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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】モータ制御装置および設定装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20220726BHJP
【FI】
H02P29/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018093357
(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公開番号】P2019201456
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 岳
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-052189(JP,A)
【文献】特開2017-216504(JP,A)
【文献】特開平08-154143(JP,A)
【文献】特開2000-330641(JP,A)
【文献】特表2018-502485(JP,A)
【文献】特開2001-312699(JP,A)
【文献】特開2012-071755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 4/00
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/08-31/00
G06F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを制御するモータ制御装置であって、
前記モータ制御装置に対する上位装置であるマスタ装置と通信ネットワークを介して通信するネットワーク通信部と、
前記通信ネットワークとは別の通信経路によって、前記ネットワーク通信部における通信方式情報を受信する設定通信部と、
を備え、
前記ネットワーク通信部は、再構成可能デバイスを含み、前記再構成可能デバイスを再構成することにより、通信方式を変更可能であり、
前記モータ制御装置は、前記設定通信部が前記通信方式情報を受信した場合に、前記通信方式情報に応じて、前記再構成可能デバイスを再構成することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記設定通信部が、前記通信方式情報として、前記再構成可能デバイスの設定データを受信し、
前記モータ制御装置は、前記設定データに応じて前記再構成可能デバイスを再構成することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記設定通信部が、記録媒体に記録されている情報を読み出すことによって、前記通信方式情報を受信することを特徴とする請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記モータ制御装置には、再構成可能デバイスの設定データが予め保持されており、
前記設定通信部が、前記通信方式情報として、前記設定データを用いて前記再構成可能デバイスを再構成する指令を受信することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
モータ制御装置の動作条件を設定する設定装置であって、
前記モータ制御装置には、当該モータ制御装置に対する上位装置であるマスタ装置と通信ネットワークを介して通信するネットワーク通信部が設けられており、
前記ネットワーク通信部には、再構成可能デバイスが含まれており、前記再構成可能デバイスを再構成することにより、前記ネットワーク通信部の通信方式を変更可能であり、
前記設定装置は、
前記ネットワーク通信部における通信方式情報を設定する設定部を備え、かつ、
前記通信ネットワークとは別の通信経路によって、前記通信方式情報を前記モータ制御装置に供給することを特徴とする設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面(一態様)は、モータを制御するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FA(Factory Automation)システム等の産業システムにおいて、各機器間の動作条件を設定するための手法について、様々な工夫が提案されている。例えば、特許文献1には、通信処理装置の通信方式を、上位装置の指令に応じて変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-69777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面は、モータ制御装置において、マスタ装置と通信するための通信方式を簡便に変更することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本発明の一側面に係るモータ制御装置は、モータを制御するモータ制御装置であって、前記モータ制御装置に対する上位装置であるマスタ装置と通信ネットワークを介して通信するネットワーク通信部と、前記通信ネットワークとは別の通信経路によって、前記ネットワーク通信部における通信方式情報を受信する設定通信部と、備え、前記ネットワーク通信部は、再構成可能デバイスを含み、前記再構成可能デバイスを再構成することにより、通信方式を変更可能であり、前記モータ制御装置は、前記設定通信部が前記通信方式情報を受信した場合に、前記通信方式情報に応じて、前記再構成可能デバイスを再構成する。
【0006】
前記の構成によれば、マスタ装置の仕様に応じて、モータ制御装置の適切な通信方式を随意に変更できる。つまり、従来とは異なり、例えばマスタ装置の仕様に応じて、予め特定の1つの通信方式が設定されたモータ制御装置を準備することが不要となる。それゆえ、1つのモータ制御装置を、様々な仕様のマスタ装置と通信できるように設定できる。
