(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】舶用操舵装置
(51)【国際特許分類】
B63H 25/30 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
B63H25/30 F
(21)【出願番号】P 2019013069
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植 和哉
(72)【発明者】
【氏名】竹下 潔
(72)【発明者】
【氏名】川口 孟
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-237593(JP,A)
【文献】特開2017-43195(JP,A)
【文献】国際公開第2010/052777(WO,A1)
【文献】特開2015-85751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/26- 25/30
B63H 25/22
B63H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舵軸から両側に延びる舵柄を揺動させる、ロッドを有する第1電動アクチュエータと、
前記舵柄を揺動させ、前記第1電動アクチュエータと平行に配置され、ロッドを有する第2電動アクチュエータと、
前記第1電動アクチュエータの前記ロッドの一端に設けられ、前記舵柄の一端に形成された溝内に挿入された第1ピンと、
前記第2電動アクチュエータの前記ロッドの一端に設けられ、前記舵柄の他端に形成された溝内に挿入された第2ピンと、
前記第1電動アクチュエータの前記ロッドの他端に圧力を作用させる作動液が導入される第1圧力室を形成する第1シリンダと、
前記第2電動アクチュエータの前記ロッドの他端に圧力を作用させる作動液が導入される第2圧力室を形成する第2シリンダと、
前記第1圧力室と前記第2圧力室とを接続する液圧流路と、
前記液圧流路の圧力を所定圧力以上に保つ圧力保持装置と、を備える、舶用操舵装置。
【請求項2】
前記第1電動アクチュエータおよび前記第2電動アクチュエータのうち、前記舵柄を揺動させる際に前記舵柄を押す方の電動アクチュエータが先に作動するように前記第1電動アクチュエータおよび前記第2電動アクチュエータを制御する制御装置をさらに備える、請求項1に記載の舶用操舵装置。
【請求項3】
前記第1電動アクチュエータおよび前記第2電動アクチュエータは、前記ロッドの移動量を検出するセンサを有し、
前記制御装置は、前記第1電動アクチュエータおよび前記第2電動アクチュエータのうち、後に作動すべき電動アクチュエータを、当該電動アクチュエータが前記舵柄を介して他方の電動アクチュエータにより押圧されることで前記後に作動すべき電動アクチュエータの前記センサにより検出された前記ロッドの移動量が所定量になったとき又は先に作動すべきアクチュエータの作動開始から所定時間経過後に前記舵柄を引く方に作動させる、請求項2に記載の舶用操舵装置。
【請求項4】
前記第1電動アクチュエータおよび前記第2電動アクチュエータのそれぞれはリニアモータである、請求項1乃至3の何れか1項に記載の舶用操舵装置。
【請求項5】
前記圧力保持装置は、アキュムレータおよびリリーフ弁を含み、前記液圧流路の圧力を前記アキュムレータの設定圧と前記リリーフ弁の設定圧との間に保持する、請求項1乃至4の何れか1項に記載の舶用操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶には当該船舶の進行方向を変更するための舶用操舵装置が設けられている。このような舶用舵取装置においては、電動ポンプにより発生させた油圧により油圧シリンダを作動させ、当該油圧シリンダの直線運動を回転運動に変換する機構を介して舵軸を回転させるものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示されるように、2つの油圧シリンダの各ロッドがピンを介して舵柄に連結されている。このピンは舵柄に設けられた溝内に挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、舵柄の溝とピンとの間には隙間があるため、各ロッドの移動を開始させることでピンを移動させる際に、当該ピンと舵柄の溝の周壁との衝突が起こり、衝突音が生じる。