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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】反応装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/18 20060101AFI20220715BHJP
   B01F 23/231 20220101ALI20220715BHJP
   B01F 27/91 20220101ALI20220715BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20220715BHJP
【FI】
B01J19/18
B01F23/231
B01F27/91
B01F35/71
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018188811
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020054974
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】渕脇 正樹
(72)【発明者】
【氏名】本間 剛秀
(72)【発明者】
【氏名】槙 孝一郎
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215136(JP,A)
【文献】特開2016-203143(JP,A)
【文献】特開昭59-160516(JP,A)
【文献】特表2010-515561(JP,A)
【文献】実開昭61-064331(JP,U)
【文献】特表昭56-500284(JP,A)
【文献】特開昭63-104637(JP,A)
【文献】特開平02-289689(JP,A)
【文献】特開平01-242138(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00382450(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00、19/18-22
B01F 23/23-2375
B01F 27/80-96
B01F 33/40,35/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の液相収容槽である反応容器と、
前記反応容器の中心に垂設されている撹拌機と、
前記反応容器内に前記撹拌機よりも外周壁寄りの位置に垂設されている中空の管状部材であって下端部側に気体吹き込み口を有する気体吹き込み管と、を備える反応装置であって、
前記撹拌機は、反応容器の中心から外周壁に向かう液流を形成することができる機器であって、
前記気体吹き込み管に、前記液流の下流方向側の外側面に、前記気体吹き込み口近傍を起点に鉛直上向きに延伸する邪魔板が設置されている、反応装置。
【請求項2】
前記邪魔板は、前記液流により弾性変形する弾性部材で形成されている、請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記邪魔板は、前記気体吹き込み管の外側面からの延出幅が、該邪魔板の鉛直下方側より鉛直上方側においてより大きい形状である、請求項1又は2に記載の反応装置。
【請求項4】
前記邪魔板は、鉛直下方側の端部寄りの一部分のみが前記気体吹き込み管の外側面の前記気体吹き込み口近傍に接合されていて、該邪魔板の他の部分は、鉛直上方に向けて、該気体吹き込み管の外側面からの離間距離が漸増するように配置されている、請求項1から3のいずれかに記載の反応装置。
【請求項5】
前記邪魔板は、鉛直上方側端部に曲面部を有する、請求項1から4のいずれかに記載の反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相に気体を導入して反応させる反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラント等の反応装置として、撹拌しながら反応容器内の溶液やスラリー等の液相に気体を導入しながら反応させ、化学処理を行うものが多く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、容器の長手方向軸のまわりに回転可能なシャフトと、そのシャフトに取り付けられ、軸方向に離間して配置された径方向に延びる第1及び第2のインペラとを備えた混合容器が開示されている。具体的に、この混合容器においては、第1のインペラは軸方向に第2のインペラに向けて流体を移動させるように動作可能な複数の湾曲したブレードを含み、第2のインペラは軸方向に第1のインペラに向けて流体を移動させるように動作可能な複数の湾曲したブレードを含み、又、容器底面にガス導入口が設けられている。特許文献1では、このような構成の混合容器を用いることにより、その混合容器の中央部において強い乱流領域を生成させて、容器内の液体の混合を容易に制御できるようにしている。
