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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】水酸化リチウム水和物
(51)【国際特許分類】
   C01D 15/02 20060101AFI20220809BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220809BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220809BHJP
【FI】
C01D15/02
H01M4/525
H01M4/505
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018144465
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2019026552
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2017148477
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田上 梓
(72)【発明者】
【氏名】浅川 武司
(72)【発明者】
【氏名】上坂 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 和也
(72)【発明者】
【氏名】重松 伸彦
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-073966(JP,A)
【文献】特開平10-130025(JP,A)
【文献】Xixian Yang et al.,energies,2017年,10 644,pp.1-9,doi: 10.3390/en10050644
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 15/02
H01M 4/525
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
累積10%粒子径(D10)が100μm以上、累積50%粒子径(D50)が350μm以下、累積90%粒子径(D90)が550μm以下である水酸化リチウム水和物。
【請求項2】
累積50%粒子径(D50)における円形度が0.75以上0.86以下である請求項1に記載の水酸化リチウム水和物。
【請求項3】
積50%粒子径(D50)が250μm以上である請求項1または2に記載の水酸化リチウム水和物。
【請求項4】
粒径が100μm以下である微粉の含有割合が、2質量%以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の水酸化リチウム水和物。
【請求項5】
含有する、粒径が100μm以下の微粉の動摩擦角が38度以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の水酸化リチウム水和物。
【請求項6】
含有する、粒径が100μm以下の微粉の壁面摩擦角が8度以下である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の水酸化リチウム水和物。
【請求項7】
含有する粒径が100μm以下の微粉は、押し込み最大荷重100Nの時の圧力伝達率が50%以上であり、押し込み最大荷重100Nの時の圧力緩和率が38%以下である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の水酸化リチウム水和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化リチウム水和物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコンなどの小型電子機器の急速な拡大とともに、充放電可能な電源として、リチウムイオン二次電池の需要が急激に伸びている。リチウムイオン二次電池の正極に用いられる正極活物質として、リチウムコバルト複合酸化物や、リチウムニッケル複合酸化物等のリチウムを含有する複合酸化物が用いられている。
【0003】
リチウムを含有する複合酸化物の製造方法として、例えば特許文献1には、リチウム塩とニッケル塩とをLi/Niモル比が少なくとも1となるように混合し、焼成して正極材料用のLiNiOを得る方法において、リチウム塩とニッケル塩との混合物を、オゾン1%以上を含む空気及び/または酸素中で500℃~1000℃で10時間以上焼成することを特徴とするリチウム二次電池用正極材料の製造方法が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献1には、リチウム塩として、水酸化リチウムの無水物を用いた例も開示されている。具体的には、水酸化ニッケルと無水水酸化リチウムとの混合物を、雰囲気調整炉内で加熱焼成して、リチウム二次電池用正極活物質を製造した例が開示されている。
【0005】
ところで、水酸化リチウムは通常水和し、一水和物となっていることから、水酸化リチウムの無水物とするためには、水酸化リチウム水和物を脱水し、無水化する必要がある。
【0006】
例えば特許文献2には、水酸化リチウム一水塩を、ロータリーキルンを用いて、炉心管内温度150℃以上に加熱することにより無水化することを特徴とする水酸化リチウム一水塩の無水化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-180863号公報
