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特許7117049新規なキューティバクテリウムグラニュローサム菌株、該菌株またはその培養物を含むにきび予防または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】新規なキューティバクテリウムグラニュローサム菌株、該菌株またはその培養物を含むにきび予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220804BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220804BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20220804BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220804BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20220804BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A61P31/04
A61P17/00
A61K35/74 A
A61Q19/00
A61K8/99
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021510373
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 KR2019006241
(87)【国際公開番号】W WO2020040408
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0098880
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC13597BP
(73)【特許権者】
【識別番号】520077986
【氏名又は名称】ゲノム アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】パク,ハン-ス
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-020638(JP,A)
【文献】米国特許第04548942(US,A)
【文献】Clinical Microbiology Reviews,Vol.31, No.3, e00064-17,2018年05月30日,p.1-42
【文献】The Journal of Dermatology,2002年,Vol.29,p.20-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N1/00-7/08
C12Q1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キューティバクテリウムグラニュローサム(Cutibacterium granulosum)GENSC02菌株(KCTC13597BP)。
【請求項2】
前記キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物は、黄色ブドウ球菌またはキューティバクテリウムアクネスに対して抗菌活性を有する、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
前記キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株は、にきび、アトピー皮膚炎または炎症性皮膚疾患の抑制、改善または治療活性を有するか、若しくは、皮膚保湿活性を有する、請求項1に記載の菌株。
【請求項4】
前記炎症性皮膚疾患は、細塵による炎症性皮膚疾患を含む、請求項3に記載の菌株。
【請求項5】
キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株(KCTC13597BP)またはその培養物を含む、アトピー皮膚炎、にきびまたは炎症性皮膚疾患の抑制または改善用の化粧料組成物。
【請求項6】
前記炎症性皮膚疾患は、細塵による炎症性皮膚疾患を含む、請求項5に記載の化粧組成物。
【請求項7】
黄色ブドウ球菌またはキューティバクテリウムアクネスに対して抗菌活性を有する、請求項5に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株(KCTC13597BP)またはその培養物を含む皮膚保湿用化粧料組成物。
【請求項9】
キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株(KCTC13597BP)またはその培養物を含む抗菌用組成物であって、黄色ブドウ球菌またはキューティバクテリウムアクネスに対して抗菌活性を有する抗菌用組成物。
【請求項10】
キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株(KCTC13597BP)またはその培養物を含むアトピー皮膚炎、にきびまたは炎症性皮膚疾患の抑制、改善または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たに分離、同定及びその効能が評価された新たな菌株及びその培養物に関する。また、本発明は、このような新菌株またはその培養物を含む組成物に関する。より具体的には、本発明は、新規菌株またはその培養物を含む、にきび改善効果を含む皮膚改善効能など多様な効能を有する化粧料組成物に関する。
【0002】
本出願は、2018年8月23日出願の韓国特許出願第10-2018-0098880号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
