(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールの製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220726BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20220726BHJP
H01M 50/102 20210101ALI20220726BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20220726BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20220726BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20220726BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220726BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20220726BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/184 Z
H01M50/184 A
H01M50/102
H01M50/103
H01G11/12
H01G11/82
H01G11/84
H01G13/00 381
(21)【出願番号】P 2018181452
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】河端 栄克
(72)【発明者】
【氏名】中山 博治
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125125(JP,A)
【文献】特開平05-131461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M50/10-50/198
B29C33/00-33/76
H01G11/00-11/86
H01G13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のバイポーラ電極を備える蓄電モジュールの製造方法であって、
前記複数のバイポーラ電極のそれぞれは、電極板と、前記電極板の第1面に設けられた正極と、前記電極板の第2面に設けられた負極と、を備え、
前記製造方法は、
前記電極板の外縁部に1次シールが形成された状態で、前記複数のバイポーラ電極を積層して積層体を得る工程と、
前記積層体において隣り合う前記複数のバイポーラ電極間に設けられた内部空間と連通する連通孔が形成された前記1次シールの前記連通孔に入れ子が配置された状態で、前記1次シールの周囲に2次シールを形成する工程と、
を含み、
前記入れ子は、前記連通孔内に配置される先端部を有するプレートと、前記プレートを挟む部材と、を備え、前記プレートは、前記部材に着脱可能に取り付けられており、
前記プレートの硬さが、前記部材の硬さよりも大きい
、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
積層された複数のバイポーラ電極を備える蓄電モジュールの製造方法であって、
前記複数のバイポーラ電極のそれぞれは、電極板と、前記電極板の第1面に設けられた正極と、前記電極板の第2面に設けられた負極と、を備え、
前記製造方法は、
前記電極板の外縁部に1次シールが形成された状態で、前記複数のバイポーラ電極を積層して積層体を得る工程と、
前記積層体において隣り合う前記複数のバイポーラ電極間に設けられた内部空間と連通する連通孔が形成された前記1次シールの前記連通孔に入れ子が配置された状態で、前記1次シールの周囲に2次シールを形成する工程と、
を含み、
前記入れ子は、前記連通孔内に配置される先端部を有するプレートと、前記プレートを挟む部材と、を備え、前記プレートは、前記部材に着脱可能に取り付けられており、
前記プレートの前記先端部の厚みは、隣り合う前記電極板間の距離以下である
、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記プレートの硬さが、前記部材の硬さよりも大きい、請求項2に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記入れ子は、前記プレート及び前記部材を貫通するピンを更に備える、請求項1
~3のいずれか一項に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項5】
積層された複数のバイポーラ電極を備える蓄電モジュールの製造装置であって、
前記複数のバイポーラ電極のそれぞれは、電極板と、前記電極板の第1面に設けられた正極と、前記電極板の第2面に設けられた負極と、を備え、
前記製造装置は、
前記電極板の外縁部に1次シールが形成された状態で、前記複数のバイポーラ電極を積層して積層体を得る積層装置と、
前記積層体において隣り合う前記複数のバイポーラ電極間に設けられた内部空間と連通する連通孔が形成された前記1次シールの前記連通孔に入れ子が配置された状態で、前記1次シールの周囲に2次シールを形成する2次シール形成装置と、
を備え、
前記入れ子は、前記連通孔内に配置される先端部を有するプレートと、前記プレートを挟む部材と、を備え、前記プレートは、前記部材に着脱可能に取り付けられており、
前記プレートの硬さが、前記部材の硬さよりも大きい
、蓄電モジュールの製造装置。
【請求項6】
積層された複数のバイポーラ電極を備える蓄電モジュールの製造装置であって、
