(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】生産ラインおよび制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20220720BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20220720BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2019080445
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】笠原 大聖
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-190166(JP,A)
【文献】特開2018-136823(JP,A)
【文献】特開2011-227773(JP,A)
【文献】特開2004-030248(JP,A)
【文献】特開2008-40640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が作業を行う作業台を備えた、セル生産方式を採用する生産ラインであって、
前記作業者を特定する作業者特定部と、
前記作業者が作業を開始してから経過した実作業時間を特定する実作業時間特定部と、
前記作業者の作業内容と前記作業者との組合せにもとづいて設定される所定作業時間を、前記実作業時間が超過するか否かの超過判定を行う超過判定部と、
前記超過判定の結果、超過していた場合には前記作業者が作業を行う
前記作業台の
上面の少なくとも一部の色を変化させて
、前記作業者に超過していることを報知させる報知指示を出力する報知部と、を備える生産ライン。
【請求項2】
前記実作業時間が前記所定作業時間に対して超過している超過時間を算定する超過時間算定部をさらに備え、
前記報知部は、前記超過時間に応じて前記作業台の色の変化を強くして報知させる前記報知指示を出力する、請求項1に記載の生産ライン。
【請求項3】
前記所定作業時間は、前記作業者ごとに固有の、前記作業内容に対する最良の作業時間、または平均作業時間である、請求項1または2のいずれか1項に記載の生産ライン。
【請求項4】
前記作業者のIDカードの情報を取得するコードリーダから情報入力を受け付け、またはカメラの撮影結果を用いて前記作業者を特定する作業者特定機器を備え、
前記作業者特定部は、前記作業者特定機器から受信した情報にもとづいて前記作業者を特定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の生産ライン。
【請求項5】
カメラ、赤外線センサ、または圧力センサを含む実作業時間特定機器を備え、
前記実作業時間特定部は、前記実作業時間特定機器から受信した情報にもとづいて前記実作業時間を特定する、請求項1から4のいずれか1項に記載の生産ライン。
【請求項6】
前記作業台の上方にプロジェクタを備え、
前記プロジェクタの照射口は前記作業台へ向けられており、
前記報知部から入力された報知指示に応じて変化する色を投影する、請求項1から5のいずれか1項に記載の生産ライン。
【請求項7】
前記作業台はディスプレイ上に設けられ、
前記ディスプレイは、前記報知部から入力された前記報知指示に応じて変化する色を表示する、請求項1から5のいずれか1項に記載の生産ライン。
【請求項8】
前記作業台の一部には照明が埋め込まれ、
前記報知部から入力された前記報知指示に応じて変化する色を点灯する、請求項1から5のいずれか1項に記載の生産ライン。
【請求項9】
作業者が作業を行う作業台を備えた、セル生産方式を採用する生産ラインにおける報知動作を制御する制御装置であって、
前記作業者を特定する作業者特定部と、
前記作業者の作業内容を特定する作業内容特定部と、
前記作業者が前記作業内容の作業を開始してから終了するまでに要した実作業時間を特定する実作業時間特定部と、
前記作業内容と前記作業者との組合せにもとづいて所定作業時間を決定し、前記実作業時間が、前記所定作業時間を超過するか否かの超過判定を行う超過判定部と、
前記超過判定の結果、超過していた場合には前記作業者が作業を行う
前記作業台の
上面の少なくとも一部の色を変化させて
、前記作業者に超過していること報知させる報知指示を出力する報知部と、を備える制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は報知機器を備えた生産ライン、およびそれに用いる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セル生産方式とは、組み立て製造業において、一人または数人の作業者が、部品の取り付けから組み立て、加工、検査までの多工程を担当する生産方式であり、主に少量多品種の生産に適用される。
【0003】
セル生産方式の製造ライン(セル生産ライン)において、作業者の作業時間を管理し、作業者の作業時間が所定作業時間を超えている場合に報知を行うための技術が開示されている。
【0004】
特許文献1には、作業者が計測回数をあらかじめ入力し、作業者が作業を開始したときにスタートスイッチを押すことで計時を開始し、作業者が作業を終了したときにカウントスイッチを押すことで計数が行われ、前記計測回数分、スタートスイッチとカウントスイッチを押す動作を繰り返すとブザーが鳴動し作業者に計測終了を通知し、平均タクトタイムを液晶に表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の従来技術は、計測終了時にブザーを鳴動させて報知するため、作業者を驚かせたり、周囲の作業者にも作業に要した時間が周知となり作業者のモチベーションを損なうなど、作業者に不快感を与える。
【0007】
本発明の一態様は、生産ラインにおいて、不快感を与えることなく作業者に対して作業遅延の報知を行う生産ラインを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、上述の課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0009】
本開示の一側面に係る生産ラインは、作業者を特定する作業者特定部と、前記作業者が作業を開始してから経過した実作業時間を特定する実作業時間特定部と、前記作業者の作業内容と前記作業者との組合せにもとづいて設定される所定作業時間を、前記実作業時間が超過するか否かの超過判定を行う超過判定部と、前記超過判定の結果、超過していた場合には前記作業者が作業を行う作業台の色を変化させて報知させる報知指示を出力する報知部と、を備える。
