(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】圧力温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 1/18 20060101AFI20220727BHJP
G01L 19/00 20060101ALI20220727BHJP
G01K 7/18 20060101ALN20220727BHJP
【FI】
G01K1/18
G01L19/00 A
G01K7/18 B
(21)【出願番号】P 2018124589
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 成時
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 善文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊太郎
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-249735(JP,A)
【文献】特開2016-200452(JP,A)
【文献】実開昭55-68030(JP,U)
【文献】特開平10-37781(JP,A)
【文献】特開2007-132745(JP,A)
【文献】米国特許第4586246(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
G01L 7/00-23/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の圧力が印加されるダイヤフラム(151)と、前記ダイヤフラムに設けられた圧力検出部(152)と、前記測定対象の温度を検出する温度検出部(152)と、を有し、前記ダイヤフラムの歪みに応じた圧力信号を前記圧力検出部から出力する一方、測定対象の温度に応じた温度信号を前記温度検出部から出力するセンサチップ(150)と、
前記センサチップのうち前記圧力検出部及び前記温度検出部に対応する部分が露出するように、前記センサチップを固定したモールド樹脂部(140)と、
管部(113)を有し、前記センサチップが前記管部の内部に位置するように前記モールド樹脂部を保持し、前記管部が取付対象である配管(200)に固定される保持部(110、120、130)と、
前記モールド樹脂部の隣に位置するように前記保持部に設けられ、前記管部が前記配管に固定されることで前記配管の内部に配置される流路部(170)と、
を含み、
前記流路部は、
前記モールド樹脂部に対する前記流路部の突出方向に沿った板面(174)を有し、前記測定対象を前記板面に沿わせて前記センサチップ側に導く第1流路(177)を構成する板部(171)と、
前記板部に設けられ、前記突出方向に垂直な垂直方向に沿って前記測定対象を通過させる第2流路(180)を構成する孔部(172)と、
を含
み、
前記板部は、前記板面を有する複数の板材(175)と、前記複数の板材のうち前記突出方向において前記モールド樹脂部側とは反対側を固定する底部(176)と、を含み、
前記複数の板材は、前記板面が前記垂直方向において放射状に配置され、
前記孔部は、前記複数の板材のうち前記底部の中心部(178)側の一端部(179)が互いに離間することにより構成されている圧力温度センサ。
【請求項2】
測定対象の圧力が印加されるダイヤフラム(151)と、前記ダイヤフラムに設けられた圧力検出部(152)と、前記測定対象の温度を検出する温度検出部(152)と、を有し、前記ダイヤフラムの歪みに応じた圧力信号を前記圧力検出部から出力する一方、測定対象の温度に応じた温度信号を前記温度検出部から出力するセンサチップ(150)と、
前記センサチップのうち前記圧力検出部及び前記温度検出部に対応する部分が露出するように、前記センサチップを固定したモールド樹脂部(140)と、
管部(113)を有し、前記センサチップが前記管部の内部に位置するように前記モールド樹脂部を保持し、前記管部が取付対象である配管(200)に固定される保持部(110、120、130)と、
前記モールド樹脂部の隣に位置するように前記保持部に設けられ、前記管部が前記配管に固定されることで前記配管の内部に配置される流路部(170)と、
を含み、
前記流路部は、
前記モールド樹脂部に対する前記流路部の突出方向に沿った板面(174)を有し、前記測定対象を前記板面に沿わせて前記センサチップ側に導く第1流路(177)を構成する板部(171)と、
前記板部に設けられ、前記突出方向に垂直な垂直方向に沿って前記測定対象を通過させる第2流路(180)を構成する孔部(172)と、
を含
み、
前記板部は、前記板面を有する複数の板材(175)と、前記複数の板材のうち前記突出方向において前記モールド樹脂部側とは反対側を固定する底部(176)と、を含み、
前記複数の板材は、前記板面が前記垂直方向において放射状に配置されると共に、前記垂直方向において前記底部の中心部(178)側の一端部(179)が互いに接続され、
前記孔部は、前記複数の板材を貫通する貫通孔(183)である圧力温度センサ。
【請求項3】
測定対象の圧力が印加されるダイヤフラム(151)と、前記ダイヤフラムに設けられた圧力検出部(152)と、前記測定対象の温度を検出する温度検出部(152)と、を有し、前記ダイヤフラムの歪みに応じた圧力信号を前記圧力検出部から出力する一方、測定対象の温度に応じた温度信号を前記温度検出部から出力するセンサチップ(150)と、
前記センサチップのうち前記圧力検出部及び前記温度検出部に対応する部分が露出するように、前記センサチップを固定したモールド樹脂部(140)と、
管部(113)を有し、前記センサチップが前記管部の内部に位置するように前記モールド樹脂部を保持し、前記管部が取付対象である配管(200)に固定される保持部(110、120、130)と、
前記モールド樹脂部の隣に位置するように前記保持部に設けられ、前記管部が前記配管に固定されることで前記配管の内部に配置される流路部(170)と、
を含み、
前記流路部は、