前記複数のバイポーラ電極のそれぞれは、電極板と、前記電極板の第1面に設けられた正極と、前記電極板の第2面に設けられた負極と、を備え、
前記製造装置は、
前記電極板の外縁部に1次シールが形成された状態で、前記複数のバイポーラ電極を積層して積層体を得る積層装置と、
前記積層体において隣り合う前記複数のバイポーラ電極間に設けられた内部空間と連通する連通孔が形成された前記1次シールの前記連通孔に入れ子が配置された状態で、前記1次シールの周囲に2次シールを形成する2次シール形成装置と、
を備え、
前記入れ子は、前記連通孔内に配置される先端部を有するプレートと、前記プレートを挟む部材と、を備え、前記プレートは、前記部材に着脱可能に取り付けられており、
前記プレートの前記先端部の厚みは、隣り合う前記電極板間の距離以下である
、蓄電モジュールの製造装置。
【請求項7】
前記プレートの硬さが、前記部材の硬さよりも大きい、請求項6に記載の蓄電モジュールの製造装置。
【請求項8】
前記入れ子は、前記プレート及び前記部材を貫通するピンを更に備える、請求項
5~7のいずれか一項に記載の蓄電モジュールの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極板の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池(蓄電モジュール)が知られている(特許文献1参照)。この電池では、セパレータと電極板とシール部材とで画成された内部空間に、電解液が封入されている。電解液を含浸したセパレータからなる電解質層を介して、バイポーラ電極が積層されている。電池には、シール部材を貫通するチューブが設けられている。チューブの一端は内部空間に臨み、他端は電池の外部空間に臨む。電池を使用している間、内部空間の圧力が上昇すると、このチューブが圧力調整弁として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シール部材が、電極板の外縁部に形成された枠状の1次シールと、1次シールの周囲に形成された2次シールとを有する場合がある。この場合、バイポーラ電池は以下のように製造され得る。まず、電極板の外縁部に1次シールが形成された状態で、バイポーラ電極を積層して積層体を得る。次に、例えば射出成形によって1次シールの周囲に2次シールを形成する。ここで、1次シールは内部空間に連通した連通孔を有している。そこで、当該連通孔の閉塞を抑制するために、1次シールの連通孔に入れ子を配置した状態で、2次シールは形成される。
【0005】
連通孔の閉塞を更に抑制するために、連通孔内に配置される先端部を有するプレート部を備える入れ子を用いることが考えられる。しかし、積層体の積層方向における連通孔の寸法は通常小さいので、薄いプレート部が湾曲したり折れたりする可能性がある。その場合、入れ子全体を交換する必要がある。
【0006】
本発明の一側面は、入れ子全体を交換する必要がない蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、積層された複数のバイポーラ電極を備える蓄電モジュールの製造方法であって、前記複数のバイポーラ電極のそれぞれは、電極板と、前記電極板の第1面に設けられた正極と、前記電極板の第2面に設けられた負極と、を備え、前記製造方法は、前記電極板の外縁部に1次シールが形成された状態で、前記複数のバイポーラ電極を積層して積層体を得る工程と、前記積層体において隣り合う前記複数のバイポーラ電極間に設けられた内部空間と連通する連通孔が形成された前記1次シールの前記連通孔に入れ子が配置された状態で、前記1次シールの周囲に2次シールを形成する工程と、を含み、前記入れ子は、前記連通孔内に配置される先端部を有するプレートと、前記プレートを挟む部材と、を備え、前記プレートは、前記部材に着脱可能に取り付けられている。
【0008】
上記蓄電モジュールの製造方法によれば、プレートが部材に着脱可能に取り付けられているので、プレートが湾曲したり折れたりした場合でも、プレートのみを交換することができる。したがって、入れ子全体を交換する必要がない。
【0009】
前記プレートの硬さが、前記部材の硬さよりも大きくてもよい。この場合、プレートの耐久性を向上できる。
【0010】
前記入れ子は、前記プレート及び前記部材を貫通するピンを更に備えてもよい。この場合、入れ子が小さくても簡易にプレートを着脱できる。
【0011】
前記プレートの前記先端部の厚みは、隣り合う前記電極板間の距離以下であってもよい。この場合、プレートが薄いので、プレートが湾曲したり折れたりする可能性が高くなる。そのような場合であっても、プレートのみを交換することができる。
【0012】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造装置は、積層された複数のバイポーラ電極を備える蓄電モジュールの製造装置であって、前記複数のバイポーラ電極のそれぞれは、電極板と、前記電極板の第1面に設けられた正極と、前記電極板の第2面に設けられた負極と、を備え、前記製造装置は、前記電極板の外縁部に1次シールが形成された状態で、前記複数のバイポーラ電極を積層して積層体を得る積層装置と、前記積層体において隣り合う前記複数のバイポーラ電極間に設けられた内部空間と連通する連通孔が形成された前記1次シールの前記連通孔に入れ子が配置された状態で、前記1次シールの周囲に2次シールを形成する2次シール形成装置と、を備え、前記入れ子は、前記連通孔内に配置される先端部を有するプレートと、前記プレートを挟む部材と、を備え、前記プレートは、前記部材に着脱可能に取り付けられている。
【0013】
