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特許7120023(メタ)アクリル系共重合体、組成物、塗料組成物、塗装物及び複層塗膜の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル系共重合体、組成物、塗料組成物、塗装物及び複層塗膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20220809BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20220809BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20220809BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20220809BHJP
   C08G 18/63 20060101ALI20220809BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20220809BHJP
   C09D 151/06 20060101ALI20220809BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220809BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08F265/06
C08F290/00
C08F220/26
C08G18/62 016
C08G18/63 030
C08G18/63 050
C09D133/14
C09D151/06
B32B27/30 A
B32B27/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018551708
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2017041485
(87)【国際公開番号】W WO2018092884
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2016224089
(32)【優先日】2016-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】石井 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】原口 辰介
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-126896(JP,A)
【文献】特開平09-118858(JP,A)
【文献】国際公開第2015/084960(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0100351(US,A1)
【文献】特開平01-272679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/00
C08F 290/00
C08F 220/00
C09D 133/14
C09D 151/06
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるマクロモノマー(a)由来の構成単位とビニル単量体(b)由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体であって、
前記(メタ)アクリル系共重合体の水酸基価が120mgKOH/g以上260mgKOH/g以下であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体の1級水酸基を有する構成単位の含有量がマクロモノマー(a)由来の構成単位およびビニル単量体(b)由来の構成単位100質量部に対し30質量部以下である、(メタ)アクリル系共重合体。
【化1】
(式中、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するシクロアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する複素環基を示し、Qは2以上の下記式(a’)で示される構成単位を含む主鎖部分を示し、Zは末端基を示す。)
【化2】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はCHOHを示し、RはOR、ハロゲン原子、COR、COOR、CN、CONR又はRを示し、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Rは非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体の構成単位100質量部に対して、2級水酸基及び3級水酸基の少なくとも一方を有する構成単位が15質量部以上60質量部以下である、請求項1に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
【請求項3】
下記式(1)で表されるマクロモノマー(a)由来の構成単位とビニル単量体(b)由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体とポリイソシアネート化合物を含む組成物であって、前記マクロモノマー(a)由来の構成単位と前記ビニル単量体(b)由来の構成単位の少なくとも一方が水酸基を有し、塗装1日後のゲル分率が70%以下であり、塗装8日後のゲル分率が80%以上である、組成物
【化3】
(式中、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するシクロアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する複素環基を示し、Qは2以上の下記式(a’)で示される構成単位を含む主鎖部分を示し、Zは末端基を示す。)
【化4】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はCHOHを示し、RはOR、ハロゲン原子、COR、COOR、CN、CONR又はRを示し、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Rは非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
【請求項4】
下記式(1)で表されるマクロモノマー(a)由来の構成単位とビニル単量体(b)由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体とポリイソシアネート化合物を含む組成物であって、前記マクロモノマー(a)由来の構成単位と前記ビニル単量体(b)由来の構成単位の少なくとも一方が水酸基を有し、塗装1日後のゲル分率と塗装8日後のゲル分率の関係が以下式(I)で表される組成物
100≧(塗装8日後のゲル分率)-(塗装1日後のゲル分率)≧40
・・・(I)
【化5】
(式中、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するシクロアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する複素環基を示し、Qは2以上の下記式(a’)で示される構成単位を含む主鎖部分を示し、Zは末端基を示す。)
【化6】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はCHOHを示し、RはOR、ハロゲン原子、COR、COOR、CN、CONR又はRを示し、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Rは非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
【請求項5】
前記マクロモノマー(a)の数平均分子量が500以上10万以下である、請求項3又は4に記載の組成物
【請求項6】
請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル系共重合体を含む塗料組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系共重合体の含有量が、塗料組成物の樹脂固形分に対して30質量%以上である、請求項6に記載の塗料組成物。
【請求項8】
硬化剤をさらに含む請求項6又は7に記載の塗料組成物。
【請求項9】
前記硬化剤がポリイソシアネート化合物又はブロック化ポリイソシアネート化合物であり、前記(メタ)アクリル系共重合体の水酸基に対する前記ポリイソシアネート化合物のイソシアナト基又は前記ブロック化ポリイソシアネート化合物のブロック化イソシアナト基のモル比が0.5~2である請求項8に記載の塗料組成物。
【請求項10】
塗装1日後の塗膜のマルテンス硬度が10以下であり、塗装8日後の塗膜マルテンス硬度が100以上である、請求項6~9の何れか一項に記載の塗料組成物。
【請求項11】
請求項6~10の何れか一項に記載の塗料組成物が塗装された塗装物。
【請求項12】
電着塗料の硬化塗膜上に、第1着色ベース塗料を塗装して第1着色ベース塗膜を形成し、前記第1着色ベース塗膜上に第2着色ベース塗料を塗装して第2着色ベース塗膜を形成し、ついで前記第1着色ベース塗膜及び前記第2着色ベース塗膜を予備加熱した後、前記第2着色ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成し、形成された3層の塗膜を同時に加熱硬化させて複層塗膜を形成する方法であって、
前記クリヤー塗料として、請求項6~10の何れか一項に記載の塗料組成物を用いる複層塗膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系共重合体、塗料組成物、塗装物及び複層塗膜の形成方法に関する。
本願は、2016年11月17日に、日本出願された特願2016-224089号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の塗装においては、着色剤を配合したベース塗料による塗装の後、被膜形成性樹脂及び硬化剤を含むクリヤー塗料を塗装し、加熱硬化させることが行われている。被膜形成性樹脂としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体と他のビニル系単量体との共重合体が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-40390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、被膜形成性樹脂として上記のようなアクリル樹脂を用いたアクリル系塗料においては、塗装後のサンドペーパー等での研磨による補修作業を効率良く行うことが難しい。
【0005】
塗装後の補修作業の効率化のために、硬化剤の量を減らして塗膜の硬度を低くすることが考えられる。塗膜の硬度が低くなれば、研磨しやすくなり、作業効率が高まる。しかし、塗膜の硬度が低いと、砂、洗車機のブラシ等による傷が付きやすくなる。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、塗装後に塗膜の補修作業を効率良く行うことができる塗料組成物、前記塗料組成物を得るために好適な(メタ)アクリル系共重合体、並びに前記塗料組成物を用いた塗装物及び複層塗膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] マクロモノマー(a)由来の構成単位とビニル単量体(b)由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体であって、前記(メタ)アクリル系共重合体の水酸基価が120mgKOH/g以上260mgKOH/g以下であり、前記(メタ)アクリル系共重合体の1級水酸基を有する構成単位の含有量がマクロモノマー(a)由来の構成単位およびビニル単量体(b)由来の構成単位100質量部に対し30質量部以下である、(メタ)アクリル系共重合体。
[2] 前記(メタ)アクリル系共重合体の構成単位100質量部に対して、2級水酸基及び3級水酸基の少なくとも一方を有する構成単位が15質量部以上60質量部以下である、[1]に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[3] マクロモノマー(a)由来の構成単位とビニル単量体(b)由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体であって、前記マクロモノマー(a)由来の構成単位と前記ビニル単量体(b)由来の構成単位の少なくとも一方が水酸基を有し、塗装1日後のゲル分率が70%以下であり、塗装8日後のゲル分率が80%以上である、(メタ)アクリル系共重合体。
[4] マクロモノマー(a)由来の構成単位とビニル単量体(b)由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体であって、前記マクロモノマー(a)由来の構成単位と前記ビニル単量体(b)由来の構成単位の少なくとも一方が水酸基を有し、塗装1日後のゲル分率と塗装8日後のゲル分率の関係が以下式(I)で表される(メタ)アクリル系共重合体。
