(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220726BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20220726BHJP
H01M 50/325 20210101ALI20220726BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20220726BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/317 101
H01M50/325
H01M50/103
(21)【出願番号】P 2018210685
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 賢志
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-085293(JP,A)
【文献】特開2018-170265(JP,A)
【文献】特開2018-018673(JP,A)
【文献】特開2018-018656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/0585
H01M 50/317-50/325
H01M 50/10-50/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバイポーラ電極が積層された電極積層体と、隣接する前記バイポーラ電極の間に存在し前記電極積層体に設けられた複数の内部空間と、前記電極積層体を取り囲むように配置され且つ前記内部空間にそれぞれ連通された複数の第1連通孔を有する枠体と、を有するモジュール本体と、
前記モジュール本体に取り付けられ、複数の前記第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁と、
を備え、
前記圧力調整弁は、
前記第2連通孔が形成された第1部材と、
前記第1部材の前記第2連通孔における前記モジュール本体と反対側の開口を塞ぐ第1端面と前記第1端面と反対側に位置する第2端面とを有する弾性部材と、
前記第1部材と一体化され、前記弾性部材の前記第2端面に対向する第2部材と、
を有し、
互いに異なる数の前記第1部材と前記第2部材とが一体化されている、電池モジュール。
【請求項2】
単数の前記第1部材に対して複数の前記第2部材が一体化されている、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
複数の前記第1部材に対して単数の前記第2部材が一体化されている、請求項1に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素二次電池及びリチウムイオン二次電池といった電池モジュールはモジュール本体を備える。モジュール本体には、電極を含む電池要素が収容されている。モジュール本体には、その内部でのガス発生により内圧が所定圧より上昇した際に内圧を調整するための圧力調整弁が取り付けられている。上記圧力調整弁の例として、特許文献1に記載された安全弁装置が知られている。特許文献1に記載の圧力調整弁(安全弁装置)は、モジュール本体に連通する連通孔を弁室に収容された弾性部材で塞いでいる。この場合、モジュール本体内の圧力が設定圧より上昇した際、弾性部材が弾性変形して、弾性部材による上記孔のシールが解除され、モジュール本体内のガスが排気口から排出される。一方、モジュール本体内の圧力が設定圧以下になると、弾性部材によって上記連通孔が再度塞がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような技術では、弁室に弾性部材を組み付けるときの弾性部材の圧縮率がばらつくと圧力調整弁の開弁圧にばらつきが生じてしまう。合成樹脂が射出成形されることにより弁室を構成する部材が製造されている場合には、熱収縮により弁室を構成する部材に反りが生じてしまうことがある。弁室を構成する部材に反りが生じると、圧力調整弁の部位によって弾性部材の圧縮率がばらつき、圧力調整弁の開弁圧にばらつきが生じてしまう。圧力調整弁の開弁圧のばらつきは他部品の耐圧強度設計に影響する。このため、弾性部材の圧縮率のばらつきを低減することが望まれている。
【0005】