皮膚における炎症反応(inflammatory response)は、物理的な刺激や化学物質、細菌などによって皮膚損傷が誘発されるとき、それを防御するための作用として始まり、多様な兔疫細胞と炎症誘導サイトカインが関与する。IL-6(interleukin-6)、IL-8(interleukin-8)、IL-1β(interleukin-β)などが代表的な炎症誘導サイトカインである。IL-1βは活性化した単核食細胞、上皮細胞、血管内皮細胞によって生成されて炎症反応を媒介する典型的なサイトカインであり、IL-6はT細胞及び大食細胞によって分泌されて免疫反応を刺激し、炎症反応を調節するサイトカインである。また、活性化した大食細胞(macrophage)は、炎症誘導サイトカインだけでなく、一酸化窒素(nitric oxide:NO)やプロスタグランジン(prostaglandin)E2(PGE2)を過剰に生成して炎症過程をさらに活性化させる。例えば、炎症性サイトカインによる刺激に反応した末梢血単核、組織マクロファージ、NK細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞などの様々な細胞でIL-8発現が誘導される。
【0004】
上昇した(例えば、過剰な)炎症誘導サイトカインに関連する炎症性疾患としては、にきび、炎症性角化症(例えば、乾癬)、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患などが挙げられる。
【0005】
アトピー皮膚炎(AD、Atopic Dermatitis)は、痒みを伴う炎症性皮膚疾患であって、慢性的であり、通常は幼児期に始まる。ADは、継続的な痒みを主な症状とし、特別な理由なく回復と悪化を繰り返す特徴を有する。ADに関する近年の多くの研究にもかかわらず、未だにADの原因については明確に知られていない。
【0006】
にきび(acne)は、皮膚の皮脂腺の炎症性疾患を意味する。にきびやそれによるにきび跡は、皮膚に生息する細菌によって誘発され得、腸内細菌と同様にその均衡が崩れれば、皮膚炎を誘発するおそれがある。
【0007】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:S.aureus)は、表皮細胞に作用して皮膚障壁機能を破壊するか、又は、T細胞にスーパー抗原として働いて炎症反応を誘導すると知られている。
【0008】
前記黄色ブドウ球菌の集落と感染は、代表的に、アトピー皮膚炎の悪化及び湿疹性皮膚炎を誘発し、長期間慢性炎症に進行すれば、喘息及び食品アレルギーをもたらすとの研究が報告されている。さらに、毛包炎(folliculitis)、せつ腫(furunculosis)、膿痂疹(impetigo)、手足の爪周囲炎(Paronychia)、壊疽性膿瘡(ecthyma)などの皮膚疾患を持っている患者を対象にした微生物培養で黄色ブドウ球菌が多量検出されたと報告されている。アトピー疾患の外にも、多様な感染性皮膚疾患において黄色ブドウ球菌が臨床的に関連性を有することが知られている(1. Atopic dermatitis and the atopic march. J. Allergy Clin. Immunol.2003, 2. Antibiotic susceptibility of Staphylococcus aureus strains responsible for community-acquired skin infections. Ann Dermatol Venereol. 2008)。
【0009】
一方、アトピー皮膚炎の発病及び進行において、フィラグリン(filaggrin)の欠乏及びフィラグリン遺伝子の変形が密接に関連することが周知されている。
【0010】
フィラグリンは、皮膚障壁を構成する角質細胞に含まれた保湿成分であって、ケラチン、インボルクリン(involucrin)、ロリクリン(loricrin)などのタンパク質とともに角質層(stratum corneum)の形成に重要な役割をするタンパク質である。フィラグリン発現量の減少は、皮膚障壁の機能と保湿に変化をもたらして様々な病変につながる。特に、正常な皮膚障壁の形成は外部の刺激に対する防御において重要な役割を果たすが、この機能が喪失された場合は、アトピーの進行に核心的な役割をするようになる。経皮的な抗原の吸収がアトピー性皮膚炎の増加に重要な原因になるという点で、フィラグリンは効果的なアトピー性皮膚炎改善のターゲットになる。
【0011】
また、近年の研究において、アトピー皮膚炎患者のフィラグリンタンパク質による影響だけでなく、クローディン1遺伝子(claudin 1、CDN1)の異常発現がアトピー皮膚炎と密接に関連すると報告されている。
【0012】
一方、キューティバクテリウムグラニュローサム(Cutibacterium granulosum:C.granulosum)は、皮膚常在由来菌の一つとして知られ、今までは数多くの感染を誘発する原因菌(病源菌)として知られていた。
【0013】
本発明者は、多様な皮膚疾患のうち、特ににきび緩和のため鋭意研究した結果、本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のような問題点を解決するため、従来単に病源菌として知られていたキューティバクテリウムグラニュローサムを用いた皮膚状態改善用組成物及びキューティバクテリウムグラニュローサム新菌株を提供する。
【0015】
