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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】注出口付き包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20220726BHJP
   B65D 77/30 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B65D33/38 BRG
B65D77/30 C BSQ
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018141361
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020015541
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】小野 松太郎
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039545(JP,A)
【文献】特開平09-132254(JP,A)
【文献】米国特許第04408700(US,A)
【文献】特開2016-011129(JP,A)
【文献】特開2008-137693(JP,A)
【文献】特開2011-207489(JP,A)
【文献】実開平02-087760(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/38
B65D 77/30
B65D 47/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体と、前記容器本体内の前記内容物を注出させるための注出口部材と、を備え、
前記注出口部材は、前記内容物を注出する流路が形成された部材本体と、前記部材本体に対して変位可能な内蓋部と、を有し、
前記内蓋部は、前記流路を開閉可能に閉止する閉止体と、前記閉止体の脱落を防ぐ脱落防止機構と、を備え、
前記閉止体は、前記内容物によって加えられる荷重が設定値以上となったときに変位して前記流路を開放し、
前記脱落防止機構は、前記閉止体から延出する脚部であり、
前記脚部は、前記閉止体が前記流路を開放した状態で前記部材本体に係止して前記閉止体の移動を規制する規制部を有し、
前記流路の内面に、前記脚部の少なくとも一部が収容されるガイド溝が、前記内蓋部の変位方向に沿って形成されている、注出口付き包装袋。
【請求項2】
前記部材本体は、前記流路を閉止した状態の前記閉止体に係止する係止部を有し、
前記係止部は、前記荷重が前記設定値以上となったときに前記閉止体との係止を解除することによって前記閉止体を変位可能とする、請求項記載の注出口付き包装袋。
【請求項3】
前記部材本体は、前記容器本体に取り付けられる基部と、
前記流路の少なくとも一部が形成された注出筒部と、を備え、
前記注出筒部は、前記基部から突出して形成され、先端が注出口として開口されている、請求項1または2に記載の注出口付き包装袋。
【請求項4】
前記脚部は複数設けられ、
これら複数の脚部は、長さ方向に直交する方向に離間している、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の注出口付き包装袋。
【請求項5】
前記複数の脚部を互いに連結する連結部をさらに備える、請求項記載の注出口付き包装袋。
【請求項6】
前記流路の内面に、前記規制部が係止する段部が形成されている、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の注出口付き包装袋。
【請求項7】
前記閉止体は板状とされ、少なくとも一方の面に、前記閉止体の曲げ剛性を低くする弱化溝部が形成されている、請求項1~のうちいずれか1項に記載の注出口付き包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出口付き包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、注出口を有する包装袋は、例えば詰め替え用の内容物を収納する包装袋(パウチ)において、内容物の注ぎ出しを容易にするため、広く用いられている(例えば、特許文献1を参照)。包装袋としては、開口を有する中栓を備えたものもある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4828413号公報