【0010】
上記構成によれば、超過判定の結果、超過していた場合は作業台の色を変化させて報知する。そのため、ブザー鳴動のように作業者を驚かせたり、所定作業時間を超過していることが、周囲の作業者に容易に知られることなく、作業のリズムを安定化させることができる。従って、報知動作が作業者のモチベーションへ与える悪影響を抑制することができる。これにより、作業者が長期従事すること、ならびに作業者当人のパフォーマンス改善、および人材の変動抑止による品質向上効果が期待できる。
【0011】
上記一側面に係る生産ラインは、前記実作業時間が前記所定作業時間に対して超過している超過時間を算定する超過時間算定部をさらに備え、前記報知部は、前記超過時間に応じて前記作業台の色の変化を強くして報知させる前記報知指示を出力する。
【0012】
上記構成によれば、超過判定の直後には色の変化を最も弱くし、超過時間に応じて作業台の色の変化を強くすることができる。これにより、超過判定の直後に作業者に与える不快感を、超過の有無にのみもとづいて報知するよりも抑制することができる。また、超過時間が増すにつれて色の変化を強くし、より確実に報知を行うことができる。
【0013】
上記一側面に係る生産ラインにおいて、前記所定作業時間は、前記作業者ごとに固有の、前記作業内容に対する最良の作業時間、または平均作業時間である。
【0014】
上記構成によれば、作業者ごとに固有の基準(最良の作業時間、または平均作業時間、またはそれらの組み合わせから導出できる値)にもとづいて報知を行うことができる。これにより、作業者ごとに固有の熟練の程度に合わせた報知を行うことができる。
【0015】
上記一側面に係る生産ラインは、前記作業者のIDカードの情報を取得するコードリーダから情報入力を受け付け、またはカメラの撮影結果を用いて前記作業者を特定する作業者特定機器を備え、前記作業者特定部は、前記作業者特定機器から受信した情報にもとづいて前記作業者を特定する。
【0016】
上記構成によれば、生産ラインは、生産作業に従事する作業者が、各作業において作業時間カウントのための付加的な作業を行うことなしに、作業者を特定することがきる。
【0017】
上記一側面に係る生産ラインは、カメラ、赤外線センサ、または圧力センサを含む実作業時間特定機器を備え、前記実作業時間特定部は、前記実作業時間特定機器から受信した情報にもとづいて前記実作業時間を特定する。
【0018】
上記構成によれば、生産ラインは、生産作業に従事する作業者が作業時間カウントのための付加的な作業を行うことなしに、作業者の作業時間を特定することができる。従って、前記作業内容の作業を開始してから経過した時間を特定する実作業時間特定処理のために、作業者が付加的な作業を行う必要が無い。
【0019】
上記一側面に係る生産ラインは、前記作業台の上方にプロジェクタを備え、前記プロジェクタの照射口は前記作業台へ向けられており、前記報知部から入力された報知指示に応じて変化する色を投影する。
【0020】
上記構成によれば、プロジェクタは、作業台から離れた場所から、作業台の一部または全部の色を変化させるような投影を行い作業者への報知を行うことができる。そのため、プロジェクタは、作業による衝撃を受けない。また、作業者が作業する際に干渉する虞を抑制することができる。これにより、作業台の耐衝撃性や形状などの要求仕様を変更することなしに低コストに本開示の内容を実施することが可能になる。
【0021】
上記一側面に係る生産ラインにおいて、前記作業台はディスプレイ上に設けられ、前記ディスプレイは、前記報知部から入力された前記報知指示に応じて変化する色を表示する。
【0022】
上記構成によれば、ディスプレイと作業台との位置調整を行うことなしに、作業台の一部または全部の色を変化させて作業者への報知を行うことができる。
【0023】
上記一側面に係る生産ラインにおいて、前記作業台の一部には照明が埋め込まれ、
前記報知部から入力された前記報知指示に応じて変化する色を点灯する。
【0024】
上記構成によれば、照明と作業台との位置調整を行うことなしに、作業台の一部の色を変化させて作業者への報知を行うことができる。
【0025】
本開示の一側面に係る制御装置は、生産ラインにおける報知動作を制御する制御装置であって、作業者を特定する作業者特定部と、前記作業者の作業内容を特定する作業内容特定部と、前記作業者が前記作業内容の作業を開始してから終了するまでに要した実作業時間を特定する実作業時間特定部と、前記作業内容と前記作業者との組合せにもとづいて所定作業時間を決定し、前記実作業時間が、前記所定作業時間を超過するか否かの超過判定を行う超過判定部と、前記超過判定の結果、超過していた場合には前記作業者が作業を行う作業台の色を変化させて報知させる報知指示を出力する報知部と、を備える。
【0026】
上記構成によれば、超過判定の結果、超過していた場合は作業台の色を変化させて報知する。そのため、ブザー鳴動のように作業者を驚かせたり、所定作業時間を超過していることが、周囲の作業者に容易に知られることなく、作業のリズムを安定化させることができる。従って、報知動作が作業者のモチベーションへ与える悪影響を抑制することができる。これにより、作業者が長期従事すること、ならびに作業者当人のパフォーマンス改善、および人材の変動抑止による品質向上効果が期待できる。
【発明の効果】
【0027】
本開示の一側面に係る生産ラインによれば、実作業時間が所定作業時間を超過していた場合に作業台の色を変化させて報知することにより、所定作業時間を超過していることが周囲の作業者に容易に知られる事を抑止することができる。作業者のモチベーションを損なわないセル生産ラインを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示の実施形態1に係るセル生産ラインの構成を示すブロック図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係るセル生産ラインの全体構成を示す概略図である。
【
図3】本開示の実施形態1に係るセル生産ラインにおける各ステーションの外観を示す概略図である。
【
図4】本開示の実施形態1に係るセル生産ラインの動作を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の実施形態1に係るセル生産ラインの、作業内容と作業者との組合せに応じて記録された作業時間のデータベースの例である。