100≧(塗装8日後のゲル分率)-(塗装1日後のゲル分率)≧40
・・・(I)
[5] 前記マクロモノマー(a)の数平均分子量が500以上10万以下である、[1]~[4]の何れかに記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[6] 前記マクロモノマー(a)が、ラジカル重合性基を有し、下記式(a’)で示される構成単位を2以上有する、[1]~[5]の何れかに記載の(メタ)アクリル系共重合体。
【化1】
[7] [1]~[6]の何れかに記載の(メタ)アクリル系共重合体を含む塗料組成物。
[8] 前記(メタ)アクリル系共重合体の含有量が、塗料組成物の樹脂固形分に対して30質量%以上である、[7]に記載の塗料組成物。
[9] 硬化剤をさらに含む[7]又は[8]に記載の塗料組成物。
[10] 塗装1日後の塗膜のマルテンス硬度が10以下であり、塗装8日後の塗膜マルテンス硬度が100以上である、[7]~[9]の何れかに記載の塗料組成物。
[11] 前記[7]~[10]の何れかに記載の塗料組成物が塗装された塗装物。
[12] 電着塗料の硬化塗膜上に、第1着色ベース塗料を塗装して第1着色ベース塗膜を形成し、ついで前記第1着色ベース塗膜を予備加熱することなく又は予備加熱若しくは加熱硬化した後、前記第1着色ベース塗膜上に第2着色ベース塗料を塗装して第2着色ベース塗膜を形成し、ついで前記第1着色ベース塗膜及び前記第2着色ベース塗膜を予備加熱した後、前記第2着色ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成し、形成された3層の塗膜を同時に加熱硬化させて複層塗膜を形成する方法において、
前記クリヤー塗料として、[7]~[10]の何れか一項に記載の塗料組成物を用いることを特徴とする、複層塗膜の形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗装後に塗膜の補修作業を効率良く行うことができる塗料組成物、前記塗料組成物を得るために好適な(メタ)アクリル系共重合体、並びに前記塗料組成物を用いた塗装物及び複層塗膜の形成方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「(メタ)アクリル系共重合体」とは、構成単位の少なくとも一部が(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位である共重合体を意味する。(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル系単量体以外の単量体(例えばスチレン等のビニル単量体)由来の構成単位をさらに有していてもよい。
「構成単位」とは、単量体が重合することによって形成された単量体に由来する構成単位である。
「単量体」とは、重合性を有する化合物(重合性単量体)を意味する。
「ビニル単量体」は、エチレン性不飽和結合(重合性炭素-炭素二重結合)を有する単量体を意味する。
「(メタ)アクリル系単量体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称である。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。「(メタ)アクリロニトリル」は、アクリロニトリルとメタクリロニトリルの総称である。「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドとメタクリルアミドの総称である。
【0010】
〔(メタ)アクリル系共重合体〕
本発明の(メタ)アクリル系共重合体(以下、「共重合体(A)」ともいう。)は、マクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位とを含む。
共重合体(A)は、マクロモノマー(a)由来のポリマー鎖と、ビニル単量体(b)由来の構成単位から構成されるポリマー鎖とが結合した、グラフト共重合体又はブロック共重合体の構造を有する。
【0011】
<マクロモノマー(a)由来の構成単位>
マクロモノマー(a)は、ラジカル重合性基およびラジカル重合性基を有する単量体(以下「単量体(a1)」ともいう)由来の構成単位を2以上有する化合物である。マクロモノマー(a)が有する2以上の構成単位はそれぞれ同じでも異なってもよい。
【0012】
マクロモノマー(a)が有するラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、例えば、CH=C(COOR)-CH-、(メタ)アクリロイル基、2-(ヒドロキシメチル)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
ここで、Rは水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換の脂環式基、置換または非置換のアリール基、又は置換または非置換の複素環基を示す。
【0013】
Rにおける非置換のアルキル基としては、例えば、炭素数1~20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。炭素数1~20の分岐又は直鎖アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、i-デシル、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基及びイコシル基が挙げられる。また、炭素数は20以上のアルキル基を用いることもできる。
【0014】
Rにおける非置換の脂環式基としては、単環式のものでも多環式のものでもよく、例えば、炭素数3~20の脂環式基が挙げられる。脂環式基としては、飽和脂環式基が好ましく、具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、シクロオクチル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0015】
Rにおける非置換のアリール基としては、例えば、炭素数6~18のアリール基が挙げられる。炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0016】
Rにおける非置換の複素環式基としては、例えば、炭素数5~18の複素環式基が挙げられる。炭素数5~18の複素環式基の具体例としては、γ-ブチロラクトン基及びε-カプロラクトン基等の酸素原子含有複素環式基、ピリジル基、カルバゾリル基、ピロリジニル基、ピロリドン基等の窒素原子含有複素環式基、モルホリノ基等が挙げられる。
【0017】
Rにおける置換基(置換基を有するアルキル基、置換基を有する脂環式基、置換基を有するアリール基、置換基を有する複素環式基それぞれにおける置換基)としては、例えば、アルキル基(ただしRが置換基を有するアルキル基である場合を除く)、アリール基、-COOR11、シアノ基、-OR12、-NR1314、-CONR1516、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、シロキシ基、及び親水性又はイオン性を示す基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
ここで、R11~R16はそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、又は非置換の若しくは置換基を有するアリール基を示す。これらの基はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。
【0018】
上記置換基におけるアルキル基、アリール基はそれぞれ、前記の非置換のアルキル基、非置換のアリール基と同様のものが挙げられる。
上記置換基における-COOR11のR11としては、水素原子又は非置換のアルキル基が好ましい。すなわち、-COOR11は、カルボキシ基又はアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
上記置換基における-OR12のR12としては、水素原子又は非置換のアルキル基が好ましい。すなわち、-OR12は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~12のアルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
【0019】
上記置換基における-NR1314としては、例えばアミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。
上記置換基における-CONR1516としては、例えば、カルバモイル基(-CONH),N-メチルカルバモイル基(-CONHCH)、N,N-ジメチルカルバモイル基(ジメチルアミド基:-CON(CH)等が挙げられる。
【0020】
上記置換基におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
上記置換基における親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシ基のアルカリ塩又はスルホキシ基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
【0021】
Rとしては、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、又は非置換の若しくは置換基を有する脂環式基が好ましく、非置換のアルキル基、又は非置換の若しくは置換基としてアルキル基を有する脂環式基がより好ましい。
上記の中でも、入手のし易さから、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、イソボルニル基及びアダマンチル基が好ましい。
【0022】
単量体(a1)が有するラジカル重合性基としては、マクロモノマー(a)が有するラジカル重合性基と同様に、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。
単量体(a1)としては、種々のものが用いられ得るが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸3,5,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートやその誘導体、水添ロジンアクリレートやその誘導体、(メタ)アクリル酸ドコシル等の炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル; (メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、グリセロール (メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系のビニル系単量体;
(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;
アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、「プラクセルFM」(ダイセル化学(株)製カプロラクトン付加モノマー、商品名)、「ブレンマーPME-100」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME-200」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME-400」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が9であるもの)、商品名)、「ブレンマー50POEP-800B」(日油(株)製オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-メタクリレート(エチレングリコールの連鎖が8であり、プロピレングリコールの連鎖が6であるもの)、商品名)及び「ブレンマー20ANEP-600」(日油(株)製ノニルフェノキシ(エチレングリコール-ポリプロピレングリコール)モノアクリレート、商品名)、「ブレンマーAME-100」(日油(株)製、商品名)、「ブレンマーAME-200」(日油(株)製、商品名)及び「ブレンマー50AOEP-800B」(日油(株)製、商品名)サイラプレーンFM-0711(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM-0721(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM-0725(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM-0701(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM-0701T(JNC(株)製、商品名)、X-22-174DX(信越化学工業(株)製、商品名)、X-22-2426(信越化学工業(株)製、商品名)、X-22-2475(信越化学工業(株)製、商品名)、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤含有モノマー;
