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特許7119763製造設備システム、製造設備、および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】製造設備システム、製造設備、および製造方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018155584
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020030591
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】荒井 航
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-150646(JP,A)
【文献】特開2016-143290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル生産方式による製造ラインを構成する複数の移動可能な製造設備を備える製造設備システムであって、
前記複数の移動可能な製造設備のうち、少なくとも一部の製造設備のそれぞれは、
隣接して設置された状態における製造設備同士の中心間距離の半分以下となる通信距離を有する近接無線通信部と、
隣接して設置された製造設備から、前記近接無線通信部によって受信した設定データを用いて当該製造設備における動作設定を行う設定処理部とを備え
前記少なくとも一部の製造設備のそれぞれは、前記近接無線通信部として、前記設定データの流れにおける下流側の製造設備の前記近接無線通信部と通信する上流側通信部と、前記設定データの流れにおける上流側の製造設備の前記近接無線通信部と通信する下流側通信部とを有しており、
前記設定データは、製造する製品の種類、および前記製品を製造するための各製造設備の設定情報と紐付けられており、
各製造設備の前記設定情報は、当該各製造設備の型式を示す情報を含んでおり、
前記少なくとも一部の製造設備のうちの1つを上流設備と称した場合に、当該上流設備と隣接して設置された下流側の製造設備を下流設備と称し、
前記上流設備は、
前記上流設備における前記上流側通信部と前記下流設備における前記下流側通信部との通信によって、前記下流設備の型式を前記下流設備から取得し、
前記複数の移動可能な製造設備のうち、前記設定データの流れにおける最上流の製造設備に記憶されている設定データにおいて記述されている前記下流設備の型式を、前記最上流の製造設備から取得し、
前記下流設備から取得した前記下流設備の型式と前記最上流の製造設備から取得した前記下流設備の型式とを照合し、両者の型式が不一致である場合には、その旨を通知する、製造設備システム。
【請求項2】
前記近接無線通信部による通信は、事前の接続設定が不要である請求項1に記載の製造設備システム。
【請求項3】
前記近接無線通信部による通信は、NFCである請求項2に記載の製造設備システム。
【請求項4】
前記複数の移動可能な製造設備のうち、前記最上流の製造設備は、前記複数の移動可能な製造設備の全ての前記設定データを受け付ける請求項1からのいずれか1項に記載の製造設備システム。
【請求項5】
前記複数の移動可能な製造設備のうち、前記最上流の製造設備に、前記複数の移動可能な製造設備の全ての前記設定データが記憶される請求項に記載の製造設備システム。
【請求項6】
前記複数の移動可能な製造設備のうち、前記最上流の製造設備に対して、前記複数の移動可能な製造設備の全ての前記設定データを入力するための入力端末を備えている請求項またはに記載の製造設備システム。
【請求項7】
前記製品を選択すると、選択された前記製品に対応する前記設定データが流れる請求項1から6のいずれか1項に記載の製造設備システム。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の製造設備システムが備えている製造設備。
【請求項9】
セル生産方式による製造ラインを構成する複数の移動可能な製造設備を用いる製造方法であって、
前記複数の移動可能な製造設備のうち、少なくとも一部の製造設備のそれぞれ、隣接して設置された状態における製造設備同士の中心間距離の半分以下となる通信距離を有する近接無線通信部を有しており、
前記製造方法は、
隣接して設置された製造設備から、前記近接無線通信部によって受信した設定データを用いて当該製造設備における動作設定を行うステップを含んでおり、
前記少なくとも一部の製造設備のそれぞれは、前記近接無線通信部として、前記設定データの流れにおける下流側の製造設備の前記近接無線通信部と通信する上流側通信部と、前記設定データの流れにおける上流側の製造設備の前記近接無線通信部と通信する下流側通信部とを有しており、
前記設定データは、製造する製品の種類、および前記製品を製造するための各製造設備の設定情報と紐付けられており、