【0007】
さらに、設定通信部は、通信ネットワーク(例:FAシステム内の通信ネットワーク)とは別の通信経路によって、通信方式情報を受信できる。例えば、設定通信部は、当該別の通信経路によって、設定装置(モータ制御装置の動作条件を設定する装置)と通信できる。このため、モータ制御装置と設定装置との接続関係を容易に変更できる。それゆえ、ユーザは、モータ制御装置が配置された現場(例:工場内)において、その場でモータ制御装置の設定を簡便に行うことができる。以上のように、本発明の一側面によれば、モータ制御装置において、マスタ装置と通信するための通信方式を簡便に変更できる。その結果、モータ制御装置の利便性を向上させることが可能となる。
【0008】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一側面に係るモータ制御装置では、前記設定通信部が、前記通信方式情報として、前記再構成可能デバイスの設定データを受信し、前記モータ制御装置は、前記設定データに応じて前記再構成可能デバイスを再構成してよい。
【0009】
前記の構成によれば、例えば設定装置において設定された設定データに応じて、再構成可能デバイスを再構成できる。特に、設定装置において設定データを生成することにより、複雑な再構成にも対処できる。それゆえ、設定可能な通信方式の種類について、より多様な選択肢をユーザに提供できる。また、通信経路を介して設定装置からモータ制御装置に設定データを直接的に供給できるので、ユーザの作業を簡略化できる。
【0010】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一側面に係るモータ制御装置では、前記設定通信部が、記録媒体に記録されている情報を読み出すことによって、前記通信方式情報を受信してよい。
【0011】
前記の構成によれば、記録媒体に記録された情報をモータ制御装置に読み取らせることによって、通信方式情報をモータ制御装置に取得させることもできる。このため、再構成可能デバイスを再構成する時に、設定装置を準備することが不要となる。
【0012】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一側面に係るモータ制御装置には、再構成可能デバイスの設定データが予め保持されており、前記設定通信部が、前記通信方式情報として、前記設定データを用いて前記再構成可能デバイスを再構成する指令を受信してよい。
【0013】
前記の構成によっても、再構成可能デバイスを再構成できる。この場合、設定データを設定装置において生成することが不要となるので、設定装置の処理を簡略化できる。
【0014】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一側面に係る設定装置は、モータ制御装置の動作条件を設定する設定装置であって、前記モータ制御装置には、当該モータ制御装置に対する上位装置であるマスタ装置と通信ネットワークを介して通信するネットワーク通信部が設けられており、前記ネットワーク通信部には、再構成可能デバイスが含まれており、前記再構成可能デバイスを再構成することにより、前記ネットワーク通信部の通信方式を変更可能であり、前記設定装置は、前記ネットワーク通信部における通信方式情報を設定する設定部を備え、かつ、前記通信ネットワークとは別の通信経路によって、前記通信方式情報を前記モータ制御装置に供給する。
【0015】
前記の構成によっても、モータ制御装置において、マスタ装置と通信するための通信方式を簡便に変更できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、モータ制御装置において、マスタ装置と通信するための通信方式を簡便に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1のFAシステムおよび設定装置の要部の構成を示す図である。
図2図1のFAシステムの全体構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図3図1のスレーブ装置における電源~モータの回路構成の一例を示す図である。
図4】実施形態1の一変形例に係るFAシステムおよび設定装置の要部の構成を示す図である。
図5】実施形態2のFAシステムおよび設定装置の要部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0019】
§1 適用例
図1は、本実施形態(以下、実施形態1)のFAシステム1(モータ制御システム)および設定装置900の要部の構成を示す図である。FAシステム1は、スレーブ装置90(モータ制御装置)およびPLC(Programmable Logic Controller)100(マスタ装置)を備える。PLC100は、スレーブ装置90に対する上位装置(マスタ装置)の一例である。
【0020】
FAシステム1は、電源70およびモータ74をさらに備える。スレーブ装置90は、モータ74を制御する制御部10を備える。制御部10は、通信ネットワーク(例:FAシステム1の通信ネットワーク)を介してPLC100と通信するネットワーク通信部120を備える。ネットワーク通信部120は、再構成可能デバイス(Reconfigurable Device)を含む。再構成可能デバイスを再構成することにより、ネットワーク通信部120の通信方式を変更できる。
【0021】
設定装置900は、スレーブ装置90の動作条件を設定する。設定装置900は、ユーザの操作(以下、ユーザ操作)を受け付けることによって、スレーブ装置90の動作条件をユーザに設定させることができる。具体的には、設定装置900は、ネットワーク通信部120の通信方式を設定する。
【0022】
設定装置900は、入力部901、設定部902、および設定データ生成部903(生成部)を備える。入力部901は、ユーザ操作を受け付ける。設定部902は、ユーザ操作に基づいて、ネットワーク通信部120の複数種類の通信方式の中から、1つの通信方式を設定する。