【文献】特開2013-203421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記包装袋では、内容物を他の容器に詰め替える作業の途中で内容物がこぼれ出ることがあった。
従来の包装袋は、詰め替え内容物を含む注出口付きの包装袋から、詰め替え対象である主に硬質な包装容器に内容物の詰め替えをおこなうときに内容物がこぼれやすいという課題があった。すなわち、詰め替え作業では、詰め替え内容物を含む注出口付きの包装袋の蓋を開けて包装袋を傾けながら注出口を詰め替え対象の容器の口に合わせるという作業の後に、包装袋を更に傾けて内容物を包装袋から包装容器内に流し込むという作業が必要となる。特に、蓋を開けて包装袋を傾けるという作業においては内容物である液体がこぼれやすいという課題があった。包装袋を傾ける作業においては、液体である内容物の入った包装袋を内容物がこぼれないようにバランスを取りながら詰め替え対象の容器の口に近づける必要もある。そのため、誰しもが簡単にかつこぼさずに内容物を詰め替えられるという訳ではなかった。
【0005】
本発明は上記のような課題に鑑みて誠意検討を行ったものであり、本発明の一態様は、内容物を他の容器に詰め替える作業において内容物がこぼれ出るのを画期的に抑制できる注出口付き包装袋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、内容物を収容する容器本体と、前記容器本体内の前記内容物を注出させるための注出口部材と、を備え、前記注出口部材は、前記内容物を注出する流路が形成された部材本体と、前記部材本体に対して変位可能な内蓋部と、を有し、前記内蓋部は、前記流路を開閉可能に閉止する閉止体と、前記閉止体の脱落を防ぐ脱落防止機構と、を備え、前記閉止体は、前記内容物によって加えられる荷重が設定値以上となったときに変位して前記流路を開放する、注出口付き包装袋を提供する。
【0007】
前記注出口付き包装袋は、前記脱落防止機構が、前記閉止体から延出する脚部であり、前記脚部は、前記閉止体が前記流路を開放した状態で前記部材本体に係止して前記閉止体の移動を規制する規制部を有する構成を採用してもよい。
【0008】
前記注出口付き包装袋は、前記部材本体が、前記流路を閉止した状態の前記閉止体に係止する係止部を有し、前記係止部が、前記荷重が前記設定値以上となったときに前記閉止体との係止を解除することによって前記閉止体を変位可能とする構成を採用してもよい。
【0009】
前記注出口付き包装袋は、前記部材本体が、前記容器本体に取り付けられる基部と、前記流路の少なくとも一部が形成された注出筒部と、を備え、前記注出筒部は、前記基部から突出して形成され、先端が注出口として開口されている構成を採用してもよい。
【0010】
前記注出口付き包装袋は、前記脚部が複数設けられ、これら複数の脚部は、長さ方向に直交する方向に離間している構成を採用してもよい。
【0011】
前記注出口付き包装袋は、前記複数の脚部を互いに連結する連結部をさらに備える構成を採用してもよい。
【0012】
前記注出口付き包装袋は、前記流路の内面に、前記脚部の少なくとも一部が収容されるガイド溝が、前記内蓋部の変位方向に沿って形成されている構成を採用してもよい。
【0013】
前記注出口付き包装袋は、前記流路の内面に、前記規制部が係止する段部が形成されている構成を採用してもよい。
【0014】
前記注出口付き包装袋は、前記閉止体が板状とされ、少なくとも一方の面に、前記閉止体の曲げ剛性を低くする弱化溝部が形成されている構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、内容物を他の容器に詰め替える作業において内容物がこぼれ出るのを画期的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の注出口付き包装袋の一部断面図である。
図2図1に示す注出口付き包装袋の注出口部材の部材本体の平面図である。
図3図1に示す注出口付き包装袋の全体図である。
