(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】マニピュレータ、及び移動ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
B25J5/00 A
(21)【出願番号】P 2018168031
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知大
(72)【発明者】
【氏名】古賀 達也
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭朗
(72)【発明者】
【氏名】金井 聡庸
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0066592(US,A1)
【文献】中国実用新案第206913136(CN,U)
【文献】特開2004-230509(JP,A)
【文献】特開2014-210306(JP,A)
【文献】特開2012-236249(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02939798(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00-19/06
B62D 57/02
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人搬送車に取り付けられるマニピュレータであって、
前記無人搬送車に取り付けられる筐体と、
前記筐体の上部に設けられ、回転軸方向が鉛直方向となる第1回転部と、
前記第1回転部から水平方向に延伸し、回転軸方向が水平方向となる第2回転部と、
前記第2回転部から延伸し、前記第2回転部の回転によって当該第2回転部の回転軸を中心として前記筐体の側面よりも外側を周回するアーム部と、を備え
、
前記第2回転部は、前記第1回転部の回転によって、前記筐体の上側空間の内側に収容されるマニピュレータ。
【請求項2】
前記第2回転部は、前記第1回転部の回転によって、前記筐体の上側空間の外側に配される請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項3】
前記第1回転部は、前記筐体の上面端部に設けられる請求項1または2に記載のマニピュレータ。
【請求項4】
前記アーム部から延伸する延伸部をさらに備え、
前記第1回転部、前記第2回転部、前記アーム部、及び前記延伸部を前記筐体の上側空間に収容する請求項1から3の何れか1項に記載のマニピュレータ。
【請求項5】
前記無人搬送車の移動中に、前記第1回転部、前記第2回転部、前記アーム部、及び前記延伸部を前記筐体の上側空間に収容する請求項4に記載のマニピュレータ。
【請求項6】
前記第1回転部及び前記第2回転部の動作を制御するマニピュレータ制御部を備え、
前記マニピュレータ制御部は、前記第1回転部、前記第2回転部、前記アーム部、及び前記延伸部を前記筐体の上側空間に収容させる請求項4または5に記載のマニピュレータ。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載のマニピュレータと前記無人搬送車とを備えた移動ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータ、及び移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自動搬送車100を開示する。自動搬送車100は、AGV(Automatic Guided Vehicle)10上に、複数の駆動軸を備えたロボットアーム30を備える。
【0003】
特許文献2は、作業ロボット4を開示する。作業ロボット4は、移動部20と、移動部20に設けられたロボットアーム30とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-132002号公報(2017年8月3日公開)
【文献】特開2018-118341号公報(2018年8月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術には次のような問題がある。
【0006】
特許文献1の自動搬送車100では、ロボットアーム30の先端部分が下方へ移動するときに、ロボットアーム30のアーム部分(又は先端部分)がAGV10の筐体の上面に接触する。AGV10の筐体がロボットアーム30の可動範囲を制約することによって、ロボットアーム30は、AGV10の筐体の側面よりも外側を周回(360度回転)できなくなる(特許文献1の