【0023】
制御部10は、設定通信部140をさらに備える。設定通信部140は、通信ネットワークとは別の通信経路によって、ネットワーク通信部120における通信方式情報を受信する。設定通信部140は、一例として、設定装置900から通信方式情報を取得する。スレーブ装置90(より具体的には、制御部10)は、設定通信部140が通信方式情報を受信した場合に、当該通信方式情報に応じて、再構成可能デバイスを再構成する。例えば、設定通信部140は、受信した通信方式情報に応じて、再構成可能デバイスを再構成する。但し、制御部10において、設定通信部140とは別の機能部に、再構成可能デバイスを再構成する機能を付与してもよい。
【0024】
前記の構成によれば、PLC100の仕様に応じて、スレーブ装置90の適切な通信方式を随意に変更できる。つまり、従来とは異なり、PLC100の仕様に応じて、予め特定の1つの通信方式が設定されたスレーブ装置90を準備することが不要となる。それゆえ、1つのスレーブ装置90を、様々な仕様のPLC100と通信できるように設定できる。
【0025】
さらに、設定通信部140は、通信ネットワークとは別の通信経路によって、通信方式情報を取得する。従って、例えば、スレーブ装置90は、当該別の通信経路によって、設定装置900から通信方式情報を取得できる。一例として、スレーブ装置90は、通信ネットワークに含まれない有線または無線の通信経路によって、設定装置900と通信可能である。このため、設定装置900とスレーブ装置90との接続関係を容易に変更できる。それゆえ、ユーザは、モータ制御装置が配置された現場(例:工場内)において、その場でモータ制御装置の設定を簡便に行うことができる。このように、スレーブ装置90によれば、PLC100と通信するための通信方式を簡便に変更できる。
【0026】
§2 構成例
(FAシステム1の概要)
図2は、FAシステム1の全体構成を概略的に示す機能ブロック図である。FAシステム1は、情報処理装置1000、PLC100、およびスレーブ装置90を含む。FAシステム1は、工場内に設置される複数の機械から成る生産設備を機能ごとにまとめた単位である。FAシステム1は、工場製造工程の自動化を実現するシステムである。FAシステム1は、マスタ・スレーブ制御システムによって実現される。
【0027】
FAシステム1において、PLC100(マスタ装置)は、ネットワークマスタと称されてもよい。これに対して、スレーブ装置90は、ネットワークスレーブと称されてもよい。PLC100は、1つ以上のスレーブ装置90を制御する。
【0028】
情報処理装置1000は、FAシステム1の各部を統括的に制御する。情報処理装置1000は、PLC100を制御してよい。PLC100は、スレーブ装置90のそれぞれへデータを出力できる。また、PLC100は、スレーブ装置90のそれぞれからデータを取得できる。なお、IPC(Industrial PC Platform,産業用PCプラットフォーム)を、情報処理装置1000またはPLC100として用いてもよい。
【0029】
スレーブ装置90のそれぞれは、PLC100を介して、情報処理装置1000に接続されている。スレーブ装置90は、PLC100の指令に従って、製造工程に関する1または複数の機能を実行する。説明の便宜上、図2に示される3つのスレーブ装置90のそれぞれを、スレーブ装置90a~90cとも称する。情報処理装置1000は、PLC100を介して、スレーブ装置90a~90cを制御してよい。スレーブ装置90a~90cは、PLC100を介して通信を行う。図2では、スレーブ装置90が複数である場合が例示されているが、スレーブ装置90は1つ(単数)であってもよい。
【0030】
(回路構成の一例)
図3は、FAシステム1における電源70~モータ74の回路構成の一例を示す図である。スレーブ装置90は、整流回路71、DC(Direct Current,直流)リンク72、インバータ73(電力変換部)を備える。制御部10は、インバータ73にモータ74を駆動させるためのモータ駆動信号(例:PWM(Pulse Width Modulation,パルス幅変調)信号)を、当該インバータ73に出力する。インバータ73は、PWM信号に基づいて、モータ74を駆動する。このように、制御部10は、インバータ73を介してモータ74を制御(駆動)する。
【0031】
以下、モータ74が3相交流(Alternative Current,AC)誘導電動機(Induction Motor,IM)である場合を例示する。但し、モータ74は3相交流同期電動機(Synchronous Motor,SM)であってもよい。あるいは、モータ74は、単相または2相の交流電動機であってもよい。また、モータ74として、直流電動機を使用することもできる。
【0032】
電源70は、公知の3相交流電源である。以下、3相交流の各相を、U相、V相、およびW相として表す。電源70は、整流回路71に接続されている。整流回路71は、6つの整流素子710を有する。一例として、整流素子710は、ダイオードである。整流回路71は、電源70から供給された交流電圧(交流電力)を整流することにより、当該交流電圧を直流電圧(直流電力)に変換する。整流回路71は、AC/DCコンバータとしての役割を担う。
【0033】
6つの整流素子710は、3相全波整流回路を構成する。6つの整流素子710のうち、(i)2つの整流素子710は電源70のU相に、(ii)2つの整流素子710は電源70のV相に、(iii)2つの整流素子710は電源70のW相に、それぞれ接続されている。
【0034】
図3では、これら6つの整流素子710のそれぞれを、
・整流素子710UH(U相上アーム整流素子)
・整流素子710UL(U相下アーム整流素子)
・整流素子710VH(V相上アーム整流素子)
・整流素子710VL(V相下アーム整流素子)
・整流素子710WH(W相上アーム整流素子)
・整流素子710WL(W相下アーム整流素子)
とも称する。
【0035】
