(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】検知装置、移動体システム、及び検知方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2020561223
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044632
(87)【国際公開番号】W WO2020129484
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2018238694
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】吉武 直毅
(72)【発明者】
【氏名】松浦 圭記
(72)【発明者】
【氏名】鶴亀 宜崇
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-196033(JP,A)
【文献】特開2013-238911(JP,A)
【文献】特開2004-046426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周辺環境における死角内の物体を検知する検知装置であって、
前記移動体から前記周辺環境までの距離を示す距離情報を取得する測距部と、
前記死角内の物体を検知する検知部と、
前記検知部の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記測距部によって取得された距離情報に基づいて、前記周辺環境における死角を検出し、
検出された死角までの距離に応じて、当該死角内の物体を前記検知部に検知させる精密度を制御する
検知装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記死角までの距離が大きいほど、前記精密度を小さく設定する
請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記死角までの距離が所定値よりも大きいときには前記死角内の物体の検知を行わないように、前記検知部を制御する
請求項1又は2に記載の検知装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記移動体の進行方向と直交する方向における前記移動体と前記死角間の距離が大きいほど、前記精密度を小さく設定する
請求項1~3のいずれか1項に記載の検知装置。
【請求項5】
前記移動体の速度を取得する速度取得部をさらに備え、
前記制御部は、前記速度に応じた前記移動体の制動距離、及び前記死角までの距離に基づき、前記精密度を設定する
請求項1~4のいずれか1項に記載の検知装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記移動体の進行方向と前記移動体から前記死角に向かう方向間の角度、及び前記死角までの距離に基づき、前記精密度を設定する
請求項1~5のいずれか1項に記載の検知装置。
【請求項7】
前記制御部は、複数の死角が検出されたとき、前記複数の死角のうちのより近い死角を優先して、当該死角内の物体を前記検知部に検知させる
請求項1~6のいずれか1項に記載の検知装置。
【請求項8】
前記検知部は、前記移動体から前記死角に、波の特性を有する出力信号を放射し、放射した出力信号の反射波において前記死角から到達する波の成分に基づいて、前記死角内の物体を検知する
請求項1~7のいずれか1項に記載の検知装置。
【請求項9】
前記精密度は、前記検知部における前記出力信号の大きさ、時間間隔、指向性、周波数帯域、信号長のうちの少なくとも1つに対応して設定される
請求項8に記載の検知装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の検知装置と、
前記移動体に搭載され、前記検知装置による前記死角内の物体の検知結果に応じた動作を実行する制御装置と
を備える移動体システム。
【請求項11】
移動体の周辺環境における死角内の物体を検知する検知方法であって、
測距部が、前記移動体から前記周辺環境までの距離を示す距離情報を取得するステップと、
制御部が、前記距離情報に基づいて、前記周辺環境における死角を検出するステップと、
前記制御部が、検出された死角までの距離に応じて、当該死角内の物体を検知部に検知させる精密度を制御するステップと、
前記検知部が、前記精密度において、前記死角内の物体を検知するステップと
を含む検知方法。
【請求項12】
請求項11に記載の検知方法を制御部に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体から周辺の物体を検知する検知装置、検知装置を備えた移動体システム、及び検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車又はAGV(自動搬送車)などの移動体に搭載され、移動体の周辺を監視する技術が提案されている(例えば特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1は、自車両前方の障害物を認識する障害物認識装置を開示している。特許文献1の障害物認識装置は、カメラ及びレーダを含み、自車両に対する死角領域を検出し、検出された死角領域の広さに基づいて、死角領域に存在する可能性のある障害物の属性を推定している。障害物認識装置は、死角領域に存在する可能性のある障害物の属性が歩行者であると推定されたときに当該死角領域をカメラに探索させ、同障害物の属性が他車両であると推定されたときには当該死角領域をレーダに探索させている。
【0004】
特許文献2は、自車両周辺の走行環境を的確に推定することを目的とした車両環境推定装置を開示している。特許文献2の車両環境推定装置は、自車両の周辺の他車両の挙動を検出し、当該車両の挙動に基づいて、自車両からの死角領域を走行する別の車両の存在を推定している。このように、自車両では認識できないが周辺の他車両によって認識できる車両走行環境の推定が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-242860号公報
【文献】特開2010-267211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、カメラ等による死角領域内の探索の前に予め、当該領域の広さに基づいて当該領域の中に在り得る物体が歩行者か他車両かを推定している。特許文献2では、自車両周辺の検出結果に基づいて、死角領域内についての推定が行われている。しかしながら、そもそも死角内を検知する必要がある状況なのか、或いはその必要性が高いのか低いのかについては推定されておらず、従来技術では、死角内の物体の検知を、状況に応じて効率良く行うことは困難であった。
【0007】
本開示の目的は、移動体の周辺環境における死角内の物体の検知を効率良くすることができる検知装置、検知方法及び移動体システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る検知装置は、移動体の周辺環境における死角内の物体を検知する。検知装置は、測距部と、検知部と、制御部とを備える。測距部は、移動体から周辺環境までの距離を示す距離情報を取得する。検知部は、死角内の物体を検知する。制御部は、検知部の動作を制御する。制御部は、測距部によって取得された距離情報に基づいて、周辺環境における死角を検出する。制御部は、検出された死角までの距離に応じて、当該死角内の物体を検知部に検知させる精密度を制御する。
【0009】
本開示の一態様に係る移動体システムは、上記の検知装置と、移動体に搭載され、検知装置による死角内の物体の検知結果に応じた動作を実行する制御装置とを備える。
【0010】
