(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】リレー
(51)【国際特許分類】
H01H 50/44 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
H01H50/44 D
H01H50/44 B
(21)【出願番号】P 2018167626
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】川口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 亮太
(72)【発明者】
【氏名】林田 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】森 真吾
(72)【発明者】
【氏名】大塚 航平
(72)【発明者】
【氏名】岩坂 博之
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-158159(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176505(WO,A1)
【文献】特開平09-073850(JP,A)
【文献】特開2006-108041(JP,A)
【文献】特開2015-109180(JP,A)
【文献】特開2015-220181(JP,A)
【文献】特開2012-174519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と、
前記固定接点に対向して配置された可動接点を含み、前記可動接点が前記固定接点に接触する接触位置と、前記可動接点が前記固定接点から開離した開離位置とに移動可能に設けられた可動接触片と、
一対のコイル端子と、
互いに並列に前記一対のコイル端子に接続された第1のコイルと第2のコイルとを含み、前記可動接触片を移動させるための磁力を発生させる
3つ以上の複数のコイルと、
を備え、
前記複数のコイルは、前記一対のコイル端子に通電されているときには、前記複数のコイルの磁力によって前記可動接触片を前記接触位置に保持し、且つ、前記複数のコイルのいずれか1つにおいて通電が遮断されているときには、通電されている残りのコイルの磁力によって前記可動接触片を前記接触位置に保持するように構成されている、
リレー。
【請求項2】
スプールをさらに備え、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとは、前記スプールの径方向に互いに重なって配置されている、
請求項
1に記載のリレー。
【請求項3】
スプールをさらに備え、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとは、前記スプールの軸線方向に並んで配置されている、
請求項
1に記載のリレー。
【請求項4】
固定接点と、
前記固定接点に対向して配置された可動接点を含み、前記可動接点が前記固定接点に接触する接触位置と、前記可動接点が前記固定接点から開離した開離位置とに移動可能に設けられた可動接触片と、
一対のコイル端子と、
互いに並列に前記一対のコイル端子に接続された第1のコイルと第2のコイルとを含み、前記可動接触片を移動させるための磁力を発生させる複数のコイルと、
前記第1のコイルによって構成される磁気回路上に配置されたヨークと、
を備え、
前記複数のコイルは、前記一対のコイル端子に通電されているときには、前記複数のコイルの磁力によって前記可動接触片を前記接触位置に保持し、且つ、前記複数のコイルのいずれか1つにおいて通電が遮断されているときには、通電されている残りのコイルの磁力によって前記可動接触片を前記接触位置に保持するように構成されており、
前記第2のコイルは、前記ヨークに巻回されている、
リレー。
【請求項5】
前記複数のコイルは、前記可動接触片が前記開離位置に位置する状態で前記一対のコイル端子に通電されると、前記複数のコイルの磁力によって前記可動接触片を前記接触位置に移動させ、且つ、前記可動接触片が前記開離位置である状態で前記複数のコイルのいずれか1つにおいて通電が遮断されているときには、通電されている残りのコイルの磁力では前記可動接触片を前記接触位置に移動させないように構成されている、
請求項1
から4のいずれかに記載のリレー。
【請求項6】
前記複数のコイルの数はN(Nは2以上の整数)個であり、
前記複数のコイルのうち任意の(N-1)個のコイルによる磁力は、前記可動接触片を前記接触位置に保持するための磁力の下限値以上である、
請求項1
から5のいずれかに記載のリレー。
【請求項7】
前記複数のコイルの数はN(Nは2以上の整数)個であり、
前記N個のコイルによる磁力は、前記可動接触片を前記開離位置から前記接触位置に移動させるための磁力の下限値以上であり、