【文献】特開2006-265023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、水酸化リチウム水和物を熱処理により脱水する場合に、該脱水の処理に多くの時間を要する場合があり、生産性を向上し、また熱処理に要するコストを低減する観点から短い時間で脱水することができる水酸化リチウム水和物が求められていた。
【0009】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、脱水に要する時間を抑制できる水酸化リチウム水和物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明の一側面では、
累積10%粒子径(D10)が100μm以上、累積50%粒子径(D50)が350μm以下、累積90%粒子径(D90)が550μm以下である水酸化リチウム水和物を提供する。


【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、脱水に要する時間を抑制できる水酸化リチウム水和物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】圧力伝達率・緩和率測定装置の説明図。
図2】本発明に係る実施例で用いた転動撹拌機の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の水酸化リチウム水和物の一実施形態について説明する。
[水酸化リチウム水和物]
本実施形態の水酸化リチウム水和物は、累積50%粒子径(D50)を350μm以下、累積90%粒子径(D90)を550μm以下とすることができる。
【0014】
なお、水酸化リチウム水和物の水和水の数は特に限定されないが、水酸化リチウムは通常一水和物を形成することから、本実施形態の水酸化リチウム水和物は、水酸化リチウム一水和物とすることができる。
【0015】
本発明の発明者らは、脱水に要する時間を抑制できる水酸化リチウム水和物、すなわち脱水し易い水酸化リチウム水和物について鋭意検討を行った。
【0016】
その結果、水酸化リチウム水和物の粒度分布が、脱水のし易さに大きな影響を与えていることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
本発明の発明者らの検討によれば、累積50%粒子径(D50)が350μm以下であり、かつ累積90%粒子径(D90)が550μm以下の水酸化リチウム水和物とすることで、脱水し易い水酸化リチウム水和物とすることができる。
【0018】
これは、累積50%粒子径(D50)が350μm以下の水酸化リチウム水和物とすることで、構成する粉末の粒子径が概ね小さい水酸化リチウムとすることができ、熱処理を行った場合に、中心まで短時間で加熱し、脱水を行うことができるからと考えられる。
【0019】
ただし、累積50%粒子径(D50)が350μm以下の場合であっても、粗大粒子が一部混入していると、水酸化リチウム水和物の乾燥が十分に進行しない恐れがある。このため、上述のように累積90%粒子径(D90)が550μm以下の水酸化リチウムとすることで、脱水し易い水酸化リチウム水和物とすることができる。
【0020】
累積50%粒子径(D50)は300μm以下であることがより好ましい。また、累積90%粒子径(D90)は500μm以下であることがより好ましい。
【0021】
累積90%粒子径(D90)の下限値は特に限定されないが、例えば450μm以上とすることが好ましい。
【0022】
なお、累積50%粒子径(D50)は、乾式でレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における体積積算値50%での粒径を意味する。
【0023】
また、累積90%粒子径(D90)は、乾式でレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における体積積算値90%での粒径を意味する。
【0024】
本発明の発明者らの更なる検討によると、脱水に要する時間を特に抑制できる水酸化リチウム水和物とするためには、該水酸化リチウム水和物の円形度が所定の範囲であることが好ましい。
【0025】
具体的には、本実施形態の水酸化リチウム水和物は、累積50%粒子径(D50)における円形度が0.75以上0.86以下であることが好ましく、0.78以上0.85以下であることがより好ましい。これは、累積50%粒子径(D50)における円形度を0.75以上とすることで、真球に近づき、粒子の表面と中心との間の距離が略均等になるため、均一に乾燥させることができるからである。ただし、円形度が過度に高くなると、粒子の表面積が低下し、水分が蒸発しにくくなるため、円形度は0.86以下であることが好ましい。
【0026】
円形度は以下の(1)式により算出することができる。
(円形度)=(粒子投影形状と同じ面積を有する相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)・・・(1)
上記(1)式中の粒子投影形状と同じ面積を有する相当円の周囲長、及び粒子投影形状の実際の周囲長は、例えばフロー式粒子像分析装置を用いて測定することができる。予め測定しておいた累積50%粒子径(D50)の粒子について、粒子投影形状と同じ面積を有する相当円の周囲長、及び粒子投影形状の実際の周囲長測定し、上記式(1)を用いることで累積50%粒子径(D50)における円形度を算出できる。
