(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】非水系電解液二次電池用炭素材、非水系電解液二次電池用負極、非水系電解液二次電池、及び非水系電解液二次電池用炭素材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20220808BHJP
C01B 32/21 20170101ALI20220808BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220808BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220808BHJP
【FI】
H01M4/587
C01B32/21
H01M4/36 A
H01M10/0566
(21)【出願番号】P 2019117038
(22)【出願日】2019-06-25
(62)【分割の表示】P 2017231208の分割
【原出願日】2013-08-22
【審査請求日】2019-06-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2012184082
(32)【優先日】2012-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】石渡 信亨
(72)【発明者】
【氏名】上田 晃生
(72)【発明者】
【氏名】布施 亨
(72)【発明者】
【氏名】横溝 正和
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瑛博
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】須原 宏光
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/056820(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/010312(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/015054(WO,A1)
【文献】特開2012-074297(JP,A)
【文献】特開2011-253688(JP,A)
【文献】特開2012-004142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
C01B 32/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛粒子を核とし、
1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子と非晶質炭素とを含有する非水系電解液二次電池用炭素材であって、該黒鉛粒子100質量部に対し、該非晶質炭素を0.01質量部以上20質量部以下含有し、かつ無作為に選んだ30個の複合粒子の顕微ラマンR値を顕微ラマン分光装置にて測定し、下記式2で表されるラマンR(90/10)値が1以上4.3以下であることを特徴とする非水系電解液二次電池用炭素材(ただし、シリコン粒子を含む炭素材を除く)。
式2
ラマンR(90/10)値=(顕微ラマンR値を小さい方から順に並べたときの顕微ラマンR値が小さいものから(測定粒子全個数×0.9)番目に小さい粒子の顕微ラマンR値)/(顕微ラマンR値を小さい方から順に並べたときの顕微ラマンR値が小さいものから(測定粒子全個数×0.1)番目に小さい粒子の顕微ラマンR値)
【請求項2】
前記複合粒子のラマンR値が0.35以上1以下である、請求項1に記載の非水系電解液二次電池用炭素材。
【請求項3】
前記複合粒子のBET比表面積が4.5m
2/g以上である、請求項1又は2に記載の非水系電解液二次電池用炭素材。
【請求項4】
Hgポロシメトリー解析から求められる200nm以下の細孔の合計細孔体積が0.04ml/g以上であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の非水系電解液二次電池用炭素材。
【請求項5】
集電体と集電体上に形成された負極活物質とを備える非水系電解液二次電池用負極であって、前記負極活物質が請求項1~4の何れか1項に記載の非水系電解液二次電池用炭素材であることを特徴とする非水系電解液二次電池用負極。
【請求項6】
金属イオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解液を備える非水系電解液二次電池であって、前記負極が請求項5に記載の非水系電解液二次電池用負極であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液二次電池用炭素材、非水系電解液二次電池用負極、非水系電解液二次電池、及び非水系電解液二次電池用炭素材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化・高性能化に伴い、高容量二次電池の需要がさらに高まっている。特にニッケル・水素電池等に比べてエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池等の非水系電解液二次電池への注目が集まっている。
従来、代表的な非水系電解液二次電池として、金属リチウムを負極材としたリチウム二次電池が広く知られていたが、充電時にデンドライト状のリチウムが析出して、サイクル特性や安全性の点において難点があることから、炭素材料を負極材としたリチウムイオン二次電池の検討が特に進められている。代表的な炭素材料としては黒鉛が知られており、黒鉛を使用したリチウムイオン二次電池は、電極膨張が小さく、サイクル特性に優れることが報告されている。しかしながら、黒鉛のみを負極材とした場合、不可逆容量が大きいことやレート特性が低いことが課題となっており、これを解決するために黒鉛と結晶性(黒鉛化度)の低い炭素材料を組み合わせた負極材の検討が進んでいる。
【0003】
例えば、「複数の鱗片状の黒鉛が集合して形成された黒鉛造粒物と、黒鉛造粒物の内部空隙および/または外表面に、黒鉛造粒物よりも結晶性の低い炭素質層および炭素質微粒子が、充填および/または被覆されてなる複合黒鉛質粒子、及びこれを用いたリチウムイオン二次電池用負極」が提案されている(特許文献1参照)。
また、「天然黒鉛である陰極活物質;及び陰極活物質の表面に低結晶性炭素材料である
ピッチと導電材との混合物を用いて被覆された被覆材;を含む二次電池用陰極材」が提案
されている(特許文献2参照)。
さらに、「黒鉛粉末粒子とカーボンブラックおよびピッチ炭化物との複合粒子からなり、複合粒子の平均粒子径D50が8~15μm、比表面積が15m2/g以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材」が提案されている(特許文献3参照)。
加えて、「炭素材が天然黒鉛を球状に賦形した母材にピッチとカーボンブラックの混合物を含浸・被覆し、900℃~1500℃で焼成して得た、表面に微小突起を有する概略球形の黒鉛粒子とピッチとカーボンブラックの混合物を900℃~1500℃で焼成して粉砕、整粒した炭素質粒子の混合物であって、波長514.5nmのアルゴンレーザー光を用いたラマンスペクトル分光分析において、1600cm-1付近、及び1580cm-1付近にピークを有するGバンドの複合ピークとDバンドの1380cm-1付近に少なくとも1つのピークを有し、X線広角回折で得られる結晶面の面間隔d002が0.335~0.337nmである多相構造を有する粉末状の炭素材からなるリチウムイオン二次電池用負極活物質」が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-063321号公報
【文献】特開2007-200868号公報
【文献】国際公開第2007/086603号
【文献】特開2009-004304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車用にリチウムイオン二次電池を使用する場合、自動車の発進・加速する際に大きなエネルギーを要し、且つ減速・停止する際のエネルギーを効率良く回生させなければならないため、これまで携帯電話やノートパソコン用で求められてきた高い充放電容量や安全性や耐久性に加えて、非常に高い入出力特性が要求される。特に、リチウムイオン二次電池は低温下において入出力特性が低下する傾向にあるため、低温下でも高い入出力特性を維持することができる技術が必要である。
また、本発明者らが検討した結果、特許文献3、4に開示されている発明は、低温下における入出力特性、初期効率、及び放電容量をバランス良く満足することが出来ず、これらの開示のみから本発明の課題を解決できるような炭素材を製造することが困難であった。
即ち、本発明はリチウムイオン二次電池に求められる諸特性を満足しつつ、低温下においても入出力特性に優れる非水系電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、黒鉛粒子と1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子との複合粒子であって、特定の条件を満たす複合粒子(炭素材)を、非水系電解液二次電池の負極活物質として用いることにより、非水系電解液二次電池の低温時における入出力特性を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は以下の通りである。
<1>黒鉛粒子と1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子との複合粒子であり、無作為に選んだ30個の複合粒子の顕微ラマンR値を顕微ラマン分光装置にて測定し、下記式2で表されるラマンR(90/10)値が1以上4.3以下であることを特徴とする非水系電解液二次電池用炭素材。
式2
ラマンR(90/10)値=(顕微ラマンR値を小さい方から順に並べたときの顕微ラマンR値が小さいものから(測定粒子全個数×0.9)番目に小さい粒子の顕微ラマンR値)/(顕微ラマンR値を小さい方から順に並べたときの顕微ラマンR値が小さいものから(測定粒子全個数×0.1)番目に小さい粒子の顕微ラマンR値)
<2>前記複合粒子は、非晶質炭素を更に含有する、<1>に記載の非水系電解液二次電池用炭素材。
<3>前記複合粒子のラマンR値が0.35以上1以下である、<1>又は<2>に記載の非水系電解液二次電池用炭素材。
<4>前記複合粒子のBET比表面積が4.5m2/g以上である、<1>~<3>の何れかに記載の非水系電解液二次電池用炭素材。
<5>Hgポロシメトリー解析から求められる200nm以下の細孔の合計細孔体積が0.04ml/g以上であることを特徴とする<1>~<4>の何れかに記載の非水系電解液二次電池用炭素材。
<6>集電体と集電体上に形成された負極活物質とを備える非水系電解液二次電池用負極であって、前記負極活物質が<1>~<5>の何れかに記載の非水系電解液二次電池用炭素材であることを特徴とする非水系電解液二次電池用負極。
<7>金属イオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解液を備える非水系電解液二次電池であって、前記負極が<6>に記載の非水系電解液二次電池用負極であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
