(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
H01H 9/02 20060101AFI20220804BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20220804BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20220804BHJP
H05K 5/04 20060101ALI20220804BHJP
H01H 35/00 20060101ALI20220804BHJP
H01L 31/12 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
H01H9/02 C
H05K5/00 A
H05K5/06 A
H05K5/04
H01H35/00 G
H01L31/12 E
(21)【出願番号】P 2019038686
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】大原 英憲
(72)【発明者】
【氏名】宮田 毅
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-097989(JP,U)
【文献】特開平04-159799(JP,A)
【文献】特表2006-524910(JP,A)
【文献】特開2010-272561(JP,A)
【文献】特開2018-152227(JP,A)
【文献】特開2017-157487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/02
H05K 5/00
H05K 5/06
H05K 5/04
H01H 35/00
H01L 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と電気的に接続された回路基板を収容し、開口部と前記開口部を画成する縁部とが設けられた金属筐体と、
前記開口部を覆うよう、前記縁部に接着された金属蓋と、を備え、
前記縁部及び前記金属蓋の少なくともいずれかに凹部が1つ以上設けられ、当該凹部内に充填された接着剤のうち前記凹部の開口端の領域に位置する部分によって、前記縁部に前記金属蓋が接着されて
おり、
前記縁部は、前記金属蓋の外周と接触する部分を含む第1縁部と、前記金属蓋との接着部分を含む第2縁部とを有する、
センサ。
【請求項2】
前記凹部は、柱状の穴である、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記凹部における前記縁部と前記金属蓋との接着面の総面積が、前記縁部と前記金属蓋の重なる領域の面積の半分以下である、
請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記回路基板は、有機ELディスプレイの制御回路を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記回路基板は、レーザの制御回路を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関する。
【背景技術】
【0002】
センサにおいて、センサ素子や当該センサ素子と電気的に接続された回路基板等を収容する筐体と、当該筐体の開口部を覆うための蓋とを備えるものがある。また、センサにおいて、これら筐体と蓋とが共に金属製の場合、レーザ溶接によって金属筐体を金属蓋で封止する方法がある。例えば下記特許文献1には、本体ケースの側面に設けられた側面開口部を覆うように本体カバーが組付けられており、本体カバーは、本体ケースの側面開口部の周縁と全周にわたってレーザ溶接されることにより本体ケースに固定されているセンサ機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサにおいて、各種数値を表示するための表示部として有機ELディスプレイを備えた場合、上記のとおり金属筐体と金属蓋とをレーザ溶接すると、当該有機ディスプレイがレーザ溶接の際の熱で劣化してしまう問題がある。
【0005】
上記有機ディスプレイの劣化を防止するため、例えば、レーザ溶接に代わって金属筐体と金属蓋とを接着剤で固定する方法がある。しかしながら、このような固定方法では、接着剤の熱伝導率は金属に比べると低いため、
図4に例示するように、従来のセンサ60において、金属筐体100に収容された回路基板400から発せられた熱が、接着剤500の層の影響で金属蓋200以外に放熱することが難しくなる。このように、金蔵筐体と金属蓋とを接着剤で固定すると、センサの放熱性が悪くなる問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、金属筐体に金属蓋が接着されたセンサにおいて、放熱性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るセンサは、センサ素子と電気的に接続された回路基板を収容し、開口部と開口部を画成する縁部とが設けられた金属筐体と、開口部を覆うよう、縁部に接着された金属蓋と、を備え、縁部及び金属蓋の少なくともいずれかに凹部が1つ以上設けられ、当該凹部内に充填された接着剤のうち凹部の開口端の領域に位置する部分によって、縁部に金属蓋が接着されている。
【0008】
この態様によれば、センサは、回路基板から発せられて金属蓋に伝わった熱が、金属筐体の縁部又は金属蓋の凹部が設けられた部分以外の当該縁部と金属蓋とが接触する部分を介して金属筐体にも伝わる。このため、この態様によれば、センサは、金属蓋に伝わった熱が金属蓋に集中することを低減することができる。これにより、金属筐体10に金属蓋20が接着されているセンサにおいて、放熱性を向上することができる。
【0009】
上記態様において、凹部は、柱状の穴であってもよい。