各製造設備の前記設定情報は、当該各製造設備の型式を示す情報を含んでおり、
前記少なくとも一部の製造設備のうちの1つを上流設備と称した場合に、当該上流設備と隣接して設置された下流側の製造設備を下流設備と称し、
前記製造方法は、
前記上流設備における前記上流側通信部と前記下流設備における前記下流側通信部との通信によって、前記下流設備の型式を前記下流設備から取得するように、前記上流設備を動作させるステップと、
前記複数の移動可能な製造設備のうち、前記設定データの流れにおける最上流の製造設備に記憶されている設定データにおいて記述されている前記下流設備の型式を、前記最上流の製造設備から取得するように、前記上流設備を動作させるステップと、
前記下流設備から取得した前記下流設備の型式と前記最上流の製造設備から取得した前記下流設備の型式とを照合し、両者の型式が不一致である場合には、その旨を通知する
ように、前記上流設備を動作させるステップと、を含んでいる、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造設備システム、製造設備、および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セル生産方式において、段取り替えのため、製造設備の入れ替えおよび/または並び替えを行うケースがある。セル生産方式とは、組み立て製造業において、一人または数人の作業員が、部品の取り付けから組み立て、加工、検査までの全工程を担当する生産方式である。
【0003】
従来、製造設備の入れ替えおよび/または並び替え後、(a)または(b)の作業が実行される。
【0004】
(a)作業員が、製造設備の取り違えがないかを確認する。また、作業員が、各製造設備に対して、HMI(Human Machine Interface)等によって直接動作設定を行う。
【0005】
(b)各製造設備を有線によって接続する。そして、各製造設備は、上流の製造設備から設定データを受信し、当該設定データを用いて動作設定を行う(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-99113号公報(2003年4月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記(a)の作業においては、作業員による作業工数が多いため、作業員による製造設備の設定ミスが生じ易いという問題が発生する。
【0008】
前記(b)の作業においては、製造設備の入れ替えおよび/または並び替えの度に、各製造設備に対する配線の抜き差しが必要である。このため、作業員による作業工数が多いことで作業員による製造設備の設定ミスが生じ易く、さらに、当該配線の抜き差しの不備に起因する製造設備の設定ミスが生じ易いという問題が発生する。
【0009】
本発明の一態様は、製造設備の設定ミスが生じ難い製造設備システム、製造設備、および製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る製造設備システムは、セル生産方式による製造ラインを構成する複数の移動可能な製造設備を備える製造設備システムであって、前記複数の移動可能な製造設備のうち、少なくとも一部の製造設備のそれぞれは、隣接して設置された状態における製造設備同士の中心間距離の半分以下となる通信距離を有する近接無線通信部と、隣接して設置された製造設備から、前記近接無線通信部によって受信した設定データを用いて当該製造設備における動作設定を行う設定処理部とを備える。
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る製造方法は、セル生産方式による製造ラインを構成する複数の移動可能な製造設備を用いる製造方法であって、前記複数の移動可能な製造設備のうち、少なくとも一部の製造設備のそれぞれに、隣接して設置された状態における製造設備同士の中心間距離の半分以下となる通信距離を有する近接無線通信部を設け、隣接して設置された製造設備から、前記近接無線通信部によって受信した設定データを用いて当該製造設備における動作設定を行う。
【0012】
前記の構成によれば、製造設備は、隣接して設置された製造設備から設定データを受け取り、当該設定データに基づいて当該製造設備における動作設定を行う。これにより、複数の製造設備のいずれかに対して、複数の製造設備の全ての設定データを供給すれば、当該設定データを各製造設備を経由させることで、複数の製造設備の全ての動作設定を行うことが可能となる。
【0013】