前記モールド樹脂部に対する前記流路部の突出方向に沿った板面(174)を有し、前記測定対象を前記板面に沿わせて前記センサチップ側に導く第1流路(177)を構成する板部(171)と、
前記板部に設けられ、前記突出方向に垂直な垂直方向に沿って前記測定対象を通過させる第2流路(180)を構成する孔部(172)と、
を含
み、
前記板部は、前記板面を有する複数の板材(175)と、前記複数の板材のうち前記突出方向において前記モールド樹脂部側とは反対側の先端部分を固定する底部(176)と、を含み、
前記複数の板材は、前記板面が前記垂直方向において放射状に配置されると共に、前記垂直方向において前記底部の中心部(178)側の一端部(179)が互いに接続された接続部(182)を構成し、
前記孔部は、前記垂直方向に前記接続部を貫通する貫通孔(184)である圧力温度センサ。
【請求項4】
前記複数の板材は、前記垂直方向において前記底部の前記中心部側とは反対側の他端部(181)に固定されていると共に、前記流路部の外周方向に板面(185)を有する板材(186)を含む請求項
1ないし
3のいずれか1つに記載の圧力温度センサ。
【請求項5】
前記流路部は、前記保持部の一部である請求項1ないし
4のいずれか1つに記載の圧力温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の圧力及び温度を検出する圧力温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、測定対象の温度を検出するセンサが、例えば特許文献1で提案されている。測定対象は配管の通路を流れる。センサは、配管の通路に突出する有底管状の突出部と、突出部に収容されたセンサ部と、を有する。突出部は、当該突出部の中に測定対象を流入させるための開口部を有する。開口部は、突出部が配管に取り付けられた際、測定対象の上流側に向けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、測定対象が開口部を介して突出部の中に流入するものの、測定対象が突出部の内部に滞留しているので、突出部の内部を流れにくい。このため、配管を流れる測定対象の温度と突出部の内部の測定対象の温度との乖離が大きくなり、温度検出応答遅れが発生してしまう。その結果、センサ部の温度応答性が低下してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、測定対象を突出部の内部に強制的に引き込むことが考えられる。しかし、センサ部が測定対象の流れの影響を受けるので、センサ部が測定対象の動圧の影響を受けやすくなる。このため、圧力測定誤差が生じてしまうという問題がある。
【0006】
さらに、突出部が配管の中に位置するので、配管を流れる測定対象の流れが突出部によって妨げられてしまう。このため、突出部において測定対象の流れの前後に圧力差が生じてしまう。その結果、測定対象に圧力損失が生じてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、配管を流れる測定対象の圧力及び温度を測定するように構成された圧力温度センサにおいて、温度応答性の向上、動圧影響の軽減、及び測定対象の圧力損失の軽減を図ることができる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1~3に記載の発明では、圧力温度センサは、測定対象の圧力が印加されるダイヤフラム(151)と、ダイヤフラムに設けられた圧力検出部(152)と、測定対象の温度を検出する温度検出部(152)と、を有し、ダイヤフラムの歪みに応じた圧力信号を圧力検出部から出力する一方、測定対象の温度に応じた温度信号を温度検出部から出力するセンサチップ(150)を含む。
【0009】
圧力温度センサは、センサチップのうち圧力検出部及び前記温度検出部に対応する部分が露出するように、センサチップを固定したモールド樹脂部(140)を含む。
【0010】
圧力温度センサは、管部(113)を有し、センサチップが管部の内部に位置するようにモールド樹脂部を保持し、管部が取付対象である配管(200)に固定される保持部(110、120、130)を含む。
【0011】
圧力温度センサは、モールド樹脂部の隣に位置するように保持部に設けられ、管部が配管に固定されることで配管の内部に配置される流路部(170)を含む。
【0012】
流路部は、モールド樹脂部に対する流路部の突出方向に沿った板面(174)を有し、測定対象を板面に沿わせてセンサチップ側に導く第1流路(177)を構成する板部(171)を含む。また、流路部は、板部に設けられ、突出方向に垂直な垂直方向に沿って測定対象を通過させる第2流路(180)を構成する孔部(172)を含む。
そして、請求項1に記載の発明では、板部は、板面を有する複数の板材(175)と、複数の板材のうち突出方向においてモールド樹脂部側とは反対側を固定する底部(176)と、を含む。複数の板材は、板面が垂直方向において放射状に配置される。孔部は、複数の板材のうち底部の中心部(178)側の一端部(179)が互いに離間することにより構成されている。
請求項2に記載の発明では、板部は、板面を有する複数の板材(175)と、複数の板材のうち突出方向においてモールド樹脂部側とは反対側を固定する底部(176)と、を含む。複数の板材は、板面が垂直方向において放射状に配置されると共に、垂直方向において底部の中心部(178)側の一端部(179)が互いに接続される。孔部は、複数の板材を貫通する貫通孔(183)である。
請求項3に記載の発明では、板部は、板面を有する複数の板材(175)と、複数の板材のうち突出方向においてモールド樹脂部側とは反対側の先端部分を固定する底部(176)と、を含む。複数の板材は、板面が垂直方向において放射状に配置されると共に、垂直方向において底部の中心部(178)側の一端部(179)が互いに接続された接続部(182)を構成する。孔部は、垂直方向に接続部を貫通する貫通孔(184)である。
【0013】
