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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/10 20060101AFI20220801BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20220801BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220801BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B01J35/10 301F
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
F01N3/28 301P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020118662
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015660
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏生
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
(72)【発明者】
【氏名】樺嶋 信介
(72)【発明者】
【氏名】高木 信之
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 敬
(72)【発明者】
【氏名】岡田 満克
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/136560(WO,A1)
【文献】特開2017-159226(JP,A)
【文献】特開2012-240027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の表面に形成された触媒粒子を含有する触媒コート層とを備えており、
前記触媒コート層の平均厚さが25~150μmの範囲内にあり、
前記触媒コート層の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により求められる空隙率が1.5~8.0容量%の範囲内にあり、
前記触媒コート層の空隙全体の60~90容量%が、前記基材の排ガスの流れ方向に垂直な触媒コート層断面の断面画像における細孔の円相当径が2~50μmの範囲内にあり、かつ、アスペクト比が5以上である高アスペクト比細孔からなり、
前記高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が10~50の範囲内にあり、
前記触媒コート層全体に貴金属が担持されている
ことを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記触媒コート層の空隙率が1.6~7.0容量%の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記触媒コート層の空隙全体の70~90容量%が前記高アスペクト比細孔からなり、
前記高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が10~35の範囲内にある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記触媒コート層の被覆量が前記基材の単位体積当たり50~300g/Lの範囲内にあることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関し、より詳しくは、基材の表面に形成された触媒コート層を備える排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等に搭載される排ガス浄化用触媒として、排気ガス中に含まれる有害ガス(炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx))等の有害成分を浄化するために、三元触媒や酸化触媒、NOx吸蔵還元型触媒等が開発されている。
【0003】
例えば、国際公開第2016/136560号(特許文献1)には、基材と、該基材の表面に形成された触媒粒子を含有する触媒コート層とを備えており、前記触媒コート層の平均厚さが25~160μmの範囲内にあり、水中重量法により測定した前記触媒コート層の空隙率が50~80容量%の範囲内にあり、前記触媒コート層の空隙全体の0.5~50容量%が、前記基材の排ガスの流れ方向に垂直な触媒コート層断面の断面画像における細孔の円相当径が2~50μmの範囲内にあり、かつ、アスペクト比が5以上である高アスペクト比細孔からなり、前記高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が10~50の範囲内にある排ガス浄化用触媒が開示されている。また、特許文献1には、この排ガス浄化用触媒は、高ガス流量の高負荷領域においても優れた触媒性能を発揮するものであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/136560号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、空隙率が高い触媒コート層において、触媒被覆量を増加させると、触媒コート層が厚くなり、圧力損失が大きくなるという問題があった。また、空隙率が高い触媒コート層において、触媒コート層を薄くすると、触媒被覆量が減少するため、十分な触媒性能が発揮されないという問題があった。さらに、触媒被覆量を増加させた触媒コート層の厚さを薄くするために触媒コート層の空隙率を低くすると、十分な触媒性能が発揮されないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、触媒被覆量を増加させた場合でも、触媒コート層の厚さが薄く、比較的高い触媒性能を発揮する排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、空隙率が低い触媒コート層に、特定の円相当径と特定のアスペクト比を有する高アスペクト比細孔を前記触媒コート層の空隙全体対して高い割合で形成することによって、触媒被覆量を増加させた場合でも、触媒コート層の厚さが薄く、比較的高い触媒性能を発揮する排ガス浄化用触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材の表面に形成された触媒粒子を含有する触媒コート層とを備えており、