前記の構成によれば、作業員は、複数の製造設備のいずれかに対して、複数の製造設備の全ての設定データを供給するだけなので、作業員による作業工数が少ない。このため、作業員による製造設備の設定ミスが生じ難い。また、前記の構成によれば、製造設備の入れ替えおよび/または並び替えの度に、各製造設備に対する配線の抜き差しをすることが不要である。よって、作業員による作業工数が減るため作業員による製造設備の設定ミスが生じ難く、さらに、当該配線の抜き差しの不備に起因する製造設備の設定ミスが生じない。従って、前記の構成によれば、製造設備の設定ミスが生じ難い製造設備システムおよび製造方法を実現することができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る製造設備システムにおいて、前記近接無線通信部による通信は、事前の接続設定が不要である構成としてもよい。
【0015】
特に、本発明の一態様に係る製造設備システムにおいて、前記近接無線通信部による通信は、NFC(Near Field Communication)である構成としてもよい。
【0016】
前記(b)の作業における配線としてLAN(Local Area Network)ケーブルを用いた場合、IPアドレスによって、通信可能な製造設備が制限される虞がある。前記の構成によれば、近接無線通信部による通信は、事前の接続設定が不要であるもの、具体例としてはNFCであるため、このような制限なく製造設備同士が通信することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る製造設備システムにおいて、前記少なくとも一部の製造設備のそれぞれは、前記近接無線通信部として、前記設定データの流れにおける下流側の製造設備の前記近接無線通信部と通信する上流側通信部と、前記設定データの流れにおける上流側の製造設備の前記近接無線通信部と通信する下流側通信部とを有している構成としてもよい。
【0018】
前記の構成によれば、少なくとも一部の製造設備のそれぞれは、設定データの流れにおける上流側の製造設備から同下流側の製造設備へと順に、設定データを供給することができる。従って、この順に、複数の製造設備の全ての動作設定を行うことができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る製造設備システムにおいて、前記複数の移動可能な製造設備のうち、前記設定データの流れにおける最上流の製造設備は、前記複数の移動可能な製造設備の全ての前記設定データを受け付ける構成としてもよい。
【0020】
また、本発明の一態様に係る製造設備システムは、前記複数の移動可能な製造設備のうち、前記設定データの流れにおける最上流の製造設備に、前記複数の移動可能な製造設備の全ての前記設定データが記憶される構成としてもよい。
【0021】
また、本発明の一態様に係る製造設備システムは、前記複数の移動可能な製造設備のうち、前記設定データの流れにおける最上流の製造設備に対して、前記複数の移動可能な製造設備の全ての前記設定データを入力するための入力端末を備えている構成としてもよい。
【0022】
前記の構成によれば、複数の移動可能な製造設備のうち、設定データの流れにおける最上流の製造設備に対して、設定データを供給することができる。とりわけ、入力端末を備えている場合、入力端末で最上流の製造設備の型式等を確認した上で、最上流の製造設備に設定データを供給することができるため、最上流の製造設備の取り違えを防ぐことができる。また、入力端末を備えている場合、稼働中の製造設備システムに対して設定データの書き換え動作を行う必要がないので、製造設備システムの稼働中に不適切な書き換えが行われることを防ぐことができる。さらに、入力端末を備えている場合、設定データが入力端末に記録されているので、最上流の製造設備におけるデータ書き換えによって、設定データを失う虞を低減することができる。
【0023】
また、本発明の一態様に係る製造設備システムにおいて、前記設定データは、製造する製品の種類、および前記製品を製造するための各製造設備の設定情報と紐付けられている構成としてもよい。
【0024】
前記の構成によれば、製造対象の製品の製造に対応するための製造設備の設定を行うことができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る製造設備システムは、前記製品を選択すると、選択された前記製品に対応する前記設定データが流れる構成としてもよい。
【0026】
前記の構成によれば、製造対象の製品の選択をトリガーとして、製造対象の製品の製造に対応するための製造設備の設定を行うことができる。
【0027】
なお、前記製造設備システムが備えている製造設備についても、本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様によれば、製造設備の設定ミスが生じ難い製造設備システム、製造設備、および製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一側面に係る実施の形態に係る製造設備システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示す製造設備システムの動作の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の一側面に係る実施の形態の変形例に係る製造設備システムの概略構成を示すブロック図である。