前記複数のコイルのうち任意の(N-1)個のコイルによる磁力は、前記可動接触片を前記開離位置から前記接触位置に移動させるための磁力の下限値より小さい、
請求項1から
6のいずれかに記載のリレー。
【請求項8】
前記複数のコイルは、互いに並列に前記一対のコイル端子に接続されている、
請求項1から7のいずれかに記載のリレー。
【請求項9】
前記複数のコイルは、前記第1のコイルと前記第2のコイルとに直列に接続された第3のコイルと第4のコイルとをさらに含み、
前記第3のコイルと前記第4のコイルとは、互いに並列に接続されている、
請求項1から7に記載のリレー。
【請求項10】
前記可動接触
片から前記可動接触
片の移動方向に延びる駆動軸と、
前記駆動軸に接続され、前記可動接触
片の移動方向に移動可能に設けられた可動鉄心と、
をさらに備え、
前記複数のコイルは、通電されることで、前記可動鉄心を前記可動接触
片の移動方向に移動させるように構成されている、
請求項1から9のいずれかに記載のリレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリレーに関する。
【背景技術】
【0002】
リレーは、可動接点を含む可動接触子と、固定接点と、コイルと、コイル端子とを備えている(例えば特許文献1参照)。可動接触子は、可動接点が固定接点から開離した開離位置と、可動接点が固定接点に接触する接触位置とに移動可能に設けられる。可動接触片が開離位置にある状態でコイル端子に電流が流されると、コイルに通電されることでコイルは可動接触子を移動させる磁力を発生させる。それにより、可動接触子が、開離位置から接触位置に移動する。また、コイルへの通電中には、コイルの磁力により可動接触子が接触位置に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、リレーが劣悪な環境下で使用される場合、コイルが通電されない状態となる可能性がある。例えば、コイルの半田付け部の腐食や、或いは、コイルにおいてレアショートが生じることで、コイルが通電されない状態となる場合がある。この場合、上述したリレーでは、可動接触片を接触位置に保持できなくなってしまう。
【0005】
本発明の課題は、リレーの耐環境性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係るリレーは、固定接点と、可動接触片と、一対のコイル端子と、複数のコイルとを備える。可動接触片は、固定接点に対向して配置された可動接点を含む。可動接触片は、可動接点が固定接点に接触する接触位置と、可動接点が固定接点から開離した開離位置とに移動可能に設けられる。複数のコイルは、可動接触片を移動させるための磁力を発生させる。複数のコイルは、互いに並列に一対のコイル端子に接続された第1のコイルと第2のコイルとを含む。複数のコイルは、一対のコイル端子に通電されているときには、複数のコイルの磁力によって可動接触片を接触位置に保持するように構成されている。また、複数のコイルは、複数のコイルのいずれか1つにおいて通電が遮断されているときには、通電されている残りのコイルの磁力によって可動接触片を接触位置に保持するように構成されている。
【0007】
本態様に係るリレーでは、複数のコイルのうち、いずれか1つにおいて通電が遮断されても、通電されている残りのコイルの磁力によって可動接触片が接触位置に保持される。それにより、リレーの耐環境性を向上させることができる。
【0008】
複数のコイルは、可動接触片が開離位置である状態で一対のコイル端子に通電されると、複数のコイルの磁力によって可動接触片を接触位置に移動させるように構成されてもよい。複数のコイルは、可動接触片が開離位置である状態で複数のコイルのいずれか1つにおいて通電が遮断されているときには、通電された残りのコイルの磁力では可動接触片を接触位置に移動させないように構成されてもよい。この場合、複数のコイルのいずれか1つにおいて通電が遮断されているときには、コイル端子に電流が流されても、可動接触片は接触位置に移動しない。そのため、リレーが故障した状態で接点が閉状態となることが防止される。
【0009】
複数のコイルの数はN(Nは2以上の整数)個であってもよい。複数のコイルのうち任意の(N-1)個のコイルによる磁力は、可動接触片を接触位置に保持するための磁力の下限値以上であってもよい。この場合、N個のコイルのうち、任意のいずれか1つにおいて通電が遮断されても、通電されている残りのコイルの磁力によって、可動接触片を接触位置に保持することができる。
【0010】
N個のコイルによる磁力は、可動接触片を開離位置から接触位置に移動させるための磁力の下限値以上であってもよい。複数のコイルのうち任意の(N-1)個のコイルによる磁力は、可動接触片を開離位置から接触位置に移動させるための磁力の下限値より小さくてもよい。この場合、N個のコイルのうち、任意のいずれか1つにおいて通電が遮断されているときに、通電された残りのコイルの磁力では可動接触片は接触位置に移動しない。
