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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
B60C5/00 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018126601
(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2020006714
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 章弘
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-080846(JP,A)
【文献】特開2003-063208(JP,A)
【文献】国際公開第2005/058616(WO,A1)
【文献】特表2013-525203(JP,A)
【文献】特開2019-034623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロイド状でありかつ内腔を有する主部、
及び
上記内腔に配置された制音部
を備えており、
上記制音部が、第一スポンジと第二スポンジとを有しており、
上記第二スポンジの発泡倍率R2が上記第一スポンジの発泡倍率R1よりも大きく、
上記第一スポンジが、板状のベースと2つの突条とを有しており、
それぞれの突条が、上記ベースよりもタイヤ半径方向内側に位置しており、
上記第一スポンジのタイヤ半径方向内側面が上記第二スポンジで覆われることで、上記制音部に、それぞれが上記突条を含む2つの山と、これらの山に挟まれた谷とが形成されている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
上記第二スポンジの発泡倍率R2の、上記第一スポンジの発泡倍率R1に対する比(R2/R1)が、1.10以上である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ回転軸を含む平面における、上記第二スポンジの断面積S2の、上記第一スポンジの断面積S1に対する比(S2/S1)が、1/9以上9/1以下である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
上記第二スポンジが上記第一スポンジと接合されている請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
上記第一スポンジの基材及び上記第二スポンジの基材がポリウレタンである請求項1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。詳細には、本発明は、制音部を有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤが装着された車両が走行すると、このタイヤの内腔で空洞共鳴が生じる。この空洞共鳴は、ロードノイズの原因である。
【0003】
特開2007-161069公報には、その内腔にスポンジを有する空気入りタイヤが開示されている。このスポンジは、空洞共鳴を抑制する。このタイヤは、静寂性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-161069公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スポンジは柔軟であり、強度に劣る。従って、タイヤの転動によってスポンジが破壊されることがある。さらに、スポンジを有するタイヤの製造工程では、スポンジの取り扱いに慎重さが要求される。
【0006】
発泡倍率の小さなスポンジは、強度に優れる。しかし、このスポンジは、空洞共鳴を十分には抑制しない。
【0007】
本発明の目的は、耐久性及び静寂性のバランスに優れた空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、
(1)トロイド状でありかつ内腔を有する主部、
及び
(2)この内腔に配置された制音部
を有する。この制音部は、第一スポンジと第二スポンジとを有する。この第二スポンジの発泡倍率R2は、第一スポンジの発泡倍率R1と異なっている。
【0009】
好ましくは、第二スポンジの発泡倍率R2の、第一スポンジの発泡倍率R1に対する比(R2/R1)は、1.10以上である。
【0010】
好ましくは、タイヤ回転軸を含む平面における、第二スポンジの断面積S2の、第一スポンジの断面積S1に対する比(S2/S1)は、1/9以上9/1以下である。