本発明の一側面は、弾性部材の圧縮率のばらつきを低減することができる電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電池モジュールは、複数のバイポーラ電極が積層された電極積層体と、隣接するバイポーラ電極の間に存在し電極積層体に設けられた複数の内部空間と、電極積層体を取り囲むように配置され且つ内部空間にそれぞれ連通された複数の第1連通孔を有する枠体とを有するモジュール本体と、モジュール本体に取り付けられ、複数の第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁とを備え、圧力調整弁は、第2連通孔が形成された第1部材と、第1部材の第2連通孔におけるモジュール本体と反対側の開口を塞ぐ第1端面と第1端面と反対側に位置する第2端面とを有する弾性部材と、第1部材と一体化され、弾性部材の第2端面に対向する第2部材とを有し、互いに異なる数の第1部材と第2部材とが一体化されている電池モジュールである。
【0007】
この構成によれば、複数のバイポーラ電極が積層された電極積層体と、隣接するバイポーラ電極の間に存在し電極積層体に設けられた複数の内部空間と、電極積層体を取り囲むように配置され且つ内部空間にそれぞれ連通された複数の第1連通孔を有する枠体と、を有するモジュール本体と、モジュール本体に取り付けられ、複数の第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁とを備え、圧力調整弁は、第2連通孔が形成された第1部材と、第1部材の第2連通孔におけるモジュール本体と反対側の開口を塞ぐ第1端面と第1端面と反対側に位置する第2端面とを有する弾性部材と、第1部材と一体化され、弾性部材の第2端面に対向する第2部材とを有する電池モジュールにおいて、互いに異なる数の第1部材と第2部材とが一体化されている。第1部材の数に対して第2部材の数が多ければ、第1部材よりも多くの数に分割された第2部材が第1部材の反りに対応して一体化されるため、弾性部材の圧縮率のばらつきを低減することができる。一方、第2部材の数に対して第1部材の数が多ければ、第2部材よりも多くの数に分割された第1部材に反りが生じ難くなるため、弾性部材の圧縮率のばらつきを低減することができる。
【0008】
この場合、単数の第1部材に対して複数の第2部材が一体化されることができる。
【0009】
この構成によれば、単数の第1部材に対して複数の第2部材が一体化されているため、第1部材よりも多くの数に分割された第2部材が第1部材の反りに対応して一体化されるため、弾性部材の圧縮率のばらつきを低減することができる。
【0010】
また、複数の第1部材に対して単数の第2部材が一体化されることができる。
【0011】
この構成によれば、複数の第1部材に対して単数の第2部材が一体化されているため、第2部材よりも多くの数に分割された第1部材に反りが生じ難くなるため、弾性部材の圧縮率のばらつきを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面の電池モジュールによれば、弾性部材の圧縮率のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る電池モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る電池モジュールの概略断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る電池モジュールの概略斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る電池モジュールの一部を示す分解斜視図(一部断面を含む)である。
【
図5】第1実施形態に係る圧力調整弁を示す分解斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る圧力調整弁の一部を示す縦断面図である。
【
図7】(A)は第1実施形態に係るモジュール本体と圧力調整弁とを接合する方法の一例を示す縦断面図であり、(B)は第1実施形態に係る互いに接合されたモジュール本体と圧力調整弁とを示す縦断面図である。
【
図8】従来の圧力調整弁の第1部材に反りが生じた状態を示す横断面図である。
【
図9】第1実施形態に係る圧力調整弁の第1部材に反りが生じた状態を示す横断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る電池モジュールの圧力調整弁を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電池モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。
図1において、蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の車両のバッテリとして使用される。蓄電装置1は、複数(本実施形態では3つ)の電池モジュールとしてのバイポーラ電池2Aを備えている。バイポーラ電池2Aは、例えばニッケル水素二次電池である。以下では、断らない限り、バイポーラ電池2Aがニッケル水素二次電池である場合を説明する。