本発明は、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物を有効成分として用いる、にきびまたは炎症性皮膚疾患の改善、治療または緩和用途、若しくはアトピー皮膚炎症状改善の用途を提供する。本発明は、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物を含む組成物であって、アトピー皮膚炎症状、にきび及び炎症性疾患の改善、治療または緩和用組成物を提供する。具体的には、細塵による炎症性皮膚疾患の改善、治療または緩和用組成物を提供する。
【0016】
本発明は、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物、それを含む化粧料組成物を提供し、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物の新規用途を提供する。
【0017】
本発明は、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物を有効成分として用いるアトピー皮膚炎症状、にきびまたは毛包炎など炎症性皮膚疾患の抑制、改善、治療または緩和用途を提供する。本発明は、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物を含む組成物であって、にきび、毛包炎及び炎症性疾患の改善、治療または緩和用組成物を提供する。
【0018】
本発明は、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物を含む組成物であって、皮膚障壁強化を通じた皮膚保湿効果を有する組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様は、キューティバクテリウムグラニュローサム(Cutibacterium granulosum)GENSC02菌株(寄託番号:KCTC13597BP)を提供する。
【0020】
また、本発明の一態様は、前記キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株(寄託番号:KCTC13597BP)の培養物を提供する。
【0021】
今までキューティバクテリウムグラニュローサムは、感染症を起こす病原体(pathogen)として知られていた。しかし本発明者は、本発明のGENSC02菌株またはその培養物が皮膚毒性がないだけでなく、却って皮膚状態改善に有用であるという驚くべきことを確認し、本発明の完成に至った。
【0022】
前記菌株は、微生物によって形成されるバイオフィルムの除去または形成抑制効果を奏し、抗菌活性も有する。
【0023】
特に、前記菌株または前記菌株の培養物は、にきび抑制活性を有し、にきび誘発菌の生長を阻止することができる。
【0024】
本発明のキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株は、皮膚に常在する微生物であって、16S rDNA配列分析及びAPIテストを経てキューティバクテリウムグラニュローサムに属する新規な菌株であることが確認された。該菌株は、2018年7月24日付で韓国生命工学研究院微生物資源センター(KCTC)に寄託されて受託番号KCTC13597BPが付与された。
【0025】
本発明の一態様によるキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物は、黄色ブドウ球菌またはキューティバクテリウムアクネス(Cutibacterium acnes:C.acnes)に対して抗菌活性を有し得る。
【0026】
前記S.aureus及びC.acnesの集落と感染は、にきび及び多様な皮膚炎症を誘発し得る。前記S.aureus及びC.acnesの集落と感染はにきび、毛包炎または腋臭や足臭などを誘発又は悪化させ得るが、本発明のキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物は、前記S.aureus及びC.acnesの生長を抑制し、S.aureus及びC.acnesに対する抗菌活性を提供することができる。
【0027】
一態様によれば、前記キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物は、微生物の生長抑制効果だけでなく、微生物によって形成されたバイオフィルムの除去または形成抑制効果を奏することができる。
【0028】
一態様によれば、前記キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物は、アトピー皮膚炎、にきびまたは炎症性皮膚疾患の抑制、改善または治療活性を有し得る。具体的には、細塵による炎症性皮膚疾患の改善、治療または緩和用組成物を提供する。
【0029】
一態様によれば、前記キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物は、皮膚保湿活性を有し得る。一態様によれば、前記キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物を有効成分として含む皮膚保湿用組成物を提供することができる。
【0030】
他の一態様によれば、本発明は、前記キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物を有効成分として含む抗菌用組成物を提供する。
【0031】
さらに他の一態様によれば、本発明は、前記キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物を有効成分として含むアトピー皮膚炎、にきびまたは炎症性皮膚疾患の治療、予防または改善用組成物を提供する。具体的には、細塵による炎症性皮膚疾患の改善、治療または緩和用組成物を提供する。
【0032】
さらに他の一態様によれば、本発明は、前記キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物を有効成分として含む皮膚保湿用組成物を提供する。
【0033】
