(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】走行管理装置、走行管理方法、および走行管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20220802BHJP
G08G 1/015 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/015 A
(21)【出願番号】P 2018227823
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 功
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-283176(JP,A)
【文献】特開2000-99150(JP,A)
【文献】特開2003-265663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に定められた走行レーンを走行している車両を検知する車両検知部と、
前記車両検知部によって検知された車両について、車両の大きさで分類した種類を判別する車種判別部と、
前記車両検知部によって検知された車両に対して、前記走行レーンの車幅方向における走行位置を決定する走行位置決定部と、
前記車両検知部によって検知された車両に対して、前記走行位置決定部で決定した前記走行レーンの車幅方向における走行位置を指示する走行位置指示部と、を備え、
前記走行位置決定部は、
車両の種類毎に、前記車両検知部によって検知された
その種類の車両群において、決定する前記走行レーンの車幅方向における走行位置を分散させる、走行管理装置。
【請求項2】
前記走行位置決定部は、車両の種類毎に、予め設定した台数単位で、前記車両検知部によって検知された車両に対して決定する前記走行レーンの車幅方向における走行位置を変更する、請求項
1に記載の走行管理装置。
【請求項3】
前記走行レーンの車幅方向における走行位置について、車両の種類毎に、複数の選択候補を記憶する選択候補記憶部を備え、
前記走行位置決定部は、車両の種類毎に、前記車両検知部によって検知された車両に対して決定する前記走行レーンの車幅方向における走行位置を、当該車両の種類について記憶している複数の前記選択候補の中から選択する、請求項
1、または
2に記載の走行管理装置。
【請求項4】
前記走行位置決定部は、車両の種類毎に、当該車両の種類について記憶している複数の前記選択候補を順番に選択する、請求項
3に記載の走行管理装置。
【請求項5】
道路に定められた走行レーンを走行している車両を検知する車両検知ステップと、
前記車両検知ステップで検知した車両について、車両の大きさで分類した種類を判別する車種判別ステップと、
前記車両検知ステップで検知した車両に対して、前記走行レーンの車幅方向における走行位置を決定する走行位置決定ステップと、
前記車両検知ステップで検知した車両に対して、前記走行位置決定ステップで決定した前記走行レーンの車幅方向における走行位置を指示する走行位置指示ステップと、をコンピュータで実行し、
前記走行位置決定ステップが、
車両の種類毎に、前記車両検知ステップで検知した
その種類の車両群において、決定する前記走行レーンの車幅方向における走行位置を分散させるステップである、走行管理方法。
【請求項6】
道路に定められた走行レーンを走行している車両を検知する車両検知ステップと、
前記車両検知ステップで検知した車両について、車両の大きさで分類した種類を判別する車種判別ステップと、
前記車両検知ステップで検知した車両に対して、前記走行レーンの車幅方向における走行位置を決定する走行位置決定ステップと、
前記車両検知ステップで検知した車両に対して、前記走行位置決定ステップで決定した前記走行レーンの車幅方向における走行位置を指示する走行位置指示ステップと、をコンピュータに実行させ、
前記走行位置決定ステップが、
車両の種類毎に、前記車両検知ステップで検知した
その種類の車両群において、決定する前記走行レーンの車幅方向における走行位置を分散させるステップである、走行管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路に定められた走行レーンにおける自動運転車両の走行を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路を走行している車両が走行レーンから逸脱する虞があるときに、ステアリング操作を自動的に行う技術がある(例えば、特許文献1等参照)。ここでは、この技術をレーンキープアシストと言う。このレーンキープアシストでは、走行している道路(路面)に記されている走行レーンを示す案内線(白線、黄線)を検知し、当該車両が走行レーンから逸脱する虞があるかどうかを判断している。
【0003】
