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  • 特許-粗紡機のフライヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】粗紡機のフライヤ
(51)【国際特許分類】
   D01H 7/32 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
D01H7/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018217914
(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2020084352
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】荻原 誠司
(72)【発明者】
【氏名】新原 正己
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第2883416(CN,Y)
【文献】実開昭57-158780(JP,U)
【文献】実開平03-106374(JP,U)
【文献】西独国特許出願公告第01107567(DE,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフライヤレッグを有するフライヤ本体と、
前記一対のフライヤレッグのうち一方のフライヤレッグの下端部よりも下方に突出した導糸管の下端部に配置されたフライヤプレッサと、
前記導糸管の下端部に固定され前記フライヤプレッサを回動可能に支持するブッシュと
を備え、
前記フライヤプレッサは、前記フライヤプレッサの重心位置を前記ブッシュの中心軸方向の中央に設定するための重量調整部を有する
粗紡機のフライヤ。
【請求項2】
前記フライヤプレッサは、カウンタウェイトを有し、
前記重量調整部は、前記カウンタウェイトに形成された切り欠き部によって構成されている
請求項1に記載の粗紡機のフライヤ。
【請求項3】
前記フライヤプレッサは、プレッサアームと、前記プレッサアームの先端部に設けられたプレッサパドルとを有し、
前記プレッサアームは、前記プレッサパドルの位置を前記ブッシュの中心軸方向の中央に設定するための曲げ部または傾斜を有する
請求項1または2に記載の粗紡機のフライヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗紡機のフライヤに関する。
【背景技術】
【0002】
粗糸をボビンに巻き取る粗紡機にはフライヤが設けられている。粗紡機のフライヤは、たとえば、特許文献1に開示されているように、一対のフライヤレッグを有するフライヤ本体と、フライヤプレッサとを備える。
この粗紡機において、ボビンに粗糸を巻き取る場合は、フライヤ本体が高速で回転し、この回転に従ってフライヤプレッサがボビンの周りを回転する。その際、フライヤプレッサのパドル部分は、ボビンの外周面、または、ボビンに巻かれた粗糸の表面に押し付けられる。
【0003】
フライヤプレッサは、一方のフライヤレッグ側にブッシュを用いて回動可能に取り付けられている。そして、上述のようにフライヤ本体が高速で回転すると、これにともなう遠心力によってフライヤプレッサに回転力が発生し、この回転力によってフライヤプレッサのパドル部分がボビンの外周面等に押し付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭57-158780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フライヤプレッサをブッシュによって支持すると、フライヤ本体の回転によってフライヤプレッサに作用する遠心力が、ブッシュによって受け止められる。その際、ブッシュには、フライヤプレッサに作用する遠心力によって負荷荷重が加わる。
