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特許7115921空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20220802BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018125204
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020003424
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚史
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-346755(JP,A)
【文献】特開平10-258613(JP,A)
【文献】米国特許第09026305(US,B2)
【文献】特開平06-206406(JP,A)
【文献】特開2017-020961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤを所定速度で転動させ、
パターンノイズの音圧を測定し、
測定した前記パターンノイズの音圧から所定の周波数範囲でエネルギー値を算出し、
前記所定の周波数範囲における新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定する
ことを含み、
前記所定の周波数範囲は、前記所定速度に対応する車両の時速Vと、前記空気入りタイヤのトレッドパターンのタイヤ周方向におけるブロックピッチのうちの最小ピッチ長Dminおよび最大ピッチ長Dmaxとを用いて、以下の式でΔfとして算出される、気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法。
【請求項2】
前記ブロックピッチを1次のピッチとして、タイヤ周方向におけるブロックの分割形状に応じた各次数のピッチで、前記所定の周波数範囲を算出し、
次数ごとに前記所定の周波数範囲でエネルギー値を算出し、
次数ごとに新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定する、請求項に記載の空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法。
【請求項3】
空気入りタイヤを所定速度で転動させ、
パターンノイズの音圧を測定し、
測定した前記パターンノイズの音圧から所定の周波数範囲でエネルギー値を算出し、
前記所定の周波数範囲における新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定する
ことを含み、
新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が2倍以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定する、気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法。
【請求項4】
空気入りタイヤを所定速度で転動させ、
パターンノイズの音圧を測定し、
測定した前記パターンノイズの音圧から所定の周波数範囲でエネルギー値を算出し、
前記所定の周波数範囲における新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定する
ことを含み、
前記所定速度は、前記所定の周波数範囲が気柱管共鳴周波数範囲から外れる速度である、気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法。
【請求項5】
前記空気入りタイヤの転動方向前方に音圧センサを設置し、
前記音圧センサによって前記パターンノイズの音圧を測定する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法。
【請求項6】
空気入りタイヤを所定速度で転動させ、
パターンノイズの音圧を測定し、
測定した前記パターンノイズの音圧から所定の周波数範囲でエネルギー値を算出し、
前記所定の周波数範囲における新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定する
ことを含み、
前記空気入りタイヤの転動は、前記空気入りタイヤを備える自動車の実車走行によって行われ、
音圧センサを前記自動車の車室内に設置し、
前記音圧センサによって前記パターンノイズの音圧を測定し、
