IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロン株式会社の特許一覧

特許7115228設備管理装置、設備管理方法、及び設備管理プログラム
<>
  • 特許-設備管理装置、設備管理方法、及び設備管理プログラム 図1
  • 特許-設備管理装置、設備管理方法、及び設備管理プログラム 図2
  • 特許-設備管理装置、設備管理方法、及び設備管理プログラム 図3
  • 特許-設備管理装置、設備管理方法、及び設備管理プログラム 図4
  • 特許-設備管理装置、設備管理方法、及び設備管理プログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】設備管理装置、設備管理方法、及び設備管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
G08G1/01 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018208574
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020077077
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敦
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-126182(JP,A)
【文献】特開2018-90099(JP,A)
【文献】特開2002-19606(JP,A)
【文献】特開2010-224712(JP,A)
【文献】特開2010-198585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に定めた管理対象エリアの画像を入力する画像入力部と、
前記画像入力部に入力された前記画像を処理し、当該画像上に投影されている基準物標道路付帯設備、および前記道路を走行している車両を検出する検出部と、
前記画像入力部に入力された前記画像上に、前記検出部が検出した前記基準物標に基づく基準を定める基準設定部と、
前記画像入力部に入力された前記画像上における、前記検出部が検出した前記道路付帯設備と前記基準との相対的な位置関係により、前記道路付帯設備が適正であるかどうかを判定する第1判定部と、を備え
前記基準設定部は、前記検出部が検出した車両の前記道路上の走行軌跡に基づいて、前記画像上に基準を定める、
設備管理装置。
【請求項2】
前記検出部は、検出した前記道路付帯設備の外形も検出し、
前記第1判定部は、前記道路付帯設備が適正であるかどうかを、当該道路付帯設備の外形によっても判定する、請求項1に記載の設備管理装置。
【請求項3】
前記基準設定部により定められた前記基準の画像上の位置に基づいて、前記管理対象エリアの画像を撮像した画像センサの取り付け状態が適正であるかどうかを判定する第2判定部を備えた、請求項1、または2に記載の設備管理装置。
【請求項4】
前記検出部は、検出した前記道路を走行している車両の台数をカウントする計数機能を有している、請求項1~3のいずれかに記載の設備管理装置。
【請求項5】
前記基準設定部は、前記検出部が検出した各車両の前記道路上の走行軌跡に基づいて、前記道路における走行状態が適正でない車両を検出する機能を有している、請求項1~4のいずれかに記載の設備管理装置。
【請求項6】
前記画像は、前記管理対象エリアの距離画像である、請求項1~のいずれかに記載の設備管理装置。
【請求項7】
前記第1判定部によって、前記道路付帯設備が適正でないと判定されたときに、その旨を出力する出力部を備えた、請求項1~のいずれかに記載の設備管理装置。
【請求項8】
像入力部に入力された、道路に定めた管理対象エリアの画像を処理し、当該画像上に投影されている基準物標道路付帯設備、および前記道路を走行している車両を検出する検出ステップと、
前記画像入力部に入力された前記画像上に、前記検出ステップで検出した前記基準物標に基づく基準を定める基準設定ステップと、
前記画像入力部に入力された前記画像上における、前記検出ステップで検出した前記道路付帯設備と前記基準との相対的な位置関係により、前記道路付帯設備が適正であるかどうかを判定する第1判定ステップと、をコンピュータが実行し、
前記基準設定ステップは、前記検出ステップで検出した車両の前記道路上の走行軌跡に基づいて、前記画像上に基準を定めるステップである、
設備管理方法。
【請求項9】