図4図1に示す注出口付き包装袋の一部を拡大した断面図である。
図5図1に示す注出口付き包装袋の内蓋部の斜視図である。
図6図1に示す注出口付き包装袋の動作を説明する一部断面図である。
図7図1に示す注出口付き包装袋の使用方法の一例を示す説明図である。
図8】連結部の変形例を示す斜視図である。
図9】規制部の第1変形例を示す構成図である。
図10】規制部の第2変形例を示す構成図である。
図11】閉止体の変形例を示す斜視図である。
図12】前図に示す閉止体の動作を示す説明図である。
図13】部材本体の第1変形例を示す横断面図である。
図14】前図に示す部材本体の縦断面図である。
図15】部材本体の第2変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0018】
図1は、実施形態の注出口付き包装袋10の一部断面図である。図2は、注出口付き包装袋10の注出口部材2の部材本体3の平面図である。図3は、注出口付き包装袋10の全体図である。図4は、注出口付き包装袋10の一部を拡大した断面図である。図5は、注出口付き包装袋10の内蓋部4の斜視図である。図6は、包装袋10の動作を説明する一部断面図である。
【0019】
図3に示すように、実施形態の注出口付き包装袋10(以下、単に包装袋10という。)は、容器本体1と、注出口部材2とを備える。容器本体1は、例えば、互いに平面形状が同一である2枚の胴部フィルム51,51と、底部フィルム52とから構成されたスタンディングパウチである。胴部フィルム51,51は、例えば、厚さ方向(Y方向)から見て長方形である。胴部フィルム51,51の長さ方向(Z方向)の一端を含む部分を第1端部51A(図3における上端部)といい、他端を含む部分を第2端部51B(図3における下端部)という。
【0020】
胴部フィルム51,51と底部フィルム52とは、周縁部がヒートシールされることで一体に形成されている。例えば、包装袋10は、側端シール部51a、51aと、第1端シール部51bと、底部シール部52aと、を有する。側端シール部51a、51aは、胴部フィルム51,51の両側の側端部がシールされることで形成される。第1端シール部51bは、胴部フィルム51,51の第1端部51Aがシールされることで形成される。底部シール部52aは、胴部フィルム51,51と底部フィルム52とがシールされることで形成される。底部フィルム52は、第2端部51Bにおいて胴部フィルム51,51の間に介装されている。
【0021】
包装袋10の収容部10aには内容物を充てんすることができる。収容部10a内に内容物が充てんされた包装袋10は、底部フィルム52を下にした状態(正立状態)でスタンディング可能となる。内容物は、特に限定されないが、液状物、粉体や顆粒体等の固体、あるいは粘稠体、液体等、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0022】
胴部フィルム51および底部フィルム52として使用するフィルムとしては、例えば、基材フィルムとシーラント層とを有する積層体が用いられる。基材フィルムは、例えば、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリアミド、二軸延伸ポリエステル等によって構成される。シーラント層は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂によって構成される。
【0023】
積層体を製造する方法としては、ドライラミネート法、押出ラミネート法、共押出法などが挙げられる。基材フィルム層とシーラント層との間には接着強度の向上のため、接着剤やアンカー剤等を設けることができる。積層体は、包装袋10の強度を高めるために基材フィルムを複数枚備えていてもよい。積層体は、気体や紫外線のバリア性を高めるため、アルミニウム箔等の金属箔;金属蒸着層;セラミック等の無機質蒸着層;エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムなどを有していてもよい。
【0024】
図1および図2に示すように、注出口部材2は、胴部フィルム51,51の第1端部51Aの中央部に設けられている。注出口部材2は、部材本体3と、内蓋部4と、キャップ5とを備える。部材本体3は、基部6と、注出筒部7とを有する。X方向は基部6の長さ方向である。Y方向は基部6の幅方向である。Z方向は基部6の厚さ方向である。
