(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】硬貨繰出機構及び硬貨繰出方法
(51)【国際特許分類】
G07D 1/00 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
G07D1/00 A
(21)【出願番号】P 2018046118
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武川 直史
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-036986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16
G07D 9/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の硬貨を収納する硬貨収納部と、
前記硬貨収納部から前記硬貨を外部に送出する送出部に向かって、前記複数の硬貨を運搬する硬貨運搬部と、
前記硬貨収納部と前記送出部との間に配置され、前記複数の硬貨が重なった状態で前記送出部に達するのを規制する規制部材と、
前記規制部材が変位した変位量を検出する変位検出部と、
を備え、
前記硬貨運搬部は、前記変位検出部によって検出された前記変位量が所望の閾値を超えた場合、前記硬貨の運搬方向を前記硬貨収納部に戻す方向にする、
硬貨繰出機構。
【請求項2】
前記硬貨運搬部は、前記硬貨収納部に収納されている前記硬貨に接触する接触面を有する回転円盤を、前記接触面に貫通する方向に延びる回転軸を中心にして回転させることによって前記硬貨収納部に収納されている前記硬貨を、前記送出部に向かって運搬する、
請求項1に記載の硬貨繰出機構。
【請求項3】
前記硬貨運搬部は、前記硬貨を前記硬貨収納部から前記送出部に向かって運搬する運搬路の速度が変化した場合、前記変位検出部によって検出された前記変位量に応じて、前記硬貨を前記硬貨収納部に戻す方向に運搬する時間を設定する、
請求項1又は2に記載の硬貨繰出機構。
【請求項4】
前記規制部材は、回動軸を中心に
した回動によって変位する、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の硬貨繰出機構。
【請求項5】
前記変位検出部は、前記回動軸の回転量を検出するロータリーエンコーダを有する、
請求項4に記載の硬貨繰出機構。
【請求項6】
複数枚の硬貨を収納する硬貨収納部から前記硬貨を外部に送出する送出部に向かって、前記複数の硬貨を運搬し、
前記硬貨収納部と前記送出部との間に配置された規制部材によって、前記複数の硬貨が重なった状態で前記送出部に達するのを規制し、
前記規制部材が変位した変位量を検出し、
検出された前記変位量が所望の閾値を超えた場合、前記硬貨を前記硬貨収納部に戻す方向に切り替える、
硬貨繰出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、投入された硬貨を一枚ずつ分離して繰り出す技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨を処理する硬貨処理ユニットは、キップ等の乗車券を販売する券売機、取引金額を精算する精算機、物品を販売する自動販売機等の様々な種類の機器に用いられている。硬貨処理ユニットには、利用者等の使い勝手を向上させるため、一度に複数枚の硬貨を投入できる構成のものがある。この構成の硬貨処理ユニットは、一度に投入された複数枚の硬貨を一旦硬貨収納部に収納する。硬貨処理ユニットは、硬貨収納部に収納した硬貨を1枚ずつ繰り出す硬貨繰出機構を備えている(特許文献1、2等参照)。
【0003】
硬貨繰出機構は、硬貨収納部の中に投入された硬貨が盤面の下部に自重で接触する回転盤を備えている。この回転盤には、盤面上に突起が設けられている。硬貨繰出機構は、回転盤を、盤面に対して略直交する回転軸で回転させることにより、硬貨収納部に収納されている硬貨を、突起に引っ掛けて掻き出す。硬貨収納部から掻き出された硬貨は、外部(硬貨搬送路)に繰り出される。
【0004】
繰り出された硬貨は、硬貨搬送路に沿って搬送され、識別部で金種や真偽を識別する識別処理が行われる。また、識別部における識別処理の識別結果に応じてスタッカや返金口等に搬送する搬送処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-262479号公報