像入力部に入力された、道路に定めた管理対象エリアの画像を処理し、当該画像上に投影されている基準物標道路付帯設備、および前記道路を走行している車両を検出する検出ステップと、
前記画像入力部に入力された前記画像上に、前記検出ステップで検出した前記基準物標に基づく基準を定める基準設定ステップと、
前記画像入力部に入力された前記画像上における、前記検出ステップで検出した前記道路付帯設備と前記基準との相対的な位置関係により、前記道路付帯設備が適正であるかどうかを判定する第1判定ステップと、をコンピュータに実行させ
前記基準設定ステップは、前記検出ステップで検出した車両の前記道路上の走行軌跡に基づいて、前記画像上に基準を定めるステップである、
設備管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路標識、照明灯、信号灯器等を取り付ける道路付帯設備を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路付帯設備にセンサを取り付け、当該センサの検出出力を用いて道路付帯設備の状態を管理することが行われている。ここで言う道路付帯設備は、路側に設置した支柱、または道路を幅方向(道路を走行する車両の車幅方向)に跨ぐように設置したガントリ等である。道路付帯設備には、道路標識、照明灯、信号灯器、車両感知センサ等の道路付属物が取り付けられる。例えば、特許文献1には、照明柱等の鋼構造物(道路付帯設備に相当する。)の表面にカードセンサを貼付し、鋼構造物の状態を管理するシステムが記載されている。
【0003】
なお、道路付帯設備には、道路付属物を一体的に形成したものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018- 71986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に記載された従来のシステムは、地震、台風等の自然災害で、道路付帯設備が実空間上で移動し、道路との相対的な位置関係が変化しても、そのことを検知することができなかった。
【0006】
この発明の目的は、道路付帯設備が実空間上で移動したかどうかの判定が適正に行える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の設備管理装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0008】
検出部は、画像入力部に入力された、道路に定めた管理対象エリアの画像を処理し、当該画像上に投影されている基準物標および道路付帯設備を検出する。道路付帯設備は、例えば、道路標識(案内標識、交通標識等)、照明灯、信号灯器、車両感知センサ等の道路付属物を取り付ける支柱、またはガントリである。
【0009】
基準設定部は、画像入力部に入力された画像上に、検出部が検出した基準物標に基づく基準を定める。この基準物標は、道路において車両の走行を阻害する損傷(路面の隆起、陥没等)が生じなければ、実空間上の略同じ位置に検出される物標であればどのような物標であってもよい。例えば、基準物標は、路面に描かれている車両の走行レーンを示す案内線(白線、黄線)にしてもよい。案内線を基準物標にする場合には、この案内線に沿うラインを基準にすればよい。また、多くのドライバは、交通ルールの1つであるキープレフト(走行レーンの比較的左側を維持して走行する。)を順守して車両を運転するので、走行レーンの車幅方向における車両の走行位置が略同じになる。したがって、走行レーンを走行している車両を基準物標にしてもよい。車両を基準物標にする場合、車両の種類によって、車幅(全幅)が異なることから、道路を走行している車両の左側面の軌跡、または道路を走行している車両の車幅方向の中心線を基準するのが好ましい。
【0010】
第1判定部は、画像入力部に入力された画像上における、検出部が検出した道路付帯設備と基準との相対的な位置関係により、道路付帯設備が適正であるかどうかを判定する。
【0011】
これにより、道路付帯設備が実空間上で移動したかどうかの判定が適正に行える。
【0012】
また、基準設定部により定められた基準の画像上の位置に基づいて、管理対象エリアの画像を撮像した画像センサの取り付け状態が適正であるかどうかを判定する第2判定部を備えてもよい。このように構成すれば、画像センサを取り付けている道路付帯設備、および画像センサの取り付け状態が適正であるかどうかの判定も行える。
【0013】