図3参照)。結果として、ロボットアーム30は、可動範囲が制約された領域において、その役割を果たすことが困難になる。特許文献2の作業ロボット4も同様の問題を有する(特許文献2の
図2参照)。
【0007】
本発明の一態様は、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、可動範囲の制約が少ないマニピュレータ、及び当該マニピュレータを搭載する移動ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るマニピュレータは、無人搬送車に取り付けられる筐体と、前記筐体の上部に設けられ、回転軸方向が鉛直方向となる第1回転部と、前記第1回転部から水平方向に延伸し、回転軸方向が水平方向となる第2回転部と、前記第2回転部から延伸し、前記第2回転部の回転によって当該第2回転部の回転軸を中心として前記筐体の側面よりも外側を周回するアーム部と、を備える構成を備える。
【0009】
前記第2回転部から延伸する前記アーム部は、当該第2回転部の回転によって当該第2回転部の回転軸を中心として前記筐体の側面よりも外側を周回する。この構成によれば、前記マニピュレータは、前記筐体の側面よりも外側を360度回転でき、従来の移送ロボットでは困難であった、アーム部の先端部分の下方への移動が容易になる。
【0010】
本開示の一側面に係る前記マニピュレータは、可動範囲の制約が少なく、その結果、従来のマニピュレータよりも広い領域でマニピュレータとしての役割を果たすことが可能となる。
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るマニピュレータでは、前記第2回転部は、前記第1回転部の回転によって、前記筐体の上側空間の外側に配される。
【0012】
前記第2回転部が前記筐体の上側空間の外側に配されることにより、前記第2回転部から延伸する前記アーム部も前記筐体の上側空間の外側に配される。
【0013】
これにより、前記アーム部は、当該アーム部及び/又は前記筐体の形状等に起因して生じうる可動範囲の制約をさらに抑制することができる。
【0014】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るマニピュレータでは、前記第1回転部は、前記筐体の上面端部に設けられる。
【0015】
前記の構成によれば、例えばコンテナを載置するのに十分なスペースが前記筐体の上面に確保される。そのスペースに合せて前記コンテナのサイズも大きくできる。その結果、例えば前記マニピュレータが特定のアイテムを前記コンテナに入れる動作をする場合には、前記マニピュレータは、より多くのアイテムを前記コンテナに入れることができ、作業効率を改善することができる。
【0016】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るマニピュレータは、前記アーム部から延伸する延伸部をさらに備え、前記第1回転部、前記第2回転部、前記アーム部、及び前記延伸部を前記筐体の上側空間に収容する。
【0017】
前記の構成によれば、前記第1回転部、前記第2回転部、前記アーム部、又は前記延伸部と周囲の人又は物体との接触が抑制される。その結果、前記マニピュレータの安全性を改善することができる。
【0018】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るマニピュレータは、前記無人搬送車の移動中に、前記第1回転部、前記第2回転部、前記アーム部、及び前記延伸部を前記筐体の上側空間に収容する。
【0019】
前記無人搬送車の移動中は、特に、前記第1回転部、前記第2回転部、前記アーム部、又は前記延伸部と周囲の人又は物体とが接触しやすい。
【0020】
前記の構成によれば、前記無人搬送車の移動中においても前記第1回転部、前記第2回転部、前記アーム部、又は前記延伸部と周囲の人又は物体との接触を回避しやすくなるため、前記マニピュレータの安全性をさらに改善することができる。
【0021】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るマニピュレータは、前記第1回転部及び前記第2回転部の動作を制御するマニピュレータ制御部を備え、前記マニピュレータ制御部は、前記第1回転部、前記第2回転部、前記アーム部、及び前記延伸部を前記筐体の上側空間に収容させる。
【0022】
前記マニピュレータが前記マニピュレータ制御部を備えることにより、例えば、通信機器の故障等の影響を受けやすい遠隔操作等と比較して、より確実に、前記第1回転部、前記第2回転部、前記アーム部、及び前記延伸部を前記筐体の上側空間に収容することができる。前記マニピュレータの安全性がさらに改善する。