前記触媒コート層の平均厚さが25~150μmの範囲内にあり、
前記触媒コート層の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により求められる空隙率が1.5~8.0容量%の範囲内にあり、
前記触媒コート層の空隙全体の60~90容量%が、前記基材の排ガスの流れ方向に垂直な触媒コート層断面の断面画像における細孔の円相当径が2~50μmの範囲内にあり、かつ、アスペクト比が5以上である高アスペクト比細孔からなり、
前記高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が10~50の範囲内にあり、
前記触媒コート層全体に貴金属が担持されている
ことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記触媒コート層の空隙率が1.6~7.0容量%の範囲内にあることが好ましい。
【0010】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記触媒コート層の空隙全体の70~90容量%が前記高アスペクト比細孔からなり、前記高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が10~35の範囲内にあることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記触媒コート層の被覆量が前記基材の単位体積当たり50~300g/Lの範囲内にあることが好ましい。
【0012】
なお、本発明の排ガス浄化用触媒が、触媒被覆量を増加させた場合でも、触媒コート層の厚さが薄く、比較的高い触媒性能を発揮する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、空隙率が低い触媒コート層を備えるものである。空隙率が低い触媒コート層は、緻密であり、厚さが薄いため、圧力損失を抑制することができるが、従来の緻密な触媒コート層においては、層内部へのガスの拡散が不十分なため、十分な触媒性能が発揮されない。一方、本発明の排ガス浄化用触媒においては、このような緻密な触媒コート層に前記高アスペクト比細孔が空隙全体に対して高い割合で形成されているため、従来の緻密な触媒コート層に比べて、層内部へのガスの拡散性が優れており、触媒コート層内部に担持された貴金属(触媒活性点)とガスとの接触機会が増加し、比較的高い触媒性能が発揮されると推察される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、触媒被覆量を増加させた場合でも、触媒コート層の厚さが薄く、比較的高い触媒性能を発揮する排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0015】
本発明の排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材の表面に形成された触媒粒子を含有する触媒コート層とを備えており、
前記触媒コート層の平均厚さが25~150μmの範囲内にあり、
前記触媒コート層の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により求められる空隙率が1.5~8.0容量%の範囲内にあり、
前記触媒コート層の空隙全体の60~90容量%が、前記基材の排ガスの流れ方向に垂直な触媒コート層断面の断面画像における細孔の円相当径が2~50μmの範囲内にあり、かつ、アスペクト比が5以上である高アスペクト比細孔からなり、
前記高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が10~50の範囲内にあり、
前記触媒コート層全体に貴金属が担持されているものである。
【0016】
(基材)
本発明の排ガス浄化用触媒における基材としては、特に制限はなく、排ガス浄化用触媒の基材として用いることが可能な公知の基材が挙げられ、中でも、ハニカム形状の基材が好ましい。このようなハニカム形状の基材としては、特に制限はなく、排ガス浄化用触媒の基材として用いることが可能な公知のハニカム形状の基材が挙げられ、中でも、ハニカム形状のモノリス基材(ハニカムフィルタ、高密度ハニカム等)等が好ましい。また、このような基材の材質も特に制限はなく、コージエライト、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が挙げられ、中でも、コストの観点から、コージエライトが好ましい。
【0017】
(触媒コート層)
本発明の排ガス浄化用触媒における触媒コート層は、前記基材の表面に形成されており、触媒粒子を含有するものであり、触媒粒子からなるものであることが好ましい。このような触媒コート層を形成する触媒粒子としては、排ガスに対する浄化性能を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、酸化アルミニウム(Al、アルミナ)、酸化セリウム(CeO、セリア)、酸化ジルコニウム(ZrO、ジルコニア)、酸化珪素(SiO、シリカ)、酸化イットリウム(Y、イットリア)、酸化ネオジム(Nd)等の酸化物、又は、これらの複合酸化物等からなる触媒基材粒子(酸化物粒子(好ましくは、多孔質酸化物粒子))に貴金属が担持したものが挙げられる。これらの触媒粒子は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0018】