【0027】
本実施形態の水酸化リチウム水和物は、例えば後述するように脱水処理等を行うため、工場の配管内等を搬送する場合がある。また、脱水処理を行う際に、水酸化リチウム水和物を加熱する加熱手段から水酸化リチウム水和物やその脱水処理物が排気と共に飛散するのを防ぐため、バグフィルター等のフィルターにより飛散物を回収する場合がある。
【0028】
このように、本実施形態の水酸化リチウム水和物を脱水処理等する際に、配管や設備のハウジング内壁に付着したり、フィルターへ飛散することを抑制できることが好ましい。これは、水酸化リチウム水和物を脱水処理する際に、配管や設備のハウジング内壁に付着したり、飛散してフィルターが閉塞すると、一旦運転を止め、配管や設備を解体し、洗浄を行ったり、フィルターの交換等を行う必要が生じるためである。
【0029】
そこで、本発明の発明者らは係る観点からさらに検討を行ったところ、本実施形態の水酸化リチウム水和物は、累積10%粒子径(D10)が100μm以上、累積50%粒子径(D50)が250μm以上であることが好ましい。
【0030】
本発明の発明者らの検討によると、水酸化リチウム水和物に含まれる微粉の割合が増加することで、脱水処理時等に配管や設備のハウジングの内壁に付着したり、飛散する割合が増加する等の傾向がみられることが確認できた。そこで、上述のように、本実施形態の水酸化リチウム水和物の累積10%粒子径(D10)を100μm以上、累積50%粒子径(D50)を250μm以上とすることで、微粉の割合を低減でき、脱水処理時等に配管や設備のハウジング内壁に付着することや、フィルターが閉塞することを抑制することができ、生産性の観点から好ましい。
【0031】
累積10%粒子径(D10)の上限値は特に限定されないが、例えば200μm以下とすることが好ましい。
【0032】
なお、累積10%粒子径(D10)は、乾式でレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における体積積算値10%での粒径を意味する。
【0033】
また、上述のように、水酸化リチウム水和物を脱水処理等する際に、配管や設備のハウジング内壁に付着することや、フィルターが閉塞することを抑制するためには、水酸化リチウム水和物内の微粉の割合が少ないことが好ましい。このため、本実施形態の水酸化リチウム水和物は、粒径が100μm以下である微粉の含有割合が、2質量%以下であることが好ましい。特に本実施形態の水酸化リチウム水和物の、粒径が100μm以下である微粉の含有割合は、1.9質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
なお、本実施形態の水酸化リチウム水和物の100μm以下である微粉の含有割合は、例えば本実施形態の水酸化リチウム水和物を、目開きが100μmの篩を用いて篩分けし、篩の下に落ちた粉末の質量割合を算出することで求められる。
【0035】
さらに、本発明の発明者らの検討によれば、水酸化リチウム水和物を脱水処理する際の配管や設備のハウジング内壁への付着のし易さや、飛散し易さは、粒径が100μm以下の微粉の粉体特性に影響が大きいと考えられる。
【0036】
そこで、さらに検討を行ったところ、本実施形態の水酸化リチウム水和物が含有する、粒径が100μm以下の微粉の動摩擦角が38度以下であることが好ましい。
【0037】
動摩擦角(粉体動摩擦角)は運動中の粉体層の摩擦特性を示しており、小さいほど流動性が高く、付着しにくいことを示す。そして、本発明の発明者らの検討によれば、本実施形態の水酸化リチウム水和物が含有する粒径が100μm以下の微粉の動摩擦角が38度以下の場合、水酸化リチウム水和物の流動性が高く、脱水工程等を行った際の、配管や設備のハウジング内壁への付着や、フィルターの閉塞がほとんど発生しなくなり、好ましい。
【0038】
また、本実施形態の水酸化リチウム水和物が含有する、粒径が100μm以下の微粉の壁面摩擦角が8度以下であることが好ましい。
【0039】
壁面摩擦角は、粉体と、配管等の壁面に接する部分における粉体と壁面との摩擦特性を示しており、小さいほど滑り易い、すなわち付着しにくいことを示している。そして、本発明の発明者らの検討によれば、本実施形態の水酸化リチウム水和物が含有する粒径が100μm以下の微粉の壁面摩擦角が8度以下の場合、配管や設備のハウジング内壁への付着や、フィルターの閉塞がほとんど発生しなくなり、好ましい。
【0040】
さらに、本実施形態の水酸化リチウム水和物が含有する、粒径が100μm以下の微粉は、押し込み最大荷重100Nの時の圧力伝達率が50%以上であり、押し込み最大荷重100Nの時の圧力緩和率が38%以下であることが好ましい。
【0041】
圧力伝達率は、例えばセル内に充填した粉体に対して上方から圧力を加えた際に、セル内の粉体を介して、下方にまで圧力が伝達する程度を表している。圧力伝達率が高いほど、該粉体は圧力を伝達していることを示している。そして、本発明の発明者らの検討によれば、実施形態の水酸化リチウム水和物が含有する、粒径が100μm以下の微粉の、押し込み最大荷重100Nの時の圧力伝達率が50%以上の場合、該微粉が加えられた圧力を外部にほとんど逃がすことになると考えられる。このため、凝集等し難くなり、配管や設備のハウジング内壁への付着や、フィルターの閉塞の発生を抑制でき、好ましい。
【0042】