【文献】特開2014-191804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、回転盤(回転円盤)の盤面上に設けられた突起が、複数枚の硬貨を引っ掛けて、掻き出すことがある。硬貨を1枚ずつ硬貨搬送路に繰り出すには、回転円盤の盤面上に設けられた突起が引っ掛けて掻き出した硬貨を1枚にする必要がある。すなわち、回転円盤の突起が複数枚の硬貨を引っ掛けて掻き出した場合には、余分な硬貨を硬貨収納部に戻す(落す)必要がある。
【0007】
この発明の目的は、簡単な構成で、硬貨収納部に収納されている硬貨を1枚ずつ分離して繰り出すことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の硬貨繰出機構は、上記目的を達するために、以下のように構成している。
【0009】
この硬貨繰出機構は、複数枚の硬貨を収納する硬貨収納部と、前記硬貨収納部から前記硬貨を外部に送出する送出部に向かって、前記複数の硬貨を運搬する硬貨運搬部と、前記硬貨収納部と前記送出部との間に配置され、複数枚の硬貨が重なった状態で前記送出部に達するのを規制する規制部材と、前記規制部材が前記基準位置から変位した変位量を検出する変位検出部と、を備える。前記硬貨運搬部は、前記変位検出部によって検出された前記変位量が所望の閾値を超えた場合、前記硬貨の運搬方向を前記硬貨収納部に戻す方向にする。
【0010】
この構成により、硬貨繰出機構は、変位検出部が規制部材の変位量を検出し、硬貨運搬部が規制部材で詰まった硬貨を硬貨収納部に戻すことで、硬貨の詰まりを解消することができる。つまり、この構成により硬貨繰出機構は、簡単な構成で、硬貨収納部に収納されている硬貨を1枚ずつ分離して繰り出すことができる。
【0011】
また、この硬貨繰出機構では、前記硬貨運搬部は、前記硬貨収納部に収納されている硬貨に接触する接触面を有する回転円盤を、前記接触面に貫通する方向に延びる回転軸を中心にして回転させることによって、前記硬貨収納部に収納されている硬貨を、前記送出部に向かって運搬することが好ましい。
【0012】
このように構成すれば、硬貨繰出機構は、回転円盤を回転させて硬貨を運搬するので、より簡単な機構で、硬貨を一枚ずつ分離して送出部まで運搬することができる。
【0013】
また、この硬貨繰出機構では、前記硬貨運搬部は、前記硬貨を前記硬貨収納部から前記送出部に向かって運搬する運搬路の速度が変化した場合、前記変位検出部によって検出された前記変位量に応じて、前記硬貨収納部に戻す方向に前記硬貨を運搬する時間を設定してもよい。
【0014】
このように構成すれば、硬貨繰出機構では、硬貨が規制部材に詰まったときにこの硬貨を硬貨収納部に戻す場合と、異物が規制部材に詰まったときにこの異物を硬貨収納部に戻す場合とで、異なった時間でこれらを運搬することができる。つまり、硬貨繰出機構は、効率よく硬貨を繰り出すことができる。
【0015】
また、この硬貨繰出機構では、前記規制部材は、回動軸を中心に、前記基準位置から前記異なる位置へ変位してもよい。
【0016】
また、この硬貨繰出機構では、前記変位検出部は、前記回動軸の回転量を検出するロータリーエンコーダを有してもよい。
【0017】
このように構成すれば、硬貨繰出機構は、より簡単な構造で、規制部材の変位を検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、簡単な構成で、硬貨収納部に収納されている硬貨を1枚ずつ分離して繰り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】券売機の主要部の構成を示すブロック構成図である。
【
図3】硬貨処理ユニットの主要部の構成を示すブロック構成図である。
【
図4】硬貨繰出部の主要部の構成を示す構成図である。
【
図7】
図7(A)は、回転円盤の接触面を概念的に示す概略図であり、
図7(B)は、
図8(A)におけるB-B方向の断面の概略図である。
【
図8】硬貨繰出部によって硬貨搬送路に繰り出される硬貨の動きを説明する説明図である。
【
図9】
図9(A)は、硬貨が回転円盤と規制部材との間に詰まった状態を示す説明図であり、
図9(B)は、
図9(A)におけるC-C方向の断面図である。
【