なお、前記触媒コート層における「触媒粒子からなるもの」とは、前記触媒コート層が触媒粒子のみから構成されるもの、又は、主として触媒粒子から構成され、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含んでいるものを意味する。他の成分としては、この種の用途の触媒コート層として用いられる他の金属酸化物や添加剤等が挙げられ、例えば、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)等の希土類元素、鉄(Fe)等の遷移金属等が挙げられる。これらの成分は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記貴金属としては、特に制限はなく、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)が挙げられる。これらの貴金属は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの貴金属の中でも、触媒性能の観点から、Pt、Rh、Pd、Ir、Ruが好ましく、Pt、Rh、Pdが特に好ましい。本発明の排ガス浄化用触媒においては、このような貴金属が触媒コート層全体に担持されていることによって、比較的高い触媒性能が発揮される。一方、貴金属が触媒コート層中の一部の触媒基材粒子に担持されている排ガス浄化用触媒は、十分な触媒性能が発揮されない。
【0020】
本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記触媒コート層の被覆量(前記触媒基材粒子の被覆量)が、前記基材の単位体積当たり50~300g/Lの範囲内にあることが好ましく、50~250g/Lの範囲内にあることがより好ましく、50~200g/Lの範囲内にあることが特に好ましい。前記触媒コート層の被覆量が前記下限未満になると、触媒粒子の触媒活性が十分に得られないため、十分な触媒性能が発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒コート層が厚くなるため、圧力損失が増大して燃費が悪化する傾向にある。
【0021】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記貴金属の被覆量が、前記基材の単位体積当たり0.05~10g/Lの範囲内にあることが好ましく、0.1~10g/Lの範囲内にあることがより好ましく、0.1~5g/Lの範囲内にあることが特に好ましい。前記貴金属の被覆量が前記下限未満になると、触媒活性が十分に得られないため、十分な触媒性能が発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒活性が飽和するため、コストが上昇する傾向にある。
【0022】
本発明の排ガス浄化用触媒における前記触媒コート層は、平均厚さが25~150μmの範囲内にあることが必要である。前記触媒コート層の平均厚さが前記下限未満になると、触媒粒子の触媒活性が十分に得られないため、十分な触媒性能が発揮されず、他方、前記上限を超えると、排ガス等が通過する際の圧力損失が大きくなり、十分な触媒性能が発揮されない。また、前記触媒コート層の平均厚さは、圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスという観点から、50~100μmの範囲内にあることが好ましく、70~90μmの範囲内にあることが特に好ましい。なお、前記触媒コート層の平均厚さは、前記触媒コート層の基材の径方向の断面を走査型電子顕微鏡や光学顕微鏡観察等により観察し、得られた顕微鏡写真において、無作為に抽出した10箇所の触媒コート層の厚さを測定し、これらを平均することにより求めることができる。
【0023】
また、本発明の排ガス浄化用触媒における前記触媒コート層は、空隙率が1.5~8.0容量%の範囲内にあることが必要である。前記触媒コート層の空隙率が前記下限未満になると、前記触媒コート層内部へのガスの拡散性が低下するため、十分な触媒性能が発揮されず、他方、前記上限を超えると、前記触媒粒子の被覆量が少なくなるため、触媒活性が十分に得られず、十分な触媒性能が発揮されない。また、前記触媒コート層の空隙率は、ガス拡散性と触媒活性とのバランスという観点から、1.6~7.0容量%の範囲内にあることが好ましく、3.0~7.0容量%の範囲内にあることが特に好ましい。なお、前記触媒コート層の空隙率は、前記触媒コート層の基材の排ガスの流れ方向の断面を走査型電子顕微鏡により観察し、得られたSEM像に対して、細孔と触媒成分との輝度の差を利用して市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製二次元画像解析ソフト「WinROOF」)を用いて二値化処理を行い、細孔を抽出して、撮影視野に対して細孔部分が占める面積の割合を3以上の撮影視野について算出し、それらを平均することにより求めることができる。また、空隙の形状としては、特に制限はなく、例えば、球状、楕円状、円筒形状、直方体状(角柱)、円盤状、貫通路形状及びこれらに類似する形状等のいずれのものであってよい。さらに、このような空隙には、断面の円相当径が2μm未満の微小細孔、断面の円相当径が2μm以上かつアスペクト比が5以上の高アスペクト比細孔、断面の円相当径が2μm以上かつアスペクト比が5未満の細孔等が含まれる。
【0024】