本開示の一態様に係る検知方法は、移動体の周辺環境における死角内の物体を検知する方法である。本方法は、測距部が、移動体から周辺環境までの距離を示す距離情報を取得するステップと、制御部が、距離情報に基づいて、周辺環境における死角を検出するステップとを含む。本方法は、制御部が、検出された死角までの距離に応じて、当該死角内の物体を検知部に検知させる精密度を制御するステップと、検知部が、精密度において、死角内の物体を検知するステップとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る検知装置、移動体システム、及び検知方法によると、移動体の周辺環境における死角内の物体の検知を効率良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示に係る検知装置の適用例を説明するための図
【
図2】検知装置の適用例における移動体の、
図1とは別の状況を例示する図
【
図3】本開示の実施形態1に係る移動体システムの構成を例示するブロック図
【
図4】実施形態1に係る検知装置の動作を説明するためのフローチャート
【
図5】検知装置における距離情報の一例を説明するための図
【
図6】実施形態1に係る検知装置の動作を説明するための図
【
図7】検知装置における距離情報の変形例を説明するための図
【
図8】実施形態1に係るセンシング密度の設定処理を例示するフローチャート
【
図9】実施形態1に係るセンシング密度の設定処理を説明するための図
【
図10】検知装置による死角物体の検知処理を例示するフローチャート
【
図11】検知装置による死角物体の検知処理を説明するための図
【
図12】検知装置による危険度の判定処理を例示するフローチャート
【
図13】検知装置による危険度の判定処理を説明するための図
【
図14】実施形態2に係るセンシング密度の設定処理を例示するフローチャート
【
図15】実施形態2に係るセンシング密度の設定処理を説明するための図
【
図16】実施形態3に係る検知装置の動作を説明するためのフローチャート
【
図17】実施形態1の変形例に係るセンシング密度の設定処理を例示するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本開示に係る検知装置及び方法、並びに移動体システムの実施の形態を説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0014】
(適用例)
本開示に係る検知装置及び方法、並びに移動体システムが適用可能な一例について、
図1,2を用いて説明する。
図1は、本開示に係る検知装置1の適用例を説明するための図である。
図2は、本適用例における移動体の、
図1とは別の状況を例示する図である。
【0015】
本開示に係る検知装置1は、例えば車載用途に適用可能であり、自動車等の移動体において移動体システムを構成する。
図1では、検知装置1が搭載された車両2の走行状態を例示している。本適用例に係る移動体システムは、例えば、検知装置1を用いて走行中の自車両2の周りで移り変わる周辺環境を監視する。周辺環境は、例えば自車両2周辺に存在する建物及び電柱などの構造物、並びに歩行者及び他車両などの動体といった各種物体を含む。
【0016】
図1の例では、交差点3近傍における構造物の壁31によって、自車両2から監視可能な範囲が遮られ、死角が生じている。死角は、自車両2等の移動体から、周辺環境に応じて幾何学的に直接視できない場所を示す。本例において、自車両2から死角となる領域である死角領域R1には、横道から交差点3に接近する別の車両4が存在している。上記のような場合、死角からの車両4と自車両2とが、出会い頭に衝突するような事態が懸念される。
【0017】
そこで、本実施形態の検知装置1は、例えば車両4のように死角領域R1に内在する物体(以下「死角物体」という場合がある)の検知を実行して、死角物体4の検知結果に基づき危険度を判定する。危険度は、例えば自車両2と死角物体4とが衝突を起こす可能性に関する。検知装置1は、危険度の判定結果に応じて、出会い頭の衝突等を回避させる警告のための運転支援或いは運転制御の各種制御を行うことができる。
【0018】
図2では、自車両2と死角との位置関係が
図1の交差点3とは異なる状況の一例として、当該交差点3よりも、壁31と道路との間隔が大きく、見通しの良い交差点3’を例示している。例えば、自車両2に対して
図1の死角物体4と同様の位置関係にある車両4’は、本例では死角領域R1の外部に位置し、死角内の検知を行わずとも視認可能である。
【0019】
図2の例では、自車両2から死角までの距離が、
図1の例よりも遠くなっている。死角が自車両2から遠いことにより、死角内(死角領域R1の内部)に物体が存在したとしても、当該物体が自車両2に衝突する可能性は充分に低いと想定される場合がある。このような場合にも死角内の検知が
図1等の場合と同程度に精密に実行されると、検知結果から得られる危険度が低い割に精密な検知による処理負荷がかかってしまい、非効率的である。
【0020】
そこで、本実施形態の検知装置1は、死角までの距離に応じて、当該死角内の検知のための精密度を制御する。精密度は、検知装置1が死角領域R1における死角物体4を検知する際の精密さの程度を示す(以下では「センシング密度」ともいう)。検知装置1におけるセンシング密度の制御により、出会い頭の衝突等の可能性が低い状況では処理負荷を低減し、死角物体4の検知を効率良く行うことができる。また、過剰な警告等も回避でき、自車両2の運転を円滑にすることができる。
【0021】
(構成例)
以下、検知装置1を備えた移動体システムの構成例としての実施形態を説明する。
【0022】
(実施形態1)
実施形態1に係る移動体システムの構成および動作について、以下説明する。
【0023】
1.構成
本実施形態に係る移動体システムの構成を、
図3を用いて説明する。
図3は、本システムの構成を例示するブロック図である。
【0024】
本システムは、
図3に例示するように、検知装置1と、車両制御装置20とを備える。本実施形態の検知装置1は、レーダ11と、カメラ12と、制御部13とを備える。また、例えば検知装置1は、記憶部14と、ナビゲーション機器15と、車載センサ16とを備える。車両制御装置20は、自車両2に搭載された各種の車載機器を含み、例えば運転支援又は自動運転に用いられる。
【0025】
検知装置1において、レーダ11は、例えば、送信機11aと、受信機11bと、レーダ制御回路11cとを備える。レーダ11は、本実施形態における検知部の一例である。レーダ11は、例えば自車両2の走行方向における前方(
図1参照)に向けて信号の送受信を行うように、自車両2のフロントグリル又はフロントガラス等に設置される。
【0026】
送信機11aは、例えば可変指向性を有するアンテナ(フェイズドアレイアンテナ等)、及び当該アンテナに物理信号Saを外部送信させる送信回路などを含む。物理信号Saは、例えばミリ波、マイクロ波、ラジオ波、及びテラヘルツ波のうちの少なくとも1つを含む。レーダ11からの物理信号Saは、本実施形態の検知部による出力信号の一例である。
【0027】
受信機11bは、例えば可変指向性を有するアンテナ、及び当該アンテナにより外部から波動信号Sbを受信する受信回路などを含む。波動信号Sbは、物理信号Saの反射波を含むように、物理信号Saと同様の波長帯に設定される。なお、送信機11aと受信機11bとは、例えば共用のアンテナを用いてもよく、一体的に構成されてもよい。
【0028】
レーダ制御回路11cは、送信機11a及び受信機11bによる信号の送受信を制御する。レーダ制御回路11cは、例えば制御部13からの制御信号により、レーダ11による信号の送受信を開始したり、送信機11aから物理信号Saを放射する方向を制御したりする。また、レーダ制御回路11cは、送信機11aから周辺環境等の所定範囲を走査するように物理信号Saを放射させ、受信機11bの受信結果において、物理信号Saの反射波を示す波動信号Sbを検出する。
【0029】
レーダ11は、例えばCW(連続波)方式またはパルス方式などの変調方式に従って動作し、外部の物体の距離、方位および速度等の計測を行う。CW方式は、2波CW方式、FM-CW方式及びスペクトル拡散方式などを含む。パルス方式は、パルスドップラー方式であってもよいし、チャープ信号のパルス圧縮或いはPN系列のパルス圧縮を用いてもよい。レーダ11は、例えばコヒーレントな位相情報制御を用いる。レーダ11は、インコヒーレントな方式を用いてもよい。