なお「上アーム整流素子」とは、DCリンク72(キャパシタ720)の節点N1と接続された整流素子710を総称的に指す。また、「下アーム整流素子」とは、DCリンク72の節点N2と接続された整流素子710を総称的に指す。「上アーム」および「下アーム」の意味合いについては、以下に述べるインバータ73についても同様である。
【0036】
整流回路71は、DCリンク72を介して、インバータ73と接続されている。DCリンク72は、キャパシタ720を備える。キャパシタ720の2つの節点のうち、一方をN1、他方をN2と称する。キャパシタ720は、整流回路71から供給された直流電圧を平滑化する。図3の回路構成において、(i)節点N1はキャパシタ720の正極に、(ii)節点N2はキャパシタ720の負極に、それぞれ相当する。DCリンク72は、平滑回路と称されてもよい。
【0037】
インバータ73は、6つのスイッチング素子730を有する。実施形態1では、インバータ73が電圧型インバータである場合を例示する。但し、インバータ73として、電流型インバータが用いられてもよい。インバータ73は、DCリンク72から供給された直流電圧(直流電力)をスイッチングすることにより、当該直流電圧を交流電圧(交流電力)に変換する。インバータ73は、DC/ACコンバータとしての役割を担う。
【0038】
スイッチング素子730は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor,絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)とダイオード(還流ダイオード)とが並列接続されて構成されている。6つのスイッチング素子730のうち、(i)2つのスイッチング素子730はモータ74のU相に、(ii)2つのスイッチング素子730はモータ74のV相に、(iii)2つのスイッチング素子730はモータ74のW相に、それぞれ接続されている。「モータ74のU相」とは、より厳密には、「モータ74の固定子巻線のU相」を意味する。この点については、V相およびW相についても同様である。
【0039】
図3では、これら6つのスイッチング素子730のそれぞれを、
・スイッチング素子730UH(U相上アームスイッチング素子)
・スイッチング素子730UL(U相下アームスイッチング素子)
・スイッチング素子730VH(V相上アームスイッチング素子)
・スイッチング素子730VL(V相下アームスイッチング素子)
・スイッチング素子730WH(W相上アームスイッチング素子)
・スイッチング素子730WL(W相下アームスイッチング素子)
とも称する。
【0040】
インバータ73は、変換後の電圧(交流電圧)を、モータ74に供給する。インバータ73を設けることにより、所望の波形の3相交流電圧(例:所望の周波数および振幅を有する3相交流電圧)を、モータ74に供給できる。従って、インバータ73の動作(6つのスイッチング素子730のそれぞれのON(導通)/OFF(開放))を制御することにより、モータ74の動作を制御できる。すなわち、モータ74を所望の運転条件によって駆動できる。実施形態1では、PWM制御によって、モータ74が駆動される。
【0041】
(モータ74の制御方法の一例)
図1を再び参照し、モータ74の制御方法の一例について述べる。制御部10は、第1FB(Feedback)信号取得部110(第1フィードバック信号取得部,フィードバック信号取得部)、第2FB信号取得部115(第2フィードバック信号取得部,フィードバック信号取得部)、ネットワーク通信部120、およびPWM信号出力部130(モータ駆動信号出力部)をさらに備える。第1FB信号取得部110および第2FB信号取得部115を総称的に、フィードバック信号取得部(FB信号取得部)と称する。換言すれば、実施形態1では、FB信号取得部が第1FB信号取得部110および第2FB信号取得部115を含む場合を例示する。FB信号取得部は、モータ74の動作状態に対応する所定の物理量を示すフィードバック信号(FB信号)を取得する。PWM信号出力部130は、PWM信号(モータ駆動信号)をインバータ73に出力する。
【0042】
実施形態1では、FB信号取得部が、第1FB信号取得部110および第2FB信号取得部115を含む場合を例示する。つまり、実施形態1では、1FB信号取得部110および第2FB信号取得部115を用いてモータ74のフィードバック制御が行われる場合を例示する。このため、FB信号には、後述する第1FB信号および第2FB信号が含まれるものとする。但し、FB信号取得部は、第1FB信号取得部110または第2FB信号取得部115の一方のみによって構成されていてもよい。つまり、FB信号は、第1FB信号または第2FB信号の一方のみであってもよい。
【0043】
FAシステム1は、モータ74の回転子の位置を検出するエンコーダ75(位置検出部)をさらに備える。エンコーダ75は、モータ74に設けられている(例:取り付けられている)。エンコーダ75は、例えばロータリーエンコーダである。エンコーダ75は、モータ74の回転子の位置(より具体的には、モータ74の回転角)(以下、θm)を検出する。「モータ74の回転角」とは、より厳密には、「モータ74の回転子の回転角」を意味する。θmは、モータ74の動作状態に対応する所定の物理量の一例である。エンコーダ75は、θmを示す信号(以下、角度検出信号)を出力する。角度検出信号は、例えばシリアルデータ信号(デジタルデータ)である。このように、エンコーダ75は、角度検出信号を、数値データを示す信号として出力する。
【0044】
第1FB信号取得部110は、第1フィードバック信号(第1FB信号)としての角度検出信号を、エンコーダ75から取得する。具体的には、第1FB信号取得部110は、所定の周期(通信周期)ごとに、第1FB信号(角度検出信号)をエンコーダ75から取得する。第1FB信号取得部110は、例えば位置フィードバックのために用いられる。
【0045】
