bによれば、物性値検出部12および流量検出部11の検出レンジに応じた流量を、個別に制御することが可能である。したがって、本変形例によっても、測定対象流体の温度や物性値を精度よく検出することができる。
【0079】
<流量測定装置の変形例3>
本発明に係る流量測定装置の他の変形例について、
図17A~
図17Cに基づいて説明する。なお、実施形態と対応する部材に関しては、対応する符号を付し、その説明を省略する。本変形例に係る流量測定装置は、物性値検出用流路が、流量検出用流路内に形成されている点で、上述の流量測定装置と異なっている。
【0080】
図17Aは、本実施形態に係る流量測定装置1cを示す斜視図である。
図17Bは、図
17Aに示される副流路部3cを示す斜視図である。
図17Cは、
図17Aに示される副流路部3cを示す上面図である。
【0081】
図17A~
図17Cに示されるように、流量測定装置1cでは、副流路部3cは、流入用流路34と、物性値検出用流路32cと、流量検出用流路33cと、流出用流路35とから構成されている。
【0082】
副流路部3cでは、物性値検出用流路32cが、流量検出用流路33c内に形成されており、測定対象流体の流れ方向に対して上流側に流量検出部11が配置され、下流側に物性値検出部12が配置されている。ここで、物性値検出用流路32cは、測定対象流体の流量を制御するための流量制御部材40によって、流量検出用流路33cと仕切られており、物性値検出部12は流量制御部材40の内部に配置されている。
【0083】
流量制御部材40は、物性値検出用流路32cの物性値検出部12を通過する測定対象流体の流量を制御するための部材であり、第1側壁部40aと第2側壁部40bとから構成されている。第1側壁部40aおよび第2側壁部40bは何れも略コの字型の板状部材であり、それぞれの端部を対向させた状態で、所定の間隔をおいて配置されている。よって、第1側壁部40aと第2側壁部40bとの間隔を制御することによって、流量制御部材40の内部、すなわち、物性値検出用流路32cを通過する測定対象流体の流量を調整することができる。
【0084】
このように、流量測定装置1cでは、副流路部3cが流量制御部材40を備え、流量制御部材40の内部に物性値検出用流路32cが設けられているため、副流路部3c内の任意の位置に物性値検出用流路32cを設けることが可能となる。また、流量制御部材40を備えることで、物性値検出用流路32cを通過する測定対象流体の流量を容易に制御することができる。
【0085】
このように、物性値検出用流路32cが、流量検出用流路33c内に形成されて構成であっても、物性値検出部12および流量検出部11の検出レンジに応じた流量を個別に制御することが可能である。したがって、本変形例によっても、測定対象流体の温度や物性値を精度よく検出することができる。
【0086】
<流量測定装置の変形例4>
本発明に係る流量測定装置の他の変形例について、
図18A~
図18Cに基づいて説明する。なお、実施形態と対応する部材に関しては、対応する符号を付し、その説明を省略する。本変形例に係る流量測定装置は、物性値検出部12を備えておらず、主流路内に流量検出部11が設けられている点で、上述の流量測定装置と異なっている。
【0087】
図18Aは、本変形例に係る流量測定装置1dを示す斜視図である。
図18Bは、流量測定装置1dの横断面の中央及び流量検出部11の中央を通る面で切断した断面図である。
図18Cは、主流路を流体が流れる方向に垂直な面で切断した断面図である。
【0088】
図18A~
図18Cに示すように、流量測定装置1dにおいては、主流路部2の側面に流量検出部11を収容することができる開口である流量検出用流路33dが設けられている。また、回路基板5(
図18Bに図示)が、主流路部2の外側から流量検出用流路32dを覆うように接続される。このとき、回路基板5上に実装された流量検出部11が、流量検出用流路33d内に配置される。本変形例に係る流量検出用流路33dは、主流路部2から分流されたものではなく、流量検出部11は主流路部2内に設けられている。
【0089】
このような流量測定装置1dにおける流量検出部11であっても、主流路部2内を流れ