【0025】
図1に示すように、基部6は、例えば、注出筒部7の基端7aに対して、外側方(X方向)に張り出して形成されている。図2に示すように、基部6は、例えば、中央部からX方向に沿って離れるほど幅(Y方向の寸法)が狭くなる形状(いわゆる舟形状)であってよい。図1に示すように、基部6の第1端面6a(図1における上面)および第2端面6b(第1端面6aの反対の面。図1における下面)はXY平面に沿う。
【0026】
図2に示すように、基部6は、胴部フィルム51,51に挟み込まれた状態で容器本体1に取り付けられている。基部6の一方および他方の側面6c,6cは、それぞれ胴部フィルム51,51の内面に溶着されている。基部6の側面6c,6cには、胴部フィルム51,51に対する接合強度を高めるための凹凸部(図示略)が形成されていてもよい。図1に示すように、基部6には、厚さ方向(Z方向)に沿う貫通孔21が形成されている。貫通孔21の平面形状(Z方向から見た形状)は円形状である。
【0027】
注出筒部7は、円筒状とされている。注出筒部7は、基部6の第1端面6a(図1における上面)から、Z方向(図1における上方)に突出している。注出筒部7の内部空間22の平面形状(Z方向から見た形状)は、例えば、貫通孔21と同径の円形状である。内部空間22は、貫通孔21に連なって形成されている。貫通孔21および内部空間22は、Z方向に沿って部材本体3を貫通する流路8を形成する。流路8は、容器本体1の内容物を注出筒部7の先端開口である注出口7bから注出させることができる。図1におけるC1は注出筒部7の中心軸である。
【0028】
図4に示すように、注出筒部7の外周面には、ネジ部23が形成されている。注出筒部7の内周面には、第1環状突起25(係止部)および第2環状突起26(係止部)が形成されている。環状突起25,26は、注出筒部7の軸周り方向に沿う円環状の突起である。第1環状突起25は、第2環状突起26に対して注出口7b側に離れて形成されている。
【0029】
第1環状突起25は、閉止体11(後述)が容器本体1から離れる方向(図4における下方)に移動するのを規制できる。第2環状突起26は、閉止体11が容器本体1に近づく方向(図4における上方)に移動するのを規制できる。
【0030】
環状突起25,26の内径は、閉止体11の外径とほぼ同じ、または閉止体11の外径よりやや小さい。第1環状突起25の内径は、容器本体1の内容物によって閉止体11に加えられる荷重(図4における下方への荷重)が設定値未満であるときには第1環状突起25が閉止体11に係止可能であるように設定される。そのため、閉止体11に加えられる荷重が設定値未満であるときには、閉止体11は流路8を閉止した状態を維持する。
【0031】
閉止体11により加えられる荷重の増大によって第1環状突起25と閉止体11のうち少なくとも一方がわずかに変形することで、閉止体11と第1環状突起25との係止は解除可能となる。第1環状突起25の内径は、内容物によって閉止体11に加えられる荷重が設定値以上となったときに、閉止体11と第1環状突起25との係止が解除されるように設定される。そのため、閉止体11に加えられる荷重が設定値以上となると、閉止体11は環状突起25,26から外れる(図6参照)。
【0032】
環状突起25,26は、流路8の内周面からの突出高さ、幅(Z方向の寸法)、形状などの設計によって閉止体11に対する係止強度を調節してもよい。環状突起25,26の突出高さ、幅、形状等は、環状突起25,26の変形しやすさに影響を与える。例えば、突出高さが高いほど環状突起25,26は変形しやすくなる。幅が狭いほど環状突起25,26は変形しやすくなる。突出方向に幅が狭くなる形状の環状突起25,26は変形しやすい。このように、環状突起25,26の突出高さ、幅、形状等を調整することにより、閉止体11に加えられる荷重が設定値未満であるときには環状突起25,26が閉止体11に係止し、かつ、荷重が設定値以上となったときに、閉止体11と環状突起25,26との係止が解除されるような設計が可能である。
【0033】