なお、画像センサは、可視光画像の撮像が行えるビデオカメラであってもよいし、距離画像の撮像が行える電波レーダ、レーザセンサであってもよい。
【0014】
また、検出部は、検出した道路付帯設備の外形も検出し、第1判定部が、道路付帯設備が適正であるかどうかを、当該道路付帯設備の外形によっても判定する構成にしてもよい。
【0015】
また、検出部を、道路を走行している車両を検出し、検出した車両の台数をカウントする計数機能を有する構成にしてもよい。このように構成すれば、交通量を計測するトラフィックカウンタとしても活用できる。また、道路における走行状態が適正でない車両を検出する機能を設けてもよい。走行状態が適正でない車両とは、例えば走行路を逆走している車両(逆走車両)、走行路を蛇行しながら走行している車両(蛇行運転車両)である。
【0016】
さらに、第1判定部によって、道路付帯設備が適正でないと判定されたときに、その旨を出力する出力部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、道路付帯設備が実空間上で移動したかどうかの判定が適正に行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この例にかかる設備管理装置を適用した道路の概略図であり、図1(A)は、上方から路面を見た平面図であり、図1(B)は走行レーンを車幅方向に見た道路の平面図である。
図2】この例にかかる設備管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、この例にかかる設備管理装置の距離画像上に基準を設定する処理の概略を説明する図であり、図3(A)は、距離画像を便宜的に平面図で表した図であり、図3(B)は検出された車両の左側面の走行軌跡の頻度を示す図である。
図4】車両計数処理を示すフローチャートである。
図5】設備状態管理処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0020】
<1.適用例>
図1は、この例にかかる設備管理装置を適用した道路の概略図である。図1(A)は、上方から路面を見た平面図である。図1(B)は、走行レーンを車幅方向に見た平面図である。道路の路面には、走行レーンを示す案内線110(白線、黄線)が記されている。ここでは、車両100(100a、100b、100c)の走行レーンが2本である2車線の道路を例にして説明するが、走行レーンの本数は1本以上であれば、何本であってもよい。
【0021】
この例では、道路に対して定めている対象領域(図1(A)においてハッチングで示す領域)内には、照明灯を取り付けた支柱5、6が設置されている。また、電波レーダ2は、支柱7に取り付けている。支柱5、6、7が、この発明で言う道路付帯設備に相当する。また、電波レーダ2が、この発明で言う画像センサに相当する。
【0022】
電波レーダ2は、対象領域全体を含む領域(以下、走査領域と言う。)を探査波である電波で走査し、走査領域の距離画像、および反射強度画像を撮像(取得)する。電波レーダ2は、公知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。電波レーダ2は、電波の照射方向毎に、反射波の強度、および電波を照射してから反射波を検出するまでの時間(以下、飛行時間と言う。)を検出する。この例では、電波レーダ2のフレームレートは、10フレーム/sec程度である(走査領域に対する1走査が100msec程度である。)。
【0023】
電波レーダ2において検出される反射波は、車両100、または支柱5、6で反射された反射波のほうが、路面で反射された反射波よりも強度が大きい。また、路面で反射された反射波であっても、案内線110で反射された反射波のほうが、案内線110が記されていない位置で反射された反射波よりも強度が大きい。また、電波レーダ2は、探査波の照射方向と、飛行時間によって、照射した探査波を反射した反射面の位置(実空間上における、電波レーダ2の反射波の検出素子に対する相対的な位置)を得る。
【0024】
この例では、電波レーダ2は、取得した距離画像を設備管理装置1に出力する(この例では、電波レーダ2は、取得した反射波の強度画像を設備管理装置1に出力しなくてもよい。すなわち、この例では、電波レーダ2は、反射波の強度画像を取得しない構成であってもよい。)。
【0025】