圧力緩和率は、例えばセル内に充填した粉体に対して上方から圧力を加えた際に、圧力を加えた直後と、加えてはじめてから100秒が経過した後での、セル内の粉体による垂直圧力の変化の程度を表している。圧力緩和率が低いほど、圧力を加えられた粉体上部での垂直圧力の変化が無いことを意味している。すなわち、圧力緩和率が低いほど、圧力を加えられた際の粉体内での粉体粒子の移動が少ないことを示していると考えられる。そして、本発明の発明者らの検討によれば、実施形態の水酸化リチウム水和物が含有する、粒径が100μm以下の微粉の、押し込み最大荷重100Nの時の圧力緩和率が38%以下の場合、該微粉の状態にほとんど変化が生じていないと考えられる。このため、凝集等し難くなり、配管や設備のハウジング内壁への付着や、フィルターの閉塞がほとんど発生しなくなり、好ましい。
【0043】
圧力伝達率や、圧力緩和率は、例えば図1に示すような圧力伝達率・緩和率測定装置を用いて測定を行うことができる。
【0044】
図1は圧力伝達率・緩和率測定装置10のセル11の内部空間の中心軸を通り、該中心軸と平行な面での断面図を模式的に示している。
【0045】
圧力伝達率や、圧力緩和率の測定に当たってはまず、セル11内の内部空間に測定試料である粉体12を充填する。なお、内部空間の形状は特に限定されないが、例えば円柱形状の空間とすることができる。
【0046】
次いで、セル11の上部に設けられ、セル11内に粉体に圧力を加えられるように構成された上蓋13を配置する。
【0047】
上蓋13の上方には、上蓋13を上下に動かすサーボモーター及び粉体12の上部垂直応力を測定するロードセルを備えた押圧・応力測定手段14が配置されており、上蓋13を介して粉体12に対して荷重を加える。この際、荷重、すなわち押し込み最大荷重が100Nとなるように圧力を加える。そして圧力を加えた直後の上部垂直応力δU0を測定する。
【0048】
次いで、圧力を加えはじめてから100秒経過し、応力が緩和された後の上部垂直応力δU1を同様にして測定する。
【0049】
また、セル11の下部には下部垂直応力を測定できるロードセルを備えた応力測定手段15が配置されており、圧力を加えてから100秒経過した後に上部垂直応力を測定した際にあわせて下部垂直応力δL1を測定する。
【0050】
以上の測定結果から、圧力伝達率は以下の(2)式により算出できる。
【0051】
(圧力伝達率)=100×δL1/δU1・・・(2)
また、圧力緩和率は、以下の(3)式により算出できる。
【0052】
(圧力緩和率)=100×(1-δU1/δU0)・・・(3)
なお、圧力伝達率・緩和率測定装置10は、例えばセル11を上下分割式、すなわち下部セル111と上部セル112とに分割できるように構成することもできる。そして、上部セル112を固定し、下部セル111を水平方向に動かすサーボモーター及びせん断応力を測定するロードセルを備えた水平方向押圧・応力測定手段16をさらに配置することで、圧力伝達率・緩和率測定装置10は、剪断力測定装置とすることもできる。
【0053】
なお、本発明の発明者らの検討によれば、粒径が100μm以下の微粉の動摩擦角や、壁面摩擦角、圧力伝達率、圧力緩和率等の物性は、水酸化リチウム水和物の粒度分布や円形度の影響を受けると考えられる。このため、水酸化リチウム水和物の粒度分布や、円形度等を調整することで、これらの物性も調整することができる。
【0054】
本実施形態の水酸化リチウム水和物の製造方法は特に限定されるものではない。例えば炭酸リチウム水溶液と、水酸化カルシウム水溶液とを反応させることで水酸化リチウム水溶液と、炭酸カルシウムの沈殿物とを得、炭酸カルシウムを分離後、水酸化リチウムを晶析させることで製造することができる。
【0055】
そして、水酸化リチウムを晶析する際の、例えば水酸化リチウム水溶液の温度条件等により粒度分布や円形度等が変化する。なお、ここでいう温度条件とは、例えば水酸化リチウムを冷却し、水酸化リチウムを晶析する際の冷却条件等を含む。このため、予備試験により温度条件等と、粒度分布や円形度との関係を求めておき、所望の粒度分布、円形度等となるように温度条件等を選択し、製造することができる。
【0056】
また、得られた水酸化リチウム水和物を篩分け等することで、粒度分布を調整し、累積50%粒子径、累積90%粒子径、累積10%粒子径や、微粉の含有割合を所望の範囲とすることもできる。
[リチウムニッケル複合酸化物の製造方法]
本実施形態の水酸化リチウム水和物を用いて各種リチウム含有化合物を製造することができる。ここでは、リチウムニッケル複合酸化物の製造方法の一構成例について説明する。
【0057】
本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法により、最終的に得られるリチウムニッケル複合酸化物の組成は特に限定されるものではなく任意の組成とすることができる。
【0058】
ただし、一般式:LiNi(1-y-z)2+α(式中、Mは、CoおよびMnから選択される少なくとも1種、Nは、AlおよびTiから選択される少なくとも1種であり、0.95≦x≦1.15、0.05≦y≦0.35、0.005≦z≦0.8、-0.2≦α≦0.2である。)で表されるリチウムニッケル複合酸化物であることが好ましい。
【0059】
リチウムニッケル複合酸化物としては、各種組成の複合酸化物が提案されているが、上記一般式で表されるリチウムニッケル複合酸化物は、電池特性に優れている点で好ましく、さらに、本実施形態に係るリチウムニッケル複合酸化物の製造方法を適用することにより、工業的規模での量産工程においても、優れた充放電特性を安定して備える正極活物質を得ることが可能となる。
【0060】