従来においては、ブッシュに加わる負荷荷重が、ブッシュの中心軸方向の一端(上端)と他端(下端)で大きさの異なる不均一な荷重(以下、「偏荷重」ともいう。)となっていた。偏荷重は、ブッシュを早期に摩耗させる要因になる。また、ブッシュに偏荷重が加わると、ブッシュに偏摩耗が生じる。ブッシュに偏摩耗が生じると、ブッシュの摩耗の進行にともなってフライヤプレッサに経時的な傾きが生じる。その結果、ボビンの外周面等に対するパドル部分の接触位置や押し付け力が変化し、粗糸の品質劣化につながるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、フライヤプレッサにおけるブッシュの偏摩耗を抑制することができる、粗紡機のフライヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る粗紡機のフライヤは、一対のフライヤレッグを有するフライヤ本体と、一対のフライヤレッグのうち一方のフライヤレッグの下端部よりも下方に突出した導糸管の下端部に配置されたフライヤプレッサと、導糸管の下端部に固定されフライヤプレッサを回動可能に支持するブッシュとを備え、フライヤプレッサは、フライヤプレッサの重心位置をブッシュの中心軸方向の中央に設定するための重量調整部を有する。
【0008】
本発明に係る粗紡機にフライヤにおいて、フライヤプレッサは、カウンタウェイトを有し、重量調整部は、カウンタウェイトに形成された切り欠き部によって構成されていてもよい。
【0009】
本発明に係る粗紡機のフライヤにおいて、フライヤプレッサは、プレッサアームと、プレッサアームの先端部に設けられたプレッサパドルとを有し、プレッサアームは、プレッサパドルの位置をブッシュの中心軸方向の中央に設定するための曲げ部または傾斜を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フライヤプレッサにおけるブッシュの偏摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る粗紡機のフライヤを示す一部破断正面図である。
図2図1に示すフライヤが備えるフライヤプレッサの構成を示す一部破断図である。
図3】参考形態におけるフライヤプレッサの構成を示す一部破断図である。
図4】第2実施形態におけるフライヤプレッサの構成を示す一部破断図である。
図5】第2実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本第1実施形態に係る粗紡機のフライヤを示す一部破断正面図である。
本第1実施形態に係る粗紡機のフライヤ1は、図示しないボビンに粗糸を巻き取る際に用いられるものであって、図1に示すように、フライヤ本体10と、フライヤプレッサ14と、バランスウェイト16とを備えている。
【0013】
フライヤ本体10は、図示しないフライヤ駆動装置により、フライヤ1の回転中心となる軸線J1を中心に回転可能に設けられている。粗紡機において、軸線J1は、粗紡機の設置状態において、鉛直方向に沿って設定される。本明細書においては、粗紡機の設置状態において、鉛直方向の上側を上方、鉛直方向の下側を下方として、各部の配置や位置関係を特定する。
【0014】
フライヤ本体10は、アーバ部18と、ボス部20と、一対のフライヤレッグ21,22とを有している。フライヤ本体10は、たとえば、アルミニウム合金製の一体鋳造品によって構成される。アーバ部18は、フライヤ本体10の上部に設けられている。ボス部20は、アーバ部18と一対のフライヤレッグ21,22との間に設けられている。ボス部20にはフライヤスピンドル25が取り付けられている。フライヤスピンドル25は、軸線J1に沿ってボス部20から下方に延出している。フライヤスピンドル25は、一対のフライヤレッグ21,22の間に配置されている。
【0015】
一対のフライヤレッグ21,22は、ボス部20から一方と他方に分岐して下方に延出している。一対のフライヤレッグ21,22は、フライヤ本体10が回転したときに、軸線J1の周りを旋回するものである。一対のフライヤレッグ21,22のうち、一方のフライヤレッグ21の内部には、細長いパイプ状の導糸管26が設けられている。
【0016】
導糸管26の一部は、一方のフライヤレッグ21の内部に配置されている。導糸管26は、図示しない鋳型を用いてフライヤ本体10を製造する際に、鋳型に導糸管26を配置して溶融金属を流し込むことにより、アーバ部18、ボス部20およびフライヤレッグ21の中に鋳込まれる。導糸管26は、フライヤ本体10のアーバ部18内に導入される粗糸(図示せず)を、ボス部20およびフライヤレッグ21の内部を通してフライヤプレッサ14へと導くものである。導糸管26は、フライヤレッグ21の形状に沿うように曲げられている。