第1FB信号取得部110は、公知の通信方式(第1通信方式)によって、エンコーダ75との通信(データの受信)を行う。第1通信方式の例としては、RS422またはRS485を挙げることができる。第1通信方式は、公知のシリアル通信方式であればよい。当該構成では、第1FB信号取得部110は、第1FB信号を取得するためのデジタル処理を行う。
【0046】
FAシステム1は、電流検出器76V・76Wをさらに備える。第2FB信号取得部115は、電流検出器76V・76Wを介して、インバータ73からモータ74に供給される電流を示す信号(以下、電流検出信号)を取得する。当該電流は、モータ74の動作状態に対応する所定の物理量の別の一例である。例えば、第2FB信号取得部115は、電流検出器76V・76Wを介して、インバータ73からモータ74の所定の2相(例:V相およびW相)に供給される電流を検出する(図1図3を参照)。
【0047】
一例として、電流検出器76V・76Wは、公知のアナログ式の電流検出器であってよい。電流検出器76Vは、インバータ73からモータ74のV相に供給される電流を検出する。電流検出器76Wは、インバータ73からモータ74のW相に供給される電流を検出する。電流検出器76V・76Wは、自身の検出結果を、電流検出信号として出力する。この場合、電流検出信号は、アナログ信号(アナログデータ)である。
【0048】
一例として、第2FB信号取得部115は、デルタシグマ方式のAD(Analog-Digital)変換器によって構成される。第2FB信号取得部115は、電流検出器76V・76Wから取得したアナログ信号としての電流検出信号を、デジタル信号(デジタルデータ)に変換する。第2FB信号取得部115は、変換後の当該電流検出信号を、モータ74のトルク値に対応する第2フィードバック信号(第2FB信号)として取得する。但し、第2FB信号取得部115は、デルタシグマ方式を用いない一般的なAD変換器によって構成されてもよい。
【0049】
別の例として、電流検出器76V・76Wは、公知のデジタル式の電流検出器であってもよい。この場合、電流検出信号は、例えばシリアルデータ信号(デジタルデータ)である。この場合、第2FB信号取得部115は、第2FB信号としての電流検出信号を、電流検出器76V・76Wから取得する。第2FB信号取得部115は、公知のシリアル通信方式によって、電流検出器76V・76Wとの通信(データの受信)を行う。このように、第2FB信号は、シリアル通信によって第2FB信号取得部115に供給されてもよい。この場合、第2FB信号取得部115にAD変換機能を設けることが不要となる。従って、第2FB信号取得部の構成を簡単化できる。
【0050】
第1FB信号取得部110は、ネットワーク通信部120およびPWM信号出力部130に接続されている。第1FB信号取得部110は、ネットワーク通信部120およびPWM信号出力部130の少なくともいずれかに、第1FB信号を供給できる。同様に、第2FB信号取得部115は、ネットワーク通信部120およびPWM信号出力部130に接続されている。第2FB信号取得部115は、ネットワーク通信部120およびPWM信号出力部130の少なくともいずれかに、第2FB信号を供給できる。このように、FB信号取得部は、ネットワーク通信部120およびPWM信号出力部130の少なくともいずれかに、FB信号を供給できる。
【0051】
ネットワーク通信部120は、制御部10(スレーブ装置90)とPLC100(マスタ装置)との間の通信インターフェースである。ネットワーク通信部120は、第1通信方式とは異なる第2通信方式によって、PLC100との通信(データの送受信)を行う。第2通信方式の例としては、EtherCAT(Ethernet(登録商標) for Control Automation Technology)(登録商標)またはMECHATROLINK(登録商標)を挙げることができる。第2通信方式は、フィールドネットワークに準拠した公知の通信方式であればよい。
【0052】
上述のように、ネットワーク通信部120に含まれる再構成可能デバイスを再構成することにより、第2通信方式(ネットワーク通信部120がPLC100からデータを取得する通信方式)を変更できる。一例として、ネットワーク通信部120は、再構成可能デバイスとして、回路構成が変更可能な(回路構成が書き換え可能な)PLD(Programmable Logic Device,プログラマブルロジックデバイス)を含む。当該PLDの回路構成を変更することにより、第2通信方式を変更できる。PLDの回路構成の変更は、各再構成可能デバイスの再構成の一例である。PLDの一例としては、FPGA(Field Programmable Gate Arrays,フィールドプログラマブルゲートアレイ)を挙げることができる。実施形態1では、ネットワーク通信部120がFPGAを用いて構成されている場合を例示する。但し、ネットワーク通信部120に適用可能な再構成可能デバイスは、FPGAに限定されない。例えば、DRP(Dynamically Reconfigurable Processor,動的再構成可能プロセッサ)を用いて、ネットワーク通信部120を構成することもできる。
【0053】
PLC100は、ユーザによって設定されたモータ74の動作条件に基づいて、当該モータ74に対する1つ以上の指令信号を生成する(例:当該モータ74に対する1つ以上の指令値を算出する)。一例として、PLC100は、第1指令値(モータ74の回転角についての指令値)および第2指令値(モータ74に供給される電流についての指令値)を生成する。PLC100は、第1FB信号によって示されるθmを、第1指令値に対するフィードバック値(第1FB値)として用いる。また、PLC100は、第2FB信号によって示される電流の値を、第2指令値に対するフィードバック値(第2FB値)として用いる。
【0054】
