(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】がんを予防または治療する効果を奏する新規な菌株
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20220808BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220808BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220808BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220808BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220808BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220808BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220808BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220808BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20220808BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220808BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20220808BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20220808BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20220808BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20220808BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20220808BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20220808BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20220808BHJP
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A61K 31/675 20060101ALI20220808BHJP
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A23K 10/16 20160101ALI20220808BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220808BHJP
【FI】
C12N1/20 E ZNA
A23L33/135
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K35/744
A61K39/395 N
A61K33/24
A61K31/704
A61K31/337
A61K31/513
A61K31/7068
A61K31/475
A61K31/7048
A61K31/519
A61K31/675
A61K31/282
A61K35/745
A23K10/16
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2021513739
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 KR2019005518
(87)【国際公開番号】W WO2019216649
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0054195
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0133030
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 13684BP
(73)【特許権者】
【識別番号】520077986
【氏名又は名称】ゲノム アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】パク ハンソ
(72)【発明者】
【氏名】パク シニョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ウン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ジェ-ソン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヘ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム ウォンダック
(72)【発明者】
【氏名】チュン ジュ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン アルム
(72)【発明者】
【氏名】フー ヨン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジニョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム サン ギュン
(72)【発明者】
【氏名】イ スロ
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-135681(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107603921(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0020685(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - 7/08
A23L 33/135
A61K 35/00 - 35/768
A23K 10/16
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株(KCTC13684BP)。
【請求項2】
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株(KCTC13684BP)を含む、がんの予防または治療のための薬学組成物。
【請求項3】
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株(KCTC13684BP)を含み、前記ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株が抗がん及び免疫増進効果を示すことを特徴とする、がんの予防または治療のための薬学組成物。
【請求項4】
前記がんは、黒色腫、扁平細胞癌腫、乳がん、頭頚部がん、甲状腺がん、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、脳腫瘍、血管肉腫、肥滿細胞腫、白血病、リンパ腫、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、胃がん、腎臓がん、大腸がん、造血器腫瘍、神経芽細胞腫、類表皮癌腫及びその転移がんからなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする、請求項2に記載のがんの予防または治療のための薬学組成物。
【請求項5】
前記ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株が、ガングリオシドGM3(Ganglioside GM3)を増加させることを特徴とする、請求項2に記載のがんの予防または治療のための薬学組成物。
【請求項6】
前記ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株が、IFN-γの生成を増加させることを特徴とする、請求項3に記載のがんの予防または治療のための薬学組成物。
【請求項7】
前記ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株が、IL-15またはIL-7の発現を増加させることを特徴とする、請求項3に記載のがんの予防または治療のための薬学組成物。
【請求項8】
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株(KCTC13684BP)を含み、化学抗がん剤または免疫抗がん剤をさらに含むことを特徴とする、がんの予防または治療のための薬学組成物。
【請求項9】
前記化学抗がん剤は、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、ペメトレキセド(Pemetrexed)、シスプラチン(Cisplatin)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、カルボプラチン(Carboplatin)、フルオロウラシル(5-FU)、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、パクリタキセル(Paclitaxel)、ビンクリスチン(Vincristine)、エトポシド(Etoposide)及びドキソルビシン(Doxorubicin)からなる群からいずれか一種以上が選ばれることを特徴とする、請求項8に記載のがんの予防または治療のための薬学組成物。
【請求項10】
前記免疫抗がん剤は、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA、抗Tim3及び抗LAG3からなる群からいずれか一種以上が選ばれることを特徴とする、請求項8に記載のがんの予防または治療のための薬学組成物。
【請求項11】
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株と化学抗がん剤または免疫抗がん剤は、単一の剤形として同時に投与されるか、あるいは、別個の剤形として同時または逐次に投与されることを特徴とする、請求項8に記載のがんの予防または治療のための薬学組成物。
【請求項12】
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株(KCTC13684BP)を含む、がんの予防または改善のための食品組成物。
【請求項13】