【0016】
複数のバイポーラ電池2Aは、金属製の導電板3を介して積層されている。導電板3は、積層方向(Z軸方向)の両端に位置するバイポーラ電池2Aの外側にも配置されている。バイポーラ電池2A及び導電板3は、例えば積層方向から見て矩形状(平面視矩形状)である。導電板3は、隣り合うバイポーラ電池2Aと電気的に接続されている。これにより、複数のバイポーラ電池2Aが積層方向に直列接続されている。
【0017】
積層方向の一端(ここでは下端)に位置する導電板3には、正極端子4が接続されている。積層方向の他端(本実施形態では上端)に位置する導電板3には、負極端子5が接続されている。正極端子4及び負極端子5は、積層方向に垂直な方向(X軸方向)に延在している。このような正極端子4及び負極端子5を設けることにより、蓄電装置1の充放電を実施できる。
【0018】
導電板3は、バイポーラ電池2Aにおいて発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板3には、積層方向と正極端子4及び負極端子5の延在方向とに垂直な方向(Y軸方向)に延在した複数の空隙3aが設けられている。これらの空隙3aを空気等の冷媒が通過することにより、バイポーラ電池2Aからの熱が効率的に外部に放出される。
【0019】
蓄電装置1は、バイポーラ電池2A及び導電板3を積層方向に拘束する拘束ユニット6を備えている。拘束ユニット6は、バイポーラ電池2A及び導電板3を積層方向に挟む1対の拘束プレート7と、これらの拘束プレート7同士を締結する複数組のボルト8及びナット9とを有している。
【0020】
拘束プレート7は、鉄等の金属で形成されている。各拘束プレート7と導電板3との間には、樹脂フィルム等の絶縁フィルム10がそれぞれ配置されている。拘束プレート7及び絶縁フィルム10は、例えば平面視矩形状である。ボルト8の軸部8aが各拘束プレート7に設けられた挿通孔7aを挿通した状態で、軸部8aの先端部にナット9が螺合することで、バイポーラ電池2A、導電板3及び絶縁フィルム10に積層方向の拘束荷重が付与される。
【0021】
図2は、バイポーラ電池2Aの概略断面図である。
図3は、バイポーラ電池2Aの概略斜視図である。
図2及び
図3において、バイポーラ電池2Aは、複数のセル(例えば24セル)が積層された構造(複数セル構造)を有している。バイポーラ電池2Aは、モジュール本体11と、このモジュール本体11の一側面に取り付けられた複数(本実施形態では4つ)の圧力調整弁12Aとを備えている。
【0022】
モジュール本体11は、複数のバイポーラ電極13がセパレータ14を介して積層されてなる電極積層体15と、この電極積層体15を取り囲むように配置された枠体16とを備えている。
【0023】
バイポーラ電極13及びセパレータ14は、例えば平面視矩形状である。セパレータ14は、積層方向に隣り合うバイポーラ電極13の間に配置されている。バイポーラ電極13は、集電体であるニッケル箔17と、このニッケル箔17の上面17a(一方面)に形成された正極活物質層18と、ニッケル箔17の下面17b(他方面)に形成された負極活物質層19とを有している。
【0024】
バイポーラ電極13の正極活物質層18は、セパレータ14を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極13の負極活物質層19と対向している。バイポーラ電極13の負極活物質層19は、セパレータ14を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極13の正極活物質層18と対向している。
【0025】
電極積層体15の最下層には、正極側終端電極20が配置されている。正極側終端電極20は、ニッケル箔17と、このニッケル箔17の上面17aに形成された正極活物質層18とを有している。電極積層体15の最上層には、負極側終端電極21が配置されている。負極側終端電極21は、ニッケル箔17と、このニッケル箔17の下面17bに形成された負極活物質層19とを有している。正極側終端電極20の正極活物質層18は、セパレータ14を挟んで最下層のバイポーラ電極13の負極活物質層19と対向している。負極側終端電極21の負極活物質層19は、セパレータ14を挟んで最上層のバイポーラ電極13の正極活物質層18と対向している。正極側終端電極20及び負極側終端電極21のニッケル箔17は、積層方向に隣り合う導電板3(
図1参照)に接続されている。
【0026】