図10】券売機における切符等の乗車券の発券処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】券売機におけるICカードへのチャージ処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】硬貨繰出部の硬貨繰出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】変形例にかかる硬貨繰出部の硬貨繰出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態である硬貨繰出機構を備える券売機1について説明する。
【0021】
<1.適用例>
図1は、この発明の実施形態にかかる券売機1の主要部の構成を示すブロック図である。
図2は、券売機1の外観を示す概略図である。券売機1は、
図1に示すように、制御ユニット2と、表示ユニット3と、操作ユニット4と、発券ユニット5と、硬貨処理ユニット6と、紙幣処理ユニット7と、無線通信ユニット8と、通信ユニット9と、を備えている。この例における券売機1は、駅に設置され、利用者が貨幣を投入することで切符等の乗車券を発券する。また、この券売機1は、利用者が乗車券として使用できるICカードに対するチャージ(入金)等の処理も行う。券売機1は、
図2に示すように、券売機1の本体10の正面に表示器3aを有する。利用者は、この表示器3aに表示される内容に応じて、種々の操作を行う。
【0022】
<2.構成例>
制御ユニット2は、
図1に示すように、券売機1が備える表示ユニット3、操作ユニット4、発券ユニット5、硬貨処理ユニット6、紙幣処理ユニット7、無線通信ユニット8、及び通信ユニット9の各ユニットを制御する。
【0023】
表示ユニット3は、
図2に示すように、本体10に設けられた表示器3aを有し、表示器3aに表示する画面の表示を制御する。
【0024】
操作ユニット4は、表示器3aの画面上に貼付されたタッチパネル4a及びテンキーを有するキー操作部4b等の入力デバイスを有する。操作ユニット4は、入力デバイスにおける利用者の入力操作を検出し、検出した入力操作を制御ユニット2に通知する。
【0025】
発券ユニット5は、乗車券を発行する。券売機1は、発券口5a又はカード挿入口5b等を本体10の正面に設けている。発券口5aは、利用者に対して発券する乗車券を放出する。また、カード挿入口5bは、利用者によって挿入されたICカードの取り込みと、処理を行ったICカードの放出とを行う。発券ユニット5は、カード挿入口5bに挿入されたICカードを取り込み、このICカードに記憶されているカードデータを読み取る。また、発券ユニット5は、ICカードに対するカードデータの書き込み(カードデータの更新)等も行う。そして、発券ユニット5は、利用者にこのICカードを返却するために、カード挿入口5bから放出する。
【0026】
硬貨処理ユニット6は、乗車券の発券等にかかる取引金額の精算に用いる硬貨を受け付ける。また、硬貨処理ユニット6は、利用者に対してつり銭硬貨の放出を行う。券売機1は、硬貨投入口6a、及びつり銭硬貨受皿6bを本体10の正面に設けている。硬貨投入口6aは、複数枚の硬貨が重なった状態であっても、券売機1の本体10に投入できる形状である。硬貨処理ユニット6は、利用者が投入した投入硬貨や、利用者に対してつり銭として放出するつり銭硬貨について、金種及び真偽を識別する硬貨識別部23を有している。硬貨処理ユニット6の詳細については後述する。
【0027】
紙幣処理ユニット7は、乗車券の発券等にかかる取引金額の精算に用いる紙幣を受け付ける。また、紙幣処理ユニット7は、利用者に対してつり銭紙幣の放出を行う。券売機1は、紙幣投入口7a、及び紙幣放出口7bを本体10の正面に設けている。紙幣処理ユニット7は、紙幣投入口7aにおいて利用者が投入した投入紙幣、又は紙幣放出口7bにおいて利用者に放出するつり銭紙幣について、金種及び真偽を識別する。
【0028】
無線通信ユニット8は、ICカードに記憶されているカードデータを無線通信によって読み取る。また、無線通信ユニット8は、ICカードに対するカードデータの書き込みを、無線通信によって実行する。
【0029】
通信ユニット9は、ネットワークを介して、自動改札機(不図示)や駅サーバ等(不図示)の駅務機器や、他の券売機1との間における通信を行う。
【0030】
硬貨処理ユニット6について
図3を参照して具体的に説明する。
図3は、この例にかかる硬貨処理ユニット6の主要部の構成を示すブロック構成図である。硬貨処理ユニット6は、
図3に示すように、制御部20と、硬貨繰出部21と、硬貨搬送部22と、硬貨識別部23とを備えている。