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒における前記触媒コート層は、空隙全体の60~90容量%が、前記基材の排ガスの流れ方向に垂直な触媒コート層断面の断面画像における細孔の円相当径が2~50μmの範囲内にあり、かつ、アスペクト比が5以上である高アスペクト比細孔からなることが必要である。前記高アスペクト比細孔の空隙全体に占める割合が前記下限未満になると、前記触媒コート層内部へのガスの拡散性が低下するため、十分な触媒性能が発揮されず、他方、前記上限を超えると、触媒活性点と接触せずに触媒コート層を素通りするガスの割合が増え、十分な触媒性能が発揮されない。また、前記高アスペクト比細孔の空隙全体に占める割合は、ガスの拡散性と触媒活性点への接触効率とのバランスという観点から、70~90容量%の範囲内にあることが好ましく、75~89容量%の範囲内にあることが特に好ましい。なお、前記高アスペクト比細孔の空隙全体に占める割合は、前記触媒コート層中の高アスペクト比細孔による空隙率を国際公開第2016/136560号に記載の方法に従って測定し、この高アスペクト比細孔による空隙率を前記触媒コート層の空隙率で除する(高アスペクト比細孔による空隙率/触媒コート層の空隙率)ことにより求めることができる。
【0025】
また、本発明の排ガス浄化用触媒における前記触媒コート層は、前記高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が10~50の範囲内にあることが必要である。前記高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が前記下限未満になると、細孔の連通性が十分得られず、他方、前記上限を超えると、触媒活性点と接触せずに触媒コート層を素通りするガスの割合が増え、十分な触媒性能が発揮されない。また、前記高アスペクト比細孔の平均アスペクト比は、ガスの拡散性と触媒活性点への接触効率の両立という観点から、10~35の範囲内にあることが好ましく、10~30の範囲内にあることが特に好ましい。なお、前記高アスペクト比細孔の平均アスペクト比は、国際公開第2016/136560号に記載の方法に従って求めることができる。
【0026】
〔排ガス浄化用触媒〕
本発明の排ガス浄化用触媒は、前記基材と、該基材の表面に形成された前記触媒粒子を含有する前記触媒コート層とを備えるものである。なお、本発明の排ガス浄化用触媒は、他の触媒と組み合わせて利用してもよい。他の触媒としては、特に制限はなく、公知の触媒(例えば、自動車の排ガス浄化用触媒の場合は、酸化触媒、NOx還元触媒、NOx吸蔵還元型触媒(NSR触媒)、希薄NOxトラップ触媒(LNT触媒)、NOx選択還元触媒(SCR触媒)等)が挙げられる。これらの他の触媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0027】
(排ガス浄化用触媒の製造方法)
本発明の排ガス浄化用触媒は、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、先ず、平均粒子径が0.5~4μmの前記触媒基材粒子Aと、平均粒子径が4~15μmの前記触媒基材粒子Bと、貴金属原料と、造孔材とを混合して触媒スラリーを調製し、この触媒スラリーを前記基材の表面に塗布して触媒スラリー層を形成し、この触媒スラリー層を焼成して前記造孔材を除去することによって、前記基材上に前記触媒コート層が形成された本発明の排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0028】
(触媒スラリー調製)
前記排ガス浄化用触媒の製造方法においては、平均粒子径が0.5~4μmの前記触媒基材粒子Aと、平均粒子径が4~15μmの前記触媒基材粒子Bとを使用する。これにより、空隙率が前記範囲内にある緻密な触媒コート層を形成することができる。一方、前記触媒基材粒子Aのみを用いた場合には、触媒コート層が収縮しやすく、触媒コート層の剥離が生じやすい傾向にある。他方、前記触媒基材粒子Bのみを用いた場合には、触媒コート層が厚くなるため、排ガス等が通過する際の圧力損失が大きくなり、十分な触媒性能が発揮されない傾向にある。また、前記触媒基材粒子A及びBの平均粒子径としては、より緻密な触媒コート層を薄く形成できるという観点から、前記触媒基材粒子Aの平均粒子径が1.0~3.0μmの範囲内にあることが好ましく、前記触媒基材粒子Bの平均粒子径が4.0~7.0μmの範囲内にあることが好ましい。
【0029】
このような前記触媒基材粒子Aと前記触媒基材粒子Bとの混合比としては、質量比(A/B)が1/10~10/1の範囲内にあることが好ましく、1/5~5/1の範囲内にあることがより好ましく、1/3~3/1の範囲内にあることが特に好ましい。前記質量比(A/B)が前記下限未満になると、触媒コート層が厚くなるため、排ガス等が通過する際の圧力損失が大きくなり、十分な触媒性能が発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒コート層の剥離が生じやすい傾向にある。
【0030】
前記排ガス浄化用触媒の製造方法において用いられる貴金属原料としては、特に制限はないが、例えば、貴金属(例えば、Pt、Rh、Pd、Ru等、又はその化合物)の塩(例えば、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアンミン塩、等)又はそれらの錯体(例えば、テトラアンミン錯体)を水、アルコール等の溶媒に溶解した溶液が挙げられる。前記触媒スラリーにおける前記貴金属原料の含有量は、特に制限はなく、触媒コート層における貴金属の担持量に応じて適宜設定することができるが、前記触媒基材粒子Aと前記触媒基材粒子Bとの合計量100質量部に対して、金属換算で0.1~10質量部の範囲内にあることが好ましく、0.1~5質量部の範囲内にあることがより好ましく、0.1~3質量部の範囲内にあることが特に好ましい。
【0031】
前記排ガス浄化用触媒の製造方法において用いられる造孔材としては、後述する焼成処理により除去可能な物質であれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、セルロース繊維等の繊維状有機物が挙げられる。これらの繊維状有機物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの繊維状有機物の中でも、加工性と焼成温度のバランスの観点から、PET繊維、ナイロン繊維が好ましい。触媒スラリーにこのような造孔材を含有させ、その後の焼成処理により造孔材を除去することによって、造孔材の形状と同等形状の空隙を触媒コート層内に形成することができる。このようにして形成された空隙は排ガスの拡散流路となり、緻密な触媒コート層においても比較的高い触媒性能が発揮される。