<8>黒鉛粒子と1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子と非晶質炭素を含む非水系電解液二次電池用炭素材の製造方法において、
炭素微粒子を黒鉛粒子に乾式にて添着させる工程、及び
前記工程で得られた炭素微粒子添着黒鉛粒子と非晶質炭素前駆体有機物とを混合した後、焼成処理する工程、
を含む、非水系電解液二次電池用炭素材の製造方法。
<9>前記炭素微粒子は、吸油量が330ml/100g以下である、<8>に記載の非水系電解液二次電池用炭素材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温下においても入出力特性に優れる非水系電解液二次電池を提供することができる。加えて、ピール強度が高い非水系電解液二次電池用負極を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の非水系電解液二次電池用炭素材、非水系電解液二次電池用負極、並びに非水系電解液二次電池について以下詳細に説明するが、本発明の趣旨に反しない限り、これらの内容に限定されるものではない。
【0010】
1.非水系電解液二次電池用炭素材
本発明の非水系電解液二次電池用炭素材(以下、「本発明の炭素材」と略す場合がある。)は、「黒鉛粒子と1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子(以下、「炭素微粒子」と略す場合がある。)との複合粒子であり」、さらに以下のラマンR(90/10)値の条件を満たす複合粒子(炭素材)であることを特徴とする。
無作為に選んだ30個の複合粒子の顕微ラマンR値を顕微ラマン分光装置にて測定し、下記式2で表されるラマンR(90/10)値が1以上4.3以下である。
式2
ラマンR(90/10)値=(顕微ラマンR値を小さい方から順に並べたときの顕微ラマンR値が小さいものから(測定粒子全個数×0.9)番目に小さい粒子の顕微ラマンR値)/(顕微ラマンR値を小さい方から順に並べたときの顕微ラマンR値が小さいものから(測定粒子全個数×0.1)番目に小さい粒子の顕微ラマンR値)
つまり、本発明者らは、黒鉛粒子と1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子との複合粒子であって、前述のラマンR(90/10)値の条件を満たす複合粒子(炭素材)を、非水系電解液二次電池の負極活物質として用いることにより、負極活物質表面に均一且つ連続的な微細流路が生成し、低温下においてもスムーズなLiイオンの移動が可能になるため、従来の技術では達成できなかった非水系電解液二次電池の低温時における入出力特性を大幅に改善できることを見出した。加えて、負極活物質表面には微細流路を形成する微小突起が存在することから、粒子間接着点数が増大し、負極のピール強度が向上することも見出した。
なお、本発明の炭素材は、非晶質炭素を更に含有することが好ましい。
【0011】
本明細書において「非水系電解液二次電池用炭素材」とは、リチウムイオン二次電池等の非水系電解液二次電池の負極に使用される材料であって、リチウムイオン等を吸蔵・放出する負極活物質としての機能を発揮する炭素材料を意味する。
また、「複合粒子」とは、「黒鉛粒子」、「1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子」、好ましくは「非晶質炭素」をも含み、これらの固体成分が物理的及び/又は化学的な結合(吸着)によって一体となった(以下、「複合化」と略す場合がある。)粒子を意味する。従って、本発明の炭素材を製造するにおいて、「黒鉛粒子」、「1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子」及び「非晶質炭素」のそれぞれが個別の粒子を形成して積極的に混ざり合っている混合物は、本発明の炭素材には該当しないものとする。
【0012】
本発明の炭素材は、「黒鉛粒子と1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子との複合粒子」であれば、複合粒子の具体的な形態は特に限定されないが、「黒鉛粒子」を核とし「1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子と非晶質炭素」が含有されて
いる複合粒子であることが好ましく、「黒鉛粒子」の一部若しくは全面を「1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子と非晶質炭素」が被覆した複層構造炭素材であることが好ましい。
【0013】
また、「黒鉛粒子」の一部若しくは全面を「1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子と非晶質炭素」が被覆した複層構造炭素材である場合の黒鉛粒子の粒径(最大径)は、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、また通常50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下である。
複層構造炭素材である場合の非晶質炭素の厚みは、通常0.1nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上であり、通常3μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。なお、黒鉛粒子の粒径や非晶質炭素の厚みは、SEMやTEM等の電子顕微鏡観察によって測定することができる。また、非晶質炭素の存在の有無は、ラマン分光分析や真密度等々の測定にて存在の有無・量を確認することができる。
【0014】
さらに、本発明の炭素材における「黒鉛粒子」と「1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子」と「非晶質炭素」の含有比率は特に限定されないが、「黒鉛粒子」100質量部に対し、「1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子」は、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、通常20質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
また、「非晶質炭素」は「黒鉛粒子」100質量部に対し、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、通常20質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
複合粒子がこのような形態であると、前述したラマンR(90/10)値の条件を満たし易く、非水系電解液二次電池の負極活物質として用いた場合に、非水系電解液二次電池の低温時における入出力特性を大幅に改善することができる。
【0015】
本発明の炭素材は、「Hgポロシメトリー解析から求められる200nm以下の細孔の合計細孔体積(以下、微細孔体積ともいう。)が0.04ml/g以上であることが好ましい。合計細孔体積は、好ましくは0.04ml/g以上、より好ましくは0.06ml/g以上であり、更に好ましくは0.08ml/g以上であり、通常1ml/g以下、好ましくは0.5ml/g以下、より好ましくは0.3ml/g以下である。上記範囲内であると、容量や初期効率などリチウムイオン二次電池に求められる諸特性を満足しつつ、低温下においても入出力特性が高くなる利点がある。
【0016】
なお、本発明における「Hgポロシメトリー解析」から求められる「合計細孔体積」は、Hgポロシメータ(マイクロメリテックス社製のオートポア9520)を用いて、以下の手順によって測定した値を用いている。
1)試料(炭素材)をパウダー用セルに0.2g前後秤量封入し室温、真空下(50μmHg以下)にて10分間脱気して前処理を実施する。
2)4psia(約28kPa)に減圧して水銀を導入し、4psia(約28kPa)から40000psia(約280MPa)までステップ状に昇圧させた後、25psia(約170kPa)まで降圧させる。昇圧時のステップ数は80点以上とし、各ステップでは10秒の平衡時間の後、水銀圧入量を測定する。
3)得られた水銀圧入曲線からWashburnの式を用い、細孔分布及び合計細孔体積を算出する。なお、水銀の表面張力(γ)は485dyne/cm、接触角(ψ)は140°として算出する。
【0017】
本発明の炭素材は、上記のとおり、無作為に選んだ30個の複合粒子の顕微ラマンR値
を顕微ラマン分光装置にて測定し、下記式2で表されるラマンR(90/10)値が1以上4.3以下であることを特徴とする。
式2
ラマンR(90/10)値=(顕微ラマンR値を小さい方から順に並べたときの顕微ラマンR値が小さいものから(測定粒子全個数×0.9)番目に小さい粒子の顕微ラマンR値)/(顕微ラマンR値を小さい方から順に並べたときの顕微ラマンR値が小さいものから(測定粒子全個数×0.1)番目に小さい粒子の顕微ラマンR値)
つまり、無作為に選んだ30個の複合粒子の顕微ラマンR値であるので、上記式2における、顕微ラマンR値を小さい方から順に並べたときの顕微ラマンR値が小さいものから(測定粒子全個数×0.9)番目に小さい粒子とは、27番目に小さい粒子をいい、微ラマンR値を小さい方から順に並べたときの顕微ラマンR値が小さいものから(測定粒子全個数×0.1)番目に小さい粒子とは、3番目に小さい粒子という。
式2で表されるラマンR(90/10)値は、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.1以上であり、更に好ましくは1.2以上であり、特に好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.3以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.2以下である。上記範囲であると、電池の充放電効率および放電容量などリチウムイオン二次電池に求められる諸特性を満足しつつ、低温下においても入出力特性が高くなる利点がある。
【0018】
なお、上記のようなラマンR(90/10)値の範囲であるということは、例えば、炭素材の表面において、凝集体として存在する炭素微粒子が少なく、より均一に炭素微粒子が黒鉛粒子表面に存在している状態であると考えられる。
なお、本発明におけるラマンR値は、ラマン分光器(Thermo Fisher Scientific製 Nicolet Almega XR)を用いて、以下の条件によって顕微ラマン測定した値を用いる。
測定対象粒子を試料台の上に自然落下させ、表面を平らにし、顕微ラマン測定を行なう。
励起波長 :532nm
試料上のレーザーパワー :1mW以下
分解能 :10cm-1
照射径 :1μmΦ
測定範囲 :400cm-1~4000cm-1
ピーク強度測定 :約1100cm-1~1750cm-1の範囲で直線ベースライン補正。
ラマンR値の算出方法 :直線ベースライン補正後のスペクトルにおける1580cm-1付近のピークPAのピークトップまでのピーク強度IAと、1360cm-1付近のピークPBのピークトップまでのピーク強度IBを読み取り、R値(IB/IA)を算出した。
【0019】