このレーンキープアシストにかかる技術は、今後実用化されていく自動運転車両(ここでは、レベル3以上の自動運転車両を意味する。)に適用される技術の1つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動運転車両が実用化されて普及すると、レーンキープアシストによって、走行レーンの車幅方向における自動運転車両の走行位置がほぼ同じになると予想される。このような場合、走行レーンの車幅方向における自動運転車両のタイヤと路面との当接位置(以下、タイヤ当接位置と言う。)がほぼ同じになる。すなわち、タイヤ当接位置が、走行レーンの車幅方向において、ある箇所に集中する(トレッドの違いにより若干のずれが生じる程度である。)。走行レーンの路面は、タイヤ当接位置が集中した箇所において、ひび割れ、わだち掘れ等の損傷の進度が速くなる。
【0006】
また、路面の損傷は、交通事故を引き起こす要因でもあることから、速やかに補修するのが好ましい。したがって、上記した事象によって、路面における損傷の進度が速くなると、路面の補修工事のサイクルが短くなる。
【0007】
この発明の目的は、自動運転車両が普及した将来の交通社会においても、路面が損傷する進度が速くなるのを抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の走行管理装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0009】
車両検知部は、道路に定められた走行レーンを走行している車両を検知する。走行位置決定部は、車両検知部によって検知された車両に対して、走行レーンの車幅方向における走行位置を決定する。そして、走行位置指示部が、車両検知部によって検知された車両に対して、走行位置決定部で決定した走行レーンの車幅方向における走行位置を指示する。走行レーンの車幅方向における走行位置は、例えば走行レーンを示す案内線(白線、黄線)を基準にして規定すればよい。さらに、走行位置決定部は、車両検知部によって検知された車両群において、車両毎に決定する走行レーンの車幅方向における走行位置を分散させる。
【0010】
この構成では、レーンキープアシストによって走行レーンを走行している自動運転車両に対して、走行レーンの幅方向における走行位置を指示することができる。この指示にしたがって、自動運転車両が、走行レーンの幅方向における走行位置を制御(調整)する。これにより、走行レーンの幅方向における自動運転車両の走行位置を分散させることができる。すなわち、自動運転車両のタイヤと路面との当接位置(以下、タイヤ当接位置と言う。)を、走行レーンの車幅方向に分散させることができる。したがって、路面が損傷する進度が速くなるのを抑えられ、その結果、路面の補修工事のサイクルが短くなるのを抑えられる。
【0011】
なお、路面の損傷とは、ひび割れ、わだち掘れ等である。
【0012】
また、走行位置決定部は、例えば、予め設定した台数単位で、車両検知部によって検知された車両に対して決定する走行レーンの車幅方向における走行位置を変更すればよい。走行レーンの車幅方向における走行位置を変更する、車両の台数は1台であってもよいし、複数台であってもよい。
【0013】
また、走行レーンの車幅方向における走行位置について、複数の選択候補を記憶する選択候補記憶部を備え、走行位置決定部が、車両検知部によって検知された車両に対して決定する走行レーンの車幅方向における走行位置を、複数の選択候補の中から選択する構成にしてもよい。このように構成すれば、車両検知部によって検知された車両に対して、走行レーンの車幅方向における走行位置を決定する処理を簡単にできる。
【0014】
また、この場合、走行位置決定部は、複数の選択候補を順番に選択するように構成してもよいし、ランダムに選択するように構成してもよい。
【0015】
また、車両検知部によって検知された車両について、車両の大きさで分類した種類を判別する車種判別部を備え、走行位置決定部は、車両の種類毎に、車両検知部によって検知されたその種類の車両群において、車両毎に決定する前記走行レーンにおける車幅方向の走行位置を分散させる、構成にしてもよい。
【0016】
このように構成すれば、大型車、中型車、普通車等の車両の種類別に、走行レーンの車幅方向における走行位置を分散させることができる。言い換えれば、特定の種類の車両(例えば、大型車両)が、走行レーンの車幅方向において、走行位置がほぼ同じになる(集中する)のを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、自動運転車両が普及した将来の交通社会においても、路面が損傷する進度が速くなるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この例にかかる走行管理装置を適用した道路を示す概略図であり、
図1(A)は上方から路面を見た道路の平面図、
図1(B)は道路を車幅方向に見た道路の平面図である。
【
図2】走行レーンの車幅方向における車両の走行位置の分散を説明する図である。
【