【
図6】本開示の実施形態1に係るセル生産ラインにおいて、プロジェクタを用いて作業台の色を変化させる報知動作を図示する概略図である。
【
図7】本開示の実施形態1に係るセル生産ラインにおいて、色を変化させる報知領域の一例を示す図である。
【
図8】本開示の実施形態1に係るセル生産ラインにおいて、色を変化させる報知領域の一例を示す図である。
【
図9】本開示の実施形態2に係るセル生産ラインにおいて、ディスプレイを用いて作業台の色を変化させる報知動作を示す図である。
【
図10】本開示の実施形態3に係るセル生産ラインにおいて、作業台の一部に埋め込まれた照明を点灯させて作業者へ報知する報知動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一側面に係る実施形態が、図面にもとづいて説明される。
【0030】
§1 適用例
図1を用いて、本開示が適用される場面の一例が説明される。
図1は、本適用例に係るセル生産ラインCの構成を示すブロック図である。セル生産ラインCは、制御装置10、1つ以上のステーション2、作業者特定機器3を備える。
【0031】
制御装置10は、作業者特定部120、作業内容特定部110、所定作業時間決定部160、実作業時間特定部130、超過判定部140、報知部150、作業者固有作業時間DB(データベース)190、および作業者DB191を含む。
図5に示すように、作業者固有作業時間DB190には、作業内容ID190a、作業者ID190b、作業者固有平均作業時間190c、および作業者固有最良作業時間190dが含まれる。なお、説明の簡便にするため、
図5には、作業者固有平均作業時間190cおよび作業者固有最良作業時間190dの両方を示しているが、後述する所定作業時間決定処理において使用する方が少なくとも格納されていればよい。
【0032】
ステーション2は、作業者W(
図2)が作業する作業台T、作業台Tで作業する作業者Wを特定する実作業時間特定機器210、作業台Tで作業する作業者Wに報知する報知機器220、を備える。
【0033】
制御装置10は、工場における上位システムである図示しない製造実行システムM(Manufacturing Execution System:MES)から、通信部を通じてライン単位の作業指示内容を受信する。作業内容特定部110は、前記ライン単位の作業指示内容にもとづき、作業台Tごとの作業内容(作業内容ID190a)を特定する(作業内容特定処理)。
【0034】
作業者Wは、コードリーダである作業者特定機器3に自身のIDカードを通す。作業者特定機器3はIDカードから読み取られた情報を作業者特定部120へ送信する。作業者特定部120は、前記読み取られた情報にもとづいて作業者Wを特定する(作業者特定処理)。
【0035】
所定作業時間決定部160は、特定された作業内容と特定された作業者Wとの組合せを用いて作業者固有作業時間DB190を検索し、作業者固有平均作業時間190c、または作業者固有最良作業時間190dを所定作業時間として決定する(所定作業時間決定処理)。
【0036】
作業者Wが作業を開始するために作業台Tの近傍にいるとき、ステーション2に据え付けられた実作業時間特定機器210の1つであるカメラ210aは、作業者Wの顔が認識でき、かつ、体のシルエットが正面向きであるか否かを検出し、作業者Wが体をステーション2に向けていること確認する(正対判定)。また、実作業時間特定機器210の1つである赤外線センサ210bは、ヒートマップを用いて、作業者Wがステーション2の近傍にいるか否かを確認する(近接判定)。これにより、実作業時間特定機器210は、正対判定の結果および近接判定の結果を、実作業時間特定部130へ通知する。
【0037】
実作業時間特定部130は、正対判定および近接判定の条件がともに満たされているとき、作業者Wが作業をしていると判定する。また、実作業時間特定部130は、正対判定および近接判定の条件のいずれかが満たされない状態からともに満たされる状態へと変化した時、実作業時間のカウントを開始する。
【0038】
超過判定部140は、実作業時間特定部130から実作業時間を受信すると、受信した実作業時間(すなわち、作業者Wが作業を開始してから経過した時間)と、所定作業時間決定部160が決定した所定作業時間とを比較する。実作業時間が所定作業時間を超過したとき、超過判定部140は、報知部150へ報知指示を出力する。
【0039】
報知部150は、超過判定部140から受信した指示にもとづき、作業台Tの色が変化するように報知機器220を制御する。作業者Wは、作業台Tの色が変化したことにより、自身の作業時間が作業者固有平均作業時間190cを超過していることを特定することができる。
【0040】
その後、作業者Wが作業台Tから離れ、上記の正対判定の条件および近接判定の条件のいずれかの条件が満たされなくなったとき、実作業時間特定部130は、作業者Wが作業を終了したことを識別し、実作業時間のカウントを停止し、作業終了を実作業時間特定部130へ通知する。超過判定部140および報知部150へ通知する。報知部150は、作業終了の通知にもとづいて報知機器220の報知動作を終了させる。
【0041】
以上によりセル生産ラインCは、ブザー鳴動のように、作業者Wを驚かせたり、所定作業時間を超過していることが周囲の作業者に容易に知られることなく、作業台Tの色を変化させて作業者Wへ報知することができる。これにより、報知動作が作業者Wのモチベーションへ与える悪影響を抑制することができる。
【0042】
セル生産ラインCは、さらに以下の動作を実行してもよい。
【0043】
所定作業時間決定部160は、最も濃い色の変化を作業台Tに与える第2の所定作業時間(最大変化時間)を、作業者固有作業時間DB190に格納された情報にもとづいて決定する。例えば、所定作業時間の60秒後を最大変化時間としてもよい。
【0044】
所定作業時間を超過した後、超過判定部140は、作業者Wが作業を開始してから経過した時間と、所定作業時間決定部160が決定した所定作業時間との比較を継続する。そして、超過判定部140は、超過時間に応じて作業台Tの色の変化を強くするとともに、超過時間が最大変化時間に達した場合に最も濃い色を投影するように、報知部150へ報知指示を出力する。
【0045】