【0031】
制御部20は、硬貨処理ユニット6の各部の動作を制御する。また、制御部20は、制御ユニット2との間における入出力を行う。
【0032】
硬貨繰出部21は、硬貨投入口6a(
図2参照)に投入された硬貨を、1枚ずつ分離して、硬貨搬送路に案内する。この硬貨繰出部21がこの発明にかかる硬貨繰出機構を有する。
【0033】
硬貨搬送部22は、硬貨繰出部21によって硬貨搬送路に案内された硬貨を、硬貨搬送路に沿って搬送する。
【0034】
硬貨識別部23は、硬貨搬送路に沿って搬送されている硬貨毎に、金種及び真偽を識別する。
【0035】
また、硬貨搬送部22は、硬貨識別部23における金種、及び真偽の識別硬貨に応じて、金種別に設けられている硬貨スタッカに搬送し、収納する。
【0036】
硬貨繰出部21について、具体的に説明する。
図4は、硬貨繰出部21の主要部の構成を示す構成図である。
図5は、硬貨繰出部21の概略図である。
図6は、硬貨繰出部21の正面図(
図5に示すA方向の矢視図)である。
図7(A)は、回転円盤41の接触面411を概念的に示す概略図であり、
図7(B)は、
図7(A)におけるB-B方向の断面の概略図である。
図8は、硬貨繰出部21によって硬貨収納部40から硬貨搬送路に繰り出される硬貨の動きを説明する図である。
【0037】
硬貨繰出部21は、
図4に示すように、制御部30と、硬貨運搬部31と、モータ32と、エンコーダ33と、通過検出部34と、変位検出部35とを備えている。また、硬貨繰出部21には、
図5及び
図6に示すように、硬貨収納部40と、回転円盤41と、送出部42と、規制部材43とが設けられている。
【0038】
制御部30は、
図4に示すように、硬貨運搬部31、エンコーダ33、通過検出部34及び変位検出部35の各部の動作を制御する。また、制御部30は、硬貨収納部40に硬貨があるかどうかをセンサを使用して検出する。センサは、例えば反射式の光電センサ、又は透過式の光電センサの何れであってもよい。さらに、硬貨収納部40の開閉口401の開閉を制御する。また、制御部30は、硬貨処理ユニット6の制御部20との間における入出力を行う。
【0039】
回転円盤41は、外形形状が円形又は略円形である板状の部材である。
【0040】
硬貨収納部40は、
図5に示すように、利用者等が硬貨投入口6a(
図2参照)から投入した硬貨が流れ込み、この流れ込んだ硬貨を一時的に収納する。また硬貨収納部40には、開閉口401が設けられている。
【0041】
回転円盤41は、その一部が硬貨収納部40内に位置し、一方の面が硬貨収納部40内に収納されている硬貨と接触するように配置されている。硬貨と接触する回転円盤41の一方の面が、この発明で言う接触面(以下、この面を接触面411と言う)に相当する。硬貨収納部40内に収納された硬貨は、回転円盤41によって、この回転円盤41の接触面411の反対面側に移動するのを阻止される。接触面411がこの発明でいう運搬路に相当する。
【0042】
モータ32は、回転円盤41を回転させる。モータ32は、パルスモータ又はDCモータのどちらであってもよい。
【0043】
硬貨運搬部31は、モータ32の回転軸32aの回転速度(硬貨を運搬する速度)、すなわち回転円盤41の回転速度を制御する。また、硬貨運搬部31は、モータ32の回転軸32aの回転方向を切り替える制御を行う。
【0044】
硬貨運搬部31は、エンコーダ33の出力により、モータ32の回転軸32aの回転速度を検出する。なお、エンコーダ33は、モータ32の回転軸32aの回転速度を検出するものであってもよい。また、エンコーダ33は、回転円盤41の回転速度を検出するものであってもよい。すなわち、エンコーダ33は、モータ32の回転軸32aの回転速度を直接、又は間接的に検出できる構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0045】
モータ32の回転軸32aは、
図6、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、回転円盤41の接触面411に直交又は略直交に貫通する軸である。また、回転軸32aは、回転円盤41の中心又は略中心にある。また、回転軸32aは、回転円盤41の接触面411が鉛直方向に対して傾斜面になるように回転円盤41に取り付けられている。例えば、回転軸32aは、鉛直方向と回転円盤41の接触面411とのなす角度が、10°~30°程度になるように回転円盤41に取り付けられている。この例では、回転円盤41は、硬貨の繰出時、モータ32によって、