【0011】
リレーは、スプールをさらに備えてもよい。第1のコイルと第2のコイルとは、スプールの径方向に互いに重なって配置されてもよい。この場合、第1のコイルと第2のコイルとをコンパクトに配置することができる。
【0012】
第1のコイルと第2のコイルとは、スプールの軸線方向に並んで配置されてもよい。この場合、第1のコイルと第2のコイルとをコンパクトに配置することができる。
【0013】
リレーは、第1のコイルによって構成される磁気回路上に配置されたヨークをさらに備えてもよい。第2のコイルは、ヨークに巻回されてもよい。この場合、第1のコイルと第2のコイルとのレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0014】
複数のコイルは、互いに並列に一対のコイル端子に接続されてもよい。この場合、複数のコイルの全てが互いに並列に接続される。それにより、複数のコイルのうちの任意の1つにおいて通電が遮断されても、通電されている残りのコイルの磁力によって可動接触片を接触位置に保持することができる。
【0015】
複数のコイルは、第1のコイルと第2のコイルとに直列に接続された第3のコイルと第4のコイルとをさらに含んでもよい。第3のコイルと第4のコイルとは、互いに並列に接続されてもよい。この場合、第1~第4のコイルのうちの任意の1つにおいて通電が遮断されても、通電されている残りのコイルの磁力によって可動接触片を接触位置に保持することができる。
【0016】
リレーは、駆動軸と可動鉄心とをさらに備えてもよい。駆動軸は、可動接触子から可動接触子の移動方向に延びていてもよい。可動鉄心は、駆動軸に接続され、可動接触子の移動方向に移動可能に設けられてもよい。複数のコイルは、通電されることで、可動鉄心を可動接触子の移動方向に移動させるように構成されてもよい。この場合、複数のコイルの磁力によって可動鉄心を動作させることで、可動接触片を移動させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るリレーでは、複数のコイルのうち、いずれか1つにおいて通電が遮断されても、通電されている残りのコイルの磁力によって可動接触片が接触位置に保持される。それにより、リレーの耐環境性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係るリレーを示す側面断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るコイルの構成を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態に係るリレーを示す側面断面図である。
【
図4】第2実施形態に係るリレーを示す側面断面図である。
【
図5】第2実施形態に係るコイルの構成を示す模式図である。
【
図6】第3実施形態に係るリレーを示す側面断面図である。
【
図7】第4実施形態に係るリレーを示す側面断面図である。
【
図8】第5実施形態に係るリレーを示す側面断面図である。
【
図9】第6実施形態に係るリレーを示す側面断面図である。
【
図10】第6実施形態に係るコイルの構成を示す模式図である。
【
図11】第7実施形態に係るリレーを示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施形態に係るリレーについて説明する。
図1は第1実施形態に係るリレー1aを示す側面断面図である。
図1に示すように、リレー1aは、接点装置2と、ハウジング3と、コイルブロック4とを備える。なお、以下の説明において、上下左右の各方向は、
図1における上下左右の各方向を意味するものとする。詳細には、コイルブロック4から接点装置2に向かう方向を上方と定義する。また、接点装置2からコイルブロック4に向かう方向を下方と定義する。また、
図1において、上下方向に交差する方向を左右方向と定義する。ただし、これらの方向は、説明の便宜上、定義されるものであって、リレー1aの配置方向を限定するものではない。
【0020】
接点装置2は、第1固定端子11と、第2固定端子12と、可動接触片13と、駆動軸19とを含む。第1固定端子11と、第2固定端子12と、可動接触片13とは、例えば銅などの導電性を有する材料で形成されている。第1固定端子11は、第1固定接点14を含む。第2固定端子12は、第2固定接点15を含む。第1固定接点14と第2固定接点15とは、左右方向に離れて配置されている。
【0021】