この例にかかる設備管理装置1には、電波レーダ2が取得した距離画像が入力される。設備管理装置1は、図1に示すように、電波レーダ2を取り付けた支柱7の周辺に設置してもよいし、この支柱7から離れた場所に設置してもよい。この例にかかる設備管理装置1は、電波レーダ2から入力された距離画像の中から処理対象の距離画像を選択する。今回選択する処理対象の距離画像は、前回選択した処理対象の距離画像に対して、設定フレーム数後に取得された距離画像である。この設定フレーム数は、1フレームであってもよいし、複数フレーム(2フレーム以上)であってもよい。
【0026】
なお、設定フレーム数を複数フレームにせずに(設定フレーム数を1フレームに固定し、)、電波レーダ2のフレームレートを調整するようにしてもよい。
【0027】
設備管理装置1は、選択した処理対象の距離画像を処理して対象領域内に位置するオブジェクト(車両100、道路付帯設備(この例では、支柱5、6)等)を検出する。設備管理装置1は、時間的に連続する処理対象の距離画像間で、検出したオブジェクトを対応付ける。これにより、オブジェクトが、車両等の移動体である場合、その移動体の追跡が行える。したがって、移動体の移動軌跡を得ることができる。例えば、移動体が車両100である場合には、車両100の走行軌跡を得ることができる。
【0028】
この例にかかる設備管理装置1は、車両100の走行軌跡に基づいて、距離画像上に基準を設定する。多くのドライバが、交通ルールの1つであるキープレフト(走行レーンの比較的左側を維持して走行する。)を順守して車両100を運転していることから、道路において車両100の走行を阻害する損傷(路面の隆起、陥没等)が生じなければ、距離画像上に設定される基準に対応する実空間上の位置は略同じである。この基準を距離画像上に設定する処理の詳細については、後述する。
【0029】
設備管理装置1は、
(1)支柱5、6が空間上で移動したかどうか、
(2)支柱5、6において、傾き、または折れ等にかかる損傷が生じているかどうか、
(3)電波レーダ2の取り付け状態が適正であるかどうか、
を判定する。
【0030】
上記(1)にかかる判定は、距離画像上における支柱5、6と、この距離画像上に設定した基準との相対的な位置関係に基づいて行われる。また、上記(2)にかかる判定は、距離画像から得られる支柱5、6の外形に基づいて行われる。さらに、上記(3)にかかる判定は、距離画像間に対して設定した基準の位置(距離画像上における基準の位置)に基づいて行われる。
【0031】
なお、電波レーダ2の取り付け状態が適正でないと判定される要素には、電波レーダ2を取り付けている支柱7の実空間上での移動、この支柱7に生じた、傾き、または折れ等にかかる損傷が含まれている。
【0032】
また、この例にかかる設備管理装置1は、走行レーン毎に、検出した車両100の台数をカウントするトラフィックカウンタとしての機能も有している。
【0033】
また、この例にかかる設備管理装置1は、道路における走行状態が適正でない車両100を検出する機能を設けてもよい。走行状態が適正でない車両100とは、例えば走行レーンを逆走している車両100(逆走車両)、道路を蛇行しながら走行している車両100(蛇行運転車両)である。
【0034】
<2.構成例>
図2は、この例にかかる設備管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。この例にかかる設備管理装置1は、制御ユニット11と、画像入力部12と、出力部13と、を備えている。この設備管理装置1は、対象領域の走行ライン毎に、その走行ラインを走行した車両100の台数をカウントする車両計数処理、および支柱5、6、7の状態が適正であるかどうかを判定する設備状態管理処理を行う。
【0035】
制御ユニット11は、設備管理装置1本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット11は、オブジェクト検出部21と、基準設定部22と、記憶部23と、第1判定部24と、第2判定部25とを有している。制御ユニット11が有するオブジェクト検出部21、基準設定部22、記憶部23、第1判定部24、および第2判定部25については後述する。
【0036】
画像入力部12には、電波レーダ2が設定されているフレームレートで取得した走査領域の距離画像が入力される。この例では、電波レーダ2における距離画像のフレームレートは、10フレーム/secである。
【0037】
出力部13は、車両計数処理でカウントした車両の台数にかかる交通量情報、および設備状態管理処理で状態が適正でないと判定した支柱5、6、7にかかる情報等を上位装置(不図示)に出力する。