図5に示すように、内蓋部4は、閉止体11と、一対の脚部12(脱落防止機構)と、連結部13とを備える。内蓋部4は、部材本体3とは別に成形された別部材である。閉止体11は、円板状とされている。図4に示すように、閉止体11の外径は、流路8の内径とほぼ同じ、または流路8の内径よりやや小さい。そのため、閉止体11は流路8を閉止できる。図4では、閉止体11は、第1環状突起25と第2環状突起26との間の高さ位置にある。閉止体11は、環状突起25,26によって上下方向(Z方向)の移動が規制された状態で、環状突起25,26に当接することで流路8を閉止している。閉止体11の一方の面である第1面11aはXY平面に沿う面である。
【0034】
脚部12は、例えば角柱状とされ、閉止体11の第1面11aから、第1面11aに対して垂直な方向(Z方向)に延出している。長さ方向に直交する脚部12の断面形状は、例えば矩形状である。脚部12の基端12aは、閉止体11の周縁に近接して位置する。一対の脚部12は、長さ方向(Z方向)に直交する方向(X方向)に離間している。一対の脚部12は、閉止体11の中心を通る中心軸C1周りの回転対称となる位置に形成されている。12bは脚部12の先端である。脚部12は、弾性的に曲げ変形可能である。図1に示すように、脚部12は、流路8に挿通する。
【0035】
図5に示すように、一対の脚部12の向かい合う面を内面12cという。内面12cと反対の面を外面12dという。脚部12の先端部の外面12dには、外側方(一対の脚部12,12が互いに離れる方向)に突出する規制突起15(規制部)が形成されている。規制突起15は、脚部12の先端側の第1面15aと、第1面15aに連なる第2面15bとを有する。第1面15aは、外面12dの先端から基端側に向けて突出高さを増す傾斜面である。第2面15bは、外面12dに対して垂直な面であり、XY平面に沿う。
【0036】
図1に示すように、一対の脚部12,12の規制突起15,15の突出端15c,15c間の距離L1は、流路8(貫通孔21)の内径L2より大きい。そのため、規制突起15,15は基部6の第2端面6b(貫通孔21の周縁部)に係止可能である(図5参照)。
脚部12の基端12aから規制突起15までの距離L3は、第2環状突起26の周縁(図1における上縁)から基部6の第2端面6bまでのZ方向の距離L4より大きい。そのため、閉止体11と、環状突起25,26との係止が解除されると、内蓋部4はZ方向に変位可能となる。
【0037】
図5に示すように、連結部13は、例えば角柱状とされ、X方向に沿って延在する。連結部13は、脚部12,12の長さ方向の中間位置(基端12aと先端12bとの間の位置)において、2つの脚部12,12を連結している。連結部13の両端はそれぞれ脚部12の内面12c,12cに接合されている。連結部13は、脚部12,12の離間距離の変動を抑制することができる。連結部13は、脚部12,12の長さ方向の中間位置に設けられているため、脚部12の先端側の部分の弾性的な曲げ変形を許容する。連結部13の形成位置は、脚部12の長さ方向の中央よりも先端12b寄りの位置であると、脚部12,12の離間距離の変動を抑制しやすい。
【0038】
図6に示すように、内蓋部4は、内容物の荷重によって閉止体11が第1環状突起25から外れると、閉止体11は容器本体1から離れる方向(図6における下方)に変位するため、流路8は開放される。そのため、容器本体1の内容物は流路8を通って注出口7bから流出可能となる。
【0039】
内蓋部4が、容器本体1から離れる方向(図6における下方)にさらに変位すると、流路8が開放された状態で、規制突起15,15は基部6の第2端面6b(貫通孔21の周縁部)に係止する。この際、規制突起15は、第2面15bが第2端面6bに当接する。2つの規制突起15は、基部6の第2端面6b(貫通孔21の周縁部)に対して、異なる2か所(例えば、中心軸C1周りの回転対称となる位置)に係止する。これにより、容器本体1から離れる方向(図6における下方)の内蓋部4の移動は規制される。そのため、部材本体3からの内蓋部4の脱落を阻止できる。
規制突起15,15は、基部6の第2端面6b(貫通孔21の周縁部)に対して、異なる2か所に係止するため、内蓋部4を安定的に部材本体3に係止させ、内蓋部4の脱落を阻止できる。
【0040】