可動接触片13は、左右方向に延びている。本実施形態において、可動接触片13の長手方向は、左右方向に一致する。可動接触片13は、第1固定接点14及び第2固定接点15の上方に配置されている。可動接触片13は、第1可動接点16と第2可動接点17とを含む。第1可動接点16と第2可動接点17とは、左右方向に離れて配置されている。第1可動接点16は、第1固定接点14に対向して配置されている。第2可動接点17は、第2固定接点15に対向して配置されている。
【0022】
可動接触片13は、上下方向に移動可能に配置されている。詳細には、可動接触片13は、接触方向Z1と開離方向Z2とに移動可能に配置されている。本実施形態において、接触方向Z1は、第1可動接点16及び第2可動接点17が第1固定接点14及び第2固定接点15に対して接触する方向(
図1における下方)である。開離方向Z2は、第1可動接点16及び第2可動接点17が第1固定接点14及び第2固定接点15から開離する方向(
図1における上方)である。
【0023】
駆動軸19は、上下方向に延びている。駆動軸19は、接触方向Z1及び開離方向Z2に移動可能に配置されている。駆動軸19は、可動接触片13に接続されている。駆動軸19は、可動接触子13から下方に延びている。駆動軸19は、ホルダ26及び接点バネ27を介して、可動接触片13に接続されている。ホルダ26は、可動接触片13に取り付けられている。接点バネ27は、ホルダ26と可動接触片13との間に配置されている。本実施形態において、接点バネ27は、コイルスプリングである。接点バネ27は、可動接点16,17が固定接点14,15に接触している状態で、可動接触片13を接触方向Z1に付勢する。
【0024】
ハウジング3は、接点装置2とコイルブロック4とを収容している。詳細には、ハウジング3内には、接点ケース18が配置されている。接点ケース18は、絶縁性を有する材料で形成されている。接点ケース18は、ハウジング3内を第1収納部S1と第2収納部S2とに区画している。第1固定接点14と、第2固定接点15と、可動接触片13とは、第1収納部S1内に配置されている。コイルブロック4は、第2収納部S2内に配置されている。
【0025】
第1固定端子11は、第1接点支持部21と第1外部端子部22とを含む。第1接点支持部21は、第1固定接点14に接続されている。第1接点支持部21は、第1収納部S1内に配置されている。第1外部端子部22は、第1接点支持部21に接続されている。第1接点支持部21は、ハウジング3から外方に突出している。第2固定端子12は、第2接点支持部23と第2外部端子部24とを含む。第2接点支持部23は、第2固定接点15に接続されている。第2接点支持部23は、第1収納部S1内に配置されている。第2外部端子部24は、第2接点支持部23に接続されている。第2接点支持部23は、ハウジング3から外方に突出している。
【0026】
なお、
図1では、第1外部端子部22と第2外部端子部24とは、ハウジング3から左右方向に突出している。しかし、第1外部端子部22と第2外部端子部24とは、左右方向に限らず、上下方向など他の方向にハウジング3から突出してもよい。
【0027】
コイルブロック4は、電磁力によって可動接触片13を動作させる。コイルブロック4は、接触方向Z1及び開離方向Z2に可動接触片13を移動させる。コイルブロック4は、接点ケース18の下方に配置されている。コイルブロック4は、スプール30と、可動鉄心31と、コイル32と、固定鉄心33と、ヨーク34と、復帰バネ35とを含む。
【0028】
スプール30は、接点ケース18の下方に配置されている。スプール30は、駆動軸19と同軸に配置されている。スプール30は、上下方向にスプール30を貫通する孔301を含む。可動鉄心31は、スプール30の孔301内に配置されている。可動鉄心31は、固定鉄心33と別体である。可動鉄心31は、駆動軸19に接続されている。可動鉄心31は、接触方向Z1及び開離方向Z2に移動可能に設けられている。
【0029】
コイル32は、スプール30に巻回されている。コイル32は、駆動軸19と同軸に配置されている。コイル32は、通電されることで可動鉄心31を接触方向Z1及び開離方向Z2に移動させる電磁力を発生させる。コイル32は、複数のコイル41,42を含む。詳細には、コイル32は、第1のコイル41と第2のコイル42とを含む。第1のコイル41と第2のコイル42とは、スプール30の径方向に互いに重なって配置されている。第2のコイル42は、第1のコイル41に対して、スプール30の径方向における外側に位置している。
【0030】
図2は、第1実施形態に係るコイル32の構成を示す模式図である。
図2に示すように、リレー1aは、一対のコイル端子51,52を含む。第1のコイル41と第2のコイル42とは、互いに並列に一対のコイル端子51,52に接続されている。
【0031】
固定鉄心33は、スプール30の孔301内に配置されている。固定鉄心33は、可動鉄心31に対向して配置されている。固定鉄心33は、可動鉄心31の下方に配置されている。復帰バネ35は、可動鉄心31と固定鉄心33との間に配置されている。本実施形態において、復帰バネ35は、コイルスプリングである。復帰バネ35は、可動鉄心31を開離方向Z2に付勢している。