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株(KCTC13684BP)を含む、がんの予防または改善のための動物用の飼料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんを予防または治療する上で優れた効果を奏する新規なビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731(Bifidobacterium bifidum MG731)菌株及びラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株に関する。
【0002】
具体的に、本発明の新規なビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、がん細胞の増殖を抑える効果を奏するだけではなく、がん細胞の移動性を低下させ、血管新生に関与する遺伝子の発現を調節する効果をも併せ持つことにより、従来のビフィドバクテリウム・ビフィダム菌株に比べて格段に優れた効果を奏する。のみならず、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、抗炎症、抗酸化及び免疫増強効果を奏する。
【0003】
また、本発明の新規なラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、がん細胞そのものの増殖を抑える効果を奏するだけではなく、免疫活性を増進させて従来のラクトコッカス・ラクティス菌株に比べて格段に優れた効果を奏する。具体的に、本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、腸内定着過程において抗がん効能を有する代謝産物を分泌することで優れた抗がん効果を奏する。
【背景技術】
【0004】
人体の腸は、多種多様な細菌の共生により、飲食物の消化による栄養素を吸収し、かつ、体内の不要な物質を対外に排出する重要な機能を有する。また、腸内細菌による環境の変化は、腸の免疫にも直接的につながり、これは、結果的に、体内免疫力にも影響を及ぼす。このような腸内の健康に有益であると言われている微生物への研究がこの数年間にわたって次から次へと行われてきており、これに伴い、乳酸菌の腸機能、免疫力及び体内代謝活動への関与に関する研究結果が全世界的に盛んに発表されている。生きている微生物体といわれるプロバイオティックス(probiotics)は、消化器官内の不釣り合いを改善し、有害菌を抑える他、自然防御効果を強化させて体内免疫反応を向上させる機能をする。これまで、腸の免疫機能の向上のためのプロバイオティックスの機能に対する研究は、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)などを用いて種(species)と属(genus)の分類学的な形態に応じて行われてきた。
【0005】
乳酸菌に対する研究は、1900年代にメチニコフ(Mechnikov)が乳酸菌による寿命延長効果を発表したことをきっかけに始まり、1946年にストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)とセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescen)を、骨肉腫(Osteosarcoma)患者を対象として腫瘍内に直接的に注入したときに一部の患者に腫瘍の治療反応が現れることに基づいて、乳酸菌による抗がん治療に対する研究が本格的に行われ、多くの前臨床研究がこれまでも盛んに行われている。
【0006】
2016年にEl-Nezami研究チームは、L.rhamnosus GG,E.coli Nissle 1917及び熱処理を施したVSL#3を一定の割合にて混ぜ合わせてマウス同種腫瘍モデルに経口投与したとき、抗がん剤であるシスプラチン(Cisplatin)に比べて血管新生過程の抑制による抗がん効果が発揮されることを判明させた。なお、抗がん剤を投与したグループは、抗がん剤の毒性によるマウスの体重減少が現れたのに対し、プロバイオティックスを投与したグループではマウスの体重減少が現れないことを立証することにより、プロバイオティックスが抗がん治療剤としての機能を有し得ることを立証した。但し、前記研究において用いられたプロバイオティックスは、複数種の複合微生物が含有されているものであり、微生物の一つ一つへの機能的な研究については、未だ十分に行われていないのが現状である。
【0007】
がん(癌)は、通常の細胞とは異なり、細胞の増殖能力が無限であり、その増殖速度もまた速い他、がん細胞を囲んでいる血管、リンパ管及び繊維芽細胞などを用いて腫瘍微細環境を形成して、他の組織への転移及び通常の細胞の機能の喪失などを引き起こすことにより死に至らせる恐ろしい疾病の一つである。
【0008】
このようながんを治療すべく、全世界の研究員らががん細胞の細胞内信号機序及び転移、薬物の副作用などに関する様々な主題について数多くの研究を行っており、毎年新薬が開発されて大勢のがん患者に治療効果を期待させる臨床試験が行われている。
【0009】
手術による腫瘍組織の除去と放射線治療の他に、抗がん治療に用いられている現在の抗がん剤は、各がん種に応じて異ならせて適用している。一般に、がん患者に処方されている化学抗がん剤は、がん細胞を標的とするものではないため、がん細胞を殺す効果を有してはいるものの、正常細胞にも影響を及ぼして患者に脱毛、下痢、発熱、免疫力の低下などの副作用が生じている。その後、がんに関する遺伝的な研究などに基づいて、各がん種において生じる遺伝変異をターゲットとする標的抗がん剤が開発されて従来の化学抗がん剤により生じる副作用は大幅に改善されたものの、環境への適応が非常に早いがん細胞が標的抗がん剤の攻撃から逃げるために抗がん剤耐性を引き起こしてしまい、その結果、標的抗がん剤による持続的ながん治療効果を100%期待することができないという不具合がある。
【0010】
最近には、抗がん剤と腫瘍微細環境に対する研究が盛んに行われており、これに伴い、抗がん効果は保ちながらも、患者の免疫力を調節する様々な免疫関門抑制剤に対する免疫抗がん剤が開発されて患者に治療剤として用いられている。中でも、PD-1/PD-L1に対する治療は、皮膚がん、肺がんなどの患者に高い治療反応を示すことが知られている。このような免疫抗がん剤は、腫瘍微細環境下において免疫細胞の機能を調節することにより、がん細胞の増殖の抑制及び免疫細胞の活性を高める機能を有している。しかしながら、免疫抗がん剤もまた、すべての患者に同じ抗がん効果を示すことはできず、免疫抗がん剤に対するバイオマーカー(biomarker)がはっきりと判明しておらず、JAK-STAT遺伝子変異による抗がん剤耐性が生じたり、抗体合成物の特性による自己免疫疾患を招いたりする虞があり、高価な治療費用が生じるなどの不具合が存在する。
【0011】
これらの研究結果に基づいて、本発明者らは、実質的にがん患者に治療効果の改善を示し得る微生物に対する研究を行っており、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731(Bifidobacterium bifidum MG731)菌株とラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株のそれぞれががん細胞の増殖の抑制などに優れた効果を示すことを見出すことにより、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、抗がん及び抗炎症効果を示すプロバイオティックスまたはそのエキスを新規な抗がん剤、炎症性疾患治療剤または免疫疾患治療剤などの開発に活用するためのものである。
【0013】
従って、本発明の一つの目的は、優れたがんの予防または治療効果を奏するビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731(Bifidobacterium bifidum MG731)菌株を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731(Bifidobacterium bifidum MG731)菌株を含むがんの予防または治療のための薬学組成物を提供することである。
【0015】
また、本発明は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731(Bifidobacterium bifidum MG731)菌株を含むがんの予防または改善するための食品組成物または動物用の飼料組成物を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、優れたがんの予防または治療効果を奏する新規なラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株を提供することを目的とする。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株を含むがんの予防または治療のための薬学組成物を提供することである。
【0018】
さらにまた、本発明は、ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株を含むがんの予防または改善するための食品組成物または動物用の飼料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記諸目的を達成するために、本発明は、新規なビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731(Bifidobacterium bifidum MG731)菌株を提供する。前記菌株は、2018年1月4日付けで韓国生命工学研究院生物資源センターに受託番号KCTC13452BPとして寄託された。
【0020】
また、本発明は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株を含むがんの予防または治療のための薬学組成物を提供する。具体的に、前記ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、菌株そのもの、菌株の培養液、または菌株を破砕して得られた細胞質分画物(Cytoplasmic fraction)を含むものを意味することができる。
【0021】
本発明は、有効量のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731(Bifidobacterium bifidum MG731)菌株をがんの予防または治療を必要とする対象体(subject)に投与することを含む、前記対象体においてがんを予防または治療する方法を提供する。本発明における「対象体」には、ヒト及び非ヒト動物が含まれる。非ヒト動物には、哺乳類、非哺乳類などのあらゆる脊椎動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ウマなどが含まれる。なお、本発明は、がんの予防または治療のためのビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731(Bifidobacterium bifidum MG731)菌株の用途を提供する。
【0022】