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ-p-メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-s-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-2-メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-t-ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n-ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、n-オクチルジ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t-ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリイソプロピルシリルアミルフマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルフマレート等の、シランカップリング剤含有モノマー以外のオルガノシリル基含有モノマー;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン、(メタ)アクリル酸2-イソシアナトエチル2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロー1-(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有モノマー(ただしハロゲン化オレフィンを除く)、1-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、1-(2-エチルへキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1-(シクロへキシルオキシ)エチルメタクリレート)、2-テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等のアセタール構造を持つモノマー、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、(メタ)アクリル酸-2-イソシアナトエチル等が挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
単量体(a1)の少なくとも一部は(メタ)アクリル系単量体であることが好ましい。
【0023】
ビニル単量体(b)由来の構成単位が水酸基を有する構成単位を含まない場合は、マクロモノマー(a)由来の構成単位は、水酸基を有する構成単位を含む。つまり単量体(a1)が水酸基を有する単量体を含む。
水酸基を有する単量体としては、前記で挙げたものと同様のものが挙げられる。
ビニル単量体(b)由来の構成単位が水酸基を有する構成単位を含む場合は、単量体(a1)は、水酸基を有する単量体を含んでもよく含まなくてもよい。
【0024】
単量体(a1)由来の構成単位としては、下記式(a’)で示される構成単位(以下「構成単位(a’)」ともいう)が好ましい。
【0025】
【化2】
式中、Rは水素原子、メチル基又はCHOHを示し、RはOR、ハロゲン原子、COR、COOR、CN、CONR又はRを示し、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、カルボン酸基(COOH)、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基(SOH)及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Rは非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するオレフィン基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0026】
~Rにおける非置換のアルキル基、非置換の脂環式基、非置換のアリール基はそれぞれ、前述のRにおける非置換のアルキル基、非置換の脂環式基、非置換のアリール基と同様のものが挙げられる。
非置換のヘテロアリール基としては、例えば、ピリジル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
非置換の非芳香族の複素環式基としては、例えば、ピロリジニル基、ピロリドン基等が挙げられる。
非置換のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
【0027】
非置換のオルガノシリル基としては、例えば、-SiR171819(ここで、R17~R19はそれぞれ独立に、非置換若しくは置換基を有するアルキル基、非置換若しくは置換基を有する脂環式基、又は非置換若しくは置換基を有するアリール基を示す。)が挙げられる。
17~R19における非置換若しくは置換基を有するアルキル基としては、前記と同様のものが挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-アミル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、ステアリル基、ラウリル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、2-メチルイソプロピル基、ベンジル基等が挙げられる。非置換若しくは置換基を有する脂環式基としては、前記と同様のものが挙げられ、例えばシクロヘキシル基等が挙げられる。非置換若しくは置換基を有するアリール基としては、前記と同様のものが挙げられ、例えばフェニル基、p-メチルフェニル等が挙げられる。R17~R19はそれぞれ同じでもよく異なってもよい。
【0028】
~Rにおける置換基(置換基を有するアルキル基、置換基を有する脂環式基、置換基を有するアリール基、置換基を有するヘテロアリール基、置換基を有する非芳香族の複素環式基、置換基を有するアラルキル基、置換基を有するアルカリール基、置換基を有するオルガノシリル基それぞれにおける置換基)のうち、カルボン酸エステル基としては、例えば前記-COOR11のR11が非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、又は非置換の若しくは置換基を有するアリール基である基が挙げられる。
アルコキシ基としては、前記-OR12のR12が非置換のアルキル基である基が挙げられる。
2級アミノ基としては、前記-NR1314のR13が水素原子、R14が非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、又は非置換の若しくは置換基を有するアリール基である基が挙げられる。
3級アミノ基としては、前記-NR1314のR13及びR14がそれぞれ非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、又は非置換の若しくは置換基を有するアリール基である基が挙げられる。
非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、ハロゲン原子はそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。
【0029】
における非置換のアリール基、非置換のヘテロアリール基はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。
における置換基(置換基を有するアリール基、置換基を有するヘテロアリール基それぞれにおける置換基)のうち、カルボン酸エステル基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、及びハロゲン原子はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。
非置換のオレフィン基としては、例えばアリル基等が挙げられる。
置換基を有するオレフィン基における置換基としては、Rにおける置換基と同様のものが挙げられる。
【0030】
構成単位(a’)は、CH=CRに由来する構成単位である。CH=CRの具体例としては、以下のものが挙げられる。
置換又は非置換のアルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、1-メチル-2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-メトキシブチル(メタ)アクリレート]、置換又は非置換のアラルキル(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、m-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、置換又は非置換のアリール(メタ)アクリレート[例えば、フェニル(メタ)アクリレート、m-メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p-メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、脂環式(メタ)アクリレート[例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート]、ハロゲン原子含有(メタ)アクリレート[例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート]等の疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート等のオキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル等の末端アルコキシアリル化ポリエーテル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル単量体;
ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の第一級または第二級アミノ基含有ビニル単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基含有ビニル単量体;
ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性単量体;
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ-p-メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-s-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-2-メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-t-ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n-ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、n-オクチルジ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t-ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート等のオルガノシリル基含有ビニル単量体;
メタクリル酸、アクリル酸、ビニル安息香酸、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
アクリロニトリル、メタクリロニトニル等のシアノ基含有ビニル単量体;
アルキルビニルエーテル[たとえば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等]、シクロアルキルビニルエーテル[たとえば、シクロヘキシルビニルエーテル等]等のビニルエーテル単量体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル単量体;
スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;
塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化オレフィン;等。
【0031】
マクロモノマー(a)は、構成単位(a’)以外の他の構成単位をさらに有していてもよい。他の構成単位としては、例えば前述の単量体(a1)のうちCH=CRに該当しない単量体に由来する構成単位が挙げられる。
他の構成単位の好ましい具体例として、以下の単量体由来の構成単位が挙げられる。
トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリイソプロピルシリルアミルフマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルフマレート等のオルガノシリル基含有ビニル単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル単量体;
クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル等の多官能単量体等。エポキシ基含有不飽和単量体とカルボキシル基含有単量体とのエステル化反応から得られる単量体等。
【0032】
マクロモノマー(a)としては、2以上の構成単位(a’)を含む主鎖の末端にラジカル重合性基が導入されたマクロモノマーが好ましく、下記式(1)で表されるマクロモノマーがより好ましい。
【0033】
【化3】
(式中、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するシクロアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する複素環基を示し、Qは2以上の構成単位(a’)を含む主鎖部分を示し、Zは末端基を示す。)
【0034】
式(1)中、Rは、前述のCH=C(COOR)-CH-におけるRと同様であり、好ましい態様も同様である。
Qに含まれる2以上の構成単位(a’)はそれぞれ、同じでもよく異なってもよい。
Qは、構成単位(a’)のみからなるものでもよく、構成単位(a’)以外の他の構成単位をさらに含むものであってもよい。
Qを構成する構成単位の数は、マクロモノマー(a)の数平均分子量が前記範囲内となる範囲で適宜設定し得る。
Zとしては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子、ラジカル重合開始剤に由来する基、ラジカル重合性基等が挙げられる。
【0035】
マクロモノマー(a)としては、下記式(2)で表されるマクロモノマーが特に好ましい。
【0036】
【化4】
(式中、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するシクロアルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する複素環基を示し、R21は水素原子又はメチル基を示し、R22は非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、これらの基における置換基はそれぞれ、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、nは2以上の自然数を示し、Zは末端基を示す。)
【0037】
式(2)中、R及びZはそれぞれ前記と同様である。
22における各基は、COORのRで挙げたものと同様である。
nは2以上の自然数である。nは、マクロモノマー(a)の数平均分子量(Mn)が500以上10万以下となる範囲内であることが好ましい。R21、R22はそれぞれ同じでも異なってもよい。
【0038】
マクロモノマー(a)の数平均分子量(Mn)は、500以上10万以下が好ましく、800以上30000以下がより好ましく、900以上10000以下がさらに好ましく、1000以上5500以下が特に好ましい。マクロモノマー(a)の数平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の硬度、耐水性がより優れる。マクロモノマー(a)の数平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体(A)の溶液やこれを含む塗料組成物の貯蔵安定性がより優れる。
マクロモノマー(a)の数平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを基準樹脂として測定される。
【0039】
マクロモノマー(a)のガラス転移温度(以下「Tga」ともいう)は、0℃以上150℃以下が好ましく、10℃以上120℃以下がより好ましく、30℃以上100℃以下がさらに好ましい。Tgaが前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の硬度、耐水性がより優れる。Tgaが前記範囲の上限値以下であれば、共重合体(A)の溶液やこれを含む塗料組成物の貯蔵安定性がより優れ、また、それらの溶液や塗料組成物を高固形分でも低粘度のものとしやすい。
Tgaは、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
Tgaは、マクロモノマー(a)を形成する単量体の組成等によって調整できる。
【0040】
マクロモノマー(a)は、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。
マクロモノマー(a)の製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α-メチルスチレンダイマー等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法、重合体にラジカル重合性基を化学的に結合させる方法、熱分解による方法等が挙げられる。
これらの中で、マクロモノマー(a)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点で、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。なお、コバルト連鎖移動剤を用いて製造した場合のマクロモノマー(a)は、前記式(1)で表される構造を有する。
【0041】
コバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマー(a)を製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、及び懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が挙げられる。回収工程が簡便である点から、水系分散重合法が好ましい。
重合体にラジカル重合性基を化学的に結合させる方法としては、例えば、ハロゲン基を有する重合体のハロゲン基を、ラジカル重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物で置換することにより製造する方法、酸基を有するビニル系単量体とエポキシ基を有するビニル系重合体とを反応させる方法、エポキシ基を有するビニル系重合体と酸基を有するビニル系単量体とを反応させる方法、水酸基を有するビニル系重合体とジイソシアネート化合物とを反応させ、イソシアネート基を有するビニル系重合体を得て、このビニル系重合体と水酸基を有するビニル系単量体とを反応させる方法等が挙げられ、いずれの方法によって製造されても構わない。
マクロモノマー(a)の数平均分子量は、重合開始剤や連鎖移動剤等によって調整できる。
【0042】
<ビニル単量体(b)由来の構成単位>
ビニル単量体(b)は、エチレン性不飽和結合を有する、マクロモノマーではない単量体である。ビニル単量体(b)としては、特に限定されず、前記で挙げたマクロモノマー(a)を得るための単量体と同様のものを用いることができる。これらのビニル単量体はいずれか1種を用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
ビニル単量体(b)は、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、スチレン、及びイソボルニル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(以下「単量体(b1)」ともいう)を含むことが好ましい。共重合体(A)が単量体(b1)由来の構成単位を含むと、塗膜の耐候性や耐水性、光沢等がより優れる。
【0044】
マクロモノマー(a)由来の構成単位が水酸基を有する構成単位を含まない場合は、ビニル単量体(b)由来の構成単位は、水酸基を有する構成単位を含む。つまりビニル単量体(b)が、水酸基を有するビニル単量体(以下「単量体(b2)」ともいう)を含む。
単量体(b2)としては、前記で挙げた水酸基を有する単量体と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
マクロモノマー(a)由来の構成単位が水酸基を有する構成単位を含む場合は、ビニル単量体(b)は、単量体(b2)を含んでもよく含まなくてもよい。
【0045】
ビニル単量体(b)は、単量体(b1)~(b2)以外の他のビニル単量体をさらに含んでいてもよい。他のビニル単量体としては、前記で挙げたマクロモノマー(a)を得るための単量体と同様のものを用いることができる。
【0046】
<水酸基を有する構成単位>
共重合体(A)中、水酸基を有する構成単位の含有量は、全構成単位の合計質量に対し、0.5質量部以上80質量部以下が好ましく、5質量部以上60質量部以下がより好ましく、10質量部以上50質量部以下が更に好ましい。水酸基を有する構成単位の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、共重合体(A)を硬化剤等により硬化させた時に、架橋密度が充分に高くなり、塗膜の硬度がより高まる。水酸基を有する構成単位の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、耐水性がより優れる。
共重合体(A)中の水酸基を含有する構成単位の含有量は、マクロモノマー(a)由来の構成単位における水酸基を含有する構成単位の含有量及びビニル単量体(b)由来の構成単位における水酸基を含有する構成単位(単量体(b2)由来の構成単位)の含有量の合計量である(マクロモノマー(a)由来の構成単位又はビニル単量体(b)由来の構成単位における水酸基を含有する構成単位の含有量が0質量%である場合を含む)。
【0047】
水酸基を有する構成単位は、2級水酸基及び3級水酸基のいずれか一方又は両方を有する構成単位(以下、「2級/3級OH含有単位」ともいう。)を含むことが好ましい。2級/3級OH含有単位を含むことで、硬化遅延によって補修作業を効率良く行うことができる。2級/3級OH含有単位は、1級水酸基をさらに有してもよい。
2級/3級OH含有単位としては、例えば2級水酸基及び3級水酸基のいずれか一方又は両方を有する単量体(以下、「2級/3級OH含有単量体」ともいう。)由来の構成単位が挙げられる。
【0048】
2級/3級OH含有単量体としては、2級水酸基及び3級水酸基のいずれか一方又は両方を有するビニル単量体が好ましい。2級/3級OH含有単量体は、水酸基を1つ有する一価アルコール単量体であってもよく、水酸基を2つ以上有する多価アルコール単量体であってもよい。一価アルコール単量体は、水酸基が2級水酸基である2級アルコール単量体であってもよく、水酸基が3級水酸基である3級アルコール単量体であってもよい。
2級アルコール単量体としては、例えば2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の、2級水酸基を有するモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の、2級水酸基を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
3級アルコール単量体としては、例えば3-ヒドロキシ-1,3-ジエチルブタン(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多価アルコール単量体としては、例えばグリセロールモノ(メタ)アクリレート等の、2級水酸基を有する多価ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
2級/3級OH含有単量体としては、入手のし易さの点で、水酸基が2級水酸基であるモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0049】
水酸基を有する構成単位のうち、1級水酸基を有する構成単位(以下、「1級OH含有単位」ともいう。)の含有量は前記(メタ)アクリル系共重合体の1級水酸基を有する構成単位の含有量がマクロモノマー(a)由来の構成単位およびビニル単量体(b)由来の構成単位100質量部に対し30質量部以下である。1級OH含有単位によって、2級水酸基及び3級水酸基と1級水酸基との比率を調整し、塗装1日後のゲル分率を調整することができる。
1級OH含有単位としては、例えば1級水酸基を有する、2級水酸基及び3級水酸基を有しない単量体(以下、「1級OH含有単量体」ともいう。)由来の構成単位が挙げられる。
【0050】
1級OH含有単量体としては、1級水酸基を有する、2級水酸基及び3級水酸基を有しないビニル単量体が好ましく、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の、1級水酸基を有するモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、1級水酸基を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;等が挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
1級OH含有単量体としては、1級水酸基を有するモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