【0032】
ヨーク34は、コイル32を囲むように配置されている。ヨーク34は、第1ヨーク36と、第2ヨーク37と、第3ヨーク38と、第4ヨーク39とを含む。第1ヨーク36と、第2ヨーク37と、第3ヨーク38と、第4ヨーク39とは、コイル32によって構成される磁気回路上に配置されている。
【0033】
第1ヨーク36は、コイル32の上方に配置されている。第1ヨーク36は、接点ケース18とスプール30との間に配置されている。第2ヨーク37と第3ヨーク38とは、第1ヨーク36に接続されている。第2ヨーク37は、コイル32の一側方に配置されている。第3ヨーク38は、コイル32の他側方に配置されている。第4ヨーク39は、第2ヨーク37と第3ヨーク38とに接続されている。第4ヨークは、コイル32の下方に配置されている。第4ヨークは、固定鉄心33に接続されている。
【0034】
次に、リレー1aの動作について説明する。一対のコイル端子51,52に通電されていないときには、コイル32に電流が流されず励磁されていない。この場合、駆動軸19は、可動鉄心31と共に、復帰バネ35の弾性力によって開離方向Z2に押圧されている。そのため、可動接触片13も開離方向Z2に押圧されており、可動接触片13は、
図1に示すように開離位置に位置している。可動接触片13が開離位置に位置している状態では、第1可動接点16及び第2可動接点17は、第1固定接点14及び第2固定接点15から開離した開状態となっている。
【0035】
一対のコイル端子51,52に通電されると、コイル32に電流が流されて励磁される。この場合、コイル32の電磁力により、可動鉄心31が、復帰バネ35の弾性力に抗して、接触方向Z1に移動する。それにより、駆動軸19と可動接触片13とが共に接触方向Z1に移動して、可動接触片13は
図2に示す接触位置へ移動する。可動接触片13が接触位置に位置している状態では、第1可動接点16及び第2可動接点17は、第1固定接点14及び第2固定接点15に接触した閉状態となる。なお、可動接触片13が接触位置に位置している状態では、接点バネ27は、可動接触片13とホルダ26との間で押し縮められている。従って、閉状態では、接点バネ27は、駆動軸19を接触方向Z1に付勢している。
【0036】
コイル32への電流が停止され消磁されると、可動鉄心31は、復帰バネ35の弾性力によって開離方向Z2に押圧される。それにより、可動鉄心31は駆動軸19に対して開離方向Z2に移動して、可動接触片13は
図1に示す開離位置へ戻る。その結果、第1可動接点16及び第2可動接点17は開状態に戻る。
【0037】
上述したように、コイル32は、第1のコイル41と第2のコイル42とを含む。複数のコイル41,42の全体の磁力、すなわち第1のコイル41と第2のコイル42とによる磁力は、可動接触片13を接触位置に保持するための磁力の下限値(以下、「保持下限値」と呼ぶ)以上である。また、複数のコイル41,42の全体の磁力、すなわち第1のコイル41と第2のコイル42とによる磁力は、可動接触片13を開離位置から接触位置に動作させるための磁力の下限値(以下、「動作下限値」と呼ぶ)以上である。
【0038】
なお、第1のコイル41による磁力、及び、第2のコイル42による磁力は、定格電流、定格電圧で一対のコイル端子51,52に通電されているときの磁力を意味するものとする。また、各コイルによる磁力は、各コイルの抵抗値、巻き数、コイル半径等のパラメータに応じて設定される。
【0039】
コイル32が正常状態では、一対のコイル端子51,52に通電されているときには、第1のコイル41と第2のコイル42との両方に通電される。従って、可動接触片13が開離位置に位置している状態で一対のコイル端子51,52に通電されると、第1のコイル41と第2のコイル42との磁力によって可動接触片13が開離位置から接触位置に移動する。また、可動接触片13が接触位置に位置している状態で、一対のコイル端子51,52に通電されているときには、第1のコイル41と第2のコイル42との磁力によって、可動接触片13が接触位置に保持される。
【0040】
一方、一対のコイル端子51,52に通電されても、コイル32において半田付け部の腐食、或いは、レアショートが生じるなどの異常状態により、第1のコイル41と第2のコイル42との一方に通電されない事態が生じうる。
【0041】
しかし、本実施形態に係るリレー1aでは、第1のコイル41のみによる磁力は、保持下限値以上である。また、第2のコイル42のみによる磁力は、保持下限値以上である。従って、異常状態により第1のコイル41に通電されていない場合であっても、通電されている第2のコイル42の磁力によって、可動接触片13が接触位置に保持される。また、異常状態により第2のコイル42に通電されていない場合であっても、通電されている第1のコイル41の磁力によって、可動接触片13が接触位置に保持される。
