(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】埋設物検出装置および埋設物検出方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20220809BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01V3/12 B
G01S13/88 200
(21)【出願番号】P 2018246953
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 曜
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-081487(JP,A)
【文献】特開平01-274090(JP,A)
【文献】特開平03-084489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/12
G01S 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面を移動しながら対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置であって、
本体部と、
前記本体部に設けられ、前記電磁波を放射する放射部と、
前記本体部に設けられ、前記電磁波の反射波を受信する受信部と、
前記本体部に取り付けられており、前記対象物の表面に接触した状態で回転する車輪と、
前記本体部に設けられ、前記車輪に接続されており、前記車輪の回転に関する情報を検出する回転検出部と、
前記回転検出部からの入力状況に基づいて、前記放射部から所定の放射停止条件を満たすまでの連続的な前記電磁波の放射を開始するか否かを決定する放射制御部と、
を備え、
前記放射制御部は、前記回転検出部からの入力状況に基づいて、一時的に仮の電磁波を放射するように前記放射部を制御するとともに、前記受信部において受信された前記仮の電磁波の反射波の受信状況に基づいて、前記電磁波の放射を開始するか否かを決定する、
埋設物検出装置。
【請求項2】
前記放射制御部は、前記回転検出部からの入力に基づいて、前記車輪の回転が安定したと判定した場合に、前記電磁波の放射を開始するように前記放射部を制御する、
請求項1に記載の埋設物検出装置。
【請求項3】
前記放射制御部は、前記回転検出部から入力される前記車輪の回転速度が、所定の範囲内であった場合に、前記電磁波の放射を開始するように前記放射部を制御する、
請求項2に記載の埋設物検出装置。
【請求項4】
前記放射制御部は、前記回転検出部から入力される前記車輪の回転方向が、所定回数以上、連続して同じであった場合に、前記電磁波の放射を開始するように前記放射部を制御する、
請求項2または3に記載の埋設物検出装置。
【請求項5】
前記放射制御部は、前記受信部において受信した前記反射波の波形が、前記車輪が前記対象物の表面に接触していることを示している場合に、前記電磁波の放射を開始するように、前記放射部を制御する、
請求項1に記載の埋設物検出装置。
【請求項6】
対象物の表面を移動しながら対象物に向かって放射した電磁波の反射波を受信部において受信し、前記反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置を用いた埋設物検出方法であって、
前記埋設物検出装置に設けられた車輪に接続された回転検出部において、前記車輪の回転に関する情報を検出する回転検出ステップと、
前記回転検出部からの入力状況に基づいて、前記電磁波を放射する放射部から所定の放射停止条件を満たすまでの連続的な前記電磁波の放射を開始するか否かを決定する判定ステップと、
前記回転検出部からの入力に基づいて、前記車輪の回転が安定したと判定した場合に、前記電磁波の放射を開始するように前記放射部を制御する放射開始ステップと、
を備え、
前記放射開始ステップでは、前記回転検出部からの入力状況に基づいて、一時的に仮の電磁波を放射するように前記放射部を制御するとともに、前記受信部において受信された前記仮の電磁波の反射波の受信状況に基づいて、前記電磁波の放射を開始するか否かを決定する、
埋設物検出方法。
【請求項7】
前記放射開始ステップでは、前記回転検出部から入力される前記車輪の回転速度が、所定の範囲内であった場合に、前記電磁波の放射を開始するように前記放射部を制御する、
請求項
6に記載の埋設物検出方法。
【請求項8】
前記放射開始ステップでは、前記回転検出部から入力される前記車輪の回転方向が、所定回数以上、連続して同じであった場合に、前記電磁波の放射を開始するように前記放射部を制御する、
請求項
6または
7に記載の埋設物検出方法。
【請求項9】
前記放射開始ステップでは、前記受信部において受信した前記反射波の波形が、前記車輪が前記対象物の表面に接触していることを示している場合に、前記電磁波の放射を開始するように、前記放射部を制御する、
請求項
6に記載の埋設物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設物検出装置および埋設物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンクリート内の埋設物を探索する装置として、コンクリートの表面を移動させながら、コンクリートに向かって放射した電磁波の反射波から埋設物を検出するウォールスキャナ(埋設物検出装置)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のウォールスキャナは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記従来のウォールスキャナでは、例えば、コンクリート中の埋設物の検出を行う際に、電磁波の放射ボタンを操作して電磁波を放射させてからコンクリートの表面に沿ってウォールスキャナを移動させるように、電磁波の放射制御を行っていた。
