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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】紡機のスピンドルブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 7/22 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
D01H7/22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018229856
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020090756
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】仲田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 智理
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】実公昭35-014126(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルレールの長手方向で隣り合う2つのスピンドルと、前記2つのスピンドルに巻き掛けられたスピンドルベルトとを備える紡機において、前記スピンドルの回転を停止させるスピンドルブレーキ装置であって、
前記スピンドルレールの幅方向に移動可能なブレーキ本体と、
前記ブレーキ本体に設けられた分離ローラと、
前記ブレーキ本体に設けられたブレーキシューと
を備え、
前記スピンドルレールには、前記スピンドルレールの長手方向において前記スピンドルからずれた位置のブレーキ待機位置と前記スピンドルレールの長手方向において前記スピンドルと同じ位置のブレーキ作動位置とが設定され、
前記ブレーキ待機位置および前記ブレーキ作動位置の各々には、前記ブレーキ本体を前記スピンドルレールの幅方向に移動可能に案内する案内部が設けられ、
前記ブレーキ本体は、前記ブレーキ待機位置および前記ブレーキ作動位置に配置可能に構成され、
前記ブレーキ本体を前記ブレーキ待機位置に配置した状態では、前記分離ローラが前記スピンドルベルトから離間して配置され、
前記ブレーキ本体を前記ブレーキ作動位置に配置した状態では、前記分離ローラが前記スピンドルベルトを前記スピンドルから分離するように配置されるとともに、前記ブレーキシューが前記スピンドルベルトの張力によって前記スピンドルに押し付けられる
紡機のスピンドルブレーキ装置。
【請求項2】
前記案内部は、蟻溝形状をなすガイド溝によって構成され、
前記ブレーキ本体には、前記ガイド溝に嵌まり込む突起部が形成されている
請求項1に記載の紡機のスピンドルブレーキ装置。
【請求項3】
前記案内部は、断面矩形のガイド溝によって構成され、
前記ブレーキ本体の一部は、前記ガイド溝に嵌め込まれ、
前記ブレーキ本体にはブラケットが取り付けられ、
前記ブラケットは、前記ブレーキ本体を前記ブレーキ作動位置に配置した際に前記スピンドルレールに係止されることにより、前記スピンドルベルトの張力による前記ブレーキ本体の倒れを抑制する係止部を有する
請求項1に記載の紡機のスピンドルブレーキ装置。
【請求項4】
前記ブラケットは、前記ブレーキ本体を前記ブレーキ待機位置に配置した際に前記ガイド溝と係合することにより、前記スピンドルレールの長手方向で前記ブレーキ本体を位置決めする係合部を有する
請求項3に記載の紡機のスピンドルブレーキ装置。
【請求項5】
前記ブレーキ作動位置に設けられる前記案内部は、位置決め孔によって構成され、
前記ブレーキ本体には、前記位置決め孔に抜き差し可能な位置決めピンが設けられている
請求項1に記載の紡機のスピンドルブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡機のスピンドルブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、精紡機や撚糸機などの紡機はスピンドル装置を備えている。紡機のスピンドル装置は、スピンドルと、スピンドルに巻き掛けられたスピンドルベルトとを備え、スピンドルベルトの走行に従ってスピンドルが回転する構成になっている。また、紡機は複数の錘を備えており、各々の錘ごとにスピンドルが設けられている。そして、紡機で糸を紡出している最中にいずれかの錘で糸切れが発生した場合は、その錘でスピンドルの回転を停止させ、糸継ぎによって糸を繋いでからスピンドルの回転を再開している。その場合、糸切れが発生した錘でスピンドルの回転を停止させるためにスピンドルブレーキ装置が用いられている。
【0003】
紡機のスピンドルブレーキ装置に関しては、たとえば、特許文献1に記載されたものが知られている。ただし、特許文献1に記載のスピンドルブレーキ装置では、スピンドルベルトの走行によってスピンドルに回転力を付与したままで、スピンドルにブレーキシューを押し付ける構成になっている。このため、ブレーキシューの押し付けによってスピンドルに大きな負荷がかかる。また、スピンドルとスピンドルベルトとの間に擦れが生じ、両者の摩耗を早めてしまう。