【0004】
しかしながら、このような混合容器では、中央に大きく設けられた気体吹き込み口から大きな気泡が導入されると、混合容器内で気泡径が小さくならないうちに混合容器の上部の液面まで達してしまうという問題がある。そのため、このような混合容器を化学反応に用いたとしても、反応に寄与しない気体が多くなり、反応効率が低下してしまう。
【0005】
反応容器内で化学反応に用いられる気体は、その反応容器内の液相中でその気泡径を小さくすることが重要であり、小気泡にするほど気液界面の面積が大きくなり、又、気泡が液体内を循環滞留する時間が長くなること等から、気体成分が液相に溶け込む量が多くなり、その結果として液相中の気体濃度が高まって反応効率を向上させる効果が期待できる。つまり、反応の効率化のためには、導入する気体を液相中で小気泡にして気泡量を最大化させることが重要となる。
【0006】
液相中での気泡径を小さくする技術として、スパージャー(散気管)を用いる方法や、撹拌翼下に気体を吹き込んで翼で気泡を分断させる方法等が知られている。例えば、気体の吹き込み量が多い場合には、フラッディング現象により撹拌翼が空回りして、気体が液中に溶け込む量が小さくなることが知られており、その対策として、特許文献2には、撹拌翼より大きな径のリングスパージャーを用いて、吹き出た気泡を装置内で循環する液体の流れに乗せる技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、スパージャーを、気体を導入する反応装置に適用しようとしたとき、スパージャーから装置内に吹き込む気体の圧力を、反応容器の内圧とスパージャーの圧力損失とを加えた値を超えて加圧する必要がある。又、スパージャーは、気泡出口径が小さいために圧力損失が大きいため、特に反応容器の内圧を加圧する場合には導入する気体の加圧設備のコストが高くなる問題がある。更に、反応によっては、中間物を含む反応生成物や反応後の残渣が付着物となってスパージャーの小さな気泡出口を塞ぐことがあり、付着物を取り除くために装置を停止させることで稼働率が低下するという問題もある。このような種々の問題点により、反応装置にスパージャーを用いることは困難な場合があった。
【0008】
気体を導入する反応装置においては、圧力損失を最小化するために気体吹き込み管の管径や出口径を可能な限り大きくすることが好ましい。ところが、気体吹き込み管から放出される気泡の気泡径は、気体吹き込み管の出口径に依存することがよく知られており、圧力損失を最小化させようとすると気泡径は大きくなってしまう。そして、気泡径が大きくなることは、気液界面の面積が小さくなることを意味し、好ましくない。このことから、圧力損失が小さい大きな出口径から放出された大きな径の気泡を、小さな気泡径にするための技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2009-536095号公報
【文献】特開2014-113564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実情を鑑みてなされたものであり、簡易で低コストで実現可能な構造によって反応液内に気体を導入することができる反応装置でありながら、反応液内に導入された気体の大きな径の気泡を効率的に分断して十分にその気泡径を小さくすることができる反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、反応容器と、撹拌機と、気体吹き込み管とを備えた反応装置において、撹拌機により発生する液流に対して下流側に相当する気体吹き込み管の外側面に邪魔板を配置することにより、気体吹き込み管から放出された気泡を効率的に分断させて、気泡径を十分に小さくとすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
(1) 液相収容槽である反応容器と、前記反応容器の中心に垂設されている撹拌機と、前記反応容器内に前記撹拌機よりも外周壁寄りの位置に垂設されている中空の管状部材であって下端部側に気体吹き込み口を有する気体吹き込み管と、を備える反応装置であって、前記撹拌機は、反応容器の中心から外周壁に向かう液流を形成することができる機器であって、前記気体吹き込み管に、前記液流の下流方向側の外側面に、前記気体吹き込み口近傍を起点に鉛直上向きに延伸する邪魔板が設置されている、反応装置。
【0013】