図4】製造する製品の種類と、設定データ(製品を製造するための各製造設備の設定情報)との紐付けの一例を示す表である。
図5】製造する製品の種類と、設定データ(製品を製造するための各製造設備の設定情報)との紐付けの別の例を示す表である。
図6】設定データの具体例を示す図である。
図7】(a)~(e)のそれぞれは、複数の製造設備の設置パターンを示す概略図である。
図8】近接無線通信部の通信距離について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0031】
§1 適用例
図1は、本実施形態に係る製造設備システム100の概略構成を示すブロック図である。製造設備システム100は、セル生産方式において用いられるものである。製造設備システム100は、当該セル生産方式による製造ラインを構成する複数の製造設備1~3を備えている。複数の製造設備1~3のそれぞれは、移動可能なものである。各製造設備1~3は、製造装置、および当該製造装置を搭載する台を有しており、当該製造装置の一例として、プレス機、射出成形機、および圧入機が挙げられる。
【0032】
製造設備1は、製品選択装置4および記憶部5を有している。また、製造設備1~3のそれぞれは、近接無線通信部6および設定処理部7を有している。
【0033】
製品選択装置4は、製造設備システム100が製造する製品を選択するものである。記憶部5には、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・が記憶されている。設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・は、製造設備システム100が製造可能な製品(製品A、製品B、・・・)毎に設定された、各製造設備1~3における動作設定を行うためのデータである。各設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・は、製造する製品の種類、およびその製品を製造するための各製造設備1~3の設定情報と紐付けられている。
【0034】
近接無線通信部6は、NFCリーダライタ(上流側通信部)9およびNFCタグ(下流側通信部)10を有している。NFCリーダライタ9は、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の流れにおける下流側の製造設備の近接無線通信部6と通信する。NFCタグ10は、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の流れにおける上流側の製造設備の近接無線通信部6と通信する。製造設備システム100において、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の流れは、上流側から順に、製造設備1、製造設備2、製造設備3であるものとする。設定処理部7は、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・のいずれかに基づいて、対応する製造設備1~3のいずれかにおける動作設定を行う。
【0035】
ここからは、製造設備システム100が製品Aを製造する場合を例に説明する。製品選択装置4は、製造設備システム100が製造する製品として、製品Aを選択する。製品選択装置4が製品Aを選択すると、製造設備1の設定処理部7が製品Aに対応する設定データ(製品A)8Aに基づいて製造設備1における動作設定を行うと共に、設定データ(製品A)8Aが流れる。
【0036】
近接無線通信部6は、隣接して設置された状態における製造設備同士の中心間距離の半分以下となる通信距離(通信可能距離)を有する。製造設備2および3それぞれの設定処理部7は、隣接して設置された製造設備から、近接無線通信部6によって受信した設定データ(製品A)8Aを用いて当該製造設備における動作設定を行う。製造設備システム100においては、製造設備1と製造設備2とが隣接しており、製造設備2と製造設備3とが隣接している。各製造設備1~3の設置は、作業者によって行われてもよいし、自律移動ロボットによって行われてもよい。各製造設備1~3の設置が作業者によって行われる一例として、各製造設備1~3の台に車輪を設け作業者が押して設置場所まで移動させること、および作業者が持ち上げて設置場所まで移動させることが挙げられる。さらに、各製造設備1~3が、自律移動ロボットに載せられた状態で、設置場所までの移動および設置場所での稼働が行われてもよい。
【0037】