【0004】
そこで、特許文献2および特許文献3には、スピンドルからスピンドルベルトを分離させる分離ローラと、スピンドルに押し付けられるブレーキシューとを備えるスピンドルブレーキ装置が記載されている。このスピンドルブレーキ装置では、分離ローラによってスピンドルベルトをスピンドルから分離させた状態で、スピンドルにブレーキシューを押し付ける構成になっている。このため、スピンドルに大きな負荷をかけることなく、スピンドルの回転を停止させることができる。また、スピンドルとスピンドルベルトとの擦れを抑制し、両者の摩耗を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭56-49028号公報
【文献】特開昭58-180619号公報
【文献】実開昭56-69677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2および特許文献3に記載のスピンドルブレーキ装置では、分離ローラによってスピンドルベルトをスピンドルから分離させ、かつ、ブレーキシューをスピンドルに押し付けるための構成が複雑かつ大掛かりなものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、分離ローラとブレーキシューとを有するスピンドルブレーキ装置を従来よりも簡易な構成によって実現することができる、紡機のスピンドルブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る紡機のスピンドルブレーキ装置は、スピンドルレールの長手方向で隣り合う2つのスピンドルと、2つのスピンドルに巻き掛けられたスピンドルベルトとを備える紡機において、スピンドルの回転を停止させるスピンドルブレーキ装置であって、スピンドルレールの幅方向に移動可能なブレーキ本体と、ブレーキ本体に設けられた分離ローラと、ブレーキ本体に設けられたブレーキシューとを備え、スピンドルレールには、スピンドルレールの長手方向においてスピンドルからずれた位置のブレーキ待機位置とスピンドルレールの長手方向においてスピンドルと同じ位置のブレーキ作動位置とが設定され、ブレーキ待機位置およびブレーキ作動位置の各々には、ブレーキ本体をスピンドルレールの幅方向に移動可能に案内する案内部が設けられ、ブレーキ本体は、ブレーキ待機位置およびブレーキ作動位置に配置可能に構成され、ブレーキ本体をブレーキ待機位置に配置した状態では、分離ローラがスピンドルベルトから離間して配置され、ブレーキ本体をブレーキ作動位置に配置した状態では、分離ローラがスピンドルベルトをスピンドルから分離するように配置されるとともに、ブレーキシューがスピンドルベルトの張力によってスピンドルに押し付けられるものである。
【0009】
本発明に係る紡機のスピンドルブレーキ装置において、案内部は、蟻溝形状をなすガイド溝によって構成され、ブレーキ本体には、ガイド溝に嵌まり込む突起部が形成されていてもよい。
【0010】
本発明に係る紡機のスピンドルブレーキ装置において、案内部は、断面矩形のガイド溝によって構成され、ブレーキ本体の一部は、ガイド溝に嵌め込まれ、ブレーキ本体にはブラケットが取り付けられ、ブラケットは、ブレーキ本体をブレーキ作動位置に配置した際にスピンドルレールに係止されることにより、スピンドルベルトの張力によるブレーキ本体の倒れを抑制する係止部を有するものであってもよい。
【0011】
本発明に係る紡機のスピンドルブレーキ装置において、ブラケットは、ブレーキ本体をブレーキ待機位置に配置した際にガイド溝と係合することにより、スピンドルレールの長手方向でブレーキ本体を位置決めする係合部を有するものであってもよい。
【0012】
本発明に係る紡機のスピンドルブレーキ装置において、ブレーキ作動位置に設けられる案内部は、位置決め孔によって構成され、ブレーキ本体には、位置決め孔に抜き差し可能な位置決めピンが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分離ローラとブレーキシューとを有するスピンドルブレーキ装置を従来よりも簡易な構成によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置の構成を示す一部破断平面図である。
図2図1のスピンドルブレーキ装置の要部の構成を示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置の構成を示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置において、ブレーキ本体をブレーキ作動位置に配置した状態を示す一部破断平面図である。
図5】第1実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置において、ブレーキ本体をブレーキ作動位置に配置した状態を示す斜視図である。