図7(A)に示す回転方向(反時計回り)に回転させられる。
【0046】
また、回転円盤41の接触面411には、
図5、
図6、
図7(A)及び
図7(B)に示されるように、複数の突起41aが形成されている。
図7(A)は、中心が回転円盤41の中心である円周上に等間隔に突起41aを5個形成した例を示している。なお、隣接する2つの突起41aの間隔は、取り扱う最大径の硬貨の直径よりも長ければ、等間隔でなくてもよい。回転円盤41が回転すると、この回転円盤41の接触面411に形成した突起41aが硬貨収納部40に収納されている硬貨を引っ掛けて掻き出す。
【0047】
なお、突起41aは、中心が回転円盤41の中心であり、半径が異なる複数の円周上毎に形成されてもよい。
【0048】
硬貨繰出部21には、
図5及び
図6に示すように、規制部材43及び送出部42が、この順に、回転円盤41の回転方向(反時計回り)に並んでいる。
【0049】
送出部42は、硬貨繰出部21から外部に繰り出す硬貨を、硬貨搬送路(不図示)に送出する。
【0050】
通過検出部34は、硬貨が送出部42を通過したかどうかを検出する。通過検出部34は、例えば、光電センサ、であって、反射式の光電センサによって硬貨が送出部42を通過したかどうかを検出する。通過検出部34は、制御部30が有するタイマを使用して一定の間隔で硬貨が送出部42を通過したかどうかを検出する。通過検出部34は、反射式の光電センサに限らず、透過式の光電センサでもよい。
【0051】
規制部材43は、回転円盤41の接触面411との間に、隙間ができるように配置されている。この隙間は、取り扱う最大厚の硬貨の厚さよりも少し大きい(例えば、2mm程度の隙間である)。また、この隙間は、取り扱う硬貨2枚分の厚さよりも小さい。
【0052】
規制部材43は、
図5及び
図6に示すように、回動軸51に回動自在に取り付けられている。規制部材43は、回転円盤41の接触面411に対向する規制面を有する。つまり、硬貨が通る上述の隙間は、接触面411と規制面との間の空間を示す。
【0053】
規制部材43は、
図8に示すように、回動軸51に取り付けたコイルばね52により、回動軸51を中心にして反時計方向に回動する向きに付勢されている。また、硬貨繰出部21には、規制部材43が基準位置から反時計方向に向かう回動を制限するストッパ(不図示)が設けられている。また、硬貨繰出部21には、基準位置から時計方向に回動した規制部材43を、所望の位置で時計方向に向かう回動を制限するストッパ(不図示)が設けられている。つまり、規制部材43は、2つのストッパの間で回動可能である。この発明で言う規制部材43の基準位置は、規制部材が回動していない状態の位置である。つまり、この例にかかる規制部材43の基準位置とは、長手方向が回動軸51と回転円盤41の中心とを結ぶ方向と並行する方向となる位置である。
【0054】
変位検出部35は、規制部材43が基準位置から異なる位置に変位した変位量を検出する。つまり、変位検出部35は、規制部材43が基準位置から回動軸51を中心に時計方向に回動した変位量を検出する。変位検出部35は、例えば、回動軸51の回転量を検出するロータリーエンコーダを有する。
【0055】
ここで、硬貨繰出部21によって、硬貨収納部40から硬貨搬送路に繰り出される硬貨の動きについて、
図8を参照して説明する。回転円盤41は、モータ32によって、反時計回りに回転させられている。
【0056】
硬貨運搬部31は、回転している回転円盤41の接触面411に設けた突起41aが、硬貨収納部40に収納されている硬貨A、B、C、Dの側面を引っ掛け、この硬貨A、B、C、Dを硬貨収納部40から掻き出す。
【0057】
硬貨収納部40から掻き出された硬貨A、B、C、Dは、回転円盤41の回転に伴って、規制部材43に運搬される。上述したように、回転円盤41の接触面411は、鉛直方向に対して傾斜面になっている。したがって、突起41aが側面を引っ掛けた硬貨A、B、C、Dは、回転円盤41の接触面411に載置された状態である。
【0058】
硬貨A、B、C、Dは、回転円盤41の回転によって、規制部材43に達すると、回転円盤41の接触面411と、規制部材43の規制面との間の隙間を通って、送出部42に運搬される。
【0059】
送出部42に運搬された硬貨は、送出部42によって、硬貨繰出部21の外部に設けられている硬貨搬送路に送られる。このとき、通過検出部34は、硬貨が送出部42を通過することを検出する。