【0005】
このため、ユーザの放射ボタンの操作が充分でなかった場合等、放射ボタンの操作に問題があった場合には、ユーザが、電磁波が放射されていないことに気付かずに、ウォールスキャナを移動させて埋設物を検出する操作を実施してしまうおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、埋設物の検出を開始する際に、ユーザによる操作なしで自動的に電磁波を放射することが可能な埋設物検出装置および埋設物検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る埋設物検出装置は、対象物の表面を移動しながら対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置であって、本体部と、放射部と、受信部と、車輪と、回転検出部と、放射制御部と、を備えている。放射部は、本体部に設けられ、電磁波を放射する。受信部は、本体部に設けられ、電磁波の反射波を受信する。車輪は、本体部に取り付けられており、対象物の表面に接触した状態で回転する。回転検出部は、本体部に設けられ、車輪に接続されており車輪の回転に関する情報を検出する。放射制御部は、回転検出部からの入力状況に基づいて、放射部から電磁波の放射を開始するか否かを決定する。
【0008】
ここでは、例えば、コンクリートの表面に接触させた車輪を回転させて移動しながら電磁波を放射し、その反射波を検出することでコンクリート内の鉄筋等の埋設物を検出する埋設物検出装置において、埋設物の検出を開始する際に、車輪の回転に関する情報を検出する回転検出部からの入力状況に基づいて電磁波の放射を開始するか否かを決定する。
【0009】
ここで、対象物内の埋設物には、例えば、コンクリート内の鉄筋等が含まれる。また、回転検出部において検出される回転に関する情報には、例えば、車輪の回転速度、回転方向等が含まれる。さらに、放射制御部における回転検出部からの入力状況には、例えば、車輪の回転速度の安定、回転方向の安定等が含まれる。
【0010】
これにより、回転検出部からの入力状況に応じて自動的に電磁波が放射されるため、回転検出部からの入力状況が所定の状況を満たすまでは、放射部から電磁波の放射が行われることはない。よって、ユーザは、電磁波が放射されていない状況であるにもかかわらず、放射されていると誤解したまま、埋設物を検出する操作を実施してしまうことを防止することができる。
【0011】
第2の発明に係る埋設物検出装置は、第1の発明に係る埋設物検出装置であって、放射制御部は、回転検出部からの入力に基づいて、車輪の回転が安定したと判定した場合に、電磁波の放射を開始するように放射部を制御する。
【0012】
ここでは、放射部からの電磁波の放射開始条件として、回転検出部において検出される車輪の回転の安定が設定される。
ここで、車輪の回転の安定とは、例えば、回転検出部からの入力にチャタリングの発生がない状況、回転速度の安定、回転方向が一定等の条件が含まれる。
【0013】
これにより、例えば、ユーザが埋設物検出装置を持ってコンクリートの表面に沿って移動させた際に、埋設物検出装置の移動速度、移動方向、すなわち、車輪の回転速度、回転方向が安定化したことが検出されると、電磁波の放射を自動的に開始することができる。
【0014】
第3の発明に係る埋設物検出装置は、第2の発明に係る埋設物検出装置であって、放射制御部は、回転検出部から入力される車輪の回転速度が、所定の範囲内であった場合に、電磁波の放射を開始するように放射部を制御する。
【0015】
ここでは、上述した車輪の回転の安定を検出するために、回転検出部において検出される車輪の回転速度が所定の範囲内であることが条件として設定される。
これにより、例えば、ユーザが埋設物検出装置を持ってコンクリートの表面に沿って移動させた際に、埋設物検出装置の移動速度、すなわち、車輪の回転速度が所定の範囲内で安定化したことが検出されると、電磁波の放射を自動的に開始することができる。
【0016】
第4の発明に係る埋設物検出装置は、第2または第3の発明に係る埋設物検出装置であって、放射制御部は、回転検出部から入力される車輪の回転方向が、所定回数以上、連続して同じであった場合に、電磁波の放射を開始するように放射部を制御する。
【0017】
ここでは、上述した車輪の回転の安定を検出するために、回転検出部において検出される車輪の回転方向が所定回数以上連続して同じ方向であることが条件として設定される。
ここで、車輪の回転方向が所定回数以上連続して同じ方向であるとは、回転検出部からの1パルス分に相当する入力が、連続して所定回数以上同じ方向を示すことを意味している。
【0018】
これにより、例えば、ユーザが埋設物検出装置を持ってコンクリートの表面に沿って移動させた際に、埋設物検出装置の移動方向、すなわち、車輪の回転方向が所定回数以上連続しており、移動が安定化したことが検出されると、電磁波の放射を自動的に開始することができる。
【0019】
第5の発明に係る埋設物検出装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る埋設物検出装置であって、放射制御部は、回転検出部からの入力状況に基づいて、一時的に仮の電磁波を放射するように放射部を制御するとともに、受信部において受信された仮の電磁波の反射波の受信状況に基づいて、電磁波の放射を開始するか否かを決定する。
【0020】
ここでは、埋設物の検出を開始する際の電磁波の放射開始条件として、新たに、回転検出部からの入力状況に基づいて一時的に放射された仮の電磁波の反射波の受信状況を用いる。
【0021】
ここで、一時的に放射される仮の電磁波は、埋設物の探索時に放射される電磁波と同程度の強度であってもよいし、低い強度、あるいは高い強度であってもよい。また、仮の電磁波の反射波の受信状況とは、例えば、受信部における反射波の受信状況が、埋設物検出装置(車輪)が対象物の表面に接触している状態を示している場合、あるいは埋設物検出装置(車輪)が対象物の表面から離れている状態を示している場合が挙げられる。
