(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
H02M1/08 A
(21)【出願番号】P 2019100143
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】馬場 雄介
(72)【発明者】
【氏名】吉野 輝雄
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-107914(JP,A)
【文献】特開平07-231660(JP,A)
【文献】特開2000-307407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流または交流を他の形式の交流または直流に変換する電力変換器と、
前記電力変換器を制御するゲートパルスを生成する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
光ファイバケーブルを介して前記電力変換器に前記ゲートパルスを送信する発光回路および前記発光回路を駆動する駆動回路の直列回路と、
前記直列回路に並列に接続され、異常を検出したときに生成される異常検出信号によって導通する短絡スイッチと、
第1接続部および前記第1接続部よりも低電位を有する第2接続部を含み、前記第1接続部および前記第2接続部を介して前記直列回路および前記短絡スイッチに電力を供給する電源回路と、
を含み、
前記短絡スイッチは、
前記第1接続部と前記第2接続部との間に接続されたコンデンサと、
前記直列回路に並列に接続された第1導電形の第1トランジスタと、
前記第1接続部と前記第1トランジスタの制御端子との間に直列に接続され
た第2導電形の第2トランジスタと、
前記第2トランジスタの制御端子と前記第2接続部との間に接続され、前記異常検出信号を入力したときに導通する
前記第
1導電形の第3トランジスタと、
前記第1トランジスタの制御端子と前記第3トランジスタの制御端子との間に接続された抵抗器と、
を含む電力変換装置。
【請求項2】
前記短絡スイッチは、前記コンデンサから前記電源回路への電流流出を防止する逆流防止手段を含む請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電源回路は、電源の供給が遮断された場合に、所定の期間、前記第1接続部および前記第2接続部を介して、電力供給する停電補償回路を含み、
前記停電補償回路が動作した場合に、前記コンデンサの両端の電圧は、前記第1接続部および前記第2接続部の間に出力する電圧よりも高い値を維持する請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタおよび前記第3トランジスタは、絶縁ゲート型のトランジスタである請求項1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1導電形はn形であり、
前記第2導電形はp形である請求項4記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流と直流の間、あるいは直流間、交流間で電力を変換する電力変換器は、主幹制御装置や制御盤等の側で生成されるゲート信号により駆動され、制御される。変換器や制御装置等に不具合が生じ、ゲート信号が異常状態となった場合に、ゲート信号の出力を適切に停止して、電力変換装置全体を保護する必要がある。
【0003】
ゲート信号の異常時にゲート信号の出力を停止する保護回路には、小容量のサイリスタが用いられることがある。小容量のサイリスタは、応用される用途の縮小、需要の減少にともない、集約傾向にある。
【0004】
一方、上述のような電力変換装置は、運転年数が長く、製品寿命が長い場合がある。このような電力変換装置を修理し、あるいは将来にわたって安定してユーザに供給するには、ゲート信号の保護回路に集約傾向の電子部品を採用するのを避け、あるいは置き換えて利用できるようにすることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施形態は、サイリスタを用いないゲート信号の保護回路を備えた電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る電力変換装置は、直流または交流を他の形式の交流または直流に変換する電力変換器と、前記電力変換器を制御するゲートパルスを生成する制御装置と、を備える。前記制御装置は、光ファイバケーブルを介して前記電力変換器に前記ゲートパルスを送信する発光回路および前記発光回路を駆動する駆動回路の直列回路と、前記直列回路に並列に接続され、異常を検出したときに生成される異常検出信号によって導通する短絡スイッチと、第1接続部および前記第1接続部よりも低電位を有する第2接続部を含み、前記第1接続部および前記第2接続部を介して前記直列回路および前記短絡スイッチに電力を供給する電源回路と、を含む。