一例として、制御部10には、FB演算処理(フィードバック演算処理)の機能が付与されている。この場合、制御部10は、ネットワーク通信部120を介して、PLC100から各指令値(第1指令値および第2指令値)を取得する。そして、制御部10は、各指令値と各FB値との比較結果(例:各指令値と各FB値との差)に基づいて、モータ74を制御する処理(モータ制御処理)を行う。つまり、制御部10は、前記比較結果に基づいて、モータ74を制御するためのFB演算処理を行う。このように、制御部10は、各FB信号に基づいて、モータ制御処理(FB演算処理)を行うことができる。一例として、実施形態1では、制御部10は、FB演算処理の結果(以下、FB演算処理結果)を、PWM信号出力部130に供給する。PWM信号出力部130は、FB演算処理結果に基づいて、PWM信号(モータ駆動信号)を生成する。
【0055】
PWM信号は、インバータ73の6つのスイッチング素子730のそれぞれのON/OFFを制御する信号である。PWM信号は、インバータ73を介してモータ74を駆動する信号とも理解できる。このように、PWM信号は、モータ駆動信号(インバータ73にモータ74を駆動させる信号)の一例である。一例として、PWM信号出力部130は、FB演算処理結果に基づいて、PWM信号のデューティ比(デューティサイクルとも称される)を調整する。
【0056】
なお、上述の例とは異なり、PLC100にFB演算処理を行わせてもよい。つまり、PLC100に実質的なモータ制御を行わせてもよい。この場合、ネットワーク通信部120は、第1FB信号取得部110から取得した第1FB信号を、PLC100に供給してよい。また、ネットワーク通信部120は、第2FB信号取得部115から取得した第2FB信号を、PLC100に供給してよい。さらに、ネットワーク通信部120は、PLC100からFB演算処理結果を取得してよい。
【0057】
(設定装置900を用いた第2通信方式の変更例)
フィールドネットワークを用いた通信において、PLC100から出力されるデータの形式は、PLC100の仕様に応じて異なりうる。従って、ネットワーク通信部120がPLC100からデータを取得するための通信方式(第2通信方式)の種類は、PLC100の仕様に応じて異なりうる。
【0058】
一例として、ある1つのPLC(便宜上、タイプAのPLCと称する)の製造業者と別の1つのPLC(便宜上、タイプBのPLCと称する)の製造業者とが異なる場合を考える。このような場合、(i)ネットワーク通信部120がタイプAのPLCからデータを取得するための通信方式(以下、タイプAの第2通信方式)と、(ii)ネットワーク通信部120がタイプBのPLCからデータを取得するための通信方式(以下、タイプBの第2通信方式)とが相違しうる。一例として、タイプAの第2通信方式およびタイプBの第2通信方式は、いずれもフィールドネットワークに準拠した通信方式であるが、その通信プロトコルが相違する。
【0059】
従来では、PLCの仕様に応じて、予め特定の1つの通信方式が設定されたモータ制御装置を準備することが必要であった。例えば、タイプAのPLCとモータ制御装置とを組みわせて使用する場合には、タイプAの第2通信方式による通信が可能なネットワーク通信部(以下、タイプAのネットワーク通信部)を有するモータ制御装置を準備することが必要であった。これに対して、タイプBのPLCとモータ制御装置とを組みわせて使用する場合には、タイプBの第2通信方式による通信が可能なネットワーク通信部(以下、タイプBのネットワーク通信部)を有するモータ制御装置を準備することが必要であった。このように、従来では、異なる仕様のPLCに対応するためには、複数のモータ制御装置を準備することが必要であった。それゆえ、モータ制御装置の在庫管理が煩雑となるという問題があった。
【0060】
また、従来では、1つのモータ制御装置によって異なる仕様のPLCに対応するためには、1つのモータ制御装置に複数のネットワーク通信部を設ける必要があった。一例として、1つのモータ制御装置によって、タイプAのPLCおよびタイプBのPLCの両方に対応する場合を考える。この場合、1つのモータ制御装置に、タイプAのネットワーク通信部とタイプBのネットワーク通信部との2つのネットワーク通信部を設けることが必要であった。このように、1つのモータ制御装置によって異なる仕様のPLCに対応する場合には、モータ制御装置の構成の複雑化が生じるという問題があった。
【0061】
以上の点を踏まえ、本願の発明者(以下、発明者)は、モータ制御装置の利便性を向上させるための構成については、改善の余地があると考えた。実施形態1の設定装置900およびスレーブ装置90の構成は、発明者によって新たに想到された工夫点の一例である。
【0062】
一例として、設定装置900には、ユーザにスレーブ装置90の動作条件を設定させるプログラム(以下、設定プログラム)が格納されている。設定部902および設定データ生成部903は、設定装置900が設定プログラムを実行することで実現される。設定装置900は、例えば可搬型の情報処理装置である。一例として、設定装置900は、ノートPC(Personal Computer)である。あるいは、タブレット端末を設定装置900として用いてもよい。可搬型の情報処理装置を設定装置900として用いることにより、ユーザが現場でスレーブ装置90の設定変更を簡便に行うことができる。但し、設定装置900は、据え置き型の情報処理装置であってもよい。
【0063】
上述のように、設定装置900は、通信ネットワークとは別の通信経路によって、スレーブ装置90(設定通信部140)と通信可能である。実施形態1では、USB(Universal Serial Bus)(登録商標)ケーブルを用いて、設定装置900とスレーブ装置90との間に有線の通信経路を形成する場合を例示する。スレーブ装置90に、USBケーブルを差し込むためのUSBポートを設けることにより、当該構成を採用できる。但し、USB以外の公知の有線通信技術を用いて、有線の通信経路を形成してもよい。
【0064】
あるいは、例えば公知の無線通信技術を用いて、設定装置900とスレーブ装置90との間に無線の通信経路を形成してもよい。スレーブ装置90に、設定装置900との無線通信を可能とする無線通信機能を設けることにより、当該構成を採用できる。一例として、Bluetooth(登録商標)を用いて、無線の通信経路を形成できる。