る流体の量に応じた値を検出することができる。なお、さらに物性値検出部12も、主流路部2内に設けるようにしてもよいが、本変形例のように物性値検出部12を備えていなくても、測定対象流体に脈動や揺らぎが生じる場合に、測定の精度を維持しつつ消費電力を低減することができる。
【0090】
<流量測定装置の変形例5>
本発明に係る流量測定装置の他の変形例について、
図19A及び
図19Bに基づいて説明する。なお、実施形態と対応する部材に関しては、対応する符号を付し、その説明を省略する。本変形例に係る流量測定装置は、物性値検出部12を備えておらず、主流路部2から分岐した流量検出用流路内に流量検出部11が設けられている点で、上述の流量測定装置と異なっている。
【0091】
図19Aは、本変形例に係る流量測定装置1eを示す斜視図である。
図19Bは、
図19Aに示される流量測定装置1eを示す断面図である。
【0092】
図19A及び
図19Bに示されるように、流量測定装置1eでは、副流路部3eは、流入用流路34と、流量検出用流路33eと、流出用流路35とから構成されている。副流路部3eでは、主流路部2から分岐した流量検出用流路33cが形成されており、流量検出用流路33cに流量検出部11が配置されている。
【0093】
このような流量測定装置1dにおける流量検出部11であっても、主流路部2内を流れる流体の量に応じた値を検出することができる。なお、さらに物性値検出部12も、主流路部2内に設けるようにしてもよいが、本変形例のように物性値検出部12を備えていなくても、測定対象流体に脈動や揺らぎが生じる場合に、測定の精度を維持しつつ消費電力を低減することができる。
【0094】
<流量測定装置の変形例6>
測定パラメータの変更は、回路基板5が備える制御部13以外の装置が制御するようにしてもよい。
図20は、例えば流量測定装置1を設置するガスメータ等のように回路基板5とは異なるホスト装置9が測定パラメータ変更部134を備える例を示す機能ブロック図である。
図20においても、実施形態と対応する部材に関しては、対応する符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
本変形例では、回路基板5とホスト装置9とは信号線又は無線で接続されているものとする。また、測定パラメータ変更部134は、ホスト装置9が備えるマイクロコントローラ等のプロセッサによって実現され、実施形態と同様の処理を行う。なお、本変形例では、ホスト装置9を含めて本発明に係る「流量測定装置」と呼ぶものとする。このような構成であっても、測定対象流体に脈動や揺らぎが生じる場合に、測定の精度を維持しつつ消費電力を低減することができる。
【0096】
<センサ素子の変形例>
図21は、
図7に示される物性値検出部12の変形例の概略構成を示す上面図である。
図19に示されるように、例えば温度検出部122を省略して、加熱部123と、温度検出部121とで、物性値検出部12aを構成してもよい。すなわち、加熱部123と温度検出部121とを、測定対象流体の流れ方向と直交する方向に並べて配置するようにしても、温度検出部121によって流体温度及び流体の物性値を検出することができる。
【0097】
以上のような実施形態及び変形例の構成は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。また、流量測定装置1が実行する流量測定方法は、プロセッサ等の演算装置に実行させるプログラム、又はプログラムを格納する媒体
として提供してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 :流量測定装置
11 :流量検出部
111 :温度検出部
112 :温度検出部
113 :加熱部
12 :物性値検出部
121 :温度検出部
122 :温度検出部
123 :加熱部
13 :制御部
131 :検出値取得部
132 :特性値算出部
133 :流量算出部
134 :測定パラメータ変更部
2 :主流路部
21 :オリフィス
3 :副流路部
32 :物性値検出用流路
33 :流量検出用流路
34 :流入用流路
35 :流出用流路
40 :流量制御部材
4 :シール
5 :回路基板
6 :カバー
100 :センサ素子
101 :マイクロヒータ
102 :サーモパイル
103 :絶縁薄膜
104 :シリコン基台
105 :キャビティ