【0023】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る移動ロボットは、前記マニピュレータと前記無人搬送車とを備える。
【0024】
前記の構成によれば、前記移動ロボットは、前記マニピュレータと同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、可動範囲の制約が少ないマニピュレータ、及び当該マニピュレータを搭載する移動ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態に係る移動ロボットの斜視図の一例である。
【
図2】本実施形態に係る移動ロボットの側面図の一例である。
【
図3】本実施形態に係る移動ロボットにコンテナが載置された一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るロボットアームの可動範囲の正面図の一例である。
【
図5】本実施形態に係るロボットアームの可動範囲の上面図の一例である。
【
図6】本実施形態に係るロボットアームの可動範囲の側面図の一例である。
【
図7】第2回転部が第1回転部の回転によって筐体の上側空間の外側に配されない場合を仮定したときの、ロボットアームの可動範囲の一例を示す側面図である。
【
図8】第2回転部が第1回転部の回転によって筐体の上側空間の外側に配されない場合を仮定したときの、ロボットアームの可動範囲の一例を示す正面図である。
【
図9】本実施形態に係るロボットアームが筐体の上側空間に収容された正面図の一例である。
【
図10】本実施形態に係るロボットアームが筐体の上側空間に収容された側面図の一例である。
【
図11】本実施形態に係るロボットアームが筐体の上側空間に収容された上面図の一例である。
【
図12】筐体に内蔵される本実施形態に係るマニピュレータ制御部の機能構成の模式例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0028】
§1 適用例
一例として、移動ロボット1が物流倉庫で使用される場合を説明する。一般に、物流倉庫では、複数の棚を上下に配列することにより複数のアイテムを効率よく保管している。移動ロボット1は、特定のアイテムが保管された棚の前で停止し、その棚から特定のアイテムを取得し、取得したアイテムを箱の中に入れ、その箱を他の場所に移動する。
【0029】
図4は、実施の形態に係るロボットアーム20の可動範囲を例示する。詳細は後述するが、ロボットアーム20の第1アーム23は、マニピュレータ10の筐体11の側面よりも外側(筐体11の外側)を周回(1回転)でき、従来の移動ロボットよりも可動範囲の制約が少ない。マニピュレータ10は、下方の棚に保管されたアイテムを容易に取得することができる。
【0030】
§2 構成例
図1は、実施の形態に係る移動ロボット1の斜視図の一例である。移動ロボット1は、無人搬送車2と、無人搬送車2に取り付けられるマニピュレータ10とを備える。
【0031】
無人搬送車2は、リモコンによる遠隔制御又は自動制御により自走可能であり、マニピュレータ10などの作業機器類を着脱可能に搭載する。無人搬送車2は、外部及び/又はマニピュレータ10と通信可能である。
【0032】
マニピュレータ10は、筐体11と、コンテナ台12と、ロボットアーム20とを備える。
【0033】
筐体11は、無人搬送車2に取り付けられる。筐体11は、移動ロボット1の動作を制御するマニピュレータ制御部60、及び各種プログラム(無人搬送車2の経路を分析する経路分析プログラム、カメラ27が撮像した画像を解析する画像解析プログラム等)を格納するメモリなどの各種電装品を収容する。筐体11の形状は特定の形状に限定されず、立方形、直方形、又は円筒形等であってよい。本実施形態では、筐体11は略直方形である。
【0034】
コンテナ台12は、筐体11の上面に着脱可能に取り付けられる。コンテナ台12にはコンテナが載置される。コンテナには吸着パッド26により吸着されたアイテムが保管される。
【0035】
ロボットアーム20は、複数の関節を有し、これらの関節を回動又は直動させることにより、吸着パッド26を移動させる。ロボットアーム20は、第1回転部21と、第2回転部22と、第1アーム23と、第3回転部24と、第2アーム25と、吸着パッド26と、カメラ27と、を備える。第3回転部24、第2アーム25、吸着パッド26、及びカメラ27を纏めて「延伸部」と称してもよく、当該延伸部は第1アーム23から延伸すする。
【0036】
第1回転部21、第2回転部22、及び第3回転部24は、独立に設けられた電動モータ、油圧モータ、又は油圧シリンダ等の原動機により駆動される。原動機はそれぞれ、吸着パッド26が所望の軌跡を描くように制御される。
【0037】