上記蓄電モジュールの製造装置によれば、プレートが部材に着脱可能に取り付けられているので、プレートが湾曲したり折れたりした場合でも、プレートのみを交換することができる。したがって、入れ子全体を交換する必要がない。
【0014】
前記プレートの硬さが、前記部材の硬さよりも大きくてもよい。この場合、プレートの耐久性を向上できる。
【0015】
前記入れ子は、前記プレート及び前記部材を貫通するピンを更に備えてもよい。この場合、入れ子が小さくても簡易にプレートを着脱できる。
【0016】
前記プレートの前記先端部の厚みは、隣り合う前記電極板間の距離以下であってもよい。この場合、プレートが薄いので、プレートが湾曲したり折れたりする可能性が高くなる。そのような場合であっても、プレートのみを交換することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、入れ子全体を交換する必要がない蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールの製造装置が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】
図1の蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
【
図3】蓄電モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】積層体を得る工程における積層体、入れ子及び積層冶具の断面図である。
【
図5】2次シールを形成する工程における積層体、入れ子及びモールドの断面図である。
【
図8】
図7のIIX-IIX線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0020】
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、複数の蓄電モジュール4を積層してなる蓄電モジュール積層体2と、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えて構成されている。
【0021】
蓄電モジュール積層体2は、複数(本実施形態では3体)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では4枚)の導電板5とによって構成されている。蓄電モジュール4は、例えば後述するバイポーラ電極14を備えたバイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0022】
積層方向に隣り合う蓄電モジュール4,4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に隣り合う蓄電モジュール4,4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側と、にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0023】
各導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。各流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とにそれぞれ直交する方向に互いに平行に延在している。これらの流路5aに冷媒を流通させることで、導電板5は、蓄電モジュール4,4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。なお、
図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0024】
拘束部材3は、蓄電モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8,8と、エンドプレート8,8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(蓄電モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0025】
エンドプレート8の縁部には、蓄電モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8,8によって挟持されて蓄電モジュール積層体2としてユニット化されると共に、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0026】
次に、蓄電モジュール4の構成について更に詳細に説明する。
図2は、蓄電モジュール4の内部構成を示す概略断面図である。同図に示すように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止(シール)する樹脂製のシール部材12とを備えている。
【0027】
電極積層体11は、セパレータ13を介して積層された複数のバイポーラ電極14を備える。この例では、電極積層体11の積層方向D1は蓄電モジュール積層体2の積層方向と一致している。各バイポーラ電極14は、電極板15、電極板15の一方面15a(第1面)に設けられた正極16、電極板15の他方面15b(第1面とは反対側の第2面)に設けられた負極17を含んでいる。正極16は、正極活物質が塗工されてなる正極活物質層である。負極17は、負極活物質が塗工されてなる負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向D1に隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向D1に隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0028】