これによると、流路部の板部によって、測定対象が第1流路に沿ってセンサチップ側に流れるので、配管に流れる測定対象の温度と管部の内部の測定対象の温度との乖離を小さくすることができる。したがって、センサチップの温度応答性を向上させすることができる。
【0014】
また、測定対象が第2流路を通過するので、流路部に向かって流れる測定対象を孔部によって逃がしやすくすることができる。このため、センサチップに対する測定対象の流れの影響を低減できる。したがって、センサチップに対する動圧影響を軽減することができる。
【0015】
さらに、配管内の測定対象の流れが孔部によって妨げられないので、測定対象の流れにおいて流路部の前後に圧力差が生じにくくなる。したがって、測定対象の圧力損失の軽減を図ることができる。
【0016】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る圧力温度センサの断面図である。
【
図3】測定対象の圧力損失を比較するための図であり、(a)は各板材が接続された構造、(b)は各板材の一端部が互いに離間した構造、(c)は(b)よりも板材長さが短い構造、(d)は板部が設けられていない構造を示した図である。
【
図4】
図3に示された各構造において、板材長さと測定対象の圧力損失との関係を示した図である。
【
図5】
図3に示された各構造において、センサチップを基準として上流側の流速と下流側の流速とを示した図である。
【
図6】
図3に示された各構造において、板材長さとセンサチップの近傍の測定対象の流速との関係を示した図である。
【
図7】第1実施形態に係る流路部の変形例を示した断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る圧力温度センサの変形例を示した断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る流路部の一部を示した斜視図である。
【
図10】第3実施形態に係る流路部の一部を示した斜視図である。
【
図11】第4実施形態に係る流路部の断面図である。
【
図12】第5実施形態に係る温度センサの断面図である。
【
図13】管部の内部の測定対象の流速を比較するための図であり、(a)は従来品、(b)は第1開口部を設置壁面側に移動させた構造、(c)は突出部を配管内の対向壁面に近づけた構造、(d)は第1開口部を設置壁面側に移動させ、かつ、突出部を配管内の対向壁面に近づけた構造を示した図である。
【
図14】
図13(a)の従来品における温度検出応答遅れを示した図である。
【
図15】
図13に示された各構造において、センサチップを基準として上流側の流速と下流側の流速とを示した図である。
【
図16】温度検出部周囲の流速の最大値と、センサ出力と配管内の測定対象の温度との最大温度差と、の関係を示した図である。
【
図17】第6実施形態に係る圧力温度センサの断面図であり、測定対象の流れ方向に平行な断面図である。
【
図18】第6実施形態に係る圧力温度センサの断面図であり、測定対象の流れ方向に垂直な断面図である。
【
図19】第7実施形態に係る圧力温度センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る圧力温度センサは、測定対象の圧力及び温度の両方を検出可能に構成されたものである。圧力温度センサは配管に固定され、配管内の測定対象の圧力及び温度を検出する。測定対象は、例えば、エンジンオイルやトランスミッションオイル等の潤滑油である。もちろん、測定対象は他の液体や気体等の他の流体の場合もある。
【0020】
図1に示されるように、圧力温度センサ100は、ハウジング110、センサボディ120、ポッティング部130、モールド樹脂部140、センサチップ150、及び流路部170を備えている。
【0021】
ハウジング110は、SUS等の金属材料が切削等により加工された中空形状のケースである。ハウジング110は、一端側に突出部111を有し、他端側に開口部112を有している。突出部111は管部113を有する。管部113は開口部112に連通している。管部113の外周面には、取付対象である配管200にネジ結合可能な雄ネジ部114が形成されている。
【0022】
ハウジング110の開口部112は周壁115に囲まれることで構成されている。ハウジング110は、管部113の一部が取付対象である配管200の肉厚部201に設けられた貫通ネジ穴202に固定される。これにより、管部113の開口端部113aが配管200の内部に位置することになる。
【0023】
センサボディ120は、圧力温度センサ100と外部装置とを電気的に接続するためのコネクタを構成する部品である。センサボディ120は、例えばPPS等の樹脂材料で形成されている。センサボディ120は、一端側がハウジング110の開口部112に固定される固定部121として形成され、他端側がコネクタ部122として形成されている。固定部121はコネクタ部122側に凹んだ凹部123を有している。
【0024】
また、センサボディ120は、ターミナル124がインサート成形されている。ターミナル124の一端側は固定部121に封止され、他端側はコネクタ部122の内側に露出するようにセンサボディ120にインサート成形されている。ターミナル124の一端側は、モールド樹脂部140の一部が凹部123に収容されることでモールド樹脂部140の電気的部品に接続される。
【0025】
そして、センサボディ120は、固定部121がOリング125を介してハウジング110の開口部112に嵌め込まれた状態で、ハウジング110の周壁115の端部が当該固定部121を押さえるようかしめ固定されている。
【0026】
ポッティング部130は、センサボディ120の凹部123とモールド樹脂部140との隙間に充填されたシール用の部品である。ポッティング部130は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料で形成されている。ポッティング部130は、測定対象であるオイルからモールド樹脂部140の一部やターミナル124の接合部等をシール及び保護する役割を果たす。