【0065】
設定プログラムの実行中、設定装置900は、不図示の表示部に、複数種類の第2通信方式の候補を表示させる。つまり、設定装置900は、複数種類の第2通信方式の中から、1つの通信方式をユーザに選択させるための操作画面を提示する。ユーザは、当該操作画面を参照し、複数種類の第2通信方式の中から1つの通信方式を選択するユーザ操作を入力部901に施す。
【0066】
設定部902は、ユーザ操作に基づいて、複数種類の第2通信方式の中から1つの通信方式を設定する。例えば、ユーザが操作画面中でタイプAの第2通信方式を選択した場合、設定部902は、ユーザの選択に従い、複数種類の第2通信方式の中からタイプAの第2通信方式を設定する。これに対して、ユーザが操作画面中でタイプBの第2通信方式を選択した場合、設定部902は、ユーザの選択に従い、複数種類の第2通信方式の中からタイプBの第2通信方式を設定する。
【0067】
設定データ生成部903は、PLDの回路構成の設定データを生成する。PLDの回路構成の設定データは、再構成可能デバイスの設定データの一例である。具体的には、設定データ生成部903は、設定部902によって設定された第2通信方式の種類に応じて、設定データを生成する。そして、設定データ生成部903は、生成した設定データを、設定通信部140に供給する。設定データは、通信方式情報の一例である。設定通信部140は、通信方式情報に応じて、PLDの回路構成を変更できる。
【0068】
一例として、タイプAの第2通信方式が設定された場合、設定データ生成部903は、ネットワーク通信部120においてタイプAの第2通信方式による通信が可能となるように、設定データ(以下、タイプAの設定データ)を生成する。そして、設定データ生成部903は、USBケーブルを介して、タイプAの設定データを設定通信部140に供給する。設定通信部140は、タイプAの設定データをネットワーク通信部120に供給する。そして、設定通信部140は、タイプAの設定データを用いて、PLDの回路構成を変更する。その結果、ネットワーク通信部120に、タイプAの第2通信方式による通信を行わせることが可能となる。
【0069】
これに対して、第2通信方式としてタイプBの第2通信方式が設定された場合、設定データ生成部903は、ネットワーク通信部120においてタイプBの第2通信方式による通信が可能となるように、設定データ(以下、タイプBの設定データ)を生成する。そして、設定データ生成部903は、USBケーブルを介して、タイプBの設定データを設定通信部140に供給する。設定通信部140は、タイプBの設定データをネットワーク通信部120に供給する。そして、設定通信部140は、タイプBの設定データを用いて、PLDの回路構成を変更する。その結果、ネットワーク通信部120に、タイプBの第2通信方式による通信を行わせることが可能となる。
【0070】
このように、設定装置900によれば、PLC100の仕様に応じて、ネットワーク通信部120に、タイプAのネットワーク通信部またはタイプBのネットワーク通信部のいずれか一方の機能を付与することができる。すなわち、付加的なネットワーク通信部を設けることなく、1つのスレーブ装置90を、様々な仕様のPLC100と通信させることができる。つまり、ネットワーク通信部120において、第2通信方式のプロトコルを変更できる。このため、従来とは異なり、スレーブ装置90の在庫管理の煩雑さを低減できる。加えて、スレーブ装置90の構成の複雑化を避けることもできる。このように、実施形態1の構成によれば、従来に比べてスレーブ装置90の利便性を向上させることが可能となる。
【0071】
さらに、設定装置900は、通信ネットワークとは別の通信経路(例:USBケーブル)によってスレーブ装置90と通信できる。すなわち、通信ネットワークの設定を変更することなく、設定装置900とスレーブ装置90との接続関係を容易に変更できる。このため、ユーザに煩雑な作業を行わせることなく、設定装置900とスレーブ装置90とを接続できる。それゆえ、ユーザは、スレーブ装置90が配置された現場において、その場で当該スレーブ装置90の設定を簡便に行うことができる。
【0072】
特に、実施形態1では、設定データ生成部903によって設定データを生成できるので、PLDの複雑な回路構成の変更にも対処できる。それゆえ、設定可能な第2通信方式の種類について、より多様な選択肢をユーザに提供できる。また、USBケーブルを介して設定装置900からスレーブ装置90に設定データを直接的に供給できるので、ユーザの作業を簡略化できる。
【0073】
〔変形例〕
図4は、FAシステム1および設定装置900Aの要部の構成を示す図である。設定装置900Aは、実施形態1の設定装置900の一変形例である。設定装置900Aの設定データ生成部を、設定データ生成部903A(生成部)と称する。設定データ生成部903Aは、設定データ生成部903とは異なり、自身が生成した設定データを記録媒体9000に出力する機能をさらに有している。つまり、設定データ生成部903Aは、設定データを記録媒体9000に書き込むことができる。
【0074】
記録媒体9000は、スレーブ装置90によって読み取り可能な任意の記録媒体である。一例として、記録媒体9000は、設定装置900Aおよびスレーブ装置90の両方に対して着脱可能なリムーバブルメディアである。リムーバブルメディアの例としては、USBメモリまたはSDメモリーカードを挙げることができる。一例として、USBメモリを、記録媒体9000として用いる場合について述べる。
【0075】
ユーザは、設定装置900Aに設けられたUSBポートに記録媒体9000を差し込む。設定データ生成部903Aは、設定装置900AのUSBポートに記録媒体9000が差し込まれたことを契機として、記録媒体9000に設定データを書き込む。設定データの書き込みが終了すると、ユーザは、設定装置900AのUSBポートから記録媒体9000を引き抜く。
【0076】