特に、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、抗がん、抗炎症、抗酸化及び免疫増進効果をいずれも示すことを特徴とする。
【0023】
本発明において、がんは、黒色腫、扁平細胞癌腫、乳がん、頭頚部がん、甲状腺がん、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、脳腫瘍、血管肉腫、肥滿細胞腫、白血病、リンパ腫、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、胃がん、腎臓がん、大腸がん、造血器腫瘍、神経芽細胞腫、類表皮癌腫またはその転移がんであってもよく、これに制限されない。好ましくは、本発明において、がんは、肺がん、大腸がん、胃がん、乳がんまたは肝臓がんであってもよい。
【0024】
本発明において、炎症性疾患は、骨関節炎、関節リウマチ、痛風、強直性脊椎炎、腱炎、腱膜炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛、乾癬性関節炎、喘息、アトピー、クローン病または潰瘍性大腸炎であってもよく、これに制限されない。
【0025】
本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、がん細胞の増殖を阻害し、がん細胞の移動性を低下させることにより、抗がん効果を示すことができる。また、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、血管増殖因子であるVEGF(Vascular endothelial growth factor)、Ang1(Angiopoietin1)、Ang2(Angiopoietin2)の発現を抑えることにより、抗がん効果を示すことができる。
【0026】
また、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株がTNF-αの発現を抑えることにより、抗炎症または抗がん効果を示すことができる。TNF-αは、人体内感染、外傷、敗血症、関節リウマチなどのような慢性または急性の炎症反応時に免疫細胞から分泌されるサイトカインであり、TNF-αの濃度が高くなると、細胞内脂質及び糖代謝過程に損傷を与えてしまう。TNF-αは、細胞の壊死を誘導するサイトカインであることが知られているが、持続的なTNF-αの刺激が細胞に伝わると、むしろ細胞内代謝に及ぼした影響により腫瘍形成遺伝子が発生し、細胞の異常な増殖が生じることにより、がんの誘発を促してしまうという研究結果が報告されている。
【0027】
本発明は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株、及び化学抗がん剤または免疫抗がん剤を含むことを特徴とする、がんの予防または治療のための薬学組成物に関する。また、本発明は、有効量のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株を化学抗がん剤または免疫抗がん剤と併用して、がんの予防または治療を必要とする対象体に投与することを含む、前記対象体においてがんを予防または治療する方法を提供する。
【0028】
前記化学抗がん剤は、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、ペメトレキセド(Pemetrexed)、シスプラチン(Cisplatin)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、カルボプラチン(Carboplatin)、フルオロウラシル(5-FU)、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、パクリタキセル(Paclitaxel)、ビンクリスチン(Vincristine)、エトポシド(Etoposide)、ドキソルビシン(Doxorubicin)であってもよいが、これに制限されない。
【0029】
さらに、前記免疫抗がん剤は、免疫関門抑制機能を有する抗PD1、抗PDL1、抗CTLA、抗Tim3、抗LAG3であってもよいが、これに制限されない。
【0030】
本発明において、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株、及び化学抗がん剤または免疫抗がん剤は、逐次または同時に、これを必要とする患者に投与されてもよい。
【0031】
さらにまた、本発明は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731(Bifidobacterium bifidum MG731)菌株を含むがんの予防または改善のための食品組成物または動物用の飼料組成物に関する。
【0032】
前記食品組成物は、保健機能食品、乳製品、発酵製品または食品添加物であってもよく、これに制限されない。
【0033】
本発明は、新規なラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株を提供する。前記ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、2018年10月25日付けで韓国生命工学研究院生物資源センターに受託番号KCTC13684BPとして寄託された。
【0034】
また、本発明は、ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株を含むがんの予防または治療のための薬学組成物を提供する。具体的に、前記ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株は、菌株そのもの、菌株の培養液、または菌株を破砕して得た細胞質分画物(Cytoplasmic fraction)を含んでいてもよい。
【0035】
本発明は、有効量のラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株をがんの予防または治療を必要とする対象体(subject)に投与することを含む、前記対象体においてがんを予防または治療する方法を提供する。なお、本発明は、がんの予防または治療のためのラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株の用途を提供する。
【0036】
特に、本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、抗がん効果及び免疫増進効果を両方とも示すことを特徴とする。
【0037】
前記がんは、黒色腫、扁平細胞癌腫、乳がん、頭頚部がん、甲状腺がん、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、脳腫瘍、血管肉腫、肥滿細胞腫、白血病、リンパ腫、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、胃がん、腎臓がん、大腸がん、造血器腫瘍、神経芽細胞腫、類表皮癌腫またはその転移がんであってもよく、これに制限されない。
【0038】
本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、がん細胞の増殖を直接的に阻害し、免疫細胞を活性化させることにより、抗がん効果を示すことができる。なお、本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、腸内への定着に伴い、代謝産物を調節することにより、抗がん効果を示すことができる。
【0039】
具体的に、本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、ガングリオシドGM3(Ganglioside GM3;monosialodihexosylganglioside)を増加させることができる。ガングリオシドGM3は、下記の一般式Iの構造を有する化合物であって、[(2S,4S,5R)-2-{[(2S,3R,4S,5S,6R)-2-{[(2R,3S,4R,5R,6R)-6-{[(2S,3R)-2-docosanamido-3-hydroxyoctadecyl]oxy}-4,5-dihydroxy-2-(hydroxymethyl)oxan-3-yl]oxy}-3,5-dihydroxy-6-(hydroxymethyl)oxan-4-yl]oxy}-5-acetamido-4-hydroxy-6-[(1R,2R)-1,2,3-trihydroxypropyl]oxane-2-carboxylic acid]である。
【0040】
【0041】
スフィンゴ糖脂質(Glycosphingolipids)の一つであるガングリオシドGM3は、細胞膜の構成成分であり、VEGF(Vascular endothelial growth factor)を抑えることにより、血管新生を防ぎ、リンパ球のアラキドン酸カスケード(Arachidonic acid cascade)を調節することにより、免疫作用の調節を通じて抗がん効能を示すことが知られている。さらに、ガングリオシドGM3は、シスプラチン(Cisplatin)を処理した場合、がん細胞においてアポトーシス(apoptosis)をさらに増加させることが知られている。
【0042】
従って、本発明は、前記ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株がガングリオシドGM3を増加させることを特徴とする、がんの予防または治療のための薬学組成物に関する。
【0043】
また、本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、メモリーT細胞の活性に伴うIFN-γの生成を増加させ、T細胞の活性化を引き起こすIL-15とIL-7の発現を増加させることにより、抗がん及び免疫増強効果を示すことができる。
【0044】
従って、本発明は、前記ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株がIFN-γの生成を増加させることを特徴とする、がんの予防または治療のための薬学組成物に関する。
【0045】
さらに、本発明は、前記ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株がIL-15またはIL-7の発現を増加させることを特徴とする、がんの予防または治療のための薬学組成物に関する。
【0046】
本発明は、ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株、及び化学抗がん剤または免疫抗がん剤を含むことを特徴とする、がんの予防または治療のための薬学組成物に関する。また、本発明は、有効量のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株を化学抗がん剤または免疫抗がん剤と併用して、がんの予防または治療を必要とする対象体に投与することを含む、前記対象体においてがんを予防または治療する方法を提供する。
【0047】