【0027】
モールド樹脂部140は、センサチップ150を保持する部品である。モールド樹脂部140は、一端部141と、一端部141とは反対側の他端部142と、を有する柱状に構成されている。モールド樹脂部140は、一端部141側にセンサチップ150を封止している。
【0028】
また、モールド樹脂部140は、リードフレーム143の一部及び回路チップ160を封止している。リードフレーム143は、センサチップ150及び回路チップ160が実装されるベースとなる部品である。リードフレーム143の一端側にはセンサチップ150が実装され、他端側には回路チップ160が実装されている。
【0029】
リードフレーム143の他端側の先端部分は、モールド樹脂部140の他端部142から露出していると共に、ターミナル124の一端側に接続されている。なお、リードフレーム143は、複数に分割されていても良い。この場合、ボンディングワイヤによって電気的接続を行えば良い。リードフレーム143とターミナル124ともボンディングワイヤで接続されていても良い。
【0030】
回路チップ160は、メモリ等の半導体集積回路が形成されたICチップである。回路チップ160は、半導体基板等を用いて形成されている。回路チップ160は、センサチップ150への電源として定電流の供給や、センサチップ150から圧力信号及び温度信号を入力し、予め設定された信号処理値に基づいて各信号の信号処理を行う。信号処理値とは、各信号の信号値を増幅や演算等するための調整値である。回路チップ160は、図示しないボンディングワイヤによってリードフレーム143を介してセンサチップ150と電気的に接続されている。
【0031】
センサチップ150は、測定対象の温度を検出する電子部品である。センサチップ150は、例えば銀ペースト等でリードフレーム143に実装されている。センサチップ150は、複数の層が積層されて構成された板状の基板を有して構成されている。複数の層は、ウェハレベルパッケージとして複数のウェハが積層され、半導体プロセス等で加工された後、センサチップ150毎にダイシングカットされる。
【0032】
センサチップ150は、薄肉状のダイヤフラム151を有する。ダイヤフラム151には複数のゲージ抵抗152が形成されている。各ゲージ抵抗152は、半導体層に対するイオン注入により形成された拡散抵抗である。各ゲージ抵抗152はダイヤフラム151の上に形成された薄膜抵抗として構成されていても良い。なお、センサチップ150には、各ゲージ抵抗152に接続された図示しない配線部やパッド等も形成されている。
【0033】
各ゲージ抵抗152は、圧力が印加されたダイヤフラム151の歪みに応じて抵抗値が変化する抵抗素子である。また、各ゲージ抵抗152は温度に応じて抵抗値が変化する素子である。各ゲージ抵抗152は、ホイートストンブリッジ回路を構成するように電気的に接続されている。ホイートストンブリッジ回路は、回路チップ160から定電流の電源が供給される。これにより、各ゲージ抵抗152のピエゾ抵抗効果を利用して、ダイヤフラム151の歪みや温度に応じた電圧をセンサ信号として検出することができる。
【0034】
具体的には、センサチップ150は、ダイヤフラム151の歪みに応じた複数のゲージ抵抗152の抵抗変化をホイートストンブリッジ回路の中点電圧の変化として検出し、当該中点電圧を圧力信号として出力する。一方、センサチップ150は、測定対象から受ける熱に応じた複数のゲージ抵抗152の抵抗変化をホイートストンブリッジ回路のブリッジ電圧として検出し、当該ブリッジ電圧を温度信号として出力する。
【0035】
したがって、本実施形態では、各ゲージ抵抗152は、圧力検出部及び温度検出部の両方の機能を有する。センサチップ150は、圧力検出部及び温度検出部に対応した部分が露出するように、モールド樹脂部140の一端部141側に封止されている。
【0036】
そして、モールド樹脂部140は、センサチップ150の圧力検出部及び温度検出部が管部113の内部に位置するように、センサボディ120及びポッティング部130に保持される。
【0037】
流路部170は、突出部111の突出方向において、モールド樹脂部140の隣に位置するように管部113に設けられた部品である。突出部111の突出方向は、モールド樹脂部140に対する流路部170の突出方向と同じである。流路部170は、管部113が配管200に固定されることで配管200の内部に配置される。流路部170は、一部が管部113の開口端部113aから突出している。流路部170は、板部171、孔部172、及び腕部173を有する。
【0038】
板部171は、板面174を有する複数の板材175と、複数の板材175のうち突出方向においてモールド樹脂部140側とは反対側を固定する底部176と、を有する。板面174は、突出方向に沿った面である。突出方向に沿った面とは、突出方向に平行な面だけでなく、突出方向に対して傾斜した面も含む。板部171は、測定対象を板面174に沿わせてセンサチップ150側に導く第1流路177を構成する。
【0039】
図2に示されるように、複数の板材175は、板面174が突出方向に垂直な垂直方向の垂直面において放射状に配置されている。本実施形態では、4枚の板材175が90度の間隔を持って配置されている。
【0040】
孔部172は、板部171に設けられている。孔部172は、垂直方向において、複数の板材175のうち底部176の中心部178側の一端部179が互いに離間することにより構成されている。つまり、孔部172は、各板材175が接合されていないことによる空間部に対応する。孔部172は、垂直方向に沿って測定対象を通過させる第2流路180を構成する。
【0041】
腕部173は、管部113の内部に流路部170を保持するための部分である。腕部173の一端は、板部171に一体化されている。腕部173の他端は、センサボディ120に達するまで引き延ばされている。そして、腕部173の他端は、固定部121とハウジング110とに挟まれている。これにより、流路部170は、底部176側が管部113から突出するように、管部113の内部に保持されている。