【0032】
このような造孔材は、平均直径が1.7~8.0μmの範囲内にあることが好ましく、2.0~6.0μmの範囲内にあることがより好ましく、2.0~5.0μmの範囲内にあることが特に好ましい。前記造孔材の平均直径が前記下限未満になると、前記高アスペクト比細孔の断面の円相当径が小さくなり、前記触媒コート層内部へのガスの拡散性が低下するため、十分な触媒性能が発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記高アスペクト比細孔の断面の円相当径が大きくなるため、触媒活性点と接触せずに触媒コート層を素通りするガスの割合が増え、十分な触媒性能が発揮されない傾向にある。
【0033】
また、前記造孔材は、平均長さが15~150μmの範囲内にあることが好ましく、15~120μmの範囲内にあることがより好ましく、20~120μmの範囲内にあることが特に好ましい。前記造孔材の平均長さが前記下限未満になると、高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が小さくなり、細孔の連通性が十分得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が大きくなり、触媒活性点と接触せずに触媒コート層を素通りするガスの割合が増え、十分な触媒性能が発揮されない傾向にある。
【0034】
さらに、前記造孔材は、平均アスペクト比が9~50の範囲内であることが好ましく、9~35の範囲内であることがより好ましく、9~30の範囲内であることが特に好ましい。前記造孔材の平均アスペクト比が前記下限未満になると、高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が小さくなり、細孔の連通性が十分得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、高アスペクト比細孔の平均アスペクト比が大きくなり、触媒活性点と接触せずに触媒コート層を素通りするガスの割合が増え、十分な触媒性能が発揮されない傾向にある。なお、このような造孔材の平均アスペクトは「平均長さ/平均直径」と定義する。ここで、「造孔材の長さ」とは造孔材の始点と終点を結ぶ直線距離とする。平均長さは、無作為に抽出した50以上の造孔材の長さを測定して平均することによって求めることができる。また、平均直径は、無作為に抽出した50以上の造孔材の直径を測定して平均することによって求めることができる。
【0035】
前記触媒スラリーにおける前記造孔材の含有量は、前記触媒基材粒子Aと前記触媒基材粒子Bとの合計量100質量部に対して0.5~4.5質量部の範囲内にあることが好ましく、0.6~4.0質量部の範囲内にあることがより好ましく、1.5~3.5質量部の範囲内にあることが特に好ましい。前記造孔材の含有量が前記下限未満になると、前記高アスペクト比細孔の空隙全体に占める割合が小さくなり、前記触媒コート層内部へのガスの拡散性が低下するため、十分な触媒性能が発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒活性点と接触せずに触媒コート層を素通りするガスの割合が増え、十分な触媒性能が発揮されない傾向にある。
【0036】
前記触媒スラリーの調製方法としては、特に制限はなく、例えば、前記触媒基材粒子Aと前記触媒基材粒子Bと前記貴金属原料と前記造孔材とを混合すればよく、公知の混合方法を適宜採用することができる。混合条件としては、前記造孔材を触媒スラリー中に均一に分散混合できれば特に制限はなく、例えば、攪拌速度が100~400rpmの範囲内にあり、処理時間が30分以上であることが好ましい。
【0037】
また、各成分の混合順序としては、少なくとも、前記貴金属原料を前記触媒基材粒子Aと前記触媒基材粒子Bの両方と混合する必要がある。これにより、層全体に貴金属が担持された触媒コート層を形成することができ、比較的高い触媒性能を発揮することが可能となる。具体的には、前記触媒基材粒子Aと前記触媒基材粒子Bとを含む分散液に前記貴金属原料を混合して前記貴金属を担持させた後に前記造孔材を混合する方法、前記触媒基材粒子Aと前記触媒基材粒子Bとを含む分散液に前記造孔材を混合した後に前記貴金属原料を混合する方法、前記触媒基材粒子Aと前記触媒基材粒子Bとを含む分散液に前記貴金属原料及び前記造孔材を同時に混合する方法、前記貴金属原料を含む溶液に前記触媒基材粒子Aと前記触媒基材粒子Bと前記造孔材とを混合する方法、等が挙げられる。一方、前記貴金属原料を前記触媒基材粒子A又は前記触媒基材粒子Bの一方と混合して担持した場合には、十分な触媒性能が発揮されない。
【0038】
(触媒スラリー層形成)
次に、このようにして調製した触媒スラリーを前記基材の表面に塗布して触媒スラリー層を形成する。塗布方法としては、特に制限はなく、基材を触媒スラリーに浸漬させて塗布する方法(浸漬法)、ウォッシュコート法、触媒スラリーを圧入手段により圧入する方法、等の公知の方法が挙げられる。
【0039】
このような前記触媒スラリーの塗布方法において、前記触媒基材粒子Aと前記触媒基材粒子Bの塗布量の合計量は、前記基材の単位体積当たり50~300g/Lの範囲内にあることが好ましく、50~250g/Lの範囲内にあることがより好ましく、50~200g/Lの範囲内にあることが特に好ましい。前記触媒スラリーの塗布量が前記下限未満になると、触媒粒子の触媒活性が十分に得られないため、十分な触媒性能が発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒コート層が厚くなり、圧力損失が増大して、燃費が悪化する傾向にある。
【0040】