【0042】
また、第1のコイル41のみによる磁力は、動作下限値より小さい。第2のコイル42のみによる磁力は、動作下限値より小さい。従って、異常状態により第1のコイル41に通電されていない場合には、通電されている第2のコイル42の磁力のみでは、可動接触片13は接触位置に移動しない。また、異常状態により第2のコイル42に通電されていない場合には、通電されている第1のコイル41の磁力のみでは、可動接触片13は接触位置に移動しない。
【0043】
以上説明した本実施形態に係るリレー1aでは、可動接触片13が接触位置に位置している状態で、複数のコイル41,42のうち、いずれか1つにおいて通電が遮断されても、通電されている残りのコイルの磁力によって可動接触片13が接触位置に保持される。それにより、リレー1aの耐環境性を向上させることができる。
【0044】
可動接触片13が開離位置に位置している状態で、複数のコイル41,42のいずれか1つにおいて通電が遮断されているときには、一対のコイル端子51,52に電流が流されても、可動接触片13は接触位置に移動しない。そのため、リレー1aが故障した状態で接点が閉状態となることが防止される。
【0045】
複数のコイル41,42は、スプール30の径方向に互いに重なって配置されている。それにより、複数のコイル41,42をコンパクトに配置することができる。
【0046】
上述した第1実施形態に係るリレー1aでは、複数のコイル41,42の数は2つである。しかし、複数のコイルの数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。例えば、
図4は、第2実施形態に係るリレー1bの側面断面図である。第2実施形態に係るリレー1bは、第1のコイル41と第2のコイル42と第3のコイル43とを含む。すなわち、第2実施形態に係るリレー1bでは、複数のコイルの数は、3つである。
【0047】
第1のコイル41と第2のコイル42と第3のコイル43とは、スプール30の径方向に互いに重なって配置されている。第1のコイル41は、スプール30の径方向において最も内側に位置している。第2のコイル42は、第1のコイル41に対してスプール30の径方向における外側に配置されている。第3のコイル43は、第2のコイル42に対してスプール30の径方向における外側に配置されている。
【0048】
図5は、第2実施形態に係る複数のコイル41-43の構成を示す模式図である。
図5に示すように、第1~第3のコイル41-43は、互いに並列に一対のコイル端子51,52に接続されている。第1~第3のコイル41-43による合計磁力は、保持下限値以上である。第1~第3のコイル41-43のうち、任意の2つのコイルによる合計磁力は、保持下限値以上である。第1~第3のコイル41-43による合計磁力は、動作下限値以上である。第1~第3のコイル41-43のうち、任意の2つのコイルによる合計磁力は、動作下限値より小さい。第2実施形態に係るリレー1bの他の構成は、第1実施形態に係るリレー1aと同様である。
【0049】
第2実施形態に係るリレー1bでは、可動接触片13が接触位置に位置している状態で、複数のコイル41-43のうち、いずれか1つにおいて通電が遮断されても、通電されている残りのコイルの磁力によって可動接触片13が接触位置に保持される。それにより、リレー1bの耐環境性を向上させることができる。
【0050】
可動接触片13が開離位置に位置している状態で、複数のコイル41-43のいずれか1つにおいて通電が遮断されているときには、一対のコイル端子51,52に電流が流されても、可動接触片13は接触位置に移動しない。そのため、リレー1bが故障した状態で接点が閉状態となることが防止される。
【0051】
上記の実施形態では、複数のコイルは、スプール30の径方向に互いに重なって配置されている。しかし、複数のコイルの配置は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、
図6は、第3実施形態に係るリレー1cの側面断面図である。
図6に示すように、第3実施形態に係るリレー1cでは、第1のコイル41と第2のコイル42と第3のコイル43とは、スプール30の軸線方向すなわち上下方向に並んで配置されている。第3実施形態に係るリレー1cの他の構成は、第1実施形態に係るリレー1aと同様である。第3実施形態に係るリレー1cにおいても、第1実施形態に係るリレー1aと同様の効果を得ることができる。
【0052】
次に、第4実施形態に係るリレー1dについて説明する。
図7は、第4実施形態に係るリレー1dの側面断面図である。