1級水酸基を有する単位は前記(メタ)アクリル系共重合体の1級水酸基を有する構成単位の含有量がマクロモノマー(a)由来の構成単位およびビニル単量体(b)由来の構成単位100質量部に対し30質量部以下であり、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。30質量部以下であれば、形成された塗膜の補修作業がしやすい。
【0051】
水酸基を有する構成単位のうち、2級/3級OH含有単位の含有量は、水酸基を有する構成単位の合計質量に対し、20質量%以上100質量%以下が好ましく、30質量%以上100質量%以下がより好ましく、50質量%以上95質量%以下が更に好ましい。2級/3級OH含有単位の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成された塗膜の補修作業がしやすい。
【0052】
<各構成単位の含有量>
共重合体(A)中、マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量は、全構成単位の合計質量(100質量%)に対し、7質量%以上60質量%以下が好ましく、8質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下が更に好ましい。マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、硬度がより優れる。マクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体(A)の溶液やこれを含む塗料組成物の塗布性がより優れる。
【0053】
共重合体(A)中、ビニル単量体(b)由来の構成単位の含有量は、全構成単位の合計質量(100質量%)に対し、40質量%以上93質量%以下が好ましく、50質量%以上92質量%以下がより好ましく、60質量%以上90質量%以下が更に好ましい。ビニル単量体(b)由来の構成単位の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、共重合体(A)の溶液やこれを含む塗料組成物の塗布性がより優れる。ビニル単量体(b)由来の構成単位の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜硬度がより優れる。
【0054】
共重合体(A)において、マクロモノマー(a)を構成する単量体の組成と、ビニル単量体(b)を構成する単量体の組成とは異なることが好ましい。組成は、単量体の種類及び含有割合を示す。
【0055】
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、2000以上100000以下が好ましく、2500以上40000以下がより好ましく、3000以上20000以下がさらに好ましい。共重合体(A)の重量平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体(A)を溶剤に溶解した溶液の粘度がより低くなり、塗料組成物として高固形分低粘度のものを得やすい。重量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の硬度、耐久性等がより優れる。
【0056】
共重合体(A)の水酸基価は、120mgKOH/g以上260mgKOH/g以下であり、150mgKOH/g以上230mgKOH/g以下がより好まく、150mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が特に好ましい。共重合体(A)の水酸基価が前記範囲の下限値以上であれば、共重合体(A)に硬化剤を配合して硬化させた時に、架橋密度が充分に高くなり、塗膜の強度がより高まる。共重合体(A)の水酸基価が前記範囲の上限値以下であれば、耐水性がより優れる。
共重合体(A)の水酸基価は、JIS K 1557-1のA法により測定される。
【0057】
共重合体(A)の酸価は、0mgKOH/g以上80mgKOH/g以下が好ましく、0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下がより好ましく、0mgKOH/g以上30mgKOH/g以下が更に好ましい。共重合体(A)の酸価が前記範囲の上限値以下であれば、耐水性がより優れる。
共重合体(A)の酸価は、以下の測定方法により測定される。
試料約0.5gをビーカーに精秤し(A(g))、トルエン/エタノール溶液50mLを加える。そこにフェノールフタレイン数滴を加え、0.5規定のKOH溶液にて滴定して測定する(滴定量=B(mL)、KOH溶液の力価=f)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(mL))、以下の式に従って酸価を算出する。
酸価(mgKOH/g)={(B-C)×0.2×56.11×f}/A/固形分
【0058】
共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、0℃以上100℃以下であることが好ましく、10℃以上50℃以下がさらに好ましい。20℃以上40℃以下が特に好ましい。共重合体(A)のTgが前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の硬度がより優れる。共重合体(A)のTgが前記範囲の上限値以下であれば、耐クラック性がより優れる。
【0059】
共重合体(A)のTgは、共重合体(A)を構成する単量体各々のホモポリマーのガラス転移温度及び各単量体の質量分率(全単量体の合計質量を1としたときの、前記合計質量に対する単量体各々の質量の割合)からFoxの計算式によって算出される値を意味する。共重合体(A)を構成する単量体には、マクロモノマー(a)を構成する単量体及びビニル単量体(b)が含まれる。
なお、Foxの計算式とは、以下の式により求められる計算値であり、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている値を用いて求めることができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
(式中、Wiはモノマーiの質量分率、Tgiは単量体iのホモポリマーのTg(℃)を示す。)
【0060】
共重合体(A)において、マクロモノマー(a)のガラス転移温度(Tga)(℃)と、ビニル単量体(b)のみを重合して得られる重合体(B)のガラス転移温度(TgB)(℃)とは、マクロモノマー(a)由来の構成単位、ビニル単量体(b)由来の構成単位それぞれの特性が十分発現できる点から、下記式(3)の関係を有することが好ましい。つまりTga-TgB>0℃であることが好ましい。
Tga > TgB ・・・(3)
より好ましくはTga-TgB>60℃であり、最も好ましくはTga-TgB>80℃である。
TgBは、共重合体(A)のTgと同様に、Foxの計算式によって算出される。
【0061】
共重合体(A)は、水酸基を有する。これにより、共重合体(A)と硬化剤とを反応させて硬化させることができる。
共重合体(A)が有する水酸基の少なくとも一部は、2級水酸基及び3級水酸基のいずれか一方又は両方であることが好ましい。これにより、塗装1日後のゲル分率を70%以下にできる。塗装1日後のゲル分率については後で詳しく説明する。
共重合体(A)は、2級水酸基及び3級水酸基に加えて、1級水酸基をさらに含んでもよい。2級水酸基及び3級水酸基と1級水酸基との比率によって、塗装1日後のゲル分率を調整できる。2級水酸基及び3級水酸基の割合が高いほど、補修作業がしやすくなる。
共重合体(A)の構成単位100質量部に対して、2級水酸基及び3級水酸基の少なくとも一方を有する構成単位の合計の割合は、15質量部以上60質量部以下が好ましく、25質量部以上50質量部以下がより好ましく、30質量部以上40質量部以下が更に好ましい。2級水酸基及び3級水酸基の合計の割合が前記範囲の下限値以上であれば、塗装1日後のゲル分率が充分に低くなる。
【0062】
水酸基は、共重合体(A)を構成する構成単位に含まれてもよく、共重合体(A)の主鎖末端に含まれてもよく、それらの両方に含まれてもよい。塗膜の架橋密度を上昇させる点では、少なくとも構成単位に含まれることが好ましい。
【0063】
共重合体(A)は、塗装1日後のゲル分率が70%以下であることが好ましい。
塗装1日後のゲル分率は、共重合体(A)について、下記塗装方法により塗膜を形成してから24時間後に、前記塗膜について下記測定方法により測定されるゲル分率である。
【0064】
「塗装方法」
(メタ)アクリル系共重合体(共重合体(A))とヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体とを、NCO/OHのモル比が1/1となるように有機溶剤に溶解させて塗料組成物を得て、この塗料組成物をポリプロピレン板に6milアプリケーターで塗布し、70℃で30分間の乾燥を行って塗膜を形成し、温度23.5℃、相対湿度50%の条件で保管する。
【0065】
「ゲル分率の測定方法」
塗膜の約0.2gを測り取り、ステンレスメッシュ(SUS316、綾織金網、φ0.04×300メッシュ)で包み、端部をクリップでとめて試料とする。この試料をメタノール:アセトン=1:1(質量比)の混合溶剤500gの中に入れ、65℃で4時間の還流撹拌を行い、次いで前記試料を前記混合溶剤から取り出し、アセトン10gを用いて洗浄した後、熱風乾燥機にて105℃で2時間の乾燥を行う。その後、前記試料中に残存する塗膜の質量を測定して乾燥後質量とし、この乾燥後質量と測り取った塗膜の質量とから、以下の式によりゲル分率を求める。
ゲル分率(%)=乾燥後質量(g)/測り取った塗膜の質量(g)×100
【0066】
ゲル分率は、塗料組成物の硬化度を示す指標である。塗装1日後のゲル分率が低いほど、塗料組成物の硬化(架橋)が進みにくいことを示す。
塗装1日後のゲル分率が70%以下であれば、共重合体(A)及び硬化剤を含む塗料組成物を塗装した後、補修作業が終了するまでの間に、塗膜の硬度が高くなりすぎないため、研磨等の補修作業を行いやすい。また、硬化が進みにくいことで、塗料組成物のポットライフが長く取扱い性に優れることや、塗装直後のフロー性が高く、塗膜の外観(表面の平滑性、厚みの均一性等)が優れる、等の効果も得られる。
上記観点から、塗装1日後のゲル分率は、70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、55%以下が更に好ましい。
塗装1日後のゲル分率は、例えば、共重合体(A)が有する水酸基の反応性によって制御できる。共重合体(A)において、2級水酸基や3級水酸基の反応性は、1級水酸基に比べて低い。共重合体(A)が有する水酸基のうち、2級水酸基及び3級水酸基の割合が高いほど、硬化が遅延し、塗装1日後のゲル分率が低くなる傾向がある。
【0067】
共重合体(A)は、塗装8日後のゲル分率が80%以上であることが好ましい。
塗装8日後のゲル分率は、共重合体(A)について、前記塗装方法により塗膜を形成し、塗膜を形成してから192時間後に、前記塗膜について前記測定方法により測定されるゲル分率である。
塗膜がある程度硬くなる前に塗装物を移動させたりすると、塗膜が変形して外観等が悪化する。そのため、塗膜がある程度硬くなるまで次の工程を進めることができない。塗装8日後のゲル分率が80%以上であれば、塗装後、次の工程を進めるまでの時間を充分に短くでき、生産性に優れる。また、塗膜が完全硬化したときに、塗膜の硬度が充分に高くなり、砂等による擦り傷や、洗車機での洗浄時の回転ブラシ等による傷が付きにくい。
上記観点から、塗装8日後のゲル分率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。塗装8日後のゲル分率の上限は特に限定されず、100%であってもよい。
前に記述した分の1日後、及び、8日後のゲル分率は補修作業性と塗膜の耐擦傷性を有する点から、100≧(塗装8日後のゲル分率)-(塗装1日後のゲル分率)≧40であることが好ましい。より好ましくは100≧(塗装8日後のゲル分率)-(塗装1日後のゲル分率)≧45であり、最も好ましくは100≧(塗装8日後のゲル分率)-(塗装1日後のゲル分率)≧70である。
【0068】
共重合体(A)の塗装1日後のマルテンス硬度(HM)は、10以下であることが好ましく、9以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。塗装8日後のマルテンス硬度(HM)は、100以上が好ましく、120以上がさらに好ましく、140以上が特に好ましく、160以上が最も好ましい。共重合体(A)の塗装1日後のマルテンス硬度(HM)が10以下であれば、補修作業をより効率良く行える。共重合体(A)の塗装8日後のマルテンス硬度(HM)が100以上であれば、耐擦傷性がより優れる。
【0069】
(塗膜の硬度(HM))
塗膜のマルテンス硬度(HM)を、超微小硬度計(株式会社フィッシャー・インストルメンツ製試料、商品名:HM2000)により測定できる。測定条件は、F(試験力)=50mN/10秒、C(最大荷重クリープ時間)=10秒とする。同じ塗膜のそれぞれ異なる5箇所についてマルテンス硬度を測定し、それらの平均値を塗膜の硬度とする。
【0070】
(溶解パラメーター(SP))