本明細書において、用語「培養物」とは、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株が成長及び生存できるように栄養分を供給する培地に前記菌株を一定期間培養して収得する前記菌株、菌抽出物、その代謝物、余分の栄養分などを含む全体培地を意味するが、菌株培養の後、菌株を除去した培養液も含む意味である。
【0034】
前記培養液は、一定時間静置して下層に沈んだ部分を除いた上層の液体のみ、若しくは、濾過によって菌体を除去するか又は培養液を遠心分離して下部の沈澱を除去した上部の液体のみを意味することもある。このような培養液は常法で濃縮して濃縮液としても用いられ得る。
【0035】
前記培養液または培養液の濃縮物は、常法で乾燥して乾燥物としても提供され得る。
【0036】
本明細書における「培養物」は、特に言及しない限り、上述した菌体の培養液、培養液の濃縮物、前記培養液または濃縮物の乾燥物を含む意味である。前記培養物には、場合によって菌体が含まれてもよく、含まれなくてもよく、菌体の有無は特に問題にならない。
【0037】
用語「菌体」とは、本発明の菌株そのものを意味し、分離して選別した菌株自体または該菌株を培養して培養液から分離した菌株を含む。前記菌体は、培養液を遠心分離して下層に沈んだ部分を採取して収得してもよく、または、重力によって培養液の下層に沈むため、一定時間静置いてから上部の液体を除去することで収得してもよい。
【0038】
一態様によれば、本発明のキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株の培養物は、微生物の培養に使用される培地のうち通常の技術者が目的に応じて容易に選択した培地を使用でき、望ましくはキューティバクテリウム培養に使用される培地、より望ましくはRCM(Reinforced Clostridial Medium )培地、TSB(Tryptic soy broth)またはBHI(Brain Heart Infusion)培地を使用できるが、これに制限されない。
【0039】
一態様によれば、本発明のキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株の培養物は、微生物培養培地に本発明の菌株を接種し、当業界で公知の微生物培養方法(例えば、静置培養など)によって製造することができる。
【0040】
前記キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株の培養物は、培養液、培養液の濃縮物、若しくは培養液または濃縮物の乾燥物を含むことができ、前記濃縮物または乾燥物は当業界で公知の微生物または培養液の濃縮または乾燥方法によって容易に製造することができる。
【0041】
本発明の一態様は、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株またはその培養物を含む組成物、望ましくは化粧料組成物、食品組成物または薬学組成物を提供する。
【0042】
前記化粧料組成物または薬学組成物は、皮膚外用剤として使用でき、患部に直接塗布することができる。例えば、軟膏、クリーム、エマルションなどの多様な剤形で製造され得る。
【0043】
また、前記薬学組成物は、経口または非経口投与されて体内に吸収でき、例えば、散剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤などの非制限的な形態で投与され得る。前記化粧料組成物または薬学組成物の形態は特に制限されない。
【0044】
前記化粧料組成物は、アトピー皮膚炎または炎症性皮膚疾患を抑制するか又は改善することができ、体臭(例えば、足臭、腋臭)の除去または減少に効果的である。
【0045】
前記炎症性皮膚疾患の例としては、炎症性角化症(例えば、乾癬)、毛包炎、細菌性皮膚炎、膿痂疹、脱毛性毛包炎などが挙げられる。
【0046】
本発明の一態様による化粧料組成物は、皮膚障壁を強化し、皮膚保湿を向上させることができる。すなわち、本発明の一態様はキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株(KCTC13597BP)または前記菌株の培養物を含む皮膚保湿用組成物を提供する。
【0047】
前記化粧料組成物は、黄色ブドウ球菌またはキューティバクテリウムアクネスに対して抗菌活性を有し得る。したがって、本発明の一態様は、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株(KCTC13597BP)または前記菌株の培養物を含む抗菌用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0048】
本発明は、にきび改善に優れたキューティバクテリウムグラニュローサムの新規菌株を提供する。また、アトピー症状改善効果にも優れる。
【0049】
本発明は、キューティバクテリウムグラニュローサムの新規菌株を確認し、該菌株またはその培養物を用いた皮膚症状改善効果を明らかにした。これによって、本発明は、皮膚改善機能を有するキューティバクテリウムグラニュローサム新菌株を提供することができる。また、本発明は、キューティバクテリウムグラニュローサム新規菌株またはその培養物を含むアトピー皮膚炎、にきび及び炎症性角化症、毛包炎、細菌性皮膚炎、膿痂疹、脱毛性毛包炎などの炎症性皮膚疾患の改善、足臭や腋臭の抑制治療または緩和用組成物を提供する。また、本発明は、キューティバクテリウムグラニュローサム新規菌株またはその培養物を含む皮膚保湿用化粧料組成物を提供する。本発明は、キューティバクテリウムグラニュローサム新規菌株またはその培養物を含む、細塵による皮膚炎症緩和用化粧料組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明のキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株(寄託番号:KCTC13597BP)の16s rRNA塩基配列である。