本発明の炭素材は、上記ラマンR(90/10)値の条件を満たすものであれば、その他の物性は特に限定されないが、体積基準平均粒径、BET比表面積、タップ密度、及びラマンR値の好ましい範囲について以下に言及する。
【0020】
(体積基準平均粒径D50)
本発明の炭素材の体積基準平均粒径は、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、また通常50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下である。上記範囲を下回ると、不可逆容量が大きくなり、かつ粒径が小さすぎるため、炭素材粒子間の導電パスや、炭素材と導電剤等との間の導電パスが得られにくくなり、抵抗増による容量低下、サイクル特性が悪化する場合もある。一方、上記範囲を上回ると、入出力特性が低下する傾向があると同時に、入出力極板化した際に、筋引きなどの工程上の不都合が出ることが多く、さらに集電
体上に塗布する際に膜厚のむらが生じ易くなる。
なお、体積基準平均粒径は、測定対象に界面活性剤水溶液(約1mL)を混合し、イオン交換水を分散媒としてレーザー回折式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製「LA-920」)にて、体積基準の平均粒径(メジアン径D50)を測定した値を用いている。
【0021】
(BET比表面積)
本発明の炭素材のBET比表面積は、通常1m2/g以上、好ましくは2m2/g以上、より好ましくは3m2/g以上、更に好ましくは4.5m2/g以上、特に好ましくは5.1m2/g以上、また、上限に関しては、特に限定されないが、通常は20m2/g以下、好ましくは15m2/g以下、より好ましくは10m2/g以下の範囲である。上記範囲であれば、電池の充放電効率および放電容量が高く、高速充放電においてリチウムの出し入れが速く、レート特性に優れるので好ましい。
なお、BET比表面積は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なった値を用いている。
【0022】
(タップ密度)
本発明の炭素材のタップ密度は、通常0.1g/cm3以上、好ましくは0.5g/cm3以上、より好ましくは0.7g/cm3以上であり、更に好ましくは0.9g/cm3以上であり、通常2g/cm3以下、好ましくは1.8g/cm3以下、より好ましくは1.6g/cm3以下、更に好ましくは1.4g/cm3以下である。上記範囲を下回ると、負極とした場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
なお、タップ密度は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から測定した値を用いている。
【0023】
(ラマンR値)
本発明の炭素材は、下記式1で表されるラマンR値が0.35以上1以下であることが好ましい。
式1
ラマンR値=(ラマンスペクトル分析における1360cm-1付近のピークPBの強度IB)/(1580cm-1付近のピークPAの強度IA)
また、ラマンR値は、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.45以上であり、特に好ましくは0.48以上であり、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下である。上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向し易くなり、入出力特性の低下を招く場合がある。一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶が乱れ、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
【0024】
(製造方法)
本発明の炭素材は、「黒鉛粒子と1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子との複合粒子であり」、さらに前述のラマンR(90/10)値の条件を満たす複合粒子(炭素材)であれば、その製造方法は特に限定されない。ラマンR(90/10)値の条件を満たすためには、以下の(1)及び(2)の観点を考慮した製造方法を採用することが好ましい。
(1)炭素微粒子が凝集する前の一次粒子の状態で、黒鉛粒子に炭素微粒子を添着させる
こと。
炭素微粒子は、そのまま単独で事前に解砕しても、黒鉛粒子との混合の際に二次粒子となってしまう。そのためこのような製造方法を採用することにより、炭素微粒子が凝集していない状態で黒鉛粒子に添着され、黒鉛粒子表面に均一且つ連続的な微細流路が生成しやすくなる点で好ましい。
炭素微粒子が凝集する前の一次粒子の状態で、黒鉛粒子に炭素微粒子を添着させるためには、「黒鉛粒子」と「炭素微粒子」を混合する装置として、「黒鉛粒子」と「炭素微粒子」を混合・撹拌する混合撹拌機構のみならず、「黒鉛粒子」や「炭素微粒子」を解砕する解砕機構を備える装置、いわゆる解砕混合機を採用して混合することが好ましい。
このような解砕混合機を用いて「黒鉛粒子」と「炭素微粒子」を混合することにより、「黒鉛粒子」や「炭素微粒子」の凝集体を解砕して均一に混合することができる。複合化する前に「黒鉛粒子」や「炭素微粒子」の凝集体を十分に解砕して均一に混合しておくことにより、その後の工程において生じる「炭素微粒子」同士の凝集も抑制することができる。
【0025】
(2)炭素微粒子として、吸油量が低い炭素微粒子を用いること。吸油量が低い炭素微粒子を使用することにより、非晶質炭素と混合した際に、炭素微粒子が凝集して二次粒子になりにくい。そのため、炭素微粒子の均一な分散が達成しやすくなり、好ましい。
以上の(1)及び(2)の観点を考慮した製造方法としては、
炭素微粒子を黒鉛粒子に乾式にて添着させる工程、及び
前記工程で得られた炭素微粒子添着黒鉛粒子と非晶質炭素前駆体有機物とを混合した後、焼成処理する工程、を含む製造方法があげられる。
炭素微粒子を黒鉛粒子に乾式にて添着させる工程は、上述した解砕混合器等を用い、炭素微粒子と黒鉛粒子をドライブレンドする方法が例示される。当該工程により、黒鉛粒子に炭素微粒子の一次粒子が添着する。
黒鉛粒子に炭素微粒子の一次粒子が添着した後は、非晶質炭素前駆体有機物を混合した後、焼成する。焼成の温度は詳細には後述するが、2600℃以下であることが好ましい。
【0026】
また、炭素微粒子として、吸油量が低い炭素微粒子を用いることが好ましく、炭素微粒子の吸油量は、330ml/100g以下であることが好ましく、170ml/100g以下であることがより好ましく、100ml/100g以下であることが更に好ましい。
なお、炭素微粒子が均一に分散していることは、先に述べたHgポロシメトリー解析により把握できる。具体的には、Hgポロシメトリーから求められる、炭素微粒子を黒鉛粒子に添着させることによる200nm以下の微細孔体積増加率が50%以上となることが好ましい。100%以上であることがより好ましく、200%以上であることが更に好ましい。
Hgポロシメトリーによる測定方法は、前述の方法を用いることができる。また、上記微細孔体積増加率の測定は、炭素材の製造において、炭素微粒子を含有して製造した炭素材、及び炭素微粒子を含有せず製造した炭素材の200nm以下の微細孔体積を測定し、その増加率を計算すればよい。
【0027】
本発明の炭素材を製造するために使用する「黒鉛粒子(原料)」は、以下の物性を示すものが好ましい。また、本発明の炭素材中の黒鉛粒子は特に制限がなければ、黒鉛粒子(原料)と同様の物性を示すものとする。
黒鉛粒子の結晶性(黒鉛化度)は比較的に高い炭素粒子であればその種類や物性は特に限定されないが、具体的にはX線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が、0.335nm以上0.340nm未満の炭素粒子を意味するものとする。また、d002値は0.338nm以下であることが好ましく、0.337nm以下であることがより好ましく、0.336nm以下であることが更に好ましい。
「黒鉛粒子(原料)」の形状は特に限定されず、粒状、球状、鎖状、針状、繊維状、板状、鱗片状等の何れであってもよいが、充填性の観点から特に球状(球状化黒鉛)であることが好ましい(球状化については後述する。)。
【0028】
「黒鉛粒子(原料)」の体積基準平均粒径(D50)も特に限定されないが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。
「黒鉛粒子(原料)」のBET比表面積も特に限定されないが、通常1m2/g以上、好ましくは1.5m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、更に好ましくは3m2/g以上、特に好ましくは4.5m2/g以上であり、最も好ましくは5.1m2/g以上である。また、通常は20m2/g以下、好ましくは15m2/g以下、より好ましくは10m2/g以下の範囲である。
【0029】
「黒鉛粒子(原料)」のタップ密度も特に限定されないが、通常0.1g/cm3以上、好ましくは0.5g/cm3以上、より好ましくは0.7g/cm3以上であり、通常2g/cm3以下、好ましくは1.8g/cm3以下、より好ましくは1.6g/cm3以下である。
「黒鉛粒子(原料)」の、下記式1で表されるラマンR値も特に限定されないが、0.35以上1以下であることが好ましい。
式1
ラマンR値=(ラマンスペクトル分析における1360cm-1付近のピークPBの強度IB)/(1580cm-1付近のピークPAの強度IA)
また、ラマンR値は、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.45以上であり、特に好ましくは0.48以上であり、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下である。
【0030】
「黒鉛粒子(原料)」の種類も特に限定されず、天然黒鉛、人造黒鉛の何れであってもよい。天然黒鉛としては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の何れであってもよいが、不純物の少ない黒鉛が好ましく、必要に応じて公知の精製処理を施して用いることが好ましい。人造黒鉛としては、コールタールピッチ、石炭系重質油、常圧残油、石油系重質油、芳香族炭化水素、窒素含有環状化合物、硫黄含有環状化合物、ポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、天然高分子、ポリフェニレンサイルファイド、ポリフェニレンオキシド、フルフリルアルコール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の有機物を、通常2500℃以上、通常3200℃以下の範囲の温度で焼成し、黒鉛化したものが挙げられる。この際、珪素含有化合物やホウ素含有化合物などを黒鉛化触媒として用いることもできる。
【0031】