また、前記貴金属原料の塗布量は、金属換算で、前記基材の単位体積当たり0.05~10g/Lの範囲内にあることが好ましく、0.1~10g/Lの範囲内にあることがより好ましく、0.1~5g/Lの範囲内にあることが特に好ましい。前記貴金属原料の塗布量が前記下限未満になると、触媒活性が十分に得られないため、十分な触媒性能が発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒活性が飽和するため、コストが上昇する傾向にある。
【0041】
さらに、前記造孔材の塗布量は、前記基材の単位体積当たり0.25~13.5g/Lの範囲内にあることが好ましく、0.3~10g/Lの範囲内にあることがより好ましく、0.75~7g/Lの範囲内にあることが特に好ましい。前記造孔材の塗布量が前記下限未満になると、前記高アスペクト比細孔の空隙全体に占める割合が小さくなり、前記触媒コート層内部へのガスの拡散性が低下するため、十分な触媒性能が発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記高アスペクト比細孔の空隙全体に占める割合が大きくなり、触媒活性点と接触せずに触媒コート層を素通りするガスの割合が増え、十分な触媒性能が発揮されない傾向にある。
【0042】
(焼成処理)
次に、このようにして形成した触媒スラリー層に焼成処理を施し、前記造孔材を除去することによって、前記高アスペクト比細孔を所定の割合で含有する前記触媒コート層が前記基材上に形成された本発明の排ガス浄化用触媒が得られる。焼成温度としては300~800℃が好ましく、400~700℃がより好ましい。前記焼成温度が前記下限未満になると、前記造孔材が残存する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貴金属が焼結する傾向にある。また、焼成時間としては、前記焼成温度により異なるものであるため、一概には言えないが、20分以上が好ましく、30分~2時間がより好ましい。さらに、このような焼成処理における雰囲気としては、特に制限はないが、大気中又は窒素(N)等の不活性ガス中が好ましい。
【実施例
【0043】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
先ず、イオン交換水500mlに、イットリア含有ジルコニア粒子(イットリア含有ジルコニア粉末(ZrO含有量:80質量%、Y含有量:20質量%)を予め粉砕し、平均粒子径が2.5μmとなるように調製したもの)50gと、セリア-ジルコニア固溶体粒子(セリア-ジルコニア固溶体粉末(CeO含有量:20質量%、ZrO含有量:80質量%)を予め粉砕し、平均粒子径が2.0μmとなるように調製したもの)50gと、ランタナ含有アルミナ粒子(ランタナ含有アルミナ粉末(Al含有量:96質量%、La含有量:4質量%)を予め粉砕し、平均粒子径が6.0μmとなるように調製したもの)50gと、貴金属原料としてロジウム(Rh)を金属換算で0.45g含有する硝酸ロジウム溶液10mlとを添加し、さらに、ジルコニアボール(平均直径:3mm)を添加し、アトライタミル(三井鉱山株式会社製)を用いて、攪拌速度300rpm、処理時間30分間の条件で攪拌処理を施し、前記イットリア含有ジルコニア粒子と前記セリア-ジルコニア固溶体粒子と前記ランタナ含有アルミナ粒子とを質量比1:1:1で含有する分散液を得た。
【0045】
次に、この分散液に、造孔材としてポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維、平均直径:4μm、平均長さ60μm、平均アスペクト比:15)1.5gを添加し、プロペラ攪拌機(アズワン株式会社製)を用いて、攪拌速度200rpm、処理時間60分間の条件で攪拌処理を施し、前記イットリア含有ジルコニア粒子と前記セリア-ジルコニア固溶体粒子と前記ランタナ含有アルミナ粒子との合計量100質量部に対してロジウム0.3質量部と前記PET繊維1.0質量部とを含有する触媒スラリーを得た。
【0046】
次に、この触媒スラリーをコージェライトモノリスハニカム基材(日本ガイシ株式会社製、直径:30mm、長さ:50mm、容積:35ml、セル形状:四角、セル密度:400cell/inch、壁厚:4mil)にウォッシュコート(塗布)し、大気中、120℃で2時間乾燥させた。この塗布及び乾燥を繰り返し、前記ハニカム基材1L当たり、前記イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/L、ロジウム0.45g/L、前記PET繊維1.5g/Lを含有する触媒スラリー層を前記ハニカム基材に形成した。
【0047】
その後、この触媒スラリー層を、大気中、500℃で2時間焼成して前記PET繊維を除去するとともに、前記ハニカム基材のセルの内壁表面に、前記ハニカム基材1L当たり、前記イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/Lを含有し、ロジウム0.45g/Lが層全体に担持されている触媒コート層が形成された排ガス浄化用触媒を得た。
【0048】
(実施例2)
前記PET繊維の添加量を3.75gに変更した以外は実施例1と同様にして、前記イットリア含有ジルコニア粒子と前記セリア-ジルコニア固溶体粒子と前記ランタナ含有アルミナ粒子との合計量100質量部に対してロジウム0.3質量部と前記PET繊維2.5質量部とを含有する触媒スラリーを調製し、この触媒スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、前記ハニカム基材1L当たり、前記イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/L、ロジウム0.45g/L、前記PET繊維3.75g/Lを含有する触媒スラリー層を前記ハニカム基材に形成し、さらに、前記ハニカム基材のセルの内壁表面に、前記ハニカム基材1L当たり、前記イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/Lを含有し、ロジウム0.45g/Lが層全体に担持されている触媒コート層が形成された排ガス浄化用触媒を得た。
【0049】
(比較例1)