特に静粛性が要求される特殊艦船に用いられる舶用操舵装置においては、上記衝突音を抑止することが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、アクチュエータの作動開始時における舵柄の溝の周壁とピンとの衝突音の発生を抑止することができる舶用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の舶用操舵装置は、舵軸から両側に延びる舵柄を揺動させる、ロッドを有する第1電動アクチュエータと、前記舵柄を揺動させ、前記第1電動アクチュエータと平行に配置され、ロッドを有する第2電動アクチュエータと、前記第1電動アクチュエータの前記ロッドの一端に設けられ、前記舵柄の一端に形成された溝内に挿入された第1ピンと、前記第2電動アクチュエータの前記ロッドの一端に設けられ、前記舵柄の他端に形成された溝内に挿入された第2ピンと、前記第1電動アクチュエータの前記ロッドの他端に圧力を作用させる作動液が導入される第1圧力室を形成する第1シリンダと、前記第2電動アクチュエータの前記ロッドの他端に圧力を作用させる作動液が導入される第2圧力室を形成する第2シリンダと、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを接続する液圧流路と、前記液圧流路の圧力を所定圧力以上に保つ圧力保持装置と、を備えるものである。
【0007】
本発明に従えば、第1圧力室と第2圧力室とを接続する液圧流路の圧力が圧力保持装置により所定圧力以上に保たれるので、第1電動アクチュエータのロッドの第1ピンが押圧されて当該第1ピンと舵柄の一方の溝の周壁とが接触した状態となると共に第2電動アクチュエータのロッドの第2ピンが押圧されて当該第2ピンと舵柄の他方の溝の周壁とが接触した状態となる。このような状態で第1および第2電動アクチュエータの作動を開始させることができるので、舵柄を一方および他方のどちらに揺動させた場合でも、第1ピンと舵柄の一方の溝の周壁との衝突、および第2ピンと舵柄の他方の溝の周壁との衝突が抑止され、それ故衝突音の発生を抑止することができる。しかも、油圧により第1ピンと一方の溝の周壁との接触状態および第2ピンと他方の溝の周壁との接触状態が保持されるため、接続状態を保持するために第1および第2電動アクチュエータに対する通電を継続する必要がない。
【0008】
上記発明において、舶用操舵装置は、前記第1電動アクチュエータおよび前記第2電動アクチュエータのうち、前記舵柄を揺動させる際に前記舵柄を押す方の電動アクチュエータが先に作動するように前記第1電動アクチュエータおよび前記第2電動アクチュエータを制御する制御装置をさらに備えてもよい。
【0009】
上記構成に従えば、舵柄を揺動させる際に、舵柄を引く方の電動アクチュエータのロッドのピンと当該舵柄の溝の周壁との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0010】
上記発明において、前記第1電動アクチュエータおよび前記第2電動アクチュエータは、前記ロッドの移動量を検出するセンサを有し、前記制御装置は、前記第1電動アクチュエータおよび前記第2電動アクチュエータのうち、後に作動すべき電動アクチュエータを、当該電動アクチュエータが前記舵柄を介して他方の電動アクチュエータにより押圧されることで前記後に作動すべき電動アクチュエータの前記センサにより検出された前記ロッドの移動量が所定量になったとき又は先に作動すべきアクチュエータの作動開始から所定時間経過後に前記舵柄を引く方に作動させてもよい。
【0011】
上記構成に従えば、舵柄を揺動させる際に、舵柄を引く方の電動アクチュエータのロッドのピンと当該舵柄の溝の周壁との間に隙間を生じさせることなく、上記舵柄を引く方の電動アクチュエータを作動させることができる。
【0012】
上記発明において、前記第1電動アクチュエータおよび前記第2電動アクチュエータのそれぞれはリニアモータであってもよい。
【0013】
上記構成に従えば、電力でリニアモータを直接駆動できるようになり、アクチュエータを駆動するためのエネルギーの高効率化を図ることができる。
【0014】
上記発明において、前記圧力保持装置は、アキュムレータおよびリリーフ弁を含み、前記液圧流路の圧力を前記アキュムレータの設定圧と前記リリーフ弁の設定圧との間に保持してもよい。
【0015】