【0011】
好ましくは、第二スポンジは、第一スポンジと接合されている。
【0012】
好ましくは、第一スポンジの基材及び第二スポンジの基材は、ポリウレタンである。
【0013】
好ましくは、第一スポンジの表面は、第二スポンジで覆われている。
【0014】
第二スポンジが、第一スポンジよりもタイヤ半径方向内側に位置してもよい。好ましくは、第一スポンジのタイヤ半径方向内側面は、第二スポンジで覆われている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤでは、第一スポンジ及び第二スポンジのうちの、一方が制音部の耐久性に寄与し、他方がタイヤの静寂性に寄与する。このタイヤは、耐久性及び静寂性のバランスに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面斜視図である。
図2図2は、図1の空気入りタイヤの制音部が示された断面図である。
図3図3は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤの制音部が示された断面図である。
図4図4は、本発明のさらに他の実施形態に係る空気入りタイヤの制音部が示された断面図である。
図5図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る空気入りタイヤの制音部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
[第一実施形態]
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。このタイヤ2は、主部4と制音部6とを備えている。主部4は、トロイド状である。主部4は、内腔8を有している。この内腔8に、制音部6が配置されている。
【0019】
主部4は、トレッド部10、一対のサイド部12及び一対のビード部14からなる。トレッド部10は、図示されないトレッドを有している。サイド部12は、図示されないサイドウォール及びクリンチを有している。ビード部14は、図示されないビードコア及びエイペックスを有している。
【0020】
この主部4は、一方のビード部14と他方のビード部14との間に架け渡されたカーカス(図示されず)を有している。このカーカスは、トレッド部10の一部でもあり、サイド部12の一部でもあり、ビード部14の一部でもある。この主部4はさらに、カーカスとトレッドとの間に位置するベルト及びバンド(図示されず)を有している。このベルト及びバンドは、トレッド部10の一部である。
【0021】
制音部6は、トレッド部10の内周面に積層されている。好ましくは、制音部6は主部4に接合される。接合は、接着剤又は両面テープによって達成されうる。制音部6は、タイヤ2の周方向に沿って延在している。従って制音部6は、リング状である。後に詳説されるように、制音部6は多孔質である。この制音部6において、空気の振動エネルギーが熱エネルギーに変換される。この変換により、内腔8における空洞共鳴が抑制される。この制音部6を有するタイヤ2は、静寂性に優れる。
【0022】
図2には、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った制音部6の断面が示されている。図2において、上側はタイヤ2の半径方向外側であり、下側はタイヤ2の半径方向内側であり、左右方向はタイヤ2の軸方向である。図2に示されるように、制音部6は、第一スポンジ16及び第二スポンジ18を有している。
【0023】
第一スポンジ16は、ベース20と2つの突条22とを有している。ベース20及び2つの突条22は、一体である。ベース20は、板状である。それぞれの突条22は、ベース20よりもタイヤ2半径方向内側(図2における下側)に位置している。
【0024】
第一スポンジ16は、気泡を含むポリマー成形体である。換言すれば、第一スポンジ16は多孔質である。第一スポンジ16は、ポリマー組成物からなるマトリクスと、このマトリクスに分散した多数の気泡とを有している。第一スポンジ16の基材ポリマーとして、ポリウレタン、ポリエチレン及びポリプロピレンのような合成樹脂、並びにポリクロロプレン、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体及びアクリロニトリル-ブタジエン共重合のようなゴムが例示される。好ましいポリマーは、ポリウレタンである。ポリウレタンの具体例として、エーテル系ポリウレタン及びエステル系ポリウレタンが挙げられる。静寂性、耐久性等の観点から、エーテル系ポリウレタンが好ましい。
【0025】