【0060】
ところで、例えば、硬貨が別の硬貨に乗り上げた状態、又は回転円盤41の突起41aに乗り上げた状態で規制部材43に達すると、回転円盤41の接触面411と規制部材43の規制面との間に硬貨が詰まることがある。
図9(A)は、硬貨Cに乗り上げた硬貨Bが、回転円盤41の接触面411と規制部材43の規制面との間に詰まった状態を示す説明図である。
図9(B)は、
図9(A)におけるC-C方向の断面図である。
【0061】
規制部材43は、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、硬貨B及び硬貨Cが重なり合って、回転円盤41の接触面411と規制部材43の規制面との間を通過しようとすると、硬貨B及び硬貨Cが重なり合った状態で規制部材43を時計方向に変位(時計方向に回動)させる。
【0062】
回転円盤41の接触面411と規制部材43の規制面との間に硬貨B及び硬貨Cが詰まると、この詰まった硬貨B及び硬貨Cが負荷となって、回転円盤41の回転速度(運搬路の速度)が低下する。
【0063】
接触面411と規制部材43の規制面との間に硬貨B及び硬貨Cが詰まると、硬貨B又は硬貨Cは、送出部42に運搬されないので、通過検出部34は、硬貨B及び硬貨Cが送出部42を通過したことを検出することができない。
【0064】
回転円盤41の回転速度が低下し、通過検出部34によって硬貨B及び硬貨Cが送出部42を通過したことが検出されない場合、変位検出部35は、規制部材43の変位量を検出する。
【0065】
硬貨運搬部31は、変位検出部35によって検出された変位量が予め定めた閾値以上であれば、詰まった硬貨B及び硬貨Cの運搬方向を硬貨収納部40に戻す方向(時計回り)に回転円盤41の回転を切り替える。これにより、回転円盤41の接触面411と規制部材43の規制面との間に詰まっている硬貨B及び硬貨Cは、回転円盤41の接触面411と規制部材43の規制面との間から離れて、硬貨収納部40に戻る(落ちる)。
【0066】
規制部材43は、硬貨B及び硬貨Cの詰まりが解消されることで、コイルばね52の付勢力によって、反時計方向に回動する。言い換えると、規制部材43は、硬貨B及び硬貨Cの詰まりが解消されることで、送出部42側に変位した位置から基準位置に戻る。
【0067】
この例にかかる硬貨繰出部21は、規制部材43が、重なった状態で運搬された硬貨B及び硬貨Cを送出部42側に変位(回動)した位置で規制する。この例にかかる硬貨繰出部21は、変位検出部35によって規制部材43の変位量を検出し、変位量が閾値以上であれば、硬貨B及び硬貨Cを硬貨収納部40に戻す。これにより、この例にかかる硬貨繰出部21は、簡単な構成で、硬貨収納部に収納されている硬貨を1枚ずつ分離して繰り出すことができる。
【0068】
なお、硬貨繰出部21の制御部30は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。制御部30は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる硬貨繰出方法を実行するコンピュータである。
【0069】
<3.動作例>
図10は、硬貨を受け付けた券売機1における切符等の乗車券の発券処理を示すフローチャートである。券売機1における切符等の乗車券の発券処理について、
図10を参照して説明する。なお、以下の動作は一例に過ぎず、これに限定されない。また、券売機1は、利用者による貨幣(硬貨や紙幣)の投入を受け付ける。
【0070】
利用者が投入する貨幣は硬貨、又は紙幣の一方であってもよいし、両方であってもよい。硬貨は硬貨投入口6aに投入される。紙幣は紙幣投入口7aに投入される。
【0071】
券売機1は、少なくとも硬貨又は紙幣の何れか一方が硬貨投入口6a又は紙幣投入口7aに投入された場合(S11:Yes)、後述する貨幣処理を行う(S12)。券売機1は、投入された硬貨の投入金額の合計金額を算出する(S13)。
【0072】
券売機1は、利用者が希望する乗車券の発券を操作ユニット4によって受け付ける(S15)。このとき、券売機1は、利用者が投入した合計金額以上の乗車券を選択できないように表示器3aに表示させる。
【0073】
券売機1は、受け付けた乗車券を発券する発券ユニット5によって乗車券を発券口5aから放出させる(S15)。券売機1は、利用者に対してつり銭を返却する必要があるか否かを判定する(S16)、券売機1は、利用者につり銭を返却する必要があると判定した場合(S16:Yes)、つり銭を算出する(S17)。そして、券売機1は、つり銭を放出し(S18)、処理を終了する。