前記化学抗がん剤は、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、ペメトレキセド(Pemetrexed)、シスプラチン(Cisplatin)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、カルボプラチン(Carboplatin)、フルオロウラシル(5-FU)、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、パクリタキセル(Paclitaxel)、ビンクリスチン(Vincristine)、エトポシド(Etoposide)、ドキソルビシン(Doxorubicin)などであってもよいが、これに制限されない。
【0048】
さらにまた、前記免疫抗がん剤は、免疫関門の抑制機能を有する抗PD1、抗PDL1、抗CTLA、抗Tim3、抗LAG3免疫抗がん剤であってもよいが、これに制限されない。
【0049】
本発明において、ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株、及び化学抗がん剤または免疫抗がん剤は、逐次または同時に、これを必要とする患者に投与されてもよい。
【0050】
また、本発明は、ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)菌株を含むがんの予防または改善のための食品組成物または動物用の飼料組成物に関する。
【0051】
前記食品組成物は、保健機能食品、乳製品、発酵製品または食品添加物であってもよく、これに制限されない。
【発明の効果】
【0052】
本発明の新規なビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、様々ながん細胞株に対して増殖抑制効果を奏する。また、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、がん細胞の移動性を減少させ、血管新生を抑える効果もまた併せ持つことにより、従来知られている他のビフィドバクテリウム・ビフィダムに比べて格段に優れた効果を奏する。
【0053】
また、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、抗炎症、抗酸化または免疫増強効果を奏することにより、炎症疾患または免疫疾患にも用いられ得る。
【0054】
特に、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、単独で投与したときに優れた抗がん効果を示すだけではなく、化学抗がん剤または免疫抗がん剤と併用して投与したときに、これらを単独で投与したときに比べて格段に優れた抗がん効果を奏する。
【0055】
本発明の新規なラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、様々ながん細胞株に対して増殖を抑える効果を奏するだけではなく、免疫活性を示して、従来のラクトコッカス・ラクティス菌株に比べて格段に優れた効果を奏する。
【0056】
特に、本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、単独で投与したときに優れた抗がん効果を示すだけではなく、化学抗がん剤または免疫抗がん剤と併用して投与したときに、これらを単独で投与したときに比べて格段に優れた抗がん効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】ヒト由来のがん細胞株において、MG731の処理に伴う細胞増殖の抑制をグラフで示す図である。
【
図2A】MG731によるがん細胞株の移動性低下を示す結果である。
【
図2B】MG731によるがん細胞株の移動性低下を示す結果である。
【
図3】MG731が血管新生に関わる因子であるVEGFの発現を阻害したことを示す図である。
【
図4A】VEGF以外の血管新生に関わる因子であるAng1、Ang2の発現を阻害したMG731の効能を確認した結果である。
【
図4B】VEGF以外の血管新生に関わる因子であるAng1、Ang2の発現を阻害したMG731の効能を確認した結果である。
【
図5】MG731がLPSによる炎症反応誘発因子のうち、TNF-αの発現を阻害したことを示す図である。
【
図6】MG731の濃度別の処理に伴う活性酸素種の減少を示す図である。
【
図7】化学抗がん剤(Oxaliplatin、Pemetrexed)とMG731の併用処理に伴うがん細胞の増殖抑制効果を示す結果である。
【
図8】図
7において染色された細胞を脱染色化し、がん細胞の増殖抑制効果を数値化して示す図である。
【
図9】ヒトの血液とがん細胞株を用いたMG731と免疫抗がん剤(抗PD1、抗PD-L1、抗CTLA4)の併用処理に伴うがん細胞死滅の効能を示す図である。
【
図10】マウス同種移植モデルを用いた化学抗がん剤(Oxaliplatin)とMG731の併用投与に伴う腫瘍の増殖抑制効果を示す図である。
【
図11】マウス同種移植モデルを用いた免疫抗がん剤(抗PD1)とMG731の併用投与に伴う腫瘍の増殖抑制効果を示す図である。
【
図12】化学抗がん剤(Oxaliplatin)とMG731の併用投与に伴う、マウス同種移植モデルの腫瘍組織内に浸透した免疫細胞の分布を分析した図である。
【
図13】免疫抗がん剤(抗PD1)とMG731の併用投与に伴う、マウス同種移植モデルの腫瘍組織内に浸透した免疫細胞の分布を分析した図である。
【
図14】GEN3033菌株による免疫活性のバイオマーカーでIFN-γの生成の増加効果を確認した図である。
【
図15】マウス腫瘍モデルにGEN3033菌株を投与して腫瘍の増殖抑制効果を確認した図である。
【
図16】GEN3033菌株を投与したマウス腫瘍モデルの大腸と腫瘍組織におけるIL-15の発現を測定した結果である。
【
図17】GEN3033菌株を投与したマウス腫瘍モデルの大腸と腫瘍組織におけるIL-7の発現を測定した図である。
【
図18】マウス大腸がんモデルにGEN3033菌株を投与した場合、免疫抗がん剤(抗PD1)を投与した場合及びこれらを併用投与した場合における腫瘍の増殖抑制効果を示す図である。
【
図19】GEN3033菌株と免疫抗がん剤(抗PD1)を単独投与、またはこれらを併用投与したマウスの血清における代謝産物を分析した結果を示す図である。
【
図20】GEN3033菌株と免疫抗がん剤(抗PD1)を単独投与、またはこれらを併用投与したマウスの血清における代謝産物を分析した結果を示す図である。
【
図21】GEN3033菌株と免疫抗がん剤(抗PD1)を単独投与、またはこれらを併用投与したマウスの血清における代謝産物を分析した結果を示す図である。
【
図22】マウス肺がんモデルへの免疫抗がん剤(抗PD1)とGEN3033の併用投与に伴う腫瘍の増殖抑制効果を示す図である。
【
図23】がん細胞株に対するGEN3033菌株と化学抗がん剤(Cisplatin、Oxaliplatin、5-Fu、Cyclophosphamide、Paclitaxel)の併用処理に伴うがん細胞の死滅効能を示す図である。
【
図24】がん細胞株に対するGEN3033菌株と化学抗がん剤(Cisplatin、Oxaliplatin、5-Fu、Cyclophosphamide、Paclitaxel)の併用処理に伴うがん細胞の死滅効能を示す図である。
【
図25】がん細胞株に対するGEN3033菌株と化学抗がん剤(Cisplatin、Oxaliplatin、5-Fu、Cyclophosphamide、Paclitaxel)の併用処理に伴うがん細胞の死滅効能を示す図である。
【
図26】がん細胞株に対するGEN3033菌株と化学抗がん剤(Cisplatin、Oxaliplatin、5-Fu、Cyclophosphamide、Paclitaxel)の併用処理に伴うがん細胞の死滅効能を示す図である。
【
図27】がん細胞株に対するGEN3033菌株と化学抗がん剤(Cisplatin、Oxaliplatin、5-Fu、Cyclophosphamide、Paclitaxel)の併用処理に伴うがん細胞の死滅効能を示す図である。
【
図28】マウスの血液とがん細胞株とを用いた、GEN3033菌株と免疫抗がん剤(抗PDL1)のがん細胞の死滅効能を示す図である。
【
図29】ヒトの血液とがん細胞株を用いた、GEN3033と免疫抗がん剤(抗PD1、抗PD-L1、抗CTLA4)の併用処理に伴うがん細胞の死滅効能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明者らは、優れた抗がん治療または予防効果を有するプロバイオティックスを探るために研究した結果、新規なビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株及びラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株が優れた抗がん効果を奏することを見出して本発明を完成するに至った。
【0059】
驚くべきことに、MG731菌株は、肺がん、大腸がん、胃がん、乳がん及び肝臓がんなどの様々ながん細胞株に対して優れたがん細胞の増殖抑制効果を奏する。
【0060】
また、がん細胞株にMG731菌株を処理した場合、がん細胞の移動性が格段に低下する。がん細胞は、正常細胞とは異なり、たとえ細胞に損傷が生じたとしても、増殖しながら移動するという特徴があり、がん細胞の移動性が減少することは、がん転移の可能性が低くなることを意味するため、MG731菌株は、がん転移の抑制効果を奏する。
【0061】
さらに、MG731菌株は、血管の生成に関わる主な因子であるVEGF(Vascular endothelial growth factor)、Ang1(Angiopoietin1)及びAng2(Angiopoietin2)の発現をいずれも抑えることができる。血管新生は、がん細胞の特徴の一つであり、これを抑えて血管を介したがん細胞への栄養分の供給を阻害することにより、がん細胞の増殖を抑えることができる。
【0062】
炎症性疾患においてはっきりと現れる様相の一つは、活性酸素種(Reactive oxygen species;ROS)の増加である。中間ほどの活性酸素種の濃度は、細胞信号伝達系統の調節により効果を発揮するが、実際に高い濃度の活性酸素種に長時間晒されると、タンパク質、脂質及び核酸に非特異的な損傷を招いてしまう。活性酸素種は、タンパク質リン酸化、イオンチャンネル及び転写因子の酸化還元調節などといった正常的な生理的過程において重要な役割を果たし、甲状腺ホルモンの生成及び細胞外基質の架橋結合をはじめとする生合成過程にも主な機能を有している。なお、ほとんどのがん細胞においてもこのような活性酸素種が高い活性を有することにより、異常な細胞の増殖を引き起こすことが広く知られている。従って、本発明のMG731菌株は、活性酸素種を減少させてがん細胞の増殖を抑え、色々な疾病の発病を予防する効果を奏する。
【0063】