前記所定速度は、前記所定の周波数範囲が前記自動車の車室内共鳴範囲に含まれる速度である、気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法。
【請求項7】
空気入りタイヤを所定速度で転動させる転動装置と、
パターンノイズの音圧を測定する音圧センサと、
測定した前記パターンノイズの音圧から所定の周波数範囲でエネルギー値を算出するエネルギー算出部と、
前記所定の周波数範囲における新品時のエネルギー値を記憶する記憶部と、
前記記憶部の新品時の前記エネルギー値と比較して前記エネルギー算出部にて算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定する判定部と
を備え
前記所定の周波数範囲は、前記所定速度に対応する車両の時速Vと、前記空気入りタイヤのトレッドパターンのタイヤ周方向におけるブロックピッチのうちの最小ピッチ長Dminおよび最大ピッチ長Dmaxとを用いて、以下の式でΔfとして算出される、空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などに取り付けられる空気入りタイヤでは、トレッドパターンに応じて様々な偏摩耗が発生する。例えば、トレッド部にブロック形状を有するタイヤでは、ブロック形状の踏み込み側と蹴り出し側のうち主に蹴り出し側が大きく摩耗する偏摩耗が生じることがある。この偏摩耗は、ヒールアンドトウ摩耗と称されている。ヒールアンドトウ摩耗は、タイヤ性能を悪化させるとともにノイズを増大させるため、正確に検知して対処することが求められている。
【0003】
特許文献1には、タイヤのパターンノイズにおける周波数毎の音圧レベルを測定して、基準タイヤの音圧レベルと比較演算することによりタイヤの摩耗量を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-346755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のタイヤの摩耗量の測定方法は、一般的な摩耗を測定するものであり、特定の偏摩耗を効果的に測定できるものではない。従って、特定の偏摩耗としてヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を判定する観点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法および装置において、正確にヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を判定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、空気入りタイヤを所定速度で転動させ、パターンノイズの音圧を測定し、測定した前記パターンノイズの音圧から所定の周波数範囲でエネルギー値を算出し、前記所定の周波数範囲における新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定することを含み、前記所定の周波数範囲は、前記所定速度に対応する車両の時速Vと、前記空気入りタイヤのトレッドパターンのタイヤ周方向におけるブロックピッチのうちの最小ピッチ長Dminおよび最大ピッチ長Dmaxとを用いて、以下の式でΔfとして算出される、空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法を提供する
【0008】
【数1】
【0009】
この方法によれば、パターンノイズの音圧を測定し、所定の周波数範囲において、新品時のエネルギー値よりも測定したエネルギー値が所定以上大きければ摩耗していると判定する。従って、特定の周波数範囲に対応する摩耗の発生の有無を判定できる。具体的には、タイヤのトレッドパターンにおいて、タイヤ周方向にばらつきをもった所定の間隔でブロックが配されているとき、ヒールアンドトウ摩耗の発生によって所定の周波数範囲でパターンノイズが増加する。そのため、当該周波数範囲で、新品時のタイヤと、測定したタイヤとのエネルギー値を比較することで、ヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を判定できる。特に、この判定方法は、従来のようにある一点の周波数におけるパターンノイズの音圧比較では正確に測定し難いヒールアンドトウ摩耗の発生を、特定の周波数範囲でのエネルギー比較を行うことで可能にしたものである。また、所定の周波数範囲Δfを具体的に規定できる。詳細には、周波数範囲Δfの下限値f1および上限値f2を求める際、時速V(km/h)に1000/3600をかけることで秒速(m/s)に変換している。周波数範囲Δfの下限値f1は、時速V(km/h)を秒速に変換したものを最大ピッチ長Dmaxの1.05倍の数値で割ることで求められる。同様に、周波数範囲Δfの上限値f2は、時速V(km/h)を秒速に変換したものを最小ピッチ長Dminの0.95倍の数値で割ることで求められる。最大ピッチ長Dmaxを1.05倍し、かつ、最小ピッチ長Dminを0.95倍しているのは、エネルギー値を算出する周波数域に余裕度を持たせるためである。