図2】キューティバクテリウムグラニュローサム菌株毎のグリセロールによる色変化を示した図である(0、3、6日目の色変化)。
図3】本発明のキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株をヒツジ血液寒天培地(sheep blood agar)に塗抹して培養した結果である。菌体の周囲に透明なリングが見られないことから、溶血性がなくて人体に無害であるということが分かる。
図4】キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株による黄色ブドウ球菌KCTC1621に対する生長抑制結果である。
図5】キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株によるキューティバクテリウムアクネスATCC6919に対する生長抑制結果である。
図6】菌株毎にIL-6の発現を確認した結果であり、GENSC02のIL-6発現が最も低く観察された。
図7】GENSC02菌株の発酵濾過物の濃度毎のIL-6発現抑制活性を示した結果である。
図8】GENSC02菌株の発酵濾過物の濃度毎のIL-8発現抑制活性を示した結果である。
図9】GENSC02菌株の発酵濾過物の濃度毎のTNF-αの発現抑制活性を示した結果である。
図10】GENSC02菌株の発酵濾過物の細胞毒性テスト結果である。
図11】GENSC02菌株の発酵濾過物の処理によってフィラグリンの発現が向上した結果を示した図である。
図12】GENSC02菌株の発酵濾過物の処理によってクローディン1の発現が向上した結果を示した図である。
図13】GENSC02菌株の発酵濾過物の処理によってHAS3(Hyaluronic acid Synthase)の発現が向上した結果を示した図である。
図14】GENSC02菌株の発酵濾過物の処理によってアクアポリン(aquaporin)の発現が向上した結果を示した図である。
図15】GENSC02菌株の発酵濾過物の処理による優れたバイオフィルム形成抑制効果を示した図である。
図16】キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株の発酵濾過物によるTSLP発現減少を示した結果である。
図17】キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株の発酵濾過物によるキューティバクテリウムアクネスATCC6919リパーゼ阻害活性を示した図である。
図18】キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株の発酵濾過物が細塵による炎症減少に効果的であることを確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施例などを挙げて本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は本発明の具体的な理解を助けるために例示的に提供されるものである。
[実施例1]キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02の分離及び同定
1-1.菌株の分離
アトピー、乾癬、にきびなどの皮膚疾患を患ったことがないか又は最近6ヶ月以内にこれらに関連する治療を受けた履歴がない成人を対象にして皮膚由来菌の分離を行った。皮膚サンプルを採取するため、滅菌生理水で濡らした滅菌綿棒で洗顔していない両頬と鼻翼を力を加えて擦った。綿棒を直ちにRCMの入っている試験管内に入れて密封し、試験管を窒素で充填して37℃で48~72時間培養した。培養された綿棒が入っている試験管の培地を白金耳で採取してRCM寒天培地に画線塗抹し、該作業を3~4回繰り返して純粋なコロニーを分離した。
1-2.菌株の同定
1)APIキットを用いた生化学的同定
分離した菌株を同定する生化学的同定方法として、嫌気性菌API 20Aキット(BIOMERIEUX社製、フランス)を用いた。10mlのRCM液体培地に37℃で24時間培養した後、遠心分離してから培地を除去した。PBSで2~3回洗浄した後、メーカーで提供したプロトコルに従ってキットに含まれた培地でOD600=3再懸濁し、API 20Aキットの各ウェルに適量分注して、37℃で24時間嫌気的に培養した後判読した。
【0052】
最終結果は同定用プログラムであるAPI webで同定し、その結果を下記の表1に示した。API 20Aの同定結果、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium(=キューティバクテリウム(Cutibacterium))グラニュローサム(granulosum)と同じ生化学的特定を見せた。
【0053】
API 20A判読結果を下記の表1に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
2)16s rRNA遺伝子塩基配列を通じて同定分離された菌株の純粋培養液1mlを採取してマクロゼン(Macrogen)に依頼して16s rRNA遺伝子塩基配列を決定した。PCRのためのプライマーは、16s rRNA遺伝子のユニバーサルプライマーである27F(5’-AGAGTTTGATCMTGGCTCAG-3’)と1492R(5’-TACGGYTACCTTGTTACGACTT-3’)を使用し、シーケンシングには785F(5’-GGATTAGATACCCTGGTA-3’)と907R(5’-CCGTCAATTCMTTTRAGTTT-3’)を用いた。分離した菌株の16s rRNA塩基配列は図1に示した。以上の結果に基づいて前記菌株を「キューティバクテリウムグラニュローサム(Cutibacterium granulosum)GENSC02」菌株と命名し、2018年7月24日付で韓国特許菌株寄託機関である韓国生命工学研究院微生物資源センター(KCTC)に寄託して受託番号KCTC13597BPの付与を受けた。