【0022】
これにより、回転検出部からの入力状況が、例えば、上述した車輪の回転の安定を示している場合に、一時的に仮の電磁波を放射してその反射波の受信状況に応じて電磁波の放射の開始を決定することで、電磁波の放射開始の適否の判定を、より正確に行うことができる。
【0023】
第6の発明に係る埋設物検出装置は、第5の発明に係る埋設物検出装置であって、放射制御部は、受信部において受信した反射波の波形が、車輪が対象物の表面に接触していることを示している場合に、電磁波の放射を開始するように、放射部を制御する。
【0024】
ここでは、一時的に放射された仮の電磁波の反射波の波形の変化に基づいて、電磁波の放射の開始の適否判定を実施する。
これにより、仮の電磁波の反射波の波形の変化に応じて、埋設物検出装置の車輪が対象物に接触している状態であることを判別して、電磁波の放射の開始タイミングを制御することができる。
【0025】
第7の発明に係る埋設物検出方法は、対象物の表面を移動しながら対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置を用いた埋設物検出方法であって、回転検出ステップと、判定ステップと、を備えている。回転検出ステップでは、埋設物検出装置に設けられた車輪に接続された回転検出部において、車輪の回転に関する情報を検出する。判定ステップでは、回転検出部からの入力状況に基づいて、電磁波を放射する放射部から電磁波の放射を開始するか否かを決定する。
【0026】
ここでは、例えば、コンクリートの表面に接触させた車輪を回転させて埋設物検出装置を移動させながら電磁波を放射し、その反射波を検出することでコンクリート内の鉄筋等の埋設物を検出する埋設物検出方法において、埋設物の検出を開始する際に、車輪の回転に関する情報を検出する回転検出部からの入力状況に基づいて電磁波の放射を開始するか否かを決定する。
【0027】
ここで、対象物内の埋設物には、例えば、コンクリート内の鉄筋等が含まれる。また、回転検出部において検出される回転に関する情報には、例えば、車輪の回転速度、回転方向等が含まれる。さらに、放射制御部における回転検出部からの入力状況には、例えば、車輪の回転速度の安定、回転方向の安定等が含まれる。
【0028】
これにより、回転検出部からの入力状況に応じて自動的に電磁波が放射されるため、回転検出部からの入力状況が所定の状況を満たすまでは、放射部から電磁波の放射が行われることはない。よって、ユーザは、電磁波が放射されていない状況であるにもかかわらず、放射されていると誤解したまま、埋設物を検出する操作を実施してしまうことを防止することができる。
【0029】
第8の発明に係る埋設物検出方法は、第7の発明に係る埋設物検出方法であって、回転検出部からの入力に基づいて、車輪の回転が安定したと判定した場合に、電磁波の放射を開始するように放射部を制御する放射開始ステップを、さらに備えている。
【0030】
ここでは、放射部からの電磁波の放射開始条件として、回転検出部において検出される車輪の回転の安定が設定される。
ここで、車輪の回転の安定とは、例えば、回転検出部からの入力にチャタリングの発生がない状況、回転速度の安定、回転方向が一定等の条件が含まれる。
【0031】
これにより、例えば、ユーザが埋設物検出装置を持ってコンクリートの表面に沿って移動させた際に、埋設物検出装置の移動速度、移動方向、すなわち、車輪の回転速度、回転方向が安定化したことが検出されると、電磁波の放射を自動的に開始することができる。
【0032】
第9の発明に係る埋設物検出方法は、第7の発明に係る埋設物検出方法であって、放射開始ステップでは、回転検出部から入力される車輪の回転速度が、所定の範囲内であった場合に、電磁波の放射を開始するように放射部を制御する。
【0033】
ここでは、上述した車輪の回転の安定を検出するために、回転検出部において検出される車輪の回転速度が所定の範囲内であることが条件として設定される。
これにより、例えば、ユーザが埋設物検出装置を持ってコンクリートの表面に沿って移動させた際に、埋設物検出装置の移動速度、すなわち、車輪の回転速度が所定の範囲内で安定化したことが検出されると、電磁波の放射を自動的に開始することができる。
【0034】
第10の発明に係る埋設物検出方法は、第8または第9の発明に係る埋設物検出方法であって、放射開始ステップでは、回転検出部から入力される車輪の回転方向が、所定回数以上、連続して同じであった場合に、電磁波の放射を開始するように放射部を制御する。
【0035】
ここでは、上述した車輪の回転の安定を検出するために、回転検出部において検出される車輪の回転方向が所定回数以上連続して同じ方向であることが条件として設定される。
ここで、車輪の回転方向が所定回数以上連続して同じ方向であるとは、回転検出部からの1パルス分に相当する入力が、連続して所定回数以上同じ方向を示すことを意味している。
【0036】
これにより、例えば、ユーザが埋設物検出装置を持ってコンクリートの表面に沿って移動させた際に、埋設物検出装置の移動方向、すなわち、車輪の回転方向が所定回数以上連続しており、移動が安定化したことが検出されると、電磁波の放射を自動的に開始することができる。
【0037】
第11の発明に係る埋設物検出方法は、第7から第10の発明のいずれか1つに係る埋設物検出方法であって、放射開始ステップでは、回転検出部からの入力状況に基づいて、一時的に仮の電磁波を放射するように放射部を制御するとともに、受信部において受信された仮の電磁波の反射波の受信状況に基づいて、電磁波の放射を開始するか否かを決定する。
【0038】
ここでは、埋設物の検出を開始する際の電磁波の放射開始条件として、新たに、回転検出部からの入力状況に基づいて一時的に放射された仮の電磁波の反射波の受信状況を用いる。
【0039】