電極積層体11において、積層方向D1の一端には負極終端電極18が配置され、積層方向D1の他端には正極終端電極19が配置されている。負極終端電極18は、電極板15、及び電極板15の他方面15bに設けられた負極17を含んでいる。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して積層方向D1の一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。負極終端電極18の電極板15の一方面15aには、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5が接触している。正極終端電極19は、電極板15、及び電極板15の一方面15aに設けられた正極16を含んでいる。正極終端電極19の電極板15の他方面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5が接触している。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して積層方向D1の他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0029】
電極板15は、金属製であり、例えばニッケル又はニッケルメッキ鋼板からなる。電極板15は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の外縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0030】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0031】
シール部材12は、例えば絶縁性の樹脂によって矩形の筒状に形成されている。シール部材12を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。シール部材12は、電極積層体11を取り囲み、複数の電極板15の外縁部15cを保持するように構成されている。
【0032】
シール部材12は、外縁部15cに設けられた1次シール21と、1次シール21の周囲に設けられた2次シール22とを有している。1次シール21は所定の厚さ(積層方向D1の長さ)を有するフィルムである。1次シール21は、積層方向D1から見て、矩形枠状をなし、例えば超音波又は熱により、外縁部15cの全周にわたって連続的に溶着されている。1次シール21は、電極板15の一方面15a側の外縁部15cに設けられている。1次シール21は、外縁部15cを埋設した状態で、外縁部15cに設けられ、電極板15の端面を覆っている。1次シール21は、積層方向D1から見て、正極16及び負極17から離間して設けられている。積層方向D1で隣り合う1次シール21,21同士は、互いに当接している。
【0033】
1次シール21は、第1部分21aと第2部分21bとを有している。第1部分21aは、一方面15a上に設けられ、積層方向D1から見て電極板15と重なっている。第2部分21bは、第1部分21aと一体的に形成され、積層方向D1から見て電極板15の外側に設けられている。第1部分21aの厚さは、第2部分21bの厚さよりも薄く、正極16の厚さと同等であるが、同等以上であってもよい。第1部分21aと第2部分21bとの間には、積層方向D1に延在する段差面21cが形成されている。
【0034】
第1部分21aの上面には、セパレータ13の外縁部が配置されている。積層方向D1から見て、第1部分21aとセパレータ13の外縁部とは互いに重なっている。セパレータ13の外縁部は、セパレータ13の外縁に沿って並ぶ複数箇所において、例えば溶着により第1部分21aの上面に固定されている。セパレータ13の外縁は、段差面21cに当接していてもよいし、段差面21cから離間していてもよい。本実施形態では、段差面21cの高さ(積層方向D1の長さ)は、セパレータ13の厚さと負極17の厚さとの和と同等であるが、同等以上であってもよい。
【0035】
2次シール22は、電極積層体11及び1次シール21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。2次シール22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、積層方向D1において電極積層体11の全長にわたって延在している。2次シール22は、積層方向D1を軸方向として延在する筒状部である。2次シール22は、積層方向D1に延在する1次シール21の外側面を覆っている。2次シール22は、1次シール21の外側面に接合され、1次シール21の外側面をシールしている。2次シール22は、例えば、射出成形時の熱によって1次シール21の外側面に溶着されている。2次シール22は、熱板溶着によって1次シール21の外側面に溶着されていてもよい。
【0036】
積層方向D1で隣り合う電極板15,15の間には、当該電極板15とシール部材12とにより気密及び水密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16及び負極17内に含浸されている。電解液は強アルカリ性なので、シール部材12は、耐強アルカリ性を有する樹脂材料により構成されている。
【0037】
シール部材12には、積層方向D1に交差(ここでは、直交)する方向に延び、各内部空間Vに連通する複数の連通孔(不図示)が設けられている。この連通孔は、各内部空間Vに電解液を注入するための注液口として機能すると共に、電解液が注入された後は、圧力調整弁(不図示)の接続口として機能する。