また、本発明のMG731菌株が腫瘍細胞の増殖を抑える機能を有する細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T cells(CD8+ effector T cells))及びNK細胞(Natural killer cells)を腫瘍組織内にさらに多く浸透するように誘導し、細胞傷害性T細胞の機能を阻害する制御性T細胞(T regulatory cells)の数を減らすことにより、免疫細胞の機能を調節し、優れた抗がん効果を示す。
【0064】
様々ながん細胞株にMG731菌株、及び公知の化学抗がん剤または免疫抗がん剤をそれぞれ別々に処理したり併用処理したりする場合、MG731が処理されたがん細胞株は、抗がん剤が処理されたがん細胞株よりも優れた細胞の増殖抑制効果を有し、MG731及び抗がん剤と併用処理されたがん細胞株は、MG731または抗がん剤のみが処理されたがん細胞株よりも優れた細胞の増殖抑制効果を有することから、MG731は、従来の抗がん剤と併用投与したときにさらに高い抗がん効果を有する。
【0065】
従って、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、がん細胞の増殖抑制、がん細胞の移動性の低下及び血管新生の抑制効果を同時に示して優れた抗がん剤として活用されることが可能であり、従来の化学抗がん剤または免疫抗がん剤と併用投与されてもよい。
【0066】
本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株は、前記化学抗がん剤または免疫抗がん剤と単一の製剤として同時に投与され得るか、あるいは、別個の製剤として同時または逐次に投与されてもよい。
【0067】
また、炎症誘発因子であるLPSにより誘導されたTNF-αの発現を各段に減少させて、MG731菌株は、炎症性疾患及びがんを同時に予防または治療することができる。
【0068】
本発明は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株を体内に投与してがん、炎症性疾患、免疫疾患などを予防または治療する方法を提供する。
【0069】
本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株を含む組成物は、医薬品、保健機能食品、乳製品、発酵製品、食品添加物または動物用の飼料などに使用可能である。
【0070】
さらに、本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、様々ながん細胞株に対して優れた増殖抑制効果を奏する。
【0071】
本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株を処理した場合、がん細胞の増殖が直接的に低下し、メモリーT細胞の活性に伴うIFN-γの生成が増加し、T細胞の活性化を引き起こすIL-15とIL-7の発現が増加することにより、抗がん及び免疫増強効果が奏される。
【0072】
さらにまた、本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、腸内への定着に伴い代謝産物を調節することにより、抗がん効果を示す。特に、ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、VEGFを抑えることにより、血管新生を防ぎ、リンパ球のアラキドン酸カスケードを調節することにより、免疫作用の調節によって抗がん効能を示すと知られているガングリオシドGM3を増加させて優れた抗がん効果を示すことができる。また、ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、マクロファージ(Macrophages)を活性化させて免疫反応を調節するホスファチジルイノシトール(Phosphatidylinositol;PI)18:1及び20:4を増加させる。さらに、GEN3033の単独投与または免疫抗がん剤の単独投与で、細胞膜の損傷と炎症反応を示すマーカーとして知られているアラキドノイルチオホスホリルコリン(Arachidonoylthiophosphorylcholine)及びPC16:0/22:6には影響を及ぼさないが、GEN3033及び免疫抗がん剤を併用投与したときにアラキドノイルチオホスホリルコリン及びPC16:0/22:6を増加させて抗がん効能を示す。
【0073】
様々ながん細胞株にGEN3033菌株、及び公知の化学抗がん剤または免疫抗がん剤をそれぞれ別々に処理したり併用処理したりする場合、GEN3033が抗がん剤と併用処理されたがん細胞株は、GEN3033または抗がん剤のみが処理されたがん細胞株よりもなお一層優れた細胞の増殖抑制効果を奏することから、GEN3033は、従来の抗がん剤と併用投与したときにさらに高い抗がん効果を示す。
【0074】
従って、本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、がん細胞の増殖抑制効果と免疫増進効果を同時に示して、優れた抗がん剤として活用されることが可能になり、従来の化学抗がん剤または免疫抗がん剤と併用投与されてもよい。
【0075】
本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株は、前記化学抗がん剤または免疫抗がん剤と単一の製剤として同時に投与されてもよく、あるいは、別個の製剤として同時または逐次に投与されてもよい。
【0076】
本発明は、ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株を体内に投与してがん、炎症性疾患、免疫疾患などを予防または治療する方法を提供する。
【0077】
本発明のラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株を含む組成物は、医薬品、保健機能食品、乳製品、発酵製品、食品添加物または動物用の飼料などに使用可能である。
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0079】
[実施例2]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731の分離及び培養
MG731は、健康な乳児の糞便からビフィドバクテリウム種(spp.)に対する選択培地を用いて菌株を分離した。
【0080】
寄せ集めた糞便試料を0.85%NaClに10倍段階希釈して50mg/Lのリチウムムピロシン(Lithium mupirocin)を添加したTOS-propionate agar(MerckK GaA,Darmstadt,Germany)に塗抹し、37℃の温度で48時間かけて嫌気培養した後、コロニー(colony)の形状が互いに異なる菌株を選び抜いた。選び抜かれた菌株は、BLブロス(broth)において継代培養した後、20%のグリセロールが含有されているBLブロスにおいて-80℃で凍結保管した。
【0081】
得られた菌株に対するrRNAの塩基配列を分析して配列番号1に示し、これを同定したところ、MG731は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)であることを確認した。前記MG731菌株は、2018年1月4日付けで韓国生命工学研究院生物資源センターに受託番号KCTC13452BPとして寄託された。
【0082】
この実験において用いようとするビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731をMRSブロス(Difco,USA)に接種し、37℃及び嫌気性の条件下で培養しながら乳酸菌の増殖がOD=1となるときに培養を終了した。培養終了した培養物は、遠心分離によって菌体を回収し、回収された菌体はPBSで洗浄した後、PBSに懸濁して超音波粉砕方法で菌体を粉砕した。粉砕された菌体は、遠心分離によって上澄み液を得て0.42μmのフィルターを介してろ過することにより、ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731のエキスを製造した。
【0083】
[実施例3]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株の腫瘍の増殖抑制効果
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731が様々ながん細胞株において抗がん効能を示すか否かを確認するために、ヒト由来のがん細胞株を用いてMTTアッセイを行った。
【0084】
MTTアッセイに用いられたがん細胞株としては、肺がん(A549、H1975、HCC827、H1299、SW900)、大腸がん(HCT116、LoVo、SNU-C2A、SNU-C1、Colo205)、胃がん(SNU216、AGS、MKN-28、MKN-1、SNU-601、SNU-1)、乳がん(Hs578T、BT20、MDA-MB-231、MCF7)、肝臓がん(HepG2、Hep3B)であり、合計で5種類のがん種を用いて実験を行った。
【0085】
がん細胞株を96ウェルプレートに1~5×103細胞/ウェルになるように分注し、24時間後に乳酸菌試料を1%(1%=12.147μg,BCA分析によってエキスの濃度を測定する)で添加して72時間かけて培養した後、それぞれのウェルにMTT(3-(4,5-Dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide thiazolyl blue)試薬を処理して2時間かけて反応させた。
【0086】
次いで、生きている細胞のミトコンドリアに反応して黄色のMTTが紫色に変わる過程を経た。それから、MTTが入っている培養液はすべて除去し、100μlのDMSOを各ウェルに添加して紫色の濃度を、マイクロプレートリーダー(Microplate reader)装備を用いて540nmの吸光度において測定し、ヒト由来のがん細胞株に対する実験結果を図1に示す。
【0087】
[実施例4]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株のがん細胞の移動性の低下効果
がん細胞は、正常細胞とは異なり、たとえ細胞に損傷が生じたとしても、増殖しながら移動するという特徴があるため、MG731菌株によりがん細胞の移動性が低下するか否かを確認するために、創傷治癒アッセイ(Wound healing assay)を行った。A549(5×105細胞)及びHCT116(6×105細胞)菌株を6ウェルプレートに付着して細胞が90~95%増殖した状態になると、チップ(tip)を用いて一定の間隔にて細胞に損傷を加えた。PBSまたはMG731菌株を24時間かけて処理して細胞の移動性の有無を顕微鏡で観察し、その結果を図2に示す。
【0088】
図2に示すように、細胞に損傷を加えたA549(図2A)とHCT116(図2B)細胞株の0時間帯の細胞の状態を基準としたとき、24時間後に、A549は65.31±1.69%、HCT116は33.82±5.86%だけがん細胞の移動性が盛んに示されたのに対し、MG731を処理したA549とHCT116においてはそれぞれ42.59±4.01%及び22.63±3.11%であって、細胞の移動性が低下することを確認することができた。