ここで、一般式のM元素は、Coおよび/またはMnであり、yを上記範囲とすることで、リチウムイオン二次電池の正極材料に用いられた際の電池容量の低下を抑制しながらサイクル特性を向上させることができる。yは、0.1以上0.2以下の範囲にあることが特に好ましい。
【0061】
また、一般式のN元素は、Alおよび/またはTiであり、zを上記範囲とすることで、リチウムイオン二次電池の正極材料に用いられた際の電池容量の低下を抑制しながら熱安定性を向上させることができる。zは、0.02以上0.05以下の範囲にあることが特に好ましい。
【0062】
そして、本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法は、以下の工程を有することができる。
【0063】
既述の水酸化リチウム水和物を無水化する脱水工程。
【0064】
無水水酸化リチウムと、ニッケル化合物との混合物を形成する混合工程。
【0065】
混合物を、焼成する焼成工程。
【0066】
以下に各工程について説明する。
(脱水工程)
脱水工程においては、既述の水酸化リチウム水和物を加熱し、脱水することができる。この際、水酸化リチウム水和物を短時間で均一に加熱し、より短時間で脱水するために、水酸化リチウム水和物を流動させながら加熱することが好ましい。
【0067】
なお、水酸化リチウム水和物を加熱する過程においては、水酸化リチウム水和物から生じた水により、水酸化リチウムは水分の多い環境下に置かれることになるが、水分の多い環境下では、水酸化リチウムが炭酸化し易い。しかし、既述の水酸化リチウム水和物を原料として用い、水酸化リチウム水和物を短時間で脱水処理することができるため、炭酸化の進行を特に抑制することができる。
【0068】
脱水工程において、水酸化リチウム水和物を流動させる場合、水酸化リチウム水和物を流動させる手段は特に限定されないが、例えば各種撹拌機を用いることができる。特に、転動撹拌機を好ましく用いることができる。なお、転動撹拌機とは、1または2以上の撹拌手段を備えており、該撹拌手段がモーター等の回転手段により加えられた動力により回転することで撹拌機内の試料を撹拌することができる装置を意味する。そして、該転動撹拌機に加熱手段を設けておくことにより試料を流動させながら加熱することができる。
【0069】
加熱手段は、流動している水酸化リチウム水和物を加熱できる手段であればよく、特に限定されないが、例えばジャケット構造を有し、該ジャケット内に水蒸気等の熱媒体を供給することで加熱する手段等を挙げることができる。なお、上述のジャケット構造を有する加熱手段を用いる場合、該加熱手段により流動している水酸化リチウム水和物を加熱できるように該加熱手段を配置することが好ましい。例えば撹拌機の被撹拌物を撹拌する領域を画する壁部等の一部、または全部を該加熱手段により構成することができる。
【0070】
水酸化リチウム水和物を流動させる手段としては、上述のような撹拌機を用いる方法だけではなく、例えば気流により、水酸化リチウム水和物を流動させながら乾燥する手段等も挙げられる。この場合、供給する気流を加熱しておくことで、水酸化リチウム水和物の流動と、加熱とを併せて行うことができる。
【0071】
脱水工程において、水酸化リチウム水和物を流動、加熱する際の雰囲気は特に限定されないが、空気雰囲気、窒素雰囲気、真空雰囲気から選択された雰囲気を好ましく用いることができる。
【0072】
真空雰囲気とする場合には、真空圧を-70kPa以下とすることが好ましい。なお、本明細書で真空圧はゲージ圧(相対圧)で示している。真空圧を-70kPa以下とすることで、脱水反応を促進することができるからである。真空圧の下限値は特に限定されないが、高真空とするためには、排気能力の高い真空ポンプが必要となるため、コストを低減する観点から-90kPa以上であることが好ましい。
【0073】
脱水工程における加熱温度は、80℃以上250℃以下の範囲が好ましく、100℃以上200℃以下の範囲がより好ましい。
【0074】
上述のように、熱媒体として水蒸気を用いる場合は、操業の容易性や設備の簡略化の観点から、脱水工程における加熱温度を100℃以上150℃以下とすることが好ましい。
【0075】
脱水工程において、上記温度範囲で加熱して脱水することにより、水酸化リチウム水和物の結晶水を十分に脱水するとともに、脱水に必要な時間を短縮することができる。
【0076】
加熱時間は、特に限定されるものではない。例えば、脱水工程に供する水酸化リチウム水和物の量や、加熱温度等を考慮して、水酸化リチウム水和物が十分に無水水酸化リチウムに転換される、例えば無水水酸化リチウムの水分含有量が好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下となる時間を選択できる。
【0077】
加熱時間は、例えば200分間以上250分間以下とすることができる。なお、加熱時間とは、既述の加熱温度で保持している時間を意味する。
【0078】
脱水後に無水水酸化リチウムに水分が吸着すると、炭酸リチウムの生成が促進されるため、脱水工程後の無水水酸化リチウムは乾燥状態を保持することが好ましい。工業的規模の量産工程では、管理された水分および炭酸ガス分圧下で保管することにより水酸化リチウムの乾燥状態を維持することが好ましい。
(混合工程)
混合工程では、脱水工程で得られた無水水酸化リチウムと、ニッケル化合物との混合物を形成することができる。
【0079】
この際に用いるニッケル化合物は特に限定されるものではなく、一般的にリチウムニッケル複合酸化物の原料となるニッケル化合物を用いることができる。
【0080】