(1)の反応装置によれば、簡易な構造からなり低コストで製造使用が可能な中空の管状部材からなる気体吹き込み管によって反応液に気体を導入する装置でありながら、反応液の液流との関係に特段の配慮をして配置される邪魔板により、反応液に導入された気体の気泡を効率的に分断して、十分に気泡径を小さくすることができる。
【0014】
(2) 前記邪魔板は、前記液流により弾性変形する弾性部材で形成されている、(1)に記載の反応装置。
【0015】
(2)の反応装置によれば、邪魔板を適切な弾性を有する部材によって形成することにより、これを液流中で適度に振動させて、(1)の発明の奏する上述の気泡の分断効果を更に向上させることができる。
【0016】
(3) 前記邪魔板は、前記気体吹き込み管の外側面からの延出幅が、該邪魔板の鉛直下方側より鉛直上方側においてより大きい形状である、(1)又は(2)に記載の反応装置。
【0017】
(3)の反応装置によれば、邪魔板の形状を上記の形状に更に改良することにより、反応液中を移動する気泡と邪魔板との接触率を高めて、(1)又は(2)に記載の反応装置の奏する上述の気泡の分断効果を更に向上させることができる。
【0018】
(4) 前記邪魔板は、鉛直下方側の端部寄りの一部分のみが前記気体吹き込み管の外側面の前記気体吹き込み口近傍に接合されていて、該邪魔板の他の部分は、鉛直上方に向けて、該気体吹き込み管の外側面からの離間距離が漸増するように配置されている、(1)から(3)のいずれかに記載の反応装置。
【0019】
(4)の反応装置によれば、邪魔板の吹き込み管に対する接合態様を上記の形状に更に改良することにより、反応液中を移動する気泡と邪魔板との接触率を高めるとともに、邪魔板の振動の発生も促進することもできる。これらの作用により、(1)から(3)のいずれかに記載の反応装置の奏する上述の気泡の分断効果を更に向上させることができる。
【0020】
(5) 前記邪魔板は、鉛直上方側端部に曲面部を有する、(1)から(4)のいずれかに記載の反応装置。
【0021】
(5)の反応装置によれば、邪魔板の形状について、反応液の液面に近い上方の端部が曲面となるような形状とするように更に改良することにより、邪魔板に沿ってこの曲面部分まで移動してきた気泡に回転のトルクを加えることができる。これにより、(1)から(4)のいずれかに記載の反応装置の奏する気泡の分断作用との相乗効果により、気泡の分断がより高い効率で進行する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡易で低コストで実現可能な構造によって反応液内に気体を導入することができる反応装置でありながら、反応液内に導入された気体の気泡を効率的に分断して十分に気泡径を小さくすることができる反応装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の反応装置の全体構成を示す縦断面模式図である。
図2図1のA部の気体吹き込み管の出口(気体吹き込み口)付近の拡大図であり、液流と邪魔板の位置関係を説明するための図である。
図3】邪魔板の実施形態の一例を示す模式図である。
図4】邪魔板の実施形態の他の一例を示す模式図である。
図5】邪魔板の実施形態の一例について、液流の下流方向から見た模式図である。
図6】邪魔板の実施形態の更なる変形例について、液流の下流方向から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態の一つである反応装置について、適宜図面を参照しながら、その詳細を説明する。尚、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態である反応装置1の縦断面の模式図である。同図に示す通り、反応装置1は、反応容器10と、撹拌機20と、気体吹き込み管30とを備える。反応装置1は、反応容器10に液体やスラリー等の液相である反応液を収容し、撹拌機20により液流を発生させた状態において、気体吹き込み管30から化学反応に寄与する気体を導入して、液相中において気体を撹拌しながら化学反応を生じさせる。
【0026】
反応容器10に導入される気体は、特に限定されず、例えば空気、窒素、酸素等の気体を、反応液中で所望する化学反応に応じて用いることができる。
【0027】
[反応容器]
反応容器10は、水平方向に切断した横断面において、通常、円形の断面を有する円筒状の液相収容槽であり、その内部に所定の高さまで反応液を収容し、この反応液内で化学反応を生じさせる。反応容器10は、その上面が開放されているものであってもよく、或いは、閉鎖されているものであってもよい。反応容器10の上面(閉鎖されている場合)及び底面は、それぞれが平面となるものに限定されず、垂直方向に切断した縦断面図において上面や底面に曲率部を有するものや、上面や底面と側面との間に曲率部を有するものであってもよい。
【0028】
[撹拌機]