【0010】
前記方法では、前記ブロックピッチを1次のピッチとして、タイヤ周方向におけるブロックの分割形状に応じた各次数のピッチで、前記所定の周波数範囲を算出し、次数ごとに前記所定の周波数範囲でエネルギー値を算出し、次数ごとに新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定してもよい。
【0011】
この方法によれば、パターンノイズの次数ごとに新品時のエネルギー値と測定したエネルギー値とを比較するため、より詳細な判定を行うことができる。詳細には、1つのブロックがサイプやその他細溝などによってタイヤ周方向に分割されると、ブロックピッチよりも高周波数でパターンノイズが発生する。当該高周波数のパターンノイズを2次、3次、4次、、、と称する。例えば、ブロックがサイプによってタイヤ周方向に均等に2分割されていると、2次のパターンノイズが発生する。2次のパターンノイズは、1次のパターンノイズ(ブロックピッチによるパターンノイズ)の2倍の周波数を有する。このように、次数を考慮し、ブロック単位よりも詳細な単位でエネルギー比較を行うことで、ヒールアンドトウ摩耗をより詳細に評価できる。
【0012】
本発明の第2の態様は、空気入りタイヤを所定速度で転動させ、パターンノイズの音圧を測定し、測定した前記パターンノイズの音圧から所定の周波数範囲でエネルギー値を算出し、前記所定の周波数範囲における新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定することを含み、新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が2倍以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定する、空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法を提供する
【0013】
この方法によれば、パターンノイズの音圧を測定し、所定の周波数範囲において、新品時のエネルギー値よりも測定したエネルギー値が所定以上大きければ摩耗していると判定する。従って、特定の周波数範囲に対応する摩耗の発生の有無を判定できる。具体的には、タイヤのトレッドパターンにおいて、タイヤ周方向にばらつきをもった所定の間隔でブロックが配されているとき、ヒールアンドトウ摩耗の発生によって所定の周波数範囲でパターンノイズが増加する。そのため、当該周波数範囲で、新品時のタイヤと、測定したタイヤとのエネルギー値を比較することで、ヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を判定できる。特に、この判定方法は、従来のようにある一点の周波数におけるパターンノイズの音圧比較では正確に測定し難いヒールアンドトウ摩耗の発生を、特定の周波数範囲でのエネルギー比較を行うことで可能にしたものである。また、エネルギー比較の際に2倍を閾値としてヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を判定している。パターンノイズのエネルギー値が2倍となると、一般の運転者にも感じられるほどの違いが生じ、ノイズが目立つことが多いためである。また、エネルギー値で2倍を閾値としているため、風および路面状態等の外乱の影響を受けることによって測定するエネルギー値がわずかに変化しても誤判定することなく、ヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を正確に判定できる。
【0014】
本発明の第3の態様は、空気入りタイヤを所定速度で転動させ、パターンノイズの音圧を測定し、測定した前記パターンノイズの音圧から所定の周波数範囲でエネルギー値を算出し、前記所定の周波数範囲における新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定することを含み、前記所定の周波数範囲が気柱管共鳴周波数範囲から外れる速度である、空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法を提供する