【0038】
次に、制御ユニット11が有するオブジェクト検出部21、基準設定部22、記憶部23、第1判定部24、および第2判定部25について説明する。
【0039】
オブジェクト検出部21は、画像入力部12に入力された距離画像の中から処理対象の距離画像を選択する。今回選択する処理対象の距離画像は、前回選択した処理対象の距離画像に対して、設定フレーム数後に取得された距離画像である。この設定フレーム数は、1フレームであってもよいし、複数フレーム(2フレーム以上)であってもよい。
【0040】
なお、設定フレーム数を複数フレームにせずに(設定フレーム数を1フレームに固定し、)、電波レーダ2のフレームレートを調整するようにしてもよい。
【0041】
オブジェクト検出部21は、選択した処理対象の距離画像を処理して対象領域内に位置する車両100、および支柱5、6等のオブジェクトを検出する。オブジェクト検出部21は、検出したオブジェクトの種類(車両100、支柱5、6等)を検出する。オブジェクトの種類の検出は、その大きさ、形状等に基づいて行える。この例では、オブジェクト検出部21が、この発明で言う検出部に相当する。
【0042】
基準設定部22は、時間的に連続する処理対象の距離画像間で、検出された車両100を対応付けることにより、車両100の走行軌跡を取得する。基準設定部22は、この走行軌跡に基づいて、距離画像上に基準を定める。この例では、車両100が、この発明で言う基準物標に相当する。
【0043】
多くのドライバは、交通ルールの1つであるキープレフト(走行レーンの比較的左側を維持して走行する。)を順守して車両100を運転するので、走行レーンの車幅方向における車両100の走行位置が略同じになる。この例では、車両100は、種類によって車幅(全幅)が異なることを考慮し、道路を走行している車両100の左側面の軌跡に基づいて、距離画像上に基準を定める。基準設定部22が距離画像上に設定する基準に対応する実空間上の位置は略同じである。
【0044】
図3は、この例にかかる設備管理装置の距離画像上に基準を設定する処理の概略を説明する図である。図3(A)は、距離画像を便宜的に平面図で表した図である。図3(B)は、検出された車両の左側面の走行軌跡の頻度を示す図である。基準設定部22は、道路を走行した車両100において、もっとも頻度が大きい左側面の軌跡を基準ラインに設定する。基準設定部22は、基準ライン上で、電波レーダ2からの距離が、設定距離(例えば80m)である路面上の位置を基準に設定する(図3(A)参照)。
【0045】
なお、道路を走行している車両100の車幅方向の中心線の軌跡に基づいて、距離画像上に基準ラインを定めてもよい。
【0046】
記憶部23は、設備管理装置1本体の動作時に発生したデータ等を一時的に記憶するワーキングエリアを有している。また、記憶部23は、トラフィックカウンタ23a、および判定用データ23bにかかる記憶領域を有している。トラフィックカウンタ23aは、走行レーン毎に、車両の台数を計数するカウンタである。
【0047】
判定用データ23bは、支柱5、6、7の状態が適正であるかどうかの判定に用いるデータである。この判定用データ23bには、対象領域内に設置されている支柱5、6の状態が適正であるかどうかの判定に用いる第1判定用データと、電波レーダ2の取り付け状態が適正であるかどうかの判定に用いる第2判定用データとが含まれている。
【0048】
第1判定用データは、支柱5、6毎に、位置判定用データ、および外形判定用データを有している。位置判定用データは、距離画像上における、支柱5、6と、基準設定部22によって定められる基準との相対的な位置関係を示すデータである。例えば、位置判定用データは、支柱5、6の位置を始点とし、基準設定部22によって定められる基準を終点としたベクトルである。外形判定用データは、支柱5、6の外形を示すデータである。また、第2判定用データは、距離画像上における、基準の初期位置を示すデータである。第1判定用データ、および第2判定用データは、設備管理装置1の設置時やメンテナンス時等に設定される。
【0049】
第1判定部24は、距離画像上における支柱5、6と基準設定部22が設定した基準との相対的な位置関係を、第1判定用データの位置判定用データに照合し、支柱5、6の位置が適正であるかどうかを判定する。また、第1判定部24は、支柱5、6の外形を、第1データの外形判定用データに照合し、支柱5、6の傾き、および折れ等にかかる損傷の有無を判定する。
【0050】