正極活物質層18は、ニッケル箔17の一方面に正極活物質を含む正極スラリーを塗工することにより形成されている。正極活物質としては、例えばコバルト(Co)酸化物コートが施された水酸化ニッケルが用いられる。負極活物質層19は、ニッケル箔17の他方面に負極活物質を含む負極スラリーを塗工することにより形成されている。負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が用いられる。ニッケル箔17の縁部17cは、正極スラリー及び負極スラリーが塗工されない未塗工領域となっている。
【0027】
セパレータ14は、正極活物質層18と負極活物質層19との間に配置され、正極活物質層18と負極活物質層19とを隔離する。セパレータ14は、積層方向から見てニッケル箔17よりも小さく且つ正極活物質層18及び負極活物質層19よりも大きい。セパレータ14は、例えばシート状に形成されている。セパレータ14は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、もしくはPE、PP、またはメチルセルロース等からなる不織布または織布等で形成されている。セパレータ14は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されていてもよい。セパレータ14の形状は、シート状に限られず、袋状であってもよい。
【0028】
各一次シール部22は、積層方向に沿ってニッケル箔17毎に配置されている。一次シール部22は、枠状に形成されている。一次シール部22は、ニッケル箔17の縁部17cに熱溶着により接合されている。
【0029】
積層方向に隣り合うニッケル箔17の間に、ニッケル箔17、正極活物質層18、負極活物質層19及び一次シール部22が協働して内部空間Vを形成している。換言すると、積層方向に隣り合う2つのニッケル箔17、一方のニッケル箔17の正極活物質層18、他方のニッケル箔17の負極活物質層19及び一次シール部22によって囲われた空間が内部空間Vである。そのため、積層方向に隣り合うバイポーラ電極13の間には、内部空間Vが存在する。従って、電極積層体15には、複数の内部空間Vが設けられている。セパレータ14内を含む内部空間Vには、アルカリ性の電解液が注入されている。アルカリ性の電解液としては、例えば水酸化カリウム水溶液等を含むアルカリ溶液が用いられている。一次シール部22は、内部空間Vを封止する。バイポーラ電池2Aの各セルは、2つのニッケル箔17、正極活物質層18、負極活物質層19、セパレータ14及び一次シール部22により構成され、これらが協働して内部空間Vを形成している。
【0030】
二次シール部23は、例えば角筒状である。二次シール部23は、内部空間Vを更に封止する。二次シール部23は、各一次シール部22に接合されている。二次シール部23は、例えば射出成形等により形成されている。
【0031】
一次シール部22及び二次シール部23は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)または変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等の樹脂で形成されている。
【0032】
枠体16を構成する一の壁部16aには、圧力調整弁12Aが取り付けられる複数(本実施形態では4つ)の圧力調整弁取付領域24が設けられている。一次シール部22の圧力調整弁取付領域24のそれぞれには、
図4に示されるように、複数(本実施形態では6つ)の連通孔(第1連通孔)25がそれぞれ設けられている。連通孔25は、圧力調整弁取付領域24のそれぞれにおいて2列3段(Y軸方向に2列、Z軸方向に3段)に配列されている。従って、連通孔25は、壁部16aにおいて8列3段に配列されている。連通孔25のそれぞれは、異なるセルの内部空間Vとそれぞれ連通されている。圧力調整弁取付領域24のそれぞれにおける連通孔25の配列状態は、2列3段に限定されないが、断らない限り、2列3段に連通孔25が配列された実施形態を説明する。
【0033】
二次シール部23の圧力調整弁取付領域24それぞれには、
図4に示されるように、連通孔25のそれぞれと連通された複数(本実施形態では6つ)の連通孔26(第1連通孔)がそれぞれ設けられている。連通孔26は、一次シール部22側から二次シール部23の外側面に向かって徐々に幅広となるようにテーパ状に形成されている。連通孔26は、各圧力調整弁取付領域24において2列3段に配列されている。
【0034】
連通孔25,26は、内部空間Vに電解液を注入するための注液孔として機能する。連通孔25,26は、電解液が注入された後は、内部空間Vで発生したガスが流れる流路となる。
【0035】