【0042】
上記の構成によると、測定対象は、一部が流路部170の第1流路177に沿ってセンサチップ150側に引き込まれる。これにより、センサチップ150の検出部近傍で測定対象の流速が向上するので、温度応答性が向上する。また、測定対象は、一部が流路部170の第2流路180を通って流路部170をそのまま通過する。これにより、流路部170が測定対象から受ける動圧の影響が軽減される。また、流路部170の流れの前後で測定対象の圧力差が小さくなるので、測定対象の圧力損失が軽減される。以上が、圧力温度センサ100の全体構成である。
【0043】
発明者らは、
図3(a)~
図3(d)に示されるように、底部176の中心部178を中心とした放射方向において、板材175の一端部179から他端部181までの板材長さを変化させた4つの構造を用意した。他端部181は、放射方向において、底部176の中心部178側とは反対側の端部である。そして、各構造について配管200内の測定対象の圧力損失をシミュレーションした。測定対象は、自動車のエンジンオイルとした。
【0044】
なお、板材175の数を3枚とした。
図3(a)~
図3(d)の各図は突出方向に垂直な断面である。また、
図3(a)~
図3(d)の各板部171は、有底管状の管部113に収容されているとした。管部113には測定対象の出入口となる開口部が設けられている。
【0045】
図3(a)は、3枚の板材175の一端部179が底部176の中心部178で接続された構造である。
図3(b)は、3枚の板材175の一端部179が互いに離間した構造である。
図3(c)は、
図3(b)の板材175よりも板材長さが短い構造である。
図3(d)は、板材175が存在しない構造である。
【0046】
図4に示されるように、板材175が互いに接続された
図3(a)の構造の圧力損失が最も高くなった。これは、流路部170に第1流路177が設けられているが、第2流路180が存在しないために板材175に衝突した測定対象の逃げ場がないからである。測定対象の流れが滞った結果である。
【0047】
次いで、
図3(b)の構造、
図3(c)の構造の順に測定対象の圧力損失が軽減された。これは、孔部172の第2流路180を介して測定対象の逃げ道が確保されたためである。板材長さが短いほど測定対象の圧力損失が小さくなったのは、測定対象が孔部172をスムーズに通過した結果である。
【0048】
図3(d)の構造は板材が存在しないが、管部113が配管200に突出する自体によって測定対象の圧力損失が必ず発生することを意味している。以上の結果から、板材175の一端部141は接続されていない構造を採用すべきであり、板材長さは短いことが好ましいと言える。
【0049】
また、発明者らは、
図3に示された各構造においてセンサチップ150の検出部を基準として上流側の流速と下流側の流速とをシミュレーションした。その結果を
図5に示す。
図4において、マイナスの距離はセンサチップ150の上流側に対応し、プラスの距離はセンサチップ150の下流側に対応する。
【0050】
図5に示されるように、
図3(d)の各板材175が設けられていない構造におけるセンサチップ150の上流側及び下流側の流速は、4つの構造の中で最も小さい値であった。これに対し、
図3(a)~(c)に示された構造では、管部113の内部の測定対象の流速が向上した。
【0051】
具体的には、
図3(a)の各板材175が接続された構造では、測定対象の流速が最も大きくなった。
図3(b)及び
図3(c)の孔部172が設けられた構造では、孔部172が小さい
図3(b)の構造のほうが
図3(b)の構造よりも測定対象の流速が向上した。孔部172によって測定対象の流速は落ちるが、孔部172のサイズは小さいほうが良いことがわかる。
【0052】
さらに、発明者らは、測定対象の粘度を変化させたとき、センサチップ150の近傍の測定対象の流速をシミュレーションした。測定対象の粘度は高粘度と低粘度の2種類とした。その結果を
図6に示す。
【0053】
図6に示されるように、板材長さに応じて、高粘度及び低粘度の両方とも、センサチップ150の近傍の測定対象の流速が変化した。板材長さが一定値に達すると、高粘度と低粘度とで流速値が逆転する。また、高粘度及び低粘度の両方とも、板材長さを一定値以上にすることで、センサチップ150の近傍の測定対象の流速が向上した。
【0054】
特に、高粘度の測定対象に対するセンサチップ150の検出応答性が向上した。低粘度の測定対象の場合、センサチップ150の近傍の測定対象の流速が高粘度よりも小さくなった。これは、高粘度よりも低粘度のほうが、センサチップ150に対する動圧影響を軽減できると言える。
【0055】
以上説明したように、流路部170の各板材175によって、測定対象が第1流路177に沿ってセンサチップ150側に流れる。このため、配管200に流れる測定対象の温度と管部113の内部の測定対象の温度との乖離が小さくなる。その結果、センサチップ150の温度応答性が向上する。
【0056】
また、測定対象が流路部170の第2流路180を通過するので、流路部170に向かって流れる測定対象を孔部172によって逃がしやすくなっている。このため、センサチップ150に対する測定対象の流れの影響が低減される。その結果、センサチップ150に対する動圧影響が軽減される。
【0057】
さらに、配管200内の測定対象の流れが孔部172の第2流路180によって妨げられない。このため、測定対象の流れにおいて流路部170の前後に圧力差が生じにくくなる。その結果、測定対象の圧力損失が軽減される。
【0058】
特に、エンジンの潤滑システムでは、圧力温度センサ100から得られる圧力信号を元に圧送ポンプの吐出圧を制御して潤滑油を供給しているが、圧力損失が発生するとある部分に潤滑油を適正量供給することができないという問題が発生する可能性がある。しかし、本実施形態に係る圧力温度センサ100においては、測定対象の圧力損失が軽減されるので、上記の問題は発生しなくなる。
【0059】