図3】この例にかかる走行管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図4】この例にかかる走行管理装置の記憶部に記憶している走行位置情報を示す図である。
【
図5】この例にかかる走行管理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】走行位置決定処理を示すフローチャートである。
【
図7】変形例にかかる走行管理装置の記憶部に記憶している走行位置情報を示す図である。
【
図8】変形例の走行管理装置の走行位置決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0020】
<1.適用例>
図1は、この例にかかる走行管理装置を適用した道路を示す概略図である。
図1(A)は、上方から路面を見た道路の平面図である。
図1(B)は走行レーンの車幅方向に見た道路の平面図である。道路の路面には、走行レーン111(111a、111b)を示す案内線110(白線、黄線)が記されている。ここでは、車両100(100a、100b、100c)の走行レーン111が2本である2車線の道路を例にして説明するが、走行レーンの本数は1本以上であれば、何本であってもよい。この例にかかる走行管理装置1には、走行レーン111毎に、車両100の有無を検知する車両検知領域(
図1(A)においてハッチングで示す領域)が設定されている。
【0021】
カメラ2は、各走行レーン111の車両検知領域が撮像エリア内に収まるアングルで照明用の支柱等の道路付属構造物に取り付けている。この例では、2本の走行レーン111a、111bのそれぞれに設定した車両検知領域を1台のカメラ2で撮像する構成であるが、走行レーン111a、111b別に、車両検知領域を撮像するカメラ2を設けてもよい。カメラ2は、フレームレートが数十フレーム/秒(例えば、30フレーム/秒)である、ビデオカメラである。カメラ2は、撮像したフレーム画像を走行管理装置1に出力する。
【0022】
この例にかかる走行管理装置1には、カメラ2において撮像された道路のフレーム画像が入力される。走行管理装置1は、
図1に示すように、カメラ2を取り付けた支柱の周辺に設置してもよいし、この支柱から離れた場所に設置してもよい。この例にかかる走行管理装置1は、入力されたカメラ2のフレーム画像を処理して、走行レーン111毎に、その走行レーン111に設定した車両検知エリア内に位置する車両100を検知する。
【0023】
また、走行管理装置1は、検知した車両100に対して、走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定して指示する。走行管理装置1は、走行レーン111毎に、検知した各車両100に対して走行レーン111の車幅方向における走行位置の指示を行うことによって、その走行レーン111における車両100の走行位置を、走行レーン111の車幅方向に分散させる。例えば、走行管理装置1は、
図2示すように、走行レーン111を走行している3台の車両100x、100y、100zに対して指示する走行レーン111の車幅方向における走行位置を異ならせる。
【0024】
車幅方向における走行位置は、例えば、その走行レーン111にかかる、右側の案内線110、または左側の案内線110を基準にし、この基準にした案内線110から車幅方向に離れる長さ、例えば車幅方向に20cm、車幅方向に30cm、車幅方向に40cm等で指示すればよい。また、車幅方向における走行位置は、その走行レーン111にかかる、右側の案内線110と、左側の案内線110との間のほぼ中央に仮想的に形成される仮想中心線を基準して、例えば車幅方向に0cm、車幅方向右側に10cm、車幅方向左側に10cm等で指示してもよい。さらには、基準を、上述した走行レーン111にかかる、右側の案内線110、および左側の案内線110以外(例えば、ガードレール、中央分離帯)にして、車幅方向における走行位置を指示してもよい。
【0025】
走行管理装置1が、走行レーン111における車両100の走行位置を、走行レーン111の車幅方向に分散させることにより、走行レーン111の車幅方向において、車両100のタイヤが当接する位置(以下、タイヤ当接位置と言う。)を分散させる。これにより、路面が損傷する進度が速くなるのを抑えられるので、その結果、路面の補修工事のサイクルが短くなるのを抑えられる。路面の損傷とは、ひび割れ、わだち掘れ等である。
【0026】
この例にかかる走行管理装置1は、検知した車両100に対して、走行レーン111の車幅方向における走行位置を指示するだけである。車両100が、この指示にしたがって、走行レーン111の車幅方向における走行位置を制御(調整)する。すなわち、自動運転車両でない車両100(ドライバがステアリング操作を行う車両100)は、走行管理装置1からの走行レーン111の車幅方向における走行位置の指示に従わない。言い換えれば、自動運転車両が、走行管理装置1からの走行レーン111の車幅方向における走行位置の指示に従って、車幅方向における走行位置を制御する。自動運転車両100は、公知のレーンキープアシストによって、走行レーン111の車幅方向における走行位置を制御する。