【0030】
カメラ12は、例えば自車両2においてレーダ11から物理信号Saを放射可能な範囲と重畳する範囲を撮像可能な位置に設置される。例えば、カメラ12は、例えば自車両2前方(
図1参照)に向けて、自車両2フロントガラス等に設置される。検知装置1における死角は、カメラ12の設置位置を幾何学的な基準としてもよいし、レーダ11の設置位置を基準としてもよい。
【0031】
カメラ12は、設置位置から外部の画像を撮像して、撮像画像を生成する。カメラ12は、撮像画像を示す画像データを制御部13に出力する。カメラ12は、例えばRGB-Dカメラ、ステレオカメラ、又は距離画像センサである。カメラ12は、本実施形態における測距部(或いは監視部)の一例である。
【0032】
制御部13は、CPU、RAM及びROM等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。制御部13は、例えば、ECU(電子制御ユニット)により構成される。制御部13は、記憶部14に格納されたプログラムをRAMに展開し、RAMに展開されたプログラムをCPUにより解釈及び実行する。このように実現されるソフトウェアモジュールとして、例えば、制御部13は、死角推定部131、死角物体計測部132および危険度判定部133を実現する。各部131~133については後述する。
【0033】
記憶部14は、制御部13で実行されるプログラム、及び各種のデータ等を記憶する。例えば、記憶部14は、後述する構造情報D1を記憶する。記憶部14は、例えば、ハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブを含む。また、RAM及びROMは、記憶部14に含まれてもよい。
【0034】
上記のプログラム等は、可搬性を有する記憶媒体に格納されてもよい。記憶媒体は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラム等の情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。検知装置1は、当該記憶媒体からプログラム等を取得してもよい。
【0035】
ナビゲーション機器15は、例えば地図情報を格納するメモリ、及びGPS受信機を含む測距部(監視部)の一例である。車載センサ16は、自車両2に搭載された各種センサであり、例えば車速センサ、加速度センサ、及びジャイロセンサなどを含む。車載センサ16は、自車両2の速度、加速度および角速度などを検出する。
【0036】
以上のような構成は一例であり、検知装置1は上記の構成に限られない。例えば、検知装置1は、ナビゲーション機器15及び車載センサ16を備えなくてもよい。また、検知装置1の制御部13は、上記各部131~133を別体で実行する複数のハードウェア資源で構成されてもよい。制御部13は、CPU、MPU、GPU、マイコン、DSP、FPGA、ASIC等の種々の半導体集積回路で構成されてもよい。
【0037】
車両制御装置20は、本実施形態における移動体システムの制御装置の一例である。車両制御装置20は、例えば、車両駆動部21、及び報知器22を含む。車両駆動部21は、例えばECUで構成され、自車両2の各部を駆動制御する。例えば、車両駆動部21は、自車両2のブレーキを制御し、自動ブレーキを実現する。
【0038】
報知器22は、画像又は音などにより、ユーザに各種情報を報知する。報知器22は、例えば自車両2に搭載された液晶パネル又は有機ELパネルなどの表示装置である。報知器22は、警報等を音声出力する音声出力装置であってもよい。
【0039】
本実施形態の検知装置1において、検知部は、レーダ11と制御部13(死角物体計測部132)との協働によって構成されてもよい。また、測距部についても、制御部13との協働により構成されてもよい。
【0040】
2.動作
以上のように構成される移動体システム及び検知装置1の動作について、以下説明する。
【0041】
本実施形態に係る移動体システムは、例えば自車両2の運転中に、周辺環境を監視するように、検知装置1を動作させる。本システムの車両制御装置20は、検知装置1による検知結果に基づき、自車両2の運転支援又は自動運転等のための各種制御を行う。
【0042】
本実施形態の検知装置1は、例えばカメラ12において自車両2周辺の画像を撮像して、自車両2の周辺環境を監視する。検知装置1の死角推定部131は、例えば監視結果の各種距離を示す距離情報などに基づき、現在の周辺環境において死角が推定される領域を逐次、検出する。
【0043】
検知装置1において、死角推定部131により死角が発見されると、死角物体計測部132は、レーダ11を用いて死角領域R1の内部状態を計測する。自車両2のレーダ11から放射される物理信号Saは、波動的な性質を有することから、多重の反射或いは回折等を起こして死角領域R1中の死角物体4に到り、さらに自車両2にまで戻って来るという伝搬を生じ得ると考えられる。本実施形態の検知装置1は、上記のように伝搬する波を活用して、死角物体4を検知する。
【0044】
本実施形態の危険度判定部133は、死角物体計測部132の計測結果に基づいて、死角領域R1に内在し得る死角物体4についての危険度を判定する。危険度は、例えば死角物体4と自車両2間の衝突等の可能性が考えられる程度を示す。
【0045】
例えば、警告を要すると考えられる危険度が検知装置1において判定されると、本システムは、報知器22によって運転者等に報知したり、車両駆動部21によって自動ブレーキ等の安全性を高めるための車両制御を実行したりすることができる。
【0046】
本実施形態の検知装置1は、上記のような検知方法においてレーダ11に死角領域R1内の検知を実行させる際の精密度であるセンシング密度を動的に設定する。本システムにおける検知装置1の動作の詳細を、以下説明する。
【0047】
2-1.検知装置の動作
本実施形態に係る検知装置1の動作について、
図4~7を用いて説明する。
【0048】
図4は、本実施形態に係る検知装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
図4のフローチャートに示す各処理は、検知装置1の制御部13によって実行される。本フローチャートは、例えば車両2の運転中に、所定の周期で開始される。
【0049】
まず、制御部13は、カメラ12から1又は複数フレームの撮像画像を取得する(S1)。ステップS1において、制御部13は、撮像画像として距離画像を取得してもよいし、取得した撮像画像に基づき距離画像を生成してもよい。距離画像は、周辺環境を監視するための各種距離を示す距離情報の一例である。
【0050】
次に、制御部13は、取得した撮像画像に、周辺監視のための各種画像解析を行う(S2)。例えば、制御部13は、現在の自車両2の周辺環境に関する構造情報D1を生成する。構造情報D1は、周辺環境における種々の物体構造を示す情報であり、例えば、各種構造物までの距離を含む。また、制御部13は、ステップS2において死角推定部131としても動作し、取得した撮像画像の画像解析により死角の検出も行う。
図5に、ステップS2の解析対象の画像を例示する。
【0051】
図5は、例えば距離画像として自車両2から撮像されており(S1)、交差点3近傍で複数の構造物による壁31,32を映している。本例では、自車両2近傍の壁31の遮蔽により、当該壁31よりも奥側に死角領域R1が存在している。また、死角領域R1よりも奥側の壁32が、自車両2に対向している。以下、壁31を「遮蔽壁」といい、壁32を「対向壁」という。遮蔽壁31と対向壁32との間には、死角領域R1と外部との境界が形成される(
図1参照)。
【0052】
ステップS2において、制御部13は、例えば構造情報D1として距離画像における各種壁31,32の距離値を画素毎に抽出し、記憶部14に保持する。
図5の場合の距離値は、方向d1に沿って自車両2側から遮蔽壁31の分、連続的に変化しながら、遮蔽壁31の端部(即ち死角端31a(