第2判定部25は、基準設定部22が距離画像上に定めた基準の位置を、第2判定用データに照合し、電波レーダ2の取り付け状態が適正であるかどうかを判定する。
【0051】
また、基準設定部22は、検出した車両100毎に、その車両100を検出した距離画像の撮像時刻と、検出位置とを対応付けた車両検知データを記憶部23に記憶させる。この車両検知データによって、各車両100の走行軌跡を得ることができる。
【0052】
設備管理装置1の制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる設備管理プログラムを実行したときに、オブジェクト検出部21、基準設定部22、第1判定部24、および第2判定部25として動作する。また、記憶部23は、メモリによって構成してもよいし、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成してもよい。また、メモリは、この発明にかかる設備管理プログラムを展開する領域や、この設備管理プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる設備管理方法を実行するコンピュータである。
【0053】
<3.動作例>
この例にかかる設備管理装置1の動作について説明する。この例にかかる設備管理装置1は、車両計数処理、および設備状態管理処理を実行する。まず、車両計数処理について説明する。図4は、車両計数処理を示すフローチャートである。設備管理装置1は、この車両計数処理を常時実行している。
【0054】
オブジェクト検出部21は、処理対象の距離画像を選択し(s1)、選択した距離画像に撮像されている車両100を検出する車両検出処理を実行する(s2)。オブジェクト検出部21は、検出した車両100毎に、距離画像上の位置を検出している。
【0055】
基準設定部22は、今回の処理対象の距離画像において検出された車両100と、前回の処理対象の距離画像において検出された車両100と、を対応付ける車両同定処理を行う(s3)。この車両同定処理は、車両100の外形、および車両100の位置を用いて行う。この車両同定処理では、今回の処理対象の距離画像において検出された車両100であって、前回の処理対象の距離画像において検出された車両100に対応づけられなかった車両100を、今回初めて検出した車両100と判定する。また、この車両同定処理では、前回の処理対象の距離画像において検出された車両100であって、今回の処理対象の距離画像において検出された車両100に対応づけられなかった車両100を、対象領域を通過した車両100と判定する。基準設定部22は、この車両同定処理の処理結果に基づき、車両検知データを記憶部23に記憶させる。
【0056】
さらに、基準設定部22は、今回初めて検出した車両100があれば、その車両100が走行している走行レーンに対応するトラフィックカウンタ23aをインクリメントし(s4、s5)、以下に示すs6に進む。
【0057】
なお、基準設定部22は、今回初めて検出した車両100がなければ、s5にかかる処理を行うことなく、s6に進む。
【0058】
また、上述したように、基準設定部22は、記憶部23に記憶させた車両検知データによって、各車両100の走行軌跡を得ることができる。基準設定部22は、走行状態が適正でない車両100の有無を判定する(s6)。走行状態が適正でない車両100とは、例えば走行レーンを逆走している車両100(逆走車両)、道路を蛇行しながら走行している車両100(蛇行運転車両)である。設備管理装置1は、基準設定部22において走行状態が適正でない車両100が検出されると、出力部13においてその旨を出力し(s7)、s1に戻る。
【0059】
なお、設備管理装置1は、基準設定部22において走行状態が適正でない車両100が検出されなければ、s7にかかる処理を行うことなく、s1に戻る。
【0060】
設備管理装置1は、上記したs1~s7の処理を繰り返すことにより、走行レーン毎に、走行した車両100の台数の計数を行える。また、設備管理装置1は、走行レーン毎に、走行した車両100の走行軌跡を示す、車両検知データを記憶部23に記憶させる。
【0061】
なお、車両100を大きさで分類した車種(大型、中型、小型)別に、車両100の台数を計数するようにしてもよい。車種の判別は、距離画像から得られる、車幅(全幅)、車長(全長)、車高(全高)の少なくとも1つを用いて行えばよい。
【0062】