第一スポンジ16の気泡は、熱分解型発泡剤の発泡によって形成されうる。用いられる熱分解型発泡剤として、アゾ化合物、ニトロソ化合物及びトリアゾール化合物が例示される。機械攪拌法等の物理的発泡方法により、気泡が形成されてもよい。第一スポンジ16が、連続気泡を有してもよく、独立気泡を有してもよい。静寂性の観点から、連続気泡が好ましい。
【0026】
第二スポンジ18は、第一スポンジ16の全表面を覆っている。換言すれば、第一スポンジ16は第二スポンジ18に囲まれている。この第二スポンジ18は、気泡を含むポリマー成形体である。換言すれば、第二スポンジ18は多孔質である。第二スポンジ18は、ポリマー組成物からなるマトリクスと、このマトリクスに分散した多数の気泡とを有している。第二スポンジ18の基材ポリマーとして、ポリウレタン、ポリエチレン及びポリプロピレンのような合成樹脂、並びにポリクロロプレン、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体及びアクリロニトリル-ブタジエン共重合のようなゴムが例示される。好ましいポリマーは、ポリウレタンである。ポリウレタンの具体例として、エーテル系ポリウレタン及びエステル系ポリウレタンが挙げられる。静寂性、耐久性等の観点から、エーテル系ポリウレタンが好ましい。第二スポンジ18の基材ポリマーが、第一スポンジ16の基材ポリマーと同一であることが好ましい。
【0027】
第二スポンジ18の気泡は、熱分解型発泡剤の発泡によって形成されうる。用いられる熱分解型発泡剤として、アゾ化合物、ニトロソ化合物及びトリアゾール化合物が例示される。機械攪拌法等の物理的発泡方法により、気泡が形成されてもよい。第一スポンジ16が、連続気泡を有してもよく、独立気泡を有してもよい。静寂性の観点から、連続気泡が好ましい。
【0028】
前述の通り、第二スポンジ18は、第一スポンジ16を覆っている。従って、制音部6は、第一スポンジ16の断面形状が反映された断面形状を有する。図2から明らかなように、制音部6は、谷24と2つの山26とを有している。谷24は、2つの山26に挟まれている。谷24及び山26を有する制音部6は、大きな表面積を有する。この制音部6は、空洞共鳴を十分に抑制する。
【0029】
第二スポンジ18は、第一スポンジ16と接合されている。接合は、溶着によって達成される。接着剤によって接合が達成されてもよい。
【0030】
第二スポンジ18の発泡倍率R2は、第一スポンジ16の発泡倍率R1よりも大きい。従って、第二スポンジ18が空洞共鳴を抑制する能力は、第一スポンジ16のそれよりも大きい。さらに、第二スポンジ18は軽量である。一方、第一スポンジ16の強度は、第二スポンジ18の強度よりも大きい。この制音部6では、主として第一スポンジ16が耐久性に寄与し、主として第二スポンジ18が静寂性に寄与する。このタイヤ2は、耐久性と静寂性との両方に優れる。
【0031】
第二スポンジ18の発泡倍率R2が、第一スポンジ16の発泡倍率R1よりも小さくてもよい。この場合は、主として第二スポンジ18が耐久性に寄与し、主として第一スポンジ16が静寂性に寄与する。タイヤ2の内腔8の気体と直接に接触しているのは、第二スポンジ18である。従って、空洞共鳴の抑制の観点からは、第二スポンジ18の発泡倍率R2が第一スポンジ16の発泡倍率R1よりも大きいことが好ましい。
【0032】
第二スポンジ18の発泡倍率R2の、第一スポンジ16の発泡倍率R1に対する比(R2/R1)は、1.10以上が好ましい。比(R2/R1)が1.10以上である制音部6では、第一スポンジ16が耐久性に十分に寄与しうる。比(R2/R1)が1.10以上である制音部6では、第二スポンジ18が静寂性に十分に寄与しうる。これらの観点から、比(R2/R1)は1.30以上がより好ましく、1.50以上が特に好ましい。
【0033】
比(R2/R1)は、10.0以下が好ましい。比(R2/R1)が10.0以下である制音部6では、第一スポンジ16が静寂性を阻害しにくい。比(R2/R1)が10.0以下である制音部6では、第二スポンジ18が耐久性を阻害しにくい。これらの観点から、比(R2/R1)は7.0以下がより好ましく、5.0以下が特に好ましい。
【0034】
第一スポンジ16の発泡倍率R1は、10以上50以下が好ましく、15以上45以下がより好ましく、20以上40以下が特に好ましい。第二スポンジ18の発泡倍率R2は、15以上60以下が好ましく、20以上55以下がより好ましく、25以上50以下が特に好ましい。発泡倍率は、スポンジの密度に対する、マトリクスであるポリマー組成物の密度の比である。
【0035】