そして、上述のように、板材長さが大きくなると、測定対象の圧力損失が大きくなる。しかし、センサチップ150の近傍の測定対象の流速が大きくなって検出応答性が向上するというメリットがある。また、測定対象の粘度によってセンサチップ150に対する動圧影響も変化する。よって、圧力温度センサ100の使用状況に応じて、最適な板材長さに設定されれば良い。
【0060】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、ゲージ抵抗152が特許請求の範囲の「圧力検出部」及び「温度検出部」に対応する。また、ハウジング110、センサボディ120、及びポッティング部130が特許請求の範囲の「保持部」に対応する。
【0061】
変形例として、
図7に示されるように、板材175は3枚でも良い。この場合、各板材175は120度の間隔を持って放射状に配置される。3枚の板材175が場合、4枚の板材175の場合よりも作りやすいというメリットがある。また、隣の板材175との間隔が、4枚の板材175よりも3枚の板材175のほうが広くなるので、圧力損失が小さくなるというメリットもある。なお、各板材175は等間隔の配置に限られず、不等間隔に配置されても構わない。
【0062】
変形例として、流路部170は、ハウジング110に一体化されていても良い。具体的には、
図8に示されるように、流路部170は、管部113の一部として形成されている。これによると、部品点数を削減することができる。
【0063】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。
図9に示されるように、各板材175は、垂直方向の垂直面において底部176の中心部178側の一端部179が互いに接続された接続部182を構成する。また、孔部172は、各板材175を貫通する貫通孔183である。貫通孔183は各板材175に1個ずつ設けられている。貫通孔183は、第2流路180を構成する。これにより、測定対象は各貫通孔183を介して流路部170を通過する。したがって、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
変形例として、貫通孔183は全ての板材175に設けられていなくても良い。1枚の板材175に設けられる貫通孔183の数も1個に限られず、1枚の板材175に複数の貫通孔183が設けられていても良い。また、貫通孔183の平面形状は四角形状に限られず、多角形や円形でも良い。
【0065】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分について説明する。
図10に示されるように、孔部172は、突出方向に垂直な垂直方向に各板材175の接続部182を貫通する貫通孔184である。貫通孔184は、第2流路180を構成する。これにより、測定対象は貫通孔184を介して流路部170を通過する。したがって、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0066】
変形例として、貫通孔184は1個に限られず、複数の貫通孔184が接続部182に設けられていても良い。また、貫通孔183の平面形状は四角形状に限られず、多角形や円形でも良い。
【0067】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1~第3実施形態と異なる部分について説明する。
図11に示されるように、各板材175は、流路部170の外周方向に板面185を有する板材186を含んでいる。板材186は、各板材175の他端部181に固定されている。これによると、隣同士の板材186の隙間を介して各板材175側に進入する測定対象が、板材186によって引っ掛かることで流路部170の外側に逃げにくくなる。このため、測定対象が各板材175の板面174に沿ってセンサチップ150側に移動しやすくなる。本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0068】
変形例として、各板材186は、突出方向において、モールド樹脂部140側が一体化されていても良い。
【0069】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1~第4実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、圧力温度センサ100は、上述の流路部170を備えていない。本実施形態では、ハウジング110の突出部111の構造に基づいて、管部113の内部を通過する測定対象の流速を向上させる。
【0070】
図12に示されるように、ハウジング110の突出部111は、管部113及び底部116が形成された有底管状の部分である。突出部111の底部116側が配管200の内部に位置することになる。
【0071】
また、突出部111は、第1開口部111a、第2開口部111b、及び第3開口部111cを有する。第1開口部111aは、管部113に設けられていると共に、管部113の外部から内部に測定対象を流入させる部分である。第1開口部111aは、測定対象の上流側に向けられる。管部113の外部は配管200の内部である。
【0072】
第2開口部111bは、管部113に設けられていると共に、管部113の内部から外部に測定対象を流出させる部分である。管部113の内部から測定対象をスムーズに流出させるために、第2開口部111bは測定対象の下流側に向けられる。第2開口部111bは、第1開口部111aに対向する位置に形成されていても良い。
【0073】
第3開口部111cは、第1開口部111a及び第2開口部111b以外の測定対象を流出入させる部分である。第3開口部111cは管部113に複数形成されている。
【0074】
次に、管部113の内部に流れる測定対象の流速を向上させるための具体的な手段及びその効果について説明する。まず、突出部111は、センサチップ150の温度検出部が測定対象の上流側に向けられた状態で配管200に固定される。これにより、温度検出部に測定対象を直接当てやすくすることができる。
【0075】