本実施形態では、ロボットアーム20は、3つの回転部(第1回転部21、第2回転部22、及び第3回転部24)を備えるが、回転部の個数は、2個又は4個以上であってもよい。
【0038】
第1回転部21は、筐体11の上部に設けられ、回転軸方向は鉛直方向である。鉛直方向は重力方向を示す(
図1の上下方向)。水平方向とは、鉛直方向に垂直な方向を示す。第1回転部21は、筐体11の上面に設けられる。あるいは、第1回転部21は、筐体11の上面に設けられた台座(不図示)に取り付けられてもよい。
【0039】
さらに、一例として、第1回転部21は、筐体11の上面端部に設けられる。「上面端部」とは、筐体11の上面であって、かつ、(1)上面の四辺のうち少なくとも一辺を第1回転部21が跨ぐ位置、(2)上面の四辺のうち少なくとも一辺に接する位置、又は(3)上面の四辺のうち少なくとも一辺の近傍、を意味する。第1回転部21を筐体11の上面端部に設けることにより、筐体11の上面にコンテナを載置するスペースを確保することができる。
【0040】
図1の例では、第1回転部21は、原動機のみを備える。しかしながら、第1回転部21は、原動機と、その原動機に連結されたアーム部(不図示)とを備えてもよい。その場合、第1回転部21は原動機とアーム部とを備えた部材として定義され、当該アーム部に第2回転部22が連結される。
【0041】
第2回転部22は、第1回転部21から水平方向に延伸し、回転軸方向が水平方向である。
図1の例では、第2回転部22は、原動機のみを備える。しかしながら、第2回転部22は、原動機と、その原動機に連結されたアーム部(不図示)とを備えてもよい。その場合、第2回転部22は原動機とアーム部とを備えた部材として定義され、当該アーム部に第1アーム23が連結される。
【0042】
図2は、移動ロボット1の側面図の一例である。2つの破線Sで挟まれた空間は、筐体11の上側空間を示す。第2回転部22は、第1回転部21の回転によって筐体11の上側空間Sの外側に配される。
【0043】
第1アーム23は、第2回転部22から延伸する。本実施形態において、第1アーム23は円筒形である。第1アーム23は、第2回転部22の回転によって第2回転部22の回転軸を中心として筐体11の側面よりも外側を周回する。筐体11の側面とは、第1回転部21の下方に位置する側面をいう。周回とは、360度回転することをいう。より具体的に、
図2に示すように、第2回転部22は、第1回転部21の回転によって筐体11の上側空間Sの外側に配される。この状態で第2回転部22が回転すると、第1アーム23は筐体11の側面に接触することなく、第2回転部22の回転軸を中心として筐体11の側面よりも外側を周回することができる。
【0044】
第3回転部24は、第2回転部22が配されている側とは反対側の第1アーム23の端部に設けられる。
【0045】
第2アーム25は、第3回転部24から延伸し、第3回転部24の回転によって第3回転部24の回転軸を中心として回転する。
【0046】
吸着パッド26は、第3回転部24が配されている側とは反対側の第2アーム25の端部に設けられる。吸着パッド26は、例えば、真空吸着、粘着力、静電引力、又は磁気吸引力等の種々の方式を採用することができる。
【0047】
カメラ27は、例えば吸着パッド26に設けられる。カメラ27は、2Dあるいは3D画像、又は動画を撮像する。例えば、移動ロボット1は、カメラ27により撮像された画像データに基づいてその動作が制御される。
【0048】
図3は、移動ロボット1にコンテナ50が載置された一例を示す図である。例えば、物流倉庫において、移動ロボット1は、コンテナ50に特定のアイテムを入れる。移動ロボット1では、第1回転部21は筐体11の上面端部に設けられる。これにより、コンテナ50を載置するのに十分なスペースが筐体11の上面に確保される。そのスペースに合せてコンテナ50のサイズも大きくすることができる。第1回転部21の取り付け位置を工夫することで、移動ロボット1は、より多くのアイテムを一度に移動させることができる。
[ロボットアーム20の可動範囲]
図4は、ロボットアーム20の可動範囲の一例を示す正面図である。
【0049】
図2を参照して説明したように、第2回転部22は、第1回転部21の回転によって筐体11の上側空間Sの外側に配される。第1アーム23は、筐体11に接触することなく、第2回転部22の回転によって第2回転部22の回転軸を中心として筐体11の側面よりも外側を360度回転することができる。これにより、ロボットアーム20の先端部分は下方への移動が容易になる。以上により、マニピュレータ10は、従来の移動ロボットの課題であった、可動範囲の制約を抑制することができる。
【0050】