上記構成に従えば、圧力保持装置によって液圧流路の圧力がアキュムレータの設定圧とリリーフ弁の設定圧との間(所定範囲)に保持されるので、液圧流路の作動液の温度変化に伴う体積変化を吸収することができる。詳しくは、温度上昇により作動液が膨張して液圧流路内の圧力がリリーフ弁の設定圧を超える場合には、当該リリーフ弁を介して作動液をアキュムレータに逃がすことで当該液圧流路内の圧力を低下させることができる。一方、温度低下により作動液が収縮して液圧流路内の圧力がアキュムレータの設定圧未満になる場合には、当該アキュムレータから液圧流路に作動液を供給することで当該液圧流路内の圧力を上昇させることができる。このようにして、液圧流路内の圧力を所定範囲内に保持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アクチュエータの作動開始時における舵柄の溝の周壁とピンとの衝突音の発生を抑止することができる舶用操舵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る舶用操舵装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る舶用操舵装置について図面を参照して説明する。以下に説明する舶用操舵装置は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0019】
図1に本実施形態に係る舶用操舵装置1を示す。
図1に示すように、本実施形態の舶用操舵装置1は、制御装置50が電動アクチュエータである第1リニアモータ5および第2リニアモータ6を作動させることで、舵柄2を介して舵軸4を回動させるものである。舵柄2は揺動可能に構成され、舵軸4から両側に延在している。この舵柄2には、第1および第2リニアモータ5,6の軸線方向と直交する方向の両端に溝2a,2bが形成されている。溝2a内には第1ピン3aが挿入されており、溝2b内には第2ピン3bが挿入されている。
【0020】
第2リニアモータ6は第1リニアモータ5と平行に配置されている。第1及び第2リニアモータ5,6は、その軸線方向に往復動可能に構成されたロッド7を有している。各ロッド7は電力によりその軸線方向に往復動するように構成されている。第1ピン3aは第1リニアモータ5のロッド7の一端(
図1では右端)に設けられ、第2ピン3bは第2リニアモータ6のロッド7の一端に設けられている。
【0021】
このような構成において、第1リニアモータ5のロッド7が舵柄2を押す方に移動し、第2リニアモータ6のロッド7が舵柄2を引く方に移動されると、舵柄2は
図1において時計回りに揺動する。逆に、第1リニアモータ5のロッド7が舵柄2を引く方に移動し、第2リニアモータ6のロッド7が舵柄2を押す方に移動されると、舵柄2は
図1において反時計回りに揺動する。このようにして、舵柄2が揺動されることにより舵軸4を回動させることができるようになっている。
【0022】
第1リニアモータ5の基端側部分には第1シリンダ8が連結されている。第1リニアモータ5のロッド7の基端側部分は第1シリンダ8内に配置されている。第1シリンダ8内において当該第1シリンダ8の内周壁とロッド7とで囲まれた領域に第1圧力室8aが形成されている。ロッド7が軸線方向の一方(
図1において左方)に移動したときには第1圧力室8aから作動液が流出し、ロッド7が軸線方向の他方(
図1において右方)に移動したときには第1圧力室8a内に作動液が流入するようになっている。なお、舶用操舵装置1で用いられる作動液は、典型的には油であるが、水などの他の液体であってもよい。
【0023】
同様に、第2リニアモータ6の基端側部分には第2シリンダ9が連結されている。第2リニアモータ6のロッド7の基端側部分は第2シリンダ9内に配置されている。第2シリンダ9内において当該第2シリンダ9の内周壁とロッド7とで囲まれた領域に第2圧力室9aが形成されている。ロッド7が軸線方向の一方(
図1において左方)に移動したときには第2圧力室9aから作動液が流出し、ロッド7が軸線方向の他方(
図1において右方)に移動したときには第2圧力室9a内に作動液が流入するようになっている。
【0024】
舶用操舵装置1には液圧流路10が設けられている。この液圧流路10は、上述した第1圧力室8aと第2圧力室9aとを接続する。液圧流路10には、当該液圧流路10を通じた作動液の流れを許可する許可状態と液圧流路10を通じた作動液の流れを禁止する禁止状態との間で切り換えられる切換弁11が介挿されている。
【0025】
液圧流路10には圧力保持装置12が設けられている。