二次シール部23の圧力調整弁取付領域24のそれぞれの外側面には、略枠状の接合用突起27がそれぞれ設けられている。接合用突起27は、モジュール本体11と圧力調整弁12Aとを接合するとともに、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(本実施形態では6つ)の流路28を連通孔26と協働して形成する。従って、流路28は、圧力調整弁取付領域24のぞれぞれにおいて2列3段に配列されている。流路28は、X軸方向に垂直な方向に切った断面で矩形状である。一方の列の流路28は、他方の列の流路28に対して積層方向(Z軸方向)にずれている。
【0036】
接合用突起27は、一方の列の流路28を形成する枠部29と、他方の列の流路28を形成する枠部30とを有している。枠部29,30は同じ形状を有しており、Z軸方向において互いにずれている。枠部29,30の間にはZ軸方向に延在する隙間が形成されている。
【0037】
圧力調整弁12Aは、
図4、
図5及び
図6に示されるように、単数のケース33Aと、複数(本実施形態では3つ)のカバー(第2部材)34Aと、複数(本実施形態では6つ)の弁体(弾性部材)35とを有している。
【0038】
ケース33Aは、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。ケース33Aは、底壁(第1部材)36Aと、ケース側壁37と、仕切壁38とを有し、底壁(第1部材)36Aと反対側が開口している。例えば、底壁36A、ケース側壁37及び仕切壁38は、一体に形成され得る。
【0039】
底壁36Aは、モジュール本体11に面する底面(第1面)36aと、底面36aと反対側に位置する内壁面(第2面)36bとを有する。底壁36Aには、底面36aと内壁面36bとの間を貫通した複数(本実施形態では6つ)の連通孔(第2連通孔)39が形成されている。換言すれば、複数の連通孔39は、厚さ方向に底壁36Aを貫通している。これらの連通孔39は、モジュール本体11の複数の連通孔26にそれぞれ連通している。連通孔39は、X軸方向に垂直な方向に切った断面で例えば円形状である。
【0040】
図4及び
図6に示すように、底面36aには、略枠状の接合用突起40がそれぞれ設けられている。接合用突起40は、モジュール本体11と圧力調整弁12Aとを接合するとともに、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(本実施形態では6つ)の流路41を形成する。接合用突起40は、モジュール本体11の接合用突起27と接合される。接合用突起40は、接合用突起27に対応する形状及び寸法を有している。従って、流路41は、X軸方向に垂直な方向に切った断面で例えば矩形状である。一方の列の流路41は、他方の列の流路41に対してZ軸方向にずれている。
【0041】
図4、
図5及び
図6に示されているように、ケース側壁37は、底壁36Aの内壁面36b側に設けられている。ケース側壁37は、例えば、ケース側壁37は底壁36Aの周縁部に立設される。ケース側壁37は、枠状であり、ケース側壁37の底壁36Aと反対側は開口している。また、
図5に示すように、ケース側壁37は、ケース側壁37及び底壁36Aで形成される空間を3つのカバー34Aに対応した3つの空間に仕切っている。
【0042】
仕切壁38は、ケース側壁37及び底壁36Aで形成される3つの空間のそれぞれをケース側壁37及び底壁36Aとともに、2つの弁体35をそれぞれ収容する2つの収容部44に仕切っている。したがって、ケース33Aは、合計で6つの弁体をそれぞれ収容する6つの収容部44を有する。収容部44は、X軸方向に垂直な方向に切った断面で例えば円形状である。複数の収容部44は、複数の連通孔39に対応して配置されている。収容部44は、対応する連通孔39と連通可能である。
【0043】
図4、
図5及び
図6に示される3つのカバー34Aは、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。3つのカバー34Aは、その内壁面34aで、ケース33Aの2つの収容部44をそれぞれ含む3つの領域の開口を塞ぐようにケース33Aにそれぞれ接合されている。つまり、本実施形態では、互いに異なる数の底壁36Aとカバー34Aとがケース側壁37を介して一体化されている。具体的には、単数の底壁36Aに対して複数(本実施形態では3つ)のカバー34Aとが一体化されている。なお、ケース側壁37や仕切壁38は、予め複数のカバー34Aと一体に射出成形等で形成され、後に底壁36Aに熱溶着されてもよい。
【0044】
カバー34Aは、ケース33Aに、例えば、超音波により振動させられつつ熱溶着により接合されている。
図4及び