突出部111は、配管200の内壁面203のうち突出部111が突出する設置壁面204から当該設置壁面204に対向する対向壁面205までの長さの4/5以上の長さが設置壁面204から突出するように形成されている。
【0076】
配管200が円筒の場合、設置壁面204から対向壁面205までの長さは、配管200の内径に対応する。配管200が楕円筒の場合、設置壁面204から対向壁面205までの長さは、例えば、突出部111の中心軸を基準として、中心軸と設置壁面204との交点から中心軸と対向壁面205との交点までの長さである。突出部111の中心軸は突出部111の突出方向に平行な軸である。配管200が四角筒等の場合、設置壁面204から対向壁面205までの長さは、設置壁面204と対向壁面205との対向長さである。
【0077】
また、突出部111の底部116は、半球状になっている。そして、突出部111の底部116を接触させないために、ハウジング110はストッパ117を有している。このストッパ117により、圧力温度センサ100が規定トルク以上で配管200に取り付けられたとしても、突出部111の底部116が対向壁面205に接触しないようにすることができる。
【0078】
上記の構成によると、突出部111が配管200の一部を塞ぐことになるので、測定対象が第1開口部111aに入り込みやすくなる。言い換えると、突出部111の底部116と対向壁面205との隙間が狭いので、当該隙間を通過する測定対象の流速よりも、第1開口部111aを介して突出部111の管部113に流入する測定対象の流速が速くなる。
【0079】
第1開口部111aは、突出部111の突出方向に垂直な方向において、配管200の内壁面203のうち突出部111が突出する設置壁面204に重なるように管部113に形成されている。「第1開口部111aと設置壁面204とが重なる」とは、設置壁面204と第1開口部111aの開口面とが交差することである。
【0080】
このような配置関係により、配管200から第1開口部111aを介して温度検出部に至るまでの経路が最短距離になるので、配管200の流れに影響されて温度検出部の周囲の測定対象が流動しやすくなる。また、配管200内のうち設置壁面204側を流れる測定対象が突出部111すなわち管部113に衝突することなく第1開口部111aを介して管部113の内部に流れ込むので、管部113の内部に流れ込む測定対象の流速が遅くなってしまうことはない。したがって、第1開口部111aを通過する測定対象の流速を確保することができる。
【0081】
発明者らは、
図13(a)~
図13(d)に示されるように、突出部111の突出長さ及び第1開口部111aの位置を変化させた4つの構造を用意し、各構造について温度検出応答遅れについて調べた。試験は、自動車のエンジンオイルを対象とした。
【0082】
図13(a)は、突出部111の突出長さが配管200の内径の4/5未満であり、かつ、第1開口部111aの位置が設置壁面204から底部116までの間に位置する従来品を示している。
図13(b)は、第1開口部111aが設置壁面204に重なる構造を示している。
図13(c)は、突出部111の突出長さが配管200の内径の4/5以上であり、かつ、第1開口部111aの位置が設置壁面204から底部116までの間に位置する構造を示している。
図13(d)は、突出部111の突出長さが配管200の内径の4/5以上であり、かつ、第1開口部111aが設置壁面204に重なる構造を示している。
【0083】
まず、発明者らは、
図13(a)に示された従来品の温度検出応答遅れを調べた。その結果を
図14に示す。
図14に示されるように、エンジンの始動後、エンジン回転数は一定値になる。配管200内のエンジンオイルの温度は上昇していくが、センサチップ150の温度検出部で検出される温度は上昇しにくくなっている。すなわち、測定対象の実際の温度と測定温度とに乖離が生じている。これは、管部113の内部の測定対象が滞留しているからである。よって、温度検出応答遅れが発生している。
【0084】
続いて、発明者らは、
図13に示された各構造においてセンサチップ150を基準として上流側の流速と下流側の流速とを調べた。その結果を
図15に示す。配管200を流れるエンジンオイルの粘度を9.0Pa・s、流速を0.5m/sとした。
図15において、マイナスの距離はセンサチップ150の上流側に対応し、プラスの距離はセンサチップ150の下流側に対応する。
【0085】
図15に示されるように、
図13(a)の従来品におけるセンサチップ150の上流側及び下流側の流速は、4つの構造の中で最も小さい値であった。これに対し、
図13(b)~(d)に示された構造では、管部113の内部の測定対象の流速が向上した。
【0086】
具体的には、
図13(b)の第1開口部111aを移動させた構造では、センサチップ150の上流側の流速は、従来品に対して1.4倍になった。また、
図13(c)の突出部111の突出長さを長くした構造では、センサチップ150の上流側の流速は、従来品に対して18倍になった。さらに、
図13(d)の第1開口部111aを移動させて突出部111の突出長さを長くした構造では、センサチップ150の上流側の流速は、従来品に対して26倍になった。
【0087】
このように、第1開口部111aを移動させた構造や、突出部111の突出長さを長くした構造では、それぞれセンサチップ150の上流側の流速が向上したが、これらを組み合わせることで流速がさらに向上する結果になった。
【0088】
通常、突出部111が配管200に突き出ただけの状態では、突出部111が流路抵抗になるので、エンジンオイルは流路抵抗の少ない突出部111の底部116側や突出部111の側面を速い流速で通過する。しかし、突出部111の底部116を対向壁面205に近づけることで、突出部111の底部116側の流路抵抗が増加し、突出部111の底部116側よりも突出部111の側面や第1開口部111aでの流速が速まる。これに伴い、温度検出部周辺の流速もつられて速くなった。
【0089】
発明者らは、
図13(d)の構造において、温度検出部周囲の流速の最大値と、センサ出力と配管200内の測定対象の温度との最大温度差と、の関係を調べた。その結果を