【0017】
フライヤプレッサ14は、一方のフライヤレッグ21側に配置されている。フライヤプレッサ14は、一方のフライヤレッグ21側において、導糸管26の下端部26aに配置されている。導糸管26の下端部26aは、フライヤレッグ21の下端部21aよりも下方に突出しており、この突出部分にブッシュ(後述)を用いてフライヤプレッサ14が回動可能に取り付けられている。また、フライヤプレッサ14は軸線J2を中心に回動可能に設けられている。
【0018】
バランスウェイト16は、フライヤ1の重心位置をフライヤ1の回転中心に合わせるために、フライヤ1全体の重量バランスをとるものである。バランスウェイト16は、軸線J1を中心としたフライヤ1の重量バランスが、一方のフライヤレッグ21側と他方のフライヤレッグ22側でほぼ均等となるよう、フライヤプレッサ14と同等の重量を有している。バランスウェイト16は、フライヤレッグ22の下端部に取り付けられている。また、バランスウェイト16は、複数の柱状のウェイト16aによって構成されている。
【0019】
フライヤプレッサ14は、プレッサ本体31と、プレッサアーム32と、プレッサパドル33と、カウンタウェイト34とを備えている。フライヤプレッサ14が配置される部分には、プレッサ自身の脱落を防止するために、ストッパ36とナット37が設けられている。ストッパ36は、導糸管26に固定されている。ストッパ36は、導糸管26の外周面よりも径方向外側に突出して配置されている。ナット37は、ボルト38を用いてプレッサ本体31またはカウンタウェイト34に固定される。フライヤプレッサ14は、ストッパ36の上面にナット37を載せて引っ掛けることにより、自重で脱落しないようになっている。
【0020】
プレッサ本体31は、後述するブッシュにより、軸線J2を中心に回動可能に支持されている。プレッサアーム32は、プレッサ本体31からプレッサパドル33へと延出している。プレッサアーム32には、導糸管26の下端部26aから導出される粗糸(図示せず)がプレッサパドル33に向けて巻き掛けられる。プレッサパドル33は、軸線J1を中心にフライヤ本体10が回転した際に、ボビンの外周面、または、ボビンに巻かれた粗糸の表面に押し付けられる。
【0021】
カウンタウェイト34は、プレッサ本体31と一体に形成されている。カウンタウェイト34は、フライヤプレッサ14の重心位置をフライヤプレッサ14の回動中心からずらして設定するためのウェイトである。フライヤプレッサ14の重心位置をフライヤプレッサ14の回動中心からずらして設定すると、フライヤ本体10が回転した際に、フライヤプレッサ14の重心位置に遠心力が働く。このため、フライヤプレッサ14には、遠心力によって回転力が付与される。これにより、フライヤプレッサ14のプレッサパドル33をボビンの外周面、または、ボビンに巻かれた粗糸の表面に押し付けることができる。
【0022】
図2は、図1に示すフライヤが備えるフライヤプレッサの構成を示す一部破断図である。
図2に示すように、フライヤプレッサ14のプレッサ本体31には、軸孔41が設けられている。この軸孔41には、導糸管26の下端部26a(図1参照)が挿入される。軸孔41の内部にはブッシュ42が配置されている。ブッシュ42は、フライヤプレッサ14を回動可能に支持するものである。ブッシュ42は、軸孔41に挿入される導糸管26の下端部26aに圧入等によって固定される。これにより、ブッシュ42は、導糸管26の外周側に配置される。ブッシュ42は、たとえば、滑り軸受によって構成され、このブッシュ42によってプレッサ本体31が回動可能に支持される。ブッシュ42は、フライヤレッグ21の下端側のみに設けられる。
【0023】
一般に、フライヤプレッサが備えるカウンタウェイトは、カウンタウェイトの長さの違いによってショートタイプとロングタイプとに分けられる。ショートタイプのカウンタウェイトは、プレッサ本体と共にフライヤレッグの下端側に配置される。このため、ショートタイプのカウンタウェイトを備えるフライヤプレッサでは、フライヤ本体が配置されるフライヤレッグの下端側のみにブッシュを設けるだけで済む。これに対して、ロングタイプのカウンタウェイトは、フライヤ本体からフライヤレッグの上端側まで長く分布して配置される。このため、ロングタイプのカウンタウェイトを備えるフライヤプレッサでは、フライヤ本体が配置されるフライヤプレッサの下端側だけでなく、カウンタウェイトの上端部が配置されるフライヤレッグの上端側にもブッシュを設ける必要がある。