ここで、一時的に放射される仮の電磁波は、埋設物の探索時に放射される電磁波と同程度の強度であってもよいし、低い強度、あるいは高い強度であってもよい。また、仮の電磁波の反射波の受信状況とは、例えば、受信部における反射波の受信状況が、埋設物検出装置(車輪)が対象物の表面に接触している状態を示している場合、あるいは埋設物検出装置(車輪)が対象物の表面から離れている状態を示している場合が挙げられる。
【0040】
これにより、回転検出部からの入力状況が、例えば、上述した車輪の回転の安定を示している場合に、一時的に仮の電磁波を放射してその反射波の受信状況に応じて電磁波の放射の開始を決定することで、電磁波の放射開始の適否の判定を、より正確に行うことができる。
【0041】
第12の発明に係る埋設物検出方法は、第11の発明に係る埋設物検出方法であって、放射開始ステップでは、受信部において受信した反射波の波形が、車輪が対象物の表面に接触していることを示している場合に、電磁波の放射を開始するように、放射部を制御する。
【0042】
ここでは、一時的に放射された仮の電磁波の反射波の波形の変化に基づいて、電磁波の放射の開始の適否判定を実施する。
これにより、仮の電磁波の反射波の波形の変化に応じて、埋設物検出装置の車輪が対象物に接触している状態であることを判別して、電磁波の放射の開始タイミングを制御することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る埋設物検出装置によれば、埋設物の検出を開始する際に、ユーザによる操作なしで自動的に電磁波を放射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の一実施形態に係る埋設物検出装置の構成を示す斜視図。
【
図2】
図1の埋設物検出装置の構成を示すブロック図。
【
図3】
図2のインパルス制御モジュールの構成を示すブロック図。
【
図4】
図3のMPUが取得する反射波のデータを示す図。
【
図5】
図2のメイン制御モジュールの構成を示すブロック図。
【
図6】
図1の埋設物検出装置によって実施される埋設物検出方法の処理の流れを示すフローチャート。
【
図7】
図6の埋設物検出方法に含まれる電磁波の放射開始制御の処理の流れを示すフローチャート。
【
図8】(a),(b)は、エンコーダからの入力例を示す図。
【
図9】(a)は、
図1の埋設物検出装置が探索面(コンクリートの表面)に接触した状態を示す模式図。(b)は、その状態において受信される反射波の波形を示すグラフ。
【
図10】(a)は、
図1の埋設物検出装置が探索面(コンクリートの表面)から離間した状態を示す模式図。(b)は、その状態において受信される反射波の波形を示すグラフ。
【
図11】(a)は、
図9(b)のグラフと
図10(b)のグラフとの差分を示すグラフ。(b)は、(a)の縦軸の範囲を小さくしたグラフ。
【
図12】
図10の埋設物検出方法に含まれる電磁波の放射停止制御の処理の流れを示すフローチャート。
【
図13】
図10の電磁波の放射停止制御の処理の流れを示すシーケンス図。
【
図14】本発明の他の実施形態に係る埋設物検出方法に含まれる電磁波の放射停止制御の処理の流れを示すフローチャート。
【
図15】本発明のさらに他の実施形態に係る埋設物検出方法に含まれる電磁波の放射停止制御の処理の流れを示すフローチャート。
【
図16】本発明のさらに他の実施形態に係る埋設物検出方法に含まれる電磁波の放射停止制御の処理の流れを示すフローチャート。
【
図17】本発明の他の実施形態に係る埋設物検出方法に含まれる電磁波の放射停止制御の処理の流れを示すフローチャート。
【
図18】
図17の電磁波の放射停止制御の処理の流れを示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の一実施形態に係る埋設物検出装置1について、
図1~
図13を用いて説明すれば以下の通りである。
図1は、本実施形態の埋設物検出装置1をコンクリート(対象物)100上に配置した状態を示す斜視図である。
図2は、本実施形態の埋設物検出装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0046】
(1-1.埋設物検出装置1の構成)
本実施形態の埋設物検出装置1は、コンクリート100等の対象物の表面100aを移動しながら電磁波をコンクリート100に放射し、その反射波を受信して解析することによって、コンクリート100内の埋設物101a,101b,101c,101dの位置を検出する。そして、
図1では、埋設物検出装置1の移動方向が、矢印Aで示されている。
【0047】
なお、
図1に示す例では、埋設物101a,101b,101c,101dは、鉄筋であって、例えば、コンクリート100の表面100aから20cm,15cm,10cm,5cmの深さ位置にそれぞれ埋設されている。
図1では、コンクリート100の深さ方向が矢印Bで示されており、その反対向き(表面方向)が矢印Cで示されている。
【0048】
コンクリート100内に埋設された4本の鉄筋(埋設物101a~101d)は、それぞれ、コンクリート100の表面100aに略平行な方向に沿って、埋設物検出装置1の移動方向に交差する向きで配置されている。
【0049】
埋設物検出装置1は、本体部2と、把手3と、4つの車輪4と、インパルス制御モジュール5と、メイン制御モジュール6と、エンコーダ(回転検出部)7と、表示部8と、を備えている。
【0050】
把手3は、本体部2の上面に設けられている。4つの車輪は、回転可能な状態で、本体部2の下部に取り付けられている。作業者(ユーザ)は、コンクリート100内部の埋設物を検出する際には、把手3を把持して車輪4を回転させながら、コンクリート100の表面100a上で埋設物検出装置1を移動させる。
【0051】
インパルス制御モジュール5は、コンクリート100に向けて電磁波を放射するタイミング、および放射した電磁波の反射波を受信するタイミング等の制御を行う。