これにより、超過時間が僅かである期間は薄い色で報知し、超過時間が大きくなるにつれて濃い色で報知する(色の変化を強くする)ことができる。従って、超過の有無にのみもとづいて報知するよりも、作業者Wに与える不快感を抑制し、かつ超過時間が大きい時には確実に報知を行うことができる。
【0046】
§2 構成例
以下に
図1から
図8を参照し、セル生産ラインCのより具体的な構成例と動作が説明される。
【0047】
(セル生産ラインCの構成)
図2は、実施形態1に係るセル生産ラインCの構成を示す概略図である。
図2において、ステーション2がコの字型に並べられ、作業員Wが、コの字の内側から各々のステーション2で組み立てや検査等の作業を行えるようになっている。複数のステーション2を含んで、実施形態1に係るセル生産ラインCが構成されている。作業者Wから見てステーション2の奥の方向には治具保管台12が備えられ、治具保管台12上に治具Jが保管されている。なお、
図2右側の付番は省略したが、左側と同様、ステーション2の各々は作業台Tなどを備える。
【0048】
図3は、実施形態1に係るステーション2の外観を示す概略図である。
図3に図示されるように、ステーション2の上部に報知機器220、実作業時間特定機器210を構成するカメラ210a、および赤外線センサ210bが設けられている。また、ステーション2の手前側には作業台Tが設けられている。
【0049】
作業台Tは、作業者Wが作業しやすいような高さに設けられている。また、作業台Tの上面は一般に、作業者Wが、部品の取り付けから組み立て、加工、検査迄の生産作業を行いやすいよう、平面で構成されている。そのため、作業者Wへの報知を行う報知機器220を設ける場合、作業台Tの上面が平面を保つように設けることがのぞましい。
【0050】
実作業時間特定機器210は、典型的には、ステーション2の上部に作業台Tの前で作業者Wが作業するとき作業者Wを検知できる方向に向けて、すなわち前方に向けて設けられている、カメラ210aおよび赤外線センサ210bを含む。実作業時間特定機器210は、作業者特定部120から受信した作業者Wの作業者ID190b、および作業者DB191から受信した当該作業者Wの顔の特徴量にもとづいて、作業者Wがステーション2において作業していることを特定する。具体的には、カメラ210aは作業者Wの顔が認識できるか、および体のシルエット(シェイプ)が正面(または後ろ向き)であるかを判定し(正対判定)、正対判定の結果を実作業時間特定部130へ送信する。赤外線センサ210bは、ヒートマップを取得し、作業者Wが作業しているときに当該作業位置で発する所定の強度以上の赤外線(または所定のスペクトルの赤外線)を放出しているかを判定(近接判定)する。近接判定の結果が真であった場合、赤外線センサ210bは、作業者Wが作業台Tの作業位置に近づいていると判定し、近接判定の結果を実作業時間特定部130へ送信する。なお、実作業時間特定機器210(カメラ210aおよび赤外線センサ210b)は、カメラ210aの撮影結果および赤外線センサ210bの計測結果のみを実作業時間特定部130へ送信してもよい。この場合、実作業時間特定部130が、前記正対判定および前記近接判定を行う。
【0051】
実作業時間特定機器210は、後述するように、作業台Tの上面に設けられたシート型の圧力センサであってもよい。作業を開始したときに作業者Wが治具J、または組立対象製品、などを置いたり、持ち上げたりしたとき、圧力は変化する。そこで、実作業時間特定部130は、圧力が変化したタイミングを作業開始と見なす。
【0052】
実作業時間特定機器210は、後述するように、作業者Wの手元、すなわち作業台Tを撮影するように、ステーション2の上部に設けられたカメラ210aであってもよい。作業者Wが作業台T上で作業を開始したとき、カメラ210aの撮影結果には背景画像との差(背景差分)が生じる。これにより、実作業時間特定部130は、動きが有る状態、すなわち背景差分が有る状態を作業状態とし、作業台T上で動きが無い状態、すなわち背景差分が無い状態を非作業状態として識別する。実作業時間特定部130は、非作業状態から作業状態へ変化したタイミングを作業開始と見なす。
【0053】
報知機器220は、報知部150から受信した指示にもとづいて、報知領域Aの色を変化させることにより報知動作を行う機器である。換言すれば、報知機器220は報知部150によって制御される。後述するように、典型的には報知機器220は、作業台Tの上方に設けられ、照射口を作業台Tの方向へ向けられたプロジェクタである。前記プロジェクタは報知部150から受信した指示にもとづいて、報知領域Aの色を変化させる。報知領域Aは作業台Tの上面の全て、または四隅など上面の一部である。
【0054】
報知機器220は、後述するように、報知機器220は、作業台Tの上面に色の変化を表示するように設けられた薄型ディスプレイであってもよい。また、報知機器220は、作業台Tの上面の一部の色を変化させるように作業台Tに埋め込まれた照明であってもよい。
【0055】
なお、報知領域Aの色の変化の具体例としては、一般的な警戒色である赤色に変化させる方法を用いて説明するが、これに限られない。黄色、あるいは黒色と黄色の組合せなど、一般的に警戒色と認識される色(あるいは作業環境における環境光に対して警戒色となり得る色)を用いて報知領域Aを変化させればよい。これにより、照明が赤色であるなど、仮に赤色で作業台Tの色を変化させても気づかれにくい現場においても、適当な色を用いて作業者Wへ報知することが可能である。
【0056】
作業台Tの上部に設けられる実作業時間特定機器210および報知機器220は、作業と干渉しないよう、突出部を有しないようにステーション2に設けられてもよい。
【0057】
セル生産ラインCは、
図1にブロック図で構成が示された制御装置10を備えている。制御装置10は、作業者特定部120、作業内容特定部110、所定作業時間決定部160、実作業時間特定部130、超過判定部140、報知部150、作業者固有作業時間DB190、および作業者DB191を含む。
【0058】
実作業時間特定部130は、実作業時間特定機器210からの入力を受付け、実作業時間を特定することができる。
【0059】
(作業内容の特定)
作業内容特定部110は、セル生産ラインCにおける各作業台Tの作業内容を特定する。具体的には例えば、作業内容特定部110は、上位システムMから受信した、対象のセル生産ラインCにおける作業内容にもとづいて作業内容を特定してもよい。また、後述するように、作業内容特定部110は、セル生産ラインCの先頭の机に設けられたPCに(作業内容ID190aを入力するなどして)作業者Wが入力した作業内容にもとづき、作業台Tごとの作業内容を特定してもよい。