「黒鉛粒子(原料)」の形状として球状であることが好ましいことを前述したが、黒鉛粒子を球状化する方法として、周知の技術を用いて球形化処理を施すことで球形化された黒鉛粒子を製造することができる。例えば、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置を用いて行うことが挙げられる。具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有し、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された炭素材に対して衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、表面処理を行なう装置が好ましい。また、黒鉛粒子を循環させることによって機械的作用を繰り返して与える機構を有するものであるのが好ましい。具体的な装置としては、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロン(アーステクニカ社製)、CFミル(宇部興産社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)等が挙げられる。これらの中で、奈良機械製作所社製のハイブリダイゼーションシステムが好ましい。例えば前述の装置を用いて処理する場合は、回転するローターの周速度を通常、
特に制限はないが、30~100m/秒にするのが好ましく、40~100m/秒にするのがより好ましく、50~100m/秒にするのが更に好ましい。また、処理は、単に炭素質物を通過させるだけでも可能であるが、30秒以上装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、1分以上装置内を循環又は滞留させて処理するのがより好ましい。
【0032】
本発明の炭素材を製造するために使用する「1次粒子径3nm以上500nm以下の炭素微粒子(原料)(以下、「炭素微粒子(原料)」と略す場合がある。)」は、1次粒径が3nm以上500nm以下であればその他の物性や種類は特に限定されないが、1次粒径は、好ましくは3nm以上、より好ましくは15nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下、特に好ましくは70nm以下、最も好ましくは30nm以下である。なお、炭素微粒子の1次粒子径は、SEM等の電子顕微鏡観察やレーザー回折式粒度分布計などによって測定することができる。
【0033】
「炭素微粒子(原料)」の形状は特に限定されず、粒状、球状、鎖状、針状、繊維状、板状、鱗片状等の何れであってもよい。
「炭素微粒子(原料)」のBET比表面積も特に限定されないが、通常1m2/g以上、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは30m2/g以上であり、通常は1000m2/g以下、好ましくは500m2/g以下、より好ましくは120m2/g以下、更に好ましくは100m2/g以下、特に好ましくは70m2/g以下の範囲である。
【0034】
「炭素微粒子(原料)」の嵩密度も特に限定されないが、通常0.01g/cm3以上、好ましくは0.1g/cm3以上、より好ましくは0.15g/cm3以上であり、更に好ましくは0.17g/cm3以上であり、通常1g/cm3以下、好ましくは0.8g/cm3以下、より好ましくは0.6g/cm3以下である。
「炭素微粒子(原料)」のタップ密度も特に限定されないが、通常0.1g/cm3以上、好ましくは0.15g/cm3以上、より好ましくは0.2g/cm3以上であり、通常2g/cm3以下、好ましくは1g/cm3以下、より好ましくは0.8g/cm3以下である。
【0035】
「炭素微粒子(原料)」のDBP吸油量は、先に述べたとおり、低いことが好ましい。炭素微粒子の吸油量は、330ml/100g以下であることが好ましく、170ml/100g以下であることがより好ましく、100ml/100g以下であることが更に好ましい。下限値は特段限定されないが、通常10ml/100g以上、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは60ml/100g以上である。
「炭素微粒子(原料)」の種類も特に限定されないが、石炭微粉、気相炭素粉、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバー等が挙げられる。この中でもカーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックであると、低温下においても入出力特性が高くなり、同時に安価・簡便に入手が可能という利点がある。
【0036】
本発明の炭素材は、非晶質炭素を含有することが好ましい。非晶質炭素を用いる場合、炭素材を製造するために使用する非晶質炭素前駆体(非晶質炭素の原料)は、特に限定されないが、コールタールピッチ、乾留液化油等の石炭系重質油;常圧残油、減圧残油等の直留系重質油;原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール等の分解系重質油等の石油系重質油;アセナフチレン、デカシクレン、アントラセン等の芳香族炭化水素;フェナジンやアクリジン等の窒素含有環状化合物;チオフェン等の硫黄含有環状化合物;アダマンタン等の脂肪族環状化合物;ビフェニル、テルフェニル等のポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール等のポリビニルエステル類、ポリビニルアルコール等の熱可塑性高分子等の有機物が挙げられる。
【0037】
「黒鉛粒子」と「炭素微粒子」を混合する場合の「黒鉛粒子」と「炭素微粒子」の混合比率は、目的とする複合粒子の組成に基づいて適宜選択されるべきものであるが、「黒鉛粒子」100質量部に対して、「炭素微粒子」は、通常0.01質量部、好ましくは0.1質量部、より好ましくは0.15質量部であり、通常20質量部、好ましくは10質量部、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2.9質量部以下である。上記範囲であると、電池の充放電効率および放電容量などリチウムイオン二次電池に求められる諸特性を満足しつつ、低温下においても入出力特性が高くなる利点がある。
【0038】
「黒鉛粒子」と「炭素微粒子」の混合粉体に非晶質炭素前駆体を混合する場合の非晶質炭素前駆体の混合比率は、目的とする複合粒子の組成に基づいて適宜選択されるべきものであるが、「黒鉛粒子」100質量部に対して、非晶質炭素前駆体はその残炭物として、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、更に好ましくは1質量部以上であり、通常60質量部、好ましくは30質量部、より好ましくは20質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以下であり、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲であると、電池の充放電効率、放電容量、および低温下における入出力特性が高くなる利点がある。
【0039】
「黒鉛粒子」と「炭素微粒子」の混合粉体に、非晶質炭素前駆体を混合し、不活性ガス中で熱処理する場合、熱処理条件は特に限定されないが、熱処理温度は、通常600℃以上、好ましくは800℃以上、より好ましくは900℃以上、更に好ましくは1000℃以上、通常2600℃以下、好ましくは2200℃以下、より好ましくは1800℃以下、更に好ましくは1500℃以下である。また、熱処理時間は、非晶質炭素前駆体が非晶質炭素化するまで行えばよく、通常10分~24時間である。上記範囲内であると、前述したラマンR(90/10)値の条件を満たし易く、非水系電解液二次電池の負極活物質として用いた場合に、非水系電解液二次電池の低温時における入出力特性を大幅に改善することができる。なお、不活性ガスとしては窒素、アルゴンが挙げられる。
【0040】
「黒鉛粒子」と「炭素微粒子」を混合する装置として解砕混合機を採用する場合、具体的な装置は特に限定されず、市販されているものを適宜採用することができるが、例えばロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。また、解砕混合条件も特に限定されないが、解砕羽根(チョッパー)の回転数は、通常100rpm以上、好ましくは1000rpm以上、より好ましくは2000rpm以上であり、通常100000rpm以下、好ましくは30000rpm以下、好ましくは10000rpm以下である。さらに解砕混合時間は、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上であり、通常24時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下である。上記範囲内であると、「黒鉛粒子」や「炭素微粒子」の凝集を効果的に防止することができる。
【0041】
本発明の炭素材を製造するために、前述の製造方法によって得られた複合粒子について、別途粉砕処理を行ってもよい。
粉砕処理に使用する粗粉砕機としては、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コ-ンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
この中でも、ボールミル、振動ミル等が、粉砕時間が短く、処理速度の観点から好ましい。
【0042】
粉砕速度は、装置の種類、大きさによって適宜設定するものであるが、例えば、ボールミルの場合、通常50rpm以上、好ましい100rpm以上、より好ましくは150rpm以上、更に好ましくは200rpm以上である。また、通常2500rpm以下、好
ましくは2300rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。速度が速すぎると、粒径の制御が難しくなる傾向があり、速度が遅すぎると処理速度が遅くなる傾向がある。
粉砕時間は、通常30秒以上、好ましい1分以上、より好ましくは1分30秒以上、更に好ましくは2分以上である。また、通常3時間以下、好ましくは2.5時間以下、より好ましくは2時間以下である。粉砕時間が短すぎると粒径制御が難しくなる傾向があり、粉砕時間が長すぎると、生産性が低下する傾向がある。
【0043】
振動ミルの場合、粉砕速度は、通常50rpm以上、好ましい100rpm以上、より好ましくは150rpm以上、更に好ましくは200rpm以上である。また、通常2500rpm以下、好ましくは2300rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。速度が速すぎると、粒径の制御が難しくなる傾向があり、速度が遅すぎると処理速度が遅くなる傾向がある。
粉砕時間は、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは1分30秒以上、更に好ましくは2分以上である。また、通常3時間以下、好ましくは2.5時間以下、より好ましくは2時間以下である。粉砕時間が短すぎると粒径制御が難しくなる傾向があり、粉砕時間が長すぎると、生産性が低下する傾向がある。
【0044】
本発明の炭素材を製造するために、前述の製造方法によって得られた複合粒子について、粒径の分級処理を行ってもよい。
分級処理条件としては、目開きが、通常53μm以下、好ましくは45μm以下、より好ましくは38μm以下である。
分級処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、乾式篩い分けの場合:回転式篩い、動揺式篩い、旋動式篩い、振動式篩い等を用いることができ、乾式気流式分級の場合:重力式分級機、慣性力式分級機、遠心力式分級機(クラシファイア、サイクロン等)等を用いることができ、湿式篩い分けの場合:機械的湿式分級機、水力分級機、沈降分級機、遠心式湿式分級機等を用いることができる。