より具体的に述べると、製造設備2の設定処理部7は、隣接して設置された製造設備1の近接無線通信部6から、製造設備2の近接無線通信部6によって受信した設定データ(製品A)8Aを用いて製造設備2における動作設定を行う。
【0038】
同様に、製造設備3の設定処理部7は、隣接して設置された製造設備2の近接無線通信部6から、製造設備3の近接無線通信部6によって受信した設定データ(製品A)8Aを用いて製造設備3における動作設定を行う。
【0039】
図8は、近接無線通信部6の通信距離について説明する図である。図8においては、説明を簡潔にするために、製品選択装置4、記憶部5、設定処理部7、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の図示を省略している。
【0040】
製造設備1のNFCリーダライタ9が通信可能な範囲を円形の通信可能範囲T1とすると、製造設備1のNFCリーダライタ9の通信距離R1は、通信可能範囲T1の半径に相当する。通信距離R1は、製造設備1の中心C1と製造設備2の中心C2との間の距離D12の半分以下である。通信可能範囲T1に、製造設備2のNFCタグ10が含まれる一方、製造設備1のNFCタグ10が含まれない。
【0041】
同様に、製造設備2のNFCリーダライタ9が通信可能な範囲を円形の通信可能範囲T2とすると、製造設備2のNFCリーダライタ9の通信距離R2は、通信可能範囲T2の半径に相当する。通信距離R2は、製造設備2の中心C2と製造設備3の中心C3との間の距離D23の半分以下である。通信可能範囲T2に、製造設備3のNFCタグ10が含まれる一方、製造設備2のNFCタグ10が含まれない。
【0042】
製造設備システム100によれば、製造設備2は、隣接して設置された製造設備1から設定データ(製品A)8Aを受け取り、設定データ(製品A)8Aに基づいて製造設備2における動作設定を行う。同様に、製造設備システム100によれば、製造設備3は、隣接して設置された製造設備2から設定データ(製品A)8Aを受け取り、設定データ(製品A)8Aに基づいて製造設備3における動作設定を行う。これにより、製造設備1に対して、複数の製造設備1~3の全ての設定データ(製品A)8Aを供給すれば、設定データ(製品A)8Aを各製造設備1~3を経由させることで、複数の製造設備1~3の全ての動作設定を行うことが可能となる。
【0043】
製造設備システム100によれば、作業員は、製造設備1に対して、複数の製造設備1~3の全ての設定データ(製品A)8Aを供給するだけなので、作業員による作業工数が少ない。このため、作業員による製造設備1~3の設定ミスが生じ難い。また、製造設備システム100によれば、製造設備1~3の入れ替えおよび/または並び替えの度に、各製造設備1~3に対する配線の抜き差しをすることが不要である。よって、作業員による作業工数が減るため作業員による製造設備1~3の設定ミスが生じ難く、さらに、当該配線の抜き差しの不備に起因する製造設備1~3の設定ミスが生じない。従って、製造設備1~3の設定ミスが生じ難い製造設備システム100を実現することができる。
【0044】
なお、製造設備システム100が製品Bを製造する場合は、以上の説明において、製品Aを製品Bに置き換え、設定データ(製品A)8Aを設定データ(製品B)8Bに置き換えればよい。製造設備システム100が製品Aまたは製品B以外の製品を製造する場合についても同様である。
【0045】
さらに、本実施形態に係る製造方法は、セル生産方式による製造ラインを構成する複数の移動可能な製造設備1~3を用いる製造方法であって、複数の移動可能な製造設備1~3のうち、少なくとも一部の製造設備のそれぞれに、隣接して設置された状態における製造設備同士の中心間距離の半分以下となる通信距離を有する近接無線通信部6を設け、隣接して設置された製造設備から、近接無線通信部6によって受信した設定データを用いて当該製造設備における動作設定を行う。
【0046】
§2 構成例
製造設備システム100において、近接無線通信部6による通信は、事前の接続設定が不要なNFCである。前述した(b)の作業における配線としてLANケーブルを用いた場合、IPアドレスによって、通信可能な製造設備が制限される虞がある。製造設備システム100によれば、近接無線通信部6による通信は、事前の接続設定が不要であるもの、具体例としてはNFCであるため、このような制限なく製造設備1~3同士が通信することができる。
【0047】
製造設備システム100においては、上流側の製造設備のNFCリーダライタ9と、下流側の製造設備のNFCタグ10とが通信している構成である。これにより、製造設備1~3のそれぞれは、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の流れにおける上流側の製造設備から同下流側の製造設備へと順に、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・を供給することができる。従って、この順に、複数の製造設備1~3の全ての動作設定を行うことができる。