図6】第2実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置の構成を示す斜視図である。
図7】第2実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置の構成を示す側面図である。
図8】第2実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置において、ブレーキ本体をブレーキ作動位置に配置した状態を示す斜視図である。
図9】第2実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置において、ブレーキ本体をブレーキ作動位置に配置した状態を示す一部破断側面図である。
図10】第3実施形態に係るスピンドルブレーキ装置の要部の構成を示す斜視図である。
図11】第3実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置において、ブレーキ本体をブレーキ作動位置に配置した状態を示す斜視図である。
図12】第3実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置において、ブレーキ本体をブレーキ作動位置に配置した状態を示す一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置の構成を示す一部破断平面図であり、図2は、図1のスピンドルブレーキ装置の要部の構成を示す斜視図である。また、図3は、第1実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置の構成を示す斜視図である。
本第1実施形態では、最初に、紡機のスピンドル装置の構成について説明し、その後で、本第1実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置の構成について説明する。スピンドルブレーキ装置は、スピンドル装置に付属して設けられるものである。
【0016】
(スピンドル装置の構成)
図1図3に示すように、紡機のスピンドル装置は、スピンドルレール10の長手方向Xで隣り合う2つのスピンドル11と、これら2つのスピンドル11に巻き掛けられたスピンドルベルト12とを備えている。スピンドル11は、スピンドルベルト12の走行に従って回転するものである。スピンドル11は、紡機の各錘に1つずつ設けられる。スピンドル11には、糸を巻き取るためのボビン(図示せず)が装着される。スピンドル11は、スピンドルレール10上に垂直に起立して配置されている。また、スピンドル11はスピンドルワーブ13を有している。スピンドルワーブ13は小径部13aと大径部13bとを一体に有し、スピンドルベルト12はスピンドルワーブ13の小径部13aに巻き掛けられている。また、スピンドルワーブ13は、図3に示すように、ボルスタ14のフランジ部14aよりも上側に配置されている。ボルスタ14は、ナット15によってスピンドルレール10に固定されている。
【0017】
スピンドルベルト12は、図示しないスピンドル駆動モータの駆動に従って走行するものである。スピンドルベルト12は、無端状のベルトであり、適度な伸縮性を有している。スピンドルベルト12は、紡機が備える多数の錘のうち4つの錘を1つの組として、4つのスピンドル11に巻き掛けられる。ただし、図1および図3においては、同じ組に属する4つのスピンドル11のうち、2つのスピンドル11のみを表示し、他の2つのスピンドル11の表示を省略している。上記4つのスピンドル11のうち、2つのスピンドル11は、スピンドルレール10の幅方向Yの一方側に配置され、他の2つのスピンドル11は、スピンドルレール10の幅方向Yの他方側に配置される。そして、4つのスピンドル11に1つのスピンドルベルト12が巻き掛けられる。このため、スピンドルベルト12を走行させると、これに従って4つのスピンドル11が回転する。スピンドルレール10の幅方向Yは、スピンドルレール10の長手方向Xと直交する方向である。
【0018】
(スピンドルブレーキ装置の構成)
図1図3に示すように、紡機のスピンドルブレーキ装置20は、ブレーキ本体21と、分離ローラ22と、ブレーキシュー23と、取っ手24とを備えている。ブレーキ本体21は、たとえば、ステンレス鋼などの金属によって構成されている。ブレーキ本体21は、ベースブロック部26と、板壁部27と、ボトムブロック部28とを一体に有している。ベースブロック部26の一部は半円形状に切り欠かれており、この切り欠き部分にブレーキシュー23が設けられている。板壁部27は、ベースブロック部26の上面の一端縁から垂直に起立して形成されている。板壁部27の上端部は、分離ローラ22の上端部とほぼ同じ高さに配置されている。板壁部27は、作業者の安全を確保するためのものである。具体的には、板壁部27は、作業者が取っ手24を握るときに誤って作業者の手がスピンドルベルト12に触れないようにするためのものである。ボトムブロック部28は、ベースブロック部26の下面側に配置されている。ボトムブロック部28は、ベースブロック部26よりも狭い幅で下向きに突出している。ボトムブロック部28の最下部には突起部29が一体に形成されている。突起部29は、スピンドルレール10のガイド溝(後述)に嵌まり込む部分となる。