【0038】
次に、上述した蓄電モジュール4の製造方法及び蓄電モジュール4の製造装置について説明する。
図3は、蓄電モジュールの製造方法を示すフローチャートである。蓄電モジュール4の製造方法は、
図3に示される工程S1~S8を含み得る。以下、
図4及び
図5を参照し、各工程S1~S8について説明する。
図4は、積層体を得る工程における積層体、入れ子及び積層冶具の断面図である。
図5は、2次シールを形成する工程における積層体、入れ子及びモールドの断面図である。
【0039】
(1次シールを形成する工程)
まず、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19の電極板15の外縁部15cに1次シール21を形成する(工程S1)。この工程S1では、各電極板15の一方面15a側の外縁部15cに枠状の1次シール21が形成される。例えば、予め射出成形により枠状の1次シール21を形成した後、1次シール21を溶着により外縁部15cに取り付ける。これにより、1次シール21を外縁部15cに形成することができる。
【0040】
(セパレータを取り付ける工程)
工程S1に続いて、1次シール21にセパレータ13を取り付ける(工程S2)。この工程S2では、バイポーラ電極14及び正極終端電極19に設けられた1次シール21の第1部分21aの上面に、セパレータ13の外縁部が配置される。その後、セパレータ13の外縁部に沿って並ぶ複数箇所において、セパレータ13の外縁部が例えば溶着により第1部分21aに固定される。
【0041】
(セパレータを検査する工程)
工程S2に続いて、セパレータ13が設けられたバイポーラ電極14及び正極終端電極19を検査する(工程S3)。この工程S3では、セパレータ13の取り付け状態が検査される。例えばセパレータ13が電極板15に対して予め設定された位置からずれて取り付けられていれば、不合格となる。不合格となったバイポーラ電極14及び正極終端電極19は、例えば廃棄処理され、次工程には送られない。この工程S3において合格したバイポーラ電極14及び正極終端電極19は、次工程に送られる。
【0042】
(入れ子を配置する工程)
工程S3に続いて、
図4に示されるように、枠状の1次シール21の内縁から外縁に至る凹部に入れ子50を配置する(工程S4)。この凹部は、後述の積層体30を得る工程において、内部空間Vと連通する連通孔40を形成する。この工程S4では、セパレータ13とバイポーラ電極14と1次シール21とを備える電極ユニットUに入れ子50が取り付けられる。入れ子50は、正極終端電極19に設けられた1次シール21にも同様に配置される。
【0043】
(積層体を得る工程)
工程S4に続いて、
図4に示されるように、積層装置60を用いて、複数のバイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19を積層する(工程S5)。この工程S5では、まず、1次シール21、セパレータ13及び入れ子50が設けられた正極終端電極19が積層冶具61上に載置される。その後、正極終端電極19上に、複数(例えば23個)の電極ユニットUが積層される。各電極ユニットUには入れ子50が取り付けられている。最後に、バイポーラ電極14上に、1次シール21が設けられた負極終端電極18(
図2参照)が積層される。これにより、複数の電極ユニットUを備える積層体30が得られる。積層体30には、複数の入れ子50が取り付けられている。入れ子50の数は、内部空間Vの数と同じである。
【0044】
(2次シールを形成する工程)
工程S5に続いて、
図5に示されるように、例えば射出成形機等の2次シール形成装置70を用いて、2次シール22を形成する(工程S6)。この工程S6では、1次シール21の連通孔40に入れ子50が配置された状態で、1次シール21の周囲に2次シール22が形成される。2次シール22は、例えば、射出成形により形成される。まず、例えば金属製のモールドM内に、複数の入れ子50が取り付けられた積層体30を配置する。続いて、モールドMのゲート(不図示)からモールドM内の空隙部Maに樹脂材料を流し込むことによって、空隙部Maに対応する形状を有する2次シール22を形成する。入れ子50は、1次シール21の連通孔40を閉塞するだけでなく、1次シール21の連通孔40に連通する連通孔を2次シール22に形成することができる。
【0045】
(入れ子を除去する工程)
工程S6に続いて、積層体30から入れ子50を除去する(工程S7)。これにより、1次シール21の連通孔40に連通する2次シール22の連通孔が形成される。2次シール22の連通孔は、枠状の2次シール22の内面から外面まで貫通している。その結果、連通孔が形成されたシール部材12が得られる。
【0046】
(電解液を注入する工程)
工程S7に続いて、シール部材12の連通孔(1次シール21の連通孔40及び2次シール22の連通孔)を通じて内部空間Vに電解液を注入する(工程S8)。その後、シール部材12の連通孔に圧力調整弁が取り付けられることによって、内部空間Vが封止される。このようにして、蓄電モジュール4が製造される。
【0047】
続いて、入れ子50の詳細について説明する。
図6は、入れ子の側面図である。
図7は、入れ子の平面図である。
図8は、
図7のIIX-IIX線に沿った断面図である。
【0048】
図6~
図8に示されるように、入れ子50は、先端部51aを有するプレート51と、プレート51を挟む部材としての第1部材52及び第2部材53とを備える。入れ子50は例えば金属製である。プレート51の先端部51aは、1次シール21の連通孔40内に配置される(