【0048】
但し、これは、近接無線通信部6の一構成例に過ぎない。すなわち、上流側の製造設備のNFCタグ10と、下流側の製造設備のNFCリーダライタ9とが通信している構成であっても、同様の作用効果を得ることができる。また、上流側の製造設備と下流側の製造設備とのそれぞれにNFCによる通信を行う通信デバイスを設け、これらが双方向通信を行う構成であってもよい。
【0049】
また、近接無線通信部6による通信は、隣接して設置された状態における製造設備同士の中心間距離の半分以下となる通信距離であれば、NFCに限定されない。
【0050】
製造設備システム100において、製造設備1~3のうち、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の流れにおける最上流の製造設備1は、製造設備1~3の全ての設定データである設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・を受け付ける。より具体的には、製造設備システム100において、製造設備1~3のうち、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の流れにおける最上流の製造設備1の記憶部5に、製造設備1~3の全ての設定データである設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・が記憶される。
【0051】
これにより、製造設備1~3のうち、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の流れにおける最上流の製造設備1に対して、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・を供給することができる。
【0052】
一方で、厳密には、製造設備1のNFCタグ10は、製造設備システム100において近接無線通信部6の機能を担っていない。但し、製造設備1が設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の流れにおける最上流でない場合、製造設備1のNFCタグ10は、製造設備1のすぐ上流にあたる製造設備のNFCリーダライタ9と通信する。そして、製造設備1の設定処理部7は、隣接して設置された製造設備の近接無線通信部6から、製造設備1の近接無線通信部6によって受信した設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・を用いて製造設備1における動作設定を行う。
【0053】
製造設備システム100における設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の流れは、製造設備システム100におけるセル生産方式による製造ラインに対して順方向であってもよいし、逆方向であってもよい。
【0054】
図2は、製造設備システム100の動作の流れを示すフローチャートである。
【0055】
まず、各製造設備1~3が設置され、作業者は、製造設備1を操作する。当該操作において作業者は、製品選択装置4を用いて、製造設備システム100が製造する製品を選択する。ここでは、製造設備システム100が製造する製品として、製品Aを選択した場合を例に説明する(ステップS1)。なお、ステップS1において、前記作業者による操作をトリガーにしてステップS2に遷移してもよいし、当該操作後の各製造設備1~3の設置完了をトリガーにしてステップS2に遷移してもよい。
【0056】
続いて、製造設備1(上流設備)は、製造設備1のNFCリーダライタ9と、製造設備2(下流設備)のNFCタグ10とが近接していることを検知する。この検知は、製造設備1のNFCリーダライタ9が製造設備2のNFCタグ10と通信可能であるか否かによってできる(ステップS2)。
【0057】
続いて、製造設備1は、製造設備2の型式を取得する。製造設備1のNFCリーダライタ9と製造設備2のNFCタグ10とが通信すれば、製造設備2の型式の取得は容易である(ステップS3)。
【0058】
続いて、製造設備1は、ステップS3にて取得した製造設備2の型式と、設定データ(製品A)8Aにて規定された製造設備2の型式とを照合し(ステップS4)、これらが一致するか否かを判定する(ステップS5)。これらが一致しない場合(ステップS5の結果がNO)、例えば製造設備1を用いて、エラー表示および/または警告を行い、これらが一致しない旨を通知する(ステップS6)。これにより、製造設備システム100において、製造設備の取り違えを検知することができる。ステップS6の後、図2に示した動作の終了となる。
【0059】