【0060】
(作業者の特定)
作業者特定機器3は、作業者特定のために入力された情報を、作業者特定部120へ出力する。作業者特定機器3は、典型的には、作業者Wが有するIDカードのバーコードを読み取るスリットを備えるコードリーダである。コードリーダは、例えば、セル生産ラインCの先頭の机に設けられたPCに設けられる。前記バーコードには、作業者ID190bが含まれる。なお、作業者ID190bを特定できる他の機器であってもよい。例えば、IDカードに埋め込まれたICチップの有する情報を無線で読み取る機器であってもよい。また、ラインの先頭の机に設けられたPCが備えるインカメラ、またはWebカメラ等であってもよい。作業者特定機器3は作業者特定部120へ前記カメラが撮影した画像を送信し、作業者特定部120は受信した画像にもとづき、顔認識処理により作業者Wを特定してもよい。これにより、S101において作業者Wが自ら作業を行うことなく、自動的に作業者Wを特定することができる。作業者DB191には、作業者特定機器3が作業者Wを特定するための作業者ID190b、または作業者Wの顔の特徴量、の少なくともいずれかが格納されている。
【0061】
作業者特定部120は、作業者特定機器3から受信した(入力を受け付けた)情報にもとづいて作業者DB191を検索し、セル生産ラインCにおいて作業を開始しようとしている作業者Wを特定する。
【0062】
(所定作業時間の決定)
所定作業時間決定部160は、後述するように、受信した作業内容と作業者Wとの組合せにもとづいて、各作業内容の作業者固有平均作業時間190c、または作業者固有最良作業時間190dを呼び出し、各作業台Tにおける所定作業時間を決定する。所定作業時間決定部160は、決定した各作業台Tにおける所定作業時間を超過判定部140へ送信する。
【0063】
(作業開始の判定)
実作業時間特定部130は、実作業時間特定機器210から受信した判定結果の情報にもとづき、作業者Wが作業を行っている実作業時間を特定する。具体的には、実作業時間特定部130は、作業開始判定条件が満たされたとき、すなわち正対判定および近接判定の結果がともに真となったとき、作業時間のカウントを開始する。ただし、作業者Wが体を作業台Tに向けているかの認識を高く保つことが困難な作業、例えば組立のために体の向きを変える必要が有る作業が行われる場合、体の向きの条件は、補助情報として利用するのみでもよい。例えば、一定の期間内であれば満たされなくてもよい判定条件として、利用してもよい。
【0064】
(超過判定および報知)
超過判定部140は、カウント中の作業時間(実作業時間)が、作業が開始された作業台Tの所定作業時間を超えたか(所定作業時間を超過するか)を判定する。前記実作業時間が所定作業時間を超えた場合、超過時間算定部141は、前記作業カウントが前記所定作業時間に対して超過している時間(超過時間)を算定する。超過判定部140は、超過時間算定部141が算定した前記超過時間を報知部150へ送信する。
【0065】
報知部150は、受信した前記超過時間に応じて作業台Tの色を徐々に変化させるように、報知機器220へ指示を出力する。
【0066】
(作業終了の判定)
実作業時間特定部130は、作業終了判定条件が満たされたとき、すなわち作業開始判定条件が満たされなくなったとき、作業時間のカウントを停止する。具体的には、正対判定および近接判定の結果の少なくとも1つが偽に変化したとき、作業時間のカウントを停止する。
【0067】
§3 動作例
以下、本開示に係るセル生産ラインCの動作について、
図4~
図8を用いて説明する。
【0068】
図4は、セル生産ラインCが実行するこれらの特徴的な動作を説明するためのフローチャートである。セル生産ラインCは、
図4に図示された以下のステップS101からステップS10Bまでのフローを、繰り返し実行する。
【0069】
S101の開始前に、上位システムMは対象のセル生産ラインCにおけるライン単位の作業指示内容を決定し、前記生産指示内容を作業内容特定部110へ送信する。作業内容特定部110は、前記ライン単位の作業指示内容にもとづき、各作業台Tの作業内容(後述する作業内容ID190a)を特定する。
【0070】
なお、作業内容特定部110は、他の手法により作業内容を特定してもよい。例えば、セル生産ラインCの先頭の机に設けられたPCに(作業内容ID190aを入力するなどして)作業者Wが入力した作業内容にもとづき、作業内容を特定してもよい。これにより、上位システムMが存在しないセル生産ラインC、または動作を停止しているセル生産ラインCにおいても作業内容の特定が可能になる。
【0071】
作業内容特定部110は、作業台T毎に特定した前記作業内容を、所定作業時間決定部160へ送信する。
【0072】
S101において、作業者Wはセル生産ラインCへと配置につき、コードリーダ(作業者特定機器3)に自身のIDカードを通す。作業者特定機器3はコードリーダが前記IDカードから取得した情報を、作業者特定部120へ送信する。作業者特定部120は、受信した情報にもとづいて作業者DB191を検索し、作業者Wを特定する。すなわち、コードリーダで作業者Wを識別する。
【0073】
また、後述する実作業時間特定処理のため、実作業時間特定部130は、作業カウントをゼロにリセットする。
【0074】
S102において、所定作業時間決定部160は、受信した作業台Tごとの前記作業内容と前記作業者Wとの組合せにもとづいて、作業者固有平均作業時間190c、または作業者固有最良作業時間190dを呼び出し、作業台T毎に所定作業時間を決定する。具体的には例えば、所定作業時間決定部160は、作業者固有平均作業時間190cを代入する。または、所定作業時間決定部160は、作業者固有最良作業時間190dを所定作業時間に代入してもよい。あるいは、全作業者Wの作業者固有平均作業時間190cの平均を代入してもよい。
【0075】
図5を用いて、作業者固有平均作業時間190c、および作業者固有最良作業時間190dについて説明する。
図5は、作業者固有作業時間DB190の内容を例示する図である。左から順に説明すると、最も左のカラムに、作業内容ID190aが格納されている。作業内容ID190aは、作業台T毎に実行される作業内容ごとに割り振られるIDである。
【0076】