第二スポンジ18の断面積S2の、第一スポンジ16の断面積S1に対する比(S2/S1)は、1/9以上9/1以下が好ましい。比(S2/S1)が1/9以上である制音部6では、第二スポンジ18が静寂性に十分に寄与しうる。さらに、比(S2/S1)が1/9以上である制音部6は、軽量である。これらの観点から、比(S2/S1)は2/8以上がより好ましく、3/7以上が特に好ましい。比(S2/S1)が9/1以下である制音部6では、第一スポンジ16が耐久性に十分に寄与しうる。この観点から、比(S2/S1)は8/2以下がより好ましく、7/3以下が特に好ましい。断面積S1及びS2は、図2に示された断面において測定される。
【0036】
制音部6の面積(S1+S2)の、内腔8の断面積に対する比率は、1%以上が好ましい。この比率が1%以上である制音部6により、空洞共鳴がより抑制される。この観点から、この比率は3%以上がより好ましく、5%以上が特に好ましい。この比率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が特に好ましい。内腔8の断面積は、図1に示された断面において、両ヒール28を結ぶ直線と、主部4の内周面を確定する曲線とに囲まれたゾーンの面積である。
【0037】
この制音部6は、第一スポンジ16のためのポリマー組成物と、第二スポンジ18のためのポリマー組成物との、共押出によって形成されうる。
【0038】
制音部6が、第一スポンジ16及び第二スポンジ18以外のスポンジを有してもよい。
【0039】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITSAT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ2の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
【0040】
[第二実施形態]
図3は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤの制音部30が示された断面図である。図3には、タイヤの回転軸を含む平面に沿った制音部30の断面が示されている。図3において、上側はタイヤの半径方向外側であり、下側はタイヤの半径方向内側であり、左右方向はタイヤの軸方向である。
【0041】
この制音部30も、図2に示された制音部6と同様、主部4のトレッド部10(図1も参照)の内周面に積層される。好ましくは、制音部30は主部4に接合される。制音部30は、タイヤの周方向に沿って延在する。従って制音部30は、リング状である。後に詳説されるように、制音部30は多孔質である。この制音部30では、空気の振動エネルギーが熱エネルギーに変換される。この変換により、内腔8における空洞共鳴が抑制される。この制音部30を有するタイヤは、静寂性に優れる。制音部30は、第一スポンジ32及び第二スポンジ34を有している。
【0042】
第一スポンジ32は、ベース36と2つの突条38とを有している。ベース36及び2つの突条38は、一体である。ベース36は、板状である。それぞれの突条38は、ベース36よりもタイヤ半径方向内側(図3における下側)に位置している。
【0043】
第二スポンジ34は、第一スポンジ32よりもタイヤの半径方向内側に位置している。第一スポンジ32の、タイヤの半径方向内側面は、第二スポンジ34で覆われている。
【0044】
第一スポンジ32は、気泡を含むポリマー成形体である。換言すれば、第一スポンジ32は多孔質である。第一スポンジ32の材質は、図2に示された第一スポンジ16の材質と同じである。第二スポンジ34は、気泡を含むポリマー成形体である。換言すれば、第二スポンジ34は多孔質である。第二スポンジ34の材質は、図2に示された第二スポンジ18の材質と同じである。
【0045】
図3から明らかな通り、制音部30は、谷40と2つの山42とを有している。谷40は、2つの山42に挟まれている。谷40及び山42を有する制音部30は、大きな表面積を有する。この制音部30は、空洞共鳴を十分に抑制する。
【0046】
第二スポンジ34は、第一スポンジ32と接合されている。接合は、溶着によって達成される。接着剤によって接合が達成されてもよい。
【0047】
第二スポンジ34の発泡倍率R2は、第一スポンジ32の発泡倍率R1よりも大きい。従って、第二スポンジ34が空洞共鳴を抑制する能力は、第一スポンジ32のそれよりも大きい。一方、第一スポンジ32の強度は、第二スポンジ34の強度よりも大きい。この制音部30では、主として第一スポンジ32が耐久性に寄与し、主として第二スポンジ34が静寂性に寄与する。このタイヤは、耐久性と静寂性との両方に優れる。
【0048】