図9))から対向壁32に到ると不連続に変化することとなる。制御部13は、上記のような距離値の変化を解析して、死角領域R1の存在を推定できる。
【0053】
図4に戻り、死角推定部131としての制御部13は、例えば画像解析による推定結果に従って、現在の自車両2の周辺環境に、死角領域R1が検出されたか否かを判断する(S3)。制御部13は、死角領域R1が検出されなかったと判断すると(S3でNO)、例えば周期的にステップS1~S3の処理を繰り返す。
【0054】
制御部13は、例えば死角領域R1が検出されたと判断すると(S3でYES)、センシング密度の設定処理を行う(S4)。センシング密度の設定処理は、当該死角領域R1内の検知におけるセンシング密度を設定する処理である。本実施形態において、ステップS4の処理は、例えば死角端31aまでの距離が遠いほど、センシング密度を低く設定する。ステップS4の処理の詳細については後述する。
【0055】
例えば「0」よりも大きいセンシング密度が設定された場合(S5でYES)、制御部13は、設定されたセンシング密度において、死角物体の検知処理を実行する(S6)。本実施形態では、レーダ11の波動信号Sbにおける多重反射波を活用して、死角領域R1中の死角物体4を検知する。
【0056】
ステップS6において、制御部13は、例えば
図5の解析結果に基づいて、レーダ11から死角領域R1の境界近傍となる対向壁32等の範囲を走査するように物理信号Saを放射させる。
図6(a),(b)に、それぞれ死角物体4がない場合とある場合におけるステップS6の物理信号Saの伝搬経路を例示する。
【0057】
図6(a)の例において、自車両2のレーダ11からの物理信号Saは、横道の死角領域R1を介して対向壁32と反対側の壁35との間で反射を繰り返し、多重反射波として伝搬している。
図6(a)の例では、死角物体4がないことに対応して、多重反射波は自車両2に向かって来ない。
【0058】
一方、
図6(b)の例では、死角物体4が存在することから、レーダ11からの物理信号Saは、各々の壁32,33に加えて死角物体4でも反射して、自車両2に向かう多重反射波Rb1となり得る。よって、レーダ11で受信される波動信号Sbには、死角物体4の情報を有する多重反射波Rb1の信号成分が含まれることとなる。
【0059】
多重反射波Rb1(
図6(b))の信号成分は、ドップラーシフト、位相及び伝搬時間により、反射元の死角物体4の速度および伝搬経路の長さに応じた情報を有している。死角物体の検知処理(S6)は、このような信号成分を解析することにより、多重反射波Rb1を反射した死角物体4の速度及び位置等を検知する。ステップS6の処理の詳細については後述する。
【0060】
図4に戻り、制御部13は、死角物体4の検知結果(S6)に基づいて危険度の判定処理を行う(S7)。危険度の判定処理は、例えば、検知された死角物体4に関する警告の要否を危険度として判定し、判定結果に応じて車両制御装置20に各種の制御信号を出力する。ステップS7において警告を要すると判定された場合、制御部13は、報知器22に警告を報知させたり、車両駆動部21を制御したりするための制御信号を生成する。
【0061】
ステップS6において死角物体4の動き、距離、種類及び形状等の情報が検知される場合、ステップS7ではこれらの情報を用いて危険度が判定されてもよい。ステップS7の処理の詳細については後述する。
【0062】
制御部13は、例えば制御信号を出力する(S8)と、
図4のフローチャートに示す処理を終了する。
【0063】
また、ステップS4においてセンシング密度が「0」に設定された場合(S5でYES)、制御部13は、死角物体の検知処理(S6)等を行わずに、本フローチャートによる処理を終了する。制御部13は、例えば所定周期の期間経過後、本フローチャートを再度、実行する。
【0064】
以上の処理によると、検知装置1は自車両2の周辺監視を行いながら(S1~S3)、死角が発見されると(S3でYES)、死角物体4を検知して(S6)、危険度に応じて各種のアクションを行うことができる(S7)。この際、死角までの距離が遠いほど死角物体の検知処理(S6)のためのセンシング密度が低く設定されることにより(S4)、処理効率を良くすることができる。
【0065】
以上の処理では、周辺監視にカメラ12を用いたが、ナビゲーション機器15を用いてもよい。本変形例を
図7に示す。ナビゲーション機器15は、例えば
図7に示すように、自車両2の周辺環境の地図情報D2において、自車両2までの各種距離を計算し、自車両2の現在位置を監視する。制御部13は、以上のようなナビゲーション機器15の監視結果を、
図4の各種処理に用いることができる。制御部13は、ナビゲーション機器15の監視結果に基づいて、例えば地図情報D2中の構造物30に基づき、構造情報D1を取得したり、死角領域R1を検出したりすることができる(S2)。また、制御部13は、
図4の処理において適宜、車載センサ16の検出結果を用いてもよい。
【0066】
以上の処理において、例えば周辺監視において死角外に障害物が検出された場合(S2)、制御部13は、死角外の障害物に関して危険度を判定し、判定結果に応じて各種警告を行ってもよい。
【0067】
2-2.センシング密度の設定処理
センシング密度の設定処理(
図4のS4)について、
図8~9を用いて説明する。
【0068】
図8は、本実施形態に係るセンシング密度の設定処理を例示するフローチャートである。
図9は、本実施形態に係るセンシング密度の設定処理を説明するための図である。
図8のフローチャートによる処理は、
図4のステップS4において、制御部13によって実行される。
【0069】
まず、制御部13は、
図4のステップS3で検出された死角に関して、死角までの距離を算出する(S11)。
図9では、自車両2から死角端31aに向いた死角方向d10と、自車両2の進行方向d11と、進行方向d11に直交する横断方向d12とを例示している。例えば、制御部13は、
図4のステップS1,S2で得られた距離情報に基づいて、死角端31aを基準として死角方向d10における距離Lを算出する。
【0070】
次に、制御部13は、算出した距離Lが、予め設定された上限値を超えるか否かを判断する(S12)。当該上限値は、例えば死角物体4と自車両2との衝突の可能性から死角物体4を検知する必要があると想定される距離の範囲の上限を示す値である(例えば120m)。
【0071】
制御部13は、距離Lが上限値を超えると判断すると(S12でYES)、センシング密度を「0」に設定して(S13)、
図4のステップS4の処理を終了する。この場合、制御部13は、その後のステップS5において「YES」に進み、死角物体の検知処理(S6)は省略される。
【0072】
一方、制御部13は、距離Lが上限値を超えないと判断すると(S12でNO)、「0」よりも大きい範囲においてセンシング密度を設定する(S14~S16)。以下では、二段階のレベルM1,M2から距離Lに応じてセンシング密度を設定する処理例を説明する。
【0073】
例えば、制御部13は、距離Lが予め設定された基準値を超えるか否かを判断する(S14)。当該基準値は、上記の上限値よりも小さい正値において、例えば距離Lに応じて死角物体4の検知を精密に行う要否を考慮して設定される。
【0074】
制御部13は、距離Lが基準値を超えないと判断すると(S14でNO)、センシング密度を標準レベルM2に設定する(S15)。標準レベルM2は、死角物体4を精密に検知する際の標準的なセンシング密度を示す。
【0075】
一方、制御部13は、距離Lが基準値を超えると判断すると(S14でYES)、センシング密度を低レベルM1に設定する(S16)。低レベルM1は、標準レベルM2よりも小さいセンシング密度を示す。
【0076】
制御部13は、センシング密度の設定を行う(S15,S16)と、
図4のステップS4の処理を終了する。この場合、制御部13は、その後のステップS5において「NO」に進み、死角物体の検知処理(S6)を実行する。
【0077】