内蓋部4は、脚部12,12を連結する連結部13を有するため、脚部12,12の離間距離の変動を抑制できる。そのため、脚部12の曲げ変形による規制突起15のX方向の位置ずれを小さくできる。よって、規制突起15,15を基部6の第2端面6b(貫通孔21の周縁部)に確実に係止させることができる。
【0041】
図1に示すように、キャップ5は、主板部27と、筒状部28とを備える。主板部27は円板状に形成されている。筒状部28は主板部27の周縁部から延出する円筒状に形成されている。筒状部28の内周面には、ネジ部23に螺合するネジ部(図示略)が形成されている。キャップ5は、主板部27の内面が注出筒部7の先端に当接することによって注出口7bを密封する。密封状態では主板部27と閉止体11との間の空間は密封空間となる。
【0042】
部材本体3、内蓋部4およびキャップ5の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好適である。部材本体3、内蓋部4およびキャップ5は、射出成形などにより作製することができる。部材本体3と内蓋部4とは別に成形された成形体である。
【0043】
図7は、注出口付き包装袋10の使用方法の一例を示す説明図である。図7における容器40は、容器本体41と、容器本体41から突出する筒状の口元部42とを備える。以下、包装袋10の内容物を容器40に移し替える(すなわち、詰め替える)場合を例として、包装袋10の使用方法を説明する。
【0044】
図3に示すように、包装袋10が正立状態(注出口部材2を容器本体1の上部に位置させた状態)にあるとき、または包装袋10が正立状態でなくともキャップ5が閉まっている状態のときには、容器本体1の内容物は閉止体11に荷重を加えないか、または内容物が閉止体11に加える荷重は小さい。そのため、内容物によって閉止体11に加えられる荷重は設定値未満である。
【0045】
図1に示すように、内容物を容器40(図7参照)に移し替えるにあたっては、キャップ5を開栓方向に回転させることによって注出筒部7から取り外す。キャップ5が取り外されても閉止体11は流路8を閉止した状態にあるため、内容物が注出口7bからこぼれ出るのを抑制できる。包装袋10を正立状態から傾斜させるとともに、注出筒部7を、注出口7bから内容物を容器40に流し込むことができる位置に配置する(図7参照)。すなわち、注出筒部7を口元部42に合わせる。この際、注出筒部7は口元部42(図7参照)に挿入してもよい。なお、図7では、包装袋10は倒立状態(注出口部材2を容器本体1の下部に位置させた状態)となっているが、包装袋10は、正立状態と倒立状態との間の傾斜状態であってもよい。
【0046】
包装袋10の傾斜を大きくすると、内容物は流路8(図1参照)に流れ込み、閉止体11(図1参照)に達する。包装袋10の傾斜が大きくなるほど内容物が閉止体11に加える荷重は大きくなる。
【0047】
図6に示すように、閉止体11に加えられる荷重が設定値以上となると、閉止体11は環状突起25,26から外れて、容器本体1から離れる方向(図6における下方)に変位するため、流路8は開放される。そのため、容器本体1の内容物は流路8を通って注出口7bから流出し、口元部42を通して容器本体41に流入する(図7参照)。これによって、包装袋10の内容物を容器40(図7参照)に移し替えることができる。包装袋10は、作業者が手指で包装袋10を押圧することで包装袋10の内部にかける圧力によって、流路8を開放させることができる。
【0048】
包装袋10は、内容物によって加えられる荷重が小さいときには流路8を閉止し、荷重が大きくなったときに変位して流路8を開放する閉止体11を備えている。そのため、包装袋10の傾斜が小さいときには閉止体11によって流路8を閉止し、かつ、包装袋10を大きく傾斜させることによって(図7参照)、流路8を開放させることができる。包装袋10は、注出筒部7を口元部42に合わせた後に、作業者が手指によって包装袋10を押圧することによって流路8を開放させてもよい。したがって、包装袋10が、内容物を容器40に流し込むことができる姿勢をとるまで流路8の閉止状態を維持できる。よって、内容物を他の容器40に詰め替える作業において内容物がこぼれ出るのを画期的に抑制できる。
【0049】
包装袋10は、閉止体11に係止可能な環状突起25,26を備えている。環状突起25,26は、閉止体11にかかる荷重が設定値以上となったときに閉止体11が外れるように設計することができる。そのため、内容物からの荷重に応じた流路8の開閉を、簡単な構造で実現できる。