【0024】
本第1実施形態におけるフライヤプレッサ14のカウンタウェイト34は、図1に示すように、プレッサ本体31と共にフライヤレッグ21の下端側に配置されており、フライヤレッグ21の上端側には長く分布していない。すなわち、このカウンタウェイト34は、ショートタイプのカウンタウェイトに相当する。したがって、ブッシュ42は、フライヤレッグ21の下端側のみに設けられ、フライヤレッグ21の上端側には設けられていない。
【0025】
また、本第1実施形態においては、カウンタウェイト34に切り欠き部35が形成されている。切り欠き部35は、フライヤプレッサ14の重心位置をブッシュ42の中心軸方向の中央側に寄せるための重量調整部を構成する部分である。この切り欠き部35は、ブッシュ42の中心軸を示す軸線J2を間に挟んで、プレッサアーム32およびプレッサパドル33とは反対側に形成されている。また、切り欠き部35は、プレッサアーム32が配置されるフライヤプレッサ14の下端側において、カウンタウェイト34の一部34aを切り欠いて形成されている。
【0026】
ここで、切り欠き部35によるカウンタウェイト34の重量調整量(重量減少分)は、好ましくはプレッサパドル33の重量相当量であり、より好ましくはプレッサアーム32とプレッサパドル33とを合わせた重量相当量である。本第1実施形態においては、少なくともプレッサパドル33の重量相当量をカウンタウェイト34から減じるように、カウンタウェイト34の一部34aを切り欠くことにより、切り欠き部35が形成されている。また、本第1実施形態では、好ましい例として、上下方向におけるフライヤプレッサ14の重心位置Gが、ブッシュ42の中心軸方向の中央に設定されている。
【0027】
次に、本第1実施形態におけるフライヤプレッサ14の作用効果に関して、本第1実施形態と比較対象となる参考形態を挙げて説明する。
図3は、参考形態におけるフライヤプレッサの構成を示す一部破断図である。
図3に示すフライヤプレッサ14においては、カウンタウェイト34に切り欠き部35が形成されていない。このため、フライヤプレッサ14の重心位置Gは、ブッシュ42の中心軸方向の下側に寄っている。したがって、フライヤ本体10の回転によってフライヤプレッサ14の重心位置Gに遠心力Fが作用すると、重心位置Gから遠い側となるブッシュ42の上端部には相対的に小さい負荷荷重P1が加わり、重心位置Gに近い側となるブッシュ42の下端部には相対的に大きい負荷荷重P2が加わる。このため、ブッシュ42に加わる負荷荷重が、ブッシュ42の中心軸方向の一端(上端)と他端(下端)で大きさの異なる不均一な荷重、すなわち偏荷重となる。
【0028】
一方、本第1実施形態におけるフライヤプレッサ14においては、図2に示すように、カウンタウェイト34に切り欠き部35を形成したことにより、参考形態の場合と比べて、フライヤプレッサ14の重心位置Gがブッシュ42の中心軸方向の中央側に寄せて設定されている。このため、フライヤ本体10の回転によってフライヤプレッサ14の重心位置Gに遠心力Fが作用すると、ブッシュ42の上端部には負荷荷重P1が加わり、ブッシュ42の下端部にはその負荷荷重P1と同等の負荷荷重P2が加わる。つまり、遠心力Fによってブッシュ42に加わる負荷荷重が、ブッシュ42の中心軸方向の一端と他端で均一化される。
【0029】
したがって、本第1実施形態に係る粗紡機のフライヤ1によれば、ブッシュ42の偏摩耗を抑制することができる。また、ブッシュ42に加わる負荷荷重の均一化により、ブッシュ42の摩耗の進行を遅らせて、ブッシュ42の長寿命化を図ることができる。また、ブッシュ42の偏摩耗に起因するフライヤプレッサ14の経時的な傾きを抑制することができる。これにより、ボビンの外周面等に対するプレッサパドル33の接触位置や押し付け力の変化を低減し、粗糸の品質を安定させることができる。
【0030】
<第2実施形態>
図4は、本第2実施形態におけるフライヤプレッサの構成を示す一部破断図である。なお、本第2実施形態においては、上記第1実施形態で挙げた構成部分と同一または対応する部分に同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