【0019】
分離ローラ22は、図2に示すように、2つのローラ22a,22bによって構成されている。分離ローラ22は、スピンドルベルト12をスピンドル11から分離するためのローラである。2つローラ22a,22bは、ブレーキ本体21のベースブロック部26の上面側に配置されている。各々のローラ22a,22bは、たとえば、金属製のローラであって、いずれも回転自在に設けられている。各々のローラ22a,22bの回転軸は、スピンドル11の回転軸と平行に配置されている。2つのローラ22a,22bは、ブレーキ本体21をブレーキ待機位置P1またはブレーキ作動位置P2に配置した場合、スピンドルレール10の長手方向Xに整列して配置される。
【0020】
ここで、図2に示すように、ブレーキ本体21の前後方向の一方をフロント側F、その反対側をリア側Rと定義すると、板壁部27はブレーキ本体21のリア側Rに配置され、ブレーキシュー23はブレーキ本体21のフロント側Fに配置されている。また、分離ローラ22は、ブレーキ本体21の前後方向において、板壁部27とブレーキシュー23との間に配置されている。
【0021】
ブレーキシュー23は、スピンドル11との接触により、スピンドル11の回転を停止させるものである。ブレーキシュー23は、ベースブロック部26の切り欠き形状に倣って円弧状に形成されている。ブレーキシュー23は、摩擦係数が大きい材料、たとえば、ゴム、樹脂、皮などによって構成されている。また、ブレーキシュー23は、ベースブロック部26の切り欠き部分を覆うように配置されている。このため、ブレーキシュー23の表面は、ブレーキ本体21のフロント側Fで外部に露出している。
【0022】
取っ手24は、後述するブレーキ本体21の入れ替え作業に際して、ブレーキ本体21の取り扱いを容易にするために設けられたものである。取っ手24は、ブレーキ本体21のリア側Rに突出して配置されている。取っ手24は、軸部24aと、握り部24bとを一体に有している。軸部24aの一端は、たとえば、ネジによる締結、または圧入、接着などによってブレーキ本体21のベースブロック部26に固定されている。握り部24bは、軸部24aの先端部に設けられている。握り部24bは、取っ手24の握りやすさを考慮して、軸部24aよりも大きな外径で形成されている。
【0023】
また、スピンドルレール10には、図1および図3に示すように、ブレーキ待機位置P1と、ブレーキ作動位置P2とが設定されている。ブレーキ待機位置P1は、2つのスピンドル11のいずれにも制動力を加えないよう、ブレーキ本体21を待機させる位置であり、ブレーキ作動位置P2は、2つのスピンドル11のいずれかに制動力を加えるよう、ブレーキ本体21を配置するための位置である。ブレーキ待機位置P1は、スピンドルレール10の長手方向Xにおいてスピンドル11からずれた位置に設定され、ブレーキ作動位置P2は、スピンドルレール10の長手方向Xにおいてスピンドル11と同じ位置に設定されている。また、ブレーキ待機位置P1は、スピンドルレール10の長手方向Xにおいてブレーキ本体21が2つのスピンドル11の間に位置するように設定されている。ブレーキ作動位置P2は、スピンドルレール10の幅方向Yにおいてブレーキ本体21が2つのスピンドル11の各々と対向するように設定されている。また、ブレーキ作動位置P2は、ブレーキ待機位置P1を間に挟んで、ブレーキ待機位置P1の両側に設定されている。
【0024】
ブレーキ待機位置P1にはガイド溝31が形成され、その両側のブレーキ作動位置P2にもそれぞれガイド溝32が形成されている。ガイド溝31およびガイド溝32は、ブレーキ本体21をスピンドルレール10の幅方向Yに移動可能に案内する案内部を構成するものである。ガイド溝31およびガイド溝32は、スピンドルレール10の上面に形成されている。また、ガイド溝31およびガイド溝32は、図3に示すように、断面台形の蟻溝形状に形成されている。
【0025】
これに対して、ブレーキ本体21は、ボトムブロック部28の突起部29をスピンドルレール10のガイド溝31またはガイド溝32に嵌め込むことにより、スピンドルレール10の幅方向Yに移動可能に構成されている。また、ボトムブロック部28の突起部29は、スピンドルレール10の幅方向Yにおいて、ガイド溝31に抜き差し可能で、かつ、ガイド溝32にも抜き差し可能となっている。これにより、ブレーキ本体21は、ブレーキ待機位置P1およびブレーキ作動位置P2のいずれにも配置可能に構成されている。
【0026】
(スピンドルブレーキ装置の動作)
続いて、第1実施形態に係るスピンドルブレーキ装置20の動作について説明する。