【0089】
要するに、MG731菌株は、がん転移を抑えて、優れた抗がん効果を奏することが分かる。
【0090】
[実施例5]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株の血管新生抑制効果
がん細胞の特徴の一つである血管新生過程をMG731菌株が抑えるか否かを確認するために、血管新生に関わる因子に対する発現試験を下記のようにして行った。
【0091】
HCT116細胞株にMG731を24時間処理した後、RNAを得てcDNAを合成し、これを用いて、血管増殖因子であるVEGFの発現は通常のPCRを、Ang1とAng2の発現はリアルタイムPCRを用いて確認し、その結果を図3及び図4にそれぞれ示す。
【0092】
図3に示すように、MG731の処理群において、対照群に比べてVEGFの121アイソフォーム(isoform)及び165アイソフォームの発現が著しく減ったことを確認した。
【0093】
また、図4に示すように、VEGFの他にも、血管新生に関与する因子Ang1(図4A)及びAng2(図4B)の発現を比較したとき、Ang1とAng2の発現は、MG731の処理群において、対照群と比較したときに発現率が70%以上著しく低下したことを確認した。
【0094】
要するに、MG731が血管新生を抑えて血管を介したがん細胞への栄養分の供給を阻害することにより、異常ながん細胞の増殖抑制に優れた効果を奏することが分かる。
【0095】
[実施例6]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株の抗炎症効果
MG731菌株の抗炎症効果を確認するために、マウス大食細胞であるRAW264.7細胞にMG731菌株を18時間処理した後、炎症誘発因子であるLPS100ng/mlを6時間処理してRNAを得た。
【0096】
前記RNA1μgでcDNAを合成し、これによって、炎症因子として知られているTNF-αの発現有無を、リアルタイムPCRを用いて確認し、その結果を図5に示す。
【0097】
図5に示すように、LPSによりTNF-αの発現が増加した度合いを相対指数1としたとき、MG731を処理した群は、TNF-αの発現が増加した度合いが0.5以下であることを確認した。TNF-αは、がんを誘発する因子としても知られているため、MG731によりTNF-αの発現が著しく減ったことから、MG731が抗炎症及び抗がん機能を併せ持つことが分かる。
【0098】
[実施例7]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株の抗酸化活性効果
MG731の抗酸化活性を確認するために、A549がん細胞株にMG731を24時間処理した後、H2O2 0.5μMを4時間処理し、DCFDA蛍光染料を用いてFACs装備で細胞内の活性酸素の量を測定し、その結果を図6に示す。
【0099】
図6に示すように、PBSのみを処理した群は、4.66%の活性酸素の量を示し、H2O2のみを処理した群は64.8%であって、活性酸素が増加したことが分かる。これに対し、0.1、0.5、1%のMG731をそれぞれ処理した群は、活性酸素の量が57.8%、39.3%及び32.5%に減った。従って、MG731が活性酸素の量を減少させる効果を示し、MG731の濃度が高くなると、活性酸素を阻害する効果もまた増加することを確認した。
【0100】
要するに、前記実験結果から、MG731は抗酸化効果を奏することが分かる。すなわち、正常細胞では、活性酸素による細胞の損傷を保護する役割を果たすことができ、がん細胞では、異常な活性酸素の濃度を減少させてミトコンドリアの異常な機能を制御する役割を果たすことができる。
【0101】
[実施例8]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株と抗がん剤の併用処理に伴うがん細胞の増殖抑制効果(in vitro実験)
A549、HCT116において、MG731と抗がん剤の併用処理に伴うがん細胞の増殖抑制実験を行った。抗がん剤として、オキサリプラチンまたはペメトレキセドを用いて、下記の方法に従って実験を行った。
【0102】
前記2種類のがん細胞株を6ウェルプレートの各ウェルに1~2×103となるように希釈した後に分注して24時間かけて付着した後、乳酸菌と抗がん剤をウェルごとに処理し、2~3日おきに培地を交換しながら7日間細胞の増殖を誘導した。
【0103】
プレートを4%のホルマリンで30分間処理して細胞を固定して細胞の増殖を止めた後、2回のPBSによる洗浄過程を経てクリスタルバイオレット(Crystal violet)溶液で5分間染色した後、蒸留水で洗浄して細胞の増殖有無を観察した。その結果を図7に示す。
【0104】
図7に示すように、MG731菌株と抗がん剤を併用処理したがん細胞株において、MG731または抗がん剤のみを処理したがん細胞株よりもさらに優れた細胞の増殖抑制効果が現れることが分かる。
【0105】
また、染色された細胞のコロニーに対する数値は、酢酸でクリスタルバイオレットを溶かしてマイクロプレートリーダー機器を用いて濃度を測定し、その結果を図8に示す。図8においても、図7と同じ効果が現れることを確認した。
【0106】
[実施例9]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株と免疫抗がん剤の併用投与に伴う抗腫瘍増進効果(in vitro実験)
ヒトの血液からFicollを用いてPBMC(Peripheral blood mononuclear cells)を収集した後、赤血球溶解緩衝液(RBC lysis buffer)を用いて赤血球を除去して生きている細胞の数を数えて乳酸菌(6×105/50μl/ウェル)が入っている丸底の96ウェルプレートにウェルごとにPBMC 3×104細胞/50μlずつ添加して24時間培養した。
【0107】
結腸がん細胞株HCT116は、FBSが含まれていないRPMI培地において5μMのCFSE(Carboxyfluorescein succinimidyl ester)と混合し、37℃で5分間反応させた後、FBSを含んでいるRPMI 1640培地を添加し、10分間アイス(ice)で保管した。上澄み液を遠心分離により除去した後、得られた細胞に10%FBSが含有されているRPMI 1640と混合した後、細胞の数を数えて前記用意した96ウェルプレートのウェルごとに3×104個/100μlずつ添加した。
【0108】
次いで、がん細胞が添加されたウェルごとに各抗体PD1(Pembrolizumab,A2005,Selleckem)、PD-L1(Atezolizumab,A2004,Selleckem)、CTLA-4(Ipilimumab,A2001,Selleckem)を20~30μg/mLの濃度範囲内で処理し、24時間かけて培養した後、PBMC及びがん細胞株の混合物において溶菌された細胞を確認するために、7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD;BD Pharmingen,San Diego,CA,USA)で細胞を染色した。FACSDiVaソフトウェア(BD Biosciences)を用いてCFSE及び7-AADに対する染色を測定することにより、がん細胞株へのPBMCの細胞溶解能を確認してその結果を図9に示す。
【0109】
PBMCによるがん細胞死滅(cytotoxicity)を100%としたとき、MG731単独によるがん細胞死滅(cytotoxicity)は204.4%増加、臨床に用いられている免疫抗がん剤である抗PD1は122.4%、抗PD-L1は133.6%、抗CTLA-4は108%のがん細胞の死滅を誘発することが判明した。これに対し、前記の免疫抗がん剤とMG731を併用処理した場合、抗PD1は243.2%、抗PD-L1は221.6%、抗CTLA-4は214.4%のがん細胞の死滅を誘発することが確認された。
【0110】
要するに、単独投与したときのがん細胞の死滅効果と比較して、併用投与したときにがん細胞の死滅効果の方がはるかに優れていることが分かる。
【0111】
[実施例10]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株と抗がん剤の併用投与に伴う腫瘍の増殖抑制効果(in vivo実験)
腫瘍モデルを築くに先立ち、マウスに乳酸菌試料を2週間投与して腸内への定着力及び免疫力を高めた後、1群当たりにC57BL/6マウス8匹の右側の尻部近くに2×105 MC38がん細胞を皮下注射することにより、腫瘍誘発モデルを築いた。腫瘍細胞の注入と同時に、3週間(月曜日から土曜日にかけて)乳酸菌試料を前記動物モデルに経口投与した。投与した乳酸菌の試料は、1匹あたりにCFU1×109となるように200μlのPBSに希釈して経口投与した。抗がん剤としてオキサリプラチン(3mg/kg,Sellekchem)または抗PD1(2mg/kg,BioXCell)をがん誘発後に毎週月曜日と木曜日に腹腔注射した。
【0112】
乳酸菌のみを処理した群、オキサリプラチンまたは抗PD1のみを処理した群、及び両方とも処理した群に対して腫瘍抑制効果を観察した後、図10及び図11に示す。
【0113】
図10及び図11に示すように、MG731を単独で投与した場合の方が、オキサリプラチンまたは抗PD1を単独で投与した場合よりも腫瘍抑制効果に優れており、MG731をオキサリプラチンまたは抗PD1と併用投与した場合には、腫瘍抑制効果がさらに優れていることを確認した。
【0114】
[実施例11]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731菌株と抗がん剤の併用投与に伴う抗腫瘍免疫反応の増進効果(in vivo実験)
前記実施例10の結果を踏まえて、腫瘍内に浸透した免疫細胞の分布を確認するために、FACs実験を行うべく、次のような動物実験を行った。
【0115】
実施例10の方法と同様にして、腫瘍誘発モデルを築き、乳酸菌試料及び抗がん剤を投与した後、腫瘍と脾臓を分離してマウスの免疫細胞の分布度を確認すべく組織を破砕して免疫細胞を分離した。分離された免疫細胞は、各機能に応じた免疫細胞のマーカーに相当する蛍光抗体を用いて反応させた後、FACs装備を用いて確認した。前記実験結果は、図12と図13に示す。
【0116】
図12及び図13に示すように、MG731を投与したグループにおいて抗がん免疫反応に重要な機能を示すCD4 T細胞、CD8 T細胞、CD8エフェクター(effector)T細胞の分布が対照群であるIgGもしくはPBSに比べて1.5~2倍以上増加したことを確認し、T細胞の機能を調節する制御性T細胞の数は著しく減ったことが分かる。
【0117】
また、MG731と抗がん剤が併用投与されたグループにおいては、抗がん剤を単独で投与したグループよりもCD4 T細胞、CD8 T細胞、CD8エフェクターT細胞の分布が有意的に増加し、T細胞の機能を調節する制御性T細胞の数は有意的に減った結果から、MG731が抗がん剤と併用投与されると、抗がん剤を単独処理したときよりも抗腫瘍免疫反応がはるかに増加することが分かる。