前記PET繊維を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、前記イットリア含有ジルコニア粒子と前記セリア-ジルコニア固溶体粒子と前記ランタナ含有アルミナ粒子との合計量100質量部に対してロジウム0.3質量部を含有する触媒スラリーを調製し、この触媒スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、前記ハニカム基材1L当たり、前記イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/L、ロジウム0.45g/Lを含有する触媒スラリー層を前記ハニカム基材に形成し、さらに、前記ハニカム基材のセルの内壁表面に、前記ハニカム基材1L当たり、前記イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/Lを含有し、ロジウム0.45g/Lが層全体に担持されている触媒コート層が形成された排ガス浄化用触媒を得た。
【0050】
(比較例2)
前記PET繊維の添加量を7.5gに変更した以外は実施例1と同様にして、前記イットリア含有ジルコニア粒子と前記セリア-ジルコニア固溶体粒子と前記ランタナ含有アルミナ粒子との合計量100質量部に対してロジウム0.3質量部と前記PET繊維5.0質量部とを含有する触媒スラリーを調製し、この触媒スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、前記ハニカム基材1L当たり、前記イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/L、ロジウム0.45g/L、前記PET繊維7.5g/Lを含有する触媒スラリー層を前記ハニカム基材に形成し、さらに、前記ハニカム基材のセルの内壁表面に、前記ハニカム基材1L当たり、前記イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/Lを含有し、ロジウム0.45g/Lが層全体に担持されている触媒コート層が形成された排ガス浄化用触媒を得た。
【0051】
(比較例3)
先ず、イットリア含有ジルコニア粒子(イットリア含有ジルコニア粉末(ZrO含有量:80質量%、Y含有量:20質量%)を予め粉砕し、平均粒子径が2.5μmとなるように調製したもの)100gに、貴金属原料としてロジウム(Rh)を金属換算で0.9g含有する硝酸ロジウム溶液20mlを含浸させた後、大気中、110℃で12時間乾燥させ、さらに、大気中、500℃で3時間焼成して、ロジウムが担持されたイットリア含有ジルコニア粒子(イットリア含有ジルコニア粒子100質量部に対するロジウム担持量:0.9質量部)を得た。
【0052】
次に、イオン交換水500mlに、前記ロジウム担持イットリア含有ジルコニア粒子50gと、セリア-ジルコニア固溶体粒子(セリア-ジルコニア固溶体粉末(CeO含有量:20質量%、ZrO含有量:80質量%)を予め粉砕し、平均粒子径が2.0μmとなるように調製したもの)50gと、ランタナ含有アルミナ粒子(ランタナ含有アルミナ粉末(Al含有量:96質量%、La含有量:4質量%)を予め粉砕し、平均粒子径が6.0μmとなるように調製したもの)50gとを添加し、さらに、ジルコニアボール(平均直径:3mm)を添加し、アトライタミル(三井鉱山株式会社製)を用いて、攪拌速度300rpm、処理時間30分間の条件で攪拌処理を施し、前記ロジウム担持イットリア含有ジルコニア粒子と前記セリア-ジルコニア固溶体粒子と前記ランタナ含有アルミナ粒子とを質量比1:1:1で含有する分散液を得た。
【0053】
次に、この分散液に、造孔材としてポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維、平均直径:4μm、平均長さ60μm、平均アスペクト比:15)3.75gを添加し、プロペラ攪拌機(アズワン株式会社製)を用いて、攪拌速度200rpm、処理時間60分間の条件で攪拌処理を施し、前記ロジウム担持イットリア含有ジルコニア粒子と前記セリア-ジルコニア固溶体粒子と前記ランタナ含有アルミナ粒子との合計量100質量部に対して前記PET繊維2.5質量部とを含有する触媒スラリーを得た。
【0054】
次に、この触媒スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、前記ハニカム基材1L当たり、前記ロジウム担持イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/L、前記PET繊維3.75g/Lを含有する触媒スラリー層を前記ハニカム基材に形成し、さらに、前記ハニカム基材のセルの内壁表面に、前記ハニカム基材1L当たり、前記ロジウム担持イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/Lを含有する触媒コート層が形成された排ガス浄化用触媒を得た。なお、前記触媒スラリー層及び前記触媒コート層におけるロジウム担持量は前記ハニカム基材1L当たり0.45g/Lである。
【0055】
(比較例4)
平均粒子径が2.5μmの前記イットリア含有ジルコニア粒子の代わりにイットリア含有ジルコニア粉末(ZrO含有量:80質量%、Y含有量:20質量%)を予め粉砕し、平均粒子径が5.0μmとなるように調製したイットリア含有ジルコニア粒子を用い、平均粒子径が2.0μmの前記セリア-ジルコニア固溶体粒子の代わりにセリア-ジルコニア固溶体粉末(CeO含有量:20質量%、ZrO含有量:80質量%)を予め粉砕し、平均粒子径が5.5μmとなるように調製したセリア-ジルコニア固溶体粒子を用いた以外は実施例2と同様にして、前記イットリア含有ジルコニア粒子と前記セリア-ジルコニア固溶体粒子と前記ランタナ含有アルミナ粒子との合計量100質量部に対してロジウム0.3質量部と前記PET繊維2.5質量部とを含有する触媒スラリーを調製し、この触媒スラリーを用いた以外は実施例2と同様にして、前記ハニカム基材1L当たり、前記イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/L、ロジウム0.45g/L、前記PET繊維3.75g/Lを含有する触媒スラリー層を前記ハニカム基材に形成し、さらに、前記ハニカム基材のセルの内壁表面に、前記ハニカム基材1L当たり、前記イットリア含有ジルコニア粒子50g/L、前記セリア-ジルコニア固溶体粒子50g/L、前記ランタナ含有アルミナ粒子触媒50g/Lを含有し、ロジウム0.45g/Lが層全体に担持されている触媒コート層が形成された排ガス浄化用触媒を得た。