第二スポンジ34の発泡倍率R2が、第一スポンジ32の発泡倍率R1よりも小さくてもよい。この場合は、主として第二スポンジ34が耐久性に寄与し、主として第一スポンジ32が静寂性に寄与する。タイヤの内腔8の気体と直接に接触しているのは、第二スポンジ34である。従って、空洞共鳴の抑制の観点からは、第二スポンジ34の発泡倍率R2が第一スポンジ32の発泡倍率R1よりも大きいことが好ましい。
【0049】
第二スポンジ34の発泡倍率R2の、第一スポンジ32の発泡倍率R1に対する比(R2/R1)は、1.10以上が好ましい。比(R2/R1)が1.10以上である制音部30では、第一スポンジ32が耐久性に十分に寄与しうる。比(R2/R1)が1.10以上である制音部30では、第二スポンジ34が静寂性に十分に寄与しうる。これらの観点から、比(R2/R1)は1.30以上がより好ましく、1.50以上が特に好ましい。
【0050】
比(R2/R1)は、10.0以下が好ましい。比(R2/R1)が10.0以下である制音部30では、第一スポンジ32が静寂性を阻害しにくい。比(R2/R1)が10.0以下である制音部30では、第二スポンジ34が耐久性を阻害しにくい。これらの観点から、比(R2/R1)は7.0以下がより好ましく、5.0以下が特に好ましい。
【0051】
第一スポンジ32の発泡倍率R1は、10以上50以下が好ましく、15以上45以下がより好ましく、20以上40以下が特に好ましい。第二スポンジ34の発泡倍率R2は、15以上60以下が好ましく、20以上55以下がより好ましく、25以上50以下が特に好ましい。発泡倍率は、スポンジの密度に対する、マトリクスであるポリマー組成物の密度の比である。
【0052】
第二スポンジ34の断面積S2の、第一スポンジ32の断面積S1に対する比(S2/S1)は、1/9以上9/1以下が好ましい。比(S2/S1)が1/9以上である制音部30では、第二スポンジ34が静寂性に十分に寄与しうる。この観点から、比(S2/S1)は2/8以上がより好ましく、3/7以上が特に好ましい。比(S2/S1)が9/1以下である制音部30では、第一スポンジ32が耐久性に十分に寄与しうる。この観点から、比(S2/S1)は8/2以下がより好ましく、7/3以下が特に好ましい。
【0053】
制音部30の面積(S1+S2)の、内腔8(図1参照)の断面積に対する比率は、1%以上が好ましい。この比率が1%以上である制音部30により、空洞共鳴がより抑制される。この観点から、この比率は3%以上がより好ましく、5%以上が特に好ましい。この比率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が特に好ましい。
【0054】
この制音部30は、第一スポンジ32のためのポリマー組成物と、第二スポンジ34のためのポリマー組成物との、共押出によって形成されうる。第一スポンジ32と第二スポンジ34とが別に成形され、両者が接合されてもよい。
【0055】
[第三実施形態]
図4は、本発明のさらに他の実施形態に係る空気入りタイヤの制音部44が示された断面図である。図4には、タイヤの回転軸を含む平面に沿った制音部44の断面が示されている。図4において、上側はタイヤの半径方向外側であり、下側はタイヤの半径方向内側であり、左右方向はタイヤの軸方向である。
【0056】
この制音部44も、図2に示された制音部6と同様、主部4のトレッド部10(図1も参照)の内周面に積層される。好ましくは、制音部44は主部4に接合される。制音部44は、タイヤの周方向に沿って延在する。従って制音部44は、リング状である。後に詳説されるように、制音部44は多孔質である。この制音部44では、空気の振動エネルギーが熱エネルギーに変換される。この変換により、内腔8における空洞共鳴が抑制される。この制音部44を有するタイヤは、静寂性に優れる。制音部44は、第一スポンジ46及び第二スポンジ48を有している。
【0057】
図4から明らかなように、第一スポンジ46の断面形状は矩形である。第一スポンジ46は、板状である。
【0058】
第二スポンジ48は、ベース50と2つの突条52とを有している。ベース50及び2つの突条52は、一体である。ベース50は、板状である。それぞれの突条52は、ベース50よりもタイヤ半径方向内側(図4における下側)に位置している。
【0059】
第二スポンジ48は、第一スポンジ46よりもタイヤの半径方向内側に位置している。第一スポンジ46の、タイヤの半径方向内側面は、第二スポンジ48で覆われている。
【0060】