図1に示すように、この圧力保持装置12は、給排ライン13と、第1~第4接続ライン14,15,16,17と、リリーフ弁18と、チェック弁19,20と、チェック弁21,22と、アキュムレータ(圧力補償器)23とを備えている。
【0026】
給排ライン13の一端にはアキュムレータ23が接続されている。このアキュムレータ23は、シリンダ23aとピストン23bとバネ部材23cとを含む。シリンダ23aの内周壁とピストン23bとで囲まれた領域には作動液室が形成されており、バネ部材23cによりピストン23bが所定圧力以上の圧力で押されている。このような構成において、シリンダ23aの作動液室から作動液が給排ライン13に供給できると共に、当該シリンダ23aの作動液室に対して作動液を逃がすことができるようになっている。
【0027】
給排ライン13の他端には第1接続ライン14の一端が接続されている。第1接続ライン14の他端は液圧流路10のうちの切換弁11の一方側の部分に接続されている。また、給排ライン13の他端には第2接続ライン15の一端が接続されている。第2接続ライン15の他端は液圧流路10のうちの切換弁11の他方側の部分に接続されている。チェック弁19は第1接続ライン14に介挿されており、当該チェック弁19から第1圧力室8aに向かう方向の作動液の流れを防ぎ、チェック弁19からリリーフ弁18に向かう方向の作動液の流れを許可する。また、チェック弁20は第2接続ライン15に介挿されており、当該チェック弁20から第2圧力室9aに向かう方向の作動液の流れを防ぎ、チェック弁20からリリーフ弁18に向かう方向の作動液の流れを許可する。
【0028】
第3接続ライン16の一端は第1接続ライン14に接続され、当該第3接続ライン16の他端は給排ライン13に接続されている。また、第4接続ライン17の一端は第2接続ライン15に接続され、当該第4接続ライン17の他端は給排ライン13に接続されている。チェック弁21は第3接続ライン16に介挿されており、当該チェック弁21からアキュムレータ23に向かう方向の作動液の流れを防ぎ、チェック弁21から第1圧力室8aに向かう方向の作動液の流れを許可する。また、チェック弁22は第4接続ライン17に介挿されており、当該チェック弁22からアキュムレータ23に向かう方向の作動液の流れを防ぎ、チェック弁22から第2圧力室9aに向かう方向の作動液の流れを許可する。
【0029】
このような構成において、第1および第2リニアモータ5,6の動作開始前には、切換弁11は閉じられて上記禁止状態に切り換えられている。上述の通り、バネ部材23cによりピストン23bが所定圧力以上の圧力で押されているため、シリンダ23aの作動液室からの作動液が、給排ライン13、第3および第1接続ライン16,14および液圧流路10を介して第1圧力室8aに供給される共に、給排ライン13、第4および第2接続ライン17,15および液圧流路10を介して第2圧力室9aに供給される。これにより、第1リニアモータ5のロッド7の第1ピン3aを舵柄2の溝2aに押し付けることができると共に、第2リニアモータ6のロッド7の第2ピン3bを舵柄2の溝2bに押し付けることができる。なお、この場合、
図1において溝2aの左部分および溝2bの左部分には隙間sが生じるようになっている。これに対して、第1および第2リニアモータ5,6の動作時には、切換弁11は開放されて上記許可状態に切り換えられる。それにより、第1圧力室8aに対する作動液の流入および当該第1圧力室8aからの作動液の流出と、これに伴う第2圧力室9aからの作動液の流出および第2圧力室9aに対する作動液の流入とが許可される。
【0030】
制御装置50は、第1および第2リニアモータ5,6のうち、舵柄2を揺動させる際に当該舵柄2を押す方の電動アクチュエータが先に作動するよう第1および第2リニアモータ5,6を制御するように構成されている。例えば舵柄2を押す方が第1リニアモータ5であり、当該舵柄2を引く方が第2リニアモータ6である場合には、制御装置50は、第1リニアモータ5を先に作動させた後、第2リニアモータ6を作動させる。
【0031】
具体的には、第1および第2リニアモータ5,6は、対応するロッド7の移動量を検出するセンサ5a,6aを有している。制御装置50は、上記の例でいえば、後に作動すべき第2リニアモータ6を、当該リニアモータ6のセンサ6aにより検出されたロッド7の移動量が所定量になったとき又は先に作動すべきアクチュエータの作動開始から所定時間経過後に舵柄2を引く方に作動させる。なお、センサ5a,6aは例えばストロークセンサである。
【0032】