【0050】
注出口部材2は、基部6と、基部6から突出する注出筒部7とを備えているため、基部6において容器本体1に確実に接合するとともに、注出筒部7により内容物の注ぎ出しの操作を容易にすることができる。
【0051】
以下、実施形態の包装袋10の変形例について説明する。既出の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
(連結部の変形例)
図8は、連結部13の変形例である連結部13Aを示す斜視図である。
図8に示すように、連結部13Aは、XZ平面に沿う板状に形成されている。連結部13Aの両側縁はそれぞれ内面12c,12cに接合されている。連結部13AのZ方向の一端13Aaは、脚部12,12の長さ方向の中間位置(基端12aと先端12bとの間の位置)に達している。連結部13AのZ方向の他端13Abは、閉止体11の第1面11aに達している。
【0053】
連結部13Aは、図5に示す連結部13に比べて、基端12a,12aから中間位置までの広い範囲で脚部12,12を連結するため、脚部12の形状を安定させることができる。
【0054】
図9は、図5に示す規制突起15の第1変形例である規制突起15Aを示す構成図である。図10は、規制突起15の第2変形例である規制突起15Bを示す構成図である。
図9に示すように、規制突起15Aは、脚部12の先端部の外面12dに、外側方(一対の脚部12,12が互いに離れる方向)に突出して形成されている。規制突起15Aは、直方体状に形成されている。規制突起15Aは、脚部12の先端側の第1面15Aaと、第1面15Aaに連なる第2面15Abと、第2面15Abに連なる第3面15Acとを有する。第1面15Aaは、脚部12の先端12bからXY平面に沿って外側方に延出する面である。第2面15Abは、外面12dと平行な面であり、YZ平面に沿う。第3面15Acは、外面12dに対して垂直な面であり、XY平面に沿う。
【0055】
図10に示すように、規制突起15Bは、脚部12の先端部の外面12dに、外側方に突出して形成されている。規制突起15Bは、脚部12の先端側の第1面15Baと、第1面15Baに連なる第2面15Bbとを有する。第1面15Baは、脚部12の先端12bからXY平面に沿って外側方に延出する面である。第2面15Bbは、基端側に向けて突出高さを減じる傾斜面である。
【0056】
図11は、閉止体11の変形例である閉止体11Aを示す構成図である。図12は、閉止体11Aの動作を示す説明図である。
図11に示すように、閉止体11Aの第2面11b(第1面11aと反対の面)には、弱化溝部29が形成されている。弱化溝部29は、XY平面に沿う底面29aと、底面29aに対して傾斜する側面29b,29bとを有する。弱化溝部29は、溝深さ方向に徐々に幅が狭くなる形状であってよい。弱化溝部29は、第2面11bの中心を通り、X方向に沿って直線状に形成されている。弱化溝部29の両端は、それぞれ閉止体11Aの周縁に達している。弱化溝部29の一部は、Z方向から見て脚部12の基端12aと重なる。弱化溝部29が形成された閉止体11Aの部分を弱化部30という。
【0057】
図12に示すように、弱化部30は、他の部分に比べて曲げ剛性が低くなるため、曲げ変形可能である。閉止体11Aは、内容物により第1面11aに荷重がかかったとき、弱化部30において2つ折りに曲げ変形できる。例えば、図12に示すように、閉止体11Aは、弱化部30において脚部12から離れる方向に曲げ変形できる。これにより、注出口7bから出る内容物の流れをスムーズにし、内容物の流出流量を高くすることができる。特に、内容物が粘度の高い液体である場合は、流出流量が低くなりやすいため、閉止体には弱化部を形成することが好ましい。
【0058】
図13は、部材本体3の第1変形例である部材本体3Aを示す横断面図(XY平面に沿う断面図)である。図14は、部材本体3Aを示す縦断面図(XZ平面に沿う断面図)である。
図13に示すように、部材本体3Aでは、流路8の内周面に、一対のガイド溝31,31が形成されている。ガイド溝31の横断面形状(XY平面に沿う断面の形状)は、例えば矩形状である。一対のガイド溝31,31には、それぞれ脚部12の少なくとも一部が収容される。一対のガイド溝31,31は、中心軸C1周りの回転対称となる位置に形成されている。ガイド溝31の幅(Y方向の寸法)は、脚部12の傾斜を規制できるように設計される。図14に示すように、ガイド溝31は、内蓋部4の変位方向であるZ方向に沿って形成されている。