ニッケル化合物としては特に、不純物混入の低減や粒径制御の観点から、ニッケル複合水酸化物、およびニッケル複合酸化物から選択された1種類以上を用いることが好ましい。具体的には調製するリチウムニッケル複合酸化物の目的組成に応じた、ニッケル複合水酸化物や、ニッケル複合酸化物を用いることができ、例えば、既述の一般式で示したリチウムニッケル複合酸化物を調製する場合、Ni(1-y-z)(OH)2+βや、Ni(1-y-z)1+γから選択された1種類以上を用いることができる。なお、上記式中のy、zは既述のリチウムニッケル複合酸化物の一般式と同じ数値範囲とすることができる。また、β、γは-0.2≦β≦0.2、-0.2≦γ≦0.2とすることができる。
【0081】
ニッケル複合水酸化物は通常の方法で得られるものでよく、特に限定されないが、組成が均一であり、適度な粒径である粒子が得られるため、共沈法で得られたニッケル複合水酸化物を好ましく用いることができる。また、ニッケル複合酸化物は、ニッケルおよび添加元素を含有する化合物を酸化焙焼することで得られるものが好ましく、例えば上記ニッケル複合水酸化物を酸化焙焼して得られるものがより好ましい。
【0082】
原料として、ニッケル複合水酸化物、および/またはニッケル複合酸化物を用いた場合、これらの原料の二次粒子の平均粒径は特に限定されないが、5μm以上20μm以下の範囲とすることが好ましく、8μm以上15μm以下の範囲とすることがより好ましい。原料の平均粒径は、得られるリチウムニッケル複合酸化物に継承されるため、上記平均粒径の範囲とすることで、良好な充填性とともに、電池に用いた際の電解質との反応性を高くすることができ、電池特性を良好なものとすることができる。
【0083】
なお、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における体積積算値50%での粒径を意味する。本明細書では平均粒径は同様の意味を有する。
【0084】
ニッケル化合物と混合する水酸化リチウムの量は特に限定されず、目的とするリチウムニッケル複合酸化物の組成に応じて選択することができる。例えば既述のリチウムニッケル複合酸化物の組成に応じた混合比とすることができる。焼成前後で組成はほとんど変化しないため、得ようとするリチウムニッケル複合酸化物の組成から、ニッケル複合酸化物と混合する水酸化リチウムの量を容易に決定することができる。
【0085】
混合方法としては、通常用いられる方法でよく、一般的な混合機を使用することができ、シェーカーミキサー、レーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いることができ、ニッケル化合物の形骸が破壊されない程度に、十分に混合されればよい。
[焼成工程]
焼成工程では、混合工程で得られた混合物を焼成することで、リチウムニッケル複合酸化物を生成することができる。
【0086】
焼成時の雰囲気としては、酸素を十分に供給するため、酸素濃度が60容量%以上であることが好ましく、80容量%以上であることがより好ましい。
【0087】
これは、リチウムニッケル複合酸化物の合成反応では、例えば以下の反応式(1)に示す化学反応により水が生成される。水が多量に生成されると、外部から十分な酸素が供給されない場合は、反応場への酸素の拡散が不足して反応式(1)の反応が進行せず、リチウムニッケル複合酸化物の合成不足が発生し、電池容量の低下など、電池性能が劣化した正極活物質となる恐れがあるからである。
【0088】
2NiO+2LiOH+1/2O2 → 2LiNiO2+H2O ・・・(1)
この際、酸素は、窒素あるいは不活性ガスと混合して供給することが好ましい。
【0089】
また、焼成温度としては、700℃以上780℃以下の範囲であることが好ましく、700℃以上750℃以下の範囲であることがより好ましい。700℃以上とすることで、十分に結晶成長したリチウムニッケル複合酸化物を得ることができ、良好な電池性能が得られ、好ましいからである。また、780℃以下とすることで、生成したリチウムニッケル複合酸化物が分解することを抑制できるからである。
【0090】
焼成工程において、上記焼成温度に昇温する過程で、水酸化リチウムの溶融温度から焼成温度までの温度域、例えば450℃以上650℃以下の範囲で一旦保持してニッケル化合物と水酸化リチウムを十分に反応させることが好ましい。
【0091】
焼成に用いる炉としては、雰囲気が制御できる各種の炉が使用可能であるが、排気ガスが発生することがない電気炉を用いることが好ましく、工業的生産においては、特にプッシャー炉やローラーハース炉などのように、連続的に焼成可能な炉を使用することが好ましい。
【0092】
なお、ここではリチウムニッケル複合酸化物を製造する場合を例に説明したが、本実施形態の水酸化リチウム水和物は、各種リチウム化合物の製造等に適用することができ、係る形態、用途に限定されるものではない。
【実施例
【0093】
以下、本発明の実施例について、比較例との対比により、より具体的に説明をおこなうが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
水酸化リチウム水和物を晶析反応により製造した。具体的には、炭酸リチウム水溶液と、水酸化カルシウム水溶液とを反応させることで水酸化リチウム水溶液と、炭酸カルシウムの沈殿物とを得、炭酸カルシウムを分離後、水酸化リチウムを晶析させることで水酸化リチウム水和物を製造した。なお、製造に当たっては予備試験を行い、水酸化リチウム水溶液から水酸化リチウムを晶析する際の水酸化リチウム水溶液の温度条件と得られる水酸化リチウム水和物の粒度分布、円形度との関係を求めておいた。そして、以下の篩分けを行った場合に、累積50%粒子径(D50)が270μm程度、累積90%粒子径(D90)が450μm程度となり、円形度が累積50%粒子径(D50)において0.85程度になるように温度条件を選択して行った。