まず、2つのスピンドル11のいずれにも制動力を加えない場合は、図1および図3に示すように、スピンドルレール10のガイド溝31にボトムブロック部28の突起部29を嵌め込んで、ブレーキ本体21をブレーキ待機位置P1に配置する。このとき、スピンドルレール10の長手方向Xにおけるブレーキ本体21の位置は、突起部29とガイド溝31との嵌合によって決まる。また、スピンドルレール10の幅方向Yにおけるブレーキ本体21の位置は、ガイド溝31の端部に突起部29の端部が突き当たることによって決まる。これにより、ブレーキ本体21がブレーキ待機位置P1に位置決めされる。このようにブレーキ本体21をブレーキ待機位置P1に配置した状態では、分離ローラ22が、スピンドルベルト12の内側に、スピンドルベルト12から離間して配置される。また、スピンドルベルト12は、分離ローラ22と板壁部27との間を通して2つのスピンドル11に巻き掛けられる。このため、図示しないスピンドル駆動モータの駆動によってスピンドルベルト12が走行すると、スピンドルベルト12の走行に従って各々のスピンドル11が回転する。
【0027】
ここで、糸の紡出中にいずれかの錘で糸切れが発生した場合は、糸切れが発生した錘でスピンドル11の回転を停止させ、切れた糸を糸継ぎによって繋いでから、スピンドル11の回転を再開することになる。このため、たとえば、図1に示す2つのスピンドル11のうち、右側のスピンドル11が設けられた錘で糸切れが発生した場合は、作業者によるブレーキ本体21の入れ替え作業により、ブレーキ本体21をブレーキ待機位置P1から右側のブレーキ作動位置P2へと移動させる。その際のブレーキ本体21の移動手順を以下に述べる。
【0028】
まず、作業者は、取っ手24を握ってブレーキ本体21を手前側、すなわち図1のY1方向に引き込む。これにより、ブレーキ本体21は、ガイド溝31に案内されながらY1方向に移動する。また、分離ローラ22を構成している2つのローラ22a,22bは、ブレーキ本体21の引き込みによってスピンドルベルト12に接触する。これにより、分離ローラ22がスピンドルベルト12の走行に従って回転するようになる。その際、作業者は、スピンドルベルト12の張力に抗してブレーキ本体21をY1方向に引き込むとともに、ガイド溝31から突起部29が外れるまでブレーキ本体21を引き込む。
【0029】
次に、作業者は、取っ手24を握ったまま、ブレーキ本体21の位置を図1の右側にずらすことにより、突起部29の位置をガイド溝32に合わせる。次に、作業者は、突起部29をガイド溝32に嵌め込むとともに、スピンドルベルト12の張力に従ってブレーキ本体21をガイド溝32の奥側に移動させることにより、ブレーキシュー23をスピンドルワーブ13の大径部13bに接触させる。このとき、スピンドルレール10の長手方向Xにおけるブレーキ本体21の位置は、突起部29とガイド溝32との嵌合によって決まる。また、スピンドルレール10の幅方向Yにおけるブレーキ本体21の位置は、ブレーキシュー23がスピンドルワーブ13の大径部13bに突き当たることによって決まる。これにより、ブレーキ本体21がブレーキ作動位置P2に位置決めされる。このようにブレーキ本体21をブレーキ作動位置P2に配置した状態では、図4および図5に示すように、糸切れが発生した錘でスピンドルベルト12が分離ローラ22に巻き掛けられる。このため、糸切れが発生した錘では、スピンドルベルト12がスピンドル11から分離して配置される。したがって、スピンドルベルト12からスピンドル11への動力伝達が断たれる。
【0030】
一方、ブレーキシュー23は、スピンドルベルト12の張力によってスピンドル11に押し付けられる。具体的には、スピンドルベルト12の張力によって分離ローラ22にY2方向の押し込み力が加えられ、その押し込み力によってブレーキシュー23がスピンドルワーブ13の大径部13bに押し付けられる。このため、糸切れが発生した錘では、ブレーキシュー23とスピンドルワーブ13との接触面に生じる摩擦抵抗によってスピンドル11に制動力が加えられる。これにより、糸切れが発生した錘では、スピンドル11の回転を停止させることができる。また、糸切れが発生していない錘では、スピンドル11の回転を継続させることができる。
【0031】
また、上述のようにスピンドルベルト12の張力によって分離ローラ22に押し込み力が加えられると、その押し込み力によってブレーキ本体21のリア側R(図2参照)が持ち上げられ、ブレーキ本体21に倒れが生じることも考えられる。この点、本第1実施形態では、スピンドルレール10に蟻溝形状のガイド溝32を形成し、このガイド溝32にブレーキ本体21の突起部29が嵌まり込む構成になっている。このため、ガイド溝32と突起部29との嵌合によってブレーキ本体21の倒れが抑制される。したがって、作業者が取っ手24から手を離しても、分離ローラ22によってスピンドル11からスピンドルベルト12を分離させ、かつ、ブレーキシュー23をスピンドル11に押し付けた状態、すなわち図4の状態を維持することができる。よって、糸継ぎを作業者の手作業で行う場合、作業者は両手を自由に使って糸継ぎ作業を行うことができる。
【0032】