【0074】
このとき、つり銭として硬貨(つり銭硬貨)を放出する場合、硬貨処理ユニット6が、つり銭硬貨をつり銭硬貨受皿6bに放出する。
【0075】
図11は、硬貨が投入された券売機1におけるICカードへのチャージ処理を示すフローチャートである。券売機1におけるICカードへのチャージ処理ついて
図11を参照して説明する。なお、以下の動作は一例に過ぎず、これに限定されない。
【0076】
券売機1は、カード挿入口5bに挿入されたICカードを取り込む(S21)。券売機1は、ICカードに記録されているカードデータを無線通信ユニット8によって読み取る(S22)。券売機1は、硬貨又は紙幣の少なくとも一方の投入を受け付ける(S23)。
【0077】
券売機1は、後述する貨幣処理を行う(S24)。券売機1は、利用者が希望するチャージ金額の指定を操作ユニット4によって受け付ける(S25)。券売機1は、指定されたチャージ金額をICカードに発券ユニット5によってチャージする(S26)。券売機1は、ICカードのカードデータを無線通信ユニット8によって更新する(S27)。券売機1は、カードデータを更新したICカードをカード挿入口5bに放出する(S28)。券売機1は、利用者に対してつり銭を返却する必要があるか否かを判定する(S29)、券売機1は、利用者につり銭を返却する必要があると判定した場合(S29:Yes)、つり銭を算出する(S30)。そして、券売機1は、つり銭を放出し(S31)、処理を終了する。なお、つり銭の放出は、上述した発券処理と同じである。
【0078】
上述による発券処理又はチャージ処理の貨幣処理には、紙幣繰出処理と硬貨繰出処理とを備えている。紙幣繰出処理は、投入された紙幣を一枚ずつ繰り出す処理である。また、硬貨繰出処理は、投入された硬貨を一枚ずつ硬貨搬送路へ送出する処理である。ここで、上述による発券処理又はチャージ処理で、硬貨が硬貨投入口6aに投入された場合における硬貨繰出処理について説明する。
【0079】
硬貨繰出部21の硬貨繰出処理について
図12を参照して説明する。
図12は、硬貨繰出部21の硬貨繰出処理の一例を示すフローチャートである。上述による発券処理又はチャージ処理で、硬貨が投入されると、貨幣処理(S12、S24)は、硬貨繰出処理を開始する。処理を開始する際、規制部材43は、基準位置に配置され、さらに変位検出部35のカウントは、リセットされているものとする。なお、以下の動作は一例に過ぎず、これに限定されない。
【0080】
上述の発券処理又はチャージ処理が開始されて、複数の硬貨が硬貨投入口6aに投入され、複数の硬貨が硬貨収納部40に収納されると、硬貨運搬部31は、回転円盤41を反時計回りに回転させる(S41)。
【0081】
硬貨運搬部31が硬貨収納部40から硬貨を外部(硬貨搬送路)に送出する送出部42に向かって、複数の硬貨を運搬している間、エンコーダ33は、回転円盤41の回転速度を検出する(S42)。回転円盤41の回転速度が低下した場合(S43:Yes)、通過検出部34は、硬貨が送出部42を通過したかどうか検出する(S44)。通過検出部34が硬貨が送出部42を通過したことを検出した場合(S44:Yes)、制御部30は、硬貨収納部40に硬貨があるかどうかを検出する(S45)。硬貨収納部40に硬貨がなければ(S45:Yes)、制御部30は、処理を終了する。また、硬貨収納部40に硬貨があれば(S45:No)、制御部30は、処理をS41に戻す。
【0082】
一方、通過検出部34が硬貨が送出部42を通過したのを検出しなかった場合(S44:No)、制御部30は、タイマ等を使用して前回硬貨が通過したときから一定時間経過しているかどうかを検出する(S46)。制御部30が前回硬貨が通過したときから一定時間経過しているのを検出した場合(S46:Yes)、硬貨運搬部31は、硬貨が硬貨収納部40に落ちる(収納される)位置になるまで、回転円盤41を時計回りに回転させる(S47)。
【0083】
制御部30が前回硬貨が通過したときから一定時間経過しているのを検出しない場合(S46:No)、回転円盤41の接触面411と規制部材43の規制面との間に硬貨が詰まっているとして、変位検出部35は、規制部材43の変位量が閾値以上か否かを検出する(S48)。規制部材43の変位量が閾値以上の場合(S48:Yes)、制御部30は、処理をS47へ移動する。