前記短絡スイッチは、前記第1接続部と前記第2接続部との間に接続されたコンデンサと、前記直列回路に並列に接続された第1導電形の第1トランジスタと、前記第1接続部と前記第1トランジスタの制御端子との間に直列に接続された第2導電形の第2トランジスタと、前記第2トランジスタの制御端子と前記第2接続部との間に接続され、前記異常検出信号を入力したときに導通する前記第1導電形の第3トランジスタと、前記第1トランジスタの制御端子と前記第3トランジスタの制御端子との間に接続された抵抗器と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態では、サイリスタを用いないゲート信号の保護回路を備えた電力変換装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
【
図2】実施形態の電力変換装置の一部を例示する模式的な回路図である。
【
図3】実施形態の電力変換装置の動作を説明するための模式的な回路図である。
【
図4】実施形態の電力変換装置の動作を説明するための模式的な回路図である。
【
図5】実施形態の電力変換装置の動作を説明するための模式的な回路図である。
【
図6】比較例の電力変換装置の一部を例示する模式的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
図1に示すように、実施形態の電力変換装置10は、ゲート制御装置30を備える。電力変換装置10は、電力変換器20と、変換器制御装置70と、をさらに備える。
【0012】
ゲート制御装置(制御装置)30は、光ファイバケーブル42を介して電力変換器20に接続されている。電力変換器20は、たとえばサイリスタバルブである。ゲート制御装置30は、端子31cを含み、端子31cを介して変換器制御装置70に接続されている。
【0013】
なお、図示しないが、電力変換器20と変換器制御装置70は別の光ファイバケーブルによって接続されており、変換器制御装置70は、電力変換器20内のサイリスタや入出力される電圧の値や位相を検出し、これらにもとづいて、位相制御パルスを生成して、ゲート制御装置30に供給する。
【0014】
ゲート制御装置30は、端子31a,31bを含み、端子31a,31bを介して直流電圧を入力する。ゲート制御装置30は、端子31a,31b間に接続される直流電源によって動作し、変換器制御装置70によって生成された位相制御パルスを、光ファイバケーブル42を介して電力変換器20に供給するゲートパルスに変換する。
【0015】
ゲート制御装置30は、DC/DC電源回路32と、停電補償回路33と、ゲート電流調整回路34と、短絡スイッチ50と、監視回路36と、短絡スイッチ駆動回路38と、を含む。
【0016】
DC/DC電源回路(電源回路)32は、端子31a,31bに接続されており、端子31a,31bを介して直流電源が接続される。DC/DC電源回路32の出力には、停電補償回路33が接続されている。停電補償回路33の出力には、ゲート電流調整回路34が接続されている。ゲート電流調整回路(電源回路)34の出力は、短絡スイッチ50を介して、発光回路40および駆動回路39の直列回路に接続されている。
【0017】
DC/DC電源回路32は、端子31a,31bを介して入力された電源の直流電圧を、ゲート電流調整回路34を駆動する直流電圧および電流に変換して供給する。ゲート電流調整回路34は、駆動回路39によって駆動された発光回路40に、必要なパルス電流を供給する。
【0018】
停電補償回路33は、たとえば、バッテリや大容量のコンデンサを含んでおり、端子31a,31b間の直流電圧が遮断されたり、DC/DC電源回路32が正常な出力を出力できなくなったりしたときに、ゲート電流調整回路34以降の回路に、必要な期間内で動作を継続できる電力を供給する。
【0019】
短絡スイッチ50は、発光回路40および駆動回路39の直列回路に並列に接続されている。短絡スイッチ50は、短絡スイッチ駆動回路38を介して監視回路36からの信号によって動作する。監視回路36は、DC/DC電源回路32の入出力の電圧を監視し、これらに異常がある場合に異常検出信号を出力する。監視回路36は、位相制御パルス等も監視し、位相制御パルス等に位相が発生したときにも、異常検出信号を出力する。短絡スイッチ駆動回路38は、監視回路36が出力した異常検出信号を、短絡スイッチ50を動作させる信号に変換して、短絡スイッチ50に供給する。
【0020】