図5に示す。
図16に示されるように、温度検出部周囲の流速の最大値が大きくなると、センサ出力と配管200内の測定対象の温度との最大温度差が小さくなるという結果になった。この結果からも、配管200内の測定対象の流速が向上したことで、温度検出応答遅れが改善されていると言える。
【0090】
以上説明したように、第1開口部111aを設置壁面204側に移動させた構造や、突出部111の突出長さを長くした構造とすることで、管部113の内部の測定対象の流速を向上させることができる。つまり、第1開口部111a及び突出部111が流速向上部として機能する。その結果、配管200に流れる測定対象の温度と管部113の内部の測定対象の温度との乖離を小さくすることができ、ひいては測定対象の温度検出応答遅れを改善することができる。
【0091】
また、管部113の内部の測定対象の流速が向上することで、センサチップ150を配管200の内部に位置させずに済む。これにより、センサチップ150の圧力検出部や温度検出部が測定対象の動圧を受けないようにすることができる。
【0092】
上述のように、第1開口部111aを設置壁面204側に移動させた構造のみ、あるいは、突出部111の突出長さを長くした構造のみ、としても、管部113の内部の測定対象の流速が向上している。したがって、変形例として、第1開口部111aの移動や、突出部111の突出長さの延長をそれぞれ単独で構成しても良い。
【0093】
別の変形例として、第2開口部111bは、第1開口部111aに対向する位置に形成されていても良い。これにより、管部113の内部の測定対象の流れをスムーズにすることができる。
【0094】
別の変形例として、突出部111の先端形状は半球状に限られず、例えば平面になっていても良い。
【0095】
(第6実施形態)
本実施形態では、第5実施形態と異なる部分について説明する。
図17に示されるように、モールド樹脂部140は、突出部111の底部116側の先端部145が突出部111の突出方向に垂直な垂直方向において第1開口部111aに重なっている。モールド樹脂部140の先端部145は、センサチップ150よりも底部116側の部分である。
【0096】
図17及び
図18に示されるように、本実施形態では、突出部111の中心軸に垂直な方向すなわち測定対象の流れ方向に、第1開口部111aの開口部分の一部がモールド樹脂部140の先端部145に重なっている。これにより、第1開口部111aを介して管部113の内部に流入する測定対象は、モールド樹脂部140の先端部145に当たると共にセンサチップ150側に流れを変える。センサチップ150側に流れた測定対象はモールド樹脂部140の周囲を流れて下流側に移動し、管部113の内部を底部116側に流れ、第2開口部111bから配管200に流出する。
【0097】
このように、センサチップ150を保持するモールド樹脂部140の先端部145が突出部111の底部116まで延長されているので、第1開口部111aを介して管部113の内部に流入する測定対象の流れを強制的にセンサチップ150側の流れに変更させることができる。すなわち、測定対象の流れが垂直に変化する。つまり、モールド樹脂部140が流速向上部として機能する。したがって、第5実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
変形例として、突出部111の中心軸に垂直な方向において、第1開口部111aの開口部分の全体がモールド樹脂部140の先端部145に重なっていても良い。また、本実施形態においても、ストッパ117を用いても良い。
【0099】
(第7実施形態)
本実施形態では、第5、第6実施形態と異なる部分について説明する。
図19に示されるように、センサボディ120は、板部126を有する。板部126は、モールド樹脂部140よりも第2開口部111b側に位置する柱状に形成されている。つまり、板部126はモールド樹脂部140よりも測定対象の流れの下流側に位置する。
【0100】
また、板部126は、モールド樹脂部140の先端部145よりも底部116側に突出している。さらに、板部126の先端部分は、突出部111の突出方向に垂直な方向において第1開口部111aに重なっている。言い換えると、突出部111の中心軸に垂直な方向すなわち測定対象の流れ方向に、第1開口部111aの開口部分の一部が板部126の先端部分に重なっている。
【0101】
以上の構成により、第2実施形態と同様に、管部113の内部の測定対象の流れを強制的に変更することができる。つまり、板部126が流速向上部として機能する。したがって、第5実施形態と同様の効果が得られる。
【0102】
変形例として、第1開口部111aの開口部分の一部ではなく、第1開口部111aの開口部分の全体が、突出部111の中心軸に垂直な方向において板部126に重なっていても良い。
【0103】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された圧力温度センサ100の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、複数のゲージ抵抗152が圧力と温度の両方を検出するように構成されているが、圧力を検出する素子と温度を検出する素子とは別々に構成されていても良い。つまり、圧力検出部と温度検出部とがセンサチップ150に別々に設けられていても良い。
【0104】
回路チップ160とセンサチップ150との電気接続部品はリードフレーム143に限られない。例えば、回路チップ160及びセンサチップ150はプリント基板に実装されていても構わない。
【符号の説明】
【0105】
100 圧力温度センサ、110 ハウジング(保持部)、113 管部、120 センサボディ(保持部)、130 ポッティング部(保持部)、140 モールド樹脂部、150 センサチップ、151 ダイヤフラム、152 ゲージ抵抗(圧力検出部、温度検出部)、170 流路部、171 板部、172 孔部、174 板面、177 第1流路、180 第2流路