図示したJ1001、およびJ1002以外にも、多様な作業内容が格納されている。作業内容ID190aの右のカラムに、作業者ID190bが格納されている。セル生産ラインCにおける作業者Wは、作業者ID190bに紐づいて特定される。図示したO01001、および01002以外にも、多様な作業者Wが作業者ID単位で格納されている。次のカラムには、作業者固有平均作業時間190cが格納されている。これは、作業内容ID190aと、作業者ID190bとの組み合わせに対して記録された、各作業者固有の平均作業時間である。次のカラムには、作業者固有最良作業時間190dが格納されている。これは、作業内容ID190aと、作業者ID190bとの組み合わせに対して記録された、各作業者固有の最良の作業時間である。具体的には、前記作業者固有最良作業時間は最速の作業時間であってよい。または、検品合格率が所定の率以上であると見込まれる最速の作業時間であってもよい。セル作業ラインCの管理者は、前記作業者固有最良作業時間を任意に、あるいは所定の算出方法にもとづいて設定し得る。
【0077】
S103において、実作業時間特定機器210は、作業者Wが実際に作業を開始したタイミングを特定するため、作業者Wを計測する。具体的には、カメラ210aは作業者Wの顔認識、および体のシルエットが正面(または後ろ向き)であるかの判定(正対判定)を行う。また、赤外線センサ210bは、ヒートマップを取得し、作業者Wが作業台Tに近づいていることを判定(近接判定)する。
【0078】
実作業時間特定部130は、実作業時間特定機器210から受信した判定結果の情報にもとづき、作業開始判定条件が満たされたかを判定する。具体的には、実作業時間特定部130は、前記正対判定の2つの条件、および前記近接判定の条件が満たされている場合、作業者Wは当該作業台Tにおいて作業をしている、と判定する。
【0079】
作業開始判定条件が満たされた場合(S103においてYes)、実作業時間特定部130は、S104の動作を開始する。作業開始判定条件が満たされなかった場合(S103においてNo)、実作業時間特定部130は、作業開始判定条件が満たされるまで繰り返し判定を行う。
【0080】
S104において、実作業時間特定部130は、作業時間カウントを開始する。
【0081】
S105において、超過判定部140は、カウント中の作業時間(実作業時間)が、所定作業時間を超えたかを判定する。前記実作業時間が所定作業時間を超えた場合(S105においてYes)、超過時間算定部141は、前記作業カウントから前記所定作業時間を引いた差分の時間を算定する。すなわち、前記作業カウントが前記所定作業時間に対して超過している時間(超過時間)を算定する。超過判定部140は、超過時間算定部141が算定した前記超過時間を報知部150へ送信する。
【0082】
S106において、報知部150は、受信した前記超過時間に応じて作業台Tの色を徐々に変化させる。具体的には、超過時間に応じて作業台Tが徐々に赤くなるように、報知機器220へ指示を出力する。より具体的には、例えば、超過時間が1秒の場合に最も弱い赤色を作業台Tへ投影するように報知部150へ指示を出力し、超過時間が60秒に達した場合に最も濃い赤色を作業台Tへ投影するように、超過時間に比例して濃い赤色を投影する指示を出力してもよい。
【0083】
最も濃い赤色を作業台Tへ投影する第2の所定作業時間(最大変化時間)は、例えば前述のS102において、予め設定された時間として決定される他、所定作業時間との比率など他の要素にもとづいて所定の処理により決定されてもよい。例えば、所定作業時間の120%であってよい。また、作業者固有最良作業時間190dと作業者固有平均作業時間190cとの差を所定作業時間に加えた時間を、最大変化時間としてもよい。また、作業者固有平均作業時間190cを所定作業時間とし、作業者固有最良作業時間190dを最大変化時間としてもよい。これにより、作業内容ID190aと作業者W(作業者ID190b)の組合せに応じた所定作業時間、および最大変化時間を所定の処理により自動的に設定することができる。
【0084】
図6、
図7、および
図3を用いて、報知機器220が作業台Tの色を変化させる動作(報知動作)について説明する。
図6にはステーション2と、ステーション2が備える報知機器220、カメラ210a、赤外線センサ210b、および報知機器220が色を変化させる報知領域Aを示す。報知領域Aは作業台Tの全体である。すなわち、作業台Tの上面全体が報知領域Aである。なお簡易に説明するため、電源ライン、通信ライン等は図示しない。
【0085】
本実施形態において、報知機器220は、作業台Tの上方に設けられ、照射光を作業台Tへ向けたプロジェクタである。前記プロジェクタは報知部150から受信した指示にもとづいて、報知領域Aの色を変化させる。カウント中の作業時間が所定作業時間を超えていない場合(ステップS105においてNoの場合)、
図3のように、前記プロジェクタは色を変化させていない。すなわち、プロジェクタは投影を全く行っていないか、白色など一定の色を投影しているのみである。カウント中の作業時間が所定作業時間を超えたとき(ステップS105においてYesとなったとき)、前記プロジェクタは、最も弱い色の変化を報知領域Aに与える。超過時間が増えるにつれて、
図7に示すように、報知機器220は報知領域Aの色をより強く変化させる。
【0086】
なお、超過時間に応じた変化を行わせず、単純に、超過時点以降、1つのパターンで報知領域Aの色を変化させてもよい。具体的には、作業カウントが所定作業時間を超過していた場合、超過判定部140は超過の有無のみを送信し、報知部150は超過が有ったことを受信したとき、作業台Tを(一定の強さで)赤くするように報知部150へ指示を出力してもよい。
【0087】
図8に示すように、前記プロジェクタは、作業台Tの一部、具体的には作業台Tの四隅のいずれか1つ以上を報知領域Aとしてもよい。これにより、作業者Wが作業を行う中央部の色を変化させずに報知することができ、報知動作によって作業に与える影響を抑えることができる。
【0088】
S107において、実作業時間特定部130は、作業終了判定条件が満たされたかを判定する。具体的には、実作業時間特定部130は、前記正対判定の2つの条件、および前記近接判定の条件の少なくとも1つが満たされていない場合、作業者Wは当該作業台Tにおいて作業をしていない、と判定する。作業開始判定条件が満たされた後で作業終了判定条件が満たされた場合(S107においてYes)、実作業時間特定部130は、S108の動作を開始する。作業終了判定条件が満たされなかった場合(S107においてNo)、S106に進む。換言すれば、S104からS107において、実作業時間特定部130は、作業開始判定条件に合致し始めたタイミングの時間情報を取得し、作業終了判定条件に合致するまでの、作業開始判定条件を満たし続けている時間を実作業時間としてカウントする。