【0015】
この方法によれば、パターンノイズの音圧を測定し、所定の周波数範囲において、新品時のエネルギー値よりも測定したエネルギー値が所定以上大きければ摩耗していると判定する。従って、特定の周波数範囲に対応する摩耗の発生の有無を判定できる。具体的には、タイヤのトレッドパターンにおいて、タイヤ周方向にばらつきをもった所定の間隔でブロックが配されているとき、ヒールアンドトウ摩耗の発生によって所定の周波数範囲でパターンノイズが増加する。そのため、当該周波数範囲で、新品時のタイヤと、測定したタイヤとのエネルギー値を比較することで、ヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を判定できる。特に、この判定方法は、従来のようにある一点の周波数におけるパターンノイズの音圧比較では正確に測定し難いヒールアンドトウ摩耗の発生を、特定の周波数範囲でのエネルギー比較を行うことで可能にしたものである。また、パターンノイズがタイヤのトレッド部の周方向溝の気柱管共鳴によって影響を受けることを防止できる。仮に、パターンノイズの周波数範囲と気柱管共鳴の周波数範囲が一致する速度で評価すると、摩耗するごとに溝は浅くなるため、気柱管共鳴の影響は減少する。すなわち、評価中の気柱管共鳴の影響は一定ではない。従って、所定の周波数範囲が気柱管共鳴周波数範囲から外れるように所定の速度を設定することで、パターンノイズを正確に測定できる。
【0016】
前記方法では、前記空気入りタイヤの転動方向前方に音圧センサを設置し、前記音圧センサによって前記パターンノイズの音圧を測定してもよい。
【0017】
この方法によれば、パターンノイズはタイヤの転動方向前方において明瞭に強く現れるため、効率よくパターンノイズの音圧を測定できる。これに対し、タイヤの転動方向後方ではタイヤが地面を蹴り出す際のこすれやすべりなどにより発生する音がパターンノイズに混ざるおそれがあり、かつ、石ころなどが飛んで音圧センサが破損する可能性もある。タイヤの転動方向に対して側方ではパターンノイズの音圧が低いことが多い。従って、タイヤの転動方向前方においてパターンノイズを測定することが好ましい。
【0018】
本発明の第4の態様は、空気入りタイヤを所定速度で転動させ、パターンノイズの音圧を測定し、測定した前記パターンノイズの音圧から所定の周波数範囲でエネルギー値を算出し、前記所定の周波数範囲における新品時のエネルギー値と比較して算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定することを含み、前記空気入りタイヤの転動は、前記空気入りタイヤを備える自動車の実車走行によって行われ、前記音圧センサを前記自動車の車室内に設置し、前記音圧センサによって前記パターンノイズの音圧を測定し、前記所定速度は、前記所定の周波数範囲が前記自動車の車室内共鳴範囲に含まれる速度である、空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法を提供する
【0019】
この方法によれば、車室内共鳴によって効率よくパターンノイズを増幅させ、パターンノイズの音圧を測定できる。車室内共鳴は、車室の大きさおよび形状等に応じた周波数範囲で発生する。共鳴する周波数は車室内の位置によっても変わるため、車室内共鳴範囲といったように範囲として定義されている。従って、好ましくは、所定速度は音圧センサを取り付けた位置における車室内共鳴周波数と一致する速度である。
【0020】
本発明の第5の態様は、空気入りタイヤを所定速度で転動させる転動装置と、パターンノイズの音圧を測定する音圧センサと、測定した前記パターンノイズの音圧から所定の周波数範囲でエネルギー値を算出するエネルギー算出部と、前記所定の周波数範囲における新品時のエネルギー値を記憶する記憶部と、前記記憶部の新品時の前記エネルギー値と比較して前記エネルギー算出部にて算出した前記エネルギー値が所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定する判定部とを備え、前記所定の周波数範囲は、前記所定速度に対応する車両の時速Vと、前記空気入りタイヤのトレッドパターンのタイヤ周方向におけるブロックピッチのうちの最小ピッチ長Dminおよび最大ピッチ長Dmaxとを用いて、以下の式でΔfとして算出される、空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定装置を提供する。
【0021】
【数2】