エンコーダ7は、車輪4に接続されており、車輪4の回転に関する情報を検出し、その検出された情報に基づいて、インパルス制御モジュール5に反射波の受信タイミングを制御するための信号を送信する。
【0052】
ここで、本実施形態の埋設物検出装置1では、コンクリート100内の埋設物101a~101dの検出を開始する際に、エンコーダ7から入力される車輪4の回転に関する情報を用いて、送信アンテナ11から電磁波の放射開始制御を行う。
【0053】
なお、車輪4の回転に関する情報には、車輪4の回転速度、回転方向等が含まれる。そして、電磁波の放射開始制御については、後段にて詳述する。
メイン制御モジュール6は、インパルス制御モジュール5で受信された反射波に関するデータを受け取り、埋設物の検出を行う。
表示部8は、本体部2の上面に設けられており、埋設物101a,101b,101c,101dの位置を示す画像等を表示する。
【0054】
(1-2.インパルス制御モジュール5)
図3は、インパルス制御モジュール5の構成を示すブロック図である。
インパルス制御モジュール5は、制御部(放射制御部)10と、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、パルス発生部13と、ディレイ部14と、ゲート部15と、を有している。
【0055】
制御部10は、MPU(Micro Processing Unit)等によって構成されており、エンコーダ入力をトリガとして、パルス発生部13にパルスの発生を指令する。パルス発生部13は、MPUからの指令に基づいてパルスを発生させ、送信アンテナ11に出力する。
【0056】
また、制御部10は、作業者(ユーザ)が埋設物検出装置1を用いてコンクリート100内の埋設物101の検出作業を開始する際に、エンコーダ7からの入力状況に基づいて、電磁波の放射を開始するか否かを決定する電磁波放射開始制御を行う。さらに、制御部10は、埋設物検出装置1を用いてコンクリート100内の埋設物101の検出作業を実施している際に、エンコーダ7からの入力が停止し、かつ受信アンテナ12において反射波のデータの変化を検出した場合に、送信アンテナ11からの電磁波の放射を停止させる電磁波放射停止制御を行う。
【0057】
なお、電磁波放射開始制御および電磁波放射停止制御の内容については、後段にて詳述する。
送信アンテナ11は、本体部2の底面側に設けられており、パルスの周期に基づいて、一定周期で電磁波を放射する。
【0058】
受信アンテナ12は、本体部2の底面側に設けられており、主に、送信アンテナ11から放射された電磁波の反射波を受信する。
ゲート部15は、ディレイ部14からのパルスを受信すると、受信アンテナ12で受信した反射波を取り込み、制御部10へと送信する。
【0059】
ディレイ部14は、ゲート部15に対して所定間隔で、ゲート部15に反射波を取り込ませる。この所定間隔は、2.5mmピッチに設定されている。
これにより、インパルス制御モジュール5は、エンコーダか7からの入力をトリガとして、送信アンテナ11から電磁波を複数回出力する。そして、インパルス制御モジュール5は、ディレイ部14によるディレイICを用いて受信タイミングを遅らせることで受信アンテナ12との距離ごとの受信データを取得することができる。
【0060】
図4は、MPUが取得する反射波のデータを示す図である。縦軸は、軸Oを中心として、-4096~+4096階調で受信信号の強度を示し、矢印方向がマイナス側を示す。横軸は、受信アンテナ12との距離を示し、矢印方向(深さ方向Bに対応)が受信アンテナ12からの距離が長いことを示す。また、距離が長いとは、深さが大きいことに相当する。
【0061】
なお、詳しくは後述するが、
図4に示す波形W1には、コンクリート100内に放射されずにアンテナで反射した反射波も含まれる(p1等)ため、基準波形との差分を算出することにより、コンクリート100内からの反射波のデータの変化が抽出される。
【0062】
また、
図4に示すデータは、エンコーダ7の入力があった後、エンコーダ7から次の入力があるまでの受信信号の強度を示すデータである。受信タイミングを除々に遅らせることによって、受信アンテナ12からの距離が長い位置からの反射波を受信するが、エンコーダ7からの入力があると、受信タイミングの遅延が元に戻され、再び受信タイミングを除々に遅らせる。すなわち、移動方向Aにおける所定の計測位置(エンコーダ7からの入力があった位置)における深さ方向Bの反射波を受信することになる。このような
図4に示すエンコーダ7の入力があった後、次のエンコーダの入力があるまでに受信した反射波のデータを、1ライン分のデータという。制御部10は、1ライン分のデータが貯まるごとに、その1ライン分のRF(Radio Frequency)データをメイン制御モジュール6へ送信する。
【0063】
なお、埋設物検出装置1は、作業者(ユーザ)によってコンクリート100の表面100a上を移動しているため、計測位置は厳密に同じ位置ではなく、深さ方向Bもコンクリート100の表面100aに対して厳密に垂直な方向ではない。
【0064】
(1-3.メイン制御モジュール6)
図5は、メイン制御モジュール6の構成を示すブロック図である。
メイン制御モジュール6は、受信部21と、RFデータ管理部22と、埋設物判定部24と、判定結果登録部25と、表示制御部26と、を有している。
【0065】
受信部21は、インパルス制御モジュール5から送信されるごとに、1ライン分のRFデータを受信する。
RFデータ管理部22は、受信部21が受信した1ライン分のRFデータを記憶する。
【0066】
埋設物判定部24は、RFデータ管理部22において記憶された1ライン分のRFデータを用いて、埋設物101の有無を判定するとともに、埋設物101の位置を検出する。