【0089】
S108において、実作業時間特定部130は、作業時間カウントを停止しゼロリセットする(作業時間カウントをゼロに戻す)。実作業時間特定部130は、作業終了を超過判定部140および報知部150へ通知する。
【0090】
S109において、報知部150は、作業終了した作業台Tは、色が変化しているかを判定する。作業終了した作業台Tは色が変化していた場合、すなわち、S105においてカウント中の作業時間が所定作業時間を超過していたと判定されていた場合(S109においてYes)、報知部150は、S10Aの処理を行う。作業終了した作業台Tは色が変化していなかった場合、すなわち、S105においてカウント中の作業時間が所定作業時間を超過していたと判定されずにS109の処理が開始されていた場合(S109においてNo)、S10Bに進む。
【0091】
S10Aにおいて、報知部150は、作業台Tの色を元の状態に戻す。すなわち、報知機器220による色の変化(作業台Tを赤く変化させる等)を停止させ、報知機器220が色の変化を行っていない状態へと戻す。
【0092】
S10Bにおいて、作業内容特定部110は、次の工程が有るかを判定する。すなわち、終了した作業の次に実行されるべき作業内容が存在するかを前記ライン単位の指示を参照して判定する。次の工程が有る場合(S10BにおいてYes)、作業者Wが次のステーション2へ進むので、セル生産ラインCはS102からS10Bの動作を繰り返す。
【0093】
次の工程が無い場合(S10BにおいてNo)、作業内容特定部110は、処理を終了させる。
【0094】
なお、実作業時間特定機器210は、作業台Tに設けられた、図示しないシート型の圧力センサであってもよい。前記圧力センサからの出力結果が、作業開始判定条件、および作業終了判定条件として用いられる。この場合、判定には圧力そのものではなく、“圧力の変化”のタイミングを用いることが望ましい。例えば、セル生産ラインCの管理者は、作業がされていない状態の圧力をデフォルトの値として事前に記録し、図示しないDBに保存する(なお、記録のタイミング、記録者は適宜変更され得る)。作業を開始したときに作業者Wが治具J、または組立対象製品、などを置いたり、持ち上げたりしたとき、圧力は変化する。実作業時間特定部130は、圧力が変化したタイミングを”作業開始”と見なす。作業中は圧力が一定ではなく常に変化し続ける。実作業時間特定部130は、圧力が上述のデフォルトの値になるまでの時間を実作業時間としてカウントし続ける。すなわち、実作業時間特定部130は、後述するS107における作業終了判定条件として判定に前記圧力の変化を用い、デフォルトの値に収束したら作業終了と判定する。
【0095】
また、実作業時間特定機器210は、作業者Wの手元、すなわち作業台Tを撮影するようにステーション2の上部に設けられたカメラ210aであってもよい。前記カメラ210aからの出力結果(手元動画)が、作業の開始判定条件、および作業終了判定条件として用いられる。この場合、判定には前記手元動画の変化のタイミングを用いる事が望ましい。例えば、セル生産ラインCの管理者は、作業がされておらず作業台Tの上で動きが無い状態を背景画像として事前に記録し、図示しないDBに保存する。作業者Wが作業台T上で作業を開始したとき、前記手元動画には前記背景画像との差(背景差分)が生じる。これにより、実作業時間特定部130は、動きが有る状態、すなわち背景差分が有る状態を作業状態とし、作業台T上で動きが無い状態、すなわち背景差分が無い状態を非作業状態として識別することができる。実作業時間特定部130は、受信した前記手元動画にもとづいて作業台Tが非作業状態であるか作業状態であるかを識別する。実作業時間特定部130は、作業台Tが非作業状態から作業状態に移行したことを識別したとき作業開始と判定する。また、実作業時間特定部130は、作業状態から非作業状態に移行したことを識別したとき、後述するS107において作業終了と判定する。
【0096】
§4 作用、効果
実施形態1に係るセル生産ラインCによれば、セル生産方式等において、作業者Wの実作業時間が所定作業時間を超過したタイミングで、作業台Tの報知領域Aの色を変化させる動作が自動で実行される。また、作業者Wの実作業時間が所定作業時間を超過した時間(超過時間)に応じて報知領域Aの色を変化させる動作が自動で実行される。そのため、所定作業時間を超過していることが、周囲の作業者に容易に知られることなく、作業者Wの作業のリズムを安定化させることができる。従って、セル生産方式等の生産における作業者Wのモチベーションに悪影響を与えず、また、作業者Wに付加的な動作を行わせずに作業者Wの作業のリズムを安定化させることができ、もって作業者に安定的な作業リズムを身に付かせることができる。
【0097】
実施形態1に係るセル生産ラインCによれば、セル生産方式等において、作業者Wの実作業時間が所定作業時間を超過したタイミングで、作業台Tの少なくとも一部である報知領域Aの色を変化させる動作が自動で実行される。そのため、作業者Wが作業を行う中央部の色を変化させずに報知することができ、報知動作によって作業に与える影響を抑えることができる。
【0098】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態が、以下に説明される。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0099】
実施形態2において、報知機器220は、作業台Tの上面に色の変化を表示するように設けられた薄型ディスプレイである。
【0100】
図9に、実施形態2におけるステーション2の概要を示す。本実施形態では、作業台Tの上部に(ディスプレイ上に)薄型ディスプレイが設置されており、作業台Tの上面の全てが報知領域Aである。なお、保護用の透明シートを前記薄型ディスプレイの上部に設けてもよい。あるいは、作業台Tに埋め込まれるように前記薄型ディスプレイを設けてもよい。前記ディスプレイは、作業者Wの実作業時間が所定作業時間を超過した場合、その超過時間量に応じて徐々に強い赤色を表示する。
【0101】