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法および装置において、測定したパターンノイズから所定の周波数範囲でのエネルギー値を算出し、当該エネルギー値と新品時のエネルギー値とを比較することでヒールアンドトウ摩耗を正確に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】空気入りタイヤの斜視図。
図2】トレッドパターンの一部の展開図。
図3】マイクロホンの設置位置を示す空気入りタイヤの平面図。
図4】空気入りタイヤの転動装置の側面図。
図5】空気入りタイヤの転動装置の平面図。
図6】制御装置のブロック図。
図7】パターンノイズの周波数と音圧の関係を示すグラフ。
図8】空気入りタイヤの転動装置の変形例の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0025】
本実施形態では、空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を判定する。空気入りタイヤ1は、例えば一般の乗用自動車用タイヤであり得る。代替的には、トラックまたはバス用タイヤなどであってもよい。以降、空気入りタイヤ1のことを単にタイヤ1ともいう。
【0026】
図1を参照して、タイヤ1は、ホイールリム2に装着される。タイヤ1は、ホイールリム2に装着された状態で路面上を転動する。路面上をタイヤ1が転動すると、タイヤ1のトレッドパターンに応じたパターンノイズが生じる。本実施形態の判定方法は、当該パターンノイズを測定することにより、ヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を判定するものである。なお、図1では、トレッドパターンの図示を省略している。
【0027】
パターンノイズは路面状態に応じて異なり得るため、正確な判定を行うためには一定の路面状態でパターンノイズを測定することが好ましい。一定の路面状態としては、例えば、JIS D 8301:2013(ISO 10844:2011)を採用してもよい。
【0028】
図2は、タイヤ1のトレッド部10の一部(図1の斜線部参照)の展開図を示している。トレッド部10には、タイヤ周方向TRに延びる縦溝11と、タイヤ幅方向TWに延びる横溝12とによって画定されるブロック13が形成されている。
【0029】
一般にタイヤでは、ブロック13は、タイヤ周方向TRにおいて完全に同じピッチで形成されているわけではなく、僅かずつ異なるピッチで形成されている。これにより、パターンノイズの発生周波数は1つの周波数に集中することないため、1つの周波数の音圧が著しく大きくなることを防止している。本実施形態でも、ブロック13は、タイヤ周方向TRに僅かずつ異なるピッチで形成されている。以降、このようにタイヤ周方向TRに僅かにばらつきをもったブロック13の形成ピッチをブロックピッチともいう。このブロックピッチは、図2において例えばD1で表されている。
【0030】
図3は、タイヤ1の平面図を示している。パターンノイズを測定するためには、マイクロホン(音圧センサ)20を使用する。好ましくは、マイクロホン20は、タイヤ1の転動方向前方Frに設置される。詳細には、平面視においてタイヤ1の幅を一辺とする正三角形領域S1にマイクロホン20は設置されることが好ましい。タイヤ1の前方では、ブロック13が接地する瞬間の大きなパターンノイズを明瞭に測定できるためである。代替的には、マイクロホン20は、タイヤ1の転動方向の後方に設置されてもよい。詳細には、平面視においてタイヤ1の幅を一辺とする正三角形領域S2にマイクロホン20は設置されてもよい。さらに代替的には、マイクロホン20は、タイヤ1の側方に設置されてもよい。詳細には、平面視においてタイヤ1の長さを一辺とする正三角形領域S3にマイクロホン20は設置されてもよい。また、タイヤ高さ方向については、地面からタイヤ中心までの範囲にマイクロホン20は設置されることが好ましい。なお、図3中の符号32で示す部材は、後述する支持部32を示している。
【0031】
本実施形態では、タイヤ1のヒールアンドトウ摩耗を判定するための判定装置を使用する。
【0032】
判定装置は、タイヤ1を所定速度で転動させる転動装置30と、パターンノイズの音圧を測定するマイクロホン20と、制御装置40と、判定結果を表示するモニタ50とを備える。
【0033】