第一スポンジ46は、気泡を含むポリマー成形体である。換言すれば、第一スポンジ46は多孔質である。第一スポンジ46の材質は、図2に示された第一スポンジ16の材質と同じである。第二スポンジ48は、気泡を含むポリマー成形体である。換言すれば、第二スポンジ48は多孔質である。第二スポンジ48の材質は、図2に示された第二スポンジ18の材質と同じである。
【0061】
図4から明らかな通り、制音部44は、谷54と2つの山56とを有している。谷54は、2つの山26に挟まれている。谷54及び山56を有する制音部44は、大きな表面積を有する。この制音部44は、空洞共鳴を十分に抑制する。
【0062】
第二スポンジ48は、第一スポンジ46と接合されている。接合は、溶着によって達成される。接着剤によって接合が達成されてもよい。
【0063】
第二スポンジ48の発泡倍率R2は、第一スポンジ46の発泡倍率R1よりも大きい。従って、第二スポンジ48が空洞共鳴を抑制する能力は、第一スポンジ46のそれよりも大きい。一方、第一スポンジ46の強度は、第二スポンジ48の強度よりも大きい。この制音部44では、主として第一スポンジ46が耐久性に寄与し、主として第二スポンジ48が静寂性に寄与する。このタイヤは、耐久性と静寂性との両方に優れる。
【0064】
第二スポンジ48の発泡倍率R2が、第一スポンジ46の発泡倍率R1よりも小さくてもよい。この場合は、主として第二スポンジ48が耐久性に寄与し、主として第一スポンジ46が静寂性に寄与する。タイヤの内腔の気体と直接に接触しているのは、第二スポンジ48である。従って、空洞共鳴の抑制の観点からは、第二スポンジ48の発泡倍率R2が第一スポンジ46の発泡倍率R1よりも大きいことが好ましい。
【0065】
第二スポンジ48の発泡倍率R2の、第一スポンジ46の発泡倍率R1に対する比(R2/R1)は、1.10以上が好ましい。比(R2/R1)が1.10以上である制音部44では、第一スポンジ46が耐久性に十分に寄与しうる。比(R2/R1)が1.10以上である制音部44では、第二スポンジ48が静寂性に十分に寄与しうる。これらの観点から、比(R2/R1)は1.30以上がより好ましく、1.50以上が特に好ましい。
【0066】
比(R2/R1)は、10.0以下が好ましい。比(R2/R1)が10.0以下である制音部44では、第一スポンジ46が静寂性を阻害しにくい。比(R2/R1)が10.0以下である制音部44では、第二スポンジ48が耐久性を阻害しにくい。これらの観点から、比(R2/R1)は7.0以下がより好ましく、5.0以下が特に好ましい。
【0067】
第一スポンジ46の発泡倍率R1は、10以上50以下が好ましく、15以上45以下がより好ましく、20以上40以下が特に好ましい。第二スポンジ48の発泡倍率R2は、15以上60以下が好ましく、20以上55以下がより好ましく、25以上50以下が特に好ましい。発泡倍率は、スポンジの密度に対する、マトリクスであるポリマー組成物の密度の比である。
【0068】
第二スポンジ48の断面積S2の、第一スポンジ46の断面積S1に対する比(S2/S1)は、1/9以上9/1以下が好ましい。比(S2/S1)が1/9以上である制音部44では、第二スポンジ48が静寂性に十分に寄与しうる。この観点から、比(S2/S1)は2/8以上がより好ましく、3/7以上が特に好ましい。比(S2/S1)が9/1以下である制音部44では、第一スポンジ46が耐久性に十分に寄与しうる。この観点から、比(S2/S1)は8/2以下がより好ましく、7/3以下が特に好ましい。
【0069】
制音部44の面積(S1+S2)の、内腔の断面積に対する比率は、1%以上が好ましい。この比率が1%以上である制音部44により、空洞共鳴がより抑制される。この観点から、この比率は3%以上がより好ましく、5%以上が特に好ましい。この比率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が特に好ましい。
【0070】
この制音部44は、第一スポンジ46のためのポリマー組成物と、第二スポンジ48のためのポリマー組成物との、共押出によって形成されうる。第一スポンジ46と第二スポンジ48とが別に成形され、両者が接合されてもよい。
【0071】
[第四実施形態]
図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る空気入りタイヤの制音部58が示された断面図である。図5には、タイヤの回転軸を含む平面に沿った制音部58の断面が示されている。図5において、上側はタイヤの半径方向外側であり、下側はタイヤの半径方向内側であり、左右方向はタイヤの軸方向である。
【0072】