【0045】
2.非水系電解液二次電池用負極
前述した本発明の炭素材は、負極活物質として優れた機能を発揮する材料であり、本発明の炭素材を負極活物質として用いた非水系電解液二次電池用負極もまた本発明の一態様である(以下、「本発明の負極」と略す場合がある。)。なお、負極とは、集電体と集電体上に形成された負極活物質とを備えた状態にあるものを意味するものとする。本発明の負極を用いることによって、低温下においても入出力特性に優れる非水系電解液二次電池を提供することができ、負極として極めて有用である。
【0046】
<負極の構成と作製法>
本発明の負極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、本発明の炭素材に、結着剤、溶媒、必要に応じて増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
また、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、本発明の炭素材を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法も用いてもよい。
【0047】
(結着剤)
本発明の炭素材を結着する結着剤(バインダー)としては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリル酸、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレン
ゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0048】
本発明の炭素材に対する結着剤(バインダー)の割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、0.6質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対する結着剤の割合が、上記範囲を上回ると、結着剤量が電池容量に寄与しない結着剤割合が増加して、電池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
【0049】
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対する結着剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常6質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がさらに好ましい。また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
【0050】
(溶媒)
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒としては、水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒としてはN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0051】
(増粘剤)
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては特に限定されないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0052】
さらに増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量
%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
【0053】
(導電剤)
導電剤は、充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ-ボンブラック類、炭素繊維、気相成長炭素繊維(VGCF)、金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、銅等の金属粉末類等を単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、アセチレンブラック、VGCFが特に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、負極活物質に対して、1~30質量%が好ましく、特に1~15質量%が好ましい。
【0054】
(集電体)
本発明の炭素材を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
【0055】
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、さらに好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは30μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがあるためである。
【0056】
(集電体と負極活物質層との厚さの比)
集電体と負極活物質層の厚さの比は特に制限されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上がさらに好ましく、1以上が特に好ましい。集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
【0057】
(空隙率)
負極の空隙率は、特に限定されないが、通常10%以上、好ましくは20%以上、また通常50%以下、好ましくは40%以下である。負極の空隙率がこの範囲を下回ると、負極中の気孔が少なく電解液が浸透し難くなり、好ましい電池特性を得難い場合もある。一方、この範囲を上回ると、負極中の気孔が多く負極強度が弱くなりすぎて、好ましい電池特性を得難い場合もある。負極の空隙率は、負極の水銀ポロシメータによる細孔分布測定によって得られる全細孔容積を、集電体を除いた負極活物質層の見掛け体積で割った値の百分率を用いる。
【0058】
(ピール強度)
本発明の負極活物質表面には微細流路を形成する微小突起が存在することから、粒子間接着点数が増大し、負極のピール強度が向上する。本発明の炭素材を用いた負極は、集電体と負極活物質層との引き剥がし強度(ピール強度)は、通常1mN/mm以上、好ましくは5mN/mm以上、より好ましくは6mN/mm以上、更に好ましくは10mN/mm以上であり、通常100mN/mm以下である。上記範囲であると、負極製造時に負極活物質層が集電体から剥離することを抑制することで歩留まりが向上できるという利点がある。
なお、ピール強度は、以下の方法により測定した値を用いている。負極シートを幅20mmに切断し、試験用SUS板に両面テープで貼付(活物質層側を両面テープ面で貼付)して、水平方向に固定し、負極シートの端部を万能試験機の挟持部に挟んだ。この状態で万能試験機の負極シート固定部分を垂直方向に下降させ、負極シートを両面テープから90度の角度で引っ張ることにより剥離した。この際に、負極シートと両面テープの間に掛かった荷重の平均値を測定し、負極シートサンプル幅(20mm)で割った値をピール強度値(mN/mm)として用いている。
【0059】
3.非水系電解液二次電池
本発明の負極は、非水系電解液二次電池用負極として有用であることを前述したが、本発明の負極を用いた非水系電解液二次電池もまた本発明の一態様である(以下、「本発明の非水系電解液二次電池」と略す場合がある。)。なお、本発明の非水系電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様であり、通常、金属イオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解液を備える。負極としては、前述した本発明の負極を用いる。
【0060】
<正極の構成と作製法>
正極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、正極活物質に、結着剤、溶媒、導電材、増粘剤等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることにより形成する方法も用いてもよい。
【0061】
(正極活物質)
以下に正極に使用される正極活物質(リチウム遷移金属系化合物)について述べる。リチウム遷移金属系化合物とは、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な構造を有する化合物であり、例えば、硫化物やリン酸塩化合物、リチウム遷移金属複合酸化物などが挙げられる。硫化物としては、TiS2やMoS2などの二次元層状構造をもつ化合物や、一般式MexMo6S8(MeはPb,Ag,Cuをはじめとする各種遷移金属)で表される強固な三次元骨格構造を有するシュブレル化合物などが挙げられる。リン酸塩化合物としては、オリビン構造に属するものが挙げられ、一般的にはLiMePO4(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)で表され、具体的にはLiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4などが挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、三次元的拡散が可能なスピネル構造や、リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造に属するものが挙げられる。スピネル構造を有するものは、一般的にLiMe2O4(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表され、具体的にはLiMn2O4、LiCoMnO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCoVO4などが挙げられる。層状構造を有するものは、一般的にLiMeO2(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表される。具体的にはLiCoO2、LiNiO2、LiNi1-xCoxO2、LiNi1-x-yCoxMnyO2、LiNi0.5Mn0.5O2、Li1.2Cr0.4Mn0.4O2、Li1.2Cr0.4Ti0.4O2、LiMnO2などが挙げられる。
【0062】
また、リチウム含有遷移金属化合物は、例えば、下記組成式(A)または(B)で示さ
れるリチウム遷移金属系化合物であることが挙げられる。
1)下記組成式(A)で示されるリチウム遷移金属系化合物である場合
Li1+xMO2 ・・・(A)
ただし、xは通常0以上、0.5以下である。Mは、Ni及びMn、或いは、Ni、Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモル比は通常0.1以上、5以下である。Ni/Mモル比は通常0以上、0.5以下である。Co/Mモル比は通常0以上、0.5以下である。なお、xで表されるLiのリッチ分は、遷移金属サイトMに置換している場合もある。
【0063】