次に、設備状態管理処理について説明する。図5は、設備状態管理処理を示すフローチャートである。この設備状態管理は、毎日午前0時00分、毎週日曜日の午前0時00分、毎月1日の午前0時00分等、予め定めたタイミングで実行してもよいし、上位装置等からの指示、または地震、台風等の自然災害の発生時等に実行してもよい。設備状態管理処理は、以下に示すように、上記した車両計数処理と連動して実行される。
【0063】
オブジェクト検出部21は、この設備状態管理処理の実行タイミングになった後に、上記した車両計数処理において、最初に選択した処理対象の距離画像に対して、車両100の検出だけでなく、支柱5、6の検出も行う。この支柱5、6の検出が行われた距離画像が、この設備状態管理処理における処理対象の距離画像になる。オブジェクト検出部21は、支柱5、6の位置、および外形を検出している。
【0064】
基準設定部22は、この処理対象の距離画像上に基準を設定する(s11)。基準設定部22は、道路の最も左側の走行レーンを走行した設定台数(例えば、数百台)の車両100の車両検知データを記憶部23から読み出す。車両検知データを記憶部23から読み出す車両100は、直近に検知された車両100を1台目とし、この1台目の車両100に連続する設定台数の車両100である。基準設定部22は、車両検知データを読み出した設定台数の車両100について、走行軌跡の頻度データ(図3(B)参照)を生成する。基準設定部22は、生成した走行軌跡の頻度データに基づき、処理対象の距離画像上に基準ラインを設定し、この基準ライン上に基準を設定する(図3(A)参照)。
【0065】
第2判定部25は、s11で処理対象の距離画像上に設定された基準の位置(距離画像上の位置)が適正であるかどうかを判定する(s12)。s12では、距離画像上におけるs11で設定された基準の位置を、第2判定用データが示す距離画像上における基準の初期位置に照合する。第2判定部25は、距離画像上において、今回設定された基準の位置と、基準の初期位置とのずれ量(距離)が、予め設定されている基準判定閾値よりも大きければ、今回設定された基準が適正でないと判定する。逆に、第2判定部25は、距離画像上において、今回設定された基準の位置と、基準の初期位置とのずれ量(距離)が、予め設定されている基準判定閾値よりも小さければ、今回設定された基準が適正であると判定する。
【0066】
第2判定部25がs12で今回設定された基準が適正であると判定すると、第1判定部24が支柱5、6毎に、距離画像上において今回設定された基準との相対的な位置関係が適正であるかどうかを判定する(s13)。第1判定部24は、支柱5、6毎に、その支柱5、6の位置と基準との相対的な位置関係が、第1判定用データの位置判定用データが示す相対的な位置関係に対して適正であるかどうかを判定する。例えば、第1判定部24は、支柱5、6の位置と基準との相対的な位置関係として、支柱5、6の位置を始点とし、今回設定された基準を終点とする判定用ベクトルを算出する。第1判定用データの位置判定用データは、支柱5、6の位置と基準との相対的な位置関係を示す基準ベクトルである。第1判定部24は、支柱5、6毎に、判定用ベクトルと基準ベクトルとを対比し、大きさの相違量、および向きの相違量によって、s13にかかる判定を行う。第1判定部24は、判定用ベクトルと基準ベクトルとの差が大きいと、距離画像上において今回設定された基準との相対的な位置関係が適正でないと判定する。
【0067】
なお、このs13の判定に用いるベクトルの差の基準については、予め設定しておけばよい。
【0068】
第1判定部24は、支柱5、6について、距離画像上において今回設定された基準との相対的な位置関係が適正であると判定すると、支柱5、6毎に形状が適正であるかどうかを判定する(s14)。第1判定部24は、支柱5、6毎に、今回検出された外形と、第1判定用データの外形判定用データが示す外形との照合により、s14にかかる判定を行う。
【0069】
第1判定部24は、s14で、支柱5、6の外形が適正であると判定すると、支柱5、6、7が適正であると判定し(s15)、本処理を終了する。
【0070】
また、第2判定部25は、s12で今回処理対象の距離画像上に設定された基準の位置が適正でないと判定すると、電波レーダ2の取り付け状態が適正でないと判定する(s16)。s16では、支柱7に対する電波レーダ2の取り付け状態が変化している場合だけでなく、支柱7が実空間上で移動していたり、傾き、折れ等の損傷が発生していたりする場合もある。
【0071】