【0084】
また、規制部材43の変位量が閾値より低い場合(S48:No)、制御部30は、処理をS44に移動する。
【0085】
この例にかかる硬貨繰出部21は、規制部材43が、重なった状態で運搬された硬貨を送出部42側に変位した位置で規制する。この例にかかる硬貨繰出部21は、変位検出部35によって規制部材43の変位量を検出し、変位量が閾値以上であれば、回転円盤41と規制部材43との間で詰まった硬貨を硬貨収納部40に戻す。これにより、この例にかかる硬貨繰出部21は、簡単な構成で、硬貨収納部40に収納されている硬貨を1枚ずつ分離して繰り出すことができる。
【0086】
<4.変形例>
この変形例の硬貨繰出部21では、異物が混入した場合を想定する。例えば、硬貨繰出部21は、異物が規制部材43に詰まった場合、この異物を硬貨収納部40に戻し外部へ排出する必要がある。
【0087】
この変形例の硬貨繰出部21の硬貨繰出処理について
図13を参照して説明する。
図13は、変形例の硬貨繰出部21の硬貨繰出処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明する第1の回転量と第2回転量は異なる値である。
【0088】
なお、
図13で示される処理S51~S56は、
図12で示される処理S41~46と同じであるので、説明を省略する。
【0089】
制御部30は、前回硬貨が通過したときから一定時間経過しているのを検出した場合(S56:Yes)、回転円盤41の接触面411と規制部材43の規制面との間に硬貨が詰まっているとして、硬貨運搬部31は、回転円盤41を時計回りに第1の回転量で回転させる(S57)。
【0090】
一方、制御部30が前回硬貨が通過したときから一定時間経過しているのを検出しない場合(S56:No)、変位検出部35は、規制部材43の変位量が閾値以上か否かを検出する(S58)。規制部材43の変位量が閾値以上の場合(S58:Yes)、回転円盤41の接触面411と規制部材43の規制面との間に異物が詰まっているとして、硬貨運搬部31は、回転円盤41を時計回りに第2の回転量で回転させる(S59)。制御部30は、硬貨収納部40の開閉口401を開いて詰まった異物等を外部(銭硬貨受皿6b)に排出する(S60)。
【0091】
また、規制部材43の変位量が閾値より低い場合(S58:No)、制御部30は、処理をS54に移動する。
【0092】
この変形例にかかる硬貨繰出部21では、硬貨又は異物を排出するときの回転量が硬貨の繰り出しをリトライする場合の回転量と異なる。このようにすることで、この変形例にかかる硬貨繰出部21は、効率よく硬貨を繰り出すことができる。
【0093】
また、別の変形例にかかる硬貨繰出部21では、制御部30は、変位検出部35によって検出された変位量に応じて、回転円盤41の回転時間を設定してもよい。例えば、硬貨の繰り出しをリトライさせたい場合、回転円盤41の回転時間を、硬貨を銭硬貨受皿6bに排出する場合の回転時間よりも短くする。この変形例にかかる硬貨繰出部21は、効率よく硬貨を繰り出すことができる。
【0094】
また、別の変形例の硬貨繰出部21は、券売機1に使用される例に限定されず、例えば、病院等の精算機、食券販売用の券売機等に使用されてもよい。
【0095】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0096】
さらに、この発明にかかる構成と上述した実施形態にかかる構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
複数枚の硬貨を収納する硬貨収納部(40)と、前記硬貨収納部(40)から硬貨を外部に送出する送出部(42)に向かって、前記複数の硬貨を運搬する硬貨運搬部(31)と、前記硬貨収納部(40)と前記送出部(42)との間に配置され、複数枚の硬貨が重なった状態で前記送出部(42)に達するのを、基準位置から規制する規制部材(43)と、前記規制部材(43)が前記基準位置から変位した変位量を検出する変位検出部(35)と、を備え、前記硬貨運搬部(31)は、前記変位検出部(35)によって検出された前記変位量が所望の閾値を超えた場合、前記硬貨の運搬方向を前記硬貨収納部(40)に戻す方向にする、硬貨繰出機構(21)。
【符号の説明】
【0097】
21…硬貨繰出部(硬貨繰出機構)
31…硬貨運搬部
35…変位検出部
40…硬貨収納部
41…回転円盤
42…送出部
43…規制部材
51…回動軸
32a…回転軸