図6に示すように、ケース33Aの仕切壁38とカバー34Aとの間には、収容部44と連通した空間Sが形成されている。換言すれば、仕切壁38は、底壁36A、ケース側壁37及びカバー34Aで形成される内部空間に、複数の収容部44Aと上記空間Sを形成する壁でもある。カバー34Aには、少なくとも一つの排気口(排気部)45が形成されている。排気口45は空間Sと連通している。
【0045】
図4、
図5及び
図6に示すように、複数の弁体35は、複数の収容部44にそれぞれ収容されている。弁体35は、対応する連通孔39を開閉する。弁体35の材料はゴムなどの弾性体である。弁体35は柱状である。弁体35は例えば円柱状体である。弁体35は、上記ゴムといった弾性を有する樹脂材料の射出成形品である。弁体35は、その軸線方向Cに端面(第1端面)35aと端面(第2端面)35bとを有する。端面35bは端面35aと反対側に位置する。
【0046】
弁体35の軸線方向Cの長さは、底壁36Aの内壁面36bとカバー34Aの内壁面34aとの間の距離より長い。これにより、端面35aは内壁面36bに接し、且つ、端面35bは内壁面34aに接する。弁体35は、底壁36Aと一体化されつつ弁体35の端面35bに対向するカバー34Aによって底壁36Aに押しつけられる。端面35aは、底壁36Aの連通孔39におけるモジュール本体11と反対側の開口39aを塞ぐ。よって、カバー34Aは弁体35の押圧部材としても機能し、弁体35の端面35aは、連通孔39の開口39aを閉塞(シール)するシール面として機能する。弁体35の外側面と収容部44の内壁面(ケース側壁37及び仕切壁38のうち収容部44を形成する内壁面)との間には隙間Gが形成されている。弁体35の軸線方向Cに直交する断面の大きさは、隙間Gが形成されるように、収容部44の軸線方向Cに直交する断面の大きさより小さければよい。収容部44が空間Sに連通していることから、隙間Gは、空間Sに連通しているとともに、空間Sを介して排気口45に連通している。
【0047】
このような圧力調整弁12Aにおいて、ケース33Aの連通孔39は、二次シール部23の連通孔26及び一次シール部22の連通孔25を通してモジュール本体11の内部空間Vと連通されている。内部空間Vの圧力が設定圧よりも低いときは、連通孔39が弁体35によって塞がれた閉弁状態(シール状態)に維持される。内部空間Vの圧力が上昇して設定圧以上になると、弁体35が底壁36Aから離間するように弾性変形し、連通孔39の閉塞が解除された開弁状態となる。その結果、内部空間Vからのガスが弁体35の外側面と収容部44の内壁面との隙間G及び空間Sを通って排気口45から圧力調整弁12Aの外部に排出される。
【0048】
上述のバイポーラ電池2Aは、例えば
図7(A)に示されるように、モジュール本体11と圧力調整弁12Aとを接合する工程を実施する。本実施形態では、熱溶着の一つである熱板溶着によってモジュール本体11と圧力調整弁12Aとを接合する。具体的には、
図7(A)に示されるように、接合用突起27,40同士が対向するようにモジュール本体11及び圧力調整弁12Aを配置するとともに、モジュール本体11と圧力調整弁12との間に熱板46を配置する。その後、接合用突起27,40の先端を熱板46に当接することで、接合用突起27,40の先端が溶融する。次に、
図7(B)に示されるように、接合用突起27,40が溶融している間に、モジュール本体11の接合用突起27と圧力調整弁12Aの接合用突起40とを押し付けることにより、接合用突起27,40同士が溶着される。これにより、接合用突起27,40同士が接合され、その結果、モジュール本体11及び圧力調整弁12Aが接合される。
【0049】
本実施形態では、複数のバイポーラ電極13が積層された電極積層体15と、隣接するバイポーラ電極13の間に存在し、電極積層体15に設けられた複数の内部空間Vと、電極積層体15を取り囲むように配置され且つ内部空間Vにそれぞれ連通された複数の連通孔26を有する枠体16とを有するモジュール本体11と、モジュール本体11に取り付けられ、複数の連通孔26とそれぞれ連通された複数の連通孔39を有する圧力調整弁12Aとを備え、圧力調整弁12Aは、連通孔39が形成された底壁36Aと、底壁36Aの連通孔39におけるモジュール本体11と反対側の開口39aを塞ぐ端面35aと端面35aと反対側に位置する端面35bとを有する弁体35と、底壁36Aと一体化され、弁体35の端面35bに対向するカバー34Aとを有するバイポーラ電池2Aにおいて、互いに異なる数の底壁36Aとカバー34Aとが一体化されている。底壁36Aの数に対してカバー34Aの数が多ければ、底壁36Aよりも多くの数に分割されたカバー34Aが底壁36Aの反りに対応して一体化されるため、弁体35の圧縮率のばらつきを低減することができる。一方、カバー34Aの数に対して底壁36Aの数が多ければ、カバー34Aよりも多くの数に分割された底壁36Aに反りが生じ難くなるため、弁体35の圧縮率のばらつきを低減することができる。