図4,5を参照して転動装置30は、タイヤ1を載置する路面部31と、タイヤ1を支持する支持部32とを備える。路面部31は、2つのローラ31a,31bと、ベルト31cとを備える。2つのローラ31a,31bは、図示しないモータに機械的に接続されている。2つのローラ31a,31bは、モータによって同方向に回転駆動される。また、ベルト31cは、2つのローラ31a,31bを囲むように2つのローラ31a,31bに跨って架けられている。従って、2つのローラ31a,31bが回転すると、ベルト31cが回転されるようになっている。支持部32は、タイヤ1を回転軸Laまわりに回転可能に支持する部材である。タイヤ1は、支持部32によってベルト31cの上面に載置された状態で支持される。2つのローラ31a,31bを回転させるモータは、制御装置40によって速度制御されている。従って、タイヤ1は、ベルト31cの所定速度の回転に伴ってベルト31cの上を所定速度で転動する。
【0034】
マイクロホン20の種類は、特に限定されず、市販のものを使用できる。本実施形態では、マイクロホン20は、図3に示すタイヤ1の転動方向の前方の領域S1に設置される。また、タイヤ高さ方向については、図4において路面部31のタイヤ1を載置した面からタイヤ回転軸Laまでの範囲にマイクロホン20は設置されている。
【0035】
図6を参照して、制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)のような記憶装置を含むハードウェアと、それに実装されたソフトウェアとにより構築されている。制御装置40は、エネルギー算出部41と、記憶部42と、判定部43と、速度制御部44とを備える。
【0036】
エネルギー算出部41は、マイクロホン20によって測定したパターンノイズの音圧から所定の周波数範囲でエネルギー値を算出する。所定の周波数範囲は、以下の式でΔfとして算出される。ここで、以下の式におけるVはタイヤ1の転動する速度に対応する車両の時速V(km/h)である。また、Dmaxは前述のブロックピッチのうち最大ピッチ長を示し、Dminは最小ピッチ長を示す。
【0037】
【数3】
【0038】
上記式を用いて周波数範囲Δfを算出する方法を具体的な数値を用いて例示する。本実施形態では、ブロック13がタイヤ1の1周当たり34個設けられた半径300mmのタイヤ1を使用する。最小ピッチ長Dminは42mmであり、最大ピッチ長Dmaxは69mmであり、基本のブロックピッチが55mmである。即ち、基本のブロックピッチに対して25%程度のばらつきが設定されている。また、所定速度を50km/hとする。これらを上記式に代入すると、下限値f1は191Hzとなり、上限値f2は352Hzとなる。従って、周波数範囲Δfは191~352Hzとなる。
【0039】
周波数範囲Δfでのエネルギー値は、以下の式でEとして算出される。ここで、以下の式におけるPiは、ある周波数fiにおける音圧を示す。なお、周波数fiは周波数範囲Δf内の値である(f1≦fi≦f2)。例えば、上記数値例として示した周波数範囲Δf(191~352Hz)の場合、周波数fiが191~352Hzまで1Hzごとに設定されてもよい。
【0040】
【数4】
【0041】
記憶部42は、上記式によって算出された新品時のタイヤ1の同周波数範囲Δfでのエネルギー値EをE0として記憶している。
【0042】
判定部43は、記憶部42の新品時のエネルギー値E0と比較してエネルギー算出部41にて算出したエネルギー値Eが所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定し、そうでなければヒールアンドトウ摩耗が発生していないと判定する。ヒールアンドトウ摩耗が進行すると、ブロック13の踏み込み側と蹴り出し側で高低差が大きくなり、パターンノイズが大きくなるためである。本実施形態では、測定したエネルギー値Eが新品時のエネルギー値E0と比べて2倍以上であれば、ヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定し、そうでなければヒールアンドトウ摩耗が発生していないと判定する。この判定の有効性については後述する。
【0043】
判定部43での判定結果は、モニタ50に随時表示される。特に、判定部43にて摩耗していると判定された場合、モニタ50に警告を表示するようにしてもよい。
【0044】
本実施形態では、より詳細にヒールアンドトウ摩耗の有無を判定するため、トレッドパターンに応じた「次数」の概念を導入している。具体的には、前述のブロックピッチを1次のピッチとする。そして、タイヤ周方向TRにおけるブロック13の分割形状に応じて、2次、3次、4次、、、と高次の次数を設定する。各次数のピッチで、周波数範囲Δfを算出し、次数ごとに周波数範囲Δfでエネルギー値Eを算出し、次数ごとに新品時のエネルギー値E0と比較して、算出したエネルギー値Eが所定以上大きければヒールアンドトウ摩耗が発生していると判定する。