【0056】
<触媒コート層の平均厚さ>
得られた排ガス浄化用触媒をエポキシ樹脂で包埋したものをハニカム基材の径方向に切断し、得られた断面を研磨して、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「S-4800」)により観察(測定倍率:1300倍)した。得られたSEM像において、無作為に抽出した10箇所の触媒コート層の厚さを測定し、これらを平均して触媒コート層の平均厚さを求めた。その結果を表1に示す。
【0057】
<触媒コート層の空隙率>
得られた排ガス浄化用触媒をハニカム基材の排ガスの流れ方向に切断し、得られた断面を研磨して、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「S-4800」)により観察(出力:15kV、測定倍率:3000倍)した。得られたSEM像に対して、細孔と触媒成分との輝度の差を利用して市販の画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製二次元画像解析ソフト「WinROOF」)を用いて二値化処理を行い、細孔を抽出して、撮影視野(縦30μm、横40μm)に対して細孔部分が占める面積の割合を算出した。このような細孔部分が占める面積の割合を3視野以上について算出し、その平均値を触媒コート層の空隙率とした。その結果を表1に示す。
【0058】
<高アスペクト比細孔の平均アスペクト比>
得られた排ガス浄化用触媒の触媒コート層中の各細孔の円相当径及びアスペクト比を、国際公開第2016/136560号に記載の方法に従って測定し、円相当径が2~50μmの範囲内にあり、かつ、アスペクト比が5以上である細孔(高アスペクト比細孔)の平均アスペクト比を求めた。その結果を表1に示す。
【0059】
<高アスペクト比細孔による空隙率>
得られた排ガス浄化用触媒の触媒コート層中の高アスペクト比細孔による空隙率を、国際公開第2016/136560号に記載の方法に従って測定した。その結果を表1に示す。
【0060】
<高アスペクト比細孔の空隙全体に占める割合>
前記高アスペクト比細孔による空隙率を前記触媒コート層の空隙率で除することにより、高アスペクト比細孔の空隙全体に占める割合(=高アスペクト比細孔による空隙率/触媒コート層の空隙率)を求めた。その結果を表1に示す。
【0061】
<NOx浄化率>
先ず、得られた排ガス浄化用触媒に、温度900℃、ガス流量20L/minの条件で、ストイキモデルガス〔NO(3000ppm)+C(1000ppmC)+N(残部)〕(3分間)とリーンモデルガス〔NO(3000ppm)+C(500ppmC)+N(残部)〕(1分間)とを交互に切替えながら50時間流通させて耐久試験を行った。
【0062】
耐久試験後の排ガス浄化用触媒に、温度550℃、空間時間SV=17万/secの条件で、空燃比A/F=13.3のリッチモデルガス〔NO(3000ppm)+C(3300ppmC)+N(残部)〕を流通させ、触媒入ガス中及び触媒出ガス中のNO濃度を測定し、NOx浄化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示したように、所定の空隙率を有し、高アスペクト比細孔を所定の割合で含有する触媒コート層を備えている排ガス浄化用触媒(実施例1~2)は、高アスペクト比細孔が存在せず、空隙率が所定の範囲より小さい触媒コート層を備えている排ガス浄化用触媒(比較例1)に比べて、NOx浄化率が高くなることがわかった。これは、実施例1~2の排ガス浄化用触媒においては、触媒コート層に高アスペクト比細孔が存在するため、触媒コート層の内部にガスが十分に拡散したのに対して、比較例1の排ガス浄化用触媒においては、触媒コート層に高アスペクト比細孔が存在しないため、触媒コート層の内部にガスが拡散しなかったことによるものと考えられる。
【0065】
また、高アスペクト比細孔の空隙全体に占める割合が所定の範囲より大きい触媒コート層を備えている排ガス浄化用触媒(比較例2)は、高アスペクト比細孔を所定の割合で含有する触媒コート層を備えている排ガス浄化用触媒(実施例1~2)に比べて、NOx浄化率が低くなることがわかった。これは、比較例2の排ガス浄化用触媒においては、触媒活性点と接触せずに触媒コート層を素通りするガスの割合が増え、十分な触媒性能が発揮されなかったためと考えられる。
【0066】
さらに、貴金属が層全体に担持されていない触媒コート層を備えている排ガス浄化用触媒(比較例3)は、貴金属が層全体に担持されている排ガス浄化用触媒(実施例1~2)に比べて、NOx浄化率が低くなることがわかった。これは、比較例3の排ガス浄化用触媒においては、触媒コート層の内部にガスが十分に拡散しても、貴金属が担持されていない部分において触媒作用が十分に発揮されなかったためと考えられる。
【0067】
また、空隙率が所定の範囲より大きい触媒コート層を備えている排ガス浄化用触媒(比較例4)は、触媒コート層が厚いため、空隙率が大きくても、ガスが触媒活性点と接触する機会が少なかったためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明によれば、触媒被覆量を増加させた場合でも、触媒コート層の厚さが薄く、比較的高い触媒性能を発揮する排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。したがって、本発明の排ガス浄化用触媒は、自動車用エンジン等の内燃機関から排出されるガス中に含まれるNOx等の有害成分を浄化するための触媒として特に有用である。