なお、埋設物判定部24における埋設物101の検出処理については、受信アンテナ12において受信した複数の1ライン分のRFデータに基づいて、既知の方法を用いて実施すればよい。具体的には、例えば、埋設物101が鉄筋等の金属である場合には、送信アンテナ11から放射された電磁波は、その表面において反射される。このため、受信アンテナ12において、このような埋設物101の表面で反射された反射波の速度(強度)と、反射波を受信するまでの時間とを検出することで、コンクリート100内の埋設物101の有無およびその位置を検出することができる。
【0067】
判定結果登録部25は、埋設物判定部24によって検出された埋設物の位置をRFデータ管理部22に登録する。
表示制御部26は、移動方向Aと深さ方向Bの平面において信号強度を色で階調処理した画像、および埋設物101の位置を表示するように、表示部8の制御を行う。
【0068】
<埋設物検出処理の流れ>
本実施形態の埋設物検出方法では、上述した埋設物検出装置1を用いて、
図6に示すフローチャートに従って、コンクリート100内の埋設物101の検出を行う。
【0069】
すなわち、ステップS1では、初期化処理を実施して、エンコーダ7、タイマ(図示せず)からの入力をトリガとして、送信アンテナ11および受信アンテナ12を制御して、1ライン分のRFデータを受信する。
【0070】
次に、ステップS2では、制御部10が、エンコーダ7から受信した車輪4の回転に関する情報に基づいて、送信アンテナ11から電磁波を放射するか否かを判定する電磁波放射開始制御を実施する。
【0071】
なお、電磁波放射開始制御については、
図7を用いて後段にて詳述する。
次に、ステップS3では、ステップS2において、電磁波の放射開始条件を満たしており電磁波の放射が開始された後、受信アンテナ12において受信した反射波の波形の変化に基づいて、電磁波の放射停止制御を実施する。
【0072】
なお、電磁波放射停止制御については、
図12等を用いて後段にて詳述する。
次に、ステップS4では、ステップS3において、電磁波の放射を停止させるか否かを決定した後、コンクリート100内の埋設物101の探索を終了するか否かを判定する。
【0073】
ここで、引き続き探索を継続する場合には、ステップS2へ戻り、探索を終了する場合にはステップS5へ進む。
次に、ステップS5では、受信アンテナ12において受信された反射波の1ライン分のRFデータを用いて、コンクリート100内における埋設物101の有無、およびその位置を検出して、処理を終了する。
【0074】
<電磁波放射開始制御の流れ>
本実施形態の埋設物検出方法では、上述した
図6のステップS2の電磁波放射開始制御を、
図7に示すフローチャートに従って実施する。
【0075】
すなわち、本実施形態の埋設物検出装置1では、上述したように、インパルス制御モジュール5に含まれる制御部10が、エンコーダ7からの入力状況に基づいて、送信アンテナ11から電磁波の放射を開始するか否かを決定する。
【0076】
より具体的には、ステップS11では、まず、制御部10が、エンコーダ7からの入力があるか否かを判定する。ここで、エンコーダ7からの入力がある場合には、ステップS12へ進み、入力があるまでステップS11を繰り返す。
【0077】
次に、ステップS12では、制御部10は、エンコーダ7から、同じ方向にN回以上連続して入力されたか否かを検出することで、コンクリート100の表面100aにおいて車輪4の回転が安定しているか否かを判定する。
【0078】
ここで、同じ方向にN回以上連続した入力とは、例えば、
図8(a)に示すように、図中右方向への移動を示す回転方向の入力が5回以上ある場合等が含まれる。
また、作業者(ユーザ)によって異なる方向に埋設物検出装置1を移動させている場合には、
図8(b)に示すように、移動方向(回転方向)が変化してから最初の入力を1回としてカウントし、そこから連続して同じ方向に連続して入力があった場合には、ステップS13へ進む。よって、
図8(b)に示す例では、右、右、左、右・・・と4つ目の入力から1回目の入力としてカウントし、そこから連続して右へ5回の入力があったため、ステップS13へ進む。
【0079】
次に、ステップS13では、制御部10は、ステップS12において、エンコーダ7からの入力が安定したこと、つまり、車輪4の回転が安定していると判定したため、仮の電磁波を所定時間だけ放射するように、パルス発生部13を介して送信アンテナ11を制御する。
【0080】
次に、ステップS14では、ステップS13において送信アンテナ11から放射された電磁波の反射波を受信した1ライン分のデータを、受信アンテナ12から受信する。
次に、ステップS15では、制御部10は、受信アンテナ12から受信した仮の電磁波の反射波の1ライン分のデータの波形を用いて、空気中を示すデータであるか否かを判定する。
【0081】
ここで、空気中を示すデータは、作業者によって埋設物検出装置1が持ち上げられる等して、コンクリート100の表面100aから離間した状態を意味する。
また、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aから離間したことを検出するための原理について説明する。
【0082】
例えば、埋設物検出装置1の車輪4がコンクリート100の表面100aに接触している状態では、
図9(a)に示すように、放射された電磁波は、コンクリート100の表面100aから内部を通過して、その反射波が受信アンテナ12で受信される。
【0083】
このとき、空気の誘電率を1とすると、コンクリート100の誘電率7であることから、コンクリート100中を移動した電磁波は減衰されて空気中を移動するよりも速度が遅くなる。
【0084】
図9(b)は、このときの、コンクリート100の表面100aからの深さ(横軸)に対する反射波の速度(縦軸)を示している。
一方、埋設物検出装置1の車輪4がコンクリート100の表面100aから離間した状態では、
図10(a)に示すように、放射された電磁波は、空気中を移動して受信アンテナ12で受信される。
【0085】