【0045】
詳細には、図2を参照して、前述のブロックピッチ(1次のピッチ長)をD1とすると、1次のピッチ長D1の半分程度の2次のピッチ長D2と、D1の4分の1程度の4次のピッチ長D4とが設けられている。2次のピッチ長D2および4次のピッチ長D4のような高次のピッチ長は、横溝14,15によってブロック13が何分割されるかに基づいて設けられる。従って、本実施形態では、1次だけでなく2次と4次についても同様に周波数範囲Δfを算出し、エネルギー値Eを算出し、新品時のエネルギー値E0と比較して摩耗判定を行う。なお、2次以降の周波数範囲Δfは、1次の周波数範囲Δfをその次数倍して求めることができる。即ち、上記数値例では1次の周波数範囲Δfが191~352Hzであるため、2次の周波数範囲Δfがその2倍の382~704Hzとなり、4次の周波数範囲Δfがその4倍の764~1408Hzとなる。
【0046】
図7は、測定したパターンノイズの一例のグラフを示している。グラフの横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸が音圧レベル[dB]を示している。1次のピッチ長D1に対応するパターンノイズの周波数が約250Hz、2次のピッチ長D2に対応するパターンノイズの周波数が約500Hz、および4次のピッチ長D4に対応するパターンノイズの周波数が約1000Hzとなっており、これらの周波数で音圧レベルのピーク値が確認できる。より詳細には、これらの周波数の各点のみで音圧レベルが大きくなっているわけではなく、これらの周波数付近で一定の幅をもって音圧レベルが大きくなっている。これは、各次数のピッチ長D1,D2,D4がばらつきをもって設定されているためである。従って、摩耗判定を行う際には、ピーク値をとる周波数一点の音圧の比較ではなく、ピーク値付近の周波数範囲におけるエネルギー比較を行うことが有効である。従って、本実施形態では、各次数のピーク値付近の周波数範囲Δfでエネルギー比較を行い、ヒールアンドトウ摩耗の有無を判定する。
【0047】
本実施形態の速度制御部44は、上記の2つのローラ31a,31bを回転させるモータを制御する。従って、速度制御部44によってタイヤ1が転動する速度を制御でき、周波数範囲Δfを調整することができる。好ましくは、周波数範囲Δfがタイヤ1の縦溝11の気柱管共鳴周波数範囲Δgから外れるように速度Vを制御する。気柱管共鳴周波数範囲Δgは、以下の式によって求められる。ここで、cは音速であり、Lは縦溝11の管長である。αは補正係数であり、0.6以上かつ0.8以下の値をとる。
【0048】
【数5】
【0049】
上記式を用いて周波数範囲Δfを算出する方法を具体的な数値を用いて例示する。縦溝11の管長Lが120mm、音速cが340(m/s)とすると、気柱管共鳴周波数範囲Δgは850~1133Hzの値をとる。従って、速度制御部44は、このようにして求められた範囲Δgを避けて周波数範囲Δfを設定するように速度Vを設定することが好ましい。
【0050】
しかし、全次数の周波数範囲Δfを気柱管共鳴周波数範囲Δgから外すことが困難であることもある。本実施形態の上記数値例でも、4次の周波数範囲Δf(764~1408Hz)と、気柱管共鳴周波数範囲Δg(850~1133Hz)が重複している。このように、全次数の周波数範囲Δfを気柱管共鳴周波数範囲Δgから外すことが困難である場合、最も目立つ次数の周波数範囲Δfを気柱管共鳴周波数範囲Δgから外してもよい。例えば、図7の本実施形態の例では、4次のパターンノイズ(1000Hz付近)の音圧レベルが最も大きく目立つため、速度Vを変更して4次の周波数範囲Δfのみを気柱管共鳴周波数範囲Δgから外してもよい。これに加えて、速度Vを変更して2番目に目立つ次数の周波数範囲Δfも気柱管共鳴周波数範囲Δgから外してもよい。
【0051】
本実施形態の空気入りタイヤのヒールアンドトウ摩耗の判定方法および装置によれば以下のメリットがある。
【0052】
本実施形態では、パターンノイズの音圧を測定し、所定の周波数範囲Δfにおいて、新品時のエネルギー値E0よりも測定したエネルギー値Eが所定以上大きければ摩耗していると判定している。従って、特定の周波数範囲Δfに対応する摩耗の発生の有無を判定できる。具体的には、タイヤ1のトレッドパターンにおいて、タイヤ周方向TRにばらつきをもった所定の間隔でブロック13が配されているとき、ヒールアンドトウ摩耗の発生によって所定の周波数範囲Δfでパターンノイズが増加する。そのため、当該周波数範囲Δfで、新品時のタイヤと、測定したタイヤとのエネルギー値を比較することで、ヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を判定できる。特に、この判定方法は、従来のようにある一点の周波数におけるパターンノイズの音圧比較では正確に測定し難いヒールアンドトウ摩耗の発生を、特定の周波数範囲Δfでのエネルギー比較を行うことで可能にしたものである。