共重合体(A)において、マクロモノマー(a)の溶解パラメーターSP(SPa)と、ビニル単量体(b)のみを重合して得られる重合体(B)のSP(SPB)とは、マクロモノマー(a)由来の構成単位、ビニル単量体(b)由来の構成単位それぞれの特性が十分発現できる点から、SPB-SPa>3であることが好ましい。より好ましくはSPB-SPa>3.5であり、最も好ましくはSPB-SPa>4である。
各SPは、R.F.Fedors著、「ポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(Polym.Eng.Sci.)」、(1974)、14(2)、p.147、p.472に記載されている公知の方法により求められる。具体的には、以下の式を用いて算出した値である。
δ=Σ(miδi)
上記式中、miはポリマーを構成するモノマーiのモル分率を表し、δiはポリマーを構成するモノマーiのSPを表す。
【0071】
<共重合体(A)の製造方法>
共重合体(A)は、マクロモノマー(a)とビニル単量体(b)とを共重合することにより製造できる。
マクロモノマー(a)及びビニル単量体(b)の少なくとも一方は、水酸基を有する単量体を含むことが好ましい。水酸基を有する単量体は、2級/3級OH含有単量体を含むことが好ましく、1級OH含有単量体をさらに含んでもよい。
【0072】
共重合体(A)の製造方法としては、マクロモノマー(a)とビニル単量体(b)と含む単量体混合物を重合する方法(以下「製造方法(α)」ともいう)が好ましい。すなわち共重合体(A)は、マクロモノマー(a)とビニル単量体(b)とを含む単量体混合物の重合物であることが好ましい。かかる重合物にあっては、マクロモノマー(a)由来の構成単位とビニル単量体(b)由来の構成単位とがランダムに配列している。つまり共重合体(A)の主鎖全体にわたって複数のマクロモノマー(a)に由来するポリマー鎖が結合している。このような重合物は、例えばビニル単量体(b)由来の構成単位からなるポリマー鎖の末端のみにマクロモノマー(a)由来の構成単位が結合しているような場合に比べて、形成される塗膜の硬度、弾性率がより優れる傾向がある。
【0073】
単量体混合物を構成する単量体の種類及び全単量体の合計質量に対する各単量体の含有量(質量%)は、共重合体(A)を構成する単量体由来の構成単位の種類及び全構成単位の合計質量に対する各構成単位の含有量(質量%)と同様である。
例えば共重合体(A)におけるマクロモノマー(a)由来の構成単位の含有量が全構成単位の合計質量(100質量%)に対して7質量%以上60質量%以下である場合、単量体混合物を構成する全単量体の合計質量に対するマクロモノマー(a)の含有量は7質量%以上60質量%以下とされる。
【0074】
前記単量体混合物の重合方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が適用できる。生産性、塗膜性能の点で溶液重合法が好ましい。
重合は、公知の重合開始剤を用いて、公知の方法で行えばよい。例えば、上記した単量体混合物をラジカル開始剤の存在下に60~190℃の反応温度で2~14時間反応させる方法が挙げられる。重合の際、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
【0075】
ラジカル開始剤としては、公知のものを使用でき、例えば2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルパーオキ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
連鎖移動剤としては、公知のものを使用でき、例えばn-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、チオグリコール酸オクチル等のチオグリコール酸エステル類、α-メチルスチレンダイマー、ターピノーレン等が挙げられる。
溶液重合における溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン、酢酸n-ブチル、エチル3-エトキシプロピオネート等の一般の有機溶剤を使用できる。
【0076】
上記のようにして共重合体(A)が得られる。
ただし共重合体(A)の製造方法は製造方法(α)に限定されるものではなく、製造方法(α)以外の製造方法により共重合体(A)を製造してもよい。
製造方法(α)以外の製造方法としては、例えばマクロモノマー(a)をビニル単量体(b)からなる重合体に付加させる製造方法等が挙げられる。
【0077】
<作用効果>
共重合体(A)にあっては、マクロモノマー(a)由来の構成単位と、ビニル単量体(b)由来の構成単位とを含み、水酸基を有し、1級水酸基を有する構成単位の含有量がマクロモノマー(a)由来の構成単位およびビニル単量体(b)由来の構成単位100質量部に対し30質量部以下であることから、共重合体(A)を含む塗料組成物を被塗装物に塗装した後、形成された塗膜の補修作業を効率良く行うことができる。また、ポットライフの長い塗料組成物が得られる。また、塗料組成物の塗装直後のフロー性が高く、外観に優れた塗膜が得られる。
【0078】
共重合体(A)と同じ組成のランダム共重合体、つまりマクロモノマー(a)を用いず、マクロモノマー(a)を構成する単量体とビニル単量体(b)とを同じ比率で共重合したランダム共重合体(以下、「ランダム共重合体(X)」ともいう。)の場合、塗装1日後のゲル分率が70%超で、塗装1日後のゲル分率と塗装8日後のゲル分率との差が少ない傾向がある。同様に、水酸基として1級水酸基のみを有する共重合体(以下、「共重合体(Y)」ともいう。)の場合、マクロモノマー(a)由来の構成単位とビニル単量体(b)由来の構成単位とを含んでいても、塗装1日後のゲル分率が70%超で、塗装1日後のゲル分率と塗装8日後のゲル分率との差が少ない傾向がある。
したがって、塗装1日後のゲル分率70%以下及び塗装8日後のゲル分率80%以上の両方を満たす共重合体(A)としては、マクロモノマー(a)由来の構成単位とビニル単量体(b)由来の構成単位とを含み、2級水酸基及び3級水酸基の何れか一方又は両方を有する共重合体が好適である。
共重合体(A)において、2級水酸基や3級水酸基の反応性は、前述のとおり、1級水酸基に比べて低い。2級水酸基及び3級水酸基を有することで硬化が遅延し、塗装1日後のゲル分率が低くなる。一方、硬化が遅延しても、水酸基が充分に存在していれば、塗装8日後には充分に硬化が進むため、ゲル分率を高くできる。
【0079】
本願発明の共重合体(A)は、塗料組成物、加飾フィルム、インキ、分散剤、粘性調整剤、相溶化剤、接着剤、粘着剤等に用いることができ、特に塗料組成物の被膜形成性樹脂として有用である。
【0080】
〔塗料組成物〕
本発明の塗料組成物は、上述した共重合体(A)を被膜形成性樹脂として含む。
塗料組成物に含まれる共重合体(A)は1種でもよく2種以上でもよい。
【0081】
<各成分の含有量>
塗料組成物中の共重合体(A)の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分100質量%に対して30質量%以上100質量%以下が好ましく、60質量%以上100質量%以下がより好ましく、100質量%であってもよい。共重合体(A)の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜の硬度、塗膜形成後の硬度の上昇速度がより高まる。
樹脂固形分は、塗料組成物に含まれる樹脂成分の固形分換算での総質量である。
【0082】
<硬化剤>
本発明の塗料組成物は、硬化剤をさらに含むことができる。
塗料組成物が硬化剤を含むと、硬化させたときに架橋密度の高い塗膜が形成され、塗膜の硬度、成膜性等がより優れる傾向がある。また、共重合体(A)が自己架橋性を有する場合、例えば水酸基とイソシアナト基の両方を有する場合は、硬化剤を含まなくても充分な硬度、成膜性等を得ることができる。
硬化剤としては、共重合体(A)が有する水酸基と反応して塗料組成物を硬化し得る化合物であればよく、公知の硬化剤のなかから適宜選択できる。例えばイソシアナト基、ブロック化イソシアナト基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、カルボジイミド基等の反応性官能基を2以上有する化合物や、金属キレート系の硬化剤が挙げられる。
反応性官能基を2以上有する化合物としては、例えばポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等のイソシアネート系硬化剤、アミノ樹脂等が挙げられ、イソシアネート系硬化剤が好ましい。
【0083】
ポリイソシアネート化合物は、分子中に少なくとも2個のイソシアナト基を有する化合物であり、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;
水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;
トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;
2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトカプロエート、3-イソシアナトメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)等の3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;
これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体;
これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマー等が挙げられる。
【0084】
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のイソシアナト基をブロック剤でブロックした化合物である。
前記ブロック剤としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系ブロック剤;
ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;
メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系ブロック剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系ブロック剤;
ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系ブロック剤;
ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;
マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤;
ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;
アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;
コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;
ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系ブロック剤;
尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系ブロック剤;
N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系ブロック剤; エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系ブロック剤;
重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系ブロック剤;
ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等のアゾール系ブロック剤;
等が挙げられる。
【0085】
アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えばメラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
アミノ樹脂として、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基をアルコールによって部分的に又は完全にエーテル化したものを使用することもできる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0086】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましく、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
上記メラミン樹脂の重量平均分子量は400~6,000程度が好ましく、800~5,000程度がより好ましく、1,000~4,000程度が更に好ましく、1,200~3,000程度が最も好ましい。
【0087】
<有機溶剤>
本発明の塗料組成物は、有機溶剤を含むことが好ましい。塗料組成物が有機溶剤を含むと、塗工適性、形成される塗膜の耐水性、成膜性等がより優れる。