同様に、空気の誘電率を1とすると、コンクリート100の誘電率7であることから、空気中を移動した電磁波はほとんど減衰されず、コンクリート100内を通過した電磁波よりも速度が速くなる。
【0086】
図10(b)は、このときの、コンクリート100の表面100aからの深さ(横軸)に対する反射波の速度(縦軸)を示している。
ここで、
図9(b)に示すグラフと、
図10(b)に示すグラフとの差分は、
図11(a)に示すグラフとして示される。
【0087】
そして、
図11(b)は、
図11(a)に示すグラフの縦軸の範囲を狭めて、グラフの変化が分かりやすく示している。
すなわち、
図11(b)に示すように、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aに接触している場合(
図9(a)参照)と、離間している場合(
図10(a)参照)とでは、コンクリート100の表面100a付近の受信波の速度(強度)が大きな差が見られることが分かる。
【0088】
よって、本実施形態の埋設物検出装置1および埋設物検出方法では、ステップS14において受信アンテナ12が受信した電磁波の速度(強度)と、予め記憶部(図示せず)等に記憶されている基準波形(コンクリート100の表面100aに接触時の波形(
図9(b)参照)とを比較する。そして、
図11(b)に示す差分を示すグラフよりもピークが小さいグラフとなった場合には、現在、埋設物検出装置1はコンクリート100の表面100a付近にあると判定し、ステップS16へ進む。
【0089】
一方、
図11(b)に示す差分を示すグラフに近似したグラフとなった場合には、現在、埋設物検出装置1はコンクリート100の表面100aから離間して、空気中にあると判定し、ステップS17へ進む。
【0090】
次に、ステップS16では、ステップS15において、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100a付近にあると判定されたため、制御部10は、埋設物検出装置1が安定して移動しており、かつコンクリート100の表面100a付近にあると判断し、送信アンテナ11から電磁波を放射するように制御を行う。
【0091】
なお、ここで放射される電磁波と、ステップS13において放射される仮の電磁波は、同じ強度であってもよいし、例えば、仮の電磁波を弱くする等、異なる強度であってもよい。
【0092】
次に、ステップS17では、ステップS15において、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aから離間して空気中にあると判定されたため、制御部10は、送信アンテナ11を制御して、電磁波の放射を停止させる。
これにより、コンクリート100内の埋設物101の検出を開始する際に、作業者による操作なしで自動的に電磁波を放射することができる。
【0093】
<電磁波放射停止制御の流れ>
本実施形態の埋設物検出方法では、上述した埋設物検出装置1を用いて、
図12に示すフローチャートおよび
図13に示すシーケンス図に従って、送信アンテナ11からの電磁波の放射停止制御を行う。
【0094】
すなわち、ステップS21では、電磁波が放射されているか否かを検出する。ここで、電磁波の放射が確認されると、ステップS22へ進み、電磁波の放射がすでに停止されている場合には、処理を終了する。
【0095】
ここで、電磁波の放射は、
図13に示すように、コンクリート100の表面100aにおいて、作業者が埋設物検出装置1を操作することでエンコーダ7から制御部10に対して入力が有り、制御部10が送信アンテナ11に対して電磁波放射指示を送信することで行われる。
【0096】
そして、コンクリート100の表面100aにおいて、作業者が埋設物検出装置1を操作するたびに、エンコーダ7から制御部10に対して入力が有り、エンコーダ7からの入力があるたびに、受信アンテナ12から制御部10に対して反射波のデータが送信される。
【0097】
次に、ステップS22では、電磁波が放射されていることが検出されたため、エンコーダ7からの入力が停止したか否かを検出する。ここで、エンコーダ7からの入力が停止している場合には、ステップS23へ進み、エンコーダ7からの入力が継続している場合には、エンコーダ7からの入力が停止するまで待機する。
【0098】
次に、ステップS23では、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aから離間していることを検出するために用いられる探査面離間比較データが初期化されているか否かを判定する。ここで、初期化されている場合には、ステップS24へ進む。一方、初期化されていない場合には、ステップS25へ進み、1ラインデータによって比較データを初期化する。
【0099】
なお、探査面離間比較データとしては、例えば、上述した埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aに接触した状態における反射波のデータ(
図9(b)参照)を示すグラフ等を用いることができる。
【0100】
次に、ステップS24では、受信アンテナ12において受信された反射波の1ライン分のデータ(例えば、
図10(b)のグラフ)と、予め記憶されている探査面離間比較データとを比較して、所定の閾値以上の差(変化)があったか否かを判定する。ここで、所定の閾値以上の差(変化)があった場合には、ステップS26へ進む。
【0101】
より具体的には、
図13に示すように、エンコーダ7からの制御部10への入力が停止してから100msごとに行われる受信アンテナ12からのデータ送信(1)~(3)のうち、(1)のデータと(3)のデータとが所定の閾値以上の差(変化)があると判断した場合に、ステップS26へ進む。
【0102】
なお、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aに接触している状態(
図9(a)参照)を基準にして、表面100aから離間した状態(