なお、上記組成式(A)においては、酸素量の原子比は便宜上2と記載しているが、多少の不定比性があってもよい。また、上記組成式中のxは、リチウム遷移金属系化合物の製造段階での仕込み組成である。通常、市場に出回る電池は、電池を組み立てた後に、エージングを行っている。そのため、充放電に伴い、正極のLi量は欠損している場合がある。その場合、組成分析上、3Vまで放電した場合のxが-0.65以上、1以下に測定されることがある。
また、リチウム遷移金属系化合物は、正極活物質の結晶性を高めるために酸素含有ガス雰囲気下で高温焼成を行って焼成されたものが電池特性に優れる。
さらに、組成式(A)で示されるリチウム遷移金属系化合物は、以下一般式(A’)のとおり、213層と呼ばれるLi2MO3との固溶体であってもよい。
αLi2MO3・(1-α)LiM’O2・・・(A’)
一般式中、αは、0<α<1を満たす数である。Mは、平均酸化数が4+である少なくとも一種の金属元素であり、具体的には、Mn、Zr、Ti、Ru、Re及びPtからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素である。M’は、平均酸化数が3+である少なくとも一種の金属元素であり、好ましくは、V、Mn、Fe、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素であり、より好ましくは、Mn、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素である。
【0064】
2)下記一般式(B)で表されるリチウム遷移金属系化合物である場合
Li[LiaMbMn2-b-a]O4
+δ・・・(B)
ただし、Mは、Ni、Cr、Fe、Co、Cu、Zr、AlおよびMgから選ばれる遷移金属のうちの少なくとも1種から構成される元素である。
bの値は通常0.4以上、0.6以下である。bの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位重量当たりのエネルギー密度が高い。また、aの値は通常0以上、0.3以下である。また、上記組成式中のaは、リチウム遷移金属系化合物の製造段階での仕込み組成である。通常、市場に出回る電池は、電池を組み立てた後に、エージングを行っている。そのため、充放電に伴い、正極のLi量は欠損している場合がある。その場合、組成分析上、3Vまで放電した場合のaが-0.65以上、1以下に測定されることがある。aの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位重量当たりのエネルギー密度を大きく損なわず、かつ、良好な負荷特性が得られる。さらに、δの値は通常±0.5の範囲である。δの値がこの範囲であれば、結晶構造としての安定性が高く、このリチウム遷移金属系化合物を用いて作製した電極を有する電池のサイクル特性や高温保存が良好である。
【0065】
ここでリチウム遷移金属系化合物の組成であるリチウムニッケルマンガン系複合酸化物におけるリチウム組成の化学的な意味について、以下により詳細に説明する。上記リチウム遷移金属系化合物の組成式のa、bを求めるには、各遷移金属とリチウムを誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)で分析して、Li/Ni/Mnの比を求める事で計算される。構造的視点では、aに係るリチウムは、同じ遷移金属サイトに置換されて入っていると考えられる。ここで、aに係るリチウムによって、電荷中性の原理によりMとマンガンの平均価数が3.5価より大きくなる。また、上記リチウム遷移金属系化合
物は、フッ素置換されていてもよく、LiMn2O4‐xF2xと表記される。
【0066】
上記の組成のリチウム遷移金属系化合物の具体例としては、例えば、Li1+xNi0.5Mn0.5O2、Li1+xNi0.85Co0.10Al0.05O2、Li1+xNi0.33Mn0.33Co0.33O2、Li1+xNi0.45Mn0.45Co0.1O2、Li1+xMn1.8Al0.2O4、Li1+xMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。これらのリチウム遷移金属系化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0067】
また、リチウム遷移金属系化合物は、異元素が導入されてもよい。異元素としては、B,Na,Mg,Al,K,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Sr,Y,Zr,Nb,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sb,Te,Ba,Ta,Mo,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Pb,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Bi,N,F,S,Cl,Br,I,As,Ge,P,Pb,Sb,SiおよびSnの何れか1種以上の中から選択される。これらの異元素は、リチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれていてもよく、あるいは、リチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれず、その粒子表面や結晶粒界などに単体もしくは化合物として偏在していてもよい。
【0068】
正極活物質層中のリチウム遷移金属系化合物粉体の含有割合は、通常10重量%以上、99.9重量%以下である。正極活物質層中のリチウム遷移金属系化合物粉体の割合が多すぎると正極の強度が不足する傾向にあり、少なすぎると容量の面で不十分となることがある。
【0069】
(結着剤)
正極活物質層の製造に用いる結着剤(バインダー)としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して安定な材料であればよいが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよい、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0070】
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1重量%以上、80重量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう可能性がある一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる可能性がある。
【0071】
(溶媒)
スラリーを形成するための液体媒体としては、リチウム遷移金属系化合物粉体、結着剤、並びに必要に応じて使用される導電材及び増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒
であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。水系溶媒の例としては水、アルコールなどが挙げられ、有機系溶媒の例としてはN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等を挙げることができる。特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよい、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0072】
(導電材)
正極活物質層には、通常、導電性を高めるために導電材を含有させる。その種類に特に制限はないが、具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料や、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料などを挙げることができる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよい、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。正極活物質層中の導電材の割合は、通常0.01重量%以上、50重量%以下である。導電材の割合が低すぎると導電性が不十分になることがあり、逆に高すぎると電池容量が低下することがある。
【0073】
(集電体)
正極集電体の材質としては、通常、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が用いられる。また、形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
正極集電体として薄膜を使用する場合、その厚さは任意であるが、通常1μm以上、100mm以下の範囲が好適である。上記範囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が不足する可能性がある一方で、上記範囲よりも厚いと、取り扱い性が損なわれる可能性がある。
【0074】
正極活物質層の厚さは、通常10~200μm程度である。正極のレス後の電極密度としては、通常、2.2g/cm3以上、4.2g/cm3以下である。なお、塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
【0075】
<非水電解質>
非水電解質としては、例えば公知の非水系電解液、高分子固体電解質、ゲル状電解質、無機固体電解質等を用いることができるが、中でも非水系電解液が好ましい。非水系電解液は、非水系溶媒に溶質(電解質)を溶解させて構成される。
【0076】
(電解質)
非水系電解液に用いられる電解質には制限はなく、電解質として用いられる公知のものを任意に採用して含有させることができる。本発明の非水系電解液を非水系電解液二次電池に用いる場合には、電解質はリチウム塩が好ましい。電解質の具体例としては、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサ
ラト)フォスフェート、フルオロスルホン酸リチウム等が挙げられる。これらの電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0077】
リチウム塩の電解液中の濃度は任意であるが、通常0.5mol/L以上、好ましくは0.6mol/L以上、より好ましくは0.8mol/L以上、また、通常3mol/L以下、好ましくは2mol/L以下、より好ましくは1.5mol/L以下の範囲である。リチウムの総モル濃度が上記範囲内にあることにより、電解液の電気伝導率が十分となり、一方、粘度上昇による電気伝導度の低下、電池性能の低下を防ぐことができる。
【0078】
(非水系溶媒)