有機溶剤としては、共重合体(A)を溶解できるものであれば特に限定されず、例えばヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;
酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;
ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のエーテル系溶剤;
コスモ石油社製のスワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤はいずれか1種を単独で、または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0088】
<その他の成分>
本発明の塗料組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、共重合体(A)、硬化剤及び有機溶剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
他の成分としては、例えば共重合体(A)以外のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂、硬化触媒、はじき防止剤、樹脂、顔料(着色顔料、光輝性顔料、体質顔料等)、防汚剤、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤、可塑剤、粘性制御剤等が挙げられる。
硬化触媒としては、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、前記スルホン酸とアミンの中和塩、リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等が挙げられる。
【0089】
本発明の好ましい一態様の塗料組成物は、クリヤー塗料組成物である。本態様の塗料組成物は、共重合体(A)と有機溶剤とを含み、着色顔料を含まない。本態様の塗料組成物は、硬化剤をさらに含むことができる。本態様の塗料組成物は、共重合体(A)、硬化剤及び着色顔料以外の他の成分をさらに含むことができる。
【0090】
本発明の塗料組成物は、補修作業の効率の点から、塗装1日後のゲル分率が70%以下であることが好ましく、65%以下がより好ましい。
塗料組成物の塗装1日後のゲル分率は、塗膜を形成するための塗料組成物として本発明の塗料組成物を用いる以外は、共重合体(A)の塗装1日後のゲル分率と同様にして測定される。すなわち、本発明の塗料組成物をポリプロピレン板に6milアプリケーターで塗布し、70℃で30分間の乾燥を行って塗膜を形成し、温度23.5℃、相対湿度50%の条件で保管(養生)し、保管を開始してから24時間後に、この塗膜について前記のゲル分率の測定方法によりゲル分率を求める。
塗料組成物の塗装1日後のゲル分率は、例えば、共重合体(A)の種類、硬化触媒の種類や量等によって制御できる。例えば硬化触媒の含有量が少ないほど、塗装1日後のゲル分率が低くなる傾向がある。
【0091】
本発明の塗料組成物は、生産性、耐擦り傷性等の点から、塗装8日後のゲル分率が80%以上、100%以下であることが好ましく、85%以上、100%以下がより好ましい。
塗料組成物の塗装8日後のゲル分率は、塗膜を形成するための塗料組成物として本発明の塗料組成物を用いる以外は、共重合体(A)の塗装8日後のゲル分率と同様にして測定される。
【0092】
<各成分の含有量>
塗料組成物中の共重合体(A)の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分(100質量%)に対して30質量%以上、100質量%以下が好ましく、60質量%以上、100質量%以下がより好ましい。共重合体(A)の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜の硬度、保管時の硬度の上昇速度がより高まる。
樹脂固形分は、塗料組成物に含まれる樹脂成分の固形分換算での総質量である。
【0093】
塗料組成物が硬化剤を含む場合、塗料組成物中の硬化剤の含有量は、硬化剤の種類に応じて適宜設定できる。
例えば硬化剤がポリイソシアネート化合物又はブロック化ポリイソシアネート化合物の場合、共重合体(A)の水酸基に対するポリイソシアネート化合物のイソシアナト基又はブロック化ポリイソシアネート化合物のブロック化イソシアナト基のモル比(NCO/OH)が、0.5~2の範囲内となる量が好ましい。
【0094】
塗料組成物が有機溶剤を含む場合、塗料組成物中の有機溶剤の含有量は、塗料組成物の固形分、粘度等を考慮して適宜設定できる。
塗料組成物の固形分は、30質量%以上80質量%以下が好ましく、40質量%以上78質量%以下がより好ましく、45質量%以上75質量%以下がさらに好ましい。固形分が前記範囲の上限値以下であれば、塗料組成物の粘度を充分に低くすることができる。
固形分は、後述する実施例に示す測定方法により測定される。
【0095】
本発明の塗料組成物は、例えば前述の共重合体(A)を製造し、必要に応じて、得られた共重合体(A)に硬化剤、有機溶剤、他の成分等を配合することにより製造できる。
【0096】
<作用効果>
本発明の塗料組成物にあっては、共重合体(A)を含むことから、前述のように、塗料組成物を被塗装物に塗装した後、形成された塗膜の補修作業を効率良く行うことができる。また、ポットライフの長い塗料組成物が得られる。また、塗料組成物の塗装直後のフロー性が高く、外観に優れた塗膜が得られる。
【0097】
〔塗装物〕
本発明の塗装物は、前述の本発明の塗料組成物が塗装された塗装物である。
本発明の塗装物は、被塗装物に本発明の塗料組成物を塗装し、塗膜を形成することにより製造できる。具体的には、被塗装物の表面に本発明の塗料組成物を塗装して未硬化の塗膜を形成し、前記未硬化の塗膜を硬化させて硬化塗膜とする。これにより塗装物が得られる。
【0098】
硬化塗膜とは、JIS K 5600-1-1(2004)に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。
未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600-1-1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態を含むものである。
【0099】
被塗装物としては、特に限定されず、例えば乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー、ハンドル、センターコンソール、インストルメントパネル、ホイール等の自動車部品;船舶や各種の漁網、港湾施設、オイルフェンス、橋梁、海底基地等の水中構造物;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品;農機、建機等の工業用機器の外板部等が挙げられる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0100】
被塗装物の材質としては、特に限定されず、例えば鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂、各種のフィルム材料;各種の繊維強化プラスチック(FRP)等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等が挙げられる。これらのうち、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
【0101】
被塗装物の材質が金属材料である場合、被塗装物の表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されていてもよい。
被塗装物の表面に予め被膜が形成されていてもよい。被塗装物の材質が金属材料である場合、前記被膜は、前記表面処理が施された表面の上に形成されていてもよい。
表面に被膜が形成された被塗装物としては、例えば、被塗装物の表面に、必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜を形成したもの、前記下塗り塗膜の上に中塗り塗膜を形成したもの等を挙げることができる。
前記下塗り塗膜としては、例えばカチオン電着塗料等の電着塗料が挙げられる。
【0102】
塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されず、例えばエアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の公知の塗装方法を用いることができる。塗装の際、必要に応じて静電印加してもよい。
形成する塗膜の膜厚は、適宜設定でき、特に限定されない。例えば硬化塗膜の膜厚として、500nm~500μm程度とすることができる。
【0103】
未硬化塗膜は、加熱により硬化(加熱硬化)させることができる。未硬化塗膜の加熱は、公知の加熱手段により行うことができる。加熱手段としては、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用できる。加熱温度は、特に制限されるものではないが、50~180℃程度が好ましい。加熱時間は、特に制限されるものではないが、1~60分間程度が好ましい。
【0104】
塗料組成物の塗装後、加熱硬化を行う前に、塗膜欠陥の発生を防止するために、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で、予備加熱、エアブロー等を行ってもよい。
予備加熱の温度は、30~100℃程度が好ましい。予備加熱の時間は、30秒~15分間程度が好ましい。
エアブローは、通常、塗装面に30~100℃程度の温度に加熱された空気を30秒~15分間程度吹き付けることにより行うことができる。
【0105】
塗膜を加熱硬化させた後、塗膜の硬度を高めるために、養生(保管)を行うことができる。
養生条件は、例えば0~60℃で1~10日間程度とすることができる。
養生の際、必要に応じて、塗膜の補修作業を行ってもよい。
補修作業としては、サンドペーパー、バフ研磨等の研磨手段による研磨が挙げられる。
補修作業を行う期間は、養生を開始してから3日後までの間が好ましい。
【0106】
〔複層塗膜の形成方法〕
本発明の塗料組成物は、複層塗膜の形成に用いることができる。
複層塗膜としては、例えば(1)着色ベース塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜、(2)第1着色ベース塗膜、第2着色ベース塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜等が挙げられる。
本発明の塗料組成物は、特に、これら複層塗膜の各塗膜のうち、クリヤー塗膜を形成するクリヤー塗料として有用である。
【0107】
本発明の塗料組成物を用いた複層塗膜の形成方法の一例として、電着塗料の硬化塗膜上に、第1着色ベース塗料を塗装して第1着色ベース塗膜を形成し、ついで前記第1着色ベース塗膜を予備加熱することなく又は予備加熱若しくは加熱硬化した後、前記第1着色ベース塗膜上に第2着色ベース塗料を塗装して第2着色ベース塗膜を形成し、ついで前記第1着色ベース塗膜及び前記第2着色ベース塗膜を予備加熱した後、前記第2着色ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成し、形成された3層の塗膜を同時に加熱硬化させて複層塗膜を形成する方法において、前記クリヤー塗料として前記本発明の塗料組成物を用いる方法が挙げられる。
この複層塗膜の形成方法では、電着塗料の硬化塗膜上に、前記(2)の複層塗膜が形成される。
この複層塗膜の形成方法は、クリヤー塗料として前記本発明の塗料組成物を用いる以外は、公知の方法を利用して行うことができる。
【0108】
電着塗料の硬化塗膜は、例えば鋼板等の金属製の被塗装物の表面に、必要に応じて表面処理を施し、その上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させることにより形成できる。
第1着色ベース塗料及び第2着色ベース塗料はそれぞれ、公知のものを用いることができる。例えば架橋性官能基を有する被膜形成性樹脂、硬化剤及び着色顔料を含む熱硬化性塗料組成物が挙げられる。該熱硬化性塗料組成物は、必要に応じて、光輝性顔料、染料、体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有することができる。該熱硬化性塗料組成物は、有機溶剤型塗料組成物、水性塗料組成物、粉体塗料組成物のいずれであってもよい。 被膜形成性樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基等が挙げられる。被膜形成性樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。硬化剤としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0109】
第1着色ベース塗料及び第2着色ベース塗料それぞれの塗装、形成された塗膜の予備加熱及び加熱硬化はそれぞれ、本発明の塗料組成物の塗装、塗膜の予備加熱及び加熱硬化と同様にして行うことができる。