短絡スイッチ50は、監視回路36から異常検出信号が出力されると、導通することによって、発光回路40および駆動回路39の直列回路の両端を短絡する。そのため、ゲート電流調整回路34が出力する電流は、短絡スイッチ50でバイパスされ、発光回路40の発光が停止される。したがって、ゲートパルスが停止される。
【0021】
短絡スイッチ50が短絡状態を維持できる期間内には、ゲートパルスが停止され、その期間内に、たとえば電力変換装置10の保護連動により停止シーケンスが実行され、あるいは停止シーケンスが完了される。
【0022】
後に詳述するように、短絡スイッチ50が短絡状態を維持する期間は、停電補償回路33が出力を供給できる期間以上とすることができる。そのため、電力変換装置10の停止シーケンスを実行する十分な期間を確保することができる。
【0023】
通常の運転状態では、短絡スイッチ50は非導通状態である。通常の運転状態では、ゲート制御ロジック回路37が変換器制御装置70から供給される位相制御パルスにもとづいて、ゲート駆動信号を生成し、駆動回路39に供給する。駆動回路39は、ゲート駆動信号にもとづいて発光回路40に発光のための電流を流すように動作する。
【0024】
なお、図示しないが、監視回路36、ゲート制御ロジック回路37および短絡スイッチ駆動回路38は、DC/DC電源回路32および停電補償回路33からの電力供給によって動作する。つまり、異常検出信号が生成されるような異常を検出した場合には、これらの回路は、DC/DC電源回路32または停電補償回路33から供給される電力で動作するが、供給電力の低下により、動作を維持できなくなる場合がある。
【0025】
図2は、実施形態の電力変換装置の一部を例示する模式的な回路図である。
図2には、制御装置20が有する短絡スイッチ50の詳細な回路が模式的に示されている。
図2に示すように、短絡スイッチ50は、駆動用p形トランジスタ51と、駆動用n形トランジスタ52と、短絡トランジスタ53と、抵抗器54と、コンデンサ55,56と、スイッチ回路57と、を含む。駆動用p形トランジスタ51、駆動用n形トランジスタ52および短絡トランジスタ53は、好ましくはMOSFETである。MOSFETに限らず、IGBTやバイポーラトランジスタでもよいし、これらを混合して用いてもよい。
【0026】
短絡スイッチ50は、接続部35a~35dを含む。接続部35a~35dは、端子でもよいし、配線やプリント基板上で実際に接続された部分等でもよい。短絡スイッチ50は、接続部35a,35bを介して、ゲート電流調整回路34に接続され、接続部35c,35dを介して、発光回路40および駆動回路39の直列回路に接続されている。接続部35a,35cおよび接続部35b,35dは、それぞれ同電位であり、それぞれ1つの接続部であってもよい。これらの接続部35a~35dは、
図1にも示されている。
【0027】
短絡トランジスタ53は、接続部35c,35d間に接続されている。短絡トランジスタ53は、n形のトランジスタである。短絡トランジスタ53のドレイン端子は高電位側の接続部35cに接続され、ソース端子は低電位側の接続部35dに接続されている。
【0028】
駆動用p形トランジスタ51は、高電位側の接続部35aと短絡トランジスタ53のゲート端子との間に接続されている。駆動用p形トランジスタ51のソース端子は、逆流防止回路58を介して、接続部35aに接続され、ドレイン端子は短絡トランジスタ53のゲート端子に接続されている。
【0029】
駆動用n形トランジスタ52は、駆動用p形トランジスタ51のゲート端子と低電位側の接続部35bとの間に接続されている。駆動用n形トランジスタ52のドレイン端子は駆動用p形トランジスタのゲート端子に接続され、ソース端子は接続部35bに接続されている。
【0030】
駆動用n形トランジスタ52のゲート端子は、スイッチ回路57を介して接続部35aに接続されている。この例では、スイッチ回路57と接続部35aとの間に分圧回路59が接続されている。分圧回路59は、接続部35a,35b間に入力される電圧を分圧する。分圧される電圧は、駆動用n形トランジスタ52のゲート-ソース間にしきい値以上の適切な電圧が印加されるように設定されている。
【0031】
駆動用n形トランジスタ52のゲート-ソース間には、コンデンサ56が接続されている。分圧回路59は、スイッチ回路57を閉じたときに、コンデンサ56に流入する電流を抑制する。分圧回路59は逆流防止用ダイオードを有しており、短絡スイッチ50閉じているときに、コンデンサ56の両端電圧が分圧回路59を介して放電されることを防止する。
【0032】