図10(a)参照)であるか否かを判定する処理については、上述した
図11(b)に示すグラフを用いて同様に実施することができる。
【0103】
次に、ステップS26では、制御部10は、ステップS21において電磁波の放射を確認し、ステップS22においてエンコーダ7からの入力の停止を確認し、かつ、ステップS24において反射波のデータが比較データと所定の閾値以上の差があることを確認したことで、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aから離間したと判断し、電磁波の放射を停止させるように、パルス発生部13を介して送信アンテナ11を制御する。
【0104】
これにより、コンクリート100内の埋設物101の検出作業を終了する際に、作業者による操作なしで、自動的に電磁波の放射を停止することができる。また、作業中以外に電磁波が放射されることを防止することで、無駄な電力消費を抑制し、送信アンテナ11の回路素子等の部品の寿命劣化を防止することができる。
【0105】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0106】
(A)
上記実施形態では、
図7のステップS12に示すように、エンコーダ7からの入力がN回以上連続していることを条件として、車輪4の回転の安定を検出した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0107】
例えば、
図14のステップS112に示すように、車輪の回転の安定を、エンコーダからの入力が車輪の回転速度が所定の範囲内で所定時間以上安定していることを条件として検出してもよい。
【0108】
(B)
上記実施形態では、エンコーダ7からの入力が同じ方向にN回以上連続したものである場合に、送信アンテナ11から仮の電磁波を放射させ、受信アンテナ12においてその反射波を受信し、その受信状況に基づいて、制御部10が、送信アンテナ11からの電磁波の放射を開始するか否かを決定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0109】
例えば、
図15に示すように、制御部が、エンコーダからの入力状況に基づいて、車輪の回転が安定したことを検出した場合に、送信アンテナからの電磁波の放射を開始するように制御してもよい。
【0110】
すなわち、
図15に示す方法では、送信アンテナから仮の電磁波を放射させて受信アンテナにおいて受信した反射波の波形を用いた電磁波の放射開始制御を実施することなく、エンコーダからの入力状況のみを用いて、電磁波の放射開始制御を実施してもよい。
【0111】
なお、車輪の回転の安定とは、例えば、
図15のステップS12に示すように、車輪の回転方向が所定回数(所定パルス)以上、同じ方向であること、または、
図16のステップS112に示すように、車輪の回転速度が所定の範囲内で安定していること、およびこれらの組合せであることが含まれる。
【0112】
(C)
上記実施形態では、
図12に示すように、エンコーダ7からの入力停止と、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aに接触した状態における反射波のデータと比較して、その変化(差)が所定の閾値以上であることを条件として、電磁波放射停止制御を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0113】
例えば、
図17に示すように、ステップS21,S22の後の処理として、ステップS123において、エンコーダ7が停止してからの時間を計測するタイマを初期化し、ステップS124において、エンコーダ7からの入力停止からの経過時間が所定時間を経過した場合に、ステップS125において、制御部10が、送信アンテナ11からの電磁波の放射を停止させるように制御してもよい。
【0114】
より具体的には、
図18に示すように、エンコーダ7からの最後の入力があってから、100msごとに受信アンテナ12から制御部10に対してデータ送信を行い、所定時間が経過する、すなわち、100ms間隔で行われるデータ送信の回数が所定回数以上になると、制御部10が、送信アンテナ11からの電磁波の放射を停止するように、送信アンテナ11を制御してもよい。
【0115】
(D)
上記実施形態では、本体部2に4つの車輪4が取り付けられた埋設物検出装置1を用いて、コンクリート100内の埋設物101を検出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本体部に取り付けられる車輪は、4つに限らず、1つ、2つ、3つあるいは5つ以上であってもよい。
【0116】
(E)
上記実施形態では、埋設物検出装置1によって検出される埋設物101として、コンクリート100内の鉄筋を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、他の材料中の異物を検出する用途に使用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の埋設物検出装置は、埋設物の検出を開始する際に、ユーザによる操作なしで自動的に電磁波を放射することができるという効果を奏することから、埋設物の検出を行う各種装置および方法に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 埋設物検出装置
2 本体部
3 把手
4 車輪
5 インパルス制御モジュール
6 メイン制御モジュール
7 エンコーダ(回転検出部)
8 表示部
10 制御部(放射制御部)
11 送信アンテナ(放射部)
12 受信アンテナ(受信部)
13 パルス発生部
14 ディレイ部
15 ゲート部
21 受信部
22 RFデータ管理部
24 埋設物判定部
25 判定結果登録部
26 表示制御部
100 コンクリート
100a 表面
101a~101d 埋設物