なお、糸切れが発生した錘で糸継ぎを終了した場合は、上記の手順と逆の手順でブレーキ本体21をブレーキ作動位置P2からブレーキ待機位置P1へと移動させることにより、図1の状態に戻す。これにより、糸継ぎを終えた錘では、スピンドル11の回転を再開させることができる。また、図1の左側のスピンドル11を有する錘で糸切れが発生した場合は、上記と同様の手順でブレーキ本体21をブレーキ待機位置P1から左側のブレーキ作動位置P2へと移動させることにより、糸切れが発生した錘でスピンドル11の回転を停止させることができる。
【0033】
本第1実施形態に係るスピンドルブレーキ装置20においては、ブレーキ本体21に分離ローラ22とブレーキシュー23とを設け、ブレーキ本体21をブレーキ待機位置P1からブレーキ作動位置P2へと移動させるだけで、スピンドルベルト12をスピンドル11から分離させ、かつ、ブレーキシュー23をスピンドル11に押し付けることができる。また、スピンドルベルト12の張力によってブレーキシュー23をスピンドル11に押し付けるため、特許文献2および特許文献3に記載のスピンドルブレーキ装置に比べて、ブレーキシューをスピンドルに押し付けるための構成が簡易になる。これにより、特許文献2および特許文献3に記載のスピンドルブレーキ装置に比べて、より簡易な構成によってスピンドルブレーキ装置20を実現することができる。
【0034】
また、本第1実施形態のスピンドルブレーキ装置20では、スピンドルベルト12の張力を利用してブレーキシュー23をスピンドル11に押し付けるため、押し付けのための面倒な操作が不要であるとともに、安定した押し付け力をもってスピンドル11にブレーキシュー23を押し付けることができる。また、糸切れが発生していない通常時はブレーキ本体21がブレーキ待機位置P1に常時待機しているため、作業者は、スピンドルブレーキ用の工具を持ち歩いたり、その工具を取りに戻ったりしなくても、スピンドル11を素早く停止させて糸継ぎ作業を開始することができる。これにより、糸切れが発生してから糸継ぎ作業を終えるまでの所要時間を短縮することができる。よって、糸切れによる生産性の低下を抑制することが可能となる。また、スピンドルレール10の長手方向Xに並ぶ2つのスピンドル11の回転を、1つのスピンドルブレーキ装置20を用いて停止させることができる。これにより、1つのスピンドル11ごとに1つのスピンドルブレーキ装置を設ける場合に比べて、スピンドルブレーキ装置の必要個数を減らすことができる。
【0035】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る紡機のスピンドルブレーキ装置の構成を示す斜視図であり、図7は、該スピンドルブレーキ装置の構成を示す側面図である。なお、図6および図7においては、スピンドルベルト12の表示を省略している。また、本第2実施形態においては、上記第1実施形態の構成と同様または対応する部分に同じ符号を付して説明する。
本第2実施形態に係るスピンドルブレーキ装置20においては、案内部としてスピンドルレール10に形成されるガイド溝31,32の形状と、これに嵌まり込むブレーキ本体121の形状と、ブレーキ本体121にブラケット35が取り付けられている点が、上記第1実施形態と異なる。
【0036】
ガイド溝31は、スピンドルレール10の幅方向Yから見て、断面矩形に形成され、ガイド溝32も断面矩形に形成されている。これに対して、ブレーキ本体121のボトムブロック部128は、スピンドルレール10の幅方向Yから見て矩形に形成されている。また、スピンドルレール10の幅方向Yにおいて、ガイド溝31の幅寸法はガイド溝32の幅寸法と同一に設定され、ボトムブロック部128の幅寸法は、ガイド溝31の幅寸法よりも僅かに小さく設定されている。そして、ブレーキ待機位置P1では、図6に示すようにボトムブロック部128の下部がガイド溝31に嵌め込まれ、ブレーキ作動位置P2では、図8および図9に示すようにボトムブロック部128の下部がガイド溝32に嵌め込まれる構成になっている。
【0037】
ブラケット35は、略U字形の把持部36と、把持部36の中間部から延在する係合部37と、係合部37の延出端から直角に曲げられた係止部38とを一体に有している。把持部36は、ブラケット35の上部に形成されている。把持部36は、スピンドルレール10の長手方向Xでボトムブロック部128を両側から把持するように配置されている。把持部36は、ボトムブロック部128の両側で支持部材39により回動自在に支持されている。係合部37は、スピンドルレール10のガイド溝31に係合可能となるよう、ガイド溝31の幅寸法よりも僅かに小さい幅で形成されている。係合部37は、ブレーキ本体121をブレーキ待機位置P1に配置した際にガイド溝31と係合することにより、スピンドルレール10の長手方向Xでブレーキ本体121を位置決めする部分である。係止部38は、ブラケット35の下部に形成されている。係止部38は、ブレーキ本体121をブレーキ作動位置P2に配置した際にスピンドルレール10の下面側の被係止部10aに係止されることにより、スピンドルベルト12の張力によるブレーキ本体121の倒れを抑制する部分である。
【0038】