抵抗器54は、駆動用p形トランジスタ51のドレイン端子(つまり、短絡トランジスタ53のゲート端子)と駆動用n形トランジスタ52のゲート端子との間に接続されている。後に詳述するが、駆動用p形トランジスタ52がオンしてドレイン端子の電位が上昇すると、抵抗器54を介して駆動用n形トランジスタ52のゲート端子の電位を引き上げる。ゲート端子の電位が駆動用n形トランジスタ52のしきい値よりも高く引き上げられることによって、駆動用n形トランジスタ52はオン状態を継続することができる。そして、駆動用n形トランジスタ52がオンし続けることによって、駆動用p形トランジスタ51もオン状態を継続することができる。
【0033】
スイッチ回路57は、監視回路36から異常検出信号が出力されたときに回路を閉じる。スイッチ回路57が閉じることによって、駆動用n形トランジスタ52のゲート-ソース間に分圧回路59の分圧比に応じた電圧が印加される。
【0034】
コンデンサ55は、接続部35a,35bの間に接続されている。コンデンサ55の高電位側の端子および駆動用p形トランジスタ51のソース端子は、逆流防止回路58を介して接続部35aに接続されている。逆流防止回路58は、短絡スイッチ50が動作中にコンデンサ55の両端の電圧が低下しないように設けられている。この例では、逆流防止回路58は、ゲート電流調整回路34からコンデンサ55に突入電流が流れるのを防止するために電流制限用の抵抗器が設けられている。
【0035】
駆動用n形トランジスタ52、駆動用p形トランジスタ51および短絡トランジスタ53は、任意の適切なトランジスタとすることができる。これらのトランジスタについては、駆動のための電流をほとんど必要としないことから、MOSFETやIGBT等のゲート絶縁型のトランジスタとすることが好ましい。
【0036】
実施形態の電力変換装置10の短絡スイッチ50の動作について説明する。
図3~
図5は、実施形態の電力変換装置の動作を説明するための模式的な回路図である。
図3~
図5には、
図2とほぼ同じ回路図が示されており、電流経路A~Cが示されている。
【0037】
図3に示すように、異常検出信号が出力されると、スイッチ回路57が回路を閉じる。異常検出信号は、後述する比較例の短絡スイッチをサイリスタとする場合に、サイリスタをターンオンできる程度のパルス幅を有するパルス信号である。つまり、パルス信号のパルス幅の期間だけスイッチ回路57が閉じられる。
【0038】
スイッチ回路57が閉じることによって、電流経路Aが形成される。電流経路Aは、接続部35a、分圧回路59およびコンデンサ56を含む経路である。コンデンサ56は電流経路Aによって充電される。コンデンサ56には、駆動用n形トランジスタ52のゲート端子が並列に接続されており、コンデンサ56の両端電圧の上昇に応じてゲートソース間の電圧Vgsが上昇する。
【0039】
図4に示すように、駆動用n形トランジスタ52のゲート-ソース間電圧がしきい値電圧よりも十分高くなることによって、駆動用n形トランジスタ52がオンする。駆動用n形トランジスタ52がオンすることによって、電流経路Bが形成される。
【0040】
電流経路Bは、コンデンサ55、駆動用n形トランジスタ52および駆動用p形トランジスタ51のゲート端子を含む経路である。この経路で電流が流れることによって、駆動用p形トランジスタ51のソース-ゲート間の電圧Vsgが駆動用p形トランジスタ51のしきい値に達すると、駆動用p形トランジスタ51がオンする。
【0041】
図5に示すように、駆動用p形トランジスタ51がオンすることによって、電流経路Cが形成される。電流経路Cは、コンデンサ55、駆動用p形トランジスタ51および短絡トランジスタ53のゲート端子を含んでいる。
【0042】
電流経路Cによって、短絡トランジスタ53のゲート-ソース間に短絡トランジスタ53のしきい値を超える電圧Vgsが印加されると、短絡トランジスタ53はオンする。短絡トランジスタ53がオンすることによって、接続部35c,35d間が短絡される。
【0043】
駆動用p形トランジスタ51がオンすると、駆動用p形トランジスタ51のドレイン端子の電位が上昇する。駆動用p形トランジスタ51のドレイン端子に接続された抵抗器54によって、駆動用n形トランジスタ52のゲート-ソース間の電圧は駆動用n形トランジスタ51のしきい値以上に維持される。そのため、駆動用n形トランジスタ52はオン状態を維持し、駆動用p形トランジスタ52もオン状態を維持することができる。
【0044】
駆動用n形トランジスタ52および駆動用p形トランジスタ51がオン状態を維持できる期間では、短絡トランジスタ53のゲート-ソース間には、短絡トランジスタ53のしきい値以上の電圧Vgsが印加される。そのため、短絡トランジスタ53もオン状態を維持することができる。
【0045】
コンデンサ55には、ゲート電流調整回路34を介して、停電補償回路33から電力が供給される。コンデンサ55は、供給された電荷で充電されており、停電補償回路33の出力が低下しても、コンデンサ55は、蓄積した電荷を維持することができる。