【0010】
この態様によれば、凹部に充填された接着剤において、凹部の開口端の領域に位置する部分に対して垂直方向に延在して形成することができるため、凹部の開口端の部分に代えて、金属筐体の縁部と金属蓋とが接触する部分を確保することができる。
【0011】
上記態様において、凹部における縁部と金属蓋との接着面の総面積が、縁部と金属蓋の重なる領域の面積の半分以下であってもよい。
【0012】
この態様によれば、金属筐体の縁部又は金属蓋において、凹部における接着面に代えて、金属筐体の縁部と金属蓋とが接触する部分を確保することができる。これにより、センサは、金属蓋から金属筐体に熱を伝わりやすくすることができ、放熱性を向上することができる。
【0013】
上記態様において、回路基板は、有機ELディスプレイの制御回路を有してもよい。
【0014】
この態様によれば、センサにおいて、液晶ディスプレイ等と比較して熱に弱い有機ELディスプレイを備えた場合、接着により金属蓋を封止するため、レーザ溶接による溶着等と比較して、当該有機ELディスプレイへの熱の影響を低減することができる。
【0015】
上記態様において、回路基板は、レーザの制御回路を有してもよい。
【0016】
この態様によれば、センサ素子にレーザを備えた場合、当該レーザから発生する熱を、金属筐体の縁部と金属蓋とが接触する部分を介して金属筐体に伝えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属筐体に金属蓋が接着されたセンサにおいて、放熱性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1のセンサの金属筐体及び金属蓋の一部を示す模式断面図である。
【
図3】
図1のセンサの金属筐体の接着面を模式的に示す図である。
【
図4】従来のセンサの金属筐体及び金属蓋の一部を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0020】
図4は、従来のセンサ60の金属筐体100と金属蓋200との接着部分を拡大して模式的に示す断面図である。センサ60は、センサ素子(不図示)と、センサ素子と電気的に接続された回路基板400と、金属筐体100と、金属蓋200とを備える。センサ60は、金属筐体100内部にセンサ素子及び回路基板400を収容して、金属筐体100に金属蓋200を取り付けて組み立てられる。
【0021】
金属蓋200は、金属筐体100の開口部を覆うように金属筐体100に接合される。金属蓋200は、具体的には、金属筐体100の開口部を画成する縁部110に嵌め込まれて、接着剤500の層を挟んで金属筐体100と接合される。そのため、従来のセンサ60は、回路基板400から発せられた熱が、接着剤500の熱伝導率が金属筐体100と比べて低いことにより、金属蓋200と回路基板400とに集中してしまう。
【0022】
図1を参照して、本実施形態に係るセンサ1の金属筐体10と金属蓋20の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るセンサ1の一部の分解斜視図である。説明の便宜上、前後左右及び上下に関しては、
図1に示すものを基準とする。
図1の例では、金属蓋20は、上方から金属筐体10の開口部15を覆う構成となる。本例では、センサ1は光電センサを例に説明するが、これに限る主旨ではなく、センサ1は様々な種類のセンサに用いることができる。
【0023】
センサ1は、投光又は受光により、物体の存在等を検出するための光電センサである。センサ1は、例えば、
図1に示すように、金属筐体10と、金属蓋20と、カバーレンズ30と、レンズカバー35とを備えている。また、センサ1は、各種数値で表示するための表示部(不図示)を設けてもよい。表示部は、例えば、有機ELディスプレイ、又は液晶ディスプレイ等である。
【0024】
金属筐体10は、光学部品を収容するための部品である。金属筐体10は、開口部15と、縁部11とが設けられている。金属筐体10は、ステンレス等の金属により形成され、例えば、略直方体形状を有していてもよい。金属筐体10の内部には、センサ素子(不図示)と当該センサ素子に電気的に接続された回路基板(
図2参照)とを含む光学部品が収容されている。なお、金属筐体10において、「略直方体形状」を有するとは、直方体を構成する六面以外の面を含んだり、内角が全て90度とならなかったりしてもよく、厳密な直方体状と異なる形状であってもよいことを意味する。
【0025】
金属蓋20は、ステンレス等の金属により形成され、金属筐体10の開口部15を覆うように形成されている。
【0026】
縁部11は、開口部15を画成する。縁部11は、第1縁部12と第2縁部13とを有する。第1縁部12は、金属蓋20が第1縁部12に嵌め込まれた際に、金属蓋20の外周全体を囲んで固定するように形成されている。
【0027】
第2縁部13は、金属蓋20が第1縁部12に嵌め込まれて第2縁部13に載置された際に、金属蓋20の外周部分と重なるように形成されている。また、第2縁部13は、開口部15を画成し、金属筐体10と金属蓋20との接合領域を含む。第2縁部13における金属筐体10と金属蓋20との接合により、金属筐体10に収容されている光学部品が封止される。
【0028】
金属筐体10の前面には、投光又は受光する光を通過させるための投受光用開口部37が設けられており、投受光用開口部37を覆うカバーレンズ30と、カバーレンズ30を固定するとレンズカバー35が嵌め込まれている。
【0029】
光学部品は、検出対象の物体に対して、投光又は受光する光学系の部品である。光学部品は、センサ素子と、センサ素子に電気的に接続された回路基板とを含む。センサ素子は、例えば、投光素子及び/又は受光素子等である。投光素子は、例えば、LED(発光ダイオード)又はLD(レーザダイオード)等の素子を用いてもよい。また、光学部品は、投光レンズや受光レンズを含む。また、光学部品は、例えば、受光素子により受光された信号を増幅処理するためのアンプを含んでもよい。