さらに、マニピュレータ10には次の効果も期待できる。従来の移動ロボットは、ロボットアームの可動範囲外の領域に当該ロボットアームを移動させるために無人搬送車を移動させる必要があった。これに対して、本実施形態に係るマニピュレータ10では、ロボットアーム20が筐体11の側面よりも外側を360度回転する。これにより、マニピュレータ10は、従来の移動ロボットほどに無人搬送車2を移動させる必要がない。これにより、移動ロボット1は、作業の生産性も改善することができる。
【0051】
加えて、マニピュレータ10には次の効果も期待できる。従来の移動ロボットは、ロボットアームと筐体との接触を抑えるために、例えば筐体の角部を切り取るなどの設計が必要であった。しかしながら、このような設計では、筐体に内蔵する電装品(安全機器、又は計算機など)のレイアウトが複雑になり、電装品類のメンテナンス、又は組み立てが困難になるという問題が生じていた。
【0052】
これに対して、本実施形態に係るマニピュレータ10では、ロボットアーム20が筐体11の側面よりも外側を360度回転する。これにより、マニピュレータ10は、筐体11の角部を切り取る設計を必要とせず、それゆえ、メンテナンス及び組み立てが容易である。
【0053】
図5は、ロボットアーム20の可動範囲の上面図の一例である。
図5に示すように、ロボットアーム20は、第1回転部21、第2回転部22、及び第3回転部24をそれぞれ制御することにより、可動範囲に特段の制約を発生させることなく、移動ロボット1の上側空間を360度回転することができる。
【0054】
図6は、ロボットアーム20の可動範囲の側面図の一例である。移動ロボット1を側面から観察した場合、例えば、ロボットアーム20は、筐体11に接触して可動範囲に制約が発生しうる。
図6の例では、ロボットアーム20は、約270度回転する。ロボットアーム20の可動範囲は、筐体11及びロボットアーム20の設計によって調整しうる。
【0055】
以下、筐体11及び第1アーム23の形状と第1アーム23の可動範囲との関係について説明する。
【0056】
本実施形態において、第1アーム23は円筒形であり、筐体11は略直方形である。これらの形状は、マニピュレータで通常採用される形状である。マニピュレータで通常採用される形状の場合には、マニピュレータ10が上記構成を備えることにより、第1アーム23は、筐体11に接触することなく、筐体11の側面よりも外側を360度回転することができる。
【0057】
一方、移動ロボットのデザイン又は設計等によっては、第1アーム23の中央部に膨らみがある構成、又は筐体11の側面に凸部が形成されている構成などが採用されうる。このような構成においても、以下(1)乃至(3)の条件を満たす場合には、第1アーム23は、筐体11に接触することなく、筐体11の側面よりも外側を360度回転することができる。
【0058】
(1)第1回転部21が筐体11の上部に設けられ、回転軸方向は鉛直方向である。(2)第2回転部22が第1回転部21から水平方向に延伸し、回転軸方向が水平方向である。
【0059】
(3)例えば、第1回転部21が、原動機と当該原動機に連結されたアーム部とを備え、第2回転部22が当該アーム部に連結される。当該アーム部はある一定の長さを有する。これにより、第1アーム23は、筐体11に接触することなく、筐体11の側面よりも外側を360度回転する。
【0060】
第1アーム23及び筐体11の形状は様々な形状が考えられる。しかしながら、本実施形態に係るマニピュレータ10は、従来の移動ロボットが備えていない上記(1)及び(2)の構成を備える。また、マニピュレータ10は、上記(3)に記載の設計も採用しうる。このように、筐体11及び第1アーム23の形状が様々に変化した場合においても、第1アーム23は、筐体11に接触することなく、筐体11の側面よりも外側を360度回転することができる。
【0061】
次に、第2回転部が第1回転部の回転によって筐体の上側空間の外側に配されない場合を仮定して、この場合のロボットアーム20aの可動範囲を
図7、
図8により説明する。
図7、8は、
図4~
図6の例との対比のために用いられる。
【0062】
図7は、第2回転部22aが第1回転部21aの回転によって筐体11aの上側空間の外側に配されない場合を仮定したときの、ロボットアーム20aの可動範囲の側面図の一例である。
図7では、ロボットアーム20aは、筐体11aに接触することにより、180度しか回転することができない。
【0063】
図8は、第2回転部22aが第1回転部21aの回転によって筐体11aの上側空間の外側に配されない場合を仮定したときの、ロボットアーム20aの可動範囲の正面図の一例である。
図8では、第1アーム23aは、筐体11aに接触することにより、第2回転部22aの回転によって第2回転部22aの回転軸を中心として筐体11aの側面よりも外側を約200度しか回転することができない。