続いて、ユーザは、スレーブ装置90に設けられたUSBポートに記録媒体9000を差し込む。設定通信部140は、スレーブ装置90のUSBポートに記録媒体9000が差し込まれたことを契機として、記録媒体9000に格納された設定データを読み出す。ネットワーク通信部120は、当該設定データを用いて、PLDの回路構成を変更する。
【0077】
このように、設定通信部140は、記録媒体9000に記録されている情報を読み出すことによって、通信方式情報を受信してもよい。このため、各PLDの回路構成を変更する時に、設定装置900Aを準備することが不要となる。
【0078】
〔実施形態2〕
実施形態2について、以下に説明する。説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。実施形態2のFAシステムを、FAシステム2と称する。また、実施形態2の設定装置を、設定装置900Bと称する。
【0079】
図5は、FAシステム2および設定装置900Bの要部の構成を示す図である。FAシステム2のスレーブ装置90の制御部を制御部20と称する。また、制御部20の設定通信部を設定通信部240と称する。
【0080】
実施形態1とは異なり、スレーブ装置90には、PLDの回路構成の設定データが予め保持されている。スレーブ装置90は、記憶部95をさらに備えている。記憶部95には、タイプAの設定データとタイプBの設定データとが予め格納されている。
【0081】
設定装置900Bは、実施形態1の設定装置900において、設定データ生成部903を指令部903Bに置き換えた構成である。指令部903Bは、記憶部95に格納された設定データを用いてPLDの回路構成を設定(変更)させる指令(以下、設定指令)を、設定通信部240に与える。実施形態2では、設定指令が、通信方式情報の一例である。すなわち、設定通信部240は、通信方式情報として設定指令を受信する。
【0082】
例えば、第2通信方式としてタイプAの第2通信方式が設定された場合、指令部903Bは、タイプAの設定データを用いてPLDの回路構成を設定させる指令(以下、タイプAの設定指令)を、設定通信部240に与える。設定通信部240は、タイプAの設定指令を受けたことを契機として、記憶部95からタイプAの設定データを読み出す。そして、設定通信部240は、タイプAの設定データを用いて、PLDの回路構成を変更する。その結果、ネットワーク通信部120に、タイプAの第2通信方式を行わせることが可能となる。
【0083】
これに対して、第2通信方式としてタイプBの第2通信方式が設定された場合、指令部903Bは、タイプBの設定データを用いてPLDの回路構成を設定させる指令(以下、タイプBの設定指令)を、設定通信部240に与える。設定通信部240は、タイプBの設定指令を受けたことを契機として、記憶部95からタイプBの設定データを読み出す。そして、設定通信部240は、タイプBの設定データを用いて、PLDの回路構成を変更する。その結果、ネットワーク通信部120に、タイプBの第2通信方式を行わせることが可能となる。
【0084】
実施形態2の構成によっても、ユーザによって設定された第2通信方式に応じて、PLDの回路構成を変更できる。このため、スレーブ装置の利便性を向上させることができる。特に、実施形態2では、実施形態1とは異なり、設定データを設定装置によって生成することが不要となるので、設定装置の処理を簡略化できる。
【0085】
〔変形例〕
なお、本発明の一側面に係る設定装置において、公知のハードウェアスイッチを用いて、ネットワーク通信部の通信方式を変更してもよい。具体的には、ハードウェアスイッチを、通信ネットワークとは別の通信経路として用いてもよい。ハードウェアスイッチとしては、例えばDIP(Dual In-line Package,ディップ)スイッチを用いることができる。実施形態2と同様に、モータ制御装置の記憶部には、PLDの回路構成の設定データが予め保持されているものとする。
【0086】
一例として、ユーザがDIPスイッチ内の所定の1つのスイッチ(例:タイプAの第2通信方式用のスイッチ)をONしたことを契機として、当該DIPスイッチは、ネットワーク通信部にタイプAの設定指令を与える。この場合、ネットワーク通信部に、タイプAの第2通信方式を行わせることができる。これに対して、ユーザが前記所定の1つのスイッチをOFFし、かつ、DIPスイッチ内の別の1つのスイッチ(例:タイプBの第2通信方式用のスイッチ)をONしたことを契機として、当該DIPスイッチは、ネットワーク通信部にタイプBの設定指令を与える。この場合、ネットワーク通信部に、タイプBの第2通信方式を行わせることができる。
【0087】
〔ソフトウェアによる実現例〕
FAシステム1・2および設定装置900・900A・900Bの制御ブロック(特に制御部10・20、設定部902、設定データ生成部903・903A、および指令部903B)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0088】
後者の場合、FAシステム1・2および設定装置900・900A・900Bは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の一側面の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一側面は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0089】
〔付記事項〕
本発明の一側面は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の一側面の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
74 モータ
90、90a~90c スレーブ装置(モータ制御装置)
100 PLC(マスタ装置)
120 ネットワーク通信部
140、240 設定通信部
900、900A、900B 設定装置
902 設定部
9000 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5