ステップS3にて取得した製造設備2の型式と、設定データ(製品A)8Aにて規定された製造設備2の型式とが一致する場合(ステップS5の結果がYES)、製造設備1のNFCリーダライタ9から製造設備2のNFCタグ10に、設定データ(製品A)8Aを書き込む(ステップS7)。
【0060】
続いて、製造設備2の設定処理部7は、製造設備1から、近接無線通信部6のNFCタグ10によって受信した設定データ(製品A)8Aを用いて製造設備2における動作設定を行う(ステップS8)。
【0061】
続いて、必要に応じて、製造設備2の設定処理部7は、設定データ(製品A)8Aから、製造設備2における動作設定に関する情報を削除する(ステップS9)。
【0062】
続いて、製造設備1~3のうち動作設定が未完了のものがあれば(ステップS10の結果がNO)、ステップS2に戻る。前記のステップS2~ステップS10を経て製造設備2における動作設定を行った場合、次は製造設備3における動作設定を行うことになる。製造設備3における動作設定は、前述した製造設備2における動作設定において、上流設備を製造設備2とし、下流設備を製造設備3とした上で、ステップS2~ステップS10と同様の動作の流れとなる。
【0063】
製造設備1~3の全てにおける動作設定が完了すると、図2に示した動作の終了となる(すなわち、ステップS10の結果がYES)。
【0064】
なお、製造設備システム100が製品Bを製造する場合は、以上の説明において、製品Aを製品Bに置き換え、設定データ(製品A)8Aを設定データ(製品B)8Bに置き換えればよい。製造設備システム100が製品Aまたは製品B以外の製品を製造する場合についても同様である。
【0065】
図3は、本実施形態の変形例に係る製造設備システム101の概略構成を示すブロック図である。製造設備システム101の構成は、製造設備システム100の構成に加え、入力端末11を備えている。入力端末11は、製造設備1に対して、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・を入力するものである。入力端末11の一例として、スマートフォンおよびパーソナルコンピュータ等に代表される、NFCリーダライタを有する端末が挙げられる。
【0066】
製造設備システム101は、製造設備1~3のうち、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の流れにおける最上流の製造設備1に対して、製造設備1~3の全ての設定データである設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・を入力するための入力端末11を備えている。これによっても、製造設備1~3のうち、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の流れにおける最上流の製造設備1に対して、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・を供給することができる。また、製造設備システム101によれば、入力端末11で製造設備1の型式等を確認した上で、製造設備1に設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・を供給することができるため、製造設備1の取り違えを防ぐことができる。また、製造設備システム101によれば、稼働中の製造設備システム101に対して設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・の書き換え動作を行う必要がないので、製造設備システム101の稼働中に不適切な書き換えが行われることを防ぐことができる。さらに、製造設備システム101によれば、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・が入力端末11に記録されているので、製造設備1におけるデータ書き換えによって、設定データ(製品A)8A、設定データ(製品B)8B、・・・を失う虞を低減することができる。
【0067】
図4は、製造する製品の種類と、設定データ(製品を製造するための各製造設備の設定情報)との紐付けの一例を示す表である。
【0068】
図4においては、製造する製品の種類(ID列)と、その各項目に対応する設定データのファイルパス(設定ファイルパス列)とによって構成された表に基づいて、前記の紐付けを行っている。なお、図4のID列に記載された各項目の型および内容は、特に限定されず、識別子であればよい。また、図4の設定ファイルパス列に記載された各設定データは、特定のものに限定されず、設定そのものが記述されたものであってもよい。
【0069】
また、図4に示す表は2列であるが、3列以上の表に基づいて、前記の紐付けを行ってもよい。
【0070】
図5は、製造する製品の種類と、設定データ(製品を製造するための各製造設備の設定情報)との紐付けの別の例を示す表である。
【0071】