以上の処理によると、自車両2から死角までの距離Lに応じて、死角物体4の検知のためのセンシング密度が動的に制御される。また、距離Lが充分に大きい場合には死角物体4の検知が行われないように制御される。これにより、検知装置1の処理効率を良くすることができる。
【0078】
以上の説明では、センシング密度が、二段階のレベルM1,M2から設定される例(S14~S16)を説明したが、これに限らず、例えば三段階以上のレベルから設定されてもよい。例えば、制御部13は、距離Lが小さい場合に応じて、標準レベルよりも高いレベルを用いてもよい。また、センシング密度は連続値において設定されてもよい。制御部13は逐次、距離Lに基づきセンシング密度を算出してもよい。
【0079】
また、以上の説明では、死角方向d10における距離Lを用いてセンシング密度を設定する例を説明した。本実施形態のセンシング密度設定処理はこれに限らず、例えば、横断方向d12における距離L2が用いられてもよい。
【0080】
図9に例示するように、自車両2の進行方向d11と死角方向d10とは角度θを成し、死角方向d10における距離Lは、進行方向d11における距離L1と、横断方向d12における距離L2とに、直交分解できる。制御部13は、例えば車載センサ16から自車両2の進行方向d11を取得することにより、距離Lと共に或いは別途、各種距離L1,L2及び角度θを算出できる(S11)。
【0081】
制御部13は、例えばステップS14の判断に、死角方向d10の距離Lの代わりに横断方向d12の距離L2を用いて、センシング密度の大きさを設定してもよい。横断方向d12の距離L2が充分に大きければ、交差点3等の見通しが良く、死角の影響は少ないと考えられる。そこで、制御部13は、横断方向d12の距離L2が大きい程、センシング密度を小さく設定する(S14,S16)。これによっても、検知装置1の処理効率を良くすることができる。センシング密度の設定は、双方の距離L,L2を用いて行われてもよい。
【0082】
2-3.死角物体の検知処理
死角物体の検知処理(
図4のS6)について、
図10~11を用いて説明する。
【0083】
図10は、本実施形態における死角物体の検知処理を例示するフローチャートである。
図11は、死角物体の検知処理を説明するための図である。
図10のフローチャートによる処理は、
図4のステップS6において、死角物体計測部132として動作する制御部13によって実行される。
【0084】
まず、死角物体計測部132としての制御部13は、センシング密度の設定処理(
図4のS4)で設定されたセンシング密度に応じて、死角領域R1に物理信号Saを放射するように、レーダ11を制御する(S21)。例えば、センシング密度が大きいほど、制御部13は、走査又は再計測のために物理信号Saの放射を繰り返す時間間隔を短くするように、レーダ11を制御する。
【0085】
ステップS21において、レーダ11は、物理信号Saを放射すると共に波動信号Sbを受信して、物理信号Saの反射波に基づく各種計測を行う。制御部13は、レーダ11から計測結果を取得する(S22)。
【0086】
制御部13は、取得したレーダ11の計測結果から、死角物体の解析対象とする信号成分を抽出するために、周辺環境からの反射波を示す環境成分を除去する(S23)。ステップS23の処理は、例えばステップS2で取得された構造情報D1を用いて行われる。
【0087】
例えば、
図11の例において、制御部13は、交差点3の構造情報D1を参照して交差点3の周囲の各種構造物からの直接反射による反射波を予測して、レーダ11の計測結果から予測結果の環境成分を差し引く(S23)。これにより、環境下の構造物による反射波の影響を低減し、死角の物体の信号成分のみを得易くできる。
【0088】
次に、制御部13は、環境成分の除去により得られた信号成分に基づいて、死角物体4を検知するための信号解析を行う(S24)。ステップS24の信号解析は、周波数解析、時間軸上の解析、空間分布および信号強度等の各種の解析を含んでもよい。
【0089】
ステップS24において、制御部13は、例えば波の伝搬経路が直線的と仮定すると波源が死角の(対向壁32の)向こう側に観測されるか否かを解析することにより、死角物体4の有無を判定する。例えば、死角物体4からの多重反射波の波源40は、
図11の例において、対向壁32よりも奥側にあるように観測され、構造情報D1から環境成分として予測されない位置にある。このような状況は、死角内の物体4からの波が、多重反射したことに起因すると推定できる。つまり、制御部13は、検知済みの死角の方位に、対向壁32を超える距離で反射波が観測される場合、死角物体4があると判定できる。
【0090】
また、例えば死角物体4があると判定した場合、制御部13は、多重反射による屈曲が推定される伝搬経路に応じて、死角物体4までの距離および速度といった諸量の計測値を算出できる。例えば、制御部13は、構造情報D1において死角部分の道幅(死角領域R1の幅)を示す情報を用いることによって、
図11に例示するように、信号成分から分かる死角物体4までの経路長を折り返すように補正して、より実際の位置に近い死角物体4の位置を算出することができる。
【0091】
制御部13は、死角物体4の信号解析(S24)の後、
図4のステップS6の処理を終了する。その後、制御部13は、信号解析された死角物体4についての危険度の判定処理(
図4のS7)を実行する。
【0092】
以上の処理によると、レーダ11の物理信号Saにおける多重反射の性質に基づき死角領域R1内部で生じた信号成分を利用して、死角物体4を検知することができる。
【0093】
ステップS21において、設定されたセンシング密度に応じて制御部13がレーダ11を制御する。これにより、例えばセンシング密度が低レベルM1に設定された場合(
図8のS16)、標準レベルM2(S15)の場合よりも処理負荷が低減でき、死角物体4の検知を効率良く行える。
【0094】
ステップS21におけるセンシング密度に応じた制御は上記に限らず、種々の制御であってもよい。例えば、制御部13は、センシング密度が大きいほど、レーダ11から放射する物理信号Saの出力の大きさ(即ち出力信号の大きさ)を増大させたり、物理信号Saを放射する指向性を鋭くしたりしてもよい。指向性の制御により、死角内の検知のための実質的な出力を向上したり、過剰に多重反射する成分を抑制したりすることができる。
【0095】
また、ステップS21において、制御部13は、センシング密度が大きいほど、物理信号Saの周波数帯域を広くしたり、物理信号Saの信号長を長くしたりしてもよい。周波数帯域の制御によると、例えば受信波における時間分解能を向上できる。信号長の制御によると、ドップラーシフトを解析するための周波数分解能を向上できる。
【0096】
ステップS23において、制御部13は、構造情報D1における死角近傍の交差点までの距離を参照して、交差点との直線距離に対する信号の往復伝搬時間以下で得られる受信波の信号成分を除去してもよい。このような受信波は直接反射波(即ち反射1回の波)であり、死角物体4の情報を含まないことから、解析対象から除外することができる。また、制御部13は、自車両2から見た死角の方位角に基づいて、死角から到来する反射波と他の角度から到来する反射波とを分離することもできる。
【0097】
ステップS23の処理は、必ずしも周辺環境の構造情報D1を用いなくてもよい。例えば、制御部13は、時間軸に沿って得た信号から、自車両2の位置変化を差し引いて、解析対象を動体に制限してもよい。本処理は、ステップS24の信号解析において行われてもよい。
【0098】
ステップS24において、制御部13は、解析対象の信号成分において、動体に反射したことによるドップラーシフト、或いは人間や自転車など特有の所作の揺らぎといった、特定の物体の所作により現れる特徴があるか否かを解析してもよい。また、制御部13は、空間的に広がりを持った面計測の信号分布が、自動車、自転車、人間などの特有の分布を持っているか、或いは反射強度により自動車大の金属体による反射が含まれるか等を解析してもよい。以上のような解析は、適宜組み合わせて行われてもよいし、個々を明示的に解析する代わりに、機械学習を用いて多次元の特徴量として解析されてもよい。
【0099】