本第2実施形態に係るスピンドルブレーキ装置20において、ブレーキ本体121をブレーキ待機位置P1に配置する場合は、ブレーキ本体121のボトムブロック部128の下部をガイド溝31に嵌め込むとともに、ガイド溝31の端部にボトムブロック部128の端部を突き当てる。このとき、スピンドルレール10の幅方向Yにおけるブレーキ本体121の位置は、ガイド溝31の端部とボトムブロック部128の端部との突き当てにより決まる。また、スピンドルレール10の長手方向Xにおけるブレーキ本体121の位置は、図6および図7に示すように、ガイド溝31のエッジ部分にブラケット35の係合部37が係合することにより決まる。これにより、ブレーキ本体121がブレーキ待機位置P1に位置決めされる。このようにブレーキ本体121をブレーキ待機位置P1に配置した状態では、上記第1実施形態と同様に、スピンドルベルト12が、分離ローラ22と板壁部27との間を通して2つのスピンドル11に巻き掛けられる。このため、図示しないスピンドル駆動モータの駆動によってスピンドルベルト12が走行すると、スピンドルベルト12の走行に従って各々のスピンドル11が回転する。
【0039】
一方、ブレーキ本体121をブレーキ待機位置P1からブレーキ作動位置P2へと移動させる場合は、上記第1実施形態と同様に、作業者が取っ手24を握ってブレーキ本体121を手前側に引き込むことにより、ガイド溝31からブレーキ本体121を離脱させる。このとき、ブラケット35は、支持部材39の位置を中心に図7の半時計回り方向に回転する。次に、作業者は、取っ手24を握ったまま、図8および図9に示すようにボトムブロック部128の下部をガイド溝32に嵌め込むとともに、スピンドルベルト12の張力に従ってブレーキ本体121をガイド溝32の奥側に移動させることにより、ブレーキシュー23をスピンドルワーブ13の大径部13bに接触させる。このとき、スピンドルレール10の長手方向Xにおけるブレーキ本体121の位置は、ボトムブロック部128とガイド溝32との嵌合によって決まる。また、スピンドルレール10の幅方向Yにおけるブレーキ本体121の位置は、ブレーキシュー23がスピンドルワーブ13の大径部13bに突き当たることによって決まる。これにより、ブレーキ本体121がブレーキ作動位置P2に位置決めされる。このようにブレーキ本体121をブレーキ作動位置P2に配置した状態では、スピンドルベルト12が分離ローラ22に巻き掛けられるため、スピンドルベルト12からスピンドル11への動力伝達が断たれる。一方、ブレーキシュー23は、スピンドルベルト12の張力によって分離ローラ22に加えられる押し込み力により、スピンドルワーブ13の大径部13bに押し付けられる。このため、ブレーキシュー23とスピンドルワーブ13との接触面に生じる摩擦抵抗により、スピンドル11の回転を停止させることができる。
【0040】
また、上述のようにスピンドルベルト12の張力によって分離ローラ22に押し込み力が加えられると、その押し込み力によってブレーキ本体121のリア側R(図9参照)が持ち上げられ、ブレーキ本体121に倒れが生じることも考えられる。この点、本第2実施形態では、ブレーキ本体121をブレーキ作動位置P2に配置した際に、図9に示すように、ブラケット35の係止部38がスピンドルレール10に係止され、これによってブレーキ本体121の倒れが抑制される。したがって、作業者が取っ手24から手を離しても、分離ローラ22によってスピンドル11からスピンドルベルト12を分離させ、かつ、ブレーキシュー23をスピンドル11に押し付けた状態、すなわち図8の状態を維持することができる。よって、糸継ぎを作業者の手作業で行う場合、作業者は両手を自由に使って糸継ぎ作業を行うことができる。
【0041】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態に係るスピンドルブレーキ装置の要部の構成を示す斜視図である。なお、本第3実施形態においては、上記第1実施形態の構成と同様または対応する部分に同じ符号を付して説明する。
図10に示すように、ブレーキ本体221には位置決めピン41が設けられている。また、ブレーキ本体221のボトムブロック部228には、下向きに突出するように嵌合部30が一体に形成されている。嵌合部30は、ボトムブロック部228の最下部に一体に形成されている。嵌合部30は、スピンドルレール10のガイド溝31に嵌まり込む部分となる。位置決めピン41は、後述する位置決め孔に対して抜き差し可能に構成されている。位置決めピン41は、ブレーキ本体221のフロント側Fに突出して配置されている。また、位置決めピン41は、たとえば、圧入、接着等によってボトムブロック部228の嵌合部30に固定されている。位置決めピン41の先端部は、後述する位置決め孔に位置決めピン41を挿入しやすいよう、面取り加工等によって先細形状に形成されている。
【0042】
一方、スピンドルレール10には、図11に示すように、ブレーキ待機位置P1にガイド溝31が形成され、ブレーキ作動位置P2に位置決め孔42が形成されている。位置決め孔42は、ブレーキ本体221をスピンドルレール10の幅方向Yに移動可能に案内する案内部としてブレーキ作動位置P2に設けられたものである。位置決め孔42は、上述した位置決めピン41に対応してスピンドルレール10に形成されている。位置決め孔42は、上述した位置決めピン41を抜き差しできるよう、位置決めピン41の外径よりも僅かに大きな内径で形成されている。