撹拌機20は、反応容器10に収容された反応液を撹拌する機能を有する。撹拌機20は、反応容器10の上部より垂下される態様で垂設されている撹拌軸21と、撹拌軸21の下端位置に撹拌軸21の軸方向に対して垂直に設けられた撹拌羽根22と、を有する。
【0029】
撹拌軸21は、反応装置1の横断面図において、その中心が円形の反応容器の中心と一致するように配置されることが好ましい。これにより、反応装置に導入される気体を、反応液中により効率的に分散させることができる。
【0030】
撹拌羽根22は、撹拌軸21を回転軸として所定の速度で回転することにより、反応液内に、反応容器10の中心から外周壁に向かう液流、好ましくは、中心から外周壁に向かうに連れて鉛直下向き方向に降下していく斜め下向きの液流を、発生させることができるものであればよい。図1において撹拌羽根22の下方に記されている矢印の方向に沿う液流、即ち、中心から外周壁に向かうに連れて鉛直下向き方向に降下していくこのような液流により、反応液全体を効率よく撹拌することができる。撹拌羽根22は、このような液流を発生させることができる形状及び設置態様であれば特定の形状等に限定はされないが、図1に示すような複数の撹拌翼が適切に組合わされてなるプロペラ形状のものを好ましく用いることができる。
【0031】
撹拌羽根22の枚数は、複数であることが好ましいが、上述した態様の液流を発生させることができる限りにおいて、特に限定はされない。又、そのよう撹拌羽根22は、撹拌軸21の異なる垂直位置に、上下に離間する態様で複数配置されていてもよい。
【0032】
[気体吹き込み管]
気体吹き込み管30は、化学反応に寄与する気体を反応容器10内に収容されている反応液中に導入するものであり、下端部に気体吹き込み口を有する中空の管状部材である。
【0033】
気体吹き込み管30は、図1に示す通り、反応容器10の中心よりも外周壁寄りとなる位置であり撹拌羽根22の回転とは干渉しない水平位置において、反応液の液面に略垂直に挿入されている。又、気体吹き込み管30の配置は、上記の液流との関係において、当該液流の強さ(流量及び/又は流速)が、できるだけ大きくなる位置に、気体吹き込み口が配置されることとなる配置とすることが好ましい。
【0034】
気体吹き込み管30は、その下端部の気体吹き込み口から気体を放出する方向、即ち、気体吹き込み口の開口面に直交する方向が、鉛直下方に向けられているか、或いは、当該方向からの角度差が20°以内の方向に向けられていることが好ましい。反応液内において、上記角度範囲内の方向に向けて気体を放出できるように気体吹き込み口が形成されていることにより、気体吹き込み口近傍に形成されている邪魔板31による気泡の分断効果をより効率良くより高い確度で発現させることができる。邪魔板31による気泡の分断にかかる作用効果の詳細については後述する。
【0035】
(邪魔板)
図1に示す通り、気体吹き込み管30の外側面には、邪魔板31が設置されている。本発明の反応装置1は、この邪魔板31が、反応容器10内に発生する液流の方向や強さに対して最適化された態様で設置されていることを主たる特徴とする。
【0036】
邪魔板31の設置位置や延出方向は、反応容器10内の液流に対して最適化される。具体的な設置位置は、気体吹き込み管30の外側面の全周のうち、反応液の液流の方向(例えば、図1の矢印方向)に対して、下流側半分の範囲が、邪魔板31を設置する範囲となる。
【0037】
ここで、気体吹き込み管30の外側面のうちの液流の方向に対する「下流側半分の範囲」とは、具体的には、同外側面のうち、図2における領域B(斜線部分)に接している部分のことを言う。図2に示すように、気体吹き込み管30の中心点に対して、矢印で示す方向に反応液の液流がある場合には、邪魔板31は、同液流が気体吹き込み管30の中心点に向かう線とのなす角が90°以上となるような方向に向けて、気体吹き込み管30の外側面に設置されることにより、この領域B内に配置される。
【0038】
尚、気体吹き込み管30の外側面における邪魔板31を設置すべき範囲(反応液の液流の方向に対する下流側半分の範囲)は、液流方向が反応層の中心から外周壁方向に向かう方向である限り、即ち、撹拌機20が、そのような方向に液流を発生させるものである場合には、これに対応する邪魔板31の好ましい配置位置は、同外側面の全周のうち、反応容器10の外周壁に近い側の半分の範囲内となる。
【0039】
又、邪魔板31の設置位置は、鉛直方向においては、図1図3、及び、図4に示す通り、その下端部分が気体吹き込み口近傍に接合されていればよく、設置範囲については、当該下端部を起点に適宜鉛直上向きに延伸された範囲であればよい。
【0040】