【0059】
部材本体3Aでは、流路8の内周面に、脚部12の少なくとも一部を収容可能なガイド溝31が形成されているため、脚部12の中心軸C1周りの移動を規制できる。脚部12は、ガイド溝31によって傾斜が規制される。よって、内蓋部4の姿勢および動作を安定化することができる。
【0060】
図15は、部材本体3の第2変形例である部材本体3Bを示す縦断面図(XZ平面に沿う断面図)である。
図15に示すように、基部6Bのガイド溝31,31の一部(図15におけるガイド溝31,31の上部)には、他の部分より溝が深くされた拡張部32,32が形成されている。拡張部32は第2端面6bに達している。拡張部32,32の底面間の距離L5は、ガイド溝31,31の底面間の距離L6に比べて大きいため、その寸法差により段部33が形成されている。距離L5は、規制突起15,15の突出端間の距離L1より大であるため、規制突起15は拡張部32内で段部33に係止可能である。拡張部32のZ方向の寸法は、規制突起15のZ方向の寸法より大であるため、拡張部32は規制突起15を収容できる。
【0061】
部材本体3Bでは、規制突起15がガイド溝31内に形成された段部33に規制突起15が係止可能であるため、段部33に係止した状態の規制突起15は基部6Bの外に突出しない。よって、注出口部材2の取り扱いが容易となる。また、注出口部材2の小型化を図ることができる。
【0062】
本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、荷重が設定値以上となったときに閉止体を変位させて流路を開放する構造は前述の構造に限らない。実施形態の包装袋では、例えば、荷重が設定値未満のときには閉止体が摩擦力により流路の内周面に係止し、かつ荷重が設定値以上となると閉止体と流路内周面との係止が解除される構造を採用してもよい。
【0063】
包装袋10では、閉止体11の脱落を防ぐ脱落防止機構として、規制突起15を有する脚部12が採用されているが、閉止体の脱落を防ぐ機構はこの構造に限らない。脱落防止機構としては、例えば、閉止体の一端がヒンジを介して注出筒部に接続された構造を採用してもよい。脱落防止機構は、閉止体と部材本体とを連結する連結体であってもよい。
【0064】
包装袋10では、内蓋部4の移動を規制するための規制部として、脚部12の外面12dから突出する規制突起15が採用されているが、規制部の構造はこの構造に限らない。規制部は、摩擦力等により部材本体に係止する構造であってもよい。
包装袋10では、脚部12の数は2であるが、脚部の数はこれに限らず、1でもよいし、3以上の任意の数であってもよい。
図11および図12に示す閉止体11Aでは、閉止体11Aの第2面11bに弱化溝部29が形成されているが、弱化溝部は閉止体の少なくとも一方の面に形成されていればよい。すなわち、弱化溝部は、第1面と第2面のうちいずれか一方に形成されていてもよいし、両方に形成されていてもよい。
【0065】
図15に示す部材本体3Bでは、ガイド溝31内に段部33が形成されているが、段部が形成されている箇所はガイド溝内に限らない。例えば、段部は、ガイド溝が形成されていない流路の内周面に形成されていてもよい。
包装袋10はスタンディングパウチであるが、本実施形態の包装袋に適用可能なパウチの形態は特にこれに限定されず、三方シール袋、四方シール袋、ガゼット袋など種々の形態を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…容器本体、2…注出口部材、3,3A,3B…部材本体、4…内蓋部、6,6B…基部、7…注出筒部、7a…基端、7b…注出口、8…流路、10…注出口付き包装袋、11…閉止体、12…脚部(脱落防止機構)、13,13A…連結部、15,15A,15B…規制突起(規制部)、25…第1環状突起(係止部)、26…第2環状突起(係止部)、29…弱化溝部、31…ガイド溝、33…段部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14
図15