圧力保持装置12において、チェック弁21,22は、作動液の温度低下に起因して当該作動液が収縮することで液圧流路10内の圧力がアキュムレータ23の設定圧未満となる場合に、アキュムレータ23から作動液を吸引して液圧流路10に供給するよう作動する。一方、リリーフ弁18は、給排ライン13のうち第3および第4接続ライン16,17の接続点よりもアキュムレータ23から離れた部分に介挿されている。リリーフ弁18は、作動液の温度上昇に起因して当該作動液が膨張することで液圧流路10内の圧力がリリーフ弁18の設定圧(リリーフ圧)を超える場合に、液圧流路10内の作動液をアキュムレータ23に逃がすよう作動する。このように、液圧流路10内の圧力をアキュムレータ23の設定圧とリリーフ弁18の設定圧との間(所定範囲)に保持することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の舶用操舵装置1によれば、第1圧力室8aと第2圧力室9aとを接続する液圧流路10の圧力が圧力保持装置12により所定圧力以上に保たれるので、第1リニアモータ5のロッド7の第1ピン3aが押圧されて当該第1ピン3aと舵柄2の溝2aの周壁とが接触した状態となると共に第2リニアモータ6のロッド7の第2ピン3bが押圧されて当該第2ピン3bと舵柄2の溝2bの周壁とが接触した状態となる。このような状態で第1および第2リニアモータ5,6の作動を開始させることができるので、舵柄2を一方および他方のどちらに揺動させた場合でも、第1ピン3aと舵柄2の溝2aの周壁との衝突および第2ピン3bと舵柄2の溝2bの周壁との衝突を抑止することができ、それ故衝突音の発生を抑止することができる。しかも、油圧により第1ピン3aと溝2aの周壁との接触状態および第2ピン3bと溝2bの周壁との接触状態が保持されるため、接続状態を保持するために第1および第2リニアモータ5,6に対する通電を継続する必要がない。
【0034】
また、本実施形態では、制御装置50によって、第1およびリニアモータ5,6のうち、後に作動すべきリニアモータが、舵柄2を介して他方のリニアモータにより押圧されることで上記後に作動すべきリニアモータのセンサにより検出されたロッド7の移動量が所定量になったとき又は先に作動すべきアクチュエータの作動開始から所定時間経過後に舵柄2を引く方に作動される。これによって、舵柄2を揺動させる際に、舵柄2を引く方のリニアモータのロッドのピンと当該舵柄2の溝の周壁との間に隙間を生じさせることなく、上記舵柄2を引く方のリニアモータを作動させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、舶用操舵装置1が圧力保持装置12を備えるので、液圧流路10の圧力をアキュムレータ23の設定圧とリリーフ弁18の設定圧との間(所定範囲)に保持することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、電動アクチュエータとしてリニアモータ5,6を採用することで、油圧アクチュエータを電動ポンプにより駆動する場合と比べ、電力でリニアモータ5,6を直接駆動できるようになり、アクチュエータ(本実施形態ではリニアモータ5,6)を駆動するためのエネルギーの高効率化を図ることができる。
【0037】
(他の実施形態)
上述の各実施形態の他にも、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で次のような種々の変形も可能である。
【0038】
上記実施形態では、舵柄の溝内に挿入されたピンをロッドに設けることでリニアモータの直線運動を舵柄の揺動運動に変換するように構成したが、変換機構がこれに限らず、例えばラック・ピニオンギア方式などの他の変換機構を採用してもよい。
【0039】
また、上記各実施形態では、電動アクチュエータとしてリニアモータを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば電磁プランジャーなどの他の電動アクチュエータを用いてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 舶用操舵装置
2 舵柄
2a,2b 溝
3a 第1ピン
3b 第2ピン
4 舵軸
5 第1リニアモータ(第1電動アクチュエータ)
5a,6a センサ
6 第2リニアモータ(第2電動アクチュエータ)
7 ロッド
8 第1シリンダ
8a 第1圧力室
9 第2シリンダ
9a 第2圧力室
10 液圧流路
12 圧力保持装置
23 アキュムレータ
50 制御装置