【0030】
図2を参照して、本実施形態に係る金属筐体10と金属蓋20との接着剤50による接着について説明する。
図2は、金属筐体10と金属蓋20との接着部分を拡大して模式的に示す断面図である。
【0031】
図2に示すように、回路基板40は、金属筐体10に収容されている。回路基板40は、例えば、上記表示部に有機ELディスプレイが用いられる場合等において、当該有機ELディスプレイの制御回路を有していてもよい。このような構成により、センサ1において、液晶ディスプレイ等と比較して熱に弱い有機ELディスプレイを備えた場合において、接着により金属蓋20を封止するため、レーザ溶接による溶着等と比較して当該有機ELディスプレイへの熱の影響を低減することができる。
【0032】
回路基板40は、例えば、投光素子にLDが用いられる場合等において、レーザの制御回路を有していてもよい。このような構成により、センサ1において、レーザから発生する熱を、金属筐体10と金属蓋20とが接触する部分を介して金属筐体10に伝えることができる。
【0033】
金属筐体10の第2縁部13には、1つ以上の凹部14が設けられている。なお、
図2の例では、凹部14は、第2縁部13に設けられているが、金属蓋20又は金属蓋20と第2縁部13のそれぞれに設けられてもよい。凹部14内に充填された接着剤50のうち凹部14の開口端の領域に位置する部分によって、第2縁部13に金属蓋20が接着されている。
【0034】
上記構成によれば、センサ1は、回路基板40から発せられて金属蓋20に伝わった熱が、金属筐体10と金属蓋20とが接触する部分を介して金属筐体10にも伝わるため、金属蓋20に集中することを低減することができる。これにより、金属筐体10に金属蓋20が接着されているセンサ1において、放熱性を向上することができる。
【0035】
凹部14は、例えば、上下方向に延在する柱状の穴であってもよい。このような構成によれば、凹部14に充填された接着剤50において、凹部14の開口端の領域に位置する部分に対して垂直方向に延在して形成することができる。これにより、接着剤50の上記凹部14の開口端の領域に位置する部分に代えて、金属筐体10の第2縁部13と金属蓋20とが接触する部分を確保することができる。また、上記構成によれば、金属筐体10又は金属蓋20における凹部14の形成には精密加工が必要ないため、金属加工のためのコストを低減することができる。
【0036】
凹部14の深さは、例えば、接着剤50による接着強度が最大となるよう選択されてもよい。一般的に、接着剤による接着強度が接着剤の接着層の厚さによって変化することは知られている。例えば、接着層が薄くなり過ぎると剥離や衝撃に弱くなり、反対に接着層が厚くなり過ぎるとせん断や引張に弱くなることがある。このため、凹部14の深さが接着剤50による接着強度が最大となるよう選択することにより、センサ1において、金属筐体10と金属蓋20との接着強度を向上することができる。
【0037】
図3を参照して、金属筐体10における金属筐体10と金属蓋20との接着面について説明する。
図3は、金属筐体10の当該接着面の一部を上方から視た模式図である。
図3に示すように、金属筐体10の第2縁部13において、開口端が円形の凹部14が1つ以上設けられている。なお、当該開口端の形状は、円形に限定されず、開口端における一定の面積が確保できれば、どのような形状でもよい。また、第2縁部13の幅Wは、金属筐体10と金属蓋20とを接着する接着代となる。例えば、金属筐体10が、上方から視て、奥行きが約15mm、短軸方向の長さが約30mm、長軸方向の長さ約40mm程度の略直方体形状の場合、幅Wは、0.5~2mmであってもよい。
【0038】
接着剤50は、凹部14の開口端の領域に位置する部分(
図3において点線パターンで記載している部分)によって、第2縁部13に金属蓋20を接着している。当該部分は、凹部14における第2縁部13と金属蓋20との接着面である。当該接着面の総面積は、第2縁部13と金属蓋20とが重なる領域の面積の半分以下であってもよい。当該重なる領域は、
図3の例では、凹部14の接着面を含む第2縁部13の領域において、金属蓋20と重なる領域である。
【0039】
上記構成によれば、凹部14における上記接着面の総面積に代えて、金属筐体10と金属蓋20とが接触する部分の面積を確保することができる。これにより、センサ1は、金属蓋20から金属筐体10に熱を伝わりやすくすることができ、放熱性を向上することができる。また、上記構成によれば、凹部14における上記接着面を金属筐体10における金属蓋20との接合領域の寸法で制御する必要がないため、当該寸法の精度ばらつきによる接合強度への影響をなくすことができる。
【0040】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0041】
[附記]
センサ素子と電気的に接続された回路基板(40)を収容し、開口部(15)と前記開口部(15)を画成する縁部(11)とが設けられた金属筐体(10)と、
前記開口部(15)を覆うよう、前記縁部(11)に接着された金属蓋(20)と、を備え、
前記縁部(11)及び前記金属蓋(20)の少なくともいずれかに凹部(14)が1つ以上設けられ、当該凹部(14)内に充填された接着剤(50)のうち前記凹部(14)の開口端の領域に位置する部分によって、前記縁部(11)に前記金属蓋(20)が接着されている、
センサ(1)。
【符号の説明】
【0042】
1、60…センサ、10、100…金属筐体、11、110…縁部、12、120…第1縁部、13、130…第2縁部、14…凹部、15…開口部、20、200…金属蓋、30…カバーレンズ、35…レンズカバー、37…投受光用開口部、40、400…回路基板、50、500…接着剤、W…幅