3層の塗膜を同時に加熱硬化させる際の加熱温度は、80~180℃程度が好ましく、100~170℃程度がより好ましく、120~160℃程度が更に好ましい。また、加熱時間は、10~60分間程度が好ましく、20~40分間程度がより好ましい。
3層の塗膜を同時に加熱硬化させた後、養生を行うことができる。養生条件としては前記と同様の条件が挙げられる。
【0110】
第1着色ベース塗膜の膜厚は、通常、硬化膜厚として5~50μm程度が好ましく、10~30μm程度がより好ましく、15~25μm程度が更に好ましい。
第2着色ベース塗膜の膜厚は、硬化膜厚として3~30μm程度が好ましく、5~25μm程度がより好ましく、8~20μm程度が更に好ましく、9~16μm程度が更に特に好ましい。
クリヤー塗膜の膜厚は、通常、硬化膜厚で10~80μm程度が好ましく、15~60μm程度がより好ましく、20~45μm程度が更に好ましい。
【0111】
上記複層塗膜の形成方法は、例えば自動車の塗装に用いることができる。
自動車の塗装においては、車体等の表面に電着塗料を塗装し、さらに中塗り塗料を塗装して中塗り塗膜を形成し、さらに上塗り塗料を塗装して上塗り塗膜を形成することが一般的である。電着塗料を塗装した後、その上に上記複層塗膜の形成方法により複合塗膜を形成すると、該複層塗膜の第1着色ベース塗膜は中塗り塗膜に相当し、第2着色ベース塗膜及びクリヤー塗膜は上塗り塗膜に相当するものとなる。
【実施例
【0112】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。以下の各例において、「部」は「質量部」を示す。
各例で用いた測定方法を以下に示す。
【0113】
<測定方法>
(固形分(NV))
測定試料(共重合体溶液または塗料組成物)0.50gをアルミニウム製の皿に測りとり、トルエン3mLをスポイトで加えて皿の底に一様に広げ、予備乾燥を行った。予備乾燥は、測定試料を皿全体にのばし、本乾燥で溶剤を揮発させやすくするための処理である。予備乾燥では、70~80℃の水浴上で測定試料およびトルエンを加熱溶解させ、蒸発乾固させた。予備乾燥後、105℃の熱風乾燥機で2時間の本乾燥を行った。測定試料の予備乾燥前の質量(乾燥前質量)と、本乾燥後の質量(乾燥後質量)とから、以下の式により固形分(加熱残分)を求めた。
固形分(質量%)=乾燥後質量/乾燥前質量×100
【0114】
(共重合体の水酸基価(OHV))
共重合体の水酸基価(mgKOH/g)は、JIS K 1557-1のA法により測定した。
【0115】
(共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw))
共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社製、HLC-8220)を用いて測定した。カラムはTSKgelα-M(東ソー株式会社製、7.8mm×30cm)、TSKguardcolumnα(東ソー株式会社製、6.0mm×4cm)を使用した。検量線は、F288/F1/28/F80/F40/F20/F2/A1000(東ソー株式会社製、標準ポリスチレン)、およびスチレン単量体を使用して作成した。
【0116】
(共重合体のガラス転移温度(計算Tg))
共重合体のガラス転移温度は、その共重合体を構成する単量体各々のホモポリマーのガラス転移温度及び各単量体の質量分率からFoxの計算式によって算出した。
【0117】
(SP)
マクロモノマーを用いた共重合体については、主鎖(ビニル単量体から形成された部分)、側鎖(マクロモノマーから形成された部分)それぞれのSP(溶解度パラメータ:δ(J/cm1/2)を求めた。マクロモノマーを用いていない共重合体については、共重合体全体でのSPを求めた。各SPは、R.F.Fedors著、「ポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(Polym.Eng.Sci.)」、(1974)、14(2)、p.147、p.472に記載されている公知の方法により求めた。具体的には、以下の式を用いて算出した値である。
δ=Σ(miδi)
上記式中、miはポリマーを構成するモノマーiのモル分率を表し、δiはポリマーを構成するモノマーiのSPを表す。
【0118】
(塗膜のゲル分率)
塗膜の約0.2gを測り取り、ステンレスメッシュ(SUS316、綾織金網、φ0.04×300メッシュ)で包み、端部をクリップでとめて試料とした。この試料を2Lフラスコの中にメタノール:アセトン=1:1(質量比)の混合溶剤500gと共に入れ、62℃で4時間の還流撹拌を行い、次いで前記試料を前記混合溶剤から取り出し、アセトン10gを用いて洗浄した後、熱風乾燥機にて105℃で2時間の乾燥を行った。その後、前記試料中に残存する塗膜の質量を測定して乾燥後質量とし、この乾燥後質量と測り取った塗膜の質量とから、以下の式によりゲル分率を求めた。
ゲル分率(%)=乾燥後質量(g)/測り取った塗膜の質量(g)×100
塗装8日後のゲル分率と塗装1日後のゲル分率の差も求めた。
【0119】
(塗膜の硬度(HM))
塗膜のマルテンス硬度(HM)を、超微小硬度計(株式会社フィッシャー・インストルメンツ製試料、商品名:HM2000)により測定した。測定条件は、F(試験力)=50mN/10秒、C(最大荷重クリープ時間)=10秒とした。同じ塗膜のそれぞれ異なる5箇所についてマルテンス硬度を測定し、それらの平均値を塗膜の硬度とした。
【0120】
<合成例1>
(分散剤1の製造)
撹拌機、冷却管、温度計及び窒素ガス導入管を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部及びメタクリル酸メチル(MMA)12部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、MMAを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10質量%の分散剤1を得た。
【0121】
(連鎖移動剤の製造)
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物1.00gおよびジフェニルグリオキシム1.93g、あらかじめ窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル80mlを入れ、室温で30分間攪拌した。ついで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体10mlを加え、さらに6時間攪拌した。混合物をろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、15時間真空乾燥して、赤褐色固体である連鎖移動剤1を2.12g得た。
【0122】
(マクロモノマー1の製造)
撹拌機、冷却管、温度計及び窒素ガス導入管を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、MMAを100部、連鎖移動剤1を0.008部及び重合開始剤としてパーオクタ(登録商標)O(1,1,3,3-テトラメチルブチル パーオキシ2-エチルヘキサノエート、日本油脂株式会社製)0.8部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して1時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、マクロモノマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液をフィルタで濾過し、フィルタ上に残った残留物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー1を得た。このマクロモノマー1の数平均分子量は1700であり、DSC測定によるガラス転移温度は63℃であった。マクロモノマー1の製造に用いた材料及びマクロモノマー1のMnを表1に示す。
【0123】
(マクロモノマー2の製造)
合成例1のMMA100部をMMA50部、IBXMA50部、パーオクタ(登録商標)O(1,1,3,3-テトラメチルブチル パーオキシ2-エチルヘキサノエート、日本油脂株式会社製)0.8部を1.1部に変更した以外は同様の方法にてマクロモノマーを得た。数平均分子量は1700であった。マクロモノマー2の製造に用いた材料及びマクロモノマー2のMnを表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
<実施例1>
(共重合体溶液の製造)
温度計、温度調整機、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に酢酸ブチル50部及びマクロモノマー(MM-MMA)30部を仕込み、重合装置内を窒素置換し、120℃に昇温した。そこに、スチレン20部、イソボルニルアクリレート13.9部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート36部、アクリル酸0.1部、酢酸ブチル10部、パーブチルO(t-ブチル パーオキシ2-エチルヘキサノエート、日本油脂株式会社製)3.0部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)3.0部の単量体含有混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、酢酸ブチル5部を急速滴下し、その後30分間熟成した。その後さらに酢酸ブチル20部及びパーブチルO0.2部の混合物を30分間かけて滴下し、滴下終了後、1.5時間熟成した。その後さらに酢酸ブチル15部を加え、固形分51.8質量%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液に含まれる共重合体の水酸基価(OHV)は155mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は4000、重量平均分子量(Mw)は8800、計算Tgは38.4℃、主鎖のSPは23.6(J/cm1/2、側鎖のSPは20.3(J/cm1/2であった。
【0126】
(評価)
前記共重合体溶液と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(デュラネート(登録商標)TPA100、旭化成株式会社製、不揮発分100%、NCO基含有率23.1%)とを、NCO/OHのモル比が1/1となるように混合して塗料組成物を調製した。
この塗料組成物をポリプロピレン板に6milアプリケーターで塗布し、70℃で30分間の乾燥を行って塗膜を形成し、温度23.5℃、相対湿度50%の条件で養生(保管)を行った。
養生(保管)を開始してから24時間後(塗装1日後)及び192時間後(塗装8日後)において、塗膜のゲル分率及び硬度を測定した。結果を表2に示す。
【0127】
<実施例2~6、比較例1~3>
反応容器に昇温前に仕込む材料(初期仕込み)、及び昇温後に最初に滴下する単量体含有混合物の組成をそれぞれ表2に示すようにした以外は実施例1と同様にして、共重合体溶液を得た。各共重合体溶液に含まれる共重合体の水酸基価(OHV)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、計算Tg及びSPをそれぞれ表2に示す。
得られた共重合体溶液について実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
表中、単量体混合物における略号は以下の意味である。
マクロモノマー1:合成例1で得た、数平均分子量1700のマクロモノマー。
マクロモノマー2:合成例2で得た、数平均分子量1700のマクロモノマー。
MMA:メチルメタクリレート。
St:スチレン。
IBXA:イソボルニルアクリレート。
EHA:2-エチルヘキシルアクリレート。
HPMA:2-ヒドロキシプロピルメタクリレート。
HPA:2-ヒドロキシプロピルアクリレート。
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート。
AA:アクリル酸。
AMBN:2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)。
【0130】
比較例1の共重合体は、マクロモノマー1を用いても、1級水酸基を有する構成単位が30質量部を超えていたため、塗装1日後のゲル分率が70%を超えていた。比較例2の共重合体においては、水酸基価が120mgKOH/g未満のため、塗装8日後のゲル分率は80%以下であり、HMも100以下だった。マクロモノマーを用いていないランダム共重合体である比較例3の共重合体は、塗装1日後のゲル分率が70%を超えていた。
これらの結果から、マクロモノマー由来の構成単位とビニル単量体由来の構成単位とを含み、1級水酸基が30質量部以下である場合に、初期硬度を抑えながら、塗装8日後のゲル分率、硬度を十分に上げられることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明によれば、塗装後に塗膜の補修作業を効率良く行うことができる塗料組成物、前記塗料組成物を得るために好適な(メタ)アクリル系共重合体、並びに前記塗料組成物を用いた塗装物及び複層塗膜の形成方法を提供することができる。