【0094】
得られた水酸化リチウム水和物は、水酸化リチウム一水和物であった。
【0095】
そして、得られた水酸化リチウム水和物について、目開きが900μmの篩を用い、900μmより大きい粒径の粗大粒子を除去した。
【0096】
篩分けを行った後に得られた水酸化リチウム水和物について、以下の評価を行った。
(粒度分布)
得られた水酸化リチウム水和物についてレーザー回折・散乱法粒度分布測定機(日機装株式会社製 型式:HRA9320 X-100)を用いて乾式で粒度分布を測定した。そして、得られた粒度分布から、累積10%粒子径、累積50%粒子径、累積90%粒子径をそれぞれ求めた。
(円形度)
得られた水酸化リチウム水和物0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、分散液に28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射して測定用試料を調製した。
【0097】
そして、得られた測定用試料について、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製 型式:FPIA-3000)を用い、累積50%粒子径の粒子について円形度を測定した。
(粒径が100μm以下の微粉割合)
得られた水酸化リチウム水和物を、目開きが100μmの篩により篩分けし、篩の下に落ちた水酸化リチウムの質量割合を算出した。
(動摩擦角、壁面摩擦角、圧力伝達率、圧力緩和率)
上述の粒径が100μm以下の微粉割合を算出するために分離した、粒径が100μm以下の微粉について、動摩擦角、壁面摩擦角、圧力伝達率、圧力緩和率を測定した。
【0098】
動摩擦角、壁面摩擦角、圧力伝達率、圧力緩和率の測定は、粉体層せん断試験機(株式会社ナノシーズ製 型式:NS-S300)を用いて行った。
【0099】
動摩擦角、及び壁面摩擦角は、JIS Z 8835(2016)に基づいて測定を行った。
【0100】
また、圧力伝達率、及び圧力緩和率の測定手順、及び算出式については既述のため、ここでは説明を省略する。
(脱水時間、バグフィルター閉塞有無)
得られた水酸化リチウム水和物を、図2に示したジャケット構造を有する加熱手段を備えた転動撹拌機20(日本コークス工業(株)製、型式:FM4000)に供給した。なお、図2は、転動撹拌機20の撹拌手段22の回転軸を通り、回転軸と平行な面での断面図を模式的に示している。
【0101】
転動撹拌機20は、図2に示すように、側壁、及び底面を構成する壁部21がジャケット構造になっており、内部に熱媒体である蒸気を供給できるように構成されている。そして、底部には、撹拌手段22が設けられており、該撹拌手段22を図示しないモーターにより回転させることで、転動撹拌機20の内部に入れた試料を流動させることができる。また、転動撹拌機20の壁部21で囲まれた容器の上部には図示しない蓋を配置することができ、試料周辺の雰囲気を制御できるように構成されている。
【0102】
転動撹拌機20には、容器内を真空引きするための図示しない真空ポンプが接続されており、該真空ポンプと、転動撹拌機20の容器内とを接続する配管にはバグフィルターが設けられている。
【0103】
そして、転動撹拌機20の容器内211の雰囲気を大気圧から減圧した真空雰囲気(-90kPa)とし、加熱することで脱水処理を行った。
【0104】
具体的には、転動撹拌機20の壁部21のジャケット内に水蒸気をゲージ圧0.19MPa(130℃相当)で供給し、容器内は、上述のように真空雰囲気に保持したまま撹拌手段22で撹拌することにより、試料である水酸化リチウム水和物を流動させながら130℃に加熱した。
【0105】
脱水時間は、転動撹拌機20内の中心部で測温した温度が65℃に達した時点から、転動撹拌機20内の中心部で測温した温度が120℃に達するまでの時間とした。これは、転動撹拌機のジャケット内に水蒸気を供給開始後、脱水が進行している間は転動撹拌機20内の壁部21から離れた中心部で測温した温度は65℃近傍で安定するからである。そして、その後脱水が完了に近づくと徐々に温度が上昇し、転動撹拌機20内の中心部で測温した温度も供給する水蒸気の温度に近い120℃程度にまで昇温するからである。なお、壁部21近傍ではジャケットに供給した水蒸気と略同じ温度、すなわち約130℃となっている。
【0106】
また、脱水処理中にバグフィルターの閉塞の有無を評価した。バグフィルターは、真空ポンプと、転動撹拌機20の容器内とを接続する配管に設けられており、転動撹拌機20内の真空圧が-70kPaよりも悪化した場合、すなわち真空圧が-70kPaを越えて、例えば-65kPa等のように-70kPaよりも大きな数値になった場合に閉塞が生じていると判断した。
【0107】
以上の評価結果を表1に示す。
[実施例2]
水酸化リチウム水和物を晶析反応により製造する際、温度条件を変更した点と、晶析後得られた水酸化リチウム水和物について篩分けを行わなかった点以外は実施例1と同様にして水酸化リチウム水和物を製造し、評価を行った。得られた水酸化リチウム水和物は水酸化リチウム一水和物であった。
【0108】