図7に示すように、第4実施形態に係るリレー1dでは、第1のコイル41は、スプール30に巻回されている。第2のコイル42と第3のコイル43とは、ヨーク34に巻回されている。詳細には、第2のコイル42は第2ヨーク37に巻回されている。第3のコイル43は、第3ヨーク38に巻回されている。第4実施形態に係るリレー1dの他の構成は、第1実施形態に係るリレー1aと同様である。第4実施形態に係るリレー1dにおいても、第1実施形態に係るリレー1aと同様の効果を得ることができる。また、複数のコイルのレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0053】
次に、第5実施形態に係るリレー1eについて説明する。
図8は、第5実施形態に係るリレー1eの側面断面図である。
図8に示すように、第5実施形態に係るリレー1eでは、第1のコイル41は、スプール30に巻回されている。第2のコイル42と第3のコイル43とは、ヨーク34に巻回されている。詳細には、第2のコイル42と第3のコイル43とは、第4ヨーク39に巻回されている。第2のコイル42は、第4ヨーク39のうち固定鉄心33の一側方に位置する部分に巻回されている。第3のコイル43は、第4ヨーク39のうち固定鉄心33の他側方に位置する部分に巻回されている。第5実施形態に係るリレー1eの他の構成は、第1実施形態に係るリレー1aと同様である。第5実施形態に係るリレー1eにおいても、第1実施形態に係るリレー1aと同様の効果を得ることができる。
【0054】
次に、第6実施形態に係るリレー1fについて説明する。
図9は、第6実施形態に係るリレー1fの側面断面図である。
図9に示すように、第6実施形態に係るリレー1fでは、コイルブロック4は、第1スプール61と、第2スプール62と、第1固定鉄心63と、第2固定鉄心64とを含む。第1スプール61と第2スプール62とは、互いに左右方向に並んで配置されている。第1スプール61は、上下方向に第1スプール61を貫通する孔611を含む。第2スプール62は、上下方向に第2スプール62を貫通する孔621を含む。
【0055】
第1固定鉄心63と第2固定鉄心64とは、左右方向に並んで配置されている。第1固定鉄心63と第2固定鉄心64とは、上下方向に延びている。第1固定鉄心63と第2固定鉄心64とは、可動鉄心31の下方に配置されており、可動鉄心31に対向している。第1固定鉄心63は、第1スプール61の孔611内に配置されている。第2固定鉄心64は、第2スプール62の孔621内に配置されている。
【0056】
第6実施形態に係るリレー1fは、複数のコイル41-44を含む。複数のコイル41-44は、第1のコイル41と第2のコイル42と第3のコイル43と第4のコイル44とを含む。第1のコイル41と第2のコイル42とは、第1スプール61に巻回されている。第1のコイル41と第2のコイル42とは、第1スプール61の径方向に互いに重なって配置されている。第2のコイル42は、第1のコイル41に対して、第1スプール61の径方向における外側に位置している。第3のコイル43と第4のコイル44とは、第2スプール62に巻回されている。第3のコイル43と第4のコイル44とは、第2スプール62の径方向に互いに重なって配置されている。第4のコイル44は、第3のコイル43に対して、第2スプール62の径方向における外側に位置している。
【0057】
図10は、第6実施形態に係る複数のコイル41-44の構成を示す模式図である。
図10に示すように、第1のコイル41と第2のコイル42とは、互いに並列に接続されている。第3のコイル43と第4のコイル44とは、互いに並列に接続されている。第1のコイル41と第2のコイル42とは、第3のコイル43と第4のコイル44とに対して直列に接続されている。
【0058】
複数のコイル41-44全体による合計磁力は、保持下限値以上である。複数のコイル41-44のうち任意の3個のコイルによる合計磁力は、保持下限値以上である。複数のコイル全体による合計磁力は、動作下限値以上である。複数のコイル41-44のうち任意の3個のコイルによる合計磁力は、動作下限値より小さい。
【0059】
第6実施形態に係るリレー1fの他の構成は、第1実施形態に係るリレー1aと同様である。なお、
図9及び
図10においては、第6実施形態に係るリレー1fの構成のうち第1実施形態に係るリレー1aの構成に対応するものには、第1実施形態と同じ符号が付されている。
【0060】
以上説明した第6実施形態に係るリレー1fにおいても、第1実施形態に係るリレー1aと同様の効果を得ることができる。すなわち、第6実施形態に係るリレー1fでは、可動接触片13が接触位置に位置している状態で、複数のコイル41-44のうちの任意の1つにおいて通電が遮断されても、通電されている残りのコイルの磁力によって可動接触片13が接触位置に保持される。それにより、リレー1fの耐環境性を向上させることができる。
【0061】