【0064】
このように、
図7、及び
図8の何れの場合においても、第1アーム23aは、筐体11aに接触することなく、第2回転部22aの回転によって第2回転部22aの回転軸を中心として筐体11aの側面よりも外側を360度回転することができない。
【0065】
図4~
図6と
図7、
図8の比較から分かるように、本実施形態に係る移動ロボット1では、第2回転部22は、第1回転部21の回転によって筐体11の上側空間Sの外側に配される。これにより、第1アーム23は、第2回転部22の回転によって第2回転部22の回転軸を中心として筐体11の側面よりも外側を360度回転することができる。
[ロボットアーム20の折り畳み]
図9は、ロボットアーム20が筐体11の上側空間に収容された正面図の一例である。移動ロボット1では、第1回転部21、第2回転部22、及び第3回転部24はそれぞれ独立に制御される。そこで、
図9に示すように、移動ロボット1は、第1回転部21、第2回転部22、及び第3回転部24の動作を制御して、ロボットアーム20を筐体11の上側空間に収容する。これにより、特に移動ロボット1の移動中に、ロボットアーム20と周囲の人又は物体との接触を抑制できる。また、移動ロボット1が静止している場合においても、ロボットアーム20と移動する周囲の人又は物体との接触を抑制できる。
【0066】
図10は、ロボットアーム20が筐体11の上側空間に収容された側面図の一例である。また、
図11は、ロボットアーム20が筐体11の上側空間に収容された上面図の一例である。
図10、及び
図11に示すように、ロボットアーム20は、筐体11の上側空間に完全に収容される。このように第1回転部21、第2回転部22、及び第3回転部24の動作を制御することにより、移動ロボット1の安全性をさらに向上することができる。
【0067】
第1回転部21、第2回転部22、及び第3回転部24の動作は、例えば、リモコン等による遠隔制御を介して行われる。ただし、リモコンの故障、操作者からの指示のミス、又は通信機器の故障といった事情が発生した場合、遠隔制御は移動ロボット1の安全性に影響を与えうる。
【0068】
そこで、例えば、マニピュレータ10は筐体11にマニピュレータ制御部60を内蔵し、マニピュレータ制御部60が、第1回転部21、第2回転部22、及び第3回転部24の動作を制御する。これにより、マニピュレータ10は、リモコンの故障、操作者からの指示のミス、又は通信機器の故障といった事態を回避することができる。
【0069】
図12は、筐体11に内蔵されるマニピュレータ制御部60の機能構成の模式例を示す。マニピュレータ10は、筐体11と、第1回転部21と、第2回転部22と、第3回転部24と、吸着パッド26と、カメラ27と、を含む。筐体11にはマニピュレータ制御部60が内蔵されている。マニピュレータ制御部60は、例えば、第1回転部21、第2回転部22、第3回転部24、吸着パッド26、及びカメラ27の動作を独立に制御する。また、マニピュレータ制御部60は、無人搬送車2と通信可能に接続される。
【0070】
例えば、無人搬送車2が移動を開始した直後に、無人搬送車2は、マニピュレータ制御部60に対して、無人搬送車2が移動中であることを示す信号Aを送信する。マニピュレータ制御部60は、信号Aを受信すると、第1回転部21、第2回転部22、及び第3回転部24の動作を制御して、ロボットアーム20を筐体11の上側空間に収容する。
【0071】
別の例として、無人搬送車2が一定期間移動していない場合、無人搬送車2は、マニピュレータ制御部60に対して、無人搬送車2が一定期間移動していないことを示す信号Bを送信する。マニピュレータ制御部60は、信号Bを受信すると、第1回転部21、第2回転部22、及び第3回転部24の動作を制御して、ロボットアーム20を筐体11の上側空間に収容する。
【0072】
上記構成により、マニピュレータ10は、例えば無人搬送車2との通信を介して、移動ロボット1の安全性をさらに改善することができる。
【0073】
[用途例]
本実施形態に係る移動ロボット1、及び移動ロボット1に搭載されるマニピュレータ10は、産業用ロボットとして様々な用途を有する。例えば、移動ロボット1、及びマニピュレータ10は、物流倉庫での物品の移動のほか、溶接、ハンドリング、塗装、シーリング、加工、又は組み立てなどに適用されうる。
【符号の説明】
【0074】
1 移動ロボット
2 無人搬送車
10 マニピュレータ
20 ロボットアーム
11 筐体
12 コンテナ台
21 第1回転部
22 第2回転部
23 第1アーム
24 第3回転部
25 第2アーム
26 吸着パッド
27 カメラ
50 コンテナ
60 マニピュレータ制御部