1-3.グリセロール利用による菌株の区分
前記寄託菌株と同一種の他の菌株との相違点を確認するため、グリセロール利用如何を確認した。
【0056】
グリセロール利用如何を確認するため、リッチ培地(10g/L酵母エキス、5g/L TSB培地、2.5g/L KHPO及び1.5g/l KHPO)に2%のグリセロールを入れて培地を製造した。また、接種した培地がグリセロールを利用する場合、培地の色が赤色から黄色に変わることで可視的に利用如何を判断可能なフェノールレッドを0.001%(w/v)添加した。それぞれの菌はRCM培地で活性状態を経て10CFU/mlの状態で接種して37℃で嫌気的に培養し、色の変化を確実に観察するため、何も接種していない培地も同じ条件で保管した。色の変化様相は6日間同じ時間に観察した。
【0057】
その結果、培養3日目からNSM13-4、CSM1-3、CSM5-1で色が変わり始め、時間が経つほど赤みが消えて、4~5日目に完璧な黄色を呈した。一方、GENSC02は、培養前に比べて赤みが薄くなったが、対照と比べたとき、色の差が僅かであった。このようにGENSC02は、リッチ培地下でグリセロールを利用しないか又は僅かに利用する特徴を有することを確認した。これはグリセロールを利用する能力がリッチ培地、API 20A培地などの培養培地によって変わることを意味する。
【0058】
表2に各菌株毎のグリセロール利用結果を示した。濃い黄色への変化を-/+/++/+++と示した。また、キューティバクテリウムグラニュローサム(C.granulosum)菌株毎のグリセロール利用による色変化を図2に示した(0、3、6日目の色変化)。したがって、GENSC02はグリセロールを利用する能力が他の菌株と相違することを確認した。
【0059】
【表2】
【0060】
[実施例2]キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02の溶血性テスト
相当数のキューティバクテリウムグラニュローサム菌株は溶血性毒性を有し、菌株によって人体に有害である。キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02の安全性を確認するため、溶血毒性の有無を確認した。液体培地で純粋培養されたキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02を白金耳で採取してヒツジ血液寒天培地に画線塗抹し、37℃で48時間嫌気的に培養した。菌体の周囲に透明なリングが生成されるか否かで溶血性を判断した。キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02の場合、図3から確認されるように、ヒツジ血液に対して溶血性がなくて人体に無害であると判断された。
[実施例3]黄色ブドウ球菌(S.aureus)KCTC1621及びキューティバクテリウムアクネス(C.acnes)ATCC6919に対する生長抑制(オーバーレイクリアゾーンテスト)
S.aureusとC.acnesの生長抑制に対する効果はクリアゾーンの形成を観察することで確認した。寒天培地にこれら菌を接種すれば、淡色で菌が成長して培地の色が濁り、成長できなければ透明に見える。キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02がこれら菌の生長を抑制する効果を有すれば、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02周辺の菌が成長できず透明になるはずと予想して実験を行った。キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02培養液を白金耳で採取して薄いRCM寒天培地に2.5cm程度になるように線を描き、37℃で72時間嫌気的に培養した。キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02が十分に成長したことを確認した後、10cfu/mlに調整されたS.aureus及びC.acnes菌株を45℃程度のまだ固まっていない10mlのRCM寒天に接種し、培地が固まる前によく懸濁してキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02が成長している寒天培地上に平たく注いで固めた。固まった寒天培地は37℃で嫌気的にS.aureusは40時間ほど、C.acnesは72時間ほどさらに培養して、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02が成長した周辺に生じるクリアゾーンの大きさを観察した。陰性対照群としてリン酸緩衝食塩水(Phosphate-buffered saline;PBS)を使用し、陽性対照群としてトリクロサン(triclosan)を使用して、S.aureusは10mg/ml、C.acnesは200mg/mlをそれぞれ処理した。その結果、図4のようにキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02が成長した周辺で透明に見える領域が観察され、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02から遠くなるにつれて透明度が低下し、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02がS.aureusの生長抑制能を有することが確認できた。陰性対照群であるPBSを処理したときはクリアゾーンが観察されず、陽性対照群として殺菌剤であるトリクロサンを処理したときはクリアゾーンが観察されたものの、GENSC02処理に比べて遥かに少ない面積であることが分かる。結果は図4に示した。