【0118】
前記の結果から、MG731による免疫細胞機能の調節が腫瘍増殖の抑制にも影響を及ぼすことが分かる。
【0119】
[実施例12]
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株の分離及び同定
GEN3033菌株を分離するために、年齢41才の健常人の女性から糞便を供された。寄せ集めた新鮮な糞便試料約4gをPBS(Phosphate buffered saline)溶液80mlに添加してボルテックス(vortexing)した後、再懸濁(re-suspension)した。均質化されたサンプルは、同じ溶液に10倍ずつ連続して希釈し、これらの中で、10-5、10-6、10-7、10-8倍希釈されたサンプル200μlを乳酸菌選択培地であるDe Man Rogosa,Sharpe agar(MRSブロス;Difco,USA)培地に塗抹し、37℃の温度下、かつ、好気性の条件下で48時間培養した。固体培地において生成されたそれぞれのコロニーから増幅された16S rRNA遺伝子(1.5kb)を、コロニーPCR方法を用いて取得した。PCRサンプルを精製した後、シーケンシングによって得られた各16S rRNA遺伝子塩基配列をNCBI blastプログラムに代入して近縁種を探索した。
【0120】
これらの中で、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスストレイン(Lactococcus lactis subsp. lactis strain)41MoQuesilloと高い類似度を有する菌株(1448/1448 bp,100%)をGEN3033と命名し、純粋な分離のために固体培地においてコロニーの再画線培養(restreaking)作業を6回行った後、16S rRNA遺伝子塩基配列を再確認する作業を行った。選び抜かれたGEN3033菌株は、液体培養後に20%のグリセロールを添加して-80℃で凍結保管した。
【0121】
得られた菌株に対するrRNAの塩基配列を分析して配列番号2に示し、これを同定したところ、GEN3033はラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)であることを確認した。前記GEN3033菌株は、2018年10月25日付けで韓国生命工学研究院生物資源センターに受託番号KCTC13684BPとして寄託された。
【0122】
1.糖発酵特性の確認
GEN3033菌株に対してAPICHLキット(BioMetrieux Co.France)を用いて糖発酵特性を調べ、その結果を下記表1に示す。
【0123】
【0124】
2.酵素活性の確認
GEN3033菌株の生化学的特性を調べるために、APIZYMキット(BioMetrieux Co.France)を用いて酵素活性特性を調べ、その結果を下記表2に示す。
【0125】
【0126】
[実施例13]
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株の免疫細胞活性効果
GEN3033の免疫活性を確認するために、メモリーT細胞の活性に伴うIFN-γの分泌の変化を下記の方法に従って実験した。
【0127】
Ficollを用いてヒトの血液からPBMCを分離した後、赤血球溶解緩衝液(RBC lysis buffer)で赤血球を除去し、LSカラムとMACS緩衝液を用いて単球(monocytes)を分離した。GEN3033が分注された96ウェルプレートに単球を1ウェルあたりに5×103となるように入れてGEN3033が単球をマクロファージ(macrophages)に分化させるように2時間かけて反応させた。
【0128】
単球とGEN3033とが反応をする間に、MACS緩衝液とLSカラムを用いて余分のPBMC細胞からCD4及びCD8が発現されるT細胞を分離し、前記分離されたT細胞は、5×104細胞となるように100μlのRPMI培地で希釈して単球とGEN3033がある前記ウェルに分注した後、48時間かけて免疫活性が起こるように培養した。所定の時間が経った後、各ウェルの細胞培養液を1.5mlのチューブにすべて取り、上澄み液のみを分離して、IFN-γの生成度を、ELISAキットを用いて測定して、その結果を図14に示す。
【0129】
図14に示すように、単球及びT細胞しかないウェルはIFN-γが生成されないのに対し、E.coliを反応させたウェルは50pg/mLのIFN-γを、GEN3033を反応させたウェルは約210pg/mLのIFN-γを生成することを確認した。
【0130】
すなわち、GEN3033がマクロファージを活性化させることにより、メモリーT細胞を刺激してIFN-γの生成を誘導することを確認した。要するに、GEN3033がメモリーT細胞の活性を著しく増加させて、優れた免疫活性を誘発するということが分かる。
【0131】
[実施例14]
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033の抗腫瘍効果(in vitro)
GEN3033が様々ながん細胞株において抗がん効能を示すか否かを確認するために、ヒト由来のがん細胞株11種を用いてCCK-8アッセイを行った。
【0132】
がん細胞株を96ウェルプレートに1~5×103細胞/ウェルとなるように分注し、24時間安定化させた後、破砕した乳酸菌試料を1%(1%=4.965μg,BCA分析を用いてエキスの濃度を測定する)で添加して72時間培養し、CCK-8(DOJINDO,USA)を用いて確認したがん細胞生存率を下記表3に示す。
【0133】
【0134】
前記表3に示すように、がん細胞が有する特性に応じて、GEN3033による細胞生存率の違いが現れるとはいえ、GEN3033が処理されたすべての細胞株において未処理の対照群(100%の細胞生存率)に比べて細胞生存率が減るという共通点を確認した。
【0135】
[実施例15]
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株の腫瘍の増殖抑制効果(in vivo)
同種のマウス腫瘍モデルは、短時間で腫瘍が急速度で生じて腫瘍の壊死による正確な効能を確認することができないため、腫瘍モデルを築く前に2週間マウスに乳酸菌試料を投与してGEN3033の腸内への定着に伴う免疫活性を誘導した。
【0136】
次いで、2×105のMC38がん細胞株をマウスの右脚に皮下注射して腫瘍の移植を行い、この後にも、3週間(月曜日から土曜日にかけて)乳酸菌試料を前記動物モデルに経口投与し、投与した乳酸菌の試料は、1匹あたりにCFU 1×109となるように200μlのPBSに希釈した。次いで、マウスにおける腫瘍の大きさを測定して、これを図15に示す。
【0137】
図15に示すように、陰性対照群であるPBSを投与したグループは、時間が経つにつれて、腫瘍が高速で増加するのに対し、GEN3033を投与したグループは、前記対照群と比較して、腫瘍の増殖速度が著しく減ることを確認することができた。要するに、GEN3033が抗腫瘍治療効果を示すことが分かる。
【0138】
[実施例16]
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株の免疫因子の発現効果
マクロファージと樹状細胞(Dendritic cells)が刺激を受けてT細胞の活性化を引き起こすIL-15とIL-7を分泌する。従って、前記実施例14のマウスの大腸と腫瘍組織から、T細胞の活性を引き起こすIL-15とIL-7の発現を、qPCRを用いて確認した。その結果を図16及び図17に示す。
【0139】
図16及び図17に示すように、GEN3033を投与したグループのマウスにおいては、腫瘍と大腸組織の両方ともにおいてIL-15とIL-7の発現が陰性対照群よりも増加することを確認した。
【0140】
また、腫瘍よりも大腸組織の方において免疫因子の発現がさらに高く現れることを確認することができ、これは、腸内に定着したGEN3033が大腸組織の免疫細胞を活性化させ、腫瘍微細環境内の免疫細胞の浸透に関与することを裏付けている。
【0141】
[実施例17]
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株と免疫抗がん剤の併用投与
GEN3033と免疫抗がん剤である抗PD1を併用投与したとき、腫瘍の増殖抑制効果を確認するために、次のようにして実験を行った。
【0142】
実施例14の腫瘍モデルを対象として、抗PD1及びGEN3033に対する陰性対照群としてIgG(腹腔投与)とPBS(経口投与)を投与したグループ、GEN3033を投与したグループ、抗PD1を投与したグループ、抗PD1とGEN3033を併用投与したグループに分けてその効能を確認し、抗PD1(2mg/kg,BioXCell)をがん誘発後に3、7、10、14、17、21日目に腹腔注射した。各実験群に対する腫瘍の増殖速度を図18に示す。
【0143】
図18に示すように、GEN3033を投与したグループと抗PD1を投与したグループは、陰性対照群と比較して腫瘍の増殖速度が減少したことを確認した。なお、抗PD1及びGEN3033を併用投与したグループの腫瘍の増殖速度は、それぞれの単独投与グループと比較して増殖速度がさらに減少したことを確認した。
【0144】
要するに、GEN3033は、単独で腫瘍増殖を抑えるだけではなく、抗PD1と併用投与した場合、抗PD1を単独投与した場合に比べてはるかに高い腫瘍の増殖抑制効果を示すことが分かる。
【0145】
[実施例18]
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033の代謝物の調節
乳酸菌は、腸内への定着により、消化器官において分解される飲食物の分解と吸収を助けて体内の各臓器へ栄養分を供給する。従って、GEN3033による代謝物の変化を確認するために、実施例16の腫瘍モデルにおいて確保したマウスの血清を次のような方法に従って分析した。
【0146】
GEN3033を投与したマウスの血清内に存在する代謝物を分析するために、Cortex C18+(2.1mm×100mm,2.7μm)カラムから構成されたHPLC-MS/MSシステム(DIONEX UltiMate 3000,Dionex Corporation,Sunnyvale,CA,USA)を用い、カラムにおいて分離された物質を検出するために、Triple TOF 5600+(AB Sciex,USA)を用いた。移動相として0.1%ギ酸水溶液と0.1%のギ酸アセトニトリルを用い、全てのサンプルに対しては、2種類のイオン転移に対して分析する多重反応モニタリング(Multiple reaction monitoring;MRM)モードで分析を行い、その結果を図19から図21に示す。
【0147】
図19に示すように、対照群と比較して、GEN3033を投与した群は、ピセアタンノール4’-ガロイルグルコシド(Piceatannol 4’-galloylglucoside)、ガングリオシドGM3、ペルラクトン(Perulactone)、オクチルオクタノエート(Octyl octanoate)が著しく増加することを確認した。