非水系電解液が含有する非水系溶媒は、電池として使用した際に、電池特性に対して悪影響を及ぼさない溶媒であれば特に制限されないが、通常使用される非水系溶媒の例としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステル、γ-ブチロラクトン等の環状カルボン酸エステル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等の鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル等のニトリル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル、エチレンサルファイト、1,3-プロパンスルトン、メタンスルホン酸メチル、スルホラン、ジメチルスルホン等の含硫黄化合物等が挙げられ、これら化合物は、水素原子が一部ハロゲン原子で置換されていてもよい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上の化合物を併用することが好ましい。例えば、環状カーボネートや環状カルボン酸エステル等の高誘電率溶媒と、鎖状カーボネートや鎖状カルボン酸エステル等の低粘度溶媒とを併用するのが好ましい。
【0079】
ここで、高誘電率溶媒とは、25℃における比誘電率が20以上の化合物を意味する。高誘電率溶媒の中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び、それらの水素原子をハロゲン等の他の元素又はアルキル基等で置換した化合物が、電解液中に含まれることが好ましい。高誘電率溶媒の電解液に占める割合は、好ましくは15重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、最も好ましくは25重量%以上である。高誘電率溶媒の含有量が上記範囲よりも少ないと、所望の電池特性が得られない場合がある。
【0080】
(助剤)
非水系電解液には、上述の電解質、非水系溶媒以外に、目的に応じて適宜助剤を配合してもよい。負極表面に皮膜を形成するため、電池の寿命を向上させる効果を有する助剤としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート等の不飽和環状カーボネート、フルオロエチレンカーボネート等のフッ素原子を有する環状カーボネート、4-フルオロビニレンカーボネート等のフッ素化不飽和環状カーボネート等が挙げられる。電池が過充電等の状態になった際に電池の破裂・発火を効果的に抑制する過充電防止剤として、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、ジフェニルエーテル、t-ブチルベンゼン、t-ペンチルベンゼン、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート等の芳香族化合物等が挙げられる。サイクル特性や低温放電特性を向上させる助剤として、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート等のリチウム塩等が挙げられる。高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる助剤として、エチレンサルファイト、プロパンスルトン、プロペンスルトン等の含硫黄化合物、無水コハク酸、無水マレイン酸、
無水シトラコン酸等のカルボン酸無水物、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル等のニトリル化合物が挙げられる。これら助剤の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
【0081】
非水系電解液は、電解液中に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状または、ゴム状、或いは固体シート状の固体電解質としてもよい。この場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピークロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω-メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω-メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート-co-メチルメタクリレート)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
【0082】
<セパレータ>
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
【0083】
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0084】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0085】
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がさらに好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
【0086】
さらに、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上がさらに好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下がさらに好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
【0087】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
【0088】
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アル
ミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
【0089】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着材を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着材として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0090】
セパレータの非電解液二次電池における特性を、ガーレ値で把握することができる。ガーレ値とは、フィルム厚さ方向の空気の通り抜け難さを示し、100mlの空気が該フィルムを通過するのに必要な秒数で表されるため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚さ方向の連通性がよいことを意味し、その数値が大きい方がフィルムの厚さ方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは、フィルム厚さ方向の孔のつながり度合いである。本発明のセパレータのガーレ値が低ければ、様々な用途に使用することが出来る。例えば非水系リチウム二次電池のセパレータとして使用した場合、ガーレ値が低いということは、リチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。セパレータのガーレ値は、任意ではあるが、好ましくは10~1000秒/100mlであり、より好ましくは15~800秒/100mlであり、更に好ましくは20~500秒/100mlである。ガーレ値が1000秒/100ml以下であれば、実質的には電気抵抗が低く、セパレータとしては好ましい。
【0091】
<電池設計>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
【0092】
電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0093】
<外装ケース>
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0094】
金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合
には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0095】
<保護素子>
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0096】
<外装体>
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【実施例】
【0097】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0098】
<実施例1>
(非水系電解液二次電池用負極の調製)
体積基準平均粒径(D50)が10.6μm、BET比表面積(SA)が8.8m2/g、タップ密度が0.89g/cm3の黒鉛粒子に、一次粒子径が40nm、BET比表面積(SA)が62m2/g、DBP吸油量が338ml/100gのカーボンブラックを、黒鉛粒子100質量部に対して3質量部添加し、チョッパーによるカーボンブラック凝集体の解砕機構とシャベルの回転による粉体の混合攪拌機構を有する回転式ミキサーにより、チョッパー回転数3000rpmで20分攪拌した。その混合粉体と非晶質炭素前駆体としてナフサ熱分解時に得られる石油系重質油を混合し、不活性ガス中で1100℃熱処理を施した後、焼成物を粉砕・分級処理することにより、黒鉛粒子の表面にカーボンブラック微粒子と非晶質炭素とが添着された複層構造炭素材を得た。
焼成収率から、得られた複層構造炭素材は、黒鉛100質量部に対して3質量部の非晶質炭素で被覆されていることが確認された。
このサンプルについて、前記測定法で体積基準平均粒径(D50)、BET比表面積、タップ密度、ラマンR値、ラマンR(90/10)値、合計細孔体積(≦200nm)を測定・算出した。結果を表1に示す。
【0099】
<負極シートの作製>
前述の実施例で調製した複層構造炭素材を負極活物質として用い、活物質層密度1.60±0.03g/cm3の活物質層を有する極板を作製した。具体的には、負極材料20.00±0.02gに、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を20.00±0.02g(固形分換算で0.200g)、及び重量平均分子量27万のスチレン・ブタジエンゴム水性ディスパージョン0.50±0.05g(固形分換算で0.2g)を加えて、キーエンス製ハイブリッドミキサーで5分間撹拌し、30秒脱泡してスラリーを得た。
このスラリーを、集電体である厚さ18μmの銅箔上に、負極材が14.5±0.3m
g/cm2付着するように、ドクターブレードを用いて幅5cmに塗布し、室温で風乾を行った。更に110℃で30分乾燥後、直径20cmのローラを用いてロールプレスして、活物質層の密度が1.60±0.03g/cm3になるよう調整し電極シートを得た。
【0100】
<ピール強度>
上記方法で作製した負極シートを幅20mmに切断し、試験用SUS板に両面テープで貼付(活物質層側を両面テープ面で貼付)して、水平方向に固定し、負極シートの端部を万能試験機の挟持部に挟んだ。この状態で万能試験機の負極シート固定部分を垂直方向に下降させ、負極シートを両面テープから90度の角度で引っ張ることにより剥離した。この際に、負極シートと両面テープの間に掛かった荷重の平均値を測定し、負極シートサンプル幅(20mm)で割った値をピール強度値(mN/mm)とした。
【0101】
<正極シートの作製>
正極は、正極活物質としてのニッケル-マンガンーコバルト酸リチウム(LiNiMnCoO2)90質量%と、導電材としてのアセチレンブラック7質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量%とを、N-メチルピロリドン溶媒中で混合してスラリーを得た。