【0043】
本第3実施形態に係るスピンドルブレーキ装置20において、ブレーキ本体221をブレーキ待機位置P1に配置する場合は、ボトムブロック部228の嵌合部30をガイド溝31に嵌め込むとともに、ガイド溝31の端部に嵌合部30の端部を突き当てる。このとき、スピンドルレール10の長手方向Xにおけるブレーキ本体221の位置は、嵌合部30とガイド溝31との嵌合によって決まる。また、スピンドルレール10の幅方向Yにおけるブレーキ本体221の位置は、ガイド溝31の端部と嵌合部30の端部との突き当てにより決まる。これにより、ブレーキ本体221がブレーキ待機位置P1に位置決めされる。このようにブレーキ本体221をブレーキ待機位置P1に配置した状態では、上記第1実施形態と同様に、スピンドルベルト12が、分離ローラ22と板壁部27との間を通して2つのスピンドル11に巻き掛けられる。このため、図示しないスピンドル駆動モータの駆動によってスピンドルベルト12が走行すると、スピンドルベルト12の走行に従って各々のスピンドル11が回転する。
【0044】
一方、ブレーキ本体221をブレーキ待機位置P1からブレーキ作動位置P2へと移動させる場合は、上記第1実施形態と同様に、作業者が取っ手24を握ってブレーキ本体221を手前側に引き込むことにより、ガイド溝31からブレーキ本体221を離脱させる。次に、作業者は、取っ手24を握ったまま、図12に示すように位置決めピン41を位置決め孔42に挿入するとともに、スピンドルベルト12の張力に従ってブレーキ本体221をガイド溝32の奥側に移動させることにより、ブレーキシュー23をスピンドルワーブ13の大径部13bに接触させる。このとき、スピンドルレール10の長手方向Xにおけるブレーキ本体221の位置は、位置決めピン41と位置決め孔42との嵌合によって決まる。また、スピンドルレール10の幅方向Yにおけるブレーキ本体221の位置は、ブレーキシュー23がスピンドルワーブ13の大径部13bに突き当たることによって決まる。これにより、ブレーキ本体221がブレーキ作動位置P2に位置決めされる。このようにブレーキ本体221をブレーキ作動位置P2に配置した状態では、スピンドルベルト12が分離ローラ22に巻き掛けられるため、スピンドルベルト12からスピンドル11への動力伝達が断たれる。一方、ブレーキシュー23は、スピンドルベルト12の張力によって分離ローラ22に加えられる押し込み力により、スピンドルワーブ13の大径部13bに押し付けられる。このため、ブレーキシュー23とスピンドルワーブ13との接触面に生じる摩擦抵抗により、スピンドル11の回転を停止させることができる。
【0045】
また、上述のようにスピンドルベルト12の張力によって分離ローラ22に押し込み力が加えられると、その押し込み力によってブレーキ本体221のリア側R(図12参照)が持ち上げられ、ブレーキ本体221に倒れが生じることも考えられる。この点、本第3実施形態では、ブレーキ本体221をブレーキ作動位置P2に配置した際に、位置決めピン41が位置決め孔42に挿入され、これによってブレーキ本体221の倒れが抑制される。したがって、作業者が取っ手24から手を離しても、分離ローラ22によってスピンドル11からスピンドルベルト12を分離させ、かつ、ブレーキシュー23をスピンドル11に押し付けた状態を維持することができる。よって、糸継ぎを作業者の手作業で行う場合、作業者は両手を自由に使って糸継ぎ作業を行うことができる。
【0046】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0047】
たとえば、上記実施形態においては、分離ローラ22を2つのローラ22a,22bによって構成したが、本発明はこれに限らず、分離ローラ22を構成するローラの数は1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0048】
また、上記第1実施形態においては、ブレーキ本体21の半円形状の切り欠きに倣ってブレーキシュー23を円弧状に形成したが、ブレーキシュー23の形状は円弧状に限らず、スピンドル11のスピンドルワーブ13に接触可能な形状であれば、どのような形状であってもよい。一例を挙げると、ブレーキシュー23の形状はV字形であってもよい。この点は、上記第2実施形態および上記第3実施の形態においても同様である。
【符号の説明】
【0049】
10 スピンドルレール、11 スピンドル、12 スピンドルベルト、20 スピンドルブレーキ装置、21,121,221 ブレーキ本体、22 分離ローラ、23 ブレーキシュー、29 突起部、31,32 ガイド溝(案内部)、35 ブラケット、37 係合部、38 係止部、41 位置決めピン、42 位置決め孔、P1 ブレーキ待機位置、P2 ブレーキ作動位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12