なお、晶析反応を行うに当っては、予備試験を行い、水酸化リチウム水溶液から水酸化リチウム水和物を晶析する際の水酸化リチウム水溶液の温度条件と、得られる水酸化リチウム水和物の粒度分布、円形度との関係を求めておいた。そして、本実施例では累積50%粒子径(D50)が350μm程度、累積90%粒子径(D90)が510μm程度、円形度が累積50%粒子径(D50)において0.85程度となるように晶析の際の温度条件を選択した。
【0109】
得られた水酸化リチウム水和物の評価結果を表1に示す。
[実施例3]
水酸化リチウム水和物を晶析反応により製造する際、温度条件を変更した点以外は実施例2と同様にして水酸化リチウム水和物を製造し、評価を行った。得られた水酸化リチウム水和物は水酸化リチウム一水和物であった。
【0110】
なお、予備試験の結果に基づき、本実施例では累積50%粒子径(D50)が280μm程度、累積90%粒子径(D90)が460μm程度、円形度が累積50%粒子径(D50)において0.75程度となるように晶析の際の温度条件を選択した。
【0111】
得られた水酸化リチウム水和物の評価結果を表1に示す。
[実施例4]
水酸化リチウム水和物を晶析反応により製造する際、温度条件を変更した点以外は実施例2と同様にして水酸化リチウム水和物を製造し、評価を行った。得られた水酸化リチウム水和物は水酸化リチウム一水和物であった。
【0112】
なお、予備試験の結果に基づき、本実施例では累積50%粒子径(D50)が330μm程度、累積90%粒子径(D90)が500μm程度、円形度が累積50%粒子径(D50)において0.90程度となるように晶析の際の温度条件を選択した。
【0113】
得られた水酸化リチウム水和物の評価結果を表1に示す。
[実施例5]
水酸化リチウム水和物を晶析反応により製造する際、温度条件を変更した点以外は実施例2と同様にして水酸化リチウム水和物を製造し、評価を行った。得られた水酸化リチウム水和物は水酸化リチウム一水和物であった。
【0114】
なお、予備試験の結果に基づき、本実施例では累積50%粒子径(D50)が330μm程度、累積90%粒子径(D90)が500μm程度、さらに粒径が100μm以下である微粉の含有割合が6.5%程度となるように晶析の際の温度条件を選択した。
【0115】
得られた水酸化リチウム水和物の評価結果を表1に示す。
[比較例1]
水酸化リチウム水和物を製造する際の温度条件を変更し、得られた水酸化リチウム水和物を篩分け等せずそのまま用いた点以外は、実施例1と同じ条件にして水酸化リチウム水和物(水酸化リチウム一水和物)を製造した。なお、製造に当たっては予備試験を行い、水酸化リチウム水溶液から水酸化リチウムを晶析する際の水酸化リチウム水溶液の温度条件と得られる水酸化リチウム水和物の粒度分布、円形度との関係を求めておいた。そして、累積50%粒子径(D50)が400μm程度、累積90%粒子径(D90)が1000μm程度となり、円形度が累積50%粒子径(D50)において0.85程度になるように温度条件を選択して行った。
【0116】
そして、得られた水酸化リチウム水和物について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0117】
[比較例2]
水酸化リチウム水和物を晶析反応により製造する際、温度条件を変更した点以外は実施例2と同様にして水酸化リチウム水和物を製造し、評価を行った。得られた水酸化リチウム水和物は水酸化リチウム一水和物であった。
【0118】
なお、予備試験の結果に基づき、本実施例では累積50%粒子径(D50)が330μm程度、累積90%粒子径(D90)が600μm程度となりとなるように晶析の際の温度条件を選択した。
【0119】
得られた水酸化リチウム水和物の評価結果を表1に示す。
[比較例3]
水酸化リチウム水和物を晶析反応により製造する際、温度条件を変更した点以外は実施例2と同様にして水酸化リチウム水和物を製造し、評価を行った。得られた水酸化リチウム水和物は水酸化リチウム一水和物であった。
【0120】
なお、予備試験の結果に基づき、本実施例では累積50%粒子径(D50)が420μm程度、累積90%粒子径(D90)が540μm程度となるように晶析の際の温度条件を選択した。
【0121】
得られた水酸化リチウム水和物の評価結果を表1に示す。
【0122】
【表1】
表1に示した結果によると、累積50%粒子径(D50)が350μm以下、累積90%粒子径(D90)が550μm以下である実施例1の水酸化リチウム水和物は、乾燥時間が221分と短くなることが確認できた。
【0123】
同様に累積50%粒子径(D50)が350μm以下、累積90%粒子径(D90)が550μm以下である実施例2~5の水酸化リチウム水和物についても、乾燥時間が250分以下と短くなることが確認できた。
【0124】
一方、累積50%粒子径(D50)が350μmを越え、累積90%粒子径(D90)が550μmを超える比較例1の水酸化リチウム水和物は、乾燥時間が284分と長くなることを確認できた。
【0125】
同様に累積50%粒子径(D50)が350μmを越えているか、累積90%粒子径(D90)が550μmを越えている比較例2、3の水酸化リチウム水和物についても、乾燥時間が276分、または271分と、上述の実施例1~5よりも長くなることが確認できた。
【0126】
また、実施例1~4において得られた水酸化リチウム水和物を用いて脱水工程を行った際、配管や設備のハウジング内壁にほとんど付着していないことが確認できた。また、バグフィルターの閉塞は見られなかった。
【0127】
一方、比較例1において得られた水酸化リチウム水和物を用いて脱水工程を行った際、バグフィルターの閉塞が観察された。
図1
図2