図5においては、1から順の番号(ID列)と、その各項目に対応する製造する製品の種類(製品名列)と、その各項目に対応する製造設備システムの稼働用途(用途列)と、その各項目に対応する設定データのファイルパス(設定ファイルパス列)と、その各項目に対応する設定データの作成日(作成日列)と、その各項目に対応する設定データを選択肢として表示するか否か(選択肢として表示する列)とによって構成された表に基づいて、前記の紐付けを行っている。
【0072】
また、前記の紐付けは、図4および図5に示すような、表の形式に限定されない。
【0073】
図6は、設定データ12の具体例を示す図である。
【0074】
設定データ12において、上流設備は、下流設備の型式を取得後、配列の先頭の製造設備の“model”と比較し、一致不一致を確認する。一致していれば設定を送信する。なお、設定データ12の“model”に示される情報は、製造設備の識別子であればいいので、厳密には、型式である必要はない(例:ユーザ定義のID、NFCタグ製造時のID(IDm))。
【0075】
設定データ12において、下流設備は前記の設定を受信後、配列の先頭の製造設備の“settings”を取得し、そこに記述されている設定を、変数の値やファイルの中身に反映し、“command”が指定されていれば実行し、自分自身の製造設備の情報を配列から削除したのち、そのデータをさらに下流の製造設備へと送信する。
【0076】
図6に示す設定データ12は、JSONファイルであるが、これに限定されるものではない。JSON、INI、XML、YAML、TOML、バイナリ等、様々なフォーマットが考えられる。
【0077】
設定データ12において注目すべき点は、(1)~(3)のとおりである。
【0078】
(1)上流設備が、一つ下流の製造設備の情報を特定できること(特定方法:配列の先頭要素、設定項目の一つに記述された順序(例:”order”:1))
(2)製造設備毎に設定やコマンドが記述可能であること(形式や内容については、下流の製造設備が受信して解釈可能であればそれで良い)
(3)設定を変更してからコマンドを実行するのか、各コマンドの実行順序はどう決定されるのか、といった実行順序も下流設備が決定する
図7の(a)~(e)のそれぞれは、複数の製造設備15~17の設置パターンを示す概略図である。
【0079】
図7の(a)に示す設置パターンは、製造設備17を追加する例であり、図1および図3のそれぞれに示す製造設備1~3の設置パターンと同様である。
【0080】
図7の(b)に示す設置パターンは、製造設備16を追加する例である。この場合、製造設備15からの設定データの受信および設定反映と、製造設備17の型式チェックおよび製造設備17への設定データの送信とが同じ期間内に行われる。なお、処理フローの簡略化、および異常の発生を抑制するために、これらの一方を行っている場合にはこれらの他方を行わないようにしてもよい。
【0081】
図7の(c)に示す設置パターンは、製造設備15を追加する例であり、上流・下流を考慮しない場合、図7の(a)に示す設置パターンと同様に扱うことができる。
【0082】
図7の(d)に示す設置パターンは、製造設備16を撤去する例であり、撤去されたことを自動的に検知するために、定期的に製造設備15と製造設備16との通信を実行して、失敗したら撤去されたと判断してもよい。その場合、判断結果を、例えばエラー表示すればよい。
【0083】
図7の(e)に示す設置パターンは、製造設備15~17の設置に変化がない例であり、ユーザによる操作を契機に設定を行うことができる。図7の(e)に示す設置パターンは例えば、製造する製品の変化に伴い、製造設備15~17の設置パターンを変化させず、製造設備15~17のうち少なくとも1つの設定のみを変更させる場合に利用される。
【0084】
なお、製造設備システムを構成する全ての製造設備が近接無線通信部6および設定処理部7(図1等参照)を有していることは必須でない。近接無線通信部6および設定処理部7による機能を必要としない製造設備に関しては、近接無線通信部6および設定処理部7を有していない構成であってもよい。換言すれば、複数の移動可能な製造設備のうち、少なくとも一部の製造設備のそれぞれが、近接無線通信部6および設定処理部7を有していればよい。
【0085】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 製造設備
2 製造設備
3 製造設備
4 製品選択装置
5 記憶部
6 近接無線通信部
7 設定処理部
8A 設定データ(製品A)
8B 設定データ(製品B)
9 NFCリーダライタ
10 NFCタグ
11 入力端末
12 設定データ
15 製造設備
16 製造設備
17 製造設備
100 製造設備システム
101 製造設備システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8