また、第1判定部24は、s13で距離画像上において今回設定された基準との相対的な位置関係が適正でないと判定した支柱5、6があれば、その支柱5、6について設置位置が移動したと判定し(s17)、s15に進む。ただし、この場合は、設置位置が移動したと判定した支柱5、6については、s15にかかる形状の適正判定を行わなくてもよい。
【0072】
また、第1判定部24は、s14で形状が適正でないと判定した支柱5、6があれば、その支柱5、6について傾き、倒れ等の損傷が発生したと判定し(s18)、本処理を終了する。
【0073】
設備管理装置1は、この設備状態管理処理が終了すると、今回の判定結果を上位装置へ出力する。設備管理装置1は、全ての支柱5、6、7が適正であると判定したときには、今回の判定結果を上位装置へ出力しないようにしてもよい。すなわち、設備管理装置1は、いずれかの支柱5、6、7が適正でないと判定したときにのみ、今回の判定結果を上位装置へ出力する構成にしてもよい。
【0074】
このように、この例にかかる設備管理装置1によれば、対象エリア内に設置されている道路位置する支柱5、6について、実空間上における設置位置が移動したことを適正に判定することができる。また、設備管理装置1は、対象エリア内に設置されている支柱5、6について、傾き、折れ等の損傷を適正に判定することができる。また、設備管理装置1は、電波レーダ2の取り付け状態が適正であるかどうかについても判定できる。
【0075】
さらに、この例にかかる設備管理装置1は、トラフィックカウンタとしての機能を有しているので、既存の電波レーダ2を利用したトラフィックカウンタと置き換えることにより、トラフィックカウンタの機能をなくすことなく、支柱5、6、7の管理を行うことができる。
【0076】
なお、図5に示した各ステップは、その順番を入れ替えることも可能である。例えば、s13と、s14にかかる判定の順番である。また、設備管理装置1は、上述したトラフィック機能、または走行状態判定機能(走行状態が適正でない車両100を検出する機能)の少なくとも一方を有していない構成であってもよい。
【0077】
<4.変形例>
上記の例では、車両100の走行軌跡を利用して、距離画像上に基準を定めるとしたが、路面に記されている案内線110を利用して、距離画像上に基準を定める構成としてもよい。このように構成すれば、車両100の走行軌跡から、図3に示した基準ラインを生成する処理を不要にできるので、装置本体の処理負荷を抑えることができる。
【0078】
この場合、案内線を検出するために、電波レーダ2から必要に応じて(上記設備状態管理処理を実行するとき)、反射強度画像を入力させればよい。路面で反射された反射波であっても、案内線110で反射された反射波のほうが、案内線110が記されていない位置で反射された反射波よりも強度が大きい。したがって、反射強度画像から、案内線110を検出することができる。
【0079】
また、設備管理装置1は、距離画像における路面までの距離によって、隆起、沈降等にかかる路面の損傷についても検知し、管理するように構成してもよい。
【0080】
また、設備管理装置1は、電波レーダ2に替えて、レーザセンサ、またはビデオカメラを利用する構成にしてもよい。上記した処理は、距離画像に限らず、2次元画像であっても、実行できる。
【0081】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0082】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
道路に定めた管理対象エリアの画像を入力する画像入力部(12)と、
前記画像入力部(12)に入力された前記画像を処理し、当該画像上に投影されている基準物標および道路付帯設備を検出する検出部(21)と、
前記画像入力部(12)に入力された前記画像上に、前記検出部(21)が検出した前記基準物標に基づく基準を定める基準設定部(22)と、
前記画像入力部(12)に入力された前記画像上における、前記検出部(21)が検出した前記道路付帯設備(5、6)と前記基準との相対的な位置関係により、前記道路付帯設備(5、6)が適正であるかどうかを判定する第1判定部(24)と、を備えた設備管理装置(1)。
【符号の説明】
【0083】
1…設備管理装置
2…電波レーダ
5、6,7…支柱
11…制御ユニット
12…画像入力部
13…出力部
21…オブジェクト検出部
22…基準設定部
23…記憶部
23a…トラフィックカウンタ
23b…判定用データ
24…第1判定部
25…第2判定部
100…車両
110…案内線
図1
図2
図3
図4
図5