前記ディスプレイが設けられており色の変化を表示する面は、作業者Wが作業を行う作業台Tの上面と等しい。そのため、報知機器220と作業台Tとの位置関係を調整することなく、報知機器220が作業台Tの一部または全部の色を変化させて作業者Wへの報知を行うことができるように報知機器220を設置することができる。
【0102】
〔実施形態3〕
実施形態3において、報知機器220は、作業台Tの上面の一部の色を変化させるように作業台Tに埋め込まれた照明である。作業台Tの一部は、典型的には作業台Tの四隅である。照明は、LEDライトであってよい。また、報知機器220は、作業による衝撃から保護されるように保護シートと設置作業台Tとの間に設置された照明であってもよい。
【0103】
図10に、実施形態3におけるステーション2の概要を示す。本実施形態では、作業台Tの上面の一部に照明が埋め込まれており、作業台Tの上面の一部が報知領域Aである。前記照明は、作業者Wの実作業時間が所定作業時間を超過した場合、その超過時間量に応じて徐々に強い赤色を表示する。
【0104】
前記照明は、作業者Wの実作業時間が所定作業時間を超過した場合、その超過時間量に応じて徐々に強い赤色を点灯する。
【0105】
前記照明設けられておりが点灯により色の変化を表示する面は、作業者Wが作業を行う作業台Tの上面と等しい。そのため、報知機器220と作業台Tとの位置関係を調整することなく、報知機器220が作業台Tの一部の色を変化させて作業者Wへの報知を行うことができるように報知機器220を設置することができる。また、作業台Tの一部のみに照明を設ければよいため、作業による衝撃から報知機器220を保護するための作業台Tに対する設計変更が容易である。
【0106】
〔変形例〕
上述の実施形態に記載された例の他、本開示の精神から逸脱しない範囲内で、種々の変形例が実施され得る。
【0107】
例えば、作業者特定機器3と実作業時間特定機器210とが別に設けられている例について説明したが、同一の機器であってもよい。具体的には、作業者特定機器3はセル生産ラインCの先頭のステーション2に設けられたカメラである場合、作業者特定機器3は実作業時間特定機器210(カメラ210a)を兼ねてもよい。カメラ210aは作業者Wの顔を撮影し、作業者特定部120へ送信する。これにより、別々の機器を用いる必要が無くなり、より低コストに本開示の内容を実施することが可能である。
【0108】
また、説明を容易にするため、セル作業ラインCにおける作業者Wは一名のみ(1人完結セル)であることを前提に説明したが、作業者Wが複数名混在しても(分業セルであっても)よい。例えば、ステーション2の各々における実作業時間特定機器210はカメラであり、作業者特定機器3を兼ね、作業者特定部120はステーション2の各々の作業者Wを特定してもよい。作業内容特定部110は、特定された前記作業内容のうちどの工程が実行されるかを前記実作業時間特定機器210が位置するステーション2の位置にもとづいてさらに特定してもよい。超過判定部140は、ステーション2ごとに、作業者Wを特定した上で、特定した作業者Wに応じた所定作業時間を用いて、前述の超過判定を行ってもよい。これにより、分業セルにおいても本開示が適用可能である。
【0109】
赤色に変化させる例、および色の強さ(濃さ)を超過時間に応じて変化させる例を例示したが、特定の動画パターンを含む動画を提示して報知してもよい。また、超過時間に応じて動画パターンを早くする(色の変化を強くする)ように構成してもよい。明滅により報知してもよく、また、超過時間に応じて明滅速度が増すように構成してもよい。これにより、幅広い視覚効果を伴う報知を作業者Wへ行うことができる。また、報知領域Aのうち特定の動画パターンが提示される領域の外に超過時間を表示するなど、付加的な情報を作業者Wへ提示することができる。
【0110】
一つの作業内容に対して複数の所定作業時間を設定し、複数の所定作業時間についてそれぞれ超過判定を行って、異なるパターンの色の変化を用いて作業者Wへ報知する構成としてもよい。異なるパターンの色の変化を用いて作業者Wへ報知することにより、厳守すべきラインと、可能な限り守るべきラインとの報知を分けて伝えるなど、異なる基準にもとづいて複数種の報知を作業者Wへ提示することができる。
【0111】
報知領域Aは、作業者Wへ確実に報知を行うため、作業台Tの上面に設けられることを前提に記載したが、作業者Wへ報知できる領域であれば、作業台Tの上面に限られない。例えば、作業台Tの脚の前面(作業者Wに向いている側の面)、作業台Tの前面などに報知領域Aを設定してもよい。作業台Tの上面以外に報知領域Aを設けることにより、作業による衝撃を考慮することなく、報知機器220を設置することができる。
【0112】
説明を容易にするため、報知機器220はステーション2の各々に設けられるものとしたが、セル生産ラインCの天井に1つ設けるなど、ステーション2の外部に、ステーション2の個数よりも少ない個数の報知機器220が設けられていてもよい。必要な報知機器220の数が減少するため、より低コストに本開示の内容を実施することができる。
【0113】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置10の制御ブロック(特に作業内容特定部110、作業者特定部120、超過判定部140、超過時間算定部141、報知部150、所定作業時間決定部160)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0114】
後者の場合、制御装置10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本開示の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本開示は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0115】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
C セル生産ライン(生産ライン)
2 ステーション
210 実作業時間特定機器
220 報知機器
T 作業台
3 作業者特定機器
10 制御装置
110 作業内容特定部
120 作業者特定部
130 実作業時間特定部
140 超過判定部
141 超過時間算定部
150 報知部
160 所定作業時間決定部
190 作業者固有作業時間DB
191 作業者DB