上述した範囲内の位置及び方向に邪魔板31を設置することにより、気体吹き込み管30の気体吹き込み口から放出された気泡は、液流により、反応容器10の中心から外周壁に向かう方向に沿って移動しながら、浮力により鉛直上方に移動する。このときに、これらの気泡の大部分は、上述の領域B上の空間内で、邪魔板31と衝突して分断されるため、これにより気泡径を十分に小さくすることができる。
【0041】
邪魔板31の材料については、特に限定はされないが、撹拌機20によって発生させる上記の液流により弾性変形する弾性材料により形成されているものであることがより好ましい。このような弾性変形により邪魔板31が振動することで、周囲の液流に速度勾配が発生し、気泡が存在するとこれがせん断力として働くために気泡径をより小さくすることが可能となる。尚、邪魔板31にこのような効果を付与することができる弾性材料は、液相である反応液に応じて適宜選択すればよい。具体的にはステンレスやチタン合金などの耐食性を有する材料、或いは、反応液の種類によっては各種の樹脂を、邪魔板31を形成する弾性材料として用いることもできる。又、邪魔板31を形成する弾性材料は、気体吹き込み管30と同じ材質とすることがより好ましい。
【0042】
邪魔板31の形状については、矩形形状の外縁を有する板状の部材であってもよいが、これに限られない。ここで、図3に示す通り、邪魔板31の気体吹き込み管30の延伸方向における寸法を、邪魔板31の長さ(L)とした場合、その長さ(L)は、特に限定されない。邪魔板31の気体吹き込み管30の気体吹き込み口側の端部については、一例としては、図3に示すように、気泡の放出の障害とならない範囲で気体吹き込み口よりも鉛直下方の位置となるような長さ(L)とすることができる。一方、邪魔板31の反対側の端部についても、例えば、反応容器10内における撹拌羽根22の設置位置と略同等の鉛直位置となるような長さ(L)とすることができる。
【0043】
又、図3に示す通り、邪魔板31の気体吹き込み管30からの延出幅を邪魔板31の幅(W)とした場合に、邪魔板31は、この幅(W)が、図3に示すように、気体吹き込み口近傍よりも、鉛直上方寄りの部分(反応装置1の作動時において、反応液の液面により近い部分)の方がより大きくなっている形状であることが好ましい。気体吹き込み管30の気体吹き込み口から放出された気泡は、液流により流されながら浮力によって液面に向かって移動するので、気体吹き込み管30の上方になるほど気体吹き込み管30から離れた位置を移動することになる。よって、邪魔板31の形状をこのような形状とすることにより、反応液中を浮力により上昇していく気泡と邪魔板との接触率を高めて、気泡を分断する作用をより効率良く発現させることができる。
【0044】
又、邪魔板31の気体吹き込み管30の外側面への接合態様は、図4に示すように、気体吹き込み管30と邪魔板31bの接合態様に例示されるように、気体吹き込み管30の気体吹き込み口付近のみにおいて接合されていて、この接合部分以外の部分は鉛直上方に近づくほど気体吹き込み管30との離間距離が大きくなるような接合態様としてもよい。このような接合態様とすることにより、邪魔板31bの液流により振動が発生しやすくなり、上述した邪魔板31の振動に係る作用により気泡を分断する効果を向上させることもできる。
【0045】
又、邪魔板31は、少なくとも1枚以上で構成され、図5に示す邪魔板31cのように単独の板材で構成されていてもよいが、図6に示す邪魔板」31dのように、複数の板材により構成されている形態でもあってもよい。
【0046】
又、邪魔板31は、図6に示す邪魔板31dのように、気体吹き込み管30の延伸方向に対して平行ではなく所定の角度で傾斜していてもよい。邪魔板31が気体吹き込み管30に対して傾斜していることで、気体吹き込み管30の気体吹き込み口から放出された気泡のうち、邪魔板31に沿って移動する気泡の割合をより多くすることができる。この際、邪魔板31が液流により振動することで、邪魔板31に沿って移動する気泡を分断する効果が更に向上する。
【0047】
更に、邪魔板31は、図6の邪魔板31dのように、鉛直上方、即ち、反応装置1の作動時において反応液の液面に近い側の端部が曲面となるような形状とすることが好ましい。このような形状にすることで、邪魔板31dに沿って移動してきた気泡に回転のトルクが加えられ、液流及び邪魔板31dの振動との相乗効果で気泡分断の作用がより効率よく進行する。曲面とする端部の曲げ方向は、曲げることで気体吹き込み管30との傾斜角が大きくなる方向とすることが好ましい。このような方向に曲げることで、気泡に浮力に対抗する方向に回転とトルクを与えることになり、気泡を分断する効果を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 反応装置
10 反応容器
20 撹拌機
21 撹拌軸
22 撹拌羽根
30 気体吹き込み管
31、31a、31b、31c、31d 邪魔板
図1
図2
図3
図4
図5
図6