【0027】
なお、自動運転車両でない車両100は、ドライバのステアリング操作を含む運転技術の差によって、走行レーン111の車幅方向における走行位置が分散している。したがって、自動運転車両でない車両100が、走行管理装置1からの走行レーン111の車幅方向における走行位置の指示に従わないことによって、走行レーン111の車幅方向における車両100の走行位置がほぼ同じになるような事態の発生確率は極めて小さい。
【0028】
<2.構成例>
図3は、この例にかかる走行管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。走行管理装置1は、制御ユニット11と、画像入力部12と、出力部13とを備えている。
【0029】
制御ユニット11は、車両検知部21、走行位置決定部22、および記憶部23を有している。制御ユニット11は、走行管理装置1本体各部の動作を制御する。制御ユニット11が有する、車両検知部21、走行位置決定部22、および記憶部23の詳細については後述する。
【0030】
画像入力部12には、カメラ2が接続されている。画像入力部12には、カメラ2が車両検知エリアを撮像したフレーム画像が入力される。画像入力部12は、ビデオメモリ(不図示)を有する。このビデオメモリは、フレーム画像を複数記憶することができる容量である。
【0031】
出力部13は、走行レーン111を走行している車両100に対して、走行レーン111の車幅方向における走行位置を指示する走行位置指示情報を出力する。この走行位置指示情報は、走行管理装置1から車両100に直接送信されてもよいし、路車間通信を行う路側機(不図示)、または交通情報を車両100に提供するビーコン(不図示)等の既設の機器を介して、車両100に送信されてもよい。出力部13が、この発明で言う走行位置指示部に相当する。
【0032】
次に、制御ユニット11が有する車両検知部21、走行位置決定部22、および記憶部23について説明する。
【0033】
車両検知部21は、画像入力部12に入力されたフレーム画像(カメラ2によって車両検知エリアが撮像されたフレーム画像)の中から、処理対象フレーム画像を選択する。処理対象フレーム画像は、カメラ2が車両検知エリアを撮像した時系列に並んでいるフレーム画像群の中から、設定フレーム数間隔で抽出したフレーム画像である。この設定フレーム数間隔は、1フレームであってもよいし、複数フレームであってもよい。車両検知部21は、処理対象フレーム画像に、車両検知領域内に位置する車両100が撮像されているかどうかを検知する。車両検知部21は、公知の背景差分法、フレーム間差分法、エッジ抽出法等の画像処理によって、車両検知領域内に位置する車両100を検知する。
【0034】
走行位置決定部22は、車両検知部21によって検知された、車両検知領域内に位置する車両100に対して、走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定する。
【0035】
記憶部23は、車両100に対して指示する、走行レーン111の幅方向における走行位置の選択候補を登録した選択テーブル23aを記憶している。
図4は、この例にかかる走行管理装置の記憶部に記憶している選択テーブルを示す図である。
図4では、走行レーン111の車幅方向における車両100の走行位置の選択候補を3パターン(パターンA、B、C)登録した選択テーブル23aを例示している。選択候補は、パターン毎に、走行レーン111の車幅方向における車両100の走行位置を対応づけた情報である。また、選択テーブル23aには、基準(
図4では、走行レーン111の右側の案内線110)が登録されている。
【0036】
走行位置決定部22は、車両検知部21によって検知された車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置を、選択テーブル23aに登録されている選択候補の中から、いずれかの選択候補を選択することによって決定する。
【0037】
記憶部23が、この発明で言う選択候補記憶部に相当する。走行位置情報に登録されている走行レーン111の幅方向における車両100の走行位置のパターン(パターンA、B、C)が、この発明で言う選択候補に相当する。
【0038】
なお、この例では、記憶部23が記憶する選択テーブル23aに登録されているパターンが3つである場合を例にしているが、このパターンの個数は、2つ以上であれば、いくつであってもよい。
【0039】
また、記憶部23には、走行レーン111毎に、車両の台数をカウントする台数カウンタを有している。この台数カウンタについては、後述する。
【0040】