【0061】
また、図5に示されたように、C.acnesを接種した結果においても、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02が成長した周辺で透明に見える領域が観察され、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02から遠くなるにつれて透明度が低下し、キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02がC.acnesの生長抑制能を有することが確認できた。また、陰性対照群であるPBSを処理したときはクリアゾーンが観察されず、陽性対照群として殺菌剤であるトリクロサンを処理したときはクリアゾーンが観察されたものの、GENSC02処理に比べて遥かに少ない面積であることが分かる。
【0062】
このような結果を通じて、本発明のキューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02がにきび誘発菌であるC.acnesを抑制してにきびの改善、予防または治療効果を提供できることを確認した。
[実施例4]本発明による菌株の発酵濾過物の製造
キューティバクテリウムグラニュローサムGENSC02菌株をRCM寒天培地で72時間37℃で嫌気的に培養した。寒天培地に現われた単一コロニーは10mlのRCM液体培地に継代培養して同じ条件で培養した。72時間後、同じ液体培地に0.1%接種して72時間同じ条件で培養し、上澄み液を遠心分離してポアサイズ0.22μmのフィルターで濾過した。
[実施例5]抗炎症効能の評価(有益菌の選別)
まず、C.granulosum菌株毎に、それぞれ6-ウェルプレートに2×10個のHaCaTヒト角質細胞株を37℃、5%COのインキュベーターで24時間培養することで付着させた細胞に、C.granulosum菌株の発酵濾過物を1時間前処理した。その後、熱処理されたC.acnesを100MOI処理して4時間反応させた。各サンプルに対してRNAを抽出した後、炎症反応サイトカイン因子のうち一つであるIL-6に対してRNAの発現をリアルタイムPCRで確認した。
【0063】
図6に示されたように、C.acnesによるIL-6の発現が増加しており、これを通じて炎症が発生していることが分かる。他の菌株との比較実験において、GENSC02発酵濾過物によるIL-6の発現減少が見られ、GENSC02が他の菌株に比べてより優れた抗炎症効能を有することを確認した。図6は、菌株毎にIL-6の発現を確認した結果であり、GENSC02のIL-6発現が最も低く観察された。
【0064】
図6の結果を通じて、GENSC02発酵濾過物の含量に応じた抗炎症効能を確認するため、上述した実験順序と同様に実験を行い、前処理するGENSC02発酵濾過物の濃度を細胞培養液に対して0.01、0.1、1%とそれぞれ変えて処理して抗炎症効能を再び再現した。
【0065】
図7図9の結果において、IL-6、IL-8、TNF-aの発現が増加していることから、C.acnesによる炎症誘発が生じていることが分かる。IL-6の発現は、GENSC02発酵濾過物の含量に応じて漸次減少し、IL-8及びTNF-αの発現から、低含量のGENSC02発酵濾過物でも優れた抗炎症効能を有することを確認した。
[実施例6]細胞毒性の確認
実施例4で製造した発酵濾過物の細胞毒性を評価するため、以下の実験を行った。96-ウェル細胞培養プレートにHaCaT細胞をそれぞれ5×10cells/wellで24時間付着した後、試験群試料を濃度毎に添加して5%CO、37℃の条件で48時間培養した。48時間後、培養された細胞培地を除去し、0.5mg/mlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2-5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)ホルマザン溶液を細胞に処理して4時間反応させた。時間が経過した後、細胞培地をすべて除去し、ホルマザン溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)で溶かしてSpectraMax(登録商標)M2を用いて570nmで吸光度を測定した。その後、O.Dsample/O.Dcontrol×100の式で換算してHaCaT細胞株の生存率を計算した。
【0066】
図10に発酵濾過物の細胞毒性テスト結果を示した。図10から確認できるように、GENSC02処理時にもHaCaT細胞株の生存率に有意な影響はなかった。したがって、GENSC02は細胞毒性がないことを確認できた。
[実施例7]皮膚障壁機能強化効能の確認
炎症反応の外にも、GENSC02の発酵濾過物によってHaCaT細胞株に対する皮膚障壁強化機能が奏されるかを確認するため、HaCaT細胞株にGENSC02の発酵濾過物を細胞培養液に対する%毎に処理した後、24時間反応させて皮膚障壁機能のマーカーであるフィラグリン(filaggrin)とクローディン(claudin-1)の発現をRNA上で確認した。
【0067】
図11及び図12に示されたように、陽性対照群であるレチノイン酸(RA’、1μM)によってフィラグリンとクローディンの発現が1.5倍ほどに増加した一方、GENSC02発酵濾過物の0.1%からクローディンの発現が2倍以上増加し、フィラグリンの発現はGENSC02発酵濾過物の0.01%から増加することを確認した。このような図11及び図12の結果から、GENSC02は優れた皮膚障壁強化効果を有することを確認した。