この制音部58も、図2に示された制音部6と同様、主部4のトレッド部10(図1も参照)の内周面に積層される。好ましくは、制音部58は主部4に接合される。制音部58は、タイヤの周方向に沿って延在する。従って制音部58は、リング状である。後に詳説されるように、制音部58は多孔質である。この制音部58では、空気の振動エネルギーが熱エネルギーに変換される。この変換により、内腔8における空洞共鳴が抑制される。この制音部58を有するタイヤは、静寂性に優れる。制音部58は、第一スポンジ60と、2つの第二スポンジ62とを有している。
【0073】
図5から明らかなように、第一スポンジ60の断面形状は矩形である。第一スポンジ60は、板状である。
【0074】
図5から明らかなように、それぞれの第二スポンジ62の断面形状は、台形である。第二スポンジ62が、他の形状を有してもよい。第二スポンジ62は、第一スポンジ60よりもタイヤの半径方向内側に位置している。それぞれの第二スポンジ62は、リング状である。2つの第二スポンジ62は、互いに平行に延在している。
【0075】
第一スポンジ60は、気泡を含むポリマー成形体である。換言すれば、第一スポンジ60は多孔質である。第一スポンジ60の材質は、図2に示された第一スポンジ16の材質と同じである。第二スポンジ62は、気泡を含むポリマー成形体である。換言すれば、第二スポンジ62は多孔質である。第二スポンジ62の材質は、図2に示された第二スポンジ18の材質と同じである。
【0076】
図5から明らかな通り、制音部58は、谷と2つの山66とを有している。谷64は、2つの山66に挟まれている。谷64及び山66を有する制音部58は、大きな表面積を有する。この制音部58は、空洞共鳴を十分に抑制する。
【0077】
第二スポンジ62は、第一スポンジ60と接合されている。接合は、溶着によって達成される。接着剤によって接合が達成されてもよい。
【0078】
第二スポンジ62の発泡倍率R2は、第一スポンジ60の発泡倍率R1よりも大きい。従って、第二スポンジ62が空洞共鳴を抑制する能力は、第一スポンジ60のそれよりも大きい。一方、第一スポンジ60の強度は、第二スポンジ62の強度よりも大きい。この制音部58では、主として第一スポンジ60が耐久性に寄与し、主として第二スポンジ62が静寂性に寄与する。このタイヤは、耐久性と静寂性との両方に優れる。
【0079】
第二スポンジ62の発泡倍率R2が、第一スポンジ60の発泡倍率R1よりも小さくてもよい。この場合は、主として第二スポンジ62が耐久性に寄与し、主として第一スポンジ60が静寂性に寄与する。タイヤの内腔の気体と主として接触しているのは、第二スポンジ62である。従って、空洞共鳴の抑制の観点からは、第二スポンジ62の発泡倍率R2が第一スポンジ60の発泡倍率R1よりも大きいことが好ましい。
【0080】
第二スポンジ62の発泡倍率R2の、第一スポンジ60の発泡倍率R1に対する比(R2/R1)は、1.10以上が好ましい。比(R2/R1)が1.10以上である制音部58では、第一スポンジ60が耐久性に十分に寄与しうる。比(R2/R1)が1.10以上である制音部58では、第二スポンジ62が静寂性に十分に寄与しうる。これらの観点から、比(R2/R1)は1.30以上がより好ましく、1.50以上が特に好ましい。
【0081】
比(R2/R1)は、10.0以下が好ましい。比(R2/R1)が10.0以下である制音部58では、第一スポンジ60が静寂性を阻害しにくい。比(R2/R1)が10.0以下である制音部58では、第二スポンジ62が耐久性を阻害しにくい。これらの観点から、比(R2/R1)は7.0以下がより好ましく、5.0以下が特に好ましい。
【0082】
第一スポンジ60の発泡倍率R1は、10以上50以下が好ましく、15以上45以下がより好ましく、20以上40以下が特に好ましい。第二スポンジ62の発泡倍率R2は、15以上60以下が好ましく、20以上55以下がより好ましく、25以上50以下が特に好ましい。発泡倍率は、スポンジの密度に対する、マトリクスであるポリマー組成物の密度の比である。
【0083】
第二スポンジ62の断面積S2の、第一スポンジ60の断面積S1に対する比(S2/S1)は、1/9以上9/1以下が好ましい。比(S2/S1)が1/9以上である制音部58では、第二スポンジ62が静寂性に十分に寄与しうる。この観点から、比(S2/S1)は2/8以上がより好ましく、3/7以上が特に好ましい。比(S2/S1)が9/1以下である制音部58では、第一スポンジ60が耐久性に十分に寄与しうる。この観点から、比(S2/S1)は8/2以下がより好ましく、7/3以下が特に好ましい。
【0084】