走行管理装置1の制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる走行管理プログラムを実行したときに、車両検知部21、および走行位置決定部22として動作する。また、メモリは、この発明にかかる走行管理プログラムを展開する領域や、この走行管理プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。また、メモリは、上記記憶部23にかかる記憶領域も有している。制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる走行管理方法を実行するコンピュータである。
【0041】
<3.動作例>
次に、この例にかかる走行管理装置の動作について説明する。
図5は、走行管理装置の動作を示すフローチャートである。走行管理装置1は、処理対象フレーム画像を選択し、選択した処理対象フレーム画像に、車両検知領域内に位置する車両100が撮像されているかどうかを検知する車両検知処理を行う(s1)。s1にかかる処理は、車両検知部21が実行する。車両検知部21は、前回の処理対象フレーム画像に対して、設定フレーム数後に撮像されたフレーム画像を処理対象フレーム画像として選択する。また、車両検知部21は、公知の背景差分法、フレーム間差分法、エッジ抽出法等の画像処理によって、今回選択した処理対象フレーム画像に、車両検知領域内に位置する車両100が撮像されているかどうかを検知する。
【0042】
走行管理装置1は、s1で検知された車両検知領域内に位置する車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定する走行位置決定処理を行う(s2)。s2にかかる処理は、走行位置決定部22が実行する。
【0043】
図6は、この走行位置決定処理を示すフローチャートである。走行位置決定部22は、s1で車両検知領域内に位置する車両100が検知されたかどうかを判定する(s11)。走行位置決定部22は、車両検知領域内に位置する車両100が検知されていなければ、このs2にかかる処理を終了する。
【0044】
走行位置決定部22は、車両検知領域内に位置する車両100が検知されていれば、今回検知された車両100の中から処理対象の車両を選択する(s12)。s12では、複数の走行レーン111において、車両検知領域内に位置する車両100が検知されていた場合、いずれかの走行レーン111において検知された車両100を、処理対象の車両100として選択する。走行位置決定部22は、s12で選択した処理対象の車両100が走行している走行レーン111について、車両台数をカウントしている台数カウンタのカウント値が設定台数以上であるかどうかを判定する(s13)。この台数カウンタは、上述したように、記憶部23に設けられている。
【0045】
走行位置決定部22は、台数カウンタのカウント値が設定台数以上であると、台数カウンタのカウント値をリセットし(s14)、s12で選択した処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定する(s15)。s15では、処理対象の車両100が検知された走行レーン111において、前回検知された車両100に対して決定した走行レーン111の車幅方向における走行位置が、
図3に示すパターンAであれば、今回の処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置をパターンBに決定する。また、処理対象の車両100が検知された走行レーン111において、前回検知された車両100に対して決定した走行レーン111の車幅方向における走行位置が、
図3に示すパターンBであれば、今回の処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置をパターンCに決定する。また、処理対象の車両100が検知された走行レーン111において、前回検知された車両100に対して決定した走行レーン111の車幅方向における走行位置が、
図3に示すパターンCであれば、今回の処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置をパターンAに決定する。
【0046】
一方、走行位置決定部22は、台数カウンタのカウント値が設定台数未満であると、台数カウンタのカウント値をインクリメントし(s16)、s12で選択した処理対象車両に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定する(s17)。s17では、処理対象の車両100が検知された走行レーン111において、前回検知された車両100に対して決定した走行レーン111の車幅方向における走行位置を、今回の処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置に決定する。すなわち、s17では、処理対象の車両100が検知された走行レーン111において、前回検知された車両100に対して決定した走行レーン111の車幅方向における走行位置が、