【0068】
具体的には、図11から確認できるように、GENSC02は、優れたフィラグリン発現効果を有すると知られたレチノイン酸(陽性対照群)に比べてフィラグリン発現効果に優れることが分かる。このことから、GENSC02はフィラグリン発現を増加させてアトピー皮膚炎の改善効果、にきびの改善効果、皮膚障壁の強化効果、及び皮膚水分量の維持または増加効果を提供できることを確認した。
【0069】
図12から確認できるように、GENSC02は、優れたクローディン発現効果を有すると知られたレチノイン酸(陽性対照群)に比べてクローディン発現効果に優れることが分かる。このことから、GENSC02はクローディン発現を増加させてアトピー皮膚炎の改善効果、にきびの改善効果、皮膚障壁の強化効果、及び皮膚水分量の維持または増加効果を提供できることを確認した。
[実施例8]皮膚保湿機能強化効能の確認
GENSC02発酵濾過物による皮膚保湿機能強化効能を確認するため、HaCaT細胞株にGENSC02の発酵濾過物を細胞培養液に対する%毎に処理した後、24時間反応させて皮膚保湿機能のマーカーであるHAS3(Hyaluronic acid Synthase)とアクアポリン(aquaporin)の発現をRNA上で確認した。
【0070】
図13及び図14に示されたように、陽性対照群であるレチノイン酸(RA’、1μM)によってHAS3とアクアポリンの発現が2~4倍ほどに増加し、GENSC02の発酵濾過物によってHAS3とアクアポリンの発現が陰性対照群(-群)に比べて2倍以上増加することを確認した。図13及び図14の結果から、GENSC02が皮膚保湿機能も強化させていることを確認した。
[実施例9]バイオフィルム形成抑制効果の測定
黄色ブドウ球菌KCTC1621を適正培地(TSB+0.2%グルコース)で16~24時間液体培養した。6-ウェルプレート(ポリスチレン)に0.2%グルコースが含有されたTSBを入れた後、各ウェルに約5~10vol%で試験群を入れた。その後、前記培養菌液を各ウェルに接種し、最終菌株濃度が2×10CFU/wellになるようにした。次いで、37℃のインキュベーターで24時間静置培養した。培養の後、培養液を除去し、各ウェルを1~2mlの滅菌PBSを用いて2回洗浄した。洗浄の後、2mlのPBSを添加してスクレーパーでバイオフィルムを掻き出し、十分に懸濁した後、600nmで吸光度を測定した。吸光度の測定はバイオフォトメーターD30を用いて行った。処理していないウェルを陰性対照群とし、バイカレン(25μm/ml)が接種されたウェルを陽性対照群としてバイオフィルム形成抑制能を計算した。
【0071】
図15に示されたように、GENSC02菌株は陽性対照群よりも優れたバイオフィルム形成抑制能を有することが分かる。
[実施例10]痒み緩和効能の確認
HaCaT細胞株にGENSC02の発酵濾過物を細胞培養液に対する%毎に処理した後、4時間反応させ、アトピー皮膚炎の原因の一つとして作用するサイトカインであるTSLPの発現をRNA上で確認した。図16に示されたように、発酵濾過物のTSLP発現程度が減少することを確認した。したがって、本発明のGENSC02発酵濾過物は、TSLPの発現を抑制し、皮膚の痒みを解消してアトピー皮膚炎の改善に効果があることを確認した。
[実施例11]キューティバクテリウムアクネスATCC6919リパーゼ阻害活性(オレイン酸4-メチルウンベリフェリル(4-MUO)アッセイ)
リパーゼ阻害活性はオレイン酸4-メチルウンベリフェリルを気質として用いて評価した。すなわち、RCMブロス(OD600=1)のC.acnesにそれぞれ陽性対照群としてケトコナゾール(2.5μg/ml)、陰性対照群、発酵濾過物を1:1で処理し、嫌気的に37℃で培養した。これを遠心分離して収得した上澄み液100μlと4-MUO(DMSO中0.2mg/ml)100μlとをブラック96-ウェルマイクロタイタープレートで混合し、37℃で24時間反応させた。リパーゼによって遊離された4-メチルウンベリフェロン(methylumbelliferone)を蛍光(fluorometric)マイクロプレートリーダーで測定した。
【0072】
図17に示されたように、陽性対照群と類似の効果が発酵濾過物を1%で処理したときに得られ、濃度依存的にキューティバクテリウムアクネスATCC6919リパーゼ阻害活性を見せることを確認した。
[実施例12]細塵に対する抗炎症効能の評価
まず、それぞれ6-ウェルプレートに6.5×10個のHaCaTヒト角質細胞株を37℃、5%COのインキュベーターで24時間培養することで付着させた細胞に、細塵(Aldrich製)50μg/mlを2時間処理して炎症を誘導した後、3回洗浄した。その後、GENSC02の発酵濾過物を1時間及び2時間処理し、各サンプルに対してRNAを抽出した後、炎症反応サイトカイン因子であるIL-6に対してRNAの発現をリアルタイムPCRで確認した。その結果を図18に示した。IL-6の発現は、GENSC02の培養濾過物によって有意に減少し、2時間処理する場合、さらに減少することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、化粧料組成物として利用可能な新たなキューティバクテリウムグラニュローサム菌株またはその培養物を提供する。本発明の菌株または培養物は、化粧料組成物として利用可能である。
【受託番号】
【0074】
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC13597BP
受託日:20180724
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【配列表】
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