図4参照)。1次シール21の連通孔40内においてプレート51の先端部51aは、セパレータ13から離間しているが、セパレータ13に当接してもよい。プレート51の先端部51aの断面形状は、連通孔40の断面形状に対応している。プレート51の先端部51aの厚みDは、隣り合う電極板15間の距離以下であってもよいし、1次シール21の段差面21c(
図2参照)の高さ以下であってもよい。厚みDは、例えば0.5mm以下である。プレート51は、第1部材52及び第2部材53に着脱可能に取り付けられている。プレート51の硬さは、第1部材52及び第2部材53のいずれの硬さよりも大きい。プレート51、第1部材52及び第2部材53の硬さは、ロックウェル硬さ(HRC)である。
【0049】
第1部材52及び第2部材53は、互いに同じ形状を有する板状の部材である。プレート51の厚み方向において第1部材52と第2部材53との間にプレート51の基端部51bが配置されるように、第1部材52及び第2部材53はプレート51を挟む。プレート51の厚み方向において、プレート51、第1部材52及び第2部材53の合計の厚みは、例えば1mm以上である。
【0050】
プレート51は、先端部51aと基端部51bとの間に中間部51cを有している。中間部51cは、1次シール21の連通孔40の外部に配置される。よって、中間部51cが2次シール22の連通孔を形成することになる。
【0051】
入れ子50は、プレート51、第1部材52及び第2部材53を把持する第3部材54を更に備え得る。第3部材54によって、プレート51、第1部材52及び第2部材53が互いに固定される。第3部材54は、第1部材52をプレート51に押し付ける一対の第1爪部54aと、第2部材53をプレート51に押し付ける一対の第2爪部54bと、第1爪部54aと第2爪部54bとの間を連結する連結部54cとを備える。各第1爪部54a及び各第2爪部54bは、互いに同じ形状を有する板状部である。連結部54cは、各第1爪部54aの基端と各第2爪部54bの基端とを連結する板状部である。
【0052】
入れ子50は、プレート51の厚み方向においてプレート51、第1部材52及び第2部材53を貫通するピン55を更に備え得る。ピン55により、プレート51の厚み方向に交差する方向において、プレート51、第1部材52及び第2部材53が互いに位置決めされる。ピン55は、プレート51、第1部材52及び第2部材53のそれぞれに設けられた貫通孔を通る。貫通孔は、プレート51の厚み方向から見て、第1爪部54a及び第2爪部54bと干渉しないように位置している。例えば、プレート51の厚み方向から見て、貫通孔は、一対の第1爪部54a間及び一対の第2爪部54b間に位置している。ピン55に代えて、例えばボルト等の他の部材が用いられてもよい。
【0053】
以上説明したように、上述の蓄電モジュール4の製造方法及び蓄電モジュール4の製造装置では、プレート51が第1部材52及び第2部材53に着脱可能に取り付けられているので、プレート51が湾曲したり折れたりした場合でも、プレート51のみを交換することができる。第1部材52及び第2部材53は再利用可能である。したがって、入れ子50全体を交換する必要がない。そのため、蓄電モジュール4の製造コストを低減できる。
【0054】
プレート51の硬さが、第1部材52及び第2部材53のいずれの硬さよりも大きいと、プレート51の耐久性を向上できる。よって、プレート51の交換頻度を低くできる。
【0055】
入れ子50が、プレート51、第1部材52及び第2部材53を貫通するピン55を更に備えると、入れ子50が小さくても簡易かつ安価にプレート51を着脱できる。
【0056】
プレート51の先端部51aの厚みDが隣り合う電極板15間の距離以下である場合、プレート51が薄いので、プレート51が湾曲したり折れたりする可能性が高くなる。そのような場合であっても、プレート51のみを交換することができるので、入れ子50全体を交換する必要がない。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0058】
例えば、上記実施形態では、1次シール21の連通孔40を形成する凹部に入れ子50を配置した後に複数のバイポーラ電極14を積層しているが、複数のバイポーラ電極14を積層した後に1次シール21の連通孔40に入れ子50を配置してもよい。この場合、複数の入れ子50のプレート51の先端部51aを複数の連通孔40内に同時に挿入してもよい。
【0059】
上記実施形態では、第1部材52及び第2部材53がプレート51を挟んでいるが、第1部材52及び第2部材53が一体化された1つの部材がプレート51を挟んでもよい。また、3つ以上の部材がプレート51を挟んでもよい。
【0060】
上記実施形態では、第3部材54及びピン55によってプレート51が第1部材52及び第2部材53に着脱可能に取り付けられているが、第3部材54及びピン55のいずれか一方のみによって、プレート51が第1部材52及び第2部材53に着脱可能に取り付けられてもよい。また、他の方法によってプレート51が第1部材52及び第2部材53に着脱可能に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0061】
4…蓄電モジュール、14…バイポーラ電極、15…電極板、15a…一方面(第1面)、15b…他方面(第2面)、15c…外縁部、16…正極、17…負極、21…1次シール、22…2次シール、30…積層体、40…連通孔、50…入れ子、51…プレート、51a…先端部、52…第1部材、53…第2部材、55…ピン、60…積層装置、70…2次シール形成装置、V…内部空間。