【0046】
短絡トランジスタ53のゲート側のインピーダンスを十分高くすることによって、コンデンサ55から放電される電荷量を十分小さくすることができ、短絡トランジスタ53のオン状態を十分長い時間維持することができる。
【0047】
なお、短絡スイッチ50の構成について、トランジスタの極性を入れ替えても、同様の動作および効果を実現することができる。
【0048】
実施形態の電力変換装置の効果について、比較例の電力変換装置の場合と比較しつつ説明する。
図6は、比較例の電力変換装置の一部を例示する模式的なブロック図である。
図6に示すように、比較例の電力変換装置では、接続部35a,35cと接続部35b,35dとの間に接続された短絡スイッチ150は、サイリスタ153を含む。サイリスタ153は、アノード端子を接続部35a,35cに接続され、カソード端子を接続部35b,35dに接続されている。なお、
図6では、接続部35a,35bよりも前の回路は、
図1の場合と同様のため、図示が省略されている。
【0049】
サイリスタ153のゲート端子は、短絡スイッチ駆動回路38(
図1)を介して、監視回路36(
図1)に接続されている。
【0050】
サイリスタ153は、監視回路36から異常検出信号が出力されると、導通することによって、発光回路40および駆動回路39の直列回路の両端を短絡する。サイリスタ153は、ゲート端子に入力されるパルスが消失しても、ゲート電流調整回路34を介して、停電補償回路33から供給される電流で動作する。サイリスタ153に流れる電流が、そのサイリスタ153の保持電流を下回ると、サイリスタ153は、ターンオフする。
【0051】
つまり、比較例の場合には、サイリスタ153に流れる電流が、保持電流以上の場合に保護状態が維持されるが、保持電流を下回ると、保護状態が解除されてしまう。そのため、サイリスタ153の保持電流特性および停電補償回路33の出力特性を適切に設定するために、十分な検討や合わせ込みが必要となる。
【0052】
これに対して、実施形態の電力変換装置では、短絡スイッチ50がコンデンサ55を含んでいるため、コンデンサ55に蓄積されたエネルギによって、短絡トランジスタ53のオン状態が維持される。たとえば、停電補償回路33の出力が低下しても、コンデンサ55に蓄積されたエネルギによって、短絡スイッチ50の動作状態が維持され、十分な時間の保護状態を確保することができる。そのため、停電補償回路33の出力特性によらず、短絡スイッチ50を設定することができる。
【0053】
駆動用n形トランジスタ52、駆動用p形トランジスタ51および短絡トランジスタ53には、MOSEFETやIGBT等の高入力抵抗を有するスイッチ素子を用いることによって、動作のための電力消費を十分小さくすることができる。そのため、コンデンサの静電容量値を小さくして小形にすることができ、実装スペースを十分小さくすることができる。
【0054】
駆動用n形トランジスタ52、駆動用p形トランジスタ51を上述のとおり接続し、抵抗器54で正帰還をかけることによって、駆動用n形トランジスタ52および駆動用p形トランジスタ51のオン状態を維持することができる。駆動用n形トランジスタ52および駆動用p形トランジスタ51のオン状態が維持されることによって、短絡トランジスタ53のゲートを駆動する電圧出力を維持することができる。
【0055】
スイッチ回路57の異常検出信号の入力インタフェースを適切に設定することによって、サイリスタ153による短絡スイッチ150をそのまま置き換えることができる。そのため、すでに設置された電力変換装置の点検や修理等の際に、少ない工数で短絡スイッチ150を短絡スイッチ50に置き換えることができる。
【0056】
上述の具体例では、主として、サイリスタバルブ用のゲート制御装置における保護回路について説明したが、上述の保護回路は、サイリスタバルブのような他励式の変換器に限らず、自励式の変換器にも適用することができる。上述のようなゲート制御回路を自励式に変換器に適用することによって、上述と同様の効果を得ること可能である。
【0057】
以上説明した実施形態によれば、サイリスタを用いないゲート信号の保護回路を備えた電力変換装置を実現することができる。
【0058】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 電力変換装置、20 電力変換器、30 ゲート制御装置、32 DC/DC電源回路、33 停電補償回路、34 ゲート電流調整回路、36 監視回路、37 ゲート制御ロジック回路、38 短絡スイッチ駆動回路、39 駆動回路、40 発光回路、42 光ファイバケーブル、70 変換器制御装置