本第2実施形態においては、上記第1実施形態と比較して、プレッサアーム32の形状と、カウンタウェイト34の形状とが異なる。具体的には、図4に示すように、プレッサアーム32は、アーム長さ方向の途中に曲げ部32aを有している。曲げ部32aは、プレッサパドル33の位置をブッシュ42の中心軸方向の中央側に寄せるために形成されたものである。このため、プレッサアーム32の曲げ部32aは、プレッサアーム32の先端側がプレッサアーム32の基端側よりも上方に位置するように、上向きに曲げられている。また、本第2実施形態においては、好ましい例として、プレッサパドル33の位置がブッシュ42の中心軸方向の中央に設定されている。具体的には、ブッシュ42の中心軸方向の中央から延びる水平線J3上に、プレッサパドル33の中心が配置されている。
【0032】
一方、カウンタウェイト34には、重量調整部として、上記第1実施形態と同様の切り欠き部35の他に、第2切り欠き部39が形成されている。第2切り欠き部39は、プレッサアーム32の曲げ部32aによってプレッサパドル33の位置を上方に移動させても、フライヤプレッサ14の重心位置Gがブッシュ42の中心軸方向の中央からずれないよう、カウンタウェイト34の一部を切り欠いたものである。第2切り欠き部39は、軸線J2の位置を基準にみて、切り欠き部35と同じ側に形成されている。また、第2切り欠き部39は、切り欠き部35とは反対側となるカウンタウェイト34の上端側に形成されている。
【0033】
本第2実施形態に係る粗紡機のフライヤにおいては、フライヤ本体10の回転にともなう遠心力によってフライヤプレッサ14に回転力を付与し、この回転力によってプレッサパドル33をボビンの外周面等に押し付けた場合に、プレッサパドル33は、押し付けによる反力F1を受ける。この反力F1によってブッシュ42には負荷荷重F2およびF3が加わる。その際、プレッサアーム32の曲げ部32aによってプレッサパドル33の位置をブッシュ42の中心軸方向の中央側に寄せておけば、反力F1によってブッシュ42の上端部に加わる負荷荷重F2と、反力F1によってブッシュ42の下端部に加わる負荷荷重F3との差が小さくなる。これにより、遠心力によってブッシュ42に加わる負荷荷重だけでなく、反力F1によってブッシュ42に加わる負荷荷重も均一化することができる。したがって、ブッシュ42の偏摩耗をより効果的に抑制することができる。
【0034】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0035】
たとえば、上記実施形態においては、カウンタウェイト34の一部を斜めに切り落としたような形状で切り欠き部35または第2切り欠き部39を形成しているが、切り欠き部の形状はどのような形状であってもかまわない。また、重量調整部としてカウンタウェイト34の下部分に重量を減らすための穴を形成してもよい。また、フライヤプレッサ14を上下二体で構成し、重量調整部として下部分を上部分の材料よりも軽量な材料で形成してもよい。さらに、重量調整部としてカウンタウェイト34の上部分に重心位置Gをブッシュ42の中心軸方向の中央側に寄せるような形状(上部分の重量を増大させるような形状)を設けたり、別体のウェイトを上部分に追加してもよい。
【0036】
また、上記第2実施形態においては、プレッサパドル33の位置をブッシュ42の中心軸方向の中央側に寄せるために、プレッサアーム32に曲げ部32aを形成したが、これ以外にも、たとえば図5に示すように、プレッサアーム32の先端側が基端側よりも上方となるよう、水平線J3に対してプレッサアーム32全体を斜めに傾斜させた構成にしてもよい。また、プレッサアーム32に曲げ部32a又は傾斜を設けた場合には、それ自体でフライヤプレッサ14の重心位置Gをブッシュ42の中心軸方向の中央側に寄せる作用を生じ、重量調整部としての働きを持つため、切り欠き部35を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 フライヤ、21,22 フライヤレッグ、14 フライヤプレッサ、32 プレッサアーム、32a 曲げ部、33 プレッサパドル、34 カウンタウェイト、35 切り欠き部(重量調整部)、39 第2切り欠き部(重量調整部)、42 ブッシュ、G フライヤプレッサの重心位置。
図1
図2
図3
図4
図5