このスラリーを、集電体である厚さ15μmのアルミニウム箔上に正極材が25.6±0.5mg/cm2付着するように、ブレードコーターを用いて塗布し、130℃で乾燥した。更にロールプレスを行い、正極密度が2.60±0.05g/cm3になるよう調整し電極シートを得た。
【0102】
<リチウムイオン二次電池(2016コイン型電池)の作製>
上記方法で作製した負極シートを直径12.5mmの円盤状に打ち抜き、リチウム金属箔を直径14mmの円板状に打ち抜き対極とした。両極の間には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(体積比=3:7)に、LiPF6を1mol/Lになるように溶解させた電解液を含浸させたセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、2016コイン型電池をそれぞれ作製した。
【0103】
<初期不可逆容量、放電容量、初期効率>
上記リチウムイオン二次電池(2016コイン型電池)を用いて、下記の測定方法で電池充放電時の初期不可逆容量・放電容量を測定した。
0.16mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して5mVまで充電し、更に、5mVの一定電圧で充電容量値が350mAh/gになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.33mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行なった。引き続き2、3回目は、同電流密度でcc-cv充電にて10mV、0.005Ccutにて充電し、放電は、全ての回で0.04Cで1.5Vまで放電した。
この計3サイクルの充電容量と放電容量との差の和を初期不可逆容量として算出した。また、3サイクル目の放電容量を本材料の放電容量、3サイクル目の放電容量/(3サイクル目の放電容量+初期不可逆容量)を初期効率とした。
【0104】
<非水電解液二次電池(ラミネート型電池)の作製法>
上記方法で作製した正極シートと負極シート、及びポリエチレン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素を筒状のアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(体積比=3:3:4)に、LiPF6を1mol/Lになるように溶解させた電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。更に、電極間の密着性を高めるために、ガラス板でシート状電池を挟んで加圧した。
【0105】
<低温回生特性>
上記非水電解液二次電池の作製法により作製したラミネート型非水電解液二次電池を用いて、下記の測定方法で低温回生特性を測定した。
充放電サイクルを経ていない非水電解液二次電池に対して、25℃で電圧範囲4.1V~3.0V、電流値0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)にて3サイクル、電圧範囲4.2V~3.0V、電流値0.2Cにて(充電時には4.2Vにて定電圧充電をさらに2.5時間実施)2サイクル、初期充放電を行った。
さらに、SOC50%まで電流値0.2Cで充電を行った後、-30℃の低温環境下で、1/8C、1/4C、1/2C、1.5C、2.5C、3.5C、5Cの各電流値で10秒間定電流充電させ、各々の条件の充電における2秒後の電池電圧の降下を測定し、それらの測定値から充電上限電圧を4.2Vとした際に、2秒間に流すことのできる電流値Iを算出し、4.2×I(W)という式で計算される値をそれぞれの電池の低温回生特性とし、後述の比較例1の低温回生値を100としたときの電池の低温回生比で示した。
初期効率、放電容量、ピール強度、低温回生特性を測定した結果を表2に示す。
【0106】
<実施例2>
カーボンブラックの添加量を黒鉛粒子100質量部に対して2.5質量部添加した点を変えた以外は、実施例1と同様の方法でサンプルを得て、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0107】
<比較例1>
カーボンブラックを添加しない以外は実施例1と同様の方法でサンプルを得て、同様の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0108】
<比較例2>
前記黒鉛粒子に、黒鉛粒子100質量部に対して3質量部の前記カーボンブラックと、残炭見合いで黒鉛100質量部に対して3質量部の非晶質炭素で被覆されるように量を調節した前記石油系重質油を同時に混合・攪拌した。得られた混合物を、不活性ガス中で1100℃熱処理を施した後、焼成物を粉砕・分級処理することにより、黒鉛粒子の表面にカーボンブラック微粒子と非晶質炭素とが添着された複層構造炭素材を得た。
このサンプルについて、前記測定法で体積基準平均粒径(D50)、タップ密度、BET比表面積、ラマンR値、ラマンR(90/10)値、合計細孔体積(≦200nm)を測定・算出した。結果を表1に示す。
また、上記複層構造炭素材を用いた以外は実施例1と同様の方法でサンプルを得て、同様の評価を行った。初期効率、放電容量、ピール強度、低温回生特性を測定した結果を表2に示す。
【0109】
<実施例3>
体積基準平均粒径(D50)が23.9μm、BET比表面積(SA)が4.9m2/g、タップ密度が1.00g/cm3の黒鉛粒子に、一次粒子径が40nm、BET比表面積(SA)が62m2/g、DBP吸油量が338ml/100gのカーボンブラックを、黒鉛粒子100質量部に対して2質量部添加し、ファイバーミキサー(Panasonic社製MX-X48)により、高速モード(回転数:約11000rpm)で20分攪拌した。その混合粉体と非晶質炭素前駆体としてナフサ熱分解時に得られる石油系重質油を混合し、不活性ガス中で1300℃熱処理を施した後、焼成物を粉砕・分級処理することにより、黒鉛粒子の表面にカーボンブラック微粒子と非晶質炭素とが添着された複層構造炭素材を得た。
焼成収率から、得られた複層構造炭素材は、黒鉛100質量部に対して3質量部の非晶質炭素で被覆されていることが確認された。
このサンプルについて、前記測定法で体積基準平均粒径(D50)、BET比表面積、タップ密度、ラマンR値、ラマンR(90/10)値、合計細孔体積(≦200nm)を測定・算出した。結果を表1に示す。また、前記測定法で、低温回生特性を測定した。結果を表2に示す。なお、低温回生特性は、後述の比較例3の低温回生値を100としたときの電池の低温回生比で示した。
【0110】
<実施例4>
一次粒子径が50nm、BET比表面積(SA)が50m2/g、DBP吸油量が175ml/100gのカーボンブラックを用いた以外は、実施例3と同様の方法でサンプルを得て、実施例3と同様の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0111】
<実施例5>
一次粒子径が75nm、BET比表面積(SA)が30m2/g、DBP吸油量が86ml/100gのカーボンブラックを用いた以外は、実施例3と同様の方法でサンプルを得て、実施例3と同様の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0112】
<実施例6>
一次粒子径が24nm、BET比表面積(SA)が115m2/g、DBP吸油量が110ml/100gのカーボンブラックを用いた以外は、実施例3と同様の方法でサンプルを得て、実施例3と同様の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0113】
<実施例7>
一次粒子径が24nm、BET比表面積(SA)が110m2/g、DBP吸油量が78ml/100gのカーボンブラックを用いた以外は、実施例3と同様の方法でサンプルを得て、実施例3と同様の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0114】
<比較例3>
カーボンブラックを添加しない以外は実施例3と同様の方法でサンプルを得て、実施例3と同様の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0115】
<実施例8>
体積基準平均粒径(D50)が16.1μm、BET比表面積(SA)が6.8m2/g、タップ密度が1.02g/cm3の黒鉛粒子に、一次粒子径が24nm、BET比表面積(SA)が115m2/g、DBP吸油量が110ml/100gのカーボンブラックを、黒鉛粒子100質量部に対して2質量部添加し、事前撹拌無しで、その混合粉体と非晶質炭素前駆体としてナフサ熱分解時に得られる石油系重質油を混合し、不活性ガス中で1300℃熱処理を施した後、焼成物を粉砕・分級処理することにより、黒鉛粒子の表面にカーボンブラック微粒子と非晶質炭素とが添着された複層構造炭素材を得た。
焼成収率から、得られた複層構造炭素材は、黒鉛100質量部に対して3質量部の非晶質炭素で被覆されていることが確認された。
このサンプルについて、前記測定法で体積基準平均粒径(D50)、BET比表面積、タップ密度、ラマンR値、ラマンR(90/10)値を測定・算出した。結果を表1に示す。また、前記測定法で、ピール強度、低温回生特性を測定した。結果を表2に示す。なお、低温回生特性は、後述の比較例4の低温回生値を100としたときの電池の低温回生比で示した。
【0116】
<実施例9>
黒鉛粒子にカーボンブラックを、黒鉛粒子100質量部に対して2質量部添加し、チョッパーによるカーボンブラック凝集体の解砕機構とシャベルの回転による粉体の混合攪拌機構を有する回転式ミキサーにより、チョッパー回転数3000rpmで5分攪拌した以
外は、実施例8と同様の方法でサンプルを得て、実施例8と同様の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0117】
<実施例10>
黒鉛粒子にカーボンブラックを、黒鉛粒子100質量部に対して2質量部添加し、チョッパーによるカーボンブラック凝集体の解砕機構とシャベルの回転による粉体の混合攪拌機構を有する回転式ミキサーにより、チョッパー回転数3000rpmで20分攪拌した以外は、実施例8と同様の方法でサンプルを得て、実施例8と同様の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0118】
<比較例4>
カーボンブラックを添加しない以外は実施例8と同様の方法でサンプルを得て、実施例8と同様の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0119】
【0120】
【0121】
表2から明らかなように、本発明の炭素材は負極とした際のピール強度に優れ、さらにリチウムイオン二次電池の負極活物質として利用することにより、低温回生特性が大幅に改善される。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の炭素材を用いることにより、低温下においても入出力特性に優れる非水系電解液二次電池を実現することができるため、大型の高入出力特性が必要とされ、低温下でも使用される自動車用の二次電池の分野において好適に利用可能である。