【0053】
また、本実施形態では、所定の周波数範囲Δfを具体的に規定している。詳細には、周波数範囲Δfの下限値f1および上限値f2を求める際、時速V(km/h)に1000/3600をかけることで秒速(m/s)に変換している。周波数範囲Δfの下限値f1は、時速V(km/h)を秒速に変換したものを最大ピッチ長Dmaxの1.05倍の数値で割ることで求められる。同様に、周波数範囲Δfの上限値f2は、時速V(km/h)を秒速に変換したものを最小ピッチ長Dminの0.95倍の数値で割ることで求められる。最大ピッチ長Dmaxを1.05倍し、かつ、最小ピッチ長Dminを0.95倍しているのは、エネルギー値を算出する周波数域に余裕度を持たせるためである。
【0054】
また、本実施形態では、パターンノイズの次数ごとに新品時のエネルギー値E0と測定したエネルギー値Eとを比較するため、より詳細な判定を行っている。詳細には、1つのブロック13がサイプやその他細溝などによってタイヤ周方向TRに分割されると、ブロックピッチよりも高周波数でパターンノイズが発生する。このように、次数を考慮して高周波数のパターンノイズを評価することで、ブロック単位よりも詳細な単位でエネルギー比較を行い、ヒールアンドトウ摩耗をより詳細に評価できる。
【0055】
また、本実施形態では、エネルギー比較の際に2倍を閾値としてヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を判定している。パターンノイズのエネルギー値が2倍となると、一般の運転者にも感じられるほどの違いが生じ、ノイズが目立つことが多いためである。また、エネルギー値で2倍を閾値としているため、風および路面状態等の外乱の影響を受けることによって測定したエネルギー値がわずかに変化しても誤判定することなく、ヒールアンドトウ摩耗の発生の有無を正確に判定できる。
【0056】
また、本実施形態では、所定の周波数範囲が気柱管共鳴周波数範囲から外れるように所定の速度を設定しているため、パターンノイズがタイヤのトレッド部の周方向溝の気柱管共鳴によって影響を受けることを防止できる。仮に、パターンノイズの周波数範囲と気柱管共鳴の周波数範囲が一致する速度で評価すると、摩耗するごとに溝は浅くなるため、気柱管共鳴の影響は減少する。すなわち、評価中の気柱管共鳴の影響は一定ではない。従って、所定の周波数範囲が気柱管共鳴周波数範囲から外れるように所定の速度を設定することで、パターンノイズを正確に測定できる。
【0057】
また、本実施形態では、タイヤ1の転動方向前方Frの領域S1(図3参照)にてパターンノイズを測定している。これにより、パターンノイズはタイヤ1の転動方向前方Frにおいて明瞭に強く現れるため、効率よくパターンノイズの音圧を測定できる。
【0058】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0059】
例えば、転動装置30の路面部31は平坦でなくてもよい。具体的には、図8に示すように、路面部31は、タイヤ1と比較して十分大きい曲率半径を有する回転可能なドラム31dを備えてもよい。
【0060】
代替的には、転動装置30は、実際の自動車であってもよい。この場合、所定の周波数範囲Δfが自動車の車室内共鳴範囲に含まれる速度で自動車を走行させることが好ましい。これにより、車室内共鳴によって効率よくパターンノイズを増幅させ、パターンノイズの音圧を測定できる。車室内共鳴は、車室の大きさおよび形状等に応じた周波数範囲で発生する。共鳴する周波数は車室内の位置によっても変わるため、車室内共鳴範囲といったように範囲として定義されている。従って、好ましくは、走行速度はマイクロホン20を取り付けた位置における車室内共鳴周波数と一致する速度である。
【符号の説明】
【0061】
1 空気入りタイヤ(タイヤ)
2 ホイールリム
10 トレッド部
11 縦溝
12 横溝
13 ブロック
14,15 横溝
20 マイクロホン(音圧センサ)
30 転動装置(自動車)
31 路面部
31a,31b ローラ
31c ベルト
31d ドラム
32 支持部
40 制御装置
41 エネルギー算出部
42 記憶部
43 判定部
44 速度制御部
50 モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8