制音部58の面積(S1+S2)の、内腔の断面積に対する比率は、1%以上が好ましい。この比率が1%以上である制音部58により、空洞共鳴がより抑制される。この観点から、この比率は3%以上がより好ましく、5%以上が特に好ましい。この比率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が特に好ましい。
【0085】
この制音部58は、第一スポンジ60のためのポリマー組成物と、第二スポンジ62のためのポリマー組成物との、共押出によって形成されうる。第一スポンジ60と第二スポンジ62とが別に成形され、両者が接合されてもよい。
【実施例
【0086】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0087】
[実施例1]
図1に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、「215/60R16 95H LM5」である。このタイヤは、図2に示された制音部を有している。この制音部は、第一スポンジ及び第二スポンジを有している。第一スポンジの発泡倍率R1は、24である。第二スポンジの発泡倍率R2は、36である。第二スポンジの断面積S2の第一スポンジの断面積S1に対する比(S2/S1)は、5/5である。
【0088】
[実施例2-4及び比較例1]
第一スポンジの発泡倍率R1及び第二スポンジの発泡倍率R2を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-4及び比較例1のタイヤを得た。
【0089】
[実施例5-10]
比(S2/S1)を下記の表2及び3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5-10のタイヤを得た。
【0090】
[比較例2及び3]
発泡倍率が40である単一のスポンジから制音部を形成した他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。発泡倍率が20である単一のスポンジから制音部を形成した他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
【0091】
[実施例11-13]
図3に示される構造を有する制音部を形成した他は実施例1と同様にして、実施例11のタイヤを得た。図4に示される構造を有する制音部を形成した他は実施例1と同様にして、実施例12のタイヤを得た。図5に示される構造を有する制音部を形成した他は実施例1と同様にして、実施例13のタイヤを得た。
【0092】
[耐久性]
ドラム式走行試験機を準備した。この試験機は、その表面に高さが15mmである突起を有するドラムを備えている。タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を230kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、6.2kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、80km/hの速度にて、ドラム上を走行させた。制音部の破損を目視で確認し、下記の基準に基づいて格付けした。
5:走行距離が10,000kmの時点で破損なし
4:走行距離が8,000kmの時点で破損あり
3:走行距離が6,000kmの時点で破損あり
2:走行距離が4,000kmの時点で破損あり
1:走行距離が2,000kmの時点で破損あり
この結果が、下記の表1-4に示されている。
【0093】
[静寂性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を230kPaとした。このタイヤを乗用車に装着した。この乗用車をアスファルト路面上で走行させた。走行の速度は、60km/hであった。運転席に設置されたマイクロフォンでノイズを測定し、格付けを行った。この結果が、下記の表1-4に示されている。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
表1-4に示されるように、各実施例のタイヤは諸性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0099】
第一スポンジ及び第二スポンジを有する空気入りタイヤは、種々の車両に装着されうる。
【符号の説明】
【0100】
2・・・空気入りタイヤ
4・・・主部
6、30、44、58・・・制音部
10・・・トレッド部
16、32、46、60・・・第一スポンジ
18、34、48、62・・・第二スポンジ
20、36、50・・・ベース
22、38、52・・・突条
24、40、54、64・・・谷
26、42、56、66・・・山
図1
図2
図3
図4
図5