可動接触片13が開離位置に位置している状態で、複数のコイル41-44のうち任意の1つにおいて通電が遮断されているときには、一対のコイル端子51,52に電流が流されても、通電されている残りのコイルの磁力では、可動接触片13は接触位置に移動しない。そのため、リレー1fが故障した状態で接点が閉状態となることが防止される。
【0062】
次に、第7実施形態に係るリレー1gについて説明する。
図11は、第7実施形態に係るリレー1gの側面断面図である。
図11に示すように、第7実施形態に係るリレー1gでは、第1のコイル41と第2のコイル42とは、第1スプール61において、第1スプール61の軸線方向すなわち上下方向に並んで配置されている。第3のコイル43と第4のコイル44とは、第2スプール62において、第2スプール62の軸線方向すなわち上下方向に並んで配置されている。
【0063】
なお、第6実施形態に係るリレー1fと同様に、第1のコイル41と第2のコイル42とは、互いに並列に接続されている。第3のコイル43と第4のコイル44とは、互いに並列に接続されている。第1のコイル41と第2のコイル42とは、第3のコイル43と第4のコイル44とに直列に接続されている。第7実施形態に係るリレー1gの他の構成は、第6実施形態に係るリレー1fと同様である。第7実施形態に係るリレー1gにおいても、第1実施形態に係るリレー1aと同様の効果を得ることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、コイルブロック4の構成が変更されてもよい。コイル32、スプール30、或いはヨーク34の形状、或いは配置が変更されてもよい。
【0065】
第1固定端子11、第2固定端子12、可動接触片13の形状、或いは配置が変更されてもよい。第1固定接点14は、第1固定端子11と別体であってもよく、或いは一体であってもよい。第2固定接点15は、第2固定端子12と別体であってもよく、或いは一体であってもよい。第1可動接点16は、可動接触片13と別体であってもよく、或いは一体であってもよい。第2可動接点17は、可動接触片13と別体であってもよく、或いは一体であってもよい。
【0066】
復帰バネ35、及び/又は、接点バネ27の形状、或いは配置が変更されてもよい。例えば、復帰バネ35は、コイルスプリングに限らず、板バネなどの他の種類のバネであってもよい。接点バネ27は、コイルスプリングに限らず、板バネなどの他の種類のバネであってもよい。固定鉄心33、及び/又は、可動鉄心31の形状、或いは配置が変更されてもよい。
【0067】
上記の実施形態では、コイルブロック4が駆動軸19をコイルブロック4側に引き込むことで、可動接触片13が接触方向Z1に移動する。また、コイルブロック4が駆動軸19をコイルブロック4側から押し出すことで、可動接触片13が開離方向Z2に移動する。しかし、接点を開閉するための駆動軸19の動作方向は、上記の実施形態と逆であってもよい。すなわち、コイルブロック4が駆動軸19をコイルブロック4側に引き込むことで、可動接触片13が開離方向Z2に移動してもよい。コイルブロック4が駆動軸19をコイルブロック4側から押し出すことで、可動接触片13が接触方向Z1に移動してもよい。すなわち、接触方向Z1と開離方向Z2とは、上記の実施形態とは上下に逆であってもよい。
【0068】
コイルの数は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。コイルの数をN個(Nは2以上の整数)とすると、N個のコイルによる磁力は、保持下限値以上であってもよい。N個のコイルのうち任意の(N-1)個のコイルによる磁力は、保持下限値以上であってもよい。N個のコイルによる磁力は、動作下限値以上であってもよい。N個のコイルのうち任意の(N-1)個のコイルによる磁力は、動作下限値より小さくてもよい。ただし、N個のコイルのうち任意の(N-1)個のコイルによる磁力は、動作下限値以上であってもよい。
【0069】
N個のコイルのうち(N-1)個より少ない任意のコイルによる合計磁力が、保持下限値以上であってもよい。この場合、2個以上のコイルにおいて通電されなくても、通電されている残りのコイルの磁力によって可動接触片13を接触位置に保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係るリレーでは、複数のコイルのうち、いずれか1つにおいて通電が遮断されても、通電されている残りのコイルの磁力によって可動接触片が接触位置に保持される。それにより、リレーの耐環境性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0071】
13 可動接触片
14 第1固定接点
16 第1可動接点
19 駆動軸
31 可動鉄心
34 ヨーク
41 第1のコイル
42 第2のコイル
43 第3のコイル
44 第4のコイル
51,52 一対のコイル端子