【0050】
また、本実施形態では、単数の底壁36Aに対して複数のカバー34Aが一体化されているため、底壁36Aよりも多くの数に分割されたカバー34Aが底壁36Aの反りに対応して一体化されるため、弁体35の圧縮率のばらつきを低減することができる。
【0051】
つまり、
図8に誇張して示すように、1つのケース33の底壁36と、1つのカバー34とがケース側壁37を介して一体化されている従来の圧力調整弁12では、熱溶着後の熱収縮により、底壁36に反りが生じてしまうと、圧力調整弁12の部位によって弁体35の圧縮率がばらつき、圧力調整弁12の開弁圧にばらつきが生じてしまう。一方、
図9に誇張して示すように、本実施形態のバイポーラ電池2Aの圧力調整弁12Aでは、単数の底壁36Aに対して複数のカバー34Aが一体化されているため、底壁36Aが反ったとしても、底壁36Aよりも多くの数に分割されたカバー34Aが底壁36Aの反りに追従して溶着により一体化されるため、弁体35の圧縮率のばらつきを低減することができる。また、1つの圧力調整弁12Aに対して複数の弁体35を設けるに従って、圧力調整弁12Aの寸法は増加していき、反り量も大きくなるため、本実施形態の効果はより有効となる。
【0052】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図10に示すように、本実施形態の電池モジュールとしてのバイポーラ電池2Bの圧力調整弁12Bでは、複数(本実施形態では3つ)のケース33Bの底壁36Bに対してケース側壁37を介して単数のカバー34Bが一体化されている。なお、
図10の例では、ケース側壁37や仕切壁38は予め底壁36Bのそれぞれと一体に射出成形等で形成されているが、本実施形態においても、ケース側壁37や仕切壁38は、予め単数のカバー34Bと一体に射出成形等で形成され、後に底壁36Bに熱溶着されてもよい。
【0053】
本実施形態によれば、複数の底壁36Bに対して単数のカバー34Bが一体化されているため、カバー34Bよりも多くの数に分割された底壁36Bに反りが生じ難くなるため、弁体35の圧縮率のばらつきを低減することができる。1つの圧力調整弁12Bに対して複数の弁体35を設けるに従って、圧力調整弁12Bの寸法は増加していき、反り量も大きくなるため、本実施形態の効果はより有効になる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、互いに異なる数の底壁36A,36Bとカバー34A,34Bとが一体化されている態様は様々なものが考えられ、底壁36A,36B及びカバー34A,34Bの数量が同じでなければ、底壁36A,36Bの数量及びカバー34A,34Bの数量は如何なるものでもよい。また、上記実施形態では、電池モジュールとしてのバイポーラ電池2A,2Bはニッケル水素二次電池である。しかしながら、本発明は、ニッケル水素二次電池には限られず、リチウムイオン二次電池等にも適用可能である。本発明は、バイポーラ電池2A,2B以外にも、複数の電極が積層された電極積層体と電極積層体を取り囲むように配置された枠体とを有するモジュール本体を備えた電池モジュールであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…蓄電装置、2A,2B…バイポーラ電池(電池モジュール)、3…導電板、3a…空隙、4…正極端子、5…負極端子、6…拘束ユニット、7…拘束プレート、7a…挿通孔、8…ボルト、8a…軸部、9…ナット、10…絶縁フィルム、11…モジュール本体、12,12A,12B…圧力調整弁、13…バイポーラ電極、14…セパレータ、15…電極積層体、16…枠体、16a…壁部、17…ニッケル箔、17a…上面(一方面)、17b…下面(他方面)、17c…縁部、18…正極活物質層、19…負極活物質層、20…正極側終端電極、21…負極側終端電極、22…一次シール部、23…二次シール部、24…圧力調整弁取付領域、25,26…連通孔(第1連通孔)、27…接合用突起、28…流路、29,30…枠部、33,33A,33B…ケース、34,34A,34B…カバー(第2部材)、34a…内壁面、35…弁体(弾性部材)、35a…端面(第1端面)、35b…端面(第2端面)、36,36A,36B…底壁(壁部、第1部材)、36a…底面(第1面)、36b…内壁面(第2面)、37…ケース側壁、38…仕切壁、39…連通孔(第2連通孔)、39a…開口、40…接合用突起、41…流路、44…収容部、45…排気口、46…熱板、C…軸線方向、G…隙間、S…空間、V…内部空間。