図3に示すパターンAであれば、今回の処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置をパターンAに決定する。また、処理対象の車両100が検知された走行レーン111において、前回検知された車両100に対して決定した走行レーン111の車幅方向における走行位置が、
図3に示すパターンBであれば、今回の処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置をパターンBに決定する。また、処理対象の車両100が検知された走行レーン111において、前回検知された車両100に対して決定した走行レーン111の車幅方向における走行位置が、
図3に示すパターンCであれば、今回の処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置をパターンCに決定する。
【0047】
走行位置決定部22は、s15、またはs17において、s12で選択した処理対象の車両100に対して走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定すると、未処理の車両100の有無を判定する(s18)。走行位置決定部22は、未処理の車両100があれば、s12に戻って、上記した処理を繰り返す。例えば、
図1に示した、2本の走行レーン111a、111bの両方において、車両検知領域に位置する車両100が検知された場合、走行レーン111aを走行している車両100に対して、s12~s17の処理を行った後、走行レーン111bを走行している車両100に対して、s12~s17の処理を行う。
【0048】
走行位置決定部22は、s18で未処理の車両100が無いと判定すると、本処理を終了する。
【0049】
なお、s13での判定に用いる設定台数は、予め設定されている。また、設定台数は、1台であってもよいし、複数台であってもよい。ただし、設定台数を1台にした場合、s13、s14、s16、およびs17の処理を不要にできる。また、台数カウンタを、記憶部23に設けなくてもよい。
【0050】
図5に戻って、走行管理装置1は、s2にかかる走行位置決定処理を終了すると、s1で検知した車両検知領域内に位置する車両100に対して、s2で決定した走行レーン111の車幅方向における走行位置を指示する走行位置指示情報を出力する(s3)。走行位置指示情報は、出力部13において出力される。この走行位置指示情報は、走行管理装置1から車両100に直接送信されてもよいし、路車間通信を行う路側機(不図示)、または交通情報を車両100に提供するビーコン(不図示)等の既設の機器を介して、車両100に送信されてもよい。
【0051】
この例にかかる走行管理装置1は、走行レーン111毎に、その走行レーン111を走行した車両100に対して指示する、走行レーン111の車幅方向における走行位置を分散させることができる。走行レーン111の車幅方向における走行位置が指示された車両100は、自動運転車両であれば、レーンキープアシストによって、走行レーン111の車幅方向における車両100の走行位置を、指示された走行位置に制御する。これにより、走行レーン111の車幅方向における自動運転車両の走行位置がほぼ同じになるのを防止し、走行レーン111の車幅方向に分散させることができる。すなわち、自動運転車両のタイヤの当接位置を、走行レーン111の車幅方向に分散させることができる。したがって、路面が損傷する進度が速くなるのを抑えられ、その結果、路面の補修工事のサイクルが短くなるのを抑えられる。
【0052】
また、上記の例では、走行管理装置1(走行位置決定部22)が、
図4に示した選択テーブル23aに登録されているパターンを順番に選択する例で悦明したが、
図4に示した選択テーブル23aに登録されているパターンをランダムに選択するようにしてもよい。また、走行管理装置1は、走行レーン111毎に、その走行レーン111を走行した車両100に対して指示する、走行レーン111の車幅方向における走行位置を分散させることができれば、
図4に示した選択テーブル23aを用いないで、車両100に対して走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定する構成にしてもよい。
【0053】
また、上記の例では、走行管理装置1(走行位置決定部22)は、カメラ2の撮像画像を処理して、車両検知領域内に位置する車両100を検知するとしたが、カメラ2に替えてレーザセンサ、電波レーダ等を用いて、車両検知領域内に位置する車両100を検知してもよい。また、車両検知領域の路面に埋設したループコイルセンサ等によって、車両検知領域内に位置する車両100を検知する構成にしてもよい。
【0054】
<4.変形例>
次に、走行管理装置1の変形例について説明する。この変形例の走行管理装置1も、