【0148】
図20に示すように、抗PD1を投与した群の場合、対照群と比較して、ペルラクトン、ピセアタンノール4’-ガロイルグルコシド、オクチルオクタノエート、ピロカテコールサルフェート(Pyrocatechol sulfate)、ガングリオシドGM3が増加する様相を示す。
【0149】
また、図21に示すように、GEN3033と抗PD1を併用投与した群の場合、対照群と比較して、ペルラクトン、ガングリオシドGM3、ピセアタンノール4’-ガロイルグルコシド、オクチルオクタノエートが同様に増加する様相を示す。また、GEN3033を単独投与した群と比較して、アラキドノイルチオホスホリルコリン、PC 16:0/22:6が増加することを確認した。なお、抗PD1を単独投与した群と比較して、ドデシルサルフェート、アラキドノイルチオホスホリルコリン、PC 16:0/22:6が増加することを確認した。
【0150】
さらに、ステロイドの一種であるペルラクトン、食品添加物として主として用いられるジュバニンC(Jubanine C)、ピセアタンノール4’-ガロイルグルコシド、オクチルオクタノエートの場合、対照群と比較して、GEN3033を単独投与した群、抗PD1を単独投与した群、GEN3033と抗PD1を併用投与した群において同様に高く測定された。
【0151】
特に、ガングリオシドGM3は、抗PD1を単独投与した群と比較して、GEN3033を単独投与した群及びGEN3033と抗PD1を併用投与した群において格段に増加することを確認した。
【0152】
ホスファチジルイノシトール(PI)18:1及び20:4の場合、GEN3033を単独投与した群(対照群に比べて1.32倍)とGEN3033と抗PD1を併用投与した群において増加したが、前記PI 20:4は、マクロファージを活性化させて免疫反応を調節するのに寄与することが知られている。また、健常人と比較して、がん患者において前記PI 18:1、PI 20:4、PI 20:2の3種類のホスファチジルイノシトールの血中含量が低く現れることが報告されている。従って、前記ホスファチジルイノシトールは、健常人とがん患者とを区別する重要なバイオマーカーとなり得る。アラキドノイルチオホスホリルコリンとPC 16:0/22:6は、リン脂質(phospholipid)に属する代謝物であり、炎症反応のような刺激が起こる場合、コリン代謝に異常が生じて細胞膜の損傷が引き起こされることにより、リン脂質の数値の減少が起こるため、このようなアラキドノイルチオホスホリルコリン及びPC 16:0/22:6の減少は、細胞膜の損傷と炎症反応を示すマーカーであることが知られている。
【0153】
図21に示すように、GEN3033と抗PD1を併用投与した場合、対照群に比べて、アラキドノイルチオホスホリルコリン及びPC 16:0/22:6の数値が著しく増加し、これは、GEN3033と抗PD1の併用投与が細胞内の炎症反応を緩和させることを意味する。
【0154】
このような代謝物の分析により、GEN3033の腸内への定着に伴う代謝物の変化が免疫反応及び抗がん効能に重要な作用をすることが分かる。
【0155】
[実施例19]
免疫抗がん剤耐性肺がんモデルにおけるラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株の腫瘍の増殖抑制効果(in vivo)
実施例17における結果を踏まえて、免疫抗がん剤が効く大腸がんモデルにおいてGEN3033と免疫抗がん剤である抗PD1を併用投与したとき、腫瘍の増殖抑制効果を向上させたことを確認した。これに基づいて、免疫抗がん剤に耐性がある肺がんモデルにおいても、GEN3033及び抗PD1を併用投与したときに抗がん効能が向上するか否かを確認するために、下記の実験を行った。
【0156】
LLC1肺がんを移植した腫瘍モデルを対象として、実施例17において行った方法と同様にして試験を行った。抗PD1及びGEN3033に対する陰性対照群としてIgG(腹腔投与)とPBS(経口投与)を投与したグループ、GEN3033を投与したグループ、抗PD1を投与したグループ、抗PD1及びGEN3033を併用投与したグループに分けてその効能を確認した。抗PD1(2mg/kg,BioXCell)をがん誘発後に10、14、17、21、23日目に腹腔注射した。各実験群に対する腫瘍の増殖速度を測定して図22に示す。
【0157】
図22に示すように、GEN3033を投与したグループと抗PD1を投与したグループは、陰性対照群と比較して腫瘍の増殖速度が減少したことを確認した。また、抗PD1及びGEN3033を併用投与したグループの腫瘍の増殖速度は、それぞれの単独投与グループと比較して増殖速度がさらに減少したことを確認した。
【0158】
要するに、免疫抗がん剤に耐性がある肺がんモデルにおいても、GEN3033は単独で腫瘍の増殖を抑えるだけではなく、抗PD1と併用投与した場合、抗PD1を単独投与した場合に比べてはるかに高い腫瘍の増殖抑制効果を示すことが分かる。
【0159】
[実施例20]
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033と化学抗がん剤または免疫抗がん剤の併用投与に伴う効能の確認
GEN3033が、抗PD1以外の化学抗がん剤または免疫抗がん剤との併用処理においても抗腫瘍効果が著しく増加するか否かをさらに確認するために、下記の実験を行った。
【0160】
化学抗がん剤としては、シスプラチン、オキサリプラチン、5-Fu、シクロホスファミド、パクリタキセルを用い、大腸がん細胞株であるHCT116において各濃度の抗がん剤と0.5%濃度のGEN3033を併用投与したときの細胞生存率を確認した結果を図23から図27に示す。
【0161】
図23に示すように、シスプラチン7μMを単独処理した場合に比べて、GEN3033を併用処理した場合に、細胞生存率が著しく減ることが分かる。また、図24から図27に示すように、HCT116において90%以上の細胞生存率を示す各濃度のオキサリプラチン、5-Fu、シクロホスファミド及びパクリタキセルを単独処理した場合に比べて、GEN3033を併用処理した場合にがん細胞の死滅がはるかに高く現れることが確認された。
【0162】
すなわち、GEN3033は、化学抗がん剤の併用投与に当たってがん細胞生存率を著しく減少させて、さらに高い抗がん効果を有することが分かる。
【0163】
また、他の免疫抗がん剤である抗PDL1との併用処理による免疫細胞の活性及びそれに伴う腫瘍細胞の生存率の低下を確認するために、下記の実験を行った。マウスの脾臓と骨髄からPBMC及びT細胞を分離し、PBMCは、GEN3033との反応によってマクロファージの分化を誘導した後、T細胞の活性を刺激した。活性化された免疫細胞の上澄み液を分離して抗PDL1とともにMC38腫瘍細胞に入れ、24時間反応させた後、MC38の生存率をFACs装備で確認した。その結果を図28に示す。
【0164】
図28に示すように、免疫抗がん剤を処理しなくても、GEN3033との反応に応じて、がん細胞株の生存率が12.82%、22.02%減ったことを確認した。また、抗PDL1(1mg/mL)の単独によりがん細胞株の生存率が18.33%減ったのに対し、抗PDL1(1mg/mL)とGEN3033を併用処理したときにがん細胞株の生存率が25.44%、41.23%減ったことを確認した。そのことから、抗PD1の他に、抗PDL1などの他の免疫抗がん剤との併用投与においてもGEN3033が優れた抗がん効能を有することを確認することができる。
【0165】
[実施例21]
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033菌株と免疫抗がん剤の併用投与に伴う抗腫瘍増進効果(in vitro実験)
ヒトの血液からFicollを用いてPBMC(peripheral blood mononuclear cells)を収集した後、赤血球溶解緩衝液(RBC lysis buffer)を用いて赤血球を除去して生きている細胞の数を数えて乳酸菌(3×105/50μl/ウェル)が入っている丸底の96ウェルプレートにウェルごとにPBMC 3×104細胞/50μlずつ添加して24時間培養した。
【0166】
結腸がん細胞株HCT116は、FBS非含有RPMI培地において5μMのCFSE(Carboxyfluorescein succinimidyl ester)と混合し、37℃で5分間反応させた後、FBS含有RPMI 1640培地を添加し、10分間アイスで保管した。上澄み液を遠心分離により除去した後、得られた細胞に10%FBS含有RPMI 1640と混合した後、細胞の数を数えて前記用意した96ウェルプレートのウェルごとに3×104個/100μlずつ添加した。
【0167】
次いで、がん細胞が添加されたウェルごとに各抗体PD1(Pembrolizumab,A2005,Selleckem)、PD-L1(Atezolizumab,A2004,Selleckem)、CTLA-4(Ipilimumab,A2001,Selleckem)を20~30μg/mLの濃度範囲内で処理し、24時間かけて培養した後、PBMC及びがん細胞株の混合物において溶菌された細胞を確認するために7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD;BD Pharmingen,San Diego,CA,USA)で細胞を染色した。FACSDiVaソフトウェア(BD Biosciences)を用いてCFSE及び7-AADに対する染色を測定することにより、がん細胞株へのPBMCの細胞溶解能を確認して図29に示す。
【0168】
図29に示すように、PBMCによるがん細胞死滅(cytotoxicity)を100%としたとき、GEN0333単独によるがん細胞死滅(cytotoxicity)は107.0%増加、臨床に用いられている免疫抗がん剤である抗PD1は113.9%、抗PD-L1は123.5%、抗CTLA-4は116.0%のがん細胞死滅を引き起こすことが示された。これに対し、前記免疫抗がん剤とGEN3033を併用処理した場合、抗PD1は156.7%、抗PD-L1は154.0%、抗CTLA-4は128.3%のがん細胞死滅を引き起こすことが確認された。
【0169】
要するに、単独処理したときのがん細胞死滅効果と比較して、併用処理したときのがん細胞死滅効果の方が著しく増加することが分かる。
【0170】
[受託番号]
ビフィドバクテリウム・ビフィダムMG731(Bifidobacterium bifidum MG731)
寄託機関名:韓国生命工学研究院生物資源センター
受託番号:KCTC13452BP
受託日:2018年1月4日
【0171】
ラクトコッカス・ラクティスGEN3033(Lactococcus lactis GEN3033)
寄託機関名:韓国生命工学研究院生物資源センター
受託番号:KCTC13684BP
受託日:2018年10月25日
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【配列表】