2-4.危険度の判定処理
危険度の判定処理(
図4のS7)について、
図12~13を用いて説明する。
【0100】
図12は、危険度の判定処理を例示するフローチャートである。
図13は、危険度の判定処理を説明するための図である。
図12のフローチャートによる処理は、
図4のステップS7において、危険度判定部133として動作する制御部13によって実行される。
【0101】
まず、制御部13は、ステップS6における死角物体4の検知結果に基づいて、危険度指数Dを算出する(S31)。危険度指数Dは、検知された死角物体4と自車両2との間の衝突に関する危険度を判定するための指標を示す。例えば
図13に示すように、死角物体4が自車両2に近付く速度v
1が、危険度指数Dに設定できる。
【0102】
次に、制御部13は、例えば予め設定されたしきい値Vaを用いて、算出した危険度指数Dが、しきい値Vaを超えるか否かを判断する(S32)。しきい値Vaは、例えば死角物体4に関する警告が必要となる危険度指数Dの大きさを考慮して設定される。例えば、D=v1の場合に危険度指数Dがしきい値Vaを上回ると、制御部13は、ステップS32で「YES」に進む。
【0103】
制御部13は、危険度指数Dがしきい値Vaを超えると判断したとき(S32でYES)、警告を要する危険度の判定結果として、各種の警告制御を行う(S33)。警告制御は、報知器22に警告させたり、車両駆動部21に特定の制御を行わせたりするための制御信号を出力することを含む。
【0104】
制御部13は、警告制御を行うことにより(S33)、危険度の判定処理(
図4のS7)を終了する。
【0105】
一方、制御部13は、危険度指数Dがしきい値Vaを超えないと判断したとき(S32でNO)、警告は不要との判定結果として、特に警告制御(S33)を行わずに、
図4のステップS7を終了する。その後に制御部13は、例えば
図4のフローチャートを再度、実行する。
【0106】
以上の処理によると、死角物体4が自車両2或いは交差点3に近付く危険度が、対応する危険度指数Dに応じて判定される。例えば、警告の要否に応じた2値判定が行われる。
【0107】
なお、危険度の判定処理は2値判定に限らず、例えば警告の不要時に注意喚起の有無を判定する3値判定が行われてもよい。例えば、注意喚起用のしきい値Vb(<Va)を用いて、制御部13が、ステップS32で「NO」に進んだときにD>Vbか否かを判断してもよい。
【0108】
以上の処理において、危険度指数Dは速度v1に限らず、死角物体4に関する諸量(の計測値)により設定可能であり、例えば速度v1の代わりに加速度dv1/dtに設定されてもよい。
【0109】
また、危険度指数Dは、自車両2と死角物体4との間の距離Lhに設定されてもよい。距離Lhは、小さいほど自車両2と死角物体4間の衝突に関する危険度が高いと考えられる。そこで、例えばステップS32において、制御部13は、危険度指数D(=Lh)がしきい値Vaを下回るときに「YES」に進み、下回らないときには「NO」に進んでもよい。
【0110】
また、危険度指数Dは、諸量の組み合わせによって設定されてもよい。このような一例の危険度指数Dを次式(1)に示す。
D=|(L
h1-v
1Δt)+(L
h0-v
0Δt)| …(1)
上式(1)において、L
h1は、基準位置P0から死角物体4までの距離である(
図12)。基準位置P0は、例えば交差点の中心など、死角物体4と自車両2との衝突が想定される位置に設定される。Δtは、所定の時間幅であり、例えば自車両2が基準位置P0に到達するまでにかかることが予測される時間幅の近傍に設定される。L
h0は、基準位置P0から自車両2までの距離である。v
0は、自車両2の速度であり、車載センサ16等から取得可能である。
【0111】
上式(1)の危険度指数Dは、時間幅Δtの経過後に推定される、死角物体4と基準位置P0間の距離と、基準位置P0と自車両2間の距離との総和である(
図12)。上式(1)によると、危険度指数Dが所定値よりも小さくなると、自車両2と死角物体4とが同時に基準位置P0に到達する可能性が充分に高いといった推定が行える。このような推定に対応する危険度の判定として、上式(1)の場合、制御部13はD=L
hの場合と同様に、危険度指数Dがしきい値Vaを下回るときステップS32で「YES」に進み、下回らないとき「NO」に進んでもよい。
【0112】
また、危険度指数Dは、以下の式(2)又は式(2’)のように設定されてもよい。
D=Lh1-v1Δt …(2)
D=|Lh1-v1Δt| …(2’)
上記の各式(2),(2’)では、例えばΔt=Lh0/v0に設定される。時間幅Δtは、自車両2の速度v0の変動或いは基準位置P0の見積誤差などを考慮した許容範囲内で設定されてもよい。
【0113】
式(2)の危険度指数Dが所定値よりも小さいとき(負値を含む)、自車両2が基準位置P0に到達する前に死角物体4が自車両2前方を横切る可能性が充分に高いと推定できる。また、式(2’)の危険度指数D(式(2)の場合の絶対値)が所定値よりも小さいとき、自車両2と死角物体4とが同時に基準位置P0に存在する可能性が充分に高いと推定できる。以上のような推定に対応して、制御部13は、式(2)又は式(2’)の危険度指数Dを用いて、式(1)の場合と同様に危険度の判定を行うことができる。
【0114】
以上のような危険度の判定処理において、しきい値Vaは、自車両2及び死角物体4の状態に応じて、動的に変更されてもよい。例えば、上述したLh0が小さかったり、dv0/dt又はdv1/dtが大きかったり、或いは死角物体4が人間と推定される場合、危険度の判定をより厳格に行うべきと考えられる。そこで、このような場合が検知されると、制御部13は、例えば上式(1)の危険度指数Dに対して、しきい値Vaを大きくしてもよい。
【0115】
3.まとめ
以上のように、本実施形態に係る検知装置1は、移動体の一例である自車両2の周辺環境における死角内の物体、即ち死角物体4を検知する。検知装置1は、測距部としてのカメラ12と、検知部としてのレーダ11と、制御部13とを備える。カメラ12は、自車両2から周辺環境までの距離を示す距離情報を取得する。レーダ11は、死角内の物体を検知する。制御部13は、レーダ11の動作を制御する。制御部13は、取得された距離情報に基づいて、周辺環境における死角を検出する(S3)。制御部13は、検出された死角までの距離に応じて、当該死角内の物体を検知部に検知させる精密度、即ちセンシング密度を制御する(S4)。
【0116】
以上の検知装置1によると、死角までの距離に応じてセンシング密度を制御することにより、自車両2の周辺環境における死角内の物体の検知を効率良くすることができる。
【0117】
本実施形態の検知装置1において、制御部13は、例えば距離Lが大きいほど、センシング密度を小さく設定する(S14~S16)。死角が自車両2から遠いときには処理負荷を低減して、死角内の検知を効率良く行える。制御部13は、横断方向d12における自車両2と死角間の距離L2が大きいほど、センシング密度を小さく設定してもよい。
【0118】
本実施形態の検知装置1において、制御部13は、死角までの距離Lが所定の上限値よりも大きいときには死角物体4の検知を行わないように、レーダ11を制御する(S12~S13)。これにより、死角物体4と自車両2との衝突等の可能性が充分に小さいと想定される状況では死角物体4の検知を省略して、処理効率を良くすることができる。
【0119】
本実施形態の検知装置1において、レーダ11は、自車両2から周辺環境に、波の特性を有する出力信号として物理信号Saを放射し、放射した物理信号Saの反射波において死角から到達する波の成分に基づいて死角物体4を検知する。これにより、レーダ11からの物理信号Saにおける波の特性を活用して、自車両2から周辺環境における死角の中に存在する物体を検知することができる。活用する波は多重反射波に限らず、回折波或いは透過波を含んでもよい。
【0120】
本実施形態の検知装置1において、センシング密度は、レーダ11における出力信号の大きさ、時間間隔、指向性、周波数帯域、信号長のうちの少なくとも1つに対応して設定される(S21)。センシング密度に応じたレーダ11の各種パラメータの制御により、処理負荷の低減を実現できる。
【0121】
本実施形態の検知装置1において、制御部13は、周辺環境において死角領域R1を検知したとき、検知した死角領域R1に向けて物理信号Saを放射するように、レーダ11を制御してもよい(S21)。これにより、死角領域R1近傍に物理信号Saを集中させ、死角領域R1の中の死角物体4から多重反射波Rb1等を得やすくすることができる。なお、レーダ11からの物理信号Saは必ずしも死角領域R1に集中させなくてもよく、例えば、レーダ11が検出可能な範囲に適時、物理信号Saを放射してもよい。
【0122】
本実施形態の検知装置1は、周辺環境の物体構造を示す構造情報D1を記憶する記憶部14をさらに備えてもよい。制御部13は、構造情報D1を参照し、レーダ11の検出結果において死角領域R1から到達する波の成分を含んだ波動信号を解析してもよい。構造情報D1を用いることにより、死角物体4の検知を精度良くすることができる。制御部13は、カメラ12の検出結果に基づき構造情報D1を生成して、記憶部14に保持してもよい(S2)。構造情報D1を逐次、生成して、死角物体4を精度良く検知することができる。
【0123】
本実施形態に係る移動体システムは、検知装置1と、車両制御装置20とを備える。車両制御装置20は、自車両2に搭載され、検知装置1による死角物体4の検知結果に応じた動作を実行する。移動体システムは、検知装置1により、自車両2の周辺環境における死角内の物体の検知を効率良くすることができる。
【0124】
本実施形態に係る検知方法は、自車両2等の移動体の周辺環境における死角内の物体を検知する方法である。本方法は、測距部が、移動体から周辺環境までの距離を示す距離情報を取得するステップS1と、制御部13が、距離情報に基づいて、周辺環境における死角を検出するステップS2,S3とを含む。本方法は、制御部13が、検出された死角までの距離に応じて、当該死角内の物体を検知部に検知させるセンシング密度を制御するステップS4と、検知部が、センシング密度において、死角内の物体を検知するステップS6とを含む。
【0125】
本実施形態において、以上の検知方法を制御部13に実行させるためのプログラムが提供される。本実施形態の検知方法によると、自車両2等の移動体の周辺環境における死角内の物体の検知を効率良くすることができる。
【0126】
(実施形態2)
実施形態1では、距離Lを用いてセンシング密度を制御する動作例を説明した。本実施形態では、さらに、自車両2の速度を用いてセンシング密度を制御する検知装置1の動作について、説明する。
【0127】
図14は、実施形態2に係るセンシング密度の設定処理を例示するフローチャートである。
図15は、本実施形態に係るセンシング密度の設定処理を説明するための図である。
【0128】
本実施形態では、実施形態1(
図8)と同様の各処理に加えて、制御部13は、車載センサ16から自車両2の速度v
0を取得し(S17a)、例えば次式(20)により制動距離Laを算出する(S17b)。
【0129】
La=v0
2/(2×g×μ) …(20)
上式(20)において、gは重力加速度を示し、例えばg=9.8である。また、μは自車両のタイヤと走行中の路面間の摩擦係数を示す。摩擦係数μとしては、予め設定された値が用いられてもよいし、リアルタイムに摩擦係数μが計算されてもよい。例えば、制御部13は、車載センサ16等の検出結果に基づき摩擦係数μを計算できる。
【0130】
さらに、制御部13は、例えば
図15に示すように、検知対象の死角内に車両等の動体が存在した場合に自車両2と衝突することが予測される予測位置P20を算出し(S17c)、自車両2から予測位置P20までの予測距離L20を算出する(S17d)。例えば、制御部13は、リアルタイムに取得した構造情報D1に基づいて、予測位置P20、及び予測距離L20を算出できる。
【0131】
制御部13は、例えば予測距離L20が制動距離Laを超えるか否かを判断する(S17)。予測距離L20が制動距離Laを超える場合、自車両2は予測位置P20に到る前に停止可能である。そこで、制御部13は、例えば予測距離L20が制動距離Laを超えると判断した場合に(S17でYES)、「NO」の場合よりもセンシング密度を小さく設定する(S16)。この際、制御部13は、センシング密度を「0」に設定して、死角内の検知を行わないように制御してもよい。
【0132】
以上のように、本実施形態の検知装置1は、速度取得部の一例である車載センサ16をさらに備える。車載センサ16は、自車両2の速度v0を取得する。制御部13は、速度v0に応じた自車両2の制動距離La、及び死角までの距離に基づき、センシング密度を設定する。これにより、自車両2の制動距離Laを考慮して死角内の検知が行われ、安全性を向上することができる。
【0133】
(実施形態3)
実施形態3では、複数の死角を検出して、各々の死角内の検知のためのセンシング密度を制御する検知装置1の動作を説明する。
【0134】
図16は、実施形態3に係る検知装置1の動作を説明するためのフローチャートである。本実施形態の検知装置1において、制御部13は、
図4のフローチャートの代わりに、
図16のフローチャートを実行する。制御部13は、周辺監視の画像解析等により(S2)、複数の死角を検出可能である(S3)。
【0135】
本実施形態において複数の死角が検出された場合、制御部13は、例えば距離Lが近い死角から順番に、1つの死角を選択する(S41)。選択した死角に関して、制御部13は、上記と同様にステップS4~S7の処理を行う。ステップS7において警告制御が行われた場合(S7bでYES)、本処理を終了する。
【0136】
一方、警告制御が行われていない場合(S7bでNO)、未選択の死角があれば(S42でYES)、制御部13は、未選択の死角を新たに選択して(S41)、ステップS4以降の処理を行う。
【0137】
以上の処理によると、例えば自車両2の走行中に複数の死角が発見された場合、距離Lが近い死角から順番に(S41)、検知装置1が各々のセンシング密度においてレーダ11を用いて死角内の検知等を行う(S4~S7)。検知した死角についての危険度が、警告不要な程度に低い場合(S7bでNO)、次に近い距離Lを有する死角に対して検知が行われる(S42,S41)。
【0138】
以上のように、本実施形態の検知装置1において、制御部13は、複数の死角が検出されたとき、複数の死角のうちのより近い死角を優先して、当該死角内の物体をレーダ11に検知させる(S41~S42)。これにより、複数の死角に対して効率良く死角内を検知することができる。
【0139】
(他の実施形態)
上記の実施形態1では、センシング密度の設定処理(
図8)において距離Lを用いたが、さらに、自車両2の進行方向d11と死角方向d10との間の角度θ(
図9参照)を用いてもよい。本変形例について、
図17を用いて説明する。
図17は、本変形例に係るセンシング密度の設定処理を例示するフローチャートである。
【0140】
死角方向d10における距離Lが一定で上記の角度θが異なる場合、角度θが大きいほど進行方向d11の距離L1が小さくなる一方、横断方向d12の距離L2は大きくなる。この際、死角領域R1は横断方向d12において遠ざかることとなり、死角領域R1内部よりも自車両2から進行方向d11の延長線上などに注目すべきことが考えられる。
【0141】
そこで、
図17の例では、実施形態1(
図8)と同様の各処理に加えて、制御部13は、角度θが所定角度を超えるか否かを判断する(S18)。所定角度は、死角内を検知する要否の基準を示す角度であり、例えば45°など種々の角度に設定可能である。制御部13は、角度θが所定角度を超えると判断すると(S18でYES)、センシング密度を「0」に設定して(S13)、その後の死角物体の検知処理(
図4のS6)を省略することができる。本変形例の処理は、これに限らない。制御部13は、角度θが大きいほど、種々の方法でセンシング密度を小さく設定してもよい。
【0142】
以上のように、本実施形態において、制御部13は、自車両2の進行方向d11と自車両2から死角に向かう方向d11間の角度θ、及び死角までの距離Lに基づき、センシング密度を設定してもよい(S18)。これによっても、検知装置1による死角内の検知を効率良くすることができる。
【0143】
上記の各実施形態では、死角物体4の検知に多重反射波を活用したが、多重反射波に限らず、例えば回折波が活用されてもよい。例えば、死角物体4における反射波は、死角端31aにおいて回折し、回折波として自車両2に戻って来ることが考えられる。本実施形態の制御部13は、例えば死角端31aで回り込みを生じるように、レーダ11からの放射する物理信号Saの波長および方位を制御する。
【0144】
例えば可視光よりも波長が大きい物理信号Saを用いることによって、直進性の高い可視光等では各種の遮蔽物の存在により幾何学的に到達し得ない領域にも、信号を到達させることができる。また、死角物体4となり得る車両や人間などは通常丸みを帯びた形状をしていること等から、当該信号は完全反射的な経路だけではなく、放射された自車両2が存在する方向へも反射する。このような反射波が遮蔽壁31に対して回折現象を起こして伝搬することにより、解析対象の信号成分として回折波をレーダ11に受信させることができる。
【0145】
回折波の信号成分は死角物体4までの伝搬経路の情報と移動速度に応じたドップラー情報を有している。よって、同信号成分を信号解析することにより、実施形態1と同様に、信号成分の伝搬時間、位相及び周波数の情報から死角物体4の位置及び速度を計測可能である。この際、回折波の伝搬経路も、死角端31aまでの距離或いは各種の構造情報D1により、推定可能である。また、多重反射と回折が組み合わされた伝搬経路も適宜、推定でき、このような波の信号成分が解析されてもよい。
【0146】
上記の各実施形態では、レーダ11とカメラ12等とにより検出部及び測距部が別体で構成される例を説明したが、検知部及び測距部は、一体的に構成されてもよい。例えば、本変形例の検知装置1は、レーダ11によって、
図4のS1~S3と同様の周辺監視を行う。また、本変形例において死角が発見されると、制御部13は、例えばレーダ11の帯域を切替え制御し、死角で回り込みし易い帯域を用いてもよい。
【0147】
また、上記の各実施形態では、検知部及び測距部の一例としてレーダ11、カメラ12及びナビゲーション機器15を説明した。本実施形態の検出部はこれらに限らず、例えば検知部又は測距部がLIDARであってもよい。検知部から放射する物理信号Saは、例えば赤外線であってもよい。また、検知部又は測距部は、ソナーであってもよく、物理信号Saとして超音波を放射してもよい。これらの場合、検出部が受信する波動信号Sbは、対応する物理信号Saと同様に設定される。
【0148】
また、上記の各実施形態では、レーダ11及びカメラ12が自車両2前方に向けて設置される例を説明したが、レーダ11等の設置位置は特に限定されない。例えば、レーダ11等は、自車両2後方に向けて配置されてもよく、例えば移動体システムは駐車支援に用いられてもよい。また、レーダ11の個数も特に限定されず、例えば自車両2の両側方に設けられてもよい。例えば、複数のレーダ11のそれぞれを用いて別々の死角内が検知されてもよい。
【0149】
また、上記の各実施形態において、検知装置1は、物理信号Saによる波の特性を活用して、死角物体4の検知を行った。本実施形態において、死角物体4を検知する方法は、必ずしも上記の方法に限らず、各種の方法を採用してもよい。死角領域R1の中の物体4が各種の情報に基づき推定されてもよい。この場合であっても、死角までの距離に応じ子密度を制御することにより、処理効率を良くすることができる。
【0150】
また、上記の各実施形態では、移動体の一例として自動車を例示した。検知装置1が搭載される移動体は、特に自動車に限定されず、例えばAGV、サービスロボット或いはドローンであってもよい。例えば、検知装置1は、AGVの自動走行時に周辺監視を行い、死角中の物体を検知してもよい。
【0151】
(付記)
以上のように、本開示の各種実施形態について説明したが、本開示は上記の内容に限定されるものではなく、技術的思想が実質的に同一の範囲内で種々の変更を行うことができる。以下、本開示に係る各種態様を付記する。
【0152】
本開示に係る第1の態様は、移動体の周辺環境における死角内の物体を検知する検知装置(1)である。前記検知装置は、測距部(12)と、検知部(11)と、制御部(13)とを備える。前記測距部は、前記移動体から前記周辺環境までの距離を示す距離情報を取得する。前記検知部は、前記死角内の物体を検知する。前記制御部は、前記検知部の動作を制御する。前記制御部は、前記測距部によって取得された距離情報に基づいて、前記周辺環境における死角を検出する(S3)。前記制御部は、検出された死角までの距離に応じて、当該死角内の物体を前記検知部に検知させる精密度を制御する(S4)。
【0153】
第2の態様では、第1の態様の検知装置において、前記制御部は、前記死角までの距離が大きいほど、前記精密度を小さく設定する(S14~S16)。
【0154】
第3の態様では、第1又は第2の態様の検知装置において、前記制御部は、前記死角までの距離が所定値よりも大きいときには前記死角内の物体の検知を行わないように、前記検知部を制御する(S12~S13)。
【0155】
第4の態様では、第1~第3のいずれかの態様の検知装置において、前記制御部は、前記移動体の進行方向と直交する方向(d12)における前記移動体と前記死角間の距離(L2)が大きいほど、前記精密度を小さく設定する。
【0156】
第5の態様では、第1~第4のいずれかの態様の検知装置が、前記移動体の速度を取得する速度取得部(16)をさらに備える。前記制御部は、前記速度に応じた前記移動体の制動距離(La)、及び前記死角までの距離に基づき、前記精密度を設定する(S17)。
【0157】
第6の態様では、第1~第5のいずれかの態様の検知装置において、前記制御部は、前記移動体の進行方向と前記移動体から前記死角に向かう方向間の角度、及び前記死角までの距離に基づき、前記精密度を設定する(S18)。
【0158】
第7の態様では、第1~第6のいずれかの態様の検知装置において、前記制御部は、複数の死角が検出されたとき、前記複数の死角のうちのより近い死角を優先して、当該死角内の物体を前記検知部に検知させる(S41~S42)。
【0159】
第8の態様では、第1~第7のいずれかの態様の検知装置において、前記検知部は、前記移動体から前記死角に、波の特性を有する出力信号を放射し、放射した出力信号の反射波において前記死角から到達する波の成分に基づいて、前記死角内の物体を検知する。
【0160】
第9の態様では、第8の態様の検知装置において、前記精密度は、前記検知部における前記出力信号の大きさ、時間間隔、指向性、周波数帯域、信号長のうちの少なくとも1つに対応して設定される。
【0161】
第10の態様は、第1~第9のいずれかの態様の検知装置と、制御装置(20)とを備える移動体システムである。前記制御装置は、前記移動体に搭載され、前記検知装置による前記死角内の物体の検知結果に応じた動作を実行する。
【0162】
第11の態様は、移動体(2)の周辺環境における死角内の物体を検知する検知方法である。本方法は、測距部(12)が、前記移動体から前記周辺環境までの距離を示す距離情報を取得するステップ(S1)と、制御部(13)が、前記距離情報に基づいて、前記周辺環境における死角を検出するステップ(S2,S3)とを含む。さらに、本方法は、前記制御部が、検出された死角までの距離に応じて、当該死角内の物体を検知部に検知させる精密度を制御するステップ(S4)と、前記検知部(11)が、前記精密度において、前記死角内の物体を検知するステップ(S6)とを含む。
【0163】
第12の態様は、第11の態様の検知方法を制御部に実行させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0164】
1 検知装置
11 レーダ
12 カメラ
13 制御部
14 記憶部
15 ナビゲーション機器
16 車載センサ
2 自車両
20 車両制御装置