図3に示す構成であるが、車両100の大きさで分類した種類毎に選択テーブル23a、23b、23cを記憶部23に記憶している点で相違する。具体的には、
図7に示すように、この変形例にかかる走行管理装置1は、普通車用の選択テーブル23a、中型車用の選択テーブル23b、および大型車用の選択テーブル23cを記憶部23に記憶している。車両100の大きさによる分類は、車両100の車幅(全幅)、または車長(全長)によって行えばよい。
【0055】
この例では、車両100を、その大きさで普通車、中型車、大型車の3つの車種に分類している。また、この変形例にかかる走行管理装置1の記憶部23には、走行レーン111毎に、車種別の台数カウンタが設けられている。すなわち、この例では、1つの走行レーン111に対して、普通車の台数カウンタ、中型車の台数カウンタ、および大型車の台数カウンタが設けられている。
【0056】
この変形にかかる走行管理装置1は、
図5に示す処理を実行するが、s2にかかる走行位置決定処理が、上記の例と異なる。
図8は、この変形例の走行管理装置における走行位置決定処理を示すフローチャートである。
図8では、
図6に示した処理と同じ処理については、同じステップ番号(s##)を付している。
【0057】
この変形にかかる走行管理装置1は、上述したs11、およびs12にかかる処理を行うと、s12で選択した処理対象の車両100の車種(普通車、中型車、大型車)を判別する(s21)。
【0058】
走行管理装置1は、12で選択した処理対象の車両100が走行している走行レーン111の台数カウンタであって、s21で判別した車種の台数カウンタのカウント値が設定台数以上であるかどうかを判定する(s22)。
【0059】
走行位置決定部22は、台数カウンタのカウント値が設定台数以上であると、該当する車種の台数カウンタのカウント値をリセットし(s23)、s12で選択した処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定する(s24)。s24では、記憶部23に記憶している該当車種の選択テーブル23a、23b、23cを用いて、今回の処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定する。
【0060】
一方、走行位置決定部22は、台数カウンタのカウント値が設定台数未満であると、該当する車種の台数カウンタのカウント値をインクリメントし(s25)、s12で選択した処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定する(s26)。s26では、記憶部23に記憶している該当車種の選択テーブル23a、23b、23cを用いて、今回の処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定する。
【0061】
なお、s24、またはs26で、今回の処理対象の車両100に対する走行レーン111の車幅方向における走行位置を決定する処理については、該当する車種の選択テーブル23a、23b、23cを使用する点で、上記の例と相違するだけであり、決定の手法については、上記した例のいずれの手法で行ってもよい。
【0062】
したがって、この変形例にかかる走行管理装置1によれば、その走行レーン111を走行した車両100に対して指示する、走行レーン111の車幅方向における走行位置を、車両100の大きさで分類した車種毎に分散させることができる。これにより、例えば、大型車の走行位置が、走行レーン111の車幅方向において集中するのを防止できる。したがって、路面が損傷する進度が速くなるのを抑えられ、その結果、路面の補修工事のサイクルが短くなるのを抑えられる。
【0063】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0064】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
道路に定められた走行レーン(111)を走行している車両(100)を検知する車両検知部(21)と、
前記車両検知部(21)によって検知された車両(100)に対して、前記走行レーン(111)の車幅方向における走行位置を決定する走行位置決定部(22)と、
前記車両検知部(21)によって検知された車両(100)に対して、前記走行位置決定部(22)で決定した前記走行レーン(111)の車幅方向における走行位置を指示する走行位置指示部(13)と、を備え、
前記走行位置決定部(22)は、前記車両検知部(21)によって検知された車両群において、決定する前記走行レーン(111)の車幅方向における走行位置を分散させる、走行管理装置(1)。
【符号の説明】
【0065】
1…走行管理装置
2…カメラ
11…制御ユニット
12…画像入力部
13…出力部
21…車両検知部
22…走行位置決定部
23…記憶部
23a、23b、23c…選択テーブル
100…